生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_タマリクス属植物への遺伝子導入方法
出願番号:2004246572
年次:2006
IPC分類:A01H 1/00,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

吉田 光毅 秋吉 美穂 万字 角英 遠藤 昇 JP 2006061059 公開特許公報(A) 20060309 2004246572 20040826 タマリクス属植物への遺伝子導入方法 大成建設株式会社 000206211 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 深見 伸子 100120905 吉田 光毅 秋吉 美穂 万字 角英 遠藤 昇 A01H 1/00 20060101AFI20060210BHJP C12N 15/09 20060101ALI20060210BHJP JPA01H1/00 AC12N15/00 A 6 OL 12 特許法第30条第1項適用申請有り 育種学研究 第6巻 別冊1号 日本育種学会第105回講演会要旨集にて発表 発表日:平成16年3月30、31日 要旨集発行日:平成16年3月30日 2B030 4B024 2B030AA03 2B030AB03 2B030AD04 2B030CA05 2B030CA17 2B030CB02 4B024AA08 4B024AA20 4B024CA02 4B024DA01 4B024EA04 4B024FA10 4B024GA11 4B024GA17 本発明は、タマリクス属植物への効率的な遺伝子導入方法に関する。 ギョリュウ(Tamarix chinensis)は、日本には観賞用として渡来した中国原産の落葉小高木である。ギョリョウに代表されるタマリクス属植物は、海水に耐性を持ち、家具用素材またはパルプ原料として利用される種類がある。タマリクスの利用範囲を広げるための1つの方法として遺伝子導入による木質の改変が考えられる。 近年、植物バイオテクノロジーが進展する中で、組換えDNA技術を用いて植物に外来遺伝子を導入することにより、これまでその植物が本来備えなかった特性を有する品種が育成されている。このような組換えDNA技術を利用した品種の作出には優良な遺伝子の単離と対象植物に適合した遺伝子導入技術が必要とされている。植物への外来遺伝子導入方法としては、アグロバクテリウム感染法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、PEG法等が知られている。また、植物細胞中に外来遺伝子を導入するためのベクターや、組換え体を選択・識別する各種のレポーター/マーカー遺伝子、導入した外来遺伝子を発現させる制御遺伝子(プロモーター等)等も既に確立されている(非特許文献1等)。しかしながら、上記のような方法や手段は一般的には知られているものの、植物の種類によって遺伝子導入方法や手段、条件設定は様々であり、対象植物に適合した遺伝子導入技術の確立は試行錯誤を繰り返す例が多い。タマリクスについてもこれまで遺伝子導入例の報告はなく、その遺伝子導入技術及び再分化技術は確立されていない。Application of Genetic Engineering for Forest Tree species, Endo S. et al. (2002) In "Air Pollution and Plant Biotechnology-Prospects for phytomonitoring and phytoremediation", edited by K. Omasa et al., pp.415-434 本発明の課題は、木質の改変などを目的とした遺伝子操作の対象として期待される耐塩性タマリクス属植物に対して最適化した遺伝子導入方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アグロバクテリウム感染させる植物切片の選択、アグロバクテリウム感染液への浸漬条件、組換え個体の選抜手段を最適化することによって、タマリクス属植物への遺伝子導入効率、組換え個体の選抜効率が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下の発明を包含する。(1) 目的遺伝子を有するベクターを導入したアグロバクテリム属に属する微生物を含有する感染液に、タマリクス属植物の多芽体形成中の組織切片またはカルス形成中の組織切片を浸漬する工程を含むことを特徴とする、タマリクス属植物への遺伝子導入方法。(2) 多芽体形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片の多芽体形成培地への移植から10〜20日後のものである、(1)に記載の方法。(3) 多芽体形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片の多芽体形成培地への移植から18日後のものである、(1)に記載の方法。(4) 多芽体形成中の組織切片を、超音波及び/又は減圧処理下で浸漬することを特徴とする、(1)に記載の方法。(5) カルス形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片のカルス誘導培地への移植から2〜6日後のものである、(1)に記載の方法。(6) カルス形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片のカルス誘導培地への移植から4日後のものである、(1)に記載の方法。 本発明によれば、タマリクス属植物への遺伝子導入を効率よく行うことができ、また遺伝子組換え体の選抜を早い段階で確実に行うことできる。 本発明のタマリクス属植物への遺伝子導入方法は、目的遺伝子を有するベクターを導入したアグロバクテリム属に属する微生物を含有する感染液に、タマリクス属植物の多芽体形成中の組織切片またはカルス形成中の組織切片を浸漬する工程を含むことを特徴とする。 本発明において、タマリクス属植物としては、例えば、Tamarix chinensis, Tamarix ramosissima, Tamarix aphylla, Tamarix gallica, Tamarix parvifloraなどが挙げられる。 本発明において、多芽体形成中の組織切片は、タマリクス属植物若枝切片の多芽体形成培地への移植から10〜20日後のもの、好ましくは18日後のものをいう。また、カルス誘導中の組織切片は、タマリクス属植物若枝切片のカルス誘導培地への移植から2〜6日後、好ましくは4日後のものをいう。 上記の「多芽体形成培地」としては、Woody plant medium培地(WPM培地)に、少なくとも1種のオーキシンと、少なくとも1種のサイトカイニンを加えた培地であれば特に制限はされない。 オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、またはインドール酪酸(IBA)などが挙げられるが、NAAが好ましい。 サイトカイニンとしては、チジアズロン(TDZ)、4-ccpu、ゼアチン(Zeatin)、ベンジルアデニン(BA)などが挙げられるが、TDZ、4-ccpuが好ましい。 上記培地において、オーキシンの量は、その種類、培養条件にもよるが、0.01〜5ppm、好ましくは0.01〜1ppmの範囲である。 また、サイトカイニンの量は、その種類、培養条件にもよるが、1切片あたりの発芽数が最大となる上で、0.05〜5ppm、好ましくは0.05〜1ppm、さらに好ましくは0.05〜0.5ppmの範囲である。 このほか、多芽体形成培地には、通常の培養に用いられる炭水化物、ビタミン類、アミノ酸などの有機化合物を含むことができる。炭水化物としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンニトール、ソルビトール、ショ糖、マルトース、ラクトース等の糖類が挙げられ、ビタミン類としては、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、パントテン酸カルシウム、ビタミンB12、ビオチン、パラアミノ安息香酸、葉酸などが挙げられ、アミノ酸としては、グリシン、グルタミン酸、アスパラギンなどが挙げられる。 また、培地の支持体としては、寒天、パーライト、バーミキュライト、ゲランガム、アガロース等を用いることができる。 多芽体形成培地に植えられた組織切片の培養は、20〜30℃、好ましくは、23〜27℃の温度にて、1000〜10000lux、18〜24時間日長下で行う。 また、上記の「カルス誘導培地」としては、ムラシゲ・スクーグ培地(MS培地)、好適には1/2 MS培地に、少なくとも1種のオーキシンを加えた培地であれば特に制限はされない。このほか、カルス誘導培地には、上記に挙げた通常の培養に用いられる炭水化物、ビタミン類、アミノ酸などの有機化合物を含むことができる。 オーキシンとしては、2,4-D、ピクロラム(picloram)、ダイカンバ(dicamba)などが挙げられるが、ピクロラム(picloram)が好ましい。 上記培地において、オーキシンの量は、その種類、培養条件にもよるが、0.01〜5ppm、好ましくは0.01〜0.05ppmの範囲である。 本発明において、アグロバクテリウム感染させる植物切片として、前記多芽体形成中の組織切片を用いる場合、目的遺伝子を組み込んだベクターを導入したアグロバクテリム属に属する微生物を含有する感染液に超音波及び/又は減圧処理下で浸漬することが好ましい。 超音波処理は、市販の超音波洗浄機を使用し、多芽体形成中の組織切片を浸漬させた感染液に対して超音波を1〜20分間、好ましくは5〜15分間かけることにより行う。 また、減圧処理は、多芽体形成中の組織切片を浸漬させた感染液に対して真空ポンプを用いて0.01〜0.1MPa、好ましくは0.06〜0.08MPaの圧力をかけることにより行う。 超音波処理と減圧処理はいずれか一方でもよいか、両方を行うことがより好ましい。 アグロバクテリウム属の微生物としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が好ましく、具体的にはEHA101株、LBA4404株、CIB542/A136株等を用いることができるが、これらに限定はされない。 アグロバクテリウム属の微生物に目的遺伝子を組み込むためのベクターとしては、pIG121、pBI121、pBI101等の一般的なベクターを用いる。 目的遺伝子としては、対象となるタマリクス属植物における内因性遺伝子、または外来遺伝子であって、その遺伝子産物の発現がタマリクス属植物の各組織・器官において所望される任意の遺伝子をいう。かかる遺伝子としては、木質改善のための遺伝子、例えば、ポリヒドロキシブチレート合成遺伝子、キシランアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、リグニン合成遺伝子等が挙げられるが、これらに限定はされない。 本発明においては、遺伝子組換え体を選抜するため、ハイグロマイシン耐性遺伝子とリポーター遺伝子を連結した融合遺伝子を、選抜用マーカー(以下、「マーカー遺伝子」ともいう)として使用する。 マーカー遺伝子をタマリクス属植物の組織切片に導入するにあたり、マーカー遺伝子を単独で導入する場合は、プラスミドに連結して組換えベクターを調製する。一方、マーカー遺伝子と発現の目的遺伝子とを共に導入する場合は、マーカー遺伝子を目的の遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製する。あるいは、マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクトし(共導入)する。 レポーター遺伝子としては、例えばオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein: GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、GUS遺伝子等が挙げられる。 上記のGFP遺伝子として、改変型GFPを用いることが好ましく、例えばsGFP(S65T)が挙げられる。sGFP(S65T)は、野生型のGFPの特性を改変するために塩基置換を加えて完全人工合成されたもので、蛍光ピークを単一にしたこと、発色団形成を速めたこと、蛍光強度を6倍にしたこと、植物のコドン使用頻度に合わせてDNA配列を改変したこと、主要制限酵素部位を削除したこと、などの改良が施され、総合的な蛍光強度で120倍の改善を達成している(Current Biology, 6(3), pp.325-330, 1996)。 また、改変型GFPとして、イントロンsGFPは選抜効率を高める上でより好ましい。 イントロンとしては、ヒマカタラーゼのイントロンなどをsGFPのN末付近に翻訳時のアミノ酸のフレームが合うように挿入する。これによって、アグロバクテリウム内でのsGFPの翻訳を抑制し、植物組織に付着したアグロバクテリウムに由来するsGFPの発光と植物細胞内に導入されたベクターDNAに由来するsGFPの発光を区別することができる。 目的遺伝子またはマーカー遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには目的遺伝子またはマーカー遺伝子の上流、内部、あるいは下流に、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列などを連結することができる。 「プロモーター」としては、植物細胞において機能し、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできるDNAであれば、植物由来のものでなくてもよい。具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。 エンハンサーとしては、例えば、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域などが挙げられる。 ターミネーターとしては、プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。 目的遺伝子及び他の遺伝子を組み込んだ前記ベクターのアグロバクテリウム属の微生物への導入は、エレクトロポレーション法等の公知の手法により実施することができる。 感染液(接種用培地)としては、LB、YEP、YMB等の液体培地で前培養し、遠心分離により集菌したアグロバクテリウムを同培地又はMSやBS等の植物培養用培地等にて希釈したものを用いることができるが、これらに限定されない。 感染液における前記微生物の濃度は、組織切片に十分に遺伝子導入が行われる濃度であれば特に限定されないが、例えば、感染液1mLあたり吸光度OD600値で0.2〜0.8程度であればよい。感染を確実なものとするためには高濃度の菌体へ長時間浸漬すればよいが、組織切片へのダメージが大きいので望ましくない。 アグロバクテリウム属の微生物の感染を確実にするため、浸漬処理の終わった組織切片を共存培養用培地で培養する。 共存培養用培地は、植物の組織片の培養に必要な成分、例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、固化剤等を含むものであればどのようなものでもよい。炭素源としては、例えば、ショ糖、グルコース等を用いることができ、無機塩類としては、MS無機塩、B5無機塩等を用いることができ、固化剤としては、寒天等を用いることができる。また、共存培養後のカルス誘導を促進するために植物ホルモン(ベンジルアミノプリン(BAP)、ナフタレン酢酸(NAA)等)が添加されてもよい。 共存培養期間は、例えば1〜7日、好ましくは2〜3日、暗所で行うとよい。培地のpHや温度は、組織切片に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はないが、例えばpHは5.2〜5.5とするのが好ましく、温度は22〜25℃とするのが好ましい。 上記のようにしてアグロバクテリウム属の微生物を感染させた組織切片は、オーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。 本発明においては、上記の継代培養において、遺伝子導入を行った組織切片を、25〜50μg/mlのハイグロマイシンの存在下で培養し、ハイグロマイシン耐性とリポーター遺伝子の発現を指標に遺伝子組換え体の選抜を行う。 以上のようにして得られた遺伝子導入体における遺伝子導入及び発現の確認は、当業者に公知の手法に従い、該遺伝子の配列を元に作成したプライマーを用いてPCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。 上記の継代培養において選抜し、増殖させた多芽体は、発根培地に移植して発根させ、さらに同培地で継代培養して植物体を育成または再生させることができる。 また、上記の継代培養において選抜し、増殖させたカルスは、適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、植物組織培養において通常採用されている方法により最終的に完全な植物体を再生させることができる。 再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。 以下、実施例及び試験例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。(実施例1) カルス誘導中の組織切片への遺伝子導入時期の検討(1)バイナリーベクターの作成 pIG121Hm(Ohta et al., 1990, Plant Cell Physiol., 31, 805-813)を鋳型にして、5'-GGTCTAGAACATGGATCCCTAC-3’(配列番号1)及び5'-CCGATATCGTTCTGTAACTATCATC-3'(配列番号2)をプライマーとし、Pfu DNA polymeraseを用いてPCRを行い、5'側にXbaI切断サイトを持ち、3'側にEcoRVの切断サイトを持つ、225bpのヒマカタラーゼイントロンPCR断片を得た。このPCR断片を2%アガロース電気泳動で分離し、切り出してゲル抽出キット(キアゲン)を用いて精製した。 次に、CaMV35S-sGFP(S65T)-nos3'/PUC18(静岡県立大学の丹波康男氏より供与)のNcoIサイトを切断し、ブランティング・ハイ(東洋紡製)を用いてブラント処理を行った後、更にXbaIで処理した。得られた処理物を、上記のヒマカタラーゼイントロンのPCR断片(XbaI-EcoRVで処理後)にフレームが合うようにライゲートし、DNA配列を決定した。ライゲーション産物にはsGFPの開始コドンが残っていたので、Quick Change Multi Site Mutagenesis Kit(ストラタジーン製)を用いてATGをAAGに改変することによって、開始コドンから翻訳が始まる可能性を排除した。このようにして得られたイントロンsGFP/PUC18をHindIIIとEcoRIで処理して、35S:イントロン-sGFP(S65T):nosT部分を切り出し、pIG121Hmの35S:イントロン-GUS:nosT部分と入れ換えて、バイナリーベクターを作成した。(2)遺伝子導入 タマリクス(Tamarix chinensis)の若枝切片を、カルス誘導培地(1/2MS無機塩、ピクロラム0.05 ppm、3%ショ糖、pH5.8)に植え、28℃、照度3000lxで培養を行った。 培養開始後から1日おきに、カルス誘導中切片に(1)で作成したイントロンsGFPをマーカーとするバイナリーベクター(pIG121Hmの35S:イントロンGUS:nosTを35S:イントロンsGFP:nosTに置き換えたもの)を持つアグロバクテリムEHA101を感染させた。 感染に用いる菌液は、アグロバクテリウムEHA101を、50mgハイグロマイシンを含むAB培地に植え付け、28℃で3日培養し、増殖した菌を40mg/Lのアセトシリンゴンを含む1/2MS、ショ糖3%、TWEEN 20 0.02%、pH5.2の液体培地に懸濁し、O.D.660nmを0.2に調整することにより得た。感染は、この菌液にカルス誘導中の切片を1分間浸し、22℃にて暗所で培養することにより行った。培養後、GFPの発色(図1)をマーカーに遺伝子導入効率を調べた結果、導入効率はカルス誘導培地に切片を植えてから、4日目がもっとも良いことがわかった(図2)。(実施例2) 多芽体形成中の組織切片への遺伝子導入時期の検討 タマリクス(Tamarix chinensis)の若枝切片を多芽体形成培地(WPM、3%ショ糖、0.05ppm TDZ、0.6%寒天、pH5.8)に植え、25℃、照度3000lxで培養を行った。培養開始から0日、3日、6日、18日後に、イントロンGUSをマーカーとするバイナリーベクターpIG121Hm(Ohta et al., 1990, Plant Cell Physiol., 31, 805-813)を持つアグロバクテリムEHA101を感染させた。 感染に用いる菌液は、アグロバクテリウムEHA101を、50mgハイグロマイシンを含むAB培地に植え付け、28℃で3日培養し、増殖した菌を40mg/Lのアセトシリンゴンを含む1/2MS、ショ糖3%、TWEEN20 0.02%、pH5.2の液体培地に懸濁し、O.D.660nmを0.8に調整することにより得た。感染は、この菌液に多芽体形成中の切片を0.05Mpaの減圧処理下で15分間浸し、22℃にて暗所で培養することにより行った。培養後、GUSの発色をマーカーに遺伝子導入効率を調べた結果、導入効率は多芽体形成培地に切片を植えてから、18日目で最大になることがわかった(図3)。(実施例3) 多芽体形成中の組織切片へのアグロバクテリウムの感染方法の最適化 タマリクス(Tamarix chinensis)の若枝切片を多芽体形成培地(WPM、3%ショ糖、0.05ppm TDZ、0.6%寒天、pH5.8)に植え、25℃、照度3000lxで培養を行った。培養開始から18日後の多芽体形成中切片に、イントロンsGFPをマーカーとするバイナリーベクター(前出)を持つアグロバクテリムEHA101を感染させた。 感染に用いる菌液は、アグロバクテリウムEHA101を、50mgハイグロマイシンを含むAB培地に植え付け、28℃で3日培養し、増殖した菌を40mg/Lのアセトシリンゴンを含む1/2MS、ショ糖3%、TWEEN 20 0.02%、pH5.2の液体培地に懸濁し、O.D.660nmを0.8に調整することにより得た。感染は、この菌液に多芽体形成中の切片を(i)浸漬する、(ii)浸漬中に超音波処理をする、(iii)浸漬中に0.05Mpaの減圧処理をする、(iv)浸漬中に超音波処理と減圧処理をする、という条件にてそれぞれ行い、遺伝子導入効率を比較した。培養後、GFPの発色(図4)をマーカーに遺伝子導入効率を調べた結果、超音波処理と減圧処理を行った場合に遺伝子導入効率が最大30%になった(図5)。(実施例4) 遺伝子組換え個体の選抜 実施例3で浸漬中に超音波処理と減圧処理の両方を行って遺伝子を導入した個体の中で、GFPの発色している個体のみを1次選抜し、50mg/Lのハイグロマイシンを含む多芽体形成培地(同上)に植え付けた。2週間毎に新しい培地に植え変えて培養した結果、4ヶ月後には生存個体が得られた(図6)。この個体では、GFPの発色が観察され、導入した遺伝子が発現していることが確認された(図7)。GFPを発色する組換え個体数は選抜培養とともに低下し、最終的に選抜効率は5%程度となった。 また、イントロンsGFPの代わりにsGFPをマーカーとするバイナリーベクターを持つアグロバクテリムを用いて実施例3と同様に多芽体形成中の切片への感染を行い、GFPの発色している個体を上記と同様に選抜培養した。GFPを発色する組換え個体数の比率の減少度がイントロンsGFPのほうがsGFPより小さいことから、イントロンsGFPのほうが選抜効率がよいことがわかった(図8)。 さらに、インロトンsGFPをマーカーとしてPHB合成酵素遺伝子(phbBとphBC)を導入し、選抜した個体からゲノムDNAを抽出し、phbBに対しては5'-AGGATGGCTTTCGTGTGGTG-3'(配列番号3)と5'-CCTTGGCGGTGGAGTAGTTG-3'(配列番号4)、phbCに対しては5'-ATGATGGAAGACCTGACACG-3'(配列番号5)と5'-TAGATATAGGTCGGCACGTC-3'(配列番号6)をプライマーとして用いてPCRによって増幅し、導入遺伝子の検出を行った結果、導入遺伝子に由来するバンド(phbB増幅産物の大きさ398bp、phbC増幅産物の大きさ868bp)が検出された(図9)。カルスにおけるイントロンsGFPの発色を示す。カルス誘導期間と遺伝子導入効率との関係を示す。多芽体培養期間と遺伝子導入効率との関係を示す。多芽体におけるイントロンsGFPの発色を示す。感染条件と遺伝子導入効率との関係を示す。選抜4ヶ月後の遺伝子組換え体の生存個体を示す(左:非組換え体、右:遺伝子組換え体)。選抜個体におけるイントロンsGFPの発色を示す。選抜期間とGFP発色個体数(sGFP,イントロンsGFP)の関係を示す。導入遺伝子のPCRによる検出結果を示す(レーン1〜4:組換え体、NT:非組換え体、V:ベクター)。 目的遺伝子を有するベクターを導入したアグロバクテリム属に属する微生物を含有する感染液に、タマリクス属植物の多芽体形成中の組織切片またはカルス形成中の組織切片を浸漬する工程を含むことを特徴とする、タマリクス属植物への遺伝子導入方法。 多芽体形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片の多芽体形成培地への移植から10〜20日後のものである、請求項1に記載の方法。 多芽体形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片の多芽体形成培地への移植から18日後のものである、請求項1に記載の方法。 多芽体形成中の組織切片を、超音波及び/又は減圧処理下で浸漬することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 カルス形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片のカルス誘導培地への移植から2〜6日後のものである、請求項1記載の方法。 カルス形成中の組織切片が、タマリクス属植物若枝切片のカルス誘導培地への移植から4日後のものである、請求項1に記載の方法。 【課題】 タマリクス属植物に対して最適化した遺伝子導入方法を提供すること。【解決手段】 目的遺伝子を有するベクターを導入したアグロバクテリム属に属する微生物を含有する感染液に、多芽体形成中の組織切片またはカルス形成中の組織切片を浸漬する工程を含むことを特徴とする、タマリクス属植物への遺伝子導入方法。【選択図】 なし配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る