タイトル: | 公開特許公報(A)_含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法 |
出願番号: | 2004330195 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 315/04,C07C 317/18 |
杉山 明平 市原 一義 篠木 紀之 萬谷 聡哉 近藤 昌宏 JP 2006137725 公開特許公報(A) 20060601 2004330195 20041115 含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法 ダイキン工業株式会社 000002853 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 斎藤 健治 100099988 杉山 明平 市原 一義 篠木 紀之 萬谷 聡哉 近藤 昌宏 C07C 315/04 20060101AFI20060428BHJP C07C 317/18 20060101ALI20060428BHJP JPC07C315/04C07C317/18 3 OL 7 4H006 4H006AA02 4H006AC30 4H006BB21 4H006BC10 4H006BE01 4H006BE61 4H006TA02 4H006TB36 本発明は、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法に関する。 化学式CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、イオン交換膜材料などの工業原料等として有用な化合物である。 該含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテル等のスルホニルビニルエーテルの製造方法としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをFCOCF2SO2Fに付加させた後、得られた酸フロリド誘導体を熱分解する方法が知られている(下記特許文献1参照)。 しかしながら、この方法では、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを2分子以上付加したものからは、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)nCF2CF2SO2Fで表されるスルホビニルエーテルを得ることが可能であるが、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを1分子付加したものからは、下記式で表される環化体が主生成物として生じ、化学式CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルをほとんど得ることができない。 また、FCOCF(CF3)OCF2CF2SO2Fを原料として用い、その環化体を形成した後、CH3ONaを用いて開環させてCF2=CFOCF2CF2SO3Naとし、その後、末端のSO3Na基を塩素化してCF2=CFOCF2CF2SO2Clとし、更に、溶媒としてスルホランを用い、フッ素化剤としてNaFを用いてフッ素化してSO2F基に変換する方法も知られている(下記特許文献2参照)。 しかしながら、この方法では、CF2=CFOCF2CF2SO2Clの転化率は70%程度、フッ化物の選択率は85%程度であり、充分な収率で目的とするフッ化物を得ることができない。 また、塩素化物の転化率を上げるために上記したフッ素化反応を還流下で反応を行う場合には、生成物が徐々に分解するので、収率良くフッ化物を合成するためには生成したフッ化物をすぐに抜き出すことが必要であり、反応のコントロールが非常に煩雑となる。更に、この方法では、CF2=CFOCF2CF2SO2Clに対して約5倍当量のNaFを用いることが必要であり、産廃量が非常に多くなるという問題もあり、工業的実施は困難である。英国特許第1.034,197号米国特許第3,560,568号 本発明は、上記した現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを工業的に有利な方法で、安価に、しかも簡便に収率良く製造できる方法を提供することである。 本発明者は、上記した問題点に鑑みて鋭意研究を重ねてきた。その結果、CF2=CFOCF2CF2SO2Clを出発原料とする場合に、フッ素化剤としてKF・(HF)nを用い、極性有機溶媒中で70℃程度以下の低温でフッ素化剤と反応させるという非常に限定された条件下でフッ素化反応を行うことによって、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを高収率で得ることが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、下記の含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法を提供するものである。1. 化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルと、化学式:KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表されるフッ素化剤とを、極性有機溶媒中で、70℃以下の温度で反応させることを特徴とする、化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法。2. 反応温度が20〜65℃である上記項1に記載の方法。3. 極性有機溶媒が、スルホラン又はアジポニトリルである上記項1又は2に記載の方法。 本発明の含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法は、公知物質であるCF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルを原料として用い、これをフッ素化剤と反応させて、CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルとする方法である。 原料として用いる化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルは、例えば米国特許第3,560,568号公報に記載の方法により、公知物質であるFCOCF(CF3)OCF2CF2SO2Fを原料として用い、その環化体を形成した後、CH3ONaを用いて開環させてCF2=CFOCF2CF2SO3Naとし、その後、末端のSO3Na基を塩素化することによって得ることができる。この方法で得られる含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルは、単離、精製したものを使用してもよく、或いは、上記反応で発生させた粗反応混合物をそのまま使用してもよい。 本発明の製造方法では、溶媒として極性有機溶媒を用いることが必要である。本発明で使用できる極性有機溶媒については、特に限定的ではないが、その具体例として、スルホラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アジポニトリル、ヘキサメチルホスホロアミド(HMPA)、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を挙げることができる。 この様な極性有機溶媒中で、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルをフッ素化剤と反応させることによって、高い転化率で、選択性良く目的とする含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを得ることができる。また、反応容器の材質に関係なく高収率で目的物を得ることができるので、任意の反応容器を使用することができる。 上記した極性有機溶媒の内で、好ましい溶媒としては、スルホラン、アジポニトリル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、DMF、DMSO等を例示できる。 特に好ましい極性有機溶媒は、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルと沸点差が少なく、2相分離するスルホラン、アジポニトリル等であり、特に、スルホランが好ましい。これらの溶媒を用いる場合には、目的物である含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルと二相分離するので、分液等の方法で容易に目的物を得ることができる。 極性有機溶媒の使用量については、特に限定的ではなく、フッ素化剤を均一に溶解乃至分散できる量であればよい。通常、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル100重量部に対して、10〜500重量部程度とすればよい。 本発明の製造方法では、フッ素化剤としては、化学式:KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表される化合物を用いることが必要である。この様な特定のフッ素化剤を用いることによって、非常に高い収率で目的とする含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを得ることができる。これに対して、NaFをフッ素化剤とする場合には、CF2=CFOCF2CF2SO2Clの転化率が低く、フッ化物の選択率も満足のいくものとはならない。 特に、フッ素化剤としては、フッ素化能が高く、容器に対する腐食性が低い点等からKFが好ましい。 フッ素化剤の使用量は、通常、含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテル1モルに対して0.5〜10モル程度とすれば良く、1〜5モル程度とすることが好ましい。 本発明の製造方法では、化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルと化学式:KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表されるフッ素化剤とを、極性有機溶媒中で70℃程度以下の温度で反応させることが必要である。この様な非常に限定された条件下で反応を行うことによって、目的とする含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを高収率で得ることが可能となる。これに対して、70℃を上回る温度で反応を行う場合には、環化体が多量に生成して、含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの収率が非常に低くなる。 反応温度の下限については特に限定はなく、使用する溶媒の融点を上回る温度とすればよく、通常、−20〜70℃程度の温度範囲とすればよく、20〜65℃程度の温度範囲とすることが好ましい。 反応圧力については、減圧、大気圧、加圧のいずれでもよいが、大気圧とすることが好ましい。 反応時間は、通常0.5〜48時間程度、好ましくは1〜24時間程度とすればよい。 本発明で得られる含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、例えば、蒸留、分液等の方法で回収することができる。蒸留により回収する場合は、副生成物を生成させないために70℃程度以下の温度で減圧蒸留により回収することが好ましい。分液により回収する場合は、水でクエンチした後に回収することも出来るし、極性の大きなスルホラン、アジポニトリル等の溶媒中で反応を行った場合は、二相分離するので、そのまま含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを分液にて回収することができる。 以上の方法によって、化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを収率良く得ることができる。 得られた粗化合物は、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製できる。 この様にして得られる含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、燃料電池電解質ポリマー用のモノマー成分等として有用な物質である。 本発明方法によれば、特定のフッ素化剤を用いて極性有機溶媒中で70℃程度以下の低温で反応を行うことによって、副生成物の発生を抑えて、目的とする含フッ素フルオロスルホニルエーテルを高収率で製造することができる。 このため、本発明の方法によれば、煩雑な操作を要することなく、工業的に有利な方法によって、高収率で目的とする含フッ素フルオロスルホニルエーテルを得ることができる。 以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。 実施例1 300mlのSUS316オートクレーブに、97.8mass%のCF2=CFOCF2CF2SO2Clを60.0g(197.7mmol)、KFを17.7g(305.2mmol)、及びスルホランを66.4gを仕込み、反応温度を60℃まで昇温し、60℃到達時点から3時間、200rpmで攪拌して、60℃で反応させた。 反応終了後、オートクレーブ出口側にドライアイス/アセトントラップを二個連結し、ドライアイス/アセトンの出口側に、圧力一定保持装置及びポンプを取り付けた。 その後、系内ガスを大気圧までブローし、240mmHgまで減圧した。ヒーター加熱温度を70℃に設定し、加熱抜き出しを行い、抜き出した液についてはNMR測定を行なった。 内溶液を抜き出した後、オートクレーブ内に100ml/50ml=H2O/CCl4を仕込み、1時間攪拌を行なった後、分液して、上層と下層のNMR分析を行なった。 分析の結果、CF2=CFOCF2CF2SO2Clの転化率は99.6%、CF2=CFOCF2CF2SO2Fの収率は91.5%であった。 実施例2 KFを2.95g(50.9mmol)とアセトニトリルを50ml入れた容量100mlの4つ口フラスコに、97.8mass%のCF2=CFOCF2CF2SO2Clを10g(33.0mmol)入れた滴下ロートを取り付けた。 室温にて、反応器内温が35℃を超えないようにCF2=CFOCF2CF2SO2Clをフラスコに滴下した。仕込み終了後、約1日攪拌して、32〜34℃で反応させた。反応後、水でクエンチし、分液して下層を抜き出し、その液について19FNMR分析を行なったところ、CF2=CFOCF2CF2SO2Clの転化率は99.8%、CF2=CFOCF2CF2SO2Fの収率は92.7%であった。 比較例1 容量100mlの4つ口フラスコに、NaFを21.3g(507.1mmol)と、溶媒としてスルホランを30.0g仕込んだ。その後、リービッヒ冷却管を取り付け、生成物を抜き出す装置を組んだ。生成物のトラップはドライアイス/アセトン冷却で行なった。 上記したフラスコに、CF2=CFOCF2CF2SO2Clを52.7g(177.7mmol)仕込み、73℃で加熱反応させた。流出した生成物の分析を19F-NMRを用いて行なったところ、CF2=CFOCF2CF2SO2Cl転化率は68.8%、CF2=CFOCF2CF2SO2Fの収率は51.4%であった。 化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルと、化学式:KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表されるフッ素化剤とを、極性有機溶媒中で、70℃以下の温度で反応させることを特徴とする、化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法。反応温度が20〜65℃である請求項1に記載の方法。極性有機溶媒が、スルホラン又はアジポニトリルである請求項1又は2に記載の方法。 【課題】含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルを工業的に有利な方法で、安価に、しかも簡便に収率良く製造できる方法を提供する。【解決手段】化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Clで表される含フッ素クロロスルホニルアルキルビニルエーテルと、化学式:KF・(HF)n(式中、nは0〜5である。)で表されるフッ素化剤とを、極性有機溶媒中で、70℃以下の温度で反応させることを特徴とする、化学式:CF2=CFOCF2CF2SO2Fで表される含フッ素フルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法。【選択図】なし