生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_相互作用測定方法
出願番号:2004338950
年次:2006
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/561,G01N 33/566


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山本 雅之 本橋 ほづみ 山本 多恵 京 基樹 JP 2006145470 公開特許公報(A) 20060608 2004338950 20041124 相互作用測定方法 東洋紡績株式会社 000003160 山本 雅之 本橋 ほづみ 山本 多恵 京 基樹 G01N 33/53 20060101AFI20060512BHJP G01N 33/543 20060101ALI20060512BHJP G01N 33/561 20060101ALI20060512BHJP G01N 33/566 20060101ALI20060512BHJP JPG01N33/53 DG01N33/543 595G01N33/561G01N33/566 13 1 OL 11 本発明は、異なる二種類の一量体の混合比率を変えて得られる二量体生体分子と、生体分子の相互作用を測定する方法に関する 多くの生体分子は、構造の安定化や機能を発揮するため、ある特定の他の物質と相互作用することがある。例えば、遺伝子発現の制御を司る蛋白質である転写因子の中でも、金属分子を要求する分子、自身とは別の蛋白質と結合して機能を発揮する分子などが存在する。 蛋白質が転写因子として、安定にDNAと相互作用するために、亜鉛分子を要求する転写因子がある。この構造は、Znフィンガー構造と呼ばれ、転写因子の代表的なDNA結合モチーフの一つである。蛋白質自身のアミノ酸配列中のシステイン残基やヒスチジン残基と亜鉛分子がキレートを形成し、DNAと相互作用することができる。 また、転写因子の中で、単独の一量体より、二量体の方が安定にDNAと結合できるため、転写因子内の蛋白質結合部位を介して二量体を形成する物質がある。ロイシンジッパー構造、ヘリックス−ターン−ヘリックス構造、ヘリックス−ループ−ヘリックス構造などが転写因子の二量体形成に関与している構造(モチーフ)として挙げられる。同種の転写因子と二量体を形成するだけでなく(ホモ二量体)、同一モチーフを有する転写因子と二量体を形成する場合がある(ヘテロ二量体)。これにより、様々な転写因子の組み合わせができ、遺伝子の発現に多様性や特異性が付与されていると考えられている(学術文献1)。 b−Zip構造は、二量体を形成し、DNAと結合するモチーフとしてDNA結合性蛋白質で良く見られる構造の一つである。この構造は、塩基性に富むDNA結合部位と二量体形成に関与するロイシンジッパーから構成されている。ロイシンジッパーは、一次構造では7アミノ酸ごとのロイシン残基の繰り返し配列がみられ、α−へリックス構造を形成したとき、ロイシン残基が同一平面上に並ぶ。二つの転写因子のb−Zip構造内にあるα−へリックスが平行に並び、ロイシン残基同士が向かい合って結合し、二量体を形成し、構造が安定化し、DNAと正確に相互作用する。ロイシンジッパー構造を有する転写因子と容易にヘテロ二量体を形成できるため、様々な外界の刺激に対する遺伝子発現の制御に、幅広く対応できる。 転写因子の機能解析は、ゲルシフト法、フットプリント法などを用いたDNA結合配列の探索を中心に進められている。近年では、蛋白質の機能解析という面から、結合解離速度によるDNAとの相互作用の解析が重要視されている(非特許文献2)。 上記方法のようなin vitroでの検討でヘテロ二量体を調整する際、一量体のそれぞれの混合比により、目的以外の二量体(ホモ二量体など)も形成される場合がある。それらが拮抗的にDNAに結合するために、ヘテロ蛋白質の動態的な機能としての相互作用の解析は困難とされてきた(非特許文献3)。Kataokaら Mol.Cell.Biol. 15(1995)2180−2190Kyoら Gene to Cell 9(2004)153−164Kataokaら Mol.Cell.Biol. 14(1994)700−712 本発明の課題は、目的とする二量体の動態的な機能としての相互作用の解析を行うこと、及び、共存する複数の二量体の競合的相互作用を解析することにある。 本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出した。1.生体分子(A)と生体分子(B)の混合によって得られる複合体と、該複合体と相互作用しうる生体分子(C)とを反応させ、該複合体と該生体分子(C)の相互作用を測定する方法であって、該複合体に含まれるホモ二量体とヘテロ二量体の存在比率を制御することを特徴とする相互作用測定方法。2.生体分子(A)と生体分子(B)の混合比率を変化させることによって、該生体分子(A)と該生体分子(B)の混合によって得られる複合体に含まれるホモ二量体とヘテロ二量体の存在比率を制御することを特徴とする1の相互作用測定方法。3.生体分子(A)と生体分子(B)の混合によって得られる複合体に、少なくとも該生体分子(A)と該生体分子(B)からなるヘテロ二量体及び/または該生体分子(A)からなるホモ二量体が含まれることを特徴とする1、2の相互作用測定方法。4.生体分子(A)と生体分子(B)からなるヘテロ二量体が、生体分子(C)と相互作用することを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法。5.生体分子(A)からなるホモ二量体が生体分子(C)と相互作用することを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法。6.生体分子(B)からなるホモ二量体が生体分子(C)と相互作用しないことを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法。7.生体分子(B)が単独でホモ二量体を形成しないことを特徴とする1〜3のいずれかの相互作用測定方法。8.生体分子(A)及び/または生体分子(B)が蛋白質であることを特徴とする1〜7のいずれかの相互作用測定方法。9.生体分子(A)及び/または生体分子(B)が転写因子であることを特徴とする1〜8のいずれかの相互作用測定方法。10.生体分子(C)が核酸分子であることを特徴とする1〜9のいずれかの相互作用測定方法。11.生体分子(C)が固体基板上に固定化されていることを特徴とする1〜10のいずれかの相互作用測定方法。 本発明により、異なる二種類の生体分子の混合比率を変えて得られるホモおよびヘテロ二量体と、生体分子の相互作用を測定することが可能である。 以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、異なる二種類の生体分子の混合比率を変えて得られる二量体と、二量体が認識しうる生体分子との相互作用を測定する方法である。 本発明において、異なる二種類の生体分子(A)と(B)は相互作用により二量体を形成することができる。一般的に生体分子の相互作用は平衡反応であり、(A)と(B)を等モルで混合したからといって、系内に存在する(A)と(B)がすべて相互作用して、(A)と(B)のヘテロ二量体が形成されるわけではない。そこで、本発明では、二つの生体分子(A)と(B)の混合比を変えることにより、ヘテロ二量体の形成される条件を変更させ、その混合によって得られる組成物と生体分子(C)の相互作用が観察される。 また、生体分子(A)、(B)はそれ自身で相互作用してホモ二量体を形成してもよく、形成しなくてもよい。例えば、生体分子(A)がそれ自身で相互作用する能力をもち、ホモダイマーを形成することができ、生体分子(B)はそれ自身で相互作用できない場合、生体分子(A)と(B)の混合物は、(A)と(B)のヘテロ二量体、(A)のホモ二量体、(A)の一量体、(B)の一量体が平衡して存在していることとなる。本発明ではそれらの混合物と生体分子(C)の相互作用を観察する。その際に、混合比を変えて相互作用を測定することにより、それぞれの物質の相互作用への寄与を見積もることができることが本発明の利点である。 生体分子(A)と(B)の混合方法は、特に限定されるものではないが、溶液中に生体分子(A)および生体分子(B)を混合する。生体分子(A)の濃度を一定にしておき、生体分子(B)の濃度を変化することで、混合比を変えることが好ましい。生体分子(A)の濃度を一定にしておくことで、ヘテロ二量体のみが形成される比率が容易にわかるためである。 ヘテロ二量体を構成しうる生体分子(A)及び(B)は、蛋白質であることが好ましい。蛋白質の複雑な高次構造をとり、蛋白質の分子間で非共有的に結合していることが多いからである。非共有結合は、水素結合、ファンデルワールス力、静電結合などが挙げられる。 生体分子(A)と(B)は転写因子であればさらに好ましい。ホモ、ヘテロ問わず二量体で機能する転写因子が多く存在するためである。転写因子が二量体を形成するためのモチーフを有していることが好ましい。そのモチーフとして、ロイシンジッパー、ヘリックス−ターン−ヘリックス構造、ヘリックス−ループ−ヘリックス構造などが挙げられる。転写因子の分子量は、1〜100kDaの範囲であると好ましく、10〜50kDaであるとさらに好ましい。この範囲以下であると、前述のモチーフが含まれない可能性があり、また、この範囲以上であると、非特異的に結合した二量体が形成される可能性があるためである。 生体分子(C)は核酸分子であることが好ましい。転写因子が相互作用することができるためである。核酸分子は、DNA、RNAだけでなく、PNA(ペプチド核酸)やLNA(Locked nucleic acid)などの人工核酸、さらには、それらの誘導体を含む。また、核酸分子はPCR法で合成される核酸分子も含まれる。核酸分子の長さは特に限定されるものではない。 生体分子(C)は固体基板上に固定化されていることが好ましい。また、基板固定化のために、生体分子(C)に、官能基や結合グループが修飾されていることが好ましい。官能基や結合グループとしてはアミノ基、チオール基、ビオチンが挙げられるが、なかでもチオール基は共有結合が可能であり、反応が特異的に進むため最も好ましい。チオール基は表面に形成したマレイミド基、エポキシ基、チオール基、ジスルフィド基と反応することができる。また、チオール基は固体金表面の(111)面に直接結合することもできる。固相は金属であることが好ましい。金属基板は表面加工が容易であり、さまざまな光学的測定法や水晶発振子の方法に使用することができるからである。また、熱安定性にも優れ、薬剤耐性も高いことも有利な点である。形態は、平面基板、ナノ粒子を含むビーズなどが挙げられるが、アレイへの応用ができる有利さから、平面基板が好ましい。 固定化する金属基板としては透明基板上に形成された金薄層が好ましい。金表面には金−硫黄結合を利用し、直接的あるいは間接的に表面へ生体分子を固定化することができる。直接的にはチオール末端の生体分子を金表面に固定化することが挙げられる。間接的には、金表面に官能基を導入した後に、核酸分子末端の官能基あるいは結合グループと直接的あるいは間接的に結合させることが可能である。金表面に官能基を導入する方法としては二官能基型アルカンを金表面に密に充填する方法が好ましい。二官能基型アルカンとしては限定されるものではないが、例えば末端にアミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、ビニル基などを有し、反対側の末端にチオール基を有するアルカンチオール、またはそれらの二量体であるジスルフィドなどが挙げられる。 二官能基型アルカンを使って表面に官能基を導入したのち、生体分子は直接あるいは間接的に表面に固定化される。間接的に、スペーサーを介して生体分子が固定化されると、固定化された核酸分子にモビリティが与えられるため特に好ましい。スペーサーとしては、ポリエチレングリコールなどの合成親水性高分子、デキストランなどの天然親水性高分子、チミンやアデニンのDNA繰り返し配列などが挙げられる。 相互作用観察の手段としては、ラベルによって検出する方法とラベルフリーで検出する方法が挙げられる。ラベルする方法としては、蛋白質にラベルし検出する方法、蛋白質をラベル化抗体で検出する方法、または二次抗体で検出する方法などが挙げられる。ラベルの方法は特に限定されるものではないが、GFPなどの蛍光蛋白質との融合蛋白質を形成する方法、放射線同位体とコンジュゲートを形成させる方法などが挙げられる。ラベルフリーな方法としては、ラベルフリーな検出手段としては、表面プラズモン共鳴(SPR)、局在プラズモン共鳴(LPR)、水晶発振子(QCM)、エリプソメトリ、二面偏波式干渉、和周波発生(SFG)、第2高調波発生(SHG)などの方法が挙げられる。そのなかでSPRは、光学系の操作によって、複数の点を同時に測定できることができるため好ましい。SPRイメージング法はチップの広い範囲にp偏光光束を照射し、その反射像をCCDカメラで撮影する方法であり、アレイフォーマットでの解析が可能であるため、さらに好ましい。複数の配列を固定化した核酸分子と蛋白質の相互作用を測定することが可能となる。 相互作用解析の際の使用される緩衝液の種類なども特に限定されるものではなく、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、PIPES緩衝液、トリス緩衝液などが使用される。また、塩濃度も特に限定されるものではないが、通常は100〜300mMのNaClが緩衝液に加えられる。緩衝液には、Tweenなどの界面活性剤や牛血清アルブミンなどのブロッキング剤などの物質が加えられてもよい。 相互作用解析において、サンプル液を常時流してもよく、止めてもよい。流す場合、流速に特に限定されるものではないが、一般的に5〜500μl/minの範囲で選択される。 本発明のもうひとつの形態は、相互作用をゲルシフト法で観察する方法である。この場合も、生体分子(A)と(B)の混合比率を変え、生体分子(C)との相互作用を観察する。(A)と(B)の混合によって得られる組成物と(C)を混合し、ゲル内を移動させて、その移動速度の違いによって、その相互作用した分子の割合を得ることができる。 以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。転写因子Nrf2とMafGの混合比を変えることにより、ホモMafGおよびヘテロNrf2/MafGの存在比を変化させ、形成された二量体とDNAとの相互作用を測定した。今回、相互作用の手法として、SPRイメージング法とゲルシフト法を用いた。(ヘテロ二量体を構成する蛋白質) 転写因子Nrf2はロイシンジッパー、DNA結合領域を単独では機能せず、MafG、MafKなどの小Maf群とヘテロ二量体を形成し、DNAと相互作用することが明らかとなっている。MafGは、Nrf2と同様にロイシンジッパー、DNA結合部位を有する。MafGは、ロイシンジッパーを介して、ホモ及びヘテロ二量体を形成することができるが、Maf群因子の結合配列であるMAREに対して、ホモ二量体では転写を抑制し、ヘテロ二量体では活性化する。今回、Nrf2及びMafGは、共にロイシンジッパー、DNA結合部位を有するNrf2CT及びMafG1−123を用いた。(DNA配列) 実存するMaf群の結合配列MARE6種類を検討した。さらに、MAREのコンセンサス配列(CEN0)、非認識配列(MARE23、thiolB(SPR法のみ))を加え、全8または9種類の配列を検討した。詳細な配列を表1に示した。(SPR測定チップの作成) SPRイメージングで用いるDNAチップは、MultiSPRinter NH2チップ(東洋紡績社製)を使用した。このチップは、NH2基が導入された500μm四方のスポット領域が8×12=96個形成されている。スポット領域でない領域(バックグラウンド領域)には、非特異吸着を抑制するポリエチレングリコールが固定化されている。 スポット領域に、PEGの両端にそれぞれマレイミド基とNHS基を有する架橋剤MAL−dPEG12−NHS(Quanta BioDesign社製)5mg/mlを2時間反応させ、表面にマレイミド基を導入した。(SPR用DNA溶液の調整) 片方のDNA鎖は、5’チオール末端からチミン15塩基をスペーサーとして介した後、それぞれの配列が入るように設計した。 ×5SSC(75mMクエン酸ナトリウム、750mM NaCl、pH7.0)/1mMTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)に5’チオール末端DNAが50μM、その相補的DNAを100μMになるように溶液を調製し、DNAをハイブリダイゼーションさせた。さらに、この反応溶液を×5SSC/1mMTCEPで希釈し、5μMの二本鎖DNA溶液を調整した。 あらかじめ、チオール基の保護基は除去してあるが、TCEPにより、チオール基の酸化が防止されている。(SPRチップへのDNAの固定化) マレイミド基表面のチップに、DNA溶液をそれぞれ自動スポッター(MultiSPRinter:東洋紡績社製)を用いてスポットし、室温で16時間反応し、DNAを表面に固定化した。(SPRチップ表面の洗浄、SPR機器への設置) 二本鎖DNAを固定化した表面を、5×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC/0.1%SDSで15分間、0.2×SSC15分間で洗浄した後、1mMチオール末端PEG1時間反応させて、未反応のマレイミド基をブロッキングした。 SPRイメージング機器(MultiSPRinter:東洋紡績社製)のフローセルにセットし、SPR用転写因子測定用緩衝液(20mM HEPES、300mM(ホモ)/250mM(ヘテロ) NaCl、4mM MgCl2、1mM EDTA、0.005%Tween20、1mMTCEP、pH7.9)をフローセル内に流した。(SPR法蛋白質溶液の調整) 転写因子蛋白質を表2に示す混合比で、前述のSPR用転写因子測定用緩衝液で混合することにより調整した。(SPR測定) SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、前述で調整したセル内に15分間100μl/minの速度で注入し、さらに転写因子を含まない緩衝液を流した。相互作用の有無は、シグナル上昇の有無で判断した。(チップ再生) 測定したチップは、結合した蛋白質をDNAから剥離することにより再生した。再生は、5×SSC/0.1%SDS溶液を5分間通液することによって行い、緩衝液でチップ表面を洗浄して、次の混合比を変えたヘテロ蛋白質の測定に用いた。(ゲルシフト法反応溶液の調整)片方のDNA鎖をγ−32P−ATPで放射線標識したDNA鎖250pg、二量体蛋白質50ngを、ゲルシフト用転写因子測定用緩衝液(20mM HEPES、20mM KCl、4mM MgCl2、1mM EDTA、0.005%Tween20、5mM ジチオスレイトール、400μg/ml poly(dI−dC)、100μg/ml 牛血清アルブミン、pH7.9)10μlで混合、反応させた。また、蛋白質の混合比は表3に示した。(ゲルシフト法電気泳動) 上記調整溶液を、4%アクリルアミドゲルで電気泳動した。泳動緩衝液はTBE(89mM Tris−ほう酸、2mM EDTA、pH8.3)を使用した。(測定結果) SPRおよびゲルシフトの結果(図1)より、ホモ二量体MafG(以下、ホモ)、ヘテロ二量体Nrf2/MafG(以下、ヘテロ)ともに相互作用する配列は、CEN0(図1−A)、hOPSIN(図1−D)、hNQO1(図1−E)およびmGSTY(図1−G)、ヘテロのみ相互作用する配列はMARE23(図1−B)およびhBgIHS4(図1−F)、ホモのみ相互作用する配列はmG2crystであることがわかった。全配列に共通して、ホモは結合解離ともに遅く、ヘテロは結合解離ともに速いという親和性の違いを示した。また、SPRの結果より、MafG:Nrf2=1:1(図1−2)では、ホモとヘテロが混在し、MafG:Nrf2=1:10(図1−3)では、ヘテロのみ存在していることが分かった。 ホモ、ヘテロ共に相互作用する配列で、同じ混合比でも、配列によって相互作用が異なった。CEN0およびhOPSINは、MafG:Nrf2=1:1の場合はホモおよびヘテロと、1:10の場合はヘテロのみと相互作用する。しかし、hNQO1は、1:1で、ホモと相互作用していない。ホモとヘテロが混在しているために、DNAが選択的に、ホモとヘテロの両方と、またはヘテロのみと相互作用していると考えられる。 生体内では、同じ配列にホモまたはヘテロが結合しても、転写活性機構や親和性が異なるため、最終的に発現する蛋白質量が異なる。前述のとおり、MafGはヘテロ二量体では転写を活性化するが、ホモ二量体では抑制している。二量体を形成する転写因子は、その存在比によってDNAとの相互作用が異なるが、今回発明した方法を用いることにより、相互作用の測定が可能である。[比較例] Hisタグで修飾されたNrf2CTとMafGを混合し、ヘテロ二量体を形成させた。過剰なMafGを除去するため、アフニティーカラムで精製し、ヘテロ二量体のみ得た。この精製したヘテロ二量体とDNAの相互作用をSPRイメージング法で測定した。ホモMafGは存在しないはずであったが、ホモMafG様のシグナルが見られた(図2参照)。この方法では、それぞれの転写因子の存在比を制御することができなかった。 本発明により、異なる二種類の生体分子の混合比率を変えて得られるホモおよびヘテロ二量体と、生体分子の相互作用を測定することが可能となる。たとえば、本発明は、転写因子のホモあるいはヘテロ二量体と核酸分子のそれぞれの相互作用の寄与を解析することを可能とする。実際の細胞内においては、さまざまな転写因子が共存する状態にあることが想像され、それらが競合して結合することで転写による遺伝子発現制御が行われていると推察される。外界からの刺激は最終的には転写因子に伝達され、増殖・分化・発生・再生、がん化、アポトーシス、恒常性の維持などといったさまざまな表現型を呈する。従って、本発明により、転写因子の機能解析、新薬探索へのアプローチといった展開が期待され、産業界に寄与することが大である。SPRイメージングとゲルシフトの結果(実施例)ヘテロ二量体の相互作用(比較例) 生体分子(A)と生体分子(B)の混合によって得られる複合体と、該複合体と相互作用しうる生体分子(C)とを反応させ、該複合体と該生体分子(C)の相互作用を測定する方法であって、該複合体に含まれるホモ二量体とヘテロ二量体の存在比率を制御することを特徴とする相互作用測定方法。 生体分子(A)と生体分子(B)の混合比率を変化させることによって、該生体分子(A)と該生体分子(B)の混合によって得られる複合体に含まれるホモ二量体とヘテロ二量体の存在比率を制御することを特徴とする請求項1に記載の相互作用測定方法。 生体分子(A)と生体分子(B)の混合によって得られる複合体に、少なくとも該生体分子(A)と該生体分子(B)からなるヘテロ二量体及び/または該生体分子(A)からなるホモ二量体が含まれることを特徴とする請求項1、2に記載の相互作用測定方法。 生体分子(A)と生体分子(B)からなるヘテロ二量体が、生体分子(C)と相互作用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(A)からなるホモ二量体が生体分子(C)と相互作用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(B)からなるホモ二量体が生体分子(C)と相互作用しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(B)が単独でホモ二量体を形成しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(A)及び/または生体分子(B)が蛋白質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(A)及び/または生体分子(B)が転写因子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(C)が核酸分子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の相互作用測定方法。 生体分子(C)が固体基板上に固定化されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の相互作用測定方法。 相互作用を観察する方法が表面プラズモン共鳴法であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の相互作用測定方法。 相互作用を観察する方法がゲルシフト法であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の相互作用測定方法。 【課題】目的とする二量体の動態的な機能としての相互作用の解析を行うこと、及び、共存する複数の二量体の競合的相互作用を解析する方法を提供する。【解決手段】生体分子(A)と生体分子(B)は相互作用によってヘテロ二量体を形成しうる関係にあり、生体分子(A)と生体分子(B)の混合比率を変化させて複合体を形成させ、ホモ二量体とヘテロ二量体の存在比率を制御することによって、生体分子(C)との相互作用を測定する。【選択図】図1配列表


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