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タイトル:公開特許公報(A)_細胞内小核の検出方法
出願番号:2004288924
年次:2006
IPC分類:C12N 15/00,C12Q 1/02,C12Q 1/68,G01N 21/78


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鈴木 浩文 宮脇 敦史 JP 2006101705 公開特許公報(A) 20060420 2004288924 20040930 細胞内小核の検出方法 オリンパス株式会社 000000376 独立行政法人理化学研究所 503359821 鈴江 武彦 100058479 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 蔵田 昌俊 100108855 峰 隆司 100075672 福原 淑弘 100109830 村松 貞男 100084618 橋本 良郎 100092196 鈴木 浩文 宮脇 敦史 C12N 15/00 20060101AFI20060324BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20060324BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20060324BHJP G01N 21/78 20060101ALI20060324BHJP JPC12N15/00C12Q1/02C12Q1/68 ZG01N21/78 C 3 OL 9 2G054 4B024 4B063 2G054AA08 2G054EA03 2G054GA04 4B024AA11 4B024AA20 4B024BA80 4B024CA02 4B024CA07 4B024DA02 4B024GA11 4B024HA11 4B024HA20 4B063QA01 4B063QA05 4B063QQ08 4B063QQ79 4B063QR77 4B063QR80 4B063QS36 4B063QS39 4B063QX02 本発明は、細胞内の小核を検出する方法に関する。 医薬品、化学物質などの安全性評価において、発がん性の同定はマウスなどを用いた長期の動物実験が基本であるが、こうした実験動物を用いた安全性試験は多大な時間とコストがかかるため、細菌を用いる復帰突然変異試験やほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験などの変異原性試験が実施されている。 細菌を用いる復帰突然変異試験は、遺伝子レベルで生じた突然変異を検出し、陽性予測率が比較的高いという特徴を有する。したがって、この試験の結果が陽性の場合は、発がん物質である可能性が高いと考えられる。 しかし、この試験では検出されない発がん物質も多く存在し、遺伝子の突然変異とともに腫瘍の発生・進展に深く関連しているゲノムの損傷を検出するほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験がその補完試験として組み合わされて、現在、各試験機関で実施されている。 染色体異常試験は染色体の構造的異常や数的異常の誘発を指標とし、ベンゼン、ジエチルスチルベストロールなど復帰突然変異試験によっては陰性と判断されてきた発がん物質を検出してきた経緯がある。 しかし、染色体分析、染色体異常試験には高度な熟練と時間が要求されるため、迅速性に難点があり、また、数的異常は染色体の基本数が整数倍で増加する倍数性の検出に限定されるため、ヒトの遺伝性疾患につながる染色体数が1〜数本増減する異数性を検出することができないという限界がある。 そこで、染色体異常誘発物質を迅速に検出することを目的に、染色体異常試験の代替としてin vitro小核試験のバリデーションが国内外で行われるようになっている。 小核は、細胞分裂を経由して娘細胞の細胞質に取り残された主核(大核とも称される)の直径の1/3未満のサイズを示す小さな核で、染色体の構造異常だけでなく、異数性の成因となる細胞分裂阻害による染色体不分離にも起因して形成されると考えられている。細胞内の小核の観察は染色体分析に比べるとはるかに容易であるため、in vitro小核試験は染色体異常試験よりもルーチン試験に適していると考えられる。 但し、小核試験は従来、マウスなどの骨髄赤血球を用いたin vivo試験として標準化されており、染色体異常試験の代替としての試験プロトコールが確立されていないという問題点が残っている。 労働省は微生物を用いる変異原性試験を補完し化学物質の発がん性スクリーニングの精度向上を図る目的で、平成元年から「生体外小核試験の精度管理手法に関する調査」として5施設に委託し、チャイニーズハムスター肺由来細胞株(CHL/IU )細胞を用いるin vitro 小核試験の検討が行われてきた。その中でin vitro 小核試験の有効性が検討されるとともに、プロトコールの標準化が進められ「ほ乳類培養細胞を用いる小核試験の基準(第2次案)」が作成されている。 その間に実施された66物質に関するin vitro 小核試験の結果は、in vitro 染色体異常試験の結果と88.7%の高い一致率を示し、代替法として有用であることを示唆している(非特許文献1)。 このように近年、小核試験は、細菌を用いる復帰突然変異試験、より感度の高いほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験に次ぐ3つ目の変異原性試験を in vivo で行う、という意義に加えて、より多くの化学物質を評価し、スループット、定量性に富んだ汎用性の高い安全性試験として重要性が増している。 現在、日本国内における変異原性試験は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づいて、「げっ歯類を用いる小核試験」と、上記の「培養細胞を用いたin vitro 小核試験」が実施されている。 例えば、「げっ歯類を用いる小核試験」についての技術内容は以下の通りである。(1)げっ歯類を用いる小核試験 ○小核試験の目的と適用範囲 比較的簡便な短期間の試験により被験物質の遺伝毒性を検出し、それに基づくがん原性及び次世代への遺伝的影響について予測することを目的とする。 変異原性試験には種々の方法があるが、このうち遺伝子突然変異誘発性を指標とする試験として、「細菌を用いる復帰突然変異試験」、及び染色体異常誘発性を指標とする試験として、「ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験」を行い、両者いずれかで陽性の結果が得られた場合には、「げっ歯類を用いる小核試験」を行うこととされている。○動物及び観察細胞 若い成熟げっ歯類を用い、骨髄又は末梢血の幼若赤血球を観察対象とする。一般的にはマウス又はラットが用いられるが、ラットについては、骨髄を用いた場合に肥満細胞の顆粒による疑似小核の出現、末梢血を用いた場合に脾臓で小核を持つ赤血球が除去されることに注意し、より適切な観察方法を用いる。 ○動物の性及び数 1群、性あたり5匹以上とする。 但し、毒性に明らかな性差が見られない場合には、片性のみ(5匹以上)の使用とする。○被験物質の調製 被験物質が固体の場合には適切な溶媒に溶解又は媒体に懸濁させ、液体の場合には直接投与するか又は適切な溶媒で希釈して調製する。被験物質が気体の場合には清浄な空気等を用いて希釈する。調製後の安定性が判明している場合には、安定な期間内に使用し、不明な場合には用時に調製する。 ○対照群 陰性対照としては溶媒又は媒体を、陽性対照としては適切な既知小核誘発物質を、それぞれ設定する。○投与経路 強制経口投与又は腹腔内投与を原則とする。 但し、特定の暴露経路(吸入暴露等)が想定される等、科学的な理由がある場合にはこの限りでない。○投与回数 単回又は反復投与とする。 ○用量段階 最高用量は、幼若赤血球の減少等、骨髄で細胞毒性が認められる用量、何らかの毒性兆候が認められる、若しくはそれ以上で致死が予想される用量又は技術的に投与可能な上限の用量とする。 また、毒性兆候が現れない場合の最高用量は、単回又は 14 日以内の反復投与については 2,000 mg/kg/日、それを超える長期反復投与については 1,000 mg/kg/日とする。 なお、被験物質が気体の場合は、安全に暴露できる濃度を最高用量とする。 適切な間隔(公比2を原則とするが、公比√10以下であればよい。)で3段階以上の用量を設定する。 ○標本作製時期 ・骨髄を用いる場合 単回投与では、投与後24〜48時間の間に適切な間隔をおいて最低2回の標本作製時期を設定し、動物を屠殺、骨髄塗沫標本を作製する。また、反復投与を行った場合には、最終投与後18〜24時間の間に1回、標本作製を行う。 ・末梢血を用いる場合 単回投与では、投与後36〜72時間の間に適切な間隔をおいて最低2回の採血時期を設定し、標本を作製する。また、反復投与を行った場合には、最終投与後24〜48時間の間に1回、標本作製を行う。 ○観察 観察前に、陰性対照及び陽性対照を含め、すべてのスライド標本をコード化して、処理条件がわからない状況で観察を行う。 個体当たり 2,000 個以上の幼若赤血球を観察して、小核を有する細胞の出現頻度を求める。 また、骨髄細胞の増殖抑制の指標として、全赤血球に対する幼若赤血球の出現頻度を、個体当たり、骨髄を用いた場合には 200 個以上、末梢血を用いた場合には 1,000 個以上の赤血球を観察することにより求める。○結果の表示 個体ごとに、観察した幼若赤血球に対する小核を有する細胞の出現頻度及び全赤血球に対する幼若赤血球の出現頻度を、表形式にて表示するとともに、群ごとの平均値についても表示する。○結果の判定 被験物質が充分な高用量まで適切に投与され、かつ陰性及び陽性対照群で期待どおりの結果が得られていることを前提とし、陰性対照群の背景データの利用を含め、適切な統計処理を用いることにより結果の判定を行う。なお、両性を用いた場合の結果に明確な性差が認められなければ、両性のデータをまとめて統計処理を行ってもよい。 明確に陰性又は陽性と判断できない場合には、統計的な有意性のみが判断基準ではないので、実験条件を考慮して再試験を実施し、最終的な判断をすることが望ましい。○結果の評価 いずれかの in vitro 試験で陽性結果が認められ、かつ本試験で陰性結果となった被験物質については、生体内運命に関する入手可能な知見等を利用して、判定結果を考察する。 また、「培養細胞を用いたin vitro 小核試験」についての技術内容は以下の通りである。(2)培養細胞を用いたin vitro 小核試験 ○標本の調製 ・対数増殖期(培養3〜5日目)にある細胞を使用し、培養容器中の培養液をアスピレーターで取り除く。 ・培養容器に0.25%のトリプシン液を少量加え、細胞表面を軽く洗い、液を取り除く。 ・新たにトリプシン液を加えて37℃で5分間前後、置いた後、細胞が剥がれてきたら、ピペッティングによって細胞を単離する。 ・新しい培養液(0.25%トリプシン液の1〜2倍量)の入った遠心管を用意し、前項で単離した細胞をうつして1000rpmで5分間、遠心する。 ・アスピレ−ターで上清を除去し、新しい培養液を加えて適当な密度の細胞浮遊液(30〜50×104個/mlを作製する。 ・血球計算板にて細胞数をカウントする。 ・1×104個/mlの細胞密度溶液を調製し、60mmシャーレに5ml播種する。・37℃、5%CO2インキュベーターで培養する。 ・培養終了後、培養液を遠心管に移し、直ちにプレートに0.25%トリプシン溶液2mlを加え、数分間放置した後、ピペッティングにより細胞を剥離し、対応する遠心管に移す。 ・遠心(1000rpm、5分間)した後、上清を捨て、0.075M、KCl溶液を3〜5ml加え室温で10分間、静置する。(低張処理) ・軽く撹拌し、直前に調製した0.5mlの冷却固定液(冷却メタノール:酢酸=3:1)を加えて半固定する。 ・直ちに遠心(1000rpm、5分間)して上清を捨て、新しい固定液を5ml加えて再び遠心する。同じ操作を3回繰り返す。 ・最後に固定液を1%の酢酸を含むメタノールに置き換えて遠心する。 ・前項の固定液で適当な濃度(軽く濁る程度)の細胞浮遊液を作製し、清潔なスライドグラス上に一滴落とし、空気乾燥する。この際、倒立顕微鏡下で細胞密度などをチェックする。スライド作成枚数は通常、2枚とし、細胞の状態により増減する。 ・スライド標本上にアクリジンオレンジ溶液(40μg/ml、PBSで溶解)を滴下して、直ちにカバーグラスを載せる。その後、余分な色素液をろ紙で除去して、蛍光顕微鏡を用いて観察する。 ○観察・アクリジンオレンジ染色:B励起照明系を備えた蛍光顕微鏡を用いて200倍で観察する。ギムザ染色を行った標本は、400倍で観察する。 細胞質が良好に保存されており、かつ主核の形状が不整でない細胞のみを対象とする。 各濃度あたり、2000個の細胞を観察し、小核を持つ細胞の出現頻度を求める。 小核の分類は以下に従う。 MN-1:主核の1/10以下の小核を含む単核細胞 MN-2:主核の1/10〜1/3の小核を含む単核細胞 MN-3:主核の1/3〜1/2の小核を含む単核細胞 Mu-MN:複数の小核をともなった単核細胞 MN-T:小核をともなった単核細胞の合計(上記4項目の合計),もっとも重視される項目 Mu-M:多核細胞(障害を強く受けている細胞を含む) (Mu+MN:小核をともなった多核細胞,今回はMu-Mに含めた) MP:分裂期中期細胞 total count:カウントした細胞の総計(今回は2000を目処に計測) ・イメージングサイトメーターにおける自動計測においては、細胞質と核を異なる蛍光(例えば前者をFITC、後者をPI)で染色し、細胞質領域中の小核を上記と同様に算定することが行われている。・アクチンフィラメントの端に結合してアクチン単量体からフィラメントが形成される重合反応を阻害する働きのあるサイトカラシンBを、細胞分裂を開始した直後の被験細胞に加えて、検出時に出現頻度を算定する母集団を2核細胞のみに限定することにより、小核が必ず細胞分裂を経由して生じたものであることを確実にする手法も主に欧米で多く用いられている。マツシマ、外(Matsushima,T.et al.),”Validation study of the in vitro micronucleus test in a Chinese hamster lung cell line (CHL/IU).”,ムタジェネシス(Mutagenesis),1999年,第14巻,p.569- 580 上記の従来技術では、げっ歯類を用いた小核試験、培養細胞を用いたin vitro 小核試験の何れにおいても、以下の課題がある。 まず、第1の課題としては、現在、実施されている染色方法について、手法が煩雑でしかも試験者による格差もあるため、各試験機関間の標準化が困難である。且つ、自動計測を想定した際、現法の染色方法によっては核領域と細胞質領域との判別が容易でないなどの理由により、定量性、再現性に課題がある。 また、第2の課題としては、図1に示すように、細胞質内の大核領域周辺の小核を検出しているので、観察/計測方向において大核の蛍光と重ならない小核(図1の小核のうち白色丸)は検出されるが、大核の上部、もしくは下部に存在する小核、大核と重なる領域に存在する小核(図1の小核のうち黒丸)は検出されない。 細胞全体の観察領域に占める大核は、哺乳類細胞では、1/3〜1/2にも達すると考えられ、このことはつまり、従来法によっては細胞全体の小核数を正確に計測していないことになる。 また、第3の課題としては、サイトカラシンBのような被験物質とは異なる化学物質を試験系に加えることは、小核の出現頻度に全く影響がないとは言えず、被験物質とサイトカラシンBとの相互作用の有無も考慮に入れると、被験物質そのものの毒性、変異原性を検出、定量する上で、感度の低下に繋がる。 上記の課題を解決するために、本発明では以下の小核検出方法を提供する。 (1) 単一もしくは複数の核関連蛋白をコードする遺伝子と蛍光蛋白をコードする遺伝子を融合し培養細胞に導入して細胞内に発現させた母細胞を生成し、被検物質の毒性もしくは突然変異原性試験のための処理を施し、小核領域が限定的に蛍光を発するような限定的励起を行い、核関連蛋白成分に応じた蛍光量を定量的に測定することにより、測定対象の細胞の固定を行うことなく生細胞中における検出を可能としたことを特徴とする細胞内小核の検出方法。 (2) (1)に記載の方法において、上記の核関連蛋白が、核膜に特異的な蛋白であることを特徴とする細胞内小核の検出方法。 (3) (1)に記載の方法において、上記の融合蛋白発現母細胞の大核の領域に絞って光照射を行うことにより、大核領域のみの蛍光を減衰させることにより、細胞内の大核を除いた小核のみに由来する蛍光を検出することを特徴とする細胞内小核の検出方法。 本発明によれば、従来法の欠点を克服し、簡易高速に、高い定量性、再現性、正確性を有した細胞内小核の検出が可能となる。また、将来の創薬市場を鑑みて、より多くの被検化合物への試験が可能で、標準化にも優れることが期待できる。 以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明を限定するものではない。 この実施形態においては、まず、チャイニーズハムスター肺(CHL)などの哺乳類培養細胞に予め、核関連蛋白と蛍光蛋白を融合した遺伝子を導入し、安定に細胞内に発現する細胞株を樹立する。この細胞株を母細胞に用いて、従来技術と同様に小核試験を行う。化学物質との反応、固定標本の作成後、そのまま導入した蛍光蛋白に応じた励起を行い、核関連領域を計測、従来法と同様に計数を行う。 この場合、従来法のような染色を必要とせず、散乱光による細胞形態もしくはFITCなどの簡易な染色から細胞領域を検出し、その領域における小核計測を行うことが可能となる。 ここで、上述した化学物質との反応後、固定標本を作成せず、マルチウェルプレートなどの培養容器中のまま、小核の計測、算定を行う。この場合、従来のエンドポイントを測定点とした試験とは異なり、化学物質との反応中、どの時点で小核が生じたかの経時的な計測が可能であり、サイトカラシンBなどの付加的な化合物を用いることなく、確実に、細胞分裂を経て生じた小核を算定することが可能となる。 また、上述した蛍光蛋白に応じた励起は、図2に示すような方法で実施する。すなわち、本発明で使用する蛍光蛋白は、可視光などの一定の光照射により、その蛍光を減衰するもしくは、その蛍光色を変化するなどの性質を有するものである。この場合、計測時に、融合蛋白発現母細胞の大核の領域に絞って光照射を行う(図2A)ことにより、大核領域のみの蛍光を減衰させる(図2B)、もしくは蛍光色を変化させることが出来、従来法では大核に隠れて検出し得なかった小核が検出可能となる(図2C)。このため、従来法によるよりも、全細胞領域に生じた小核を全て算定することが可能となり、より正確な化学物質による毒性、変異原性などを定量する事が可能となる。 また、上述した核関連蛋白として核膜成分を指標として母細胞を樹立して、従来法と同様に小核試験を行うのが好ましい。この場合、通常の核酸成分などを指標として検出した核領域よりもムラなく且つ、核の面積に比例した蛍光量として検出出来るため、より再現性、定量性の高い小核計測、算定が可能となる。 以上の実施形態によれば、本発明は以下のような効果を奏するといえる。 (1)従来の小核試験においては、ギムザ染色あるいはアクリジンオレンジ、被検物質との反応後、新たな蛍光染色を必要としたが、本発明によってはあらかじめ蛍光蛋白を導入して核関連領域が蛍光を発することが出来るため、新たな染色工程を必要としない。よって、細胞標本のような固定化処理を行うことなく、簡易で高速に細胞内小核を検出可能となる。 (2)従来法では計測方向に沿って大核領域上下に存在する小核は、大核領域に隠れて検出することが不可能であったが、本発明によれば、大核領域のみの蛍光を減じるまたは蛍光色を変化させることが可能であるため、細胞内全領域に存在する小核を検出可能である。これにより、定量性、再現性、正確性に著しく富んだ細胞内小核検出が可能となる。 (3)化学物質との反応中から経時的に小核の発生を検出可能である。従って、サイトカラシンBなどの付加的化学物質を投与せずにバックグラウンドを排除でき、効率も向上する。 (4)一定の条件下における光照射のみで小核検出が可能である。よって、光学システム構築が単純なため連続処理や自動化が容易となる。 (5)核関連蛋白を融合遺伝子に用いることにより、従来の核酸成分を指標に核染色を施す際に生じるムラや偏りがない。よって、より定量的な小核検出、算定が可能となる。細胞質内の大核領域周辺の小核の配置と観察状態を示す図。小核の測定における励起と観察画像の状態を示す図。 単一もしくは複数の核関連蛋白をコードする遺伝子と蛍光蛋白をコードする遺伝子とを融合し培養細胞に導入して細胞内に発現させた母細胞を生成し、被検物質の毒性もしくは突然変異原性試験のための処理を施し、小核領域が限定的に蛍光を発するような限定的励起を行い、核関連蛋白成分に応じた蛍光量を定量的に測定することにより、測定対象の細胞の固定を行うことなく生細胞中における検出を可能としたことを特徴とする細胞内小核の検出方法。 請求項1において、上記の核関連蛋白が、核膜に特異的な蛋白であることを特徴とする細胞内小核の検出方法。 請求項1において、上記の融合蛋白発現母細胞の大核の領域に絞って光照射を行うことにより、大核領域のみの蛍光を減衰させることにより、細胞内の大核を除いた小核のみに由来する蛍光を検出することを特徴とする細胞内小核の検出方法。 【課題】手法が煩雑でしかも試験者による格差もあるため、各試験機関間の標準化が困難である。且つ、自動計測を想定した際、現法の染色方法によっては核領域と細胞質領域との判別が容易でないなどの理由により、定量性、再現性に課題がある。【解決手段】単一もしくは複数の核関連蛋白をコードする遺伝子と蛍光蛋白をコードする遺伝子とを融合し培養細胞に導入して細胞内に発現させた母細胞を生成し、被検物質の毒性もしくは突然変異原性試験のための処理を施し、小核領域が限定的に蛍光を発するような限定的励起を行い、核関連蛋白成分に応じた蛍光量を定量的に測定することにより、測定対象の細胞の固定を行うことなく生細胞中における検出を可能としたことを特徴とする細胞内小核の検出方法を提供する。【選択図】 なし


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