タイトル: | 特許公報(B2)_酢酸含有アルコール飲料 |
出願番号: | 2004370986 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12G 3/04,A23L 1/30 |
木全 雅也 鈴木 誠 JP 5046073 特許公報(B2) 20120727 2004370986 20041222 酢酸含有アルコール飲料 株式会社ミツカングループ本社 398065531 株式会社ミツカン 301058355 矢野 裕也 100086221 木全 雅也 鈴木 誠 20121010 C12G 3/04 20060101AFI20120920BHJP A23L 1/30 20060101ALI20120920BHJP JPC12G3/04A23L1/30 Z C12G 3/04 A23L 1/30 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CiNii G−Search 特開2000−312580(JP,A) 特開昭56−158089(JP,A) 特開昭62−143678(JP,A) 特開2001−103954(JP,A) 特開平06−062829(JP,A) 特開平04−287677(JP,A) 1 2006174754 20060706 9 20071018 太田 雄三 本発明は、酢酸含有アルコール飲料に関し、詳しくは酢酸エチルの生成量を抑えた飲用しやすい酢酸含有アルコール飲料に関する。 食酢は主に酢酸を含有する調味料であり、飲食物の調味や保存性向上を目的として広く利用されてきた。 近年では、食酢又は酢酸の疲労回復促進、カルシウム吸収促進、胃粘膜保護、高血圧者への血圧低下作用などの健康効果が科学的に検証されるにつれ、食酢は調味料として利用されるだけでなく、飲用としても多く使用されている。 食酢又は酢酸を含有した飲料としては、食酢に果実を漬け込んで調製したものや、りんご酢と蜂蜜を混ぜて作られるバーモントドリンクなどが有名である。 一方、食酢又は酢酸をアルコール飲料に含有させてなる酢酸含有アルコール飲料も開発されており、例えば、酢酸などの有機酸を含有する深酔いを防止するアルコール飲料(例えば、特許文献1参照)、清酒に米酢をブレンドしたアルコール含有健康飲料(例えば、特許文献2参照)、また、甘味料を含むことで香味を改善したサワードリンク風飲料(例えば、特許文献3参照)などが開示されている。 これらの酢酸含有アルコール飲料中には、酢酸とアルコール(エタノール)が混在することになるが、そのような場合には、自然に酢酸エチルが生成することが知られている。 このような場合の酢酸エチルの生成量は、該飲料中の酢酸濃度及びアルコール濃度に依存し、高濃度であればあるほどより多量の酢酸エチルが生成することになる。また、酢酸とアルコール両者が混在してからの経過時間が長ければ長いほど多くなる。 このようにして生成される酢酸エチルは特有の刺激臭を有しており、飲料の本来の香味を害する欠点を有している。特に、アルコールと食酢を混合して酢酸含有アルコール飲料を調製した直後に飲用する場合は酢酸エチルの生成はほとんど少なくて問題とはならないのであるが、調製後に時間が経過するにつれて酢酸エチルが増加してくるため、本来の香味が損なわれるという問題があった。 以上のように、酢酸含有アルコール飲料を開発する場合、酢酸エチルの生成をいかに抑制させるかが課題であり、酢酸エチルの生成を抑えた酢酸含有アルコール飲料を開発することが求めらていた。特開昭62−143678号公報特開昭61−231990号公報特開昭61−25475号公報 そこで、本発明の目的は、酢酸とアルコールとを原料とする酢酸含有アルコール飲料において、香味に悪影響を与える酢酸エチルの生成が抑えられ、優れた香味を長期間維持することのできる酢酸含有アルコール飲料を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ね、その過程において、酢酸含有アルコール飲料における酢酸エチルの生成は、その酢酸濃度及びアルコール濃度だけではなく、pHにより大きな影響を受けていることを見出した。そして、飲料のpHを、酢酸濃度やアルコール濃度に応じて所定の範囲に調整することにより、保存中の酢酸エチルの生成が抑制され、香味の変化が少ない酢酸含有アルコール飲料を開発することが可能になることを見出した。そして、試行錯誤を重ねた結果、酢酸エチル生成を効果的に遅らせることのできるpHを予測するための指標として有効な数式を開発して、本発明を完成するに至った。 すなわち、請求項1に記載の本発明は、酢酸を0.2〜1.0重量/容量%含有し、かつ、アルコールを4.0〜8.0容量/容量%含有する飲料において、該飲料のpHが、下記の式(I)のPを満たすように調整されてなることを特徴とする酢酸含有アルコール飲料である。[数1] 7>P>1.6304×log(a×b)+3.15 …(I)(式(I)中、Pは酢酸含有アルコール飲料のpHを示し、aは該飲料における酢酸濃度(重量/容量%)を示し、bは該飲料におけるアルコール濃度(容量/容量%)を示す。) 本発明によれば、酢酸含有アルコール飲料のpHを上記式(I)のPの範囲に調整することにより、酢酸エチルの生成を遅らせることができ、長期保管後も香味の変化が少なく、飲用に適した酢酸含有アルコール飲料が提供できる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の酢酸含有アルコール飲料は、酢酸を含有するアルコール飲料において、該飲料のpHが、上記式(I)のPを満たすように調整されてなることを特徴とする。 本発明の酢酸含有アルコール飲料のpHを、製造時に式(I)のPを満たす範囲に調整することにより、長期間保存後に飲用しても、酢酸エチルの生成を香味に影響しない範囲である150ppm程度以下に抑制することができ、酢酸エチルの刺激臭による酢酸含有アルコール飲料の品質低下を抑えて、飲用しやすく風味の良い酢酸含有アルコール飲料を提供することが可能となる。また、飲料中の酢酸が中和され酢酸含有量が減少して、酢酸特有の香味が損なわれてエグ味が発生するおそれがなく、酢酸含有のアルコール飲料としての風味をも保つことができる。 上記式(I)中のaとは、酢酸含有アルコール飲料における酢酸濃度(重量/容量%)を意味する。酢酸濃度は、嗜好や求められる健康機能などに応じて、該飲料の原料である食酢や酢酸の種類や配合組成を適宜調節して設定することが可能であるが、通常は、0.2〜1重量/容量%となる範囲とすることができる。 原料としての食酢は、醸造酢及び合成酢のいずれであっても良いが、特に、りんご酢やぶどう酢に代表される果実酢や米黒酢などを用いると、食酢特有の風味が得られ、好ましい。また、酢酸としては、食品用の酢酸であれば原料として単独で或いは食酢と共に利用することができる。 上記式(I)中のbとは、酢酸含有アルコール飲料におけるアルコール濃度(容量/容量%)を意味する。アルコール濃度は、嗜好などに応じて、該飲料の原料であるアルコール飲料の種類、度数などやその配合組成を適宜調節して設定することが可能であるが、飲用時のアルコール濃度として2〜20容量/容量%で適用可能であり、更に好ましくは4〜8容量/容量%となる範囲とすることができる。 原料としてのアルコール飲料は、特に限定されずに用いることができ、例えば焼酎、ウォッカ、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、リキュール、ビール、発泡酒、ワイン、清酒などが挙げられる。 上記式(I)のPを満たす範囲を満たすように調整するためには、上記のような酢酸やアルコール飲料の選択のほか、下記のような原料の選択や、その配合割合の調節により行うこともできる。 pHの調整のために用いることができる原料としては、特に制限はないが、一般的には、有機酸塩、無機酸塩、水酸化ナトリウム、アミノ酸などを挙げることができる。有機酸塩としては、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩などがあり、特にこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が好ましい。また、無機酸塩としては、炭酸塩、リン酸塩などがあり、特にこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩が好ましい。 本発明の酢酸含有アルコール飲料は、さらに必要に応じて呈味を増強するための目的で種々の有機酸や各種果汁などが添加されていても良い。また、必要に応じて、甘味剤、酸味剤、呈味剤等の添加料や、各種香料を加えて調味されていてもよい。 また、本発明の酢酸含有アルコール飲料は、炭酸ガスを含有させることで、爽やかな喉越しが得られ、さらに酢酸や酢酸エチルの刺激が和らげられるため、好ましい。 本発明の酢酸含有アルコール飲料の製造は、常法に従って行うことができ、例えば、原料を混合し、その酢酸濃度及びアルコール濃度に応じてpHを調整した後、殺菌、容器に充填して製品化することができる。 尚、酢酸エチルの生成を防ぐと共に酢酸の風味を保つためには、保存温度を常温以下として保存期間は1年以内とすることが好ましい。 以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。(試験例1)許容酢酸エチル濃度の決定 りんご酢8mlと95%エタノール4.2mlを用いて調製した酢酸含有アルコール飲料100ml中に、酢酸エチルを50ppm〜400ppmの範囲で段階的に含有させ、それぞれの香味を専門パネラー10名で評価した。 評価は、5点:酢酸エチル臭は感じられない、4点:極めて弱い酢酸エチル臭あり、3点:酢酸エチル臭あるが許容できる、2点:強い酢酸エチル臭があり不適、1点:極めて強い酢酸エチル臭があり、の5段階で行い、各パネラーの評価点の平均値で表わし、結果を表1にまとめた。 以上の結果、酢酸含有アルコール飲料における、許容される酢酸エチルの濃度は150ppm以下であることが判明した。(試験例2)酢酸エチル生成量の測定 表2に示す成分値(アルコール濃度及び酢酸濃度)となるようりんご酢と95%エタノールを混合し、クエン酸もしくはクエン酸ナトリウムを混合溶解して表2の各pHに調整した後、瓶詰めして35℃で100日間保管した。 100日保管後、各瓶を開封して中身の酢酸含有アルコール飲料について、生成した酢酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。これらの結果を表2に示した。 表2から、pHが高いと酢酸エチル濃度が上がる傾向にあり、これは酢酸濃度及びアルコール濃度が高いほど顕著であった。 以上の結果、酢酸含有アルコール飲料における酢酸エチルの生成は、酢酸濃度及びアルコール濃度だけではなく、pHにより大きな影響を受けていることが確認された。 そこで、表2に示す成分値(酢酸濃度とアルコール濃度)の組み合わせにおいて、酢酸エチル濃度が150ppmとなるようなpHを、表2の結果から推定することにした。一方、酢酸濃度(a重量/容量%)とアルコール濃度(b容量/容量%)との積算値(a×b)も算出し、推定pHと比較した。 表3に推定pH(P)と、酢酸濃度(a重量/容量%)とアルコール濃度(b容量/容量%)との積算値(a×b)を示した。 また、表3の結果をもとに、積算値(a×b)と推定pH(P)をグラフ化し、図1に示した。 図1より、積算値(a×b)と推定pH(P)の間には相関関係があると推定でき、その結果、次の近似式(II)が得られた。[数2] P=1.6304×log(a×b)+3.0219 …(II)(式(II)中、Pは酢酸含有アルコール飲料のpHを示し、aは該飲料における酢酸濃度(重量/容量%)を示し、bは該飲料におけるアルコール濃度(容量/容量%)を示す。) すなわち、酢酸含有アルコール飲料の酢酸濃度及びアルコール濃度を、式(II)に代入してpHが上式(II)を満たす場合には、酢酸エチルを150ppm生成する臨界的なpHとなりうるものと推定できる。言い換えれば、上記式(II)に酢酸濃度やアルコール濃度を代入して算出されたPの値よりも高く飲料のpHを調整しておけば、長期間保存後にも、酢酸エチルを150ppm以下に、すなわち、官能的に酢酸エチルの刺激臭を殆ど感じない程度の濃度以下に酢酸エチルの生成を抑えることが可能になることが期待できた。 ここで、飲料のpHが7を上回る場合には、飲料中の酢酸が完全に中和されてしまい酢酸含有量が減少すると共に、酢酸特有の香味が損なわれてエグ味が発生するおそれがあり、酢酸含有のアルコール飲料として不適切となる。また、アルコール飲料としても損なわれ、エグ味が生じるおそれがある。この点を考慮すると共に、多少の安全率を見込むと、上記式(II)は、下記式(I)のように書き換えることができる。[数3] 7>P>1.6304×log(a×b)+3.15 …(I)(式(I)中、Pは酢酸含有アルコール飲料のpHを示し、aは該飲料における酢酸濃度(重量/容量%)を示し、bは該飲料におけるアルコール濃度(容量/容量%)を示す。) なお、この式(I)に当てはまるpH条件の酢酸含有アルコール飲料としては、表2に示した試験区のうち、試験区3〜5、9、10、19、20、25、34、35、及び40であり、これらの試験区では、確かに酢酸エチルの生成濃度が150ppmを下回っていた。このことから、pHが式(I)のPを満たすように調整することにより、酢酸エチルの生成により風味を損なうことのない酢酸含有アルコール飲料が得られることが分かった。(実施例1) リンゴ酢(ミツカン社製)100ml、焼酎(宝酒造社製、アルコール20度)200ml、りんご果汁200ml、クエン酸ナトリウム0.8g、水500mlを混合し、酢酸濃度:0.5重量/容量%、アルコール濃度:4.0容量/容量%、pH3.7の酢酸含有アルコール飲料1リットルを調整した。 80℃、20秒の殺菌を行った後、ガラス製容器に充填し、35℃で100日間保管した。 100日間保管後、開封し、飲料中の酢酸エチル濃度を測定したところ、121ppmであった。また、該飲料を試飲したところ、酢酸エチル臭は弱く、風味の優れた飲料であることが確認できた。 本発明による酢酸含有アルコール飲料は、pHを適性に調整することで酢酸エチルの生成を抑制することができ、結果として、風味の変化の少ない酢酸含有アルコール飲料であることが確認できた。 本発明によれば、酢酸含有アルコール飲料のpHを上記式(I)のPの範囲に調整することにより、酢酸エチルの生成を遅らせることができ、長期保管後も香味の変化が少なく、飲用に適した酢酸含有アルコール飲料が提供できる。酢酸エチル生成における酢酸濃度、アルコール濃度とpHの関係を求めた図面である。 酢酸を0.2〜1.0重量/容量%含有し、かつ、アルコールを4.0〜8.0容量/容量%含有する飲料において、該飲料のpHが、下記の式(I)のPを満たすように調整されてなることを特徴とする酢酸含有アルコール飲料。[数1] 7>P>1.6304×log(a×b)+3.15 …(I)(式(I)中、Pは酢酸含有アルコール飲料のpHを示し、aは該飲料における酢酸濃度(重量/容量%)を示し、bは該飲料におけるアルコール濃度(容量/容量%)を示す。)