生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_病原体感染抑制剤
出願番号:2004282569
年次:2006
IPC分類:A61K 36/18,A61K 36/00,A61K 9/08,A61K 9/10,A61K 9/14,A61K 9/20,A61K 9/48,A61P 31/00,A61P 31/16


特許情報キャッシュ

東坂 栄作 高橋 和郎 JP 2006096684 公開特許公報(A) 20060413 2004282569 20040928 病原体感染抑制剤 有限会社ジーレム研究所 504364851 赤澤 一博 100085338 井上 敬子 100118245 佐野 禎哉 100130498 東坂 栄作 高橋 和郎 A61K 36/18 20060101AFI20060320BHJP A61K 36/00 20060101ALI20060320BHJP A61K 9/08 20060101ALI20060320BHJP A61K 9/10 20060101ALI20060320BHJP A61K 9/14 20060101ALI20060320BHJP A61K 9/20 20060101ALI20060320BHJP A61K 9/48 20060101ALI20060320BHJP A61P 31/00 20060101ALI20060320BHJP A61P 31/16 20060101ALI20060320BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 YA61K9/08A61K9/10A61K9/14A61K9/20A61K9/48A61P31/00A61P31/16 6 OL 10 4C076 4C088 4C076AA12 4C076AA22 4C076AA30 4C076AA31 4C076AA37 4C076AA49 4C076AA53 4C076BB01 4C076BB22 4C076CC31 4C076CC35 4C088AB12 4C088AC06 4C088BA07 4C088BA08 4C088BA18 4C088BA37 4C088CA30 4C088MA01 4C088MA17 4C088MA35 4C088MA37 4C088MA41 4C088MA52 4C088MA57 4C088NA14 4C088ZB32 4C088ZB33 本発明は、インフルエンザウイルス等の病原体の感染を防止するために服用される病原体感染抑制剤に関するものである。 毎年、大勢の人間がインフルエンザウイルスに感染、発病し、死者も発生している。人間に感染するのは人インフルエンザウイルスであるが、毎年のように新型の人インフルエンザウイルスが発生して多大な損害をもたらしている。インフルエンザウイルスの感染予防には、事前のワクチン投与や手洗いやうがいの励行等が有効とされている。また、折しも2003年末から2004年にかけて大問題となったように、東南アジアから東アジア、北米等において高病原性鳥インフルエンザウイルスが直接人間に感染した可能性も指摘されているため、養鶏場等に立ち入る必要のある者には、防護服の着用や事後の洗浄等の感染防止策が非常に重要である(非特許文献1参照)。 一方、青森ヒバや台湾ヒノキ等のヒノキ科植物の抽出油(ヒノキ油、ヒバ油等と称される)に抗菌活性があるとの知見があり、屋内の空気を吸入して容器内に貯留させた薬液を噴霧した後当該空気を排出することで、屋内の空気中に存在する微生物、ウイルス、花粉等の浮遊粒子状物質、ハウスダスト、有害ガス等を除去するための装置において、前記薬液としてヒノキ油油等を利用するという技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。岡田晴恵著「鳥インフルエンザの脅威−本当の怖さはこれからだ!」,河出書房新社,2004年5月20日特開2000−210521号公報 前記特許文献1では、薬剤として茶油(カテキンを含む茶抽出油)を使用した場合にインフルエンザウイルスに対して有効であるが、薬剤としてヒノキ油を使用した場合にはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や病原性大腸菌に有効であり、この違いの根拠は植物精油の種類によって殺菌・防除のスペクトルが相違することにある、と開示されている。しかしながら、具体的な試験結果として示されているのは、ヒノキ油を含む水溶液が動物(マウス)に対して低毒性であること、前記装置の運転試験により2週間後にダニを主とする虫が薬液(ヒノキ油を含む水溶液)中に存在しておりカビの胞子が消失していたこと、であって、同文献からはヒノキ油に抗MRSA活性や抗大腸菌活性があるのか、茶油であれば抗インフルエンザウイルス活性があるのかは必ずしも明らかにされていない。また、従来よりなされている感染予防方法であるワクチン接種や抗生物質の投与、手洗いやうがいは有用であるが、ワクチンや抗生物質は一般に高価であり、インフルエンザが大流行した際にはワクチンが不足したり価格が高騰するといった問題があり、その結果として感染拡大につながってしまうおそれもある。さらにこの問題は、貧困地域においては一層甚大な被害に結びつくという危険性も孕んでいる。 一方、これまで本発明者は、ヒノキ科植物の抽出油(ヒバ油)或いはそれに含まれるヒノキチオールによるシロアリ防除作用に着目して、天然物であるヒバ油を利用した環境及び健康に配慮したシロアリ防除剤等を研究開発してきたが、その過程において新たにヒノキ科植物の抽出物が病原体感染抑制作用、とりわけ抗インフルエンザウイルス作用を奏する可能性を見出した。 そこで本発明は、以上のような問題に鑑みて、ヒノキ科植物の抽出物を利用した新規な病原体感染抑制剤の提供を目的としている。 すなわち本発明に係る病原体感染抑制剤は、ヒノキ科植物の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするものである。 ヒノキ科(Cupressaceae)の植物は、世界中に分布する常緑針葉樹であり、青森ヒバ(ヒノキアスナロ;アスナロ属)、台湾ヒノキやヒノキやアラスカヒノキ(ヒノキ属)、イトスギ(イトスギ属)、ネズ(ネズミサシ属)、ベイスギやニオイヒバ(ネズコ属)、オニヒバ(ショウナンボク属)等が代表的である。ヒノキ科植物の抽出方法は特に限定されるものではないが、親水性成分を含む抽出水と親油性成分を含む抽出油とを効率良く得るには、水蒸気蒸留法を適用することが好ましい。水蒸気蒸留法を用いた場合、ヒノキ科植物の抽出油(以下、「ヒバ油」と総称する場合がある)は、製材時に生じるオガ粉や廃材等を水蒸気蒸留することにより抽出水と二層に分離した状態で留出するものであり、酸性油分(約3〜4重量%)として主にフェノール類(ヒノキチオール、β-ドラブリン、l-ロジン酸、カルバクロール、その他)を含み、中性油分(約96〜97重量%)として主にセスキテルペン類(ツヨプセン、パラサイメン、ジヒドロサイメン、セドロール、ウィドロール、その他)を含む。なお、酸性油分は抽出水にも若干含まれている。 病原体の感染を抑制する有効成分を大別すると、抽出水と抽出油とが挙げられるが、感染抑制効率から見れば、抽出物としては、ヒノキ科植物の抽出油を適用することが好ましく、さらに望ましくはこの抽出油は、ヒノキ科植物の破砕物又は粉末を水蒸気蒸留により得られる抽出物中の親油性成分を含有するものが好適である。 病原体感染抑制剤の好ましい剤形としては、散剤若しくは細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、口中瞬間溶解型製剤、口腔内即崩壊錠、チュアブル剤、内服液剤若しくはドライシロップ剤、から選択される何れかの経口剤を挙げることができる。特に、口中で溶解又は崩壊等させて口腔粘膜や咽頭粘膜にヒノキ科植物の抽出物を接触させることでより有効な感染防止が可能な剤形としては、トローチ剤、口中瞬間溶解型製剤、口腔内即崩壊錠、チュアブル剤、内服液剤が好適である。その他、有用な剤形としては、うがい薬等の外用液剤が挙げられる。 また、毎年繰り返し流行するために広く感染抑制することが望まれる病原体であり、特に本発明により感染抑制作用が得られる感染抑制対象たる病原体は、インフルエンザウイルスである。 本発明によれば、インフルエンザウイルスに代表される感染病の原因となる病原体に対する感染抑制作用を奏するヒノキ科植物の抽出物、特に抽出油を有効成分とするものであるので、天然物由来の有用な病原体感染抑制剤を創出し提供することが可能である。そして、この病原体感染抑制剤を経口摂取することで、体内の粘膜に前記抽出物ないし抽出油を接触させて病原体の感染抑制効果を発揮させ、人体の感染病の予防に寄与することができる。 以下、本発明の実施形態について説明する。 ここで説明する病原体感染抑制剤は、抑制対象である病原体をインフルエンザウイルスとしたものである。このため以下では、病原体感染抑制剤を抗インフルエンザウイルス剤と称するものとする。 ここで、本実施形態の抗インフルエンザウイルス剤は、経口剤の一種としてキャンディタイプの錠剤を適用したものである。斯かる錠剤は、水飴を硬化させてなるものを主体とし、インフルエンザウイルス感染抑制の有効成分としてヒノキ科植物の抽出油を含有し、さらに必要に応じて砂糖等の甘味料、ビタミンC等の酸化防止剤、ハッカ油やL-メントール等の清涼剤などを適宜添加することができる。 本実施形態におけるヒノキ科植物の抽出油の具体例としては、ヒノキ科植物として青森ヒバを適用し、その抽出油としてヒバ油を用いている。斯かるヒバ油は、例えば通常の水蒸気蒸留法、すなわち青森ヒバの製材時に生じたオガ粉を集めて蒸気釜に投入し、ボイラで熱した蒸気を当てることで抽出される液体のうち油溶成分として得られるものである。また、ヒバ油は約100Kgの青森ヒバ材から約1Kg得られる。なお、水蒸気蒸留法により得られた液体には、ヒバ油の他に水溶成分が溶解したヒバ抽出水が含まれており、ヒバ油とヒバ抽出水との重量比は約1:100である。こうして得られたヒバ油には、重量比にして約3〜4%の酸性油と約96〜97%の中性油が含まれている。酸性油には、カルバクロール、l-ロジン酸、ヒノキチオール、β-ドラブリン等の化合物が含まれており、中性油には、ツヨプセン、パラサイメン、ジヒドロサイメン、セドロール、ウィドロール等の化合物が含まれている。そして、本実施形態の抗インフルエンザウイルス剤には、ヒバ油を全量に対する体積率にして約1/1,000〜1/10,000倍の濃度で添加している。但し、ヒバ油の濃度は、十分なインフルエンザウイルス感染防止活性が得られ、且つ毒性が生じず、コスト面で見合う範囲内で適宜に設定することができる。 このような抗インフルエンザウイルス剤を使用者が舐めて服用すれば、口中で主成分である水飴が溶けるのと同時に滲出するヒバ油が口腔粘膜や咽頭粘膜、鼻腔粘膜等に付着して、口や鼻から吸い込む可能性のあるインフルエンザウイルスの感染を予防することができる。 また、本発明の別の実施形態に係る抗インフルエンザウイルス剤としては、外用液剤としてのうがい薬を挙げることができる。斯かるうがい薬としては、水にヒバ油を均一に懸濁させた態様、食用の界面活性剤として機能する物質(例えば少量の食用エタノール等)を混合することでヒバ油を水に溶解させた態様、水に替えてヒバ抽出水に又は水とヒバ抽出水との混合物にヒバ油を懸濁させたり上述の如き界面活性剤の添加によりヒバ油を溶解させた態様など、適宜の態様を選択することができる。また、当該うがい薬におけるヒバ油の含有量は、全量に対する体積率にして約1,000〜10,000倍の濃度で希釈して添加している。但し、ヒバ油の希釈率は、十分なインフルエンザウイルス感染防止活性が得られ、且つ毒性が生じず、コスト面で見合う範囲内で適宜に設定することができる。また、ヒバ油の含有量に応じて、使用時にこのうがい薬を水で希釈して使用するようにしてもよいし、希釈することなくそのまま使用するようにしてもよい。 このような抗インフルエンザウイルス剤(うがい薬)を用いて使用者がうがいを行えば、ヒバ油を口腔粘膜や咽頭粘膜に付着させることができるため、インフルエンザウイルスの感染を好適に予防することができる。 本実施形態を含む本発明の病原体感染抑制剤により感染予防が見込まれるインフルエンザウイルス以外の病原体とそれによる疾病の組み合わせは次の通りである。[1類感染症]エボラウイルス;エボラ出血熱、クリミア・コンゴウイルス;クリミアコンゴ出血熱、ペスト菌;ペスト、マールブルグウイルス;マールブルグ熱、ラッサウイルス;ラッサ熱、[2類感染症]コレラ毒素(CT)産生性コレラ菌;コレラ、ディセンティリ菌・フレキシネル菌・ボイド菌・ソンネ菌;細菌性赤痢、サルモネラ属チフス菌・パラチフス菌;腸チフス・パラチフス、ポリオウイルス;急性灰白髄炎(ポリオ)、ジフテリア菌;ジフテリア、[3類感染症]朝刊出血性大腸菌(O157等);腸管出血性大腸菌感染症、[4類感染症]赤痢アメーバのシスト;アメーバ赤痢、エキノコックス(多包条虫,単包条虫);エキノコックス症、黄熱ウイルス;黄熱、クラミジア・シッタン;オウム熱、スピロヘータ;回帰熱、肝炎ウイルス;急性ウイルス性肝炎、コクシエラ・バーネッティ(リケッチア);Q熱、狂犬病ウイルス;狂犬病、クリプトスポリジウム属原虫;クリプトスポリジウム症、感染性プリオン蛋白;クロイツフェルト・ヤコブプリオン病、A群レンサ球菌;劇症型溶血性レンサ球菌感染症、HIVウイルス;後天性免疫不全症候群、コクシジオイデス・イミティス;コクシジオイデス症、ランブル鞭毛虫;ジアルジア症、ハンタウイルス;腎症候性出血熱、髄膜炎菌;流行性髄膜炎、風疹ウイルス;先天性風疹症候群、炭疽菌;炭疽、ツツガムシ病リケッチア;ツツガムシ病、デングウイルス;デング熱、リケッチア・ジャポニカ;日本紅斑熱、日本脳炎ウイルス;日本脳炎、ボツリヌス菌;乳児ボツリヌス症、梅毒トレポネーマ;梅毒、破傷風菌;破傷風、バンコマイシン耐性腸球菌;バンコマイシン耐性腸球菌感染症、反多雨イルし;ハンタウイルス肺症候群、サル由来Bウイルス;Bウイルス病、ブルセラ属菌;ブルセラ症、発疹チフスリケッチア;発疹チフス、マラリア原虫;マラリア、ライム熱ボレリア;ライム熱、レジオネラ属菌;レジオネラ症、ウエストナイルウイルス;ウエストナイル熱、アデノウイルス3・7型等;咽頭結膜炎、A群溶血性レンサ球菌;A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ウイルス(ロタウイルス,小型球形ウイルス等)・細菌(サルモネラ,カンピロバクター等);感染性胃腸炎、水痘・帯状疱疹ウイルス;水痘、コクサッキーウイルス等;手足口病、ヒトパルボウイルス;リンゴ病、ヒトヘルペスウイルス;突発性発疹、百日咳菌;百日咳、風疹ウイルス;風疹(三日ばしか)、コクサッキーウイルスA群;ヘルパンギーナ、麻疹ウイルス;麻疹、ムンプスウイルス;おたふくかぜ、エンテロウイルス70型等;急性出血性結膜炎、アデノウイルス8等;流行性結膜炎(はやり目)、原発性(単純ヘルペスウイルス等)・続発性(麻疹ウイルス等);急性脳炎、インフルエンザ菌・肺炎球菌・髄膜炎菌;細菌性髄膜炎、コクサッキーウイルス等;無菌性髄膜炎、肺炎マイコプラズマ;マイコプラズマ肺炎、クラミジア;クラミジア肺炎、急性麻疹ウイルス;成人性麻疹、クラミジア・トラコマティス;性器クラミジア感染症、単純ヘルペスウイルス;性器ヘルペスウイルス感染症、ヒトパピローマウイルス;尖形コンジローム、淋菌;淋菌感染症、MRSA;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、ペニシリン耐性肺炎球菌;ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、多剤耐性緑膿菌;薬剤耐性緑膿菌感染症、結核菌;結核等。以上の他、SARSコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸症候群)等の新型感染症。また、動物由来の感染症の人間への二次感染に対する予防にも本実施形態の機能性飲料の飲用が有効であると考えられる。特に、後述する実施例によれば、インフルエンザウイルス等の人間が口や鼻から吸い込むことによって感染する可能性の高い病原体の感染を極めて有効に予防することができるものと考えられる。 なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。ヒノキ科植物の抽出物として、例えばヒバ油に替えてヒバ抽出水を適用したり、それらの混合物を適用することができ、さらには一種又は複数種の含有化合物を適用することもでき、ヒノキ科の植物であれば青森ヒバ以外にも他のものを用いることもできる。また本発明は、上述した各種の剤形に限られず、適宜の剤形での提供が可能である。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、以下の説明によって本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、以下の各試験は、大阪府立公衆衛生研究所・感染症部門への委託により実施したものである。 <試験1:ヒバ由来物の抗インフルエンザウイルス効果比較試験>(1)目的:青森ヒバの水蒸気抽出物における水溶性又は油溶性のいずれの画分に抗インフルエンザウイルス活性があるかを調べる。(2)試験標品:(a)ヒバ抽出水;青森ヒバ材のオガ粉を水蒸気蒸留して得られる抽出液のうち水溶成分(下層)であり、具体的には100%ヒバ抽出水(商品名「森林の力」,株式会社トピックス製),(b)ヒバ油水溶液(ヒバ油60%);前記抽出液のうち油溶成分(上層)を所定量の乳化剤と共に水に溶解したもの、ヒバ油の容積率は全量の60%であり、具体的には天然シロアリ防除剤(商品名「水溶性ヒバ油HB-60」,株式会社トピックス製),(c)ヒノキチオール銅錯体;精製されたヒノキチオールの銅錯体。なお、各標品は下表1に示す数種類の希釈率で培養液により希釈して用いる。(3)試験方法:FFUアッセイ(Focus Forming Unit Assay)によるインフルエンザウイルスの感染試験を行う。具体的には96穴マイクロプレートに培養した所定量のイヌ腎臓由来のMDCK細胞(培養液:EAGLE MEM)に対してインフルエンザウイルス(H3N2型ヒトワクチン ニューカレドニア株)を感染させ、16時間後、免疫染色により感染細胞(1FFU=1感染性ウイルス)を染色し計測する。感染細胞数を50%に減少させた標品の濃度を50%Effective Concentration(EC50)とする。なお、インフルエンザウイルスは、前記培養液中に浮遊させた状態として、0.1ml(生存ウイルス数は約200個)をMDCK細胞を入れたマイクロプレートに供する。(4)試験結果:各標品に関し3回試験したFFUの平均値を求めた結果を表1に示す。 試験1の結果から、ヒバ油水溶液のEC50は希釈率625,000倍以上(ヒバ油原液(100%ヒバ油)に換算して1,041,667倍以上の希釈率)であり、抗インフルエンザウイルス活性が顕著に高いと考えられる。これに対して、ヒバ抽出水のEC50は約10倍希釈であり、ヒノキチオール銅錯体は無効である。ヒバ抽出水に抗インフルエンザ活性が認められる理由は必ずしも明らかでないが、ヒバ抽出水中に微量ながら酸性油が溶解していることが一因であると考えられる。 <試験2:ヒバ油の抗ウイルス効果試験>(1)目的:前記試験1において、ヒバ油が非常に高い抗インフルエンザウイルス活性を有することが認められたので、ヒバ油の投与タイミングによる細胞に対するインフルエンザウイルスの感染の相違を調べる。(2)試験標品:ヒバ油(試験1と同一のヒバ油水溶液)を、下表2の通りの各希釈倍率で用いる。(3)試験方法:試験1とほぼ同様のFFUアッセイによるインフルエンザウイルスの感染試験を行う。。ただし、(i)培地(EAGLE MEM)を入れたマイクロプレートに所定量の培養したMDCK細胞(0.1ml)を添加し、(ii)これにインフルエンザウイルス液(試験1と同一のもの、以下「ウイルス液」)を0.1ml(生存ウイルス数約200個/培養液)を添加する。そして、(iii)37℃で1時間インフルエンザウイルスをMDCK細胞に吸着させ、(iv)ウイルス液を吸引除去し、培地を添加して吸引する洗浄を2〜3回行い、さらに37℃で16時間MDCK細胞を培養する。ここで、(i)の段階で各希釈率のヒバ油水溶液をマイクロプレートに添加して(ii)の段階までに所定時間(10分)をあける場合を「感染前処理」、(ii)の段階でウイルス液と共に各希釈率のヒバ油水溶液をマイクロプレートに添加する場合を「吸着時」、(iv)の段階で16時間の培養後にヒバ油水溶液を添加する場合を「吸着後」、(ii)及び(iv)の段階の両方で各希釈率のヒバ油水溶液をマイクロプレートに添加する場合を「吸着時・後」として、「感染前処理」、「吸着時」、「吸着後」、「吸着時・後」の4パターンで免疫染色により感染細胞(1FFU=1感染性ウイルス)を染色し計測する。(4)試験結果:各試験区分に関し3回試験したFFUの平均値を求めた結果を表2に示す。 試験2の結果から、「吸着時」、「吸着時・後」において高い抗インフルエンザウイルス活性が認められ、それらのEC50はヒバ油水溶液の約12,500,000倍(ヒバ油原液に換算して約20,833,333倍)希釈である。一方、「吸着後」においては抗インフルエンザウイルス活性は殆ど認められない。さらに、「感染前処理」では、「吸着時・後」とほぼ同等の効果が認められた。以上のことから、ヒバ油にはインフルエンザウイルスが細胞に吸着する際又はそれ以前に細胞に接することで、インフルエンザウイルスの細胞への感染阻害活性を奏すると認められるので、ヒバ油はインフルエンザウイルスの細胞への吸着阻害作用を有するものと考えられる。その作用メカニズムは必ずしも明らかではないが、ヒバ油が細胞側に作用してインフルエンザウイルスの細胞への吸着以後のステップを阻害する可能性があり、主たる感染阻害メカニズムは吸着阻害であるものと考えられる。 <試験3:感染前処理時間の検討試験>(1)目的:試験2の結果を受けて、ヒバ油によるインフルエンザウイルスの細胞への感染阻害効果の認められる感染前処理時間を検討する。(2)試験標品:ヒバ油(試験1、試験2と同一のヒバ油水溶液)を、下表3の通りの各希釈倍率で用いる。(3)試験方法:試験2の方法に従う。ただし本試験の場合、ヒバ油を細胞培養液へ添加するのはインフルエンザウイルスを細胞培養液へ添加する前であり、ヒバ油の添加からインフルエンザウイルスの添加までの時間を「感染前処理時間」として下表3の通り複数通りに変化させる。(4)試験結果:各試験区分に関し3回試験したFFUの平均値を求めた結果を表3に示す。なお比較のため、インフルエンザウイルスとヒバ油水溶液とを同時に細胞培養液に添加する「吸着時」(試験2の試験方法を参照)におけるFFU値も測定する。 試験3の結果から、ヒバ油によるインフルエンザウイルスの細胞への吸着(感染)阻害効果の認められる感染前処理時間については、2分では不十分であり、30分では「吸着時」とほぼ同様の効果が認められる。感染前処理時間が5分の場合、EC50はヒバ油水溶液の約500,000倍(ヒバ油原液に換算して約833,333倍)希釈であり、100,000倍(同、約166,667倍)希釈では「吸着時」の効果とほぼ遜色ない効果が認められる。以上のことから、ヒバ油によるインフルエンザウイルスの細胞への感染阻害メカニズムは、必ずしも明らかではないが、ヒバ油が細胞膜(おそらくインフルエンザウイルスレセプターかその近傍)に結合し、ウイルスの吸着を阻害する可能性が考えられるが、ヒバ油が細胞内へ浸透して当該細胞内でのインフルエンザウイルス増殖ステップを阻害するという可能性も考えられる。 <試験4:ヒバ油の細胞毒性評価試験>(1)目的:ヒバ油を利用した抗インフルエンザウイルス剤の人間を含む動物への使用を考慮して、ヒバ油の細胞毒性評価を行う。(2)試験標品:ヒバ油(試験1、試験2、試験3と同一のヒバ油水溶液)を、適宜の各希釈倍率で用いる。(3)試験方法:培養液中にヒバ油を添加してMDCK細胞を16時間培養した後(ただし、培養液及び細胞は前記試験1〜3と同様のものを使用)、MTT法によりミトコンドリアの酵素活性を測定する。(4)試験結果:ヒバ油水溶液の25,000倍(ヒバ油原液に換算して約41,667倍)希釈では、酵素活性が72%に低下するが、125,000倍(同、約208,333倍)希釈では細胞毒性は認められない。また、ヒバ油水溶液を30分間感染前処理する場合では、1,000倍(同、約1,667倍)希釈でも細胞毒性は認められない。ヒノキ科植物の抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする病原体感染抑制剤。前記抽出物は、ヒノキ科植物の抽出油である請求項1記載の病原体感染抑制剤。前記抽出油は、ヒノキ科植物の破砕物又は粉末を水蒸気蒸留により得られる抽出物中の親油性成分を含有するものである請求項2記載の病原体感染抑制剤。剤形が、散剤若しくは細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、口中瞬間溶解型製剤、口腔内即崩壊錠、チュアブル剤、内服液剤若しくはドライシロップ剤、から選択される何れかの経口剤である請求項1、2又は3記載の病原体感染抑制剤。剤形が、外用液剤である請求項1、2又は3記載の病原体感染抑制剤。感染抑制対象たる病原体が、インフルエンザウイルスである請求項1、2、3、4又は5記載の病原体感染抑制剤。 【課題】ヒノキ科植物の抽出物を利用した新規な病原体感染抑制剤を提供する。 【解決手段】病原体感染抑制剤として、ヒバ油等のヒノキ科植物の抽出物を有効成分として含有させた。


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