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タイトル:特許公報(B2)_異方性色素膜用色素、異方性色素膜形成用組成物、異方性色素膜及び偏光素子
出願番号:2004286917
年次:2010
IPC分類:C09B 3/14,C09B 5/62,C07D 471/22,G02B 5/30,G02F 1/1335


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西村 政昭 門脇 雅美 長谷川 龍一 JP 4525280 特許公報(B2) 20100611 2004286917 20040930 異方性色素膜用色素、異方性色素膜形成用組成物、異方性色素膜及び偏光素子 三菱化学株式会社 000005968 特許業務法人志成特許事務所 110000257 西村 政昭 門脇 雅美 長谷川 龍一 20100818 C09B 3/14 20060101AFI20100729BHJP C09B 5/62 20060101ALI20100729BHJP C07D 471/22 20060101ALI20100729BHJP G02B 5/30 20060101ALI20100729BHJP G02F 1/1335 20060101ALI20100729BHJP JPC09B3/14C09B5/62C07D471/22G02B5/30G02F1/1335 510 C09B 3/00 C09B 5/62 C07D 471/22 G02B 5/00 G02F 1/1335 CA(STN) 特表2004−528603(JP,A) 特開昭62−269901(JP,A) 特開2003−201478(JP,A) Russell A.Cormier and Brian A.Gregg,Self-Organization in Thin films of Liquid Crystalline Perylene Diimides,Journal of Physical and Chemical,米国,American Chemical Society,1997年10月28日,1997,101,11004-11006 Russell A.Cormier and Brian A.Gregg,Synthesis and Characterization of Liquid Crystalline Perylene Diimides,Chemistry of Materials,米国,American Chemical Society,1998年 4月14日,1998,10,1309-1319 Sheng-Gao Liu, Guodong Sui, Russell A.Cormier and Brian A.Gregg etc.,Self-Organaizing Liquid Crystal Perylene Diimide Thin Films: Spectroscopy, Crystallinity, and Molecular Orientation,Journal of Physics and Chemical,米国,American Chemical Society,2002年 1月 9日,2002,106,1307-1315 6 2006098927 20060413 17 20070403 竹村 真一郎 本発明は、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光板等に有用な異方性色素膜用色素に関するものであり、詳しくは溶媒溶解性に優れた異方性色素膜用色素、該色素を用いて形成される高い分子配向を有する異方性色素膜及び偏光素子に関するものである。 LCD(液晶表示ディスプレイ)では、表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられており、OLED(有機EL素子)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。 従来、これらの偏光板(偏光素子)にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために偏光素子として使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。そのため、有機系の色素を二色性物質に使用する偏光板が検討されている。 偏光板の製造方法の一つとして、二色性を有する有機色素を、ポリビニルアルコール等の高分子材料基材に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して、二色性色素を配向させることにより得る方法(例えば、非特許文献1参照)が挙げられる。 また、別の製造方法として、ガラスや透明フィルムなどの基板上に、湿式成膜法にて二色性色素を含む膜を形成し、分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させることにより製造する方法(例えば、特許文献1および2参照)が挙げられる。 前者の方法において使用される二色性色素には、高い二色性が要求される他に、ポリビニルアルコールなどの基材に対する高い親和性や染色液への色素の可溶化が、基材の染色性の観点から要求される。 一方、後者の方法、つまり湿式成膜法においては、上記と同様に高い二色性が求められる他に、二色性色素を基板上に堆積、配向させる方法や二色性色素分子の配向を制御させるための基板表面の処理など、二色性色素を含む偏光膜(異方性色素膜)形成のためのプロセス選択と、そのプロセスに適した二色性色素、および該色素を含む膜形成用組成物が必要とされる。膜形成組成物は、通常、色素を溶剤に溶かし、これに必要に応じて各種添加物を混合したものであるが、均一な色素膜(偏光膜)を形成するためには、溶剤への色素の可溶化及び組成物中の組成が均一であることが要求される。 ところが、従来の偏光膜用色素は、水溶性色素の場合、可溶性基としてスルホ基、カルボキシル基等の酸性基が主に導入されているため、溶液のpHによって溶解度等が変化してしまう。そのため、異方性色素膜を作製するための膜形成用組成物などの溶液は、色素を溶解させるために、限られた範囲のpHで調製されなければならないという問題点があった。また、添加剤等によっても、pH変化や、対イオンが変化するため、色素の溶解度等に影響を与えることがあるので、異方性色素膜(偏光膜)作成用の溶液の調製には非常に困難が多く、さらに、これらの可溶性基を有する水溶性色素は有機溶剤に不溶であることが多く、限られた溶剤しか使用できなかった。特開平1−161202号公報特表平8−511109号公報入江正浩監修 「機能性色素の応用」 株式会社シーエムシー出版、1996年4月15日発行、96〜106頁 本発明は、異方性色素膜に用いられる色素として、溶解度等のpH依存性が小さく、広いpH領域で使用することができ、また、水或いは有機溶剤への溶解性にも優れている色素を提供することを課題とし、また、該色素を含む膜形成用組成物、並びに該色素を用いた高い分子配向を有する異方性色素膜を提供することを課題とする。 本発明者らは、異方性色素膜用の色素の液媒体中における溶解挙動について鋭意検討した結果、可溶性基として、下記一般式(c)で表されるポリエーテル鎖からなる基を有する色素が水および/または有機溶剤に対する溶解性に優れ、かつ、異方性色素膜を形成した時に高い分子配向を示すことを見出した。更に該ポリエーテル鎖からなる基を有し、しかも溶剤中で会合状態を形成する色素を用いて湿式成膜法により形成された膜は、高次の分子配向状態を示すこと、すなわち、高い異方性を有する色素膜を形成し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき達成されたものである。 本発明の要旨は、分子中に下記一般式(3)で表される部分骨格を有することを特徴とする色素に存する。(但し、一般式(3)の部分骨格は、置換基を有していてもよく、また、縮合環の一部を構成するものであってもよい。 D3及びD4は、各々独立に、下記一般式(c)で表される基を表す。(式(c)中、mは、1から10までの整数を表す。 Xは、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。 E1、E2、E3およびE4は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または下記一般式(b)で表される基を表す。但し、下記一般式(b)で表される基は置換基を有していてもよい。(式(b)中、hは0〜2の整数を表し、iは0〜4の整数を表す。但し、h+i≧1を満たす。Rは、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)] 本発明の他の要旨は、溶液中で少なくとも一部が会合状態を形成する色素であって、上記の一般式(3)で表される部分骨格を有する色素からなることを特徴とする異方性色素膜用色素に存する。 本発明の更なる要旨は、本発明の上記異方性色素膜用色素と溶媒を含む異方性色素膜形成用組成物、該異方性色素膜用色素を含む異方性色素膜、該異方性色素膜を用いた偏光素子に存する。 本発明の上記一般式(c)で表される基を有する色素は、水、有機溶剤のいずれにも可溶となりうるポリエーテル鎖を有しているので、溶剤への溶解性がよく、また、色素溶解度のpH依存性が少ないことから、塗布条件、乾燥過程に応じた溶剤を選択して容易に異方性色素膜形成用組成物を調製することができる。また、本発明の色素を用いた異方性色素膜よりなる偏光膜は、高い二色性を示すので、このような偏光膜を使用して製造された偏光素子を液晶表示装置等に使用した場合、高いコントラストを生み出すことができる。 以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。 本発明に係わる色素は、異方性色素膜に用いられる色素であるが、ここで「異方性色素膜」とは、膜面内の任意の2方向、および膜の厚み方向の、合わせて3方向のうち、2方向における電磁気学性質(吸収、屈折率などの光学的性質、抵抗、容量等の電気的性質などのいずれか)に異方性を有する膜を意味する。この異方性色素膜は、実質的に色素のみからなる膜であっても良く、また本発明の目的とする異方性色素膜の性能を損なわない範囲で、色素以外の成分(例えば高分子化合物、各種添加剤など)を含有していても良い。異方性色素膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差板、導電異方性膜などが挙げられる。 本発明の異方性色素膜用色素に係わる色素は、溶液中で少なくとも一部が会合状態を形成する色素であって、上記一般式(c)で表される基を有することを必須とする。本発明色素は、この一般式(c)で表されるポリエーテル鎖からなる基を有することにより、水や水との混和性を有する有機溶媒への親和性が付与され、それによって溶解性に優れ均一に溶解・分散すると共に、分子中の親水性と疎水性の局在バランス等により色素分子同士の会合を生じ易く、また、該基の所望の分子鎖長から色素膜とした時に高い分子配向を示すのである。 本発明における色素が溶媒中で形成する会合状態とは、色素を溶剤に溶解させた際、色素分子間に生ずる相互作用により形成される会合体を指す。色素が形成する会合状態は、色素の骨格構造、色素が有する官能基の種類等により種々異なるが、会合状態の中でも、溶液中でリオトロピック液晶状態を示す色素分子は、該色素を用いた色素膜において高い配向状態をとることができるため好ましい。 本発明の色素が有する上記一般式(c)で示される基において、mは、該基の基本骨格である炭素数2のオキシアルキレン鎖部分の繰り返し単位数を表し、通常1以上、6以下の整数、好ましくは2以上、5以下の整数、さらに好ましくは2以上、4以下の整数である。一般式(c)中、Xは、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基が更に好ましい。Xにおけるアルキル基が有し得る置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基等が挙げられる。 一般式(c)中、E1、E2、E3およびE4は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または下記一般式(b)で表される基を表す。下記一般式(b)で表される基は置換基を有していてもよい。(式(b)中、hは0〜2の整数を表し、iは0〜4の整数を表す。但し、h+i≧1を満たす。Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。) アルキル基としては、炭素数1〜6程度が好ましく、1〜4がより好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。アルキル基が有しうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。 アルコキシ基としては、炭素数1〜5程度が好ましく、炭素数1〜4程度がより好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基があげられる。アルコキシ基が有しうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基等が挙げられる。一般式(b)中、hは0から2、好ましくは1の整数を表し、iは0から4、好ましくは1〜2の整数を表す。Rはメチル基、エチル基などの炭素数1〜3程度のアルキル基、または水素原子を示す。−(CH2)h-(OCH2CH2)i-OR基は、通常は、その水素原子が置換されていないのが好ましいが、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基あるいはアルコキシ基が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基としては、前記E1〜E4で説明したものが使用できる。一般式(b)で表される基の分子量は、75以上、250以下であることが好ましい。一般式(c)中、E1、E2、E3およびE4として、好ましくは水素原子、または一般式(b)で表される基であり、該基はE3またはE4に置換するのが好ましい。 色素分子中の上記一般式(c)で示される基一つが有する総炭素数は、通常2以上、12以下、好ましくは4以上10以下である。炭素数が上記上限値を越えると、色素が好ましい会合状態を形成し難くなる傾向となり、下限値を下回ると色素の溶解度が低下するという問題が生じるおそれがある。また、色素分子中における一般式(c)の基中に存在する酸素原子の数は、4以上、30以下が好ましく、8以上、24以下がさらに好ましい。下限値を下回ると水への溶解度が低くなり、上限値を上回ると色素の会合性を損ねたり、発色性の低下や吸収スペクトルが短波長化するという問題が生じるおそれがある。 色素分子中において、一般式(c)で示される基は、置換基として色素骨格に直接結合していても良いし、色素骨格から酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかを介して結合していても良い。また、直鎖アルキレン基や両端にそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかを有する直鎖アルキレン基を介して結合していても良い。この場合、アルキレン基の炭素数は1〜6が好ましい。 本発明に係わる異方性色素膜用の色素であって、色素分子中に上記一般式(c)で示される基を有し、かつ上記一般式(3)で表される部分骨格を有する色素は、溶液中で会合状態を示すものはより好ましく、リオトロピック液晶状態を示すものが特に好ましい。 色素分子中に一般式(3)で表される部分骨格を有する色素の分子構造を具体的に以下に示す。 下記一般式(3)で表される部分骨格を有するペリノン系色素は、その骨格構造による高い会合性を有するため好ましい。(但し、一般式(3)の部分骨格は、置換基を有していてもよく、また、縮合多環の一部を構成するものであってもよい。式中、D3及びD4は、各々独立に、下記一般式(c)で表される基を表す。(一般式(c)中、E1、E2、E3、E4及びXは、上記「一般式(c)」に記載のものと同義である。mは、1〜10の整数を表す。) 次に、上記一般式(3)で表される部分骨格を有する色素分子について説明する。一般式(3)で表される部分骨格を有する色素は、新規色素であり、本発明色素の特性である水及び水と混和性のある有機溶剤に対する良好な溶解性、及び異方性色素膜用色素としての高い二色性を示すので、当然異方性色素膜用色素として有用であるが、その他の用途にも適宜使用することが出来る。 色素分子中に一般式(3)で表される部分骨格を有する新規な色素は、その分子構造が該一般式(3)により構成されるものであっても、縮合多環構造の一部が該部分骨格により構成されるものであってもよい。このような部分骨格を有する分子構造は、例えばナフタレンやペリレンのジまたはテトラカルボン酸またはその誘導体とo−フェニレンジアミン類との反応により形成される骨格よりなるものである。 一般式(3)におけるD3およびD4は、各々独立に、一般式(c)で表される基を表し、式中、E1、E2、E3、E4及びXは、上記一般式(a)に記載のものと同義であり、mは、1〜10の整数を表す。mは、該基の基本骨格単位である炭素数2のオキシアルキレン鎖部分の繰り返し単位数を表し、通常1以上、6以下、好ましくは2以上、5以下であり、さらに好ましくは2以上、4以下の整数である。 また、一つの一般式(c)で表される基の総炭素数は、通常2以上、12以下であり、好ましくは4以上、10以下である。炭素数が上記上限値を越えると、色素が好ましい会合状態をとれなくなるという問題が、下限値を下回ると色素の溶解度が低下するという問題が生じるおそれがある。 一般式(3)で表される部分骨格は、D3およびD4の一般式(c)で表される置換基の他にさらに一般式(c)の基が置換していてもよく、それらは、色素骨格に直接置換していても良いし、色素骨格から酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかを介して結合していても良い。また、直鎖アルキレン基や両端にそれぞれ独立して酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかを有する直鎖アルキレン基を介して結合していても良い。この場合、アルキレン基の炭素数は1〜6が好ましい。 一般式(3)で表される部分骨格に、さらに一般式(c)で表される基が置換している場合には、D3およびD4の一般式(c)で表される置換基を除いて、該置換基が1〜4つ置換していてもよく、1〜2がより好ましい。また、該置換基を複数有する場合、該置換基は同一でもよく、また異なっていてもよい。 色素1分子中の一般式(c)で表される基の置換基数は、2以上、6以下であることが好ましい。 一般式(3)で表される部分骨格が有する一般式(c)で表される置換基中に含まれるすべての酸素原子の数は、4以上、30以下が好ましく、8以上、24以下がさらに好ましい。下限値を下回ると水への溶解度が低くなり、上限値を上回ると色素の会合性を損ねたり、発色性の低下や吸収スペクトルが短波長化するという問題が生じるおそれがある。 一般式(3)で表される部分骨格には、一般式(c)で表される基以外の置換基を有していてもよく、具体的には、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。 一般式(3)で表される部分骨格を有する色素の分子量は、好ましくは400以上、更に好ましくは500以上で、好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。分子量が上記上限値を越えると、発色性の低下や吸収スペクトルが短波長化するという問題が生じるおそれがある。 以下に、一般式(3)で表される部分骨格を有する色素として、具体例を示すが、これらに限定されるものではない。 これらの色素中、好ましいものとしては、色素No.(II−1)〜(II−3)、(II−6)、(II−10)等が挙げられる。 本発明の一般式(3)で表される部分骨格を有する色素は、前記の異方性色素膜用の色素として用いることができるが、それ以外に、繊維染色用色素、ポリマー染色用色素、液晶用カラーフィルター用色素、記録用色素等に利用することができる。 本発明の一般式(3)で表される部分骨格を有する新規色素は、公知の手法にて合成することができ、例えば、次のような方法が挙げられる。 1)Chemistry of Materials、10巻、第1309頁〜第1319頁(1998年)に記載の方法に準じて合成する。 2)USP5969111公報に記載の方法で得られたポリエーテル部位を有する化合物を、特開昭59−59686公報に記載の方法に準じて環を縮合させて合成する。 3) 2)記載の方法で得られたポリエーテル部位を有する化合物を、Dyesand Pigments、15巻、第139頁〜第156頁(1991年)に記載の方法に準じて環を縮合させ合成する。上記方法にて合成した色素は、必要によりシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、単離する。 本発明色素は、溶媒、特に水または水と混和性のある有機溶媒に対し優れた溶解性を示し、また、溶液中で少なくとも会合状態を形成し得る特徴を有している。本発明色素は、主に異方性色素膜用色素として使用されるが、後述するように、異方性色素膜を作製する場合、溶剤としては水、水混和性のある有機溶剤、または水と水混和性のある有機溶剤の混合物を使用するのが一般的である。そのため、色素のこれらの溶剤への溶解性が低すぎるとこのような用途への使用が難しくなり、特に湿式成膜法による成膜に供することが難しくなる。逆に、色素の良好な会合状態形成の観点からは、溶剤への溶解性が高すぎない方が好ましい。色素の水等の溶剤への溶解度が高すぎると、高配向の異方性膜を得るのに適した良好な色素分子の会合状態が形成しにくくなるおそれがあるためである。 本発明色素の溶解性は、常温常圧下、具体的には25℃,1気圧において、水または後述する水と混合性のある有機溶剤への溶解度が0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。また50重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましい。 本発明の色素は単独で良好な異方性色素膜を形成し得るが、異方性色素膜の分子配向の制御や、得られた異方性色素膜の調色改良等の目的によっては、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜、これらの色素を2種以上併用しても、また他の有機化合物と混合しても良い。 本発明の異方性色素膜用色素組成物は、少なくとも本発明の色素及び溶媒を含有するものであり、該組成物は、これを用いて湿式成膜法により異方性色素膜を形成するのに有用である。本発明における異方性色素膜を形成する湿式成膜法とは、本発明の色素、必要に応じて界面活性剤などの各種添加剤を、水および/または有機溶剤に溶解することにより調製される異方性有機膜形成用組成物(成膜用組成物)を、ガラスや樹脂等にて形成されたフィルム状、シート状、或いは板状の基材上に塗布、乾燥させることにより膜を作製されることを指す。 本発明の異方性色素膜用色素組成物(成膜用組成物)に含まれる本発明の色素は、水や有機溶剤等の単独または2種以上の混合物からなる溶媒に溶解または微結晶となって分散することができるものが適しており、更に、溶液中で会合状態を形成し得る色素が好ましい。 本発明の異方性色素膜用色素組成物に使用される溶媒としては、本発明で用いる色素、必要に応じ加えられる添加剤等の有機化合物を溶解する溶媒が好ましく、水および有機溶剤のいずれか、またはそれらの2種以上の混合物を用いても良いが、製造の安全性の観点から、水または、水と水混和性のある有機溶剤の混合物を用いるのが好ましい。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、1、2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられ、これらの溶剤は単独または2種以上混合溶剤として使用することができる。 色素を、溶媒中に溶解ないし微分散させる濃度は、成膜用組成物として溶液塗布の操作性の観点からは、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。 本発明の異方性色素膜用色素組成物中には、基材への塗れ性、塗布性を向上させるため、必要に応じて界面活性剤等の添加物を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれも使用可能である。その添加濃度は、目的の効果を得るために十分であって、かつ色素分子の配向を阻害しない量として、異方性色素膜用色素組成物中の濃度として通常0.05重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。さらに上記以外の添加物として、”Additive for coating”, Edited by J. Bieleman, Willey-VCH(2000)記載の公知の添加物を用いることもできる。 湿式成膜法により高い分子配向の異方性色素膜を得るには、成膜用組成物中において少なくとも色素等の有機化合物がリオトロピック液晶状態に代表されるような良好な分子間相互作用による会合状態を形成していることが好ましい。このために、前述のように、成膜用組成物に用いる色素や添加剤の成膜用組成物中での濃度を適宜設定することが好ましい。 異方性色素膜を形成するための、湿式成膜法に使用される基材としては、ガラスやトリアセテート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トリアセチルセルロースまたはウレタン系樹脂の、フィルム、シート、板等が挙げられる。なお、この基材表面には、塗布される成膜用組成物中の色素分子の配向方向を制御するために、「液晶便覧」(丸善株式会社、平成12年10月30日発行)第226頁〜第239頁などに記載の公知の方法により、配向処理層を形成していても良い。 本発明の異方性色素膜は、異方性色素膜用色素組成物(成膜用組成物)を用い湿式成膜法(塗布)により形成することができるが、湿式成膜法による該成膜用組成物の塗布法としては、原崎勇次著「コーティング工学」(株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行)第253頁〜第277頁、または市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」(株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行)第118頁〜第149頁などに記載の公知の方法や、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法などで、上記基材に成膜用組成物を塗布して乾燥する方法を採用することができる。 塗布する際、基材には上述の如く塗布に先立ち予め配向処理を施しておいても良い。塗布時の温度は通常0〜80℃、湿度は通常10〜80%RH程度である。また、乾燥時の温度は通常0〜120℃、湿度は通常10〜80%RH程度である。 乾燥時の温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、通常120℃以下、好ましくは110℃以下である。また、乾燥時の湿度は、通常10RH%以上、好ましくは30RH%以上、通常80RH%以下程度である。 本発明の異方性色素膜は、上記のようにして形成されるが、該異方性色素膜の膜厚は、通常乾燥後の膜厚で、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは50μm以下、更に好ましくは1μm以下である。 また、可視光波長領域における該異方性色素膜の透過率が好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは44%以上を満たすものが、表示素子、特にカラー表示素子用偏光子として好ましい。 なお、湿式成膜法にて形成された異方性色素膜は、通常、機械的強度が低いので、必要に応じ、この上に保護層を設けて使用しても良い。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トリアセチルセルロースまたはウレタン系樹脂のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、実用に供する。 本発明により製造された異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用し、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能するほか、膜形成プロセスと基材や色素を含有する組成物の選択により、屈折率異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に適用可能な偏光素子とすることができる。 本発明の異方性色素膜をLCDやOLEDなどの各種の表示素子に偏光フィルター等として用いることが出来る。その場合には、これらの表示素子を構成する電極基板などに直接、成膜用組成物を塗布、乾燥して異方性色素膜を形成したり、異方性色素膜を形成した基材をこれら表示素子の構成部材として用いることができる。 本発明の異方性色素膜を基材上に形成し偏光素子として使用する場合、形成された異方性色素膜そのものを使用しても良く、また該異方性色素膜上に上記のような保護層のほか、粘着層、反射防止層など、様々な機能をもつ層を積層形成し、積層体として使用しても良い。特に、本発明の異方性色素膜は、従来の偏光板のように耐熱性の弱いポリマーを含まず、ガラスなどの高耐熱性基材上に直接形成することが可能であり、高耐熱性の偏光素子を得ることができる点から、液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途に使用できる点が好ましい。 次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。 なお、実施例中、二色比は分光光度計[(株)日立製作所製U 3500分光光度計]により異方性色素膜の吸光度を測定した後、次の計算式により計算した。 二色比(D)=Az/Ay Az:色素膜の吸収軸方向の吸光度 Ay:色素膜の偏光軸方向の吸光度 実施例1:〔化合物(II−1)の合成〕窒素雰囲気下、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(0.80g、2.0mmol)のN−メチルピロリドン(10mL)懸濁液に、4,5−ビス−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン−1,2−ジアミン(2.16g、5mmol)のN−メチルピロリドン(5mL)溶液を加え、200℃で12時間攪拌した。減圧下、加熱し、溶媒を留去した後、残渣をメタノール(45mL×4)で懸洗した。得られた濃青色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:塩化メチレン−メタノール混合溶媒)にて精製し、化合物(II−1)<syn/anti混合物>(1.36g、57%)を得た。このものの物性値は以下の通りである。MS (EI)1185(M+). 実施例2:〔化合物(II−1)の異方性膜の作製〕 化合物(II−1)を含む異方性色素膜形成用組成物および異方性色素膜を、以下に示す方法で作製した。すなわち、水95重量部に、化合物(II−1)を5重量部加え、攪拌溶解し、次いでろ過して色素水溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。スライドガラス(松浪硝子工業製 スライドグラス白縁磨フロストNo.1)に前記色素水溶液をバーコーター(テスター産業(株)製 No.2)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の異方性の確認として、二色比の測定をおこなったところ極大吸収波長の590nmにおいて8であり、吸収異方性が確認された。 実施例3:〔化合物(II−2)および(II−3)の合成〕 窒素雰囲気下、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1.06g、4.0mmol)、4,5−ビス−{2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン−1,2−ジアミン(4.37g、10.1mmol)と酢酸(15mL)の混合物を、加熱還流下で2.5時間攪拌した。減圧下、加熱し、酢酸を留去した後、残渣をメタノール(45 mL×4)で懸洗した。得られた濃青色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:塩化メチレン−メタノール混合溶媒)にて精製し、化合物(II−2)<anti体>(2.23g、52%)、化合物(II−3)<syn体>(1.06g、25%)を得た。これらの化合物のNMRによる分析値は以下の通りである。 化合物(II−2)<anti体>1H NMR(270MHz,CDCl3) 8.39(d,2H,J=7.6Hz,ArH),8.36(d,2H,J=7.6Hz,ArH),7.60(s,2H,ArH),6.97(s,2H,ArH),4.28−4.13(m,4H,−OCH2CH2O−),4.12−4.02(m,4H,−OCH2CH2O−),3.98−3.53(m,40H, −OCH2CH2O−),3.41(s,12H,−OCH3); MS(EI)1061(M+). 化合物(II−3)<syn体>1H NMR(270MHz,CDCl3) 8.65(s,2H,ArH),8.39(s, 2H,ArH),7.71(s,2H,ArH),7.06(s,2H,ArH),4.24(t,4H,J=4.3Hz,−OCH2CH2O−),4.11(t,4H,J=4.3Hz,−OCH2CH2O−),3.99−3.66(m,32H,−OCH2CH2O−),3.64−3.57(m,8H,−OCH2CH2O−), 3.41(s,12H,−OCH3); MS (EI)1061(M+). 実施例4:〔化合物(II−2)の異方性膜の作製〕 化合物(II−2)を含む異方性色素膜形成用組成物および異方性色素膜を、以下に示す方法で作製した。すなわち、テトラヒドロフラン93重量部に、化合物(II−2)を7重量部加え、攪拌溶解し、次いでろ過して色素溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。スライドガラス(松浪硝子工業製 スライドグラス白縁磨フロストNo.1)に前記色素溶液をバーコーター(テスター産業(株)製 No.2)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の異方性の確認として、二色比の測定をおこなったところ極大吸収波長の530nmにおいて5であり、吸収異方性が確認された。 実施例5:〔化合物(II−2)の異方性膜の作製〕化合物(II−2)を含む異方性色素膜形成用組成物および異方性色素膜を、以下に示す方法で作製した。すなわち、1,2−ジメトキシエタン93重量部に、化合物(II−2)を7重量部加え、攪拌溶解し、次いでろ過して色素溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。スライドガラス(松浪硝子工業製 スライドグラス白縁磨フロストNo.1)に前記色素溶液をバーコーター(テスター産業(株)製 No.2)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の異方性の確認として、二色比の測定をおこなったところ極大吸収波長の530nmにおいて5であり、吸収異方性が確認された。 実施例6:〔化合物(II−3)の異方性膜の作製〕 化合物(II−3)を含む異方性色素膜形成用組成物および異方性色素膜を、以下に示す方法で作製した。すなわち、水80重量部に、化合物(II−3)を20重量部加え、攪拌溶解し、次いでろ過して色素水溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。スライドガラス(松浪硝子工業製 スライドグラス白縁磨フロストNo.1)に前記色素水溶液をギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所製)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の異方性の確認として、二色比の測定をおこなったところ極大吸収波長の595nmにおいて5であり、吸収異方性が確認された。 実施例7:〔化合物(II−3)の異方性膜の作製〕 化合物(II−3)を含む異方性色素膜形成用組成物および異方性色素膜は、以下に示す方法で作製した。すなわち、テトラヒドロフラン93重量部に、化合物(II−3)を7重量部加え、攪拌溶解し、次いでろ過して色素溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。スライドガラス(松浪硝子工業製 スライドグラス白縁磨フロストNo.1)に前記色素溶液をギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所製)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の異方性の確認として、二色比の測定をおこなったところ極大吸収波長の580nmにおいて5であり、吸収異方性が確認された。 分子中に下記一般式(3)で表される部分骨格を有することを特徴とする色素。(但し、一般式(3)の部分骨格は、置換基を有していてもよく、また、縮合環の一部を構成するものであってもよい。 D3及びD4は、各々独立に、下記一般式(c)で表される基を表す。(式(c)中、mは、1から10までの整数を表す。 Xは、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。 E1、E2、E3およびE4は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または下記一般式(b)で表される基を表す。但し、下記一般式(b)で表される基は置換基を有していてもよい。(式(b)中、hは0〜2の整数を表し、iは0〜4の整数を表す。但し、h+i≧1を満たす。Rは、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)] 溶液中で少なくとも一部が会合状態を形成する色素であって、請求項1に記載の一般式(3)で表される部分骨格を有する色素からなることを特徴とする異方性色素膜用色素。 上記一般式(3)で表される部分骨格を有する分子構造が下記式(4)で表されることを特徴とする請求項2に記載の異方性色素膜用色素。 (但し、式中D3及びD4は、各々独立に上記一般式(c)で表される基を表し、*は、下記式(4−1)との結合部位を表す。) (但し、式中D3及びD4は、各々独立に上記一般式(c)で表される基を表し、kは0または1の整数を表し、*は、上記式(4)との結合部位を表し、結合位に応じ幾何異性体を形成する。) 請求項2又は3のいずれかに記載の異方性色素膜用色素および溶媒を含有することよりなる異方性色素膜形成用組成物。 請求項2又は3のいずれかに記載の異方性色素膜用色素を含有することよりなる異方性色素膜。 請求項5に記載の異方性色素膜を用いた偏光素子。


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