タイトル: | 公開特許公報(A)_粉末醸造酢とその製造方法 |
出願番号: | 2004279374 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12J 1/00 |
弓長 可人 JP 2006087389 公開特許公報(A) 20060406 2004279374 20040927 粉末醸造酢とその製造方法 星和株式会社 504362558 鳥巣 実 100085291 中嶋 慎一 100117798 弓長 可人 C12J 1/00 20060101AFI20060310BHJP JPC12J1/00 102 5 OL 6 4B028 4B028BC06 4B028BL18 4B028BL24 4B028BL26 4B028BP26 本発明は食品に添加するための醸造酢の粉末化に関し、詳しくは高酸度(51%以上)の粉末醸造酢に関するものである。 醸造工程を経て製造される通常の醸造酢の酸度(酢酸濃度)は5〜15%といわれている。この種の醸造酢は、穀物または果実をアルコール醗酵させたのち、酢酸菌により酢酸発酵させるか、あるいはアルコールに穀物または果実の糖化液を加え、同じく酢酸菌により酢酸発酵させるかして製造される。この製造において、酢酸菌は自らが生成する酢酸によって生育限界が生じる。このときの酸度は15%前後であり、したがって酸度15%以上の醸造酢は製造できない。 こうした醸造酢の具体的な製造方法は各社、各国で異なっており、ドイツのメーカーが酸度20%の醸造酢の製造を開発したとの情報がある。また一方で、アメリカのメーカーが酸度30%の醸造酢を製造しているとの報告を受けたが、これは酸度15%以下の醸造酢を凍結乾燥して水分を除去し、酸度を高めたものであり、極めて高価である。 醸造酢に関する先行技術に、たとえば、醸造酢をアルカリ性物質で中和し、得られた酢酸塩液を加熱濃縮後、酸性物質を過剰に加え酸性下で減圧蒸留して酢酸を収得することにより醸造酢を濃縮する方法が提案されている(特許文献1参照)。 そのほか、酢酸濃度つまり酸度15%の醸造酢を、無水酢酸ナトリウムに対し約45質量%混和させ、これをペースト状から徐々に晶出して撹拌することにより、粉末化した醸造酢を製造できる、との記載がある(特許文献2参照)。特開昭63−137669号公報(特許請求の範囲、実施例1〜3)特公平6−52号公報(第2頁第3欄第38〜48行目) しかしながら、上記した公報に記載の醸造酢の濃縮方法および粉末醸造酢では、下記のような不都合がある。すなわち、 特許文献1に記載の醸造酢の濃縮方法により酸度が80%あるいはそれ以上の高酸度の醸造酢を製造できるが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質で中和するとともに、塩酸や硫酸などの酸性物質を過剰に加えて酸性にした状態で濃縮するために、本発明が対象とする食品に使用するには不向きである。 一方、特許文献2に記載の粉末醸造酢は、食品に使用できる点では申し分ないが、使用する醸造酢の酸度が15%程度と低く、したがって多量の水分を含むことから、粉末化に手間がかかるうえに、醸造酢の割合が無水酢酸ナトリウムの45〜50質量%、つまり粉末醸造酢の約1/3であるので、粉末醸造酢の酸度は約5%になる。このため、たとえば食品の日持ち向上剤として使用する場合、食品全体のpHを6以下に低下させる必要があるので、多量の粉末醸造酢を使用しなければならない。しかし、その場合には、酢酸ナトリウムの使用量が増え、「えぐみ」が出るために食品本来の味が悪くなるおそれがあり、また粉末醸造酢を多量に使用するために酸味が強くなる。 この発明は上述の点に鑑みなされたもので、酸度が高く、少量の使用により食品のpHを低減でき、味を落とさずかつ酸味を抑えて食品の日持ちを向上でき、醸造酢の粉末化も容易な粉末醸造酢とその製造方法を提供することを目的としている。 上記の目的を達成するために本発明に係る粉末醸造酢は、醸造工程を経て製造した酸度51%以上の濃縮醸造酢を無水酢酸ナトリウム、デキストリンなどの粉末基材に吸着・混合して粉末化したことを特徴とするものである。 上記の構成を備えた粉末醸造酢によれば、醸造工程を経て製造される醸造酢を繰り返し蒸溜濃縮することで酸度が51%以上と高い醸造酢を粉末基材に噴霧して吸着させ粉末化しているから、粉末基材に対し混合する醸造酢の割合をたとえば30質量%と比較的低くでき、したがって高酸度の醸造酢と相俟って全体の水分量がたとえば15質量%以下と低くなり、粉末化が容易でサラサラの粉末醸造酒が得られる。しかも、高酸度の醸造酢を用いたので、粉末醸造酢としての酸度も15%以上と高いため、食品に添加する際に比較的少量で済み、食品の味に影響を及ぼさず、つまり酸味が強くならない。逆に、鮨米に酸味を付ける時には、少量添加するだけでよい。さらに、粉末醸造酢を食品の日持ち向上剤として使用する場合に、少量の添加で6.0、5.5、5.0という具合に食品のpHを低く調整できる。 請求項2に記載のように、酸度99%の前記濃縮醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に対し吸着・混合して粉末化することができる。 請求項2記載の粉末醸造酢によれば、醸造酢が高酸度であることから、酸度が29.7%で水分量は0.3質量%とごく僅かであるので、粉末化が容易で、サラサラした状態になる。しかも、濃縮醸造酢中の酢酸成分が酢酸ナトリウムと混合されることで、性状が安定する。 請求項3に記載のように、前記粉末基材を無水酢酸ナトリウムとし、pHが5.5未満で酸度を15%以上にすることが好ましい。 請求項3記載の粉末醸造酢によれば、請求項2の粉末醸造酢と同様に醸造酢中の酢酸成分が安定し、また従来の一般的な粉末醸造酢に比べて酸度が高いので、少量の粉末醸造酢を食品等に添加するだけでpHを低く調整できる。 請求項4に記載のように、前記粉末醸造酢を食品の日持ち向上剤として用いることができる。 請求項4記載の粉末醸造酢によれば、酸度が高くpHが低いので、少量を食品に添加するだけでpHを低く調整でき、したがって食品の味を落とさずに食品の日持ちを向上できる。。 請求項5に記載の粉末醸造酢の製造方法は、通常の醸造酢の蒸溜を繰り返し行うことにより酸度51%以上に濃縮し、この濃縮醸造酢を無水酢酸ナトリウム、デキストリンなどの粉末基材に霧状に噴霧して吸着させて混合し、撹拌しながら乾燥させて粉末化することを特徴とするものである。 上記の構成を備えた粉末醸造酢の製造方法によれば、通常の醸造酢つまり醸造工程を経て得られる醸造酢を蒸溜して高酸度に濃縮したのちに、粉末基材に噴霧して均一に混合させて粉末化しているので、水分量が少なく粉末化が容易に行える。 本発明に係る粉末醸造酢とその製造方法は上記の構成からなるから、次のような優れた効果がある。すなわち、粉末基材に対し混合する醸造酢の割合を低くでき、したがって高酸度の醸造酢と相俟って全体の水分含有量が低いので、粉末化が容易なうえにサラサラの粉末醸造酢が得られ、水分を嫌う食品(たとえば即席鮨飯)への使用が可能である。また、とくに高酸度の醸造酢を用いたので、粉末醸造酢としての酸度も高く、食品に添加する際に比較的少量で済み、食品の味に影響を及ぼしにくい。さらに、粉末醸造酢を食品の日持ち向上剤として使用する場合に、少量の添加で食品のpHを低く調整でき、ひいては輸送コストを低減できる。 以下、本発明に係る粉末醸造酢について実施例を説明する。 本発明の粉末醸造酢に使用する醸造酢には、穀物または果実をアルコール醗酵させたのち、酢酸菌により酢酸発酵させた、いわゆる醸造工程を経て製造された醸造酢を用いており、その酸度は5〜15%である。この醸造酢を常圧または減圧下で加熱することで酢酸成分を蒸発させて冷却することにより回収する蒸溜・濃縮工程を繰り返し、酸度が51%の濃縮醸造酢とする。この濃縮醸造酢を粉末基材に霧状に噴霧して吸着させ、撹拌しつつ乾燥させて粉末にするものである。粉末基材には、無水酢酸ナトリウム等の有機酸塩、リン酸塩等の無機塩、デキストリン等の糖類、澱粉等の多糖類などを使用でき、いうまでもなくいずれも粉末状の素材からなる。(実施例1) 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢を、常圧下で60℃前後まで加熱し、酢酸成分を蒸発させ、回収して冷却することにより蒸溜・濃縮する。この蒸溜・濃縮作業を繰り返し行うことにより、醸造酢の酸度を51%まで濃縮する。 こうして濃縮した醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に霧状に噴霧し、満遍なく均一に吸着させ、混合する。そして、無水酢酸ナトリウムを撹拌することにより醸造酢を粉末化する。この結果、酸度15.3%のサラサラの粉末醸造酢が得られた。(実施例2) 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢を、実施例1と同様の方法で蒸溜・濃縮することにより、醸造酢の酸度を51%まで濃縮する。濃縮した醸造酢30質量部を、無水デキストリン70質量部に霧状に噴霧し、満遍なく均一に吸着させ、混合し、無水デキストリンを撹拌することにより醸造酢を粉末化し、酸度15.3%のサラサラの粉末醸造酢が得られた。(実施例3) 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢を、実施例1と同様の方法で蒸溜・濃縮(ただし、繰り返し回数を増加)することにより、醸造酢の酸度を99%まで濃縮する。濃縮した醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に霧状に噴霧し、満遍なく均一に吸着させ、混合し、無水デキストリンを撹拌することにより醸造酢を粉末化し、酸度29.7%のサラサラした粉末醸造酢が得られた。(比較例1) 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢153質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に噴霧して混合させる。醸造酢中に含まれている水分量が多すぎてドロドロの状態となり、水分だけを乾燥させて除去することができなかった。水分を加熱して蒸発させようとしても酢酸分の蒸発温度が低く、水分だけを蒸発させられないからである。(比較例2) 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢153質量部を、無水デキストリン70質量部に噴霧して混合させる。比較例1と同様の理由により、醸造酢を粉末化できなかった。(比較例3) 醸造工程を経て製造された醸造酢を蒸溜・濃縮して得た酸度30%の濃縮醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に噴霧して混合させた。撹拌しながら乾燥させて醸造酢を粉末化させ、酸度14.7%の粉末醸造酢を得た。 ところで、本発明の粉末醸造酢は食品に添加し酸味を付与するほか、主には食品の日持ち(保存性)を向上するための日持ち向上剤として使用する。日持ち向上剤として使用する場合は、粉末基材に無水酢酸ナトリウムを使用するのが望ましい。理由は、醸造酢中に含まれている酢酸成分が無水酢酸ナトリウムと混合した状態で、性状が非常に安定するからであり、また無水酢酸ナトリウムが醸造酢の粉末化において最適であるからである。 とくに日持ち向上剤として用いる場合、粉末醸造酢の酸度を高くし、少量の粉末醸造酢を食品に添加するだけで、pHを低く(酸性)調整できるようにする必要がある。食品の味に影響を及ぼさず、かつ粉末醸造酢が少量で済むようにするためである。このような目的を達成するためには、粉末基材である無水酢酸ナトリウムに混合する醸造酢の酸度をできるだけ高くすべきであり、本発明では酸度51%、好ましくは80%以上の濃縮醸造酢を使用している。 食品の味に関して、粉末醸造酢に含まれる無水酢酸ナトリウムの使用量が影響する。つまり、下記の表に示すとおり、無水酢酸ナトリウムの添加量が食品の1質量%以上になると、「えぐみ」が生じる。 上記実施例3の粉末醸造酢、比較例3の粉末醸造酢および何も添加しない場合の3例について、食品として「豆腐のあえもの」を用いて保存性および味を室温20℃で試験した。結果は下記のように示すとおりである。 醸造工程を経て製造した酸度51%以上の濃縮醸造酢を無水酢酸ナトリウム、デキストリンなどの粉末基材に吸着・混合して粉末化したことを特徴とする粉末醸造酢。 酸度99%の前記濃縮醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に対し吸着・混合して粉末化した請求項1記載の粉末醸造酢。 前記粉末基材を無水酢酸ナトリウムとし、pHが5.5未満で酸度が15%以上である請求項1記載の粉末醸造酢。 前記粉末醸造酢を食品の日持ち向上剤として用いる請求項1〜3のいずれか記載の粉末醸造酢。 通常の醸造酢の蒸溜を繰り返し行うことにより酸度51%以上に濃縮し、この濃縮醸造酢を無水酢酸ナトリウム、デキストリンなどの粉末基材に霧状に噴霧して吸着させて混合し、撹拌しながら乾燥させて粉末化することを特徴とする粉末醸造酢の製造方法。 【課題】 酸度が高く、少量の使用により食品のpHを低減でき、味を落とさずかつ酸味を抑えて食品の日持ちを向上でき、醸造酢の粉末化も容易な粉末醸造酢とその製造方法を提供する。 【解決手段】 醸造工程を経て製造された酸度5%の醸造酢を、常圧下で60℃前後まで加熱し。酢酸成分を蒸発させ、回収して冷却することにより蒸溜・濃縮する。この蒸溜・濃縮作業を繰り返し行うことにより、醸造酢の酸度を51%まで濃縮する。濃縮した醸造酢30質量部を、無水酢酸ナトリウム70質量部に霧状に噴霧し、満遍なく均一に吸着させ、混合し、無水酢酸ナトリウムを撹拌することにより醸造酢を粉末化する。【選択図】 なし