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タイトル:公開特許公報(A)_新規なエステル加水分解酵素およびそれを用いた光学活性体の製造方法
出願番号:2004258090
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 9/16,C12P 41/00,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

佐藤 栄治 湯 不二夫 JP 2006067962 公開特許公報(A) 20060316 2004258090 20040906 新規なエステル加水分解酵素およびそれを用いた光学活性体の製造方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 佐藤 栄治 湯 不二夫 C12N 15/09 20060101AFI20060217BHJP C12N 1/15 20060101ALI20060217BHJP C12N 1/19 20060101ALI20060217BHJP C12N 1/21 20060101ALI20060217BHJP C12N 9/16 20060101ALI20060217BHJP C12P 41/00 20060101ALI20060217BHJP C12N 5/10 20060101ALI20060217BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N9/16C12P41/00 DC12N5/00 A 13 OL 17 4B024 4B050 4B064 4B065 4B024AA01 4B024AA07 4B024BA80 4B024CA04 4B024DA02 4B024DA05 4B024DA11 4B024EA04 4B024GA11 4B050CC01 4B050CC03 4B050DD03 4B050LL05 4B064AD01 4B064CA21 4B064CC24 4B064DA01 4B064DA11 4B065AA01X 4B065AA57X 4B065AA58Y 4B065AA87X 4B065AB01 4B065BA01 4B065CA10 4B065CA31 4B065CA44 4B065CA47 本発明は、有用な新規なエステル加水分解酵素に関する。また、本酵素の利用による、光学活性カルボン酸、あるいは光学活性アルコールの効率的な製造方法、特に、医薬、農薬等の原料又は中間体として有用な光学活性α−トリフルオロメチル乳酸及びその対掌体エステルの効率的な製造方法に関する。 エステル加水分解酵素を用いた光学活性体の製造は多くの文献に記載されている。また、エステル加水分解酵素は種々の生物由来のものが知られている。しかし、一般に酵素は基質特異性が高く、個々の酵素により受容できる基質に限界があり、利用範囲も限定されたものになっているのが現状である。従って、新規なエステル加水分解酵素が望まれていた。 一方、光学活性α−トリフルオロメチル乳酸及びそのエステルのエステル加水分解酵素を応用した製法については以下の文献に示すように多くの酵素によりその製法が提案されている。これらの方法で使用されている微生物学的触媒は、特許文献1にはキャンディダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属およびリゾプス(Rhizopus)属由来の酵素が記載されている。特許文献2にはキャンディダ(Candida)属およびサーモアナエロビューム(Thermoanaerobium)属由来の酵素が記載されている。特許文献3にはキャンディダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属およびフミコーラ(Humicola)属由来の酵素が記載されている。特許文献4にはアルスロバクター(Arthrobacter)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、キャンディダ(Candida)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、フミコーラ(Humicola)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、リゾプス(Rhizopus)属、ストレプトマセス(Streptomyces)属、サーマス(Thermus)属、ブタ肝臓、ブタ膵臓および牛腎臓を起源とする酵素小麦を起源とする酵素が記載されている。特許文献5にはアエロモナス(Aeromonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アセトバクター(Acetobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、イサタケンキア(Issatchenkia)属、ウイリオポシス(Williopsis)属、エセリキア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、オウレオバクテリウム(Aureobacterium)属、オウレオバシディーム(Aureobasidium)属、オベスムバクテリウム(Obesumbacterium)属、カエトリウム(Chaetomium)属、カルダリオマイセス(Caldariomyces)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、ジベレラ(Gibberella)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、クレブシラ(Klebsilla)属、ゲオトリカム(Geotrichum)属、コウニングハメリア(Cunninghamella)属、コクリア(Kocuria)属、コマモナス(Comamonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ジーゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ジーゴリンチス(Zygorhynchus)属、シトロバクター(Citrobacter)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ステノトロホナス(Stenotrophomonas)属、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、スポリディオボルス(Sporidiobolus)属、セラチア(Serratia)属、デバリヨマイセス(Debaryomyces)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ノカルデア(Nocardia)属、バーチシリウム(Verticillium)属、パントエア(Pantoea)属、ピキア(Pichia)属、ピチオプシス(Pythiopsis)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、プロヴィデンシア(Providencia)属、プロテウス(Proteus)属、ペニシリム(Penicillium)属、ボトリオティニア(Botryotinia)属、マイコプラナ(Mycoplana)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、モルゲネリア(Morganella)属、モルテエレラ(Mortierella)属、ヤマダジーマ(Yamadazyma)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコスポリディーム(Leucosporidium)属、ルテオコッカス(Luteococcus)属、ロッドコッカス(Rhodococcus)属、ロドスポリジーム(Rhodosporidium)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属およびロドバクター(Rhodobactor)属由来の酵素が記載されている。非特許文献1にはバチルス(Bacillus)属およびストレプトマセス(Streptomyces)属由来の酵素が記載されている。 しかし、これらの方法は、既存の酵素や微生物を下記一般式(I): に示されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルに作用させたに過ぎず、そのため、光学選択性が低く、高い光学純度の生成物を得ようとすれば、理論量以上に反応させ(収率を下げ)、残存エステル(未反応物)を回収する等の工夫が必要であった。また、微生物菌体あるいはその処理物を触媒として用いた場合は、その酵素が特定されておらず、触媒生産を効率的に実施することができないとともに、混合酵素の状態で使用することで、同様に高い選択率で生成物を得るには困難を必要としていた。特表2000-509254号公報独国特許出願公開19725802号明細書特開平11-75889号公報特開2000-14397号公報特開2003-079392号公報Kurt Konigsberger et.al,Tetrahedron Asymmetry, (1999),10(4), 679−87 本発明は、医薬、農薬等の原料又は中間体として有用な光学活性カルボン酸、あるいは光学活性アルコールの製造を効率的に実施しうる新規な酵素触媒および本酵素触媒を用いた該光学活性体の製造、特にα−トリフルオロメチル乳酸及びその対掌体エステルをより効率的且つ新たな製造方法に関する。 本発明者らは上記課題を解決すべく新たな酵素触媒を探索し、鋭意検討を重ねた結果、新規なエステル加水分解酵素を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。 (1)配列番号1に示すアミノ酸配列をN末端アミノ酸配列に有するエステル加水分解酵素。(2)配列番号2に示すアミノ酸配列を内部アミノ酸配列に有するエステル加水分解酵素。(3)分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した分子量が45〜47kDaである、請求項1または2記載のエステル加水分解酵素。(4)下記一般式(I):(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをR選択的に加水分解する(1)〜(3)のいずれかに記載のエステル加水分解酵素。(5)α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルに対する反応至適pHをpH7〜7.5付近に有する請求項1〜4いずれかに記載のエステル加水分解酵素。(6)ゴングロネラ(Gongronella)属に属する微生物由来である(1)〜(5)のいずれかに記載のエステル加水分解酵素。(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵素をコードする遺伝子DNA。(8)(7)記載の遺伝子DNAを有する組換えベクター。(9)(8)記載の組換えベクターを有する形質転換体または形質導入体。(10)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または(9)記載の形質転換体または形質導入体を培養し、得られる培養物から採取されたエステル加水分解酵素。(11)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または(9)記載の形質転換体または形質導入体を培養し、得られる培養物からエステル加水分解酵素を採取することを特徴とするエステル加水分解酵素の製造方法。(12)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または(9)記載の形質転換体または形質導入体を培養して得られる培養物又は該処理物を不斉炭素を有するカルボン酸エステルに接触させ、光学活性加水分解物またはその未反応対掌体エステルを採取することを含む光学活性加水分解物またはその対掌体エステルの製造方法。(13)下記一般式(I): (式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルに、(1)〜(6)のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または(9)記載の形質転換体または形質導入体を培養して得られる培養物または該処理物を接触させ、光学活性α−トリフルオロメチル乳酸またはその対掌体エステルを採取することを含む光学活性α−トリフルオロメチル乳酸またはその対掌体エステルの製造方法。 新規なエステル加水分解酵素が提供される。本酵素を利用することにより、光学活性カルボン酸、あるいは光学活性アルコールの効率的な生産方法が提供される。特に、医薬、農薬等の原料又は中間体として有用な光学活性α−トリフルオロメチル乳酸及びその対掌体エステルの効率的な製造方法を提供する。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の新規なエステル加水分解酵素は、下記の部分配列および理化学的性質を有する。 1) N末端アミノ酸配列: 配列番号1;Xaa Leu His Met Leu Phe Gln Ile Leu Glu (Xaaは未知アミノ酸)。 2)内部アミノ酸配列: 配列番号2;Glu Thr Arg Gln Phe Ile Xaa Tyr Val Lys (Xaaは未知アミノ酸)。 3)分子量:45〜47kDaの範囲(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)。 4)作用: 下記一般式(I):(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをR選択的に加水分解する。 5)反応至適pH:pH7〜7.5付近(α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルに対する)。 また、本発明は、本酵素をコ−ドする遺伝子DNAに関する。本発明の遺伝子DNAは、以下の方法により、当業者が容易に調製することができる。 ゴングロネラ属に属し、下記一般式(I): で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをR選択的に加水分解する能力を有する微生物を定法により培養する。 培養して得られた菌体を細胞壁分解酵素によりプロトプラストとし、常法により染色体DNAを調製する。精製した染色体DNAを適当な制限酵素(HindIII,EcoRI,BamHI,Sau3AIなど)により完全もしくは部分消化し、2〜8 kb程度のDNAに断片化する。該DNA断片を大腸菌の発現ベクター、例えば、pUC18(タカラバイオ)、pTrc99A()、pET誘導体(Novagen)、pMAL-p2(NEB製)などに導入することにより染色体DNAを含む組換えプラスミド(染色体DNAライブラリー)を作製する。 得られた組換えプラスミドで大腸菌(エシェリヒア・コリ JM109株など)を形質転換する。得られた形質転換株をプラスミドに応じた抗生物質(例えばβ−ラクタマーゼ遺伝子を持つプラスミドではアンピシリンを50 mg/L)を含むLB培地(Bacto-Tryptone 10g, Bacto-Yeast extract 5g, 塩化ナトリウム 5g, 寒天 15g /L)などのプレート上で培養する。適当な誘導物質(例えば、lacレプレッサー及びlacオペレーターにより調節を受けるlac,tac ,trcプロモーター等ではIPTG)などの添加や温度上昇などにより酵素遺伝子を発現させる。 得られた形質転換体株のコロニーをプレートから濾紙などに写し取り、ブロモクレゾールパープル等のpH指示薬を含む反応液(例えば、10mM Tris-HCl (pH8)、0.5%ラセミ体α-トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステル、0.2% ブロモクレゾールパープル )に濾紙等を浸し反応させる。ゴングロネラ属由来のエステル加水分解酵素生産能が付与されたプラスミドを含む形質転換体のみが変色する。ブロモクレゾールパープルの場合には黄色に変化する。 変色することが確認された形質転換体よりプラスミドを調製し、該プラスミドにより形質転換された大腸菌が同様の変色反応を示すことを確認した後、該形質転換体をラセミ体α-トリフルオロメチル乳酸エステルと反応させ、後述するHPLC等を用いた分析をすることにより、該形質転換体がα-トリフルオロメチル乳酸エステルの立体選択的加水分解能を有することを確認する。 該プラスミドを部分的に欠失させた種々のプラスミドを作成し、欠失プラスミドにより形質転換された大腸菌がα-トリフルオロメチル乳酸エステルの立体選択的加水分解能を有するか否かを上記の方法により調べ、エステル加水分解酵素をコードするDNAの領域を特定する。特定されたDNAの塩基配列を解析し、開始コドン、終止コドン、翻訳産物の分子量などからオープンリーディングフレームを特定することにより、目的のエステル加水分解酵素をコードするDNAをクローニングすることができる。 なお、ゴングロネラ属の遺伝子中にイントロンを含む場合には、染色体DNAをランダムに大腸菌のプラスミドに挿入せず、メッセンジャーRNA(mRNA)を調製し、mRNAから逆転写酵素などを利用してcDNAライブラリーを調製する。mRNAは、AGPC(acid guaniginium phenol chloroform)法等を用いて菌体より抽出したtotal RNAを、オリゴdTカラム等を用いて調製する。完全長のcDNAを取得する場合には、GeneRacer Kit (Invitrogen) 等が有効である。 cDNAを大腸菌や酵母の発現ベクターに導入することにより機能的に発現させることができる。このとき、酵母の宿主ベクター系としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などを利用できる。 また、精製された酵素のN末端アミノ酸配列あるいは内部アミノ酸配列情報から、目的酵素をコードするDNAを単離することも可能である。この場合、完全なアミノ酸配列を決定するは必要ない。例えば、適切なアミノ酸配列が同定されたら、その配列に関する情報に基づき、PCR用のプライマーとしてのオリゴヌクレオチドセットを合成する。本発明において、PCRによるエステル加水分解酵素遺伝子のクローニングのために用いるプライマーは、ゴングロネラ属から精製されたエステル加水分解酵素遺伝子のN末端アミノ酸配列および内部ペプチド断片のアミノ酸配列に基づく。本酵素遺伝子に関するDNA断片(部分DNA配列)は、ゴングロネラ属染色体DNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、上述プライマー(オリゴヌクレオチドセット)を用いたPCR増幅によって生成される。増幅されたDNA断片は、ゴングロネラ属エステル加水分解酵素遺伝子の全体をコードするDNA断片をクローニングするためのプローブとして用いることができる。 こうして得られたDNA断片をプローブとしたハイブリダイゼーション法を用い、上述染色体DNAライブラリーあるいはcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、エステル加水分解酵素遺伝子の全体をコードするDNA断片を含む目的組換えプラスミドを取得する。 本発明の新規なエステル加水分解酵素はゴングロネラ(Gongronella)属あるいはそれら近縁属から得ることができる。そのような微生物としては、例えばGongronella butleri が挙げられる。菌株分譲機関より容易に入手することが可能である。特に好ましくはGongronella butleri R-466株(FERM P-19110)が例示される。この微生物は本発明者らが新たに土壌中より分離したもので、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に寄託されており、その受託番号はFERM P-19110である。その生物学的性状は以下の通りである。 これらの微生物を培養するための培地としては、通常これらの微生物が生育し得るものであれば何れのものでも使用できる。炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロースやマルトース等の糖類、酢酸、クエン酸やフマル酸等の有機酸あるいはその塩、エタノールやグリセロール等のアルコール類等を使用できる。窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキスやアミノ酸等の一般天然窒素源の他、各種無機、有機酸アンモニウム塩等が使用できる。その他、無機塩、微量金属塩、ビタミン等が必要に応じて適宜添加される。また、高い酵素活性を得るために、一般式(I)で示されるα−トリフルオロメチル乳酸エステルはもちろん、エステル結合あるいはアミド結合を持つ化合物等を酵素産生の誘導物質として培地に添加することも有効である。その培養は常法に従って行えばよく、例えば、pH4〜10、温度15〜40℃の範囲にて好気的に6〜96時間培養する。 本発明の酵素組成物は、以下の調製方法により得ることができる。すなわち、上記微生物菌体あるいは培養液等を冷却下、超音波、フレンチプレス等によりすりつぶした後、リン酸バッファー等のpH6〜8の緩衝液に懸濁する。 上記菌体破砕液を遠心分離または濾過等により残渣を除去する。このようにして、清澄な酵素含有抽出溶液を得る。 酵素の精製に常用される(1)沈澱による分画、(2)各種クロマトグラフィー、(3)透析、限外濾過等による低分子物質の除去方法などを、単独で、適宜組み合わせて、または繰り返して使用することにより該抽出液から目的の酵素を単離することができる。 (1)の沈澱による分画に使用される物質は、水に対する溶解度が高く、溶解度の温度変化が少ない点で硫酸アンモニウム(硫安)が好ましい。添加する濃度は特に制限はないが、目的酵素を収率良く回収でき、しかも他の蛋白質成分と分離できる条件が好ましい。例えば、30〜70%硫酸アンモニウムを用いることにより、効率よく分画することができる。 (2)のクロマトグラフィーとしては、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。 a)ゲル濾過法は、タンパク質を分子量の大きさで分ける手法であり、ゲル粒子が持つ網目構造により、目的とするタンパク質の分子量に応じて選択することができる。ゲル濾過に使用されるカラムとしては、例えばSephadex 系、Seperose系、 Sephacryl系カラム(いずれもAmersham Bioscience)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 b)イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質が両性電解質であることを利用した分離法であり、陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーがある。陽イオン交換クロマトグラフィーのための交換基にはカルボキシメチル(CM)が用いられ、例えばCM-Toyopearl(東ソー)、CM-Cellulofine(生化学工業)、CM-Sephadex(Amersham Bioscience)カラム等が挙げられる。また、陰イオン交換クロマトグラフィーのための交換基にはジエチルアミノエチル(DEAE)が用いられ、例えばDEAE-Toyopearl系(東ソー)、DEAE-Cellulofine系(生化学工業)、DEAE-Sephadex系、DEAE-Seperose系(Amersham Bioscience)カラム等が挙げられる。そのほか、SP-Seperose系、Q-Seperose系、Mono−Q系等のカラムも挙げられる。但し、これらのカラムに限定されるものではない。 c)疎水性クロマトグラフィーは、タンパク質とゲルに結合したリガンド間の疎水的相互作用に基づく分離手法であり、例えば、Butyl-Superose系、Phenyl-Superose系、Octyl-Superose系のカラムが用いられる。また、移動相を極性有機溶媒、固定相を長鎖の無極性リガンドとし、両相間で溶質の分配を行う逆相クロマトグラフィー(例えばPEP-PRC, TSK-ODS等)を利用することもできる。 d)アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質や酵素に特異的に結合する物質をカラムにつけ、特異的結合反応を利用して目的とするタンパク質等を分離することを特徴とするものであり、アガロース(Sepharose)、デキストラン(Sephadex)、セルロース、ポリアクリルアミド(Biogel P)、多孔性シリカビーズ等を支持体に用いたものがある。 (3)透析、限外濾過等 透析は、セロハン製の透析チューブに試料液を入れ、大量の純水又は低濃度の緩衝液に浸すことにより低分子化合物をセロハンチューブの外側に透過させる手法である。 限外濾過法は、限外濾過膜(平板膜、中空繊維ホロファイバー)を用いて、目的のタンパク質を濃縮する手法である。カットオフ分子量は500〜500,000程度の範囲である。手法としては加圧撹拌法、強制循環式濃縮法(ホロファイバー)、遠心法がある。 本発明においては、上記精製手法のうち硫安塩析、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーを組み合わせて用いることが好ましい。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて酵素の単一性の確認あるいは分子量の測定ができる。精製されたエステル加水分解酵素は上述したような性質を有している。 また、本発明の酵素組成物は、上記特性を有し、複数の酵素活性物質を含む混合物であってもよく、それらの活性物質が単離された個別の活性物質からなる酵素組成物(又は酵素自体)をも包含する。 光学活性加水分解物またはその未反応対掌体エステルの製造について説明する。 本発明の酵素、または、該酵素を産生する形質転換体もしくはその処理物を、不斉炭素を有するカルボン酸エステルに接触させ、不斉加水分解することで、光学活性加水分解物またはその未反応対掌体エステルを採取することできる。不斉炭素を有するカルボン酸エステルは、カルボン酸側に不斉炭素を有する場合、アルコール側に不斉炭素を有する場合あるいはカルボン酸側およびアルコール側両方に不斉炭素を有する場合がある。また、不斉炭素の数としてもひとつまたは複数個の場合がある。本発明である新規エステル加水分解酵素により、不斉加水分解が実施される限りにおいて特に制限はない。通常、ひとつの不斉炭素を有する化合物に応用する。カルボン酸側に不斉炭素を有する化合物が好ましい。一般式(I)に示されるようなα位に不斉炭素に作用させることが特に好ましい。 本発明において、光学活性加水分解物とは該エステル結合を不斉加水分解して、カルボン酸側に不斉炭素を持つ場合は、光学活性カルボン酸ことを表す。また、アルコール側に不斉炭素を持つ場合は、光学活性アルコール表す。 すなわち本発明はカルボン酸側に不斉炭素を持つ場合は、光学活性カルボン酸およびその対掌体エステルを製造することができる。アルコール側に不斉炭素を持つ場合は光学活性アルコールおよびその対掌体エステルを製造することができる。 例えば、一般式(I)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルを不斉加水分解させ、光学活性α−トリフルオロメチル乳酸及びその対掌体エステルを製造することができる。 一般式(I)においてRは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等の炭素原子数2〜8のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の炭素原子数2〜8のアルキニル基等が例示される。また、この炭化水素基は、その炭素原子に結合する水素原子がハロゲン等の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のような炭素原子数1〜6の非置換の直鎖炭化水素基である。 なお、本発明において、酵素とは、その使用形態は特に限定されず、粗酵素、精製酵素または公知の方法により固定化された固定化物等も含まれる。また、本発明において、形質転換体または形質導入体とは、本発明の酵素をコードする遺伝子を導入され、該遺伝子が機能的に発現した異種生物体をいい、処理物とはアセトン沈殿、凍結乾燥、機械的並びに酵素的方法による細胞壁の破砕した無細胞抽出物、界面活性剤、有機溶媒などにより細胞壁の透過性を変化させたものなどをいう。 本発明において、不斉炭素を持つカルボン酸エステルの光学選択的加水分解は、例えば以下の方法で行うことができる。反応溶媒に基質を溶解もしくは懸濁する。また、基質を反応溶媒に添加する前および/または添加した後に触媒となる本発明の酵素および/または該酵素を産生する形質転換体もしくはその処理物を添加する。そして、反応温度、必要により反応液のpHを制御しながら反応を行う。基質がラセミ体の場合は通常半量程度が加水分解されるまで反応を行う。場合によっては反応の初期段階で反応を中断したり、あるいは過剰に反応させることもある。 反応液の基質濃度は、0.1 〜80重量%の間で特に制限はないが、生産性等を考慮すると0.5〜50重量%の濃度で実施するのが好ましい。反応液の触媒濃度は、その活性で適宜決定するもので特に制限はないが、通常、0.0001〜20重量%であり、好ましくは 0.001 〜10重量%である。反応液のpHは、用いる触媒の至適pHに依存するが、一般的にはpH3〜11の範囲である。化学的加水分解反応による光学純度の低下および収率の低下を抑えることができるという点でpH4〜9の間で反応を行うのが好ましい。また、反応が進行するに従いpHが低下してくるが、この場合は適当な中和剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を添加して最適pHに調整することが望ましい。反応温度は化学的加水分解反応の抑制および用いる触媒の至適温度によって適宜決定されるもので特に制限はないが、0〜70℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。 反応溶媒は、通常イオン交換水、緩衝液等の水性媒体を使用するが、有機溶媒を含んだ系でも反応を行うことができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、その他アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等を適宜使用できる。また、これらの有機溶媒を水への溶解度以上に加えて2層系で反応を行うことも可能である。有機溶媒を反応系に共存させることで、選択率、変換率、収率等が向上することもある。 反応時間は、通常、1時間〜1週間、好ましくは1〜72時間であり、そのような時間で反応が終了する反応条件を選択することが好ましい。尚、以上のような基質濃度、触媒濃度、pH、温度、溶媒、反応時間またはその他の反応条件は該条件における反応収率、光学収率等を勘案して目的とする光学活性化合物が最も多く採取できる条件を適宜選択することが望ましい。 上述の反応により、不斉炭素を持つカルボン酸エステルは不斉加水分解される。カルボン酸側に不斉炭素を持つ場合においては光学活性カルボン酸およびその対掌体エステルを、アルコール側に不斉炭素を持つ場合においては光学活性アルコールおよびその対掌体エステルを製造することができる。 生成した光学活性カルボン酸あるいは光学活性アルコールを単離後、再びエステル化したもの、またはそれぞれの未反応対掌体エステルを再度同様な反応に供することで、さらに高光学純度の光学活性体の製造も可能である。 生成した光学活性体とそれぞれの未反応対掌体エステルの反応混合液からの単離は抽出、蒸留、昇華、カラム分離等通常の単離法で行うことができる。 例えば、α−トリフルオロメチル乳酸類の場合は、反応液のpHを中性付近に調整後、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等、一般的な有機溶媒によりS体α−トリフルオロメチル乳酸エステルを抽出分離することができる。一方、R体α−トリフルオロメチル乳酸は、上記抽出残液に硫酸、塩酸等の強酸を加えた後に、上記と同様の一般的な有機溶媒で抽出分離することができる。 なお、光学活性α−トリフルオロメチル乳酸の定量および光学純度は、以下に示す高速液体クロマトグラフィー条件により容易に測定することができる。 カラム: Sumichiral OA-5000、住化分析センター株式会社製、4.6×150 mm, 移動相:2mM CuSO4水溶液/2-プロパノール=85/15 流速:1.0 mL/分 検出:UV 230nm 光学純度(エナンチオマー過剰率;%e.e.)は、一般的に、高速液体クロマトグラフィーによる(S)-α−トリフルオロメチル乳酸及び(R)-α−トリフルオロメチル乳酸の各ピーク面積から、以下の式によって算出することができる。R>Sの場合:R体の光学純度(%e.e.)=(R−S/R+S)×100S>Rの場合:S体の光学純度(%e.e.)=(S−R/R+S)×100S:(S)-α−トリフルオロメチル乳酸のピーク面積R:(R)-α−トリフルオロメチル乳酸のピーク面積 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。[実施例1] (a)粗酵素抽出液の調整 培地(トリプトン15g/l、酵母エキス3g/l、グルコース30g/l、Tween20 1.0g/l)1000mlを三角フラスコに100mlづつ分注し、121 ℃で20分間蒸気滅菌した。Gongronella butleri R-466株(FERM P-19110)を該フラスコ培地に植菌し、30℃で3日間振盪培養した。洗浄後の菌体を吸引濾過により回収した(10℃以下)。50 mMリン酸緩衝液(pH7.0)で該回収菌体を洗浄し、該菌体を50 mlチューブに移した。該チューブを−80℃でいったん凍結し、氷上で一晩かけてゆっくり該チューブ内の菌体を解凍した。解凍した菌体を、乳鉢ですりつぶした。得られたGongronella粗破砕液をフレンチプレス(100 〜150 MPa)で3回破砕した。菌体破砕後の溶液は、4℃、12000〜14000rpm、30分の条件で遠心分離し、不溶性沈殿物を取り除いた。 (b)硫安塩析 (a)の方法で得られた粗酵素抽出液に、60%飽和となるように硫酸アンモニウムをゆっくり時間をかけて加えた。該溶液を氷上で一晩放置後、4℃、14000rpm、30分遠心分離をおこなった。回収した沈殿を50 mMリン酸緩衝液(pH7.0)に再懸濁した。 (c)疎水性相互作用クロマトグラフィーよる精製 (b)の方法で得られた粗酵素液に1.5mol/lになるように硫安を添加し、疎水性相互作用カラムHiTrap Butyl FF(Amersham Bioscience)に供した。リン酸緩衝液(pH7.0)で硫酸アンモニウムの濃度勾配(1.5〜0 M)を利用して目的酵素を精製した。この条件で精製をおこなうと、硫酸アンモニウム濃度が0 Mとなった後に目的エステラーゼのカラムからの溶出が確認された。 (d)陰イオン交換クロマトグラフィー 陰イオン交換カラムHiTrap DEAE FF(Amersham Bioscience)に(c)の方法で得られた粗酵素液を供した。リン酸緩衝液(pH8.0)で塩化ナトリウムの濃度勾配(0〜1 M)により溶出した。得られた活性画分をさらに同操作を繰り返すことで精製した。 (e)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量決定 (d)の方法で得られた精製画分をmicrocon YM-10(Millipore)で10倍に濃縮後、その画分に含まれる酵素の単一性を、以下に示す条件のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した(銀染色;ATTO社製シルバーステインキット)。基準タンパク質の分子量の対数と、そのバンドの移動度をグラフ上にプロットし、酵素の移動度の実測値に対応する分子量を推定した。その結果、46kDの分子量を有することが示された(図1)。分離ゲル:750 mM Tris−HCl pH8.5、8%アクリルアミド(アクリルアミド:メチレンビスアクリルアミド=19:1)、0.1% SDS濃縮ゲル:125 mM Tris−HCl pH6.8、4.5%アクリルアミド(アクリルアミド:メチレンビスアクリルアミド=19:1)、0.1% SDS泳動緩衝液:25 mM Tris、192 mM Glycine、0.1% SDS泳動条件:定電流10→20 mA(濃縮ゲルに到達後から20 mAに変更) (f)N末端アミノ酸配列および内部アミノ酸配列の決定 (e)記載のSDS−ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動後、CBB染色し、PVDF膜(イモビロンPSQ:ミリポア社)へブロッティングした。メインバンドを切り取り、プロテインシーケンサーProcise 494 cLC(Applied Biosystems)によりN末端アミノ酸配列を決定した。内部アミノ酸配列決定には、同様の操作で得られたSDS−ポリアクリルアミドゲルのメインバンドを切り抜いて、回収後、リジルエンドペプチダーゼにより部分消化した。HPLCによりペプチドを分取後、プロテインシーケンサーにより配列を決定した。それぞれの分析結果は以下の通りである。 N末端アミノ酸配列 配列番号1;Xaa Leu His Met Leu Phe Gln Ile Leu Glu (Xaaは未知アミノ酸)。 内部アミノ酸配列: 配列番号2;Glu Thr Arg Gln Phe Ile Xaa Tyr Val Lys (Xaaは未知アミノ酸)。[実施例2](反応至適pHの測定) 実施例1(d)の方法で得られた精製酵素画分を用いて至適pHを測定した。すなわち、10%量の精製酵素画分、1.0%量のラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルを各pHの80 mM リン酸緩衝液あるいは100 mMクエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液に加え、30℃で4時間反応させた。生成するα−トリフルオロメチル乳酸の量をHPLCで定量することで測定した。なお、リン酸緩衝液はpH6.0〜7.5の範囲で、クエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液はpH4.0〜8.0の範囲の測定に用いた。結果を図2に示す。各pHにおける相対活性はpH7で示した最大活性を100とした相対値で示した。pH7.0〜7.5 において最も高活性を示した。[実施例3] 実施例1(b)の方法と同様にしてGongronella butleri R-466株(FERM P-19110)由来の硫安塩析沈殿を得た。その沈殿物に0.5Mリン酸緩衝液(pH=7.0)を加え、全量を10g に調製した。この懸濁液にラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸メチルエステル0.5gを加え、30℃にて10時間、振盪しながら反応した。反応終了液中のα−トリフルオロメチル乳酸および光学純度を分析したところ、収率45%(ラセミ体基準の収率、以下同様)で98%eeの(R)α−トリフルオロメチル乳酸が得られた。[実施例4] 実施例3の方法と同様にして酵素懸濁液10gを調製した。これにラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステル1.0gを加え、30℃にて10時間、振盪しながら反応した。反応液中のα−トリフルオロメチル乳酸および光学純度を分析したところ、収率40%で99%eeの(R)α−トリフルオロメチル乳酸が得られた。[実施例5] 実施例1の(a)〜(d)の方法と同様にして酵素溶液10mlを調製した。これにラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸メチルエステル0.1gを加え、30℃にて10時間、振盪しながら反応した。反応終了液中のα−トリフルオロメチル乳酸および光学純度を分析したところ、収率24%で99%eeの(R)α−トリフルオロメチル乳酸が得られた。[実施例6] 実施例1の(a)〜(d)の方法と同様にして酵素溶液10mlを調製した。これにラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステル0.3gを加え、30℃にて24時間、振盪しながら反応収率50%になるまで反応させた。反応終了後、それぞれ 10mlのn-ヘキサンで2回抽出を行った。抽出操作で得られたn-ヘキサン層を一つにまとめて無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、減圧下n-ヘキサンを留去した。このようにして得られたα−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルについて、光学分割カラム(クロムパック社製Chirasil−DEX CB カラム;カラム温度75℃、インジェクション温度200℃、ディテクター温度200℃)をつけたキャピラリーガスクロマトグラフィーにて分析したところ、S体であり、光学純度は98.5%e.e.であった。 上記で得られた光学活性エステルに5%水酸化ナトリウム水溶液5mlを加えて、室温にて2時間加水分解反応を行った。次いで、硫酸を加えてpHを1.5 に調整し、それぞれ10mlの酢酸エチルにて2回抽出を行った。抽出操作で得られた酢酸エチル層を一つにまとめて硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を除去した。トルエンで再結晶させた。このようにして得られたα−トリフルオロメチル乳酸についてジアゾメタンでエステル化後、光学分割カラム(ジーエルサイエンス株式会社製Chirasil-DEX CB カラム;カラム温度50℃)をつけたキャピラリーガスクロマトグラフィーにて分析したところ、光学活性体(S体)であり、光学純度は99.5%e.e.であった。 また、(S)-α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステル抽出残液(水層)に濃硫酸を加えてpH1.0 に調整した。調整後、それぞれ10mlの酢酸エチルを加えて2回抽出を行った。抽出操作で得られた酢酸エチル層を一つにまとめて無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、溶媒を除去した。このようにして得られたα−トリフルオロメチル乳酸についてジアゾメタンでエステル化後、同様に分析したところ、R体であり、光学純度は98%e.e.であった。配列番号1:N terminal peptide配列番号2:Internal peptide SDSポリアクリルアミド電気泳動結果である。反応至適pHを示す図である。 配列番号1に示すアミノ酸配列をN末端アミノ酸配列に有するエステル加水分解酵素。 配列番号2に示すアミノ酸配列を内部アミノ酸配列に有するエステル加水分解酵素。 分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した分子量が45〜47kDaである、請求項1または2記載のエステル加水分解酵素。 下記一般式(I):(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをR選択的に加水分解する請求項1〜3のいずれかに記載のエステル加水分解酵素。 α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルに対する反応至適pHをpH7〜7.5付近に有する請求項1〜4いずれかに記載のエステル加水分解酵素。(式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルをR選択的に加水分解する。 E)反応至適pH:pH7〜7.5付近(α−トリフルオロメチル乳酸n-ブチルエステルに対する)。 ゴングロネラ(Gongronella)属に属する微生物由来である請求項1〜5のいずれかに記載のエステル加水分解酵素。 請求項1〜6のいずれかに記載の酵素をコードする遺伝子DNA。 請求項7記載の遺伝子DNAを有する組換えベクター。 請求項8記載の組換えベクターを有する形質転換体または形質導入体。 請求項1〜6のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または請求項9記載の形質転換体または形質導入体を培養し、得られる培養物から採取されたエステル加水分解酵素。 請求項1〜6のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または請求項9記載の形質転換体または形質導入体を培養し、得られる培養物からエステル加水分解酵素を採取することを特徴とするエステル加水分解酵素の製造方法。 請求項1〜6のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または請求項9記載の形質転換体または形質導入体を培養して得られる培養物又は該処理物を不斉炭素を有するカルボン酸エステルに接触させ、光学活性加水分解物またはその未反応対掌体エステルを採取することを含む光学活性加水分解物またはその対掌体エステルの製造方法。 下記一般式(I): (式中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜8の炭化水素基である。)で表されるラセミ体α−トリフルオロメチル乳酸エステルに、請求項1〜6のいずれかに記載の酵素を産生する微生物または請求項9記載の形質転換体または形質導入体を培養して得られる培養物または該処理物を接触させ、光学活性α−トリフルオロメチル乳酸またはその対掌体エステルを採取することを含む光学活性α−トリフルオロメチル乳酸またはその対掌体エステルの製造方法。 【課題】エステル加水分解酵素、該酵素をコードする遺伝子DNA、該遺伝子DNAを有する組換えベクター、該組換えベクターを有する形質転換体、該形質転換体を培養して得られる培養物から採取された該酵素および該形質転換体を培養して得られる培養物から該酵素を採取する該酵素の製造方法並びにそれを用いた光学活性体の製造方法を提供する。 【解決手段】 エステル加水分解酵素、該酵素をコードする遺伝子DNA、該遺伝子DNAを有する組換えベクター、該組換えベクターを有する形質転換体、該形質転換体を培養して得られる培養物から採取された該酵素。該形質転換体を培養して得られる培養物から該酵素を採取して該酵素を製造する。さらに、このように製造された培養物または該処理物をカルボン酸エステルに接触させ、光学活性カルボン酸またはその対掌体エステルを製造する。【選択図】なし配列表


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