タイトル: | 公開特許公報(A)_アディポネクチン分泌促進組成物 |
出願番号: | 2004332642 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 36/48,A23K 1/16,A23L 1/30,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 3/10,A61P 43/00 |
和根崎 智 荒木 秀雄 JP 2006143609 公開特許公報(A) 20060608 2004332642 20041117 アディポネクチン分泌促進組成物 不二製油株式会社 000236768 和根崎 智 荒木 秀雄 A61K 36/48 20060101AFI20060512BHJP A23K 1/16 20060101ALI20060512BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060512BHJP A61P 3/04 20060101ALI20060512BHJP A61P 3/06 20060101ALI20060512BHJP A61P 3/10 20060101ALI20060512BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060512BHJP JPA61K35/78 JA23K1/16 304CA23L1/30 BA61P3/04A61P3/06A61P3/10A61P43/00 105 4 1 OL 7 2B150 4B018 4C088 2B150DD31 2B150DD57 4B018MD58 4B018ME14 4C088AB59 4C088AC04 4C088BA13 4C088CA08 4C088CA13 4C088NA14 4C088ZA70 4C088ZA75 4C088ZC02 4C088ZC33 4C088ZC35本発明は大豆サポニンを有効成分とするアディポネクチン分泌促進組成物および大豆サポニンのアディポネクチン分泌促進組成物としての利用に関する。わが国の食生活は近年大きく変化しており、ファーストフードを中心とする外食産業の繁栄により肉類などの動物性食品の摂取が増加する一方で、日本食離れに伴う米類・野菜類・豆類等の植物性食品の摂取が減少している。このような背景において、糖尿病や動脈硬化疾患あるいは肥満症といった生活習慣病患者やその予備軍の増加は、国民の生活や医療財政に重大な影響を与えている。心疾患を取り巻く高脂血症、肥満、高血圧、糖尿病といった疾病はそれぞれ独立した要因に基づいて発症するのではなく、「インスリン抵抗性」、すなわち血管からの糖の吸収を促しエネルギーへ利用させるというインスリンの働きが、これらの疾病の発症の共通の要因となっていることが認識されつつある。そしてインスリン抵抗性の悪化に伴い、これらの疾病が合併して生ずる病態を「メタボリックシンドローム」と呼び、注目を集めている。アディポネクチン(adiponectin)は脂肪組織から合成、分泌されるアディポサイトカイン(adipocytokines)の一種であり、その生理作用は完全に解明されるには至っていないが、重要な役割の一つとして、PAI-1、TNF-α、レジスチンや遊離脂肪酸の分泌を調節することによってインスリン抵抗性を改善する役割を有することがわかっている(非特許文献1、2)。マウスを用いた試験で、アディポネクチンはマクロファージを主体とする粥状動脈硬化巣局所に直接作用し、マクロファージの泡沫化および粥状動脈硬化を抑制することが報告されている(非特許文献3)。アディポネクチンの血中濃度は、肥満により低下し、減量で増加し、さらに肥満度が同じでも糖尿病や動脈硬化性の疾病を併せ持つ患者で低い(非特許文献2)。脂肪蓄積した脂肪組織ではアディポネクチンの分泌が低下し、代謝異常性症候群の一因となることが示されている(非特許文献1)。このようにアディポネクチンは糖代謝や脂質代謝の調節に関与していることが挙げられ、肥満・内臓脂肪蓄積によるアディポネクチンの分泌異常は、インスリン抵抗性を悪化させメタボリックシンドロームの病態発生に密接な関係を有することが解明されつつある。松澤、大豆たん白質研究, 6,1-10, 2003.下村、医学のあゆみ, 207, 647-652, 2003.高橋、医学のあゆみ, 192,541-545, 2001.Kitagawa et al、Chem.Phrm.Bull、33、1985特開2000−14348号公報国際公開WO03/075939号公報かかる状況に鑑み、アディポネクチンの分泌をより強く促進しうる物質が解明できれば、アディポネクチンの血中濃度の低下に起因するメタボリックシンドロームの病態発生に基づく疾患を治療・予防しうる薬剤や食品の開発に可能性が開かれる。すなわち、本発明は、アディポネクチンの分泌を促進しうる物質の解明と、このアディポネクチン分泌促進物質に基づく各種疾患の治療・予防に役立つ薬剤及び食品の開発を課題とする。本発明者らは上記課題を解決すべく、種々の成分の検討を行う中で、大豆中に含まれる大豆サポニンあるいはこれを高純度化した大豆抽出物の摂取が、血中アディポネクチン濃度を強く亢進することを初めて見出した。したがって大豆サポニンをアディポネクチン分泌促進剤の有効成分として利用することが、TNFαやレジスチンの分泌を調節することにより、インスリン抵抗性を改善し、メタボリックシンドロームに基づく病態の進行の抑制に役立つ知見を得て、本発明を完成させた。すなわち、前記課題を解決する本発明は、大豆サポニンを有効成分とするアディポネクチン分泌促進組成物である。さらに、本発明は大豆サポニンのアディポネクチン分泌促進組成物としての利用である。本発明の提供する組成物は、アディポネクチンの分泌促進効果が高いため、それを利用した機能剤や飲食品を提供することができ、アディポネクチンが関与する種々のインスリン抵抗性の改善によるメタボリックシンドロームに基づく種々の病態の治療・予防に役立つ。以下、本発明について詳細に説明する。本発明のアディポネクチン分泌促進組成物は、大豆サポニンを有効成分とすることが特徴である。大豆サポニン(以下、単に「サポニン」と記載する。)は大豆原料中に含まれるサポニン類の総称であり、大豆胚軸中には2〜4重量%程度含有している。「ソヤサポゲノールA」をアグリコン骨格とし、アグリコンのC−3位とC−22位に糖鎖がエーテル結合したビスデスモシドサポニンであるグループAサポニン、「ソヤサポゲノールB」をアグリコン骨格とし、アグリコンのC−3位に糖鎖がエーテル結合したモノデスモシドサポニンであるグループBサポニンなどに分類されている。また、糖鎖の部分中がアセチル化されたサポニンも報告されている(非特許文献4)。本発明の有効成分である大豆サポニンの提供源としては、大豆サポニンの純品、あるいは大豆類から適当な溶媒で抽出し、必要により精製した、大豆サポニン含有物を用いることもできる。大豆サポニン含有物を提供源として使用する場合、大豆サポニンの純度は10重量%以上が好ましく、15〜80重量%がより好ましい。大豆サポニンの原料として用いる大豆類としては例えば丸大豆、脱皮大豆、脱皮脱胚軸大豆、大豆胚軸、脱脂大豆、分離大豆たん白、濃縮大豆たん白、豆乳、オカラ、大豆ホエー(分離大豆蛋白製造における酸沈殿処理の上清や濃縮大豆蛋白製造時における酸やアルコールによる洗浄液)等が挙げられ、特に限定されないが、効率良く大豆サポニン等の生理活性成分を得るには生理活性成分の含有率の高い大豆胚軸を使用することが好ましい。なお大豆胚軸を抽出原料とした場合、グループAサポニン/グループBサポニンの比は1.5以上である。 大豆類からのサポニンの抽出に使用される溶媒は特に限定されず、公知の方法で抽出すれば良く、好ましくは水性溶媒、より好ましくは水又はメタノール、エタノールもしくはプロパノール等のアルコール類を単独又は混合して用いれば、サポニンを高純度に抽出することができる。例えば、開示されているように、大豆胚軸を原料として、水性溶媒などにより抽出することにより、乾燥固形分中サポニンを10重量%を含有する抽出液を風味よく、安価に得ることが可能である(特許文献1)。抽出液は食品に適した状態にして、そのまま、あるいは濃縮により濃縮液とし、あるいは噴霧乾燥により乾燥粉末として加工し、大豆サポニン含有物を得ることができる。 また大豆類からの抽出液をさらに、カラムクロマトグラフィー等の樹脂処理や有機溶媒等による液液分配法等を用いて精製することにより、大豆サポニンを高純度に精製することができる。特に抽出液を合成吸着剤に吸着させ、含水アルコールでサポニンを含有する画分を溶出する方法は、簡易な方法であってサポニンをより高純度で主成分化できるため、好ましい。例えば合成吸着剤としては、ダイヤイオン(三菱化学製)やセパビーズ(三菱化学製)、アンバーライト(住友化学製)等の合成吸着剤を用いることができる。これを製造用タンクに投入するか、又はカラムに充填して抽出液を接触させる。吸着した画分を例えば30〜90容量%含水エタノールで溶出するなどして、大豆サポニンを効率良く得ることができる。このように精製した場合にはサポニンを15〜80重量%含む大豆サポニン組成物を得ることが可能となる(特許文献2)。本発明の組成物中における有効成分の含有量は、組成物の形態・量によっても異なり、適宜設定することができる。通常は1日あたりの有効成分の摂取量を摂取できるように、1日あたりの組成物の摂取量を考慮し、組成物中の含有量を当業者が設定すればよい。例えば、1日あたりの有効成分の摂取量を50mgと設定した場合、1日あたりの組成物の摂取量が100gである場合は、組成物中の有効成分の含有量を0.5重量%とすれば良い。本発明の組成物にはアディポネクチンの分泌を促進する、又はアディポネクチンと相乗的に作用しうる種々の原料を第二有効成分として併用することができる。例えば、亜鉛、マグネシウム、クロム、セレン等のミネラル類、ビタミンE、ヒスタミン、ヒスチジンやイソフラボン等の有効成分を併用することができる。本発明の組成物は薬剤、食品又は飼料をいう。薬剤の場合は、種々の投与形態の製剤とすることができる。すなわち、経口的投与の場合に、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤もしくは丸剤等の固形製剤や、溶液、エマルジョンもしくはサスペンジョンなどの液剤の形態等で投与することができる。また、非経口的投与の場合には、注射溶液や坐剤などの形態で投与されるが、簡易性の点から経口投与が望ましい。これらの製剤の調製にあたっては製剤化のために許容される添加剤、例えば賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、張度調製剤、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等を併用して製剤化することができる。本発明の組成物が食品の場合は、一般的な食品の形態であるクリーム、マーガリン、清涼飲料、乳製品、豆乳、発酵豆乳、大豆蛋白飲料、豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、ハンバーグ、ミートボール、唐揚げ、ナゲット、各種総菜、焼き菓子、シリアル、飴、ガム等の菓子類、タブレット、パン類、米飯類など、様々な食品に配合することができる。さらに、食品中における有効成分である大豆サポニンの含量は、容易に測定できるため、これを有効成分(関与する成分)として食品の包装やパンフレット等にアディポネクチン分泌促進に起因する各種効能・効果を有する旨を記載した、健康用途の食品(特定保健用食品等)にもすることができる。さらに本発明の組成物は飼料とすることも可能である。飼料の種類は特に限定されないが近年では犬、猫といったペットの肥満も深刻化しており、ペットフードのような飼料として摂取せしめることも可能である。飼料においてもアディポネクチン濃度を上昇させることにより、予防治療可能な疾病に対して有効である。得られたアディポネクチン分泌促組成物の有効摂取量は使用目的・使用対象・形態により異なるが、ヒトの場合、通常は1日あたり有効成分が10〜200mg程度を摂取できるように1回あるいは数回に分けて調整すればよい。医薬品の多くが適正量以上の摂取は安全性に問題を生じる可能性があるのに対し、本発明の有効成分は天然の植物由来の含有物を使用できることから、安全性の観点からは摂取量の上限はほとんど問題にはされない。本発明の組成物を摂取することで、血液中のアディポネクチン濃度を上昇させることにより、予防や治療などの健康効果として期待できるものは、例えば肥満症、高脂血症、II型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病)などの疾患の予防・治療、さらには過食、体重増加、脂肪肝などの改善などが挙げられる。以下、この発明の実施例を示すが、本発明がこれらによってその技術的範囲が限定されるものではない。なお、以下%は特に断りが内限り、重量%を示す。(分析方法)本発明に用いた大豆サポニンの分析方法は以下の通りである。サポニンの定量法:試料(大豆抽出物)にメタノールを加え、還流抽出を行った。得られた抽出液を乾固し塩酸メタノールにて加水分解を行った。さらに酢酸エチルにて分配後、ビストリメチルシリルトリフルオロアセドアミドにて誘導体化した。これをガスクロマトグラフィーに供し、カプリン酸コレステロールを内部標準として定量を行った。(製造例1)大豆サポニン含有物の製造大豆胚軸500gに含水率25容量%の含水エタノール2.0Lを加え、攪拌抽出を行った。抽出液をろ過により分離した後、再度含水率30容量%の含水エタノール2.0Lを加え、同様に抽出を行い、3回の抽出液を混合し、該抽出液を減圧下にて濃縮を行った。 このようにして得られた抽出物を水に溶解し、吸着樹脂ダイアイオンHP-20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV2にて負荷した。次に、含水率80容量%の含水エタノールで洗浄し、さらに含水率20容量%の含水エタノールで溶出させることでサポニン画分を得た。これを減圧下濃縮を行い、乾燥粉末化してサポニン含有物を得た。得られた大豆サポニンの純度は60%であった。(試験例)大豆サポニンが血中アディポネクチン濃度に及ぼす影響について、動物実験により調査した。モデル動物は4週齢のSD系雄ラット(日本チャールズリバー(株)販)を12匹を使用した。1週間の予備飼育後、群間の平均体重がほぼ同等になるようにコントロール群(6匹)と大豆サポニン群(6匹)に群分けを行った。食事飼料はCRF−1(日本チャールズリバー製)の自由摂取とし、大豆サポニン群の飼料は製造例1で得られた大豆サポニン含有物(大豆サポニン含量60%)を0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)に混ぜ、大豆サポニンとして60mg/体重kg/日を60日間経口投与した。なおコントロール群は0.5%CMCとした。(表1)────────────────────────── 群名 動物数 投与量(mg/体重kg/日)──────────────────────────コントロール群 6 −大豆サポニン群 6 100──────────────────────────60日後に腹大動脈から採血を行った。常法に従って血清を調製し血液中のアディポネクチン量をELISA法にて測定した。結果を図1に示したように、大豆サポニンの添加によって血中アディポネクチン濃度の亢進が認められた。以上の結果より大豆サポニンがアディポネクチンの分泌促進作用を有していることが示された。大豆サポニン摂取による血中アディポネクチン濃度に及ぼす影響を比較したグラフである。大豆サポニンを有効成分とするアディポネクチン分泌促進組成物。組成物が食品または薬剤、飼料である請求項1記載のアディポネクチン分泌促進組成物。大豆サポニンのアディポネクチン分泌促進組成物としての利用。組成物がアディポネクチン分泌促進効果に基づく健康表示を付した食品である請求項1記載の組成物。 【課題】アディポネクチンの分泌を促進しうる物質の解明と、このアディポネクチン分泌促進物質に基づく各種疾患の治療・予防に役立つ薬剤及び食品の開発を課題とする。【解決手段】大豆中に含まれる大豆サポニンをアディポネクチン分泌促進剤及び食品の有効成分として利用する。【選択図】図1