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タイトル:特許公報(B2)_アゾベンゼン誘導体化合物、粒子およびその製造方法
出願番号:2004366950
年次:2011
IPC分類:C07C 323/12,C09K 11/06


特許情報キャッシュ

韓 旻娥 原 正彦 JP 4660721 特許公報(B2) 20110114 2004366950 20041220 アゾベンゼン誘導体化合物、粒子およびその製造方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 特許業務法人原謙三国際特許事務所 110000338 韓 旻娥 原 正彦 JP 2004328963 20041112 20110330 C07C 323/12 20060101AFI20110310BHJP C09K 11/06 20060101ALI20110310BHJP JPC07C323/12C09K11/06 620 C07C 323/00 C09K 11/00 CA/REGISTRY(STN) 特開2002−022653(JP,A) 特開2002−020368(JP,A) 特開2000−264874(JP,A) 特開2004−051624(JP,A) 特開2005−272402(JP,A) 特開2006−022103(JP,A) Langmuir,2003年,19(6),p.2306-2312 4 2006160715 20060622 15 20071210 前田 憲彦 本発明は、新規アゾベンゼン誘導体化合物、前記アゾベンゼン誘導体化合物の集合体からなる粒子およびその製造方法に関する。 アゾベンゼンは、室温では発光しないことが知られている。そこで、アゾベンゼンに金属や発光体を導入することにより、発光性のアゾベンゼン誘導体を得ることが提案されている(非特許文献1〜5)。しかし、これらのアゾベンゼン誘導体は、吸収バンドのシフトや異性化率の低下などの問題があった。 一方、弱い蛍光を示す化合物を水と有機溶媒の混合溶媒に添加することにより、集合体、例えばナノメーターサイズの集合体(ナノ粒子)を形成すると、凝集前の数百倍の発光増幅を示すことが報告されている(非特許文献6および7)。 一般に、ナノ粒子のような集合体を形成するためには、親水性部と疎水性部を有する両親媒性物質を水と有機溶媒の混合溶媒に添加する方法が用いられている。しかし、両親媒性物質は、合成や精製が困難であるという問題がある。Yutaka, T.; Mori, I.; Kurihara, M.; Mizutani, J.; Tamai, N.; Kawai, T.; Irie, M.; Nishihara, H. Inorg. Chem. 2002, 41, 7143.Aiello, I.; Ghedini, M.; Deda, M. D. J. Lumin. 2002, 96, 249.Ghedini, M.; Pucci, D.; Calogero, G.; Barigelletti, F. Chem. Phys. Lett. 1997, 267, 341.Nihei, M.; Kurihara, M.; Mizutani, J.; Nishihara, H. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2964.Tsuchiya, S. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 48.An, B.-K.; Kwon, S.-K.; Jung, S.-D.; Park, S. Y. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14410.Luo, J.; Xie, Z.; Lam, J. W. Y.; Cheng, L.; Chen, H.; Qiu, C.; Kwok, H. S.; Zhan, X.; Liu, Y.; Zhu, D.; Tang, B. Z. Chem. Commun. 2001, 1740. そこで、本発明は、合成および精製が容易であり、しかも、簡便かつ容易に集合体の形成が可能な新規アゾベンゼン誘導体を提供することを目的とする。 上記目的を達成する手段は、以下の通りである。[請求項1]一般式(I):(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、エステル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、または複素環基を示す。mおよびnはそれぞれ独立に1〜6の範囲の整数を示す。R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示す。pおよびqはそれぞれ独立に3〜28の範囲の整数を示す。rは0または1を示す。)で表されることを特徴とするアゾベンゼン誘導体化合物。[請求項2]請求項1に記載のアゾベンゼン誘導体化合物の集合体からなることを特徴とする粒子。[請求項3]粒子径が10nm〜10μmの範囲である、請求項2に記載の粒子。[請求項4]請求項1に記載のアゾベンゼン誘導体化合物を含む有機溶媒に紫外光を照射することにより、前記アゾベンゼン誘導体化合物の集合体を形成することを特徴とする、請求項2または3に記載の粒子の製造方法。 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物によれば、紫外光照射のみで集合体からなる粒子を形成することができる。 更に、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、集合体形成により顕著な発光増幅を達成することができる。 以下、本発明について更に詳細に説明する。[アゾベンゼン誘導体化合物] 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、一般式(I):(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、エステル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、または複素環基を示す。mおよびnはそれぞれ独立に1〜6の範囲の整数を示す。R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示す。pおよびqはそれぞれ独立に3〜28の範囲の整数を示す。rは0または1を示す。)で表されることを特徴とするアゾベンゼン誘導体化合物である。 R1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、エステル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基、シクロアルキル基、または複素環基を示す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、ヨウ素を挙げることができる。エステル基は、R’OCO−基(R’はアルキル基を示す)であることができ、R’は例えばメチル基、エチル基等であることができる。アルキル基は、例えば炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基であることができる。アルコキシル基は、炭素数1〜8のアルコキシル基であることができ、具体的には、CH3O−基、CH3CH2O−基等であることができる。また、シクロアルキル基は、例えば、炭素数6のシクロアルキル基であることができる。複素環基としては、例えば窒素原子を含む複素環基(例えばピリジル基)を挙げることができる。 R1は、原料の入手の容易さを考慮すると、シアノ基、ニトロ基、水素原子、アルコキシル基、エステル基、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。また、アゾベンゼン誘導体化合物の異性化率の観点からは、R1はアルキル基、複素環基、またはハロゲン原子であることが好ましい。 一般式(I)中、mおよびnは、それぞれ独立に1〜6の範囲の整数を示す。原料の入手の容易さおよび粒子(集合体)形成の観点からは、nは2以上であることが好ましく、mは1または2であることが好ましい。 R2〜R9は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示す。アルキル基は、炭素数1〜4の直鎖または分岐アルキル基であることができる。R2〜R9は、原料の入手の容易さを考慮すると、水素原子であることが好ましい。また、一般式(I)において、m、nが2以上の場合、繰り返し単位中のフェニレン基の置換基は同じであってもよく、異なっていてもよい。 一般式(I)中、pおよびqは、それぞれ独立に3〜28の範囲の整数を示す。原料の入手の容易さ等を考慮すると、pおよびqは、それぞれ独立に3〜22の範囲の整数であることが好ましい。 一般式(I)中、rは0または1を示す。rが1である本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、分子内にS−S結合を有するため、金チオール結合を利用して、金基板上に固定化することができる。また、合成の容易性の観点からは、rが0であることが好ましい。 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物の具体例を以下に示す。(上記式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基を示す。p、q、rについては前述と同様である。) 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、公知の方法で合成することができる。例えば、一般式(II)で表される原料化合物と一般式(III)で表される原料化合物をジアゾカップリングして一般式(IV)で表されるヒドロキシアゾベンゼン誘導体を得る。 次いで、得られたヒドロキシアゾベンゼン誘導体(IV)に、公知の方法でアルキル鎖を導入することにより、一般式(I)中のrが0であるアゾベンゼン誘導体化合物(V)を得ることができる。 また、一般式(I)中のrが1であるアゾベンゼン誘導体化合物は、上記ヒドロキシアゾベンゼン誘導体(IV)に、例えばジブロモアルカンを導入して得られた化合物をチオ硫酸ナトリウムとの反応に付してBunte塩を得て、このBunte塩をアルキルチオレートと反応させることによって得ることができる。合成方法については、例えば、特開2002−20368号公報を参照することができる。ただし、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物の合成方法は、上記の方法に限定されない。また、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物を得るための精製方法としては、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法を用いることができる。得られた生成物の確認は、NMR、IR、Mass(質量分析)、元素分析等の公知の方法で行うことができる。[粒子およびその製造方法] 本発明の粒子は、本発明のアゾベンゼン誘導体の集合体からなる。ここで、集合体とは、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物が自己組織化的に会合して形成された凝集物をいう。本発明の粒子は、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物を含む有機溶媒に紫外光を照射することにより、前記アゾベンゼン誘導体化合物の集合体を形成することによって製造することができる。溶媒を選択するに当たっては、粒子形成のために使用するアゾベンゼン誘導体化合物に対して良溶媒であること、形成された粒子が長時間の光照射下でも分解せず安定であること、使用するアゾベンゼン誘導体化合物の吸収波長と溶媒の吸収波長が重ならないこと、等の点を考慮することが好ましい。そのような溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トルエン、THF、DMF等を用いることができる。 溶媒中のアゾベンゼン誘導体化合物の濃度は、適宜設定することができ、例えば、10-7〜10-3Mとすることができ、好ましくは10-6〜10-4Mとすることができる。 本発明の粒子を得るためには、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物を含む有機溶媒に紫外光を照射する。使用する紫外光は通常使用される紫外光(例えば波長320〜400nm)であればよく、例えば365nmまたは366nmの波長の紫外光を用いることができる。 アゾベンゼンは、シス体とトランス体があり、熱的に安定なものはトランス体である。トランス体に紫外光を照射すると、シス体への異性化が起こり、その後暗所に室温で放置すると、再びトランス体に変化することが知られている。本発明のアゾベンゼン誘導体化合物も、例えば数分間紫外光を照射するとトランス体からシス体への異性化が起こる。更に、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、トランス体からシス体への異性化が生じた後も紫外光照射を続けると、自己組織化的に凝集して集合体(粒子)を形成する。更に、集合体形成後、紫外光照射をやめて集合体を暗所に室温で放置すると、シス体からトランス体への異性化は起こるが、集合体(粒子)は解離せずに維持される。よって、本発明において、粒子形成のための紫外光照射時間は、トランス体からシス体への異性化が起こる時間よりも長くすることが適当であり、例えば3分〜10時間とすることができ、好ましくは6〜7時間とすることができる。 本発明の粒子は、例えば球状粒子であることができ、その粒子径は、例えば10nm〜10μmであることができる。アゾベンゼン誘導体化合物の濃度を低くすれば、形成される粒子の粒子径は小さくなる傾向があり、濃度を高くすれば、形成される粒子の粒子径は大きくなる傾向がある。本発明では、アゾベンゼン誘導体化合物の濃度を調整することにより、例えばマイクロメーターサイズからナノメーターサイズの所望の粒径を有する粒子、例えばナノメーターサイズの粒子(ナノ粒子)を得ることができる。本発明において、粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた像から求めることができる。 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、凝集前はほとんど発光しないが、凝集して集合体(粒子)を形成すると、凝集前よりはるかに高強度の蛍光を発光する。しかも、紫外光照射後、暗所にて室温で放置することにより、更に発光強度を高めることができる。 以下、本発明を実施例により更に説明する。[実施例1]アゾベンゼン誘導体化合物の合成 NaNO2(1.24 g)を水18mLに溶かし、0−5℃の4-アミノ-4'-シアノビフェニル(3 g)、HCl (6mL)と水(30 mL)の混合溶液にゆっくりと滴下し30分間攪拌した。この溶液にフェノール(1.69 g)、NaOH (0.78 g)、Na2CO3 (2.06 g)と水の混合液を加え4時間攪拌した。不溶物を濾過し、水で3回洗浄した後真空乾燥し、3.7 gの固体(1)を得た。1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ7.03 (d, 2H, Ar-H), 7.7-8.0 (m, 10H, Ar-H). K2CO3 (3.47 g)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(触媒量)、1,12-ジブロモドデカン(13.7 g)、アセトン(200 mL)の混合溶液をN2雰囲気下の60℃で30分攪拌した。この混合溶液に化合物(1, 2.5 g)のアセトン溶液をゆっくりと加え、そのまま60℃で11時間攪拌した。アセトンを除去し、水で3回洗浄した後、酢酸エチルによって再結晶し、2 gの生成物(2)を得た。1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ1.2-1.6 (m, 16H, CH2), 1.80-1.88 (m, 4H, BrCH2CH2, ArOCH2CH2), 3.40 (t, 2H, BrCH2), 4.05 (t, 2H, ArOCH2), 7.00 (d, 2H, J= 8.91 Hz, Ar-H), 7.7-8.0 (m, 10H, Ar-H). N2雰囲気下でソジウムチオサルフェートペンタハイドレート(0.65 g)を5 mLの蒸留水に溶かし、化合物(2, 1 g)のDMF溶液にゆっくりと滴下し、60℃で6時間攪拌した。その後、室温に戻し、2mLの水を加え濾過してから乾燥し、Bunte塩(3)を得た。 N2雰囲気下でドデカンチオール(0.41 g)、メタノール(2 mL), NaOH (0.088 g)と1 mLの水を1時間攪拌した後、Bunte塩のDMF溶液を加え、3時間攪拌した。水と酢酸エチルを加え攪拌し、有機層を集め、ヘキサンとクロロホルム(1:3)の混合溶媒を展開溶媒にし、カラムクロマトグラフ法で分離を行い、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物(4)を得た。アゾベンゼン誘導体化合物(4)はオレンジ色の結晶で、収量は0.25 gであった。1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, CH3), 1.2-1.6 (m, 34H, CH2), 1.66 (m, 4H, SSCH2CH2), 1.83 (m, 2H, ArOCH2CH2), 2.68 (t, 4H, SSCH2), 4.05 (t, 2H, ArOCH2), 7.01 (d, 2H, J= 8.91 Hz, Ar-H), 7.7-8.0 (m, 10H, Ar-H). FAB-MS (m/z): [M + H]+ found, 700.3 (= M+1), calcd for C43H61N3OS2, 699.4. IR (ATR): 2920, 2850 (C-H stretching), 2240 (cyano group), 1603, 1584, 1499 (benzene ring), 1253 (Ph-O stretching), 1156 (=N-Ph stretching) cm-1 上記合成方法の反応スキームを以下に示す。[実施例2](1)ナノ粒子の形成 実施例1で合成したアゾベンゼン誘導体化合物を、4×10-5Mの濃度でジクロロメタンに溶解した。この溶液に、波長365nmの紫外光を照射した。紫外光照射120分後、180分後、390分後の溶液を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。得られたSEM像を図1に示す。 図1から、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物を含む溶液に紫外光を照射することにより、集合体(ナノ粒子)が形成されることがわかる。紫外光照射時間が長くなると、形成された粒子の数は多くなった。各粒子の粒子径は10〜150nmであった。 以上の結果から、紫外光照射のみで、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物からナノ粒子が得られることがわかる。 上記(1)で得られた各溶液の1H−NMRスペクトル(溶媒:CD2Cl2)を図2に示す。NMRスペクトルにおいて、7〜8ppm付近のピークはアゾベンゼンのフェニル由来のピークである。図2(a)と図2(b)のNMRスペクトルを比較すると、7〜8ppm付近のピーク形状の変化が見られることから、トランス体からシス体への異性化が起こったことがわかる。また、図2(c)と図2(d)のNMRスペクトルにおける、7〜8ppm付近のピーク形状の変化から、暗所での室温放置により、シス体が再びトランス体に変化したことがわかる。以上の比較から、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、紫外線照射と室温放置により良好に異性化が起こり、異性化率の低下の問題がないことがわかる。 一方、1〜2ppm付近のピークは、長鎖アルキル由来のピークである。図2(b)と図2(c)のNMRスペクトルにおける、1〜2ppm付近のピーク形状の変化から、紫外光照射による本発明のアゾベンゼン誘導体化合物の凝集には、アルキル部が関与していると推定される。(2)ナノ粒子形成による発光増幅 上記と同様の方法でアゾベンゼン誘導体化合物含有ジクロロメタン溶液に紫外光照射(365nm)を390分間行った後、その溶液を暗所に室温で7日間放置した。紫外光照射開始前、紫外光照射3分後、紫外光照射390分後、室温放置7日後の溶液の吸収スペクトルを図3(a)に示す。各溶液に室温で325nmの励起光を照射して蛍光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルを図3(b)に示す。吸光度および発光強度の経時変化を図3(c)に示す。図3(b)、(c)に示すように、紫外光照射前には、アゾベンゼン誘導体化合物はほとんど蛍光を示さなかったが、紫外光照射により発光強度は徐々に増加し、特に紫外光照射120分後付近から、急激な増加が観察された。紫外光照射390分後には、紫外光照射前の1000倍もの発光強度を示した。更に室温で7日間放置することで、蛍光強度は紫外光照射前の1600倍にも増幅した。 以上の結果から、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、紫外光照射によりナノ粒子を形成すると、顕著な発光増幅を示すことがわかる。 また、図3(a)から、本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、吸収バンドのシフトの問題がないことがわかる。(3)アゾベンゼン誘導体化合物の濃度による粒子の粒子径、発光波長の変化 実施例1で合成したアゾベンゼン誘導体化合物を、各種濃度でジクロロメタンに溶解して得られた溶液に、紫外光(365nm)を390分間照射した。その後、紫外光照射後の溶液を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られたSEM像を図4に示す。図4に示すように、アゾベンゼン誘導体濃度2×10-6Mの場合には、粒子径約10〜60nmの粒子が形成され、濃度4×10-5Mの場合には、粒子径約10〜150nmの粒子が形成され、濃度2×10-4Mの場合には、最大で粒子径約3μmの粒子が形成された。更に濃度を8×10-4M、2×10-3Mと高めていくと、最大で粒子径約10μmの粒子が形成された。このように、アゾベンゼン誘導体化合物の濃度を増加させることにより、より大きな粒子径の粒子を形成することができた。 更に、上記各溶液に励起光を照射して得られた発光スペクトルを図5に示す。図5から、アゾベンゼン誘導体化合物の濃度が低いほど、発光スペクトルが低波長側にシフトすることがわかる。この性質を利用することにより、用途に応じた波長の蛍光を発する粒子を得ることができる。 本発明のアゾベンゼン誘導体化合物は、吸収バンドのシフトや異性化率の低下などの問題は無く、紫外光照射により形成された集合体(粒子)は強い蛍光を示し、また、室温で放置することで、さらに発光強度を増幅することができる。本発明のアゾベンゼン誘導体化合物および粒子は、これらの特徴を利用して、発光ダイオード(LED)、蛍光ラベル、光学センサー等への応用が期待される。実施例1で得られたSEM像を示す。紫外光照射によるNMRスペクトルの変化を示す。紫外光照射による吸収スペクトル、蛍光スペクトルの変化を示す。実施例2で得られたSEM像を示す。アゾベンゼン誘導体化合物の濃度による発光スペクトルの変化を示す。 下記式:(式中、R1はシアノ基またはニトロ基を示す。pおよびqはそれぞれ独立に3〜28の範囲の整数を示す。)で表されることを特徴とするアゾベンゼン誘導体化合物。 請求項1に記載のアゾベンゼン誘導体化合物の集合体からなることを特徴とする粒子。 粒子径が10nm〜10μmの範囲である、請求項2に記載の粒子。 請求項1に記載のアゾベンゼン誘導体化合物を含む有機溶媒に紫外光を照射することにより、前記アゾベンゼン誘導体化合物の集合体を形成することを特徴とする、請求項2または3に記載の粒子の製造方法。


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