タイトル: | 公開特許公報(A)_ショ糖脂肪酸エステルの製造方法 |
出願番号: | 2004252231 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07H 13/06,C07H 1/00 |
泉野 諭 手塚 正樹 横橋 貴生 蛭子 博幸 田中 寛 JP 2006069920 公開特許公報(A) 20060316 2004252231 20040831 ショ糖脂肪酸エステルの製造方法 第一工業製薬株式会社 000003506 藤本 昇 100074332 薬丸 誠一 100114421 中谷 寛昭 100114432 岩田 徳哉 100117204 泉野 諭 手塚 正樹 横橋 貴生 蛭子 博幸 田中 寛 C07H 13/06 20060101AFI20060217BHJP C07H 1/00 20060101ALI20060217BHJP JPC07H13/06C07H1/00 3 OL 8 4C057 4C057AA09 4C057AA18 4C057BB03 4C057CC01 4C057DD02 4C057HH03 本発明は、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法に関する。 ショ糖脂肪酸エステルは優れた界面性能、良好な生分解性及び高い安全性を兼備しているため、従来から、食品、化粧品、医薬品、台所用洗剤、飼料、樹脂等の添加剤として、また化学工業においては、例えば、重合反応、酸化反応等の反応系の助剤として用いられており、極めて有用な化合物である。 従来から、ショ糖脂肪酸エステルの製造方法として、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO と略記する)等の反応溶媒中で、アルカリ触媒の存在下、ショ糖と脂肪酸アルキルエステルとを反応させる方法が用いられている。前記反応溶媒として、DMSOを用いる方法は、比較的低温で反応を行うことができ、副生するアルコールを反応系外に除去することで反応を進行させることができ工業的な実績も大きい。 該方法においては、反応終了後、最終的に得られるショ糖脂肪酸エステルから反応溶媒であるDMSOを除去しなければならず、該DMSOを除去する方法としては、例えば、反応混合物に、有機溶媒と水とを加えて、液液抽出し、ショ糖脂肪酸エステルを含む有機溶媒溶液を取得し、次いで、この有機溶媒溶液に水を加えて共沸蒸留により大部分の有機溶媒を除去し、最後に薄膜蒸発器で処理して残存する有機溶媒を完全に除去する方法(特許文献1)が提案されている。 しかしながら、特許文献1記載の方法は、反応混合物に有機溶媒と水とを加えて液液抽出するため、液液抽出後、ショ糖脂肪酸エステルを含む有機溶媒層から抽出に用いた有機溶媒を除去する必要がある。前記抽出に用いた有機溶媒を除去するため、蒸留工程等の複雑な工程が多くなり、更に多数の設備が必要となる。また、抽出に有機溶媒を使用するため、火災や爆発の危険性が常にあるという問題を有している。 そのため、反応終了後、反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取り出す際に、抽出溶媒等を極力使用せず、簡易な設備及び簡易な処理で、最終的に得られるショ糖脂肪酸エステルから反応溶媒であるDMSOを除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法が要望されている。特開平7−206889号公報 本発明は、上記問題点に鑑み、反応終了後、反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取り出す際に、抽出溶媒等を極力使用せず、簡易な設備及び簡易な処理で、最終的に得られるショ糖脂肪酸エステルから反応溶媒であるDMSOを除去できるショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。 本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、反応終了後の反応混合物からDMSOを少なくとも一部を留去又は除去し、更に、減圧加熱条件下で反応混合物中に水蒸気を供給することで、該反応混合物中からDMSOを除去できることを見いだし本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、反応溶媒としてジメチルスルホキシドを含有するショ糖脂肪酸エステル混合物から、該反応溶媒を留去又は除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法において、前記ショ糖脂肪酸エステル混合物から前記反応溶媒を少なくとも一部を留去又は除去し、次に、減圧加熱条件下で前記ショ糖脂肪酸エステル混合物中に水蒸気を供給し、前記反応溶媒を除去することを特徴とするショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供する。 反応終了後、反応混合物中のDMSOを少なくとも一部を留去又は除去した後、減圧加熱条件下で該反応混合物に水蒸気を供給することで、DMSOの分圧が下がり、容易に反応混合物からDMSOを除去できる。 本発明のショ糖脂肪酸エステルの製造方法では、反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取り出す際に、抽出溶媒等を極力使用せず、簡易な設備及び簡易な処理で、最終的に得られるショ糖脂肪酸エステルから反応溶媒であるDMSOを除去できる。 また、本発明のショ糖脂肪酸エステルの製造方法では、反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを得る際に、液液抽出を行わないため、抽出塔などの設備を必要とせず、更に、抽出用の有機溶媒を極力使用しないため、火災や爆発の危険性を非常に少なくできる。 本発明に係るショ糖脂肪酸エステルの製造方法は、反応溶媒としてジメチルスルホキシドを含有するショ糖脂肪酸エステル混合物から、該反応溶媒を留去又は除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法において、前記ショ糖脂肪酸エステル混合物から前記反応溶媒を少なくとも一部を留去又は除去し、次に、減圧加熱条件下で前記ショ糖脂肪酸エステル混合物中に水蒸気を供給し、前記反応溶媒を除去するものである。 以下、本発明について説明する。 まず、ショ糖脂肪酸エステルの製造に用いる原料等について説明する。 本発明におけるショ糖としては、特に制限はないが、通常、グラニュー糖、上白糖等が使用される。 本発明における脂肪酸アルキルエステルとしては、炭素数6〜30、好ましくは12〜22の飽和または不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸;リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸)と炭素数1〜6の低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)とのエステルを挙げることができる。 斯かる脂肪酸アルキルエステルは、2種以上の混合物として用いてもよい。 脂肪酸アルキルエステルは、ショ糖1モルに対して通常、0.1〜20モル、好ましくは0.2〜8モルを使用する。 反応溶媒としては、熱的安定性、ショ糖に対する溶解性及び安全性の観点より、非プロトン性極性溶媒であるDMSOが用いられる。溶媒の使用量は、ショ糖と脂肪酸アルキルエステルとの合計仕込量(重量部)に対して、通常、0.2〜5倍量、好ましくは0.3〜4倍量である。 DMSOの使用量が、0.2倍量未満の場合、ショ糖が完全に溶解せず、反応性が格段に低下するという問題がある。 また、DMSOの使用量が、5倍量を超える場合、反応系内の反応物の濃度が低下するため、反応時間がかかり、反応性が低下するという問題がある。 アルカリ触媒としては、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、弱酸のアルカリ金属塩等が有効であり、特に炭酸アルカリ金属塩(例えば、無水炭酸カリウム等)が好ましい。例えば、無水炭酸カリウムの使用量は、脂肪酸アルキルエステル1モルに対して通常、0.001〜0.1モルである。 本発明のショ糖と脂肪酸アルキルエステルとの反応は、公知のエステル交換反応に準じて実施することができる。 反応方法は、還流冷却器を備えた反応器又は必要に応じて分留塔を備えた反応器を使用し、所定量の原料、溶媒、及びアルカリ触媒を仕込み、減圧下で所定の温度に加熱し、反応系を沸騰状態に保ちながら行う。 反応溶媒は、前記還流冷却器により系内に還流され、副生するアルコールは反応系外に流出させる。 前記エステル交換反応における反応温度は、通常、40〜170℃の範囲であり、特に、60〜150℃の範囲が好ましい。また、反応圧力は、通常、0.2〜43kPaの範囲であり、特に、0.7〜32kPaの範囲が好ましい。 前記エステル交換反応の反応時間は、通常、1〜30時間である。 次に、前記エステル交換反応終了後の処理について説明する。 エステル交換反応終了後、該反応に使用したアルカリ触媒と等量の酸を添加して該触媒を中和する。 前記中和に使用する酸としては、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸等の有機酸を挙げることができる。 前記中和後の反応混合物のpHは、pH5〜pH8、好ましくはpH5.5〜pH6.5の範囲である。 中和後のpHが5未満の場合には、生成したショ糖脂肪酸エステルが分解する。 また、中和後のpHが8を超える場合、生成したショ糖脂肪酸エステルが分解する。 前記中和した後の反応混合物からDMSOの少なくとも一部を留去又は除去する。DMSOの一部を留去等することで、後述する水蒸気を供給してDMSOを除去する処理での除去量を減らすことができる。 ここで、留去等するDMSOの量としては、反応に使用したDMSOを1とした場合に、7/10〜9.5/10程度である。 留去等する量が、7/10未満の場合には、後述する水蒸気を供給してDMSOを除去する時間が長時間となり、非効率的となる。 また、留去等する量が、9.5/10を超えると加熱時間が長くなり、生成したショ糖脂肪酸エステルの着色、分解が生じる。 前記反応混合物からDMSOの少なくとも一部を留去又は除去する場合には、減圧加熱下で行う。 前記反応混合物からDMSOを留去等する場合の温度としては、80〜140℃であり、好ましくは、90〜120℃である。 留去等する場合の温度が、140℃を超えると生成したショ糖脂肪酸エステルが着色、分解する虞がある。 また、前記反応混合物からDMSOを留去等する場合の減圧度としては、1〜15kPaであり、好ましくは、1〜8kPaである。 DMSOの少なくとも一部を留去又は除去した反応混合物から更に、DMSOを除去する方法について説明する。前記のようにDMSOを留去等した反応混合物に減圧加熱条件下で、該反応混合物中に水蒸気を供給し、DMSOの分圧を下げることで該反応混合物からDMSOを除去するものである。 DMSOを留去等した反応混合物に供給する水蒸気の量は、DMSOを留去等した反応混合物を1とした場合に0.1〜5倍であり、好ましくは0.15〜2倍である。 前記水蒸気の量が、0.1倍未満の場合には、十分にDMSOを除去できず、多くのDMSOが残存する。 また、前記水蒸気の量が、5倍を超えると水蒸気を供給する効果が一定となるため、水蒸気が無駄となり、不経済である。 前記減圧加熱条件下における温度としては、80〜140℃であり、好ましくは90〜120℃である。 温度が80℃未満では、DMSOの除去効率が低下する虞がある。 また、温度が140℃を超えると、生成したショ糖脂肪酸エステルが着色、分解する虞がある。 前記減圧度としては、15kPa以下であり、好ましくは8kPa以下である。 減圧度が、15kPaを超えるとDMSOの除去効率が低下する虞がある。 なお、前記減圧度を達成するための装置としては、機械式真空ポンプ、拡散ポンプ等のポンプ及びガスエジェクター、スチームエジェクター等を用いることができる。 本実施形態のショ糖脂肪酸エステルの製造方法によれば、反応混合物中のDMSOの含有量を0.9ppm以下に抑えることができ、効率良く高純度のショ糖脂肪酸エステルを得ることができる。 本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。(ジメチルスルホキシドの濃度測定方法) 反応混合物中のDMSO濃度は、下記の方法により測定した。 反応混合物をTHF(テトラヒドロフラン)により、DMSO濃度を1〜5ppmとなるように希釈する。該希釈液0.5μlを島津製作所製ガスクロマトグラフィに注入し、DMSO濃度を測定した。該濃度は、予め作製した検量線と比較することにより求めた。 ガスクロマトグラフィ:島津製作所製:GC−14A 使用カラム:ジーエルサイエンス製、Chromoso-b WAW DMCS ガス流量:使用ガス N2、流量 1.5〜1.8kg/cm2(実施例1) 2Lの反応器にDMSO 661.7gを仕込み、減圧下 3.7kPaで加熱し沸騰させた。蒸気の一部を系外に留出させて系内の水分を除去し、系内の水分量が0.05%となった時点で蒸気の留出を中止し、次いでショ糖 92.8gとステアリン酸メチル 432.2g、無水炭酸カリウム 5.2gを加え、減圧下 4.0kPaでショ糖とステアリン酸脂肪メチルを約95℃で反応させた。ショ糖に対するステアリン酸メチルのモル比は5.1であった。 反応終了後、炭酸カリウムに対して等量の乳酸 5.5gを添加して前記炭酸カリウムを中和した。次いで、この反応混合物を減圧加熱 2.5kPa、100℃により脱溶媒しショ糖脂肪酸エステル 90.0%、未反応ショ糖 0.01%、DMSO 4.8%、その他 5.2%の反応混合物 500gを得た。 この脱溶媒後の反応混合物に内温 120℃、内圧 8kPaの条件下で水蒸気を 5.0g/minの速度で 150分間内部供給し、反応混合物(固形分)に対して 1.6倍の水蒸気 750gを供給した。その結果、DMSOの濃度は 2ppmとなった。(実施例2) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaに代えて内温 70℃、内圧 8kPaにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、DMSOの濃度は 1100ppmであった。(実施例3) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaに代えて内温 80℃、内圧 8kPaにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、DMSOの濃度は 880ppmであった。(実施例4) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaに代えて内温 140℃、内圧 8kPaにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、DMSOの濃度は 0.9ppmであった。(実施例5) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaに代えて内温 150℃、内圧 8kPaにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、ショ糖脂肪酸エステルの着色、分解が生じた。(実施例6) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaに代えて内温 150℃、内圧20kPaにした以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、ショ糖脂肪酸エステルの着色、分解が生じた。(比較例1) 減圧加熱の条件を内温 120℃、内圧 8kPaの条件下で水蒸気を供給しかった以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、DMSOの濃度は 20665ppmであった。(比較例2) 減圧加熱の条件を内温 120℃、減圧しないで水蒸気を 5.0g/minの速度で内部供給した以外は、実施例1と同様に実験を行った。 その結果、DMSOの濃度は 45012ppmであった。 表1に実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の結果を示した。 表2に実施例1〜実施例6の結果を示した。 実施例1、実施例4においては、DMSO濃度を非常に低くでき、ショ糖脂肪酸エステルからDMSOを除去できた。 反応溶媒としてジメチルスルホキシドを含有するショ糖脂肪酸エステル混合物から、該反応溶媒を留去又は除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法において、 前記ショ糖脂肪酸エステル混合物から前記反応溶媒を少なくとも一部を留去又は除去し、 次に、減圧加熱条件下で前記ショ糖脂肪酸エステル混合物中に水蒸気を供給し、前記反応溶媒を除去することを特徴とするショ糖脂肪酸エステルの製造方法。 前記加熱条件は、減圧度15kPa以下、温度80〜140℃である請求項1記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法。 請求項1又は2に記載のショ糖脂肪酸エステルの製造方法により得られたショ糖脂肪酸エステル。 【課題】 反応混合物からショ糖脂肪酸エステルを取り出す際に、抽出溶媒等を極力使用せず、簡易な設備及び簡易な処理で、最終的に得られるショ糖脂肪酸エステルから反応溶媒であるDMSOを除去できるショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供する。【解決手段】 反応溶媒としてジメチルスルホキシドを含有するショ糖脂肪酸エステル混合物から、該反応溶媒を留去又は除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法において、前記ショ糖脂肪酸エステル混合物から前記反応溶媒を少なくとも一部を留去又は除去し、次に、減圧加熱条件下で前記ショ糖脂肪酸エステル混合物中に水蒸気を供給し、前記反応溶媒を除去するショ糖脂肪酸エステルの製造方法を提供する。【選択図】なし