タイトル: | 特許公報(B2)_アントシアニン吸収促進剤 |
出願番号: | 2004348457 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 47/24,A23L 1/30 |
松本 均 米倉 久美子 大原 浩樹 JP 4789453 特許公報(B2) 20110729 2004348457 20041201 アントシアニン吸収促進剤 株式会社明治 000006138 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 石井 貞次 100096183 松本 均 米倉 久美子 大原 浩樹 20111012 A61K 47/24 20060101AFI20110921BHJP A23L 1/30 20060101ALI20110921BHJP JPA61K47/24A23L1/30 Z A61K 9/00− 9/72 A61K47/00−47/48 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第01/048091(WO,A1) 特開2005−264145(JP,A) 特開2005−245419(JP,A) 特開2002−291416(JP,A) H. Matsumoto et.al.,Enhanced Absorption of Anthocyanins after Oral Administration of Phytic Acid in Rats and Humans,J. Agric. Food Chem.,2007年,Vol.55, No.6,p.2489-2496 2 2006151922 20060615 11 20071017 辰己 雅夫 本発明は、アントシアニン吸収促進剤、アントシアニン吸収促進方法およびアントシアニン吸収促進作用を有するアントシアニン含有組成物に関する。 アントシアニンは、自然界に幅広く存在し、天然系色素として食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに幅広く使用されている。以前から欧州では、主にブルーベリーのアントシアニンが医薬品として用いられてきており、最近日本国内でもアントシアニンの色素以外の利用法としてアントシアニンの機能性に注目が集まってきている。例えば、ブルーベリーのアントシアニンについて、末梢血管の病気の治療に有効な薬理学的性質が見出されている(特許文献1参照)。また、本発明者らも、カシスのアントシアニンにいくつかの有効な機能を見出し、特許出願している(特許文献2参照)。 アントシアニンに限らず生理活性物質は、経口摂取後、消化管から吸収され、血液を介して体内を循環し、その薬理学的な性質を発揮する。すなわち、体内でその薬理学的な性質を有効利用するためには、消化管から体内に取り込まれなくてはならない。したがって、効率よく薬理学的性質を発揮するためには、体内への吸収率が高いことが望ましい。 また、体内を循環したアントシアニンなどの生理活性物質は、一部が臓器などに蓄積されるが、多くは尿中へ排泄され、一部は胆汁を介して便中に排泄される。したがって、尿中の回収率は体内の吸収率と一定の関係を持っている。 ところが、アントシアニンの尿中からの回収率(体内の吸収率に対応)は非常に低い事が報告されており、尿中へ回収されるアントシアニンは、最も高い場合でも経口摂取したうちの1%に満たず、多くのアントシアニンでは0.1%以下である。類似した構造であるカテキンなどの約10%の尿中回収率と比較して、1/100以下の尿中回収率であることは、アントシアニンの有する生理活性が発揮されるためには大きな障害となっている。このようにアントシアニンは体内への吸収性が低いため、少なくとも数十から数百mgは摂取しなくてはならないにもかかわらず、これまでアントシアニンの体内への吸収率を向上させる試みはなされておらず、また報告もされていない。 フィチン酸は、ミオ−イノシトールのヘキサリン酸エステルの総称であり、通常は塩の形で植物界に広く存在し、工業的には米糠やコーンスチープリカーなどから調製される食品素材である。このフィチン酸は、金属イオンキレート作用、醗酵助成作用、pH緩衝作用などを有し、鮭、鱒、海老、蟹などの缶詰でおこるストラバイト形成の防止や貝類の黒変防止などに用いられている。さらに、果汁・ジュースの褪色防止や色戻り防止などにも用いられている(特許文献3参照)。また、最近では大腸癌の予防などにも効果のあることが判ってきている(特許文献4参照)。一方、フィチン酸を経口摂取した場合、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類の吸収を阻害する活性が知られていた。しかし、アントシアニンの吸収率改善効果に関する知見は従来知られていなかった。 一方、本発明者らは、フィチン酸を含むアントシアニン高含有組成物の安定化に関する発明を開示している(特許文献5参照)。しかしアントシアニンの吸収促進性に関する記載はなく、フィチン酸の添加量も低いものであった。また、特許文献3には赤キャベツ色素を飲料などに添加する際にルチン及び又はケルセチンとフィチン及びまたはフィチン酸を加えることによる安定化法が記載されている。これらの方法において、フィチン類の添加量は100ppm以下を推奨しており、本発明と比して極少量である。 以上のように、従来技術からはアントシアニンの吸収率を促進させるための方策は示されておらず、フィチン酸の使用はアントシアニンの安定化のために少量用いられている場合のみであった。特許第2967523号公報国際公開01/01798号パンフレット特公平5−67271号公報特許第3188897号公報国際公開01/048091号パンフレット 上記のように、アントシアニンは似たような構造の他のフラボノイド類と比較しても、吸収率は圧倒的に悪く、生体利用性は低いと考えられていた。そして、この問題を解決する方法は見出されていなかった。このような状況において、体内で有効にアントシアニンを吸収させ、十分な生理活性を発揮させる物質の開発が求められており、本発明はこのような課題を解決することを目的とするものである。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、フィチン酸がアントシアニン吸収促進効果を有することを見出して、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、フィチン酸を有効成分とするアントシアニン吸収促進剤である。 さらに本発明は、アントシアニンにフィチン酸を添加使用することを特徴とする、アントシアニン吸収促進方法である。 さらに本発明は、アントシアニンとフィチン酸を含有することを特徴とする、アントシアニン吸収促進能を有するアントシアニン含有組成物である。 上記各発明において、アントシアニンとしては、ブルーベリー、ビルベリー、カシス(ブラックカーラント)、エルダーベリー由来のものが挙げられる。また、フィチン酸の好ましい含有量は、アントシアニン100mgあたり80 mg〜2000 mgである 本発明の吸収促進剤あるいは該吸収促進剤を含むアントシアニン含有組成物を経口で摂取することにより、より多くのアントシアニンが体内に吸収されその生理活性をより効果的に発揮することができるようになった。すなわちより少量のアントシアニン摂取で効果を発揮することが出来、さらに血中における滞留時間が延長されるため、生理活性をより長期間持続させることが可能となった。 本発明で述べるアントシアニンは下記の構造式に示されるような骨格を含む化合物の総称である。アグリコンのみのものを特にアントシアニジン、配糖体として糖が結合したものを特にアントシアニン(あるいはアントシアン)と呼ぶ。また、グルコースなどの糖類が配糖体として結合しているものはアントシアニジングリコシドと呼ぶことも可能である。すなわち、本発明のアントシアニンとは、アントシアン、アントシアニジン、アントシアニジングリコシドを含むものである。[式中、R1およびR2は、同一または異なって水素原子、水酸基またはメトキシ基を表し、Glyは、グルコース、ルチノース、アラビノース、ガラクトースなどの糖類基を表す。] アントシアニン類は自然界に幅広く存在し、主に天然系色素として食品、あるいはその機能性から欧州では、医薬品、医薬部外品、化粧品などに幅広く使用されている。例えば特公昭59−53883号公報に記載されるような瘢痕形成剤としての利用、あるいは、特許第2967523号公報に記載されるようなブルーベリー由来のアントシアニンを用いた末梢血管の病気治療について価値ある薬理学的性質が見出されている。昨今日本国内においても、アントシアニンの色素以外の利用法として、アントシアニンのその他の機能が注目されている。 本発明のアントシアニンは、主に紫サツマイモ、赤キャベツ、赤ダイコン、エルダーベリー、ブドウ果汁あるいは果皮、紫トウモロコシ、赤ダイコン、シソ、赤米、黒米、黒豆、黒胡麻、カシス(ブラックカーラント)、レッドカーラント、カウベリー、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、ビルベリー、ストロベリー、ダークスィートチェリー、チェリー、ハイビスカス、ハクルベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、プラム、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、紫イモ、紫ヤマイモ、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリー、サフランなどアントシアニンを多く含む植物から抽出することにより製造することができる。本発明に使用されるアントシアニンの種類は、特に限定はしないが、上記植物原料から抽出されるシアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、ペチュニジン、マルビジン、ペラルゴニジンのグルコシド、ルチノシド、ガラクトシド、アラビノシド、ジクルコシド、サンブビオシドなどの配糖体および、これらのアシル化体などが挙げられる。本発明のアントシアニン吸収促進効果は、特にこれらのアントシアニンにおける特異性は見られなかったので、他のアントシアニジン、アントシアニンに対しても同様の効果があるものと思われる。 例えば、発明者らにより国際公開02/22847号パンフレットに開示された、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシドおよびシアニジン-3-グルコシドなどのように結晶化したアントシアニンであってもよい。これらの化合物は、非毒性であり、経口摂取で血中及び臓器中に存在することが示されるため、経口的に投与や摂取することができる。 原料としては、上記のような植物原料が望ましく、それらの生果実、乾燥果実、果実破砕物、ピューレ、生果汁、濃縮果汁などを使用することが好ましい。また、アントシアニンとは、これら原料そのもの、あるいはこれら原料を乾燥、細切、粉砕など加工した加工物、その加工物に溶媒を加え抽出した抽出物、抽出物から溶媒を除去した抽出物の溶媒除去物、抽出物乃至溶媒除去物をさらにカラムクロマトグラフィーや液液抽出で精製した分画精製物なども含むものである。食品用途に用いる場合は、上記原料を膜濃縮あるいは抽出することが好ましい。膜濃縮を行う際は、事前に圧搾濾過が必要であり、その前に濾過物の粘性を低下させるためペクチン不活性化処理することが好ましい。抽出する場合の抽出剤としては、水、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどの多価アルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール、アセトン等の溶媒、それらの混合溶媒、好ましくは水、多価アルコール、低級アルコール、それらの混合溶媒、さらに好ましくは、温水、熱水などの水が用いられる。該抽出物の形態としては、溶媒を含む抽出液、溶媒除去物などが挙げられる。しかし本発明では、アントシアニンとして果汁の膜濃縮物を用いることが原料の製造が容易であり経済的であるので好ましい。 本発明のアントシアニン含有物のアントシアニン含量は、それに含まれるアントシアニンの各成分の標品をHPLC分析し、それぞれアントシアニンの主な発色域である520nmにおける応答係数(mg/ピーク面積)を測定することにより決めることが望ましい。しかし、標品が存在しないアントシアニン成分については、既存のシアニジン3−グルコシドの応答係数で代替することが可能である。すなわち、アントシアニン含有量を測定したいサンプルをHPLC分析し、それぞれの成分のピーク面積に標品から求めた応答係数を乗じて、それぞれの成分含量を計算し、注入量との比から含有量を重量%で計算して求めている。そのため、アントシアニンの含有量はアグリコンであるアントシアニジンの量だけでなく、結合している糖の量も含むものとなっている。 本発明で用いるフィチン酸は、市販品のものを用いることができが、それらは米糠や大豆ホエー、トウモロコシ、コーンスチープリカーなどから抽出されたものが好ましい。しかし、これらに限らず、いかなる起源のものでもよい。アントシアニン量100mgあたりのフィチン酸含有量は20mg 以上が好ましいが、実施例1に示したように、飛躍的に吸収率が上昇するためには、80mg以上含有することがより好ましい。含有量が少なすぎるとその有効な効果が発揮できなくなり、含有量が多すぎるとフィチン酸の強すぎる酸味のために飲用に適さなくなる。従来、フィチン酸はアントシアニンの安定化剤として知られていたが、安定化目的でのフィチン酸の使用量は微量で十分であった。本発明のアントシアニン量100mgあたりのフィチン酸含有量が80mg以上という、大量のフィチン酸をアントシアニンに含有した剤及び組成物は知られていなかった。すなわち特公平5-67271号公報に記載してあるフィチン酸の含有量100ppm以下よりは遙かに多く、使用形態が明確に異なるものである。 本発明のアントシアニンの吸収促進剤を含有した食品形態は、飲料、タブレットキャンデー(錠菓)、ハードキャンデー、グミ、ゼリーなどのデザート類、ヨーグルト、フルーツソース、シラップ、水ようかん、カプセル状の健康食品など、形態が固体であっても液体であっても、いずれにおいても効果を奏するものである。医薬品についても、粉剤、粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップなどの液剤などいかなる形態であっても良い。 本発明者らは、国際公開01/01798号パンフレットにカシス由来のアントシアニンを多く含む食品組成物に、いくつかの有用な効能を見出し、これを食品に配合して機能性を持つ飲食品を開示している。本発明の吸収促進剤の使用は、いかなる生理機能を発現に関わる薬剤であっても良い。すなわち、それらの薬剤としては眼精疲労治療薬、視力低下予防薬、近視治療薬、血流改善薬、抗ガン薬、抗ウイルス薬、抗アレルギー、抗高コレステロール薬、降血圧薬、抗動脈硬化薬などが挙げられる。 本発明のアントシアニン吸収促進剤を含有する組成物は、上記アントシアニン吸収促進剤の有するアントシアニン吸収促進効果を生かしたものであり、この様な目的で使用されることが好ましい。本発明の組成物としては、例えば、食品、医薬品、化粧品などが例示でき、これらの中では食品に適用するのが特に好ましい。この組成物には、上記本発明のアントシアニン吸収促進剤以外に、通常、これらの組成物で使用される任意の成分を含有することができる。かかる任意の成分としては、例えば、食品や医薬品であれば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料、嬌味嬌臭剤、崩壊剤、pH調整剤、保存料、酸化安定剤、他の栄養成分、他の薬効成分、ビタミン類などの有効成分などが例示できる。 賦形剤としては特に、以下のカテゴリーのもの、即ち希釈剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤、矯味剤、酸味剤、湿潤剤、ソルビトールおよびシクロデキストリンなどの親水化剤、マンニトールなどの浸透圧剤、pH調節剤、トレハロースおよびマンニトールなどの安定化剤、吸着剤、キレート剤および封鎖剤、およびセルロースアセチルフタレートおよびポリメタクリレートを含むタイプの胃抵抗性フィルムコーティング賦形剤などが可能である。 特に、pH調整剤の中で、クエン酸、塩酸、乳酸、酒石酸を含むタイプの酸性化剤、並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、クエン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カリウム二水和物などを挙げることができる。 これらの必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより、本発明の組成物は製造することができる。かくして得られた本発明の組成物は、アントシアニンの体内への吸収を促進する作用に優れる。 以下に本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。 (実施例1)アントシアニン吸収促進剤 ブルーベリー濃縮果汁100g(Bx.65,アントシアニン0.9%(濃縮果汁100gあたりアントシアニン0.9g))に、フィチン酸50%水溶液(築野食品工業社製、食品添加物)5gを加えて、アントシアニン吸収促進剤105gを調製した。(実施例2)アントシアニン吸収促進能を有する組成物(1) アントシアニンとして、カシスポリフェノール20(明治製菓社製)を用いた。これは、カシスより膜濃縮およびエタノール抽出したアントシアニン抽出物であり、アントシアニンを24.1重量%含む粉末である。この粉末1gを20mlの蒸留水へ溶解し、フィチン酸としてそれぞれ表1に示したような量のフィチン酸50%水溶液(築野食品工業社製、食品添加物)を加えてアントシアニン吸収促進能を有する組成物(1−1)〜(1−4)を調製した。(実施例3)アントシアニン吸収促進能を有する組成物(2) アントシアニンとして、エルダーベリーアントシアニン粉末(iprona社製、rubini、アントシアニン含有率20重量%)とビルベリーアントシアニン粉末(常磐植物化学研究所社製、ビルベロン25、アントシアニン含有率25重量%)を用いた。エルダーベリーアントシアニン粉末1gを20mlの蒸留水へ溶解し、フィチン酸として50%フィチン酸溶液(築野食品工業社製、食品添加物)を0.4g加えてアントシアニン吸収促進能を有する組成物(2)を調製した。また、ビルベリーアントシアニン粉末1gを20mlの蒸留水へ溶解し、フィチン酸として50%フィチン酸溶液(築野食品工業社製、食品添加物)を0.4g加えてアントシアニン吸収促進能を有する組成物(3)を調製した。(実施例4)ラットにおけるアントシアニン吸収促進効果 本試験ではアントシアニン組成物として、実施例2のアントシアニン吸収促進能を有する組成物(1−1)〜(1−4)を用いた。生後7週齢のウィスター(Wistar)系雄性ラットを、各群6匹ずつを16時間絶食後、上記組成物(1−1)〜(1−4)を単回胃内経口投与した。試験区は実施例2の表1に示したような組成となっている。これらをラットへの投与前、投与4時間後まで、投与4〜6時間後まで、投与8〜24時間後までの尿を採取し、尿中へのアントシアニン排泄量を既報(Matsumoto et. al.,J.Agric.Food.Chem.49(3),546-1551,2001)に従って分析した。投与前の尿には、アントシアニンは検出されなかった。その結果を図1に示した。この図からフィチン酸の添加量の増加に伴い、アントシアニンの尿中排泄量が増加し、アントシアニンの吸収量が増加していることが分かる。特に、アントシアニン100mgあたり83mg以上のフィチン酸を添加することにより、吸収量は10倍以上に飛躍的に上昇していることが分かる。また、アントシアニン100mgあたりフィチン酸含有量が41mg以下の群は投与後4時間までが排泄量が最大であるのに対し、フィチン酸含有量が83mg以上の群では、投与後4〜8時間の群が排泄量が最大となっており、血中での滞留時間の増加が期待できた。(実施例5)ラットにおけるアントシアニン吸収促進効果 本試験ではアントシアニン組成物として、実施例3のアントシアニン吸収促進能を有する組成物(2)及び(3)を用いた。 試験法は実施例4と同様に生後7週齢のウィスター(Wistar)系雄性ラット各群3匹ずつを16時間絶食後、上記組成物(2)及び(3)を単回胃内経口投与して、24時間までの尿を回収し尿中へ排泄されるアントシアニン量を測定した。試験区は実施例4と同様に、体重1Kg当たり粉末1g(エルダーベリーの場合はアントシアニンとして200mg、ビルベリーの場合はアントシアニンとして250mg)となる。試験は4群設定した。すなわち、フィチン酸+エルダーベリー群(体重1Kgあたりフィチン酸200mg、アントシアニン200mg)、エルダーベリー群(体重1Kgあたり、アントシアニン200mg)、フィチン酸+ビルベリー群(体重1Kgあたりフィチン酸200mg、アントシアニン250mg)、ビルベリー群(体重1Kgあたりアントシアニン250mg)と比較した。24時間までの尿中への排泄量の合計を表2に示した。フィチン酸含有区(エルダーベリーではアントシアニン100mg当たり、フィチン酸100mg、ビルベリーでは、アントシアニン100mg当たりフィチン酸80mg)では、エルダーベリーで4倍、ビルベリーで11倍尿中への排泄量が飛躍的に増加しており、エルダーベリー、ビルベリーでも吸収促進効果があることを確認できた。(実施例6)ヒトにおけるアントシアニン吸収促進効果 実施例4と同様に、アントシアニン組成物は、アントシアニンとしてカシスポリフェノール20(明治製菓社製)を、フィチン酸はフィチン酸50%水溶液(築野食品工業社製、食品添加物)を用いた。 健康な男性6名(年齢は38.2±3.4才、体重は73.5±16.9kg)を12時間絶食させた後、被験食品を服用してもらった。被験食品は下記の2種類とし、体重Kg当たりアントシアニンとして4mg、カシスポリフェノール20として16.6mg摂取した。1)カシスポリフェノール20粉末を水に溶かして飲用した。2)カシスポリフェノール20粉末を1%フィチン酸水溶液に溶解して飲用した。 摂取前と、摂取後経時的に採血し、血中でのアントシアニンの動態を測定した。また、2時間毎に採尿し、尿中への排泄量の推移を測定した。血中、尿中へのアントシアニン排泄量を既報(Matsumoto et. al.,.J.Agric.Food.Chem.49(3),1546-1551,2001)に従って分析した。被験者6名の血液中でのアントシアニン濃度の平均値を図2に、尿中への排泄量の平均値を表3に示した。1%フィチン酸含有区では、血中濃度が平均で約3倍上昇し、血中でのアントシアニンの滞留時間が延長した。また、尿中への排泄量も平均で約5倍と飛躍的に増加した。(比較例1)クエン酸によるアントシアニンの吸収促進効果 比較例として、クエン酸を用いてアントシアニンの吸収促進効果を比較した。 実施例6と同様に、アントシアニンとしてカシスポリフェノール20(明治製菓社製)を用い、クエン酸は和光純薬社製の食品添加物を用いた。 健康な男女4名(年齢は42.3±7.8才、体重は69.1±23.6kg)を12時間絶食させた後、被験食品を服用してもらった。被験食品は下記の2種類とし、体重Kg当たりアントシアニンとして4mg、カシスポリフェノール20として16.6mg摂取した。1)カシスポリフェノール20粉末を水に溶かして飲用した。2)カシスポリフェノール20粉末をクエン酸1.8gを水に溶かし、全体を60gとしたものを飲用した。クエン酸濃度は3%となる。 摂取前と、摂取後経時的に採血し、血中でのアントシアニンの動態を測定した。また、2時間毎に採尿して、尿中への排泄量の推移を実施例と同様の方法で測定した。被験者4名の尿中への排泄量の平均値を表4に示した。実施例6に示したフィチン酸とは異なり、クエン酸含有区では尿中への排泄量が平均で約3分の1に低下し、吸収促進効果が低いことが判明した。ラットにおけるカシスアントシアニンの尿中への回収率アントシアニンの血中濃度の変化 フィチン酸を有効成分とするアントシアニン吸収促進剤。 アントシアニンが、ブルーベリー、ビルベリー、カシス(ブラックカーラント)、エルダーベリー由来のものである請求項1記載のアントシアニン吸収促進剤。