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タイトル:公開特許公報(A)_L−アラビノースの製造方法
出願番号:2004236545
年次:2006
IPC分類:C12P 19/14


特許情報キャッシュ

高石 直樹 山元 英樹 JP 2006050996 公開特許公報(A) 20060223 2004236545 20040816 L−アラビノースの製造方法 ユニチカ株式会社 000004503 高石 直樹 山元 英樹 C12P 19/14 20060101AFI20060127BHJP JPC12P19/14 A 5 OL 10 4B064 4B064AF02 4B064CA21 4B064CB07 4B064CE10 4B064DA01 4B064DA10 本発明は、L−アラビノース又はL−アラビノース含有酵素処理物の製造方法に関するものである。 L−アラビノースは、蔗糖に近い味質を持ち、難吸収性を示すノンカロリー甘味料である。また、蔗糖等の二糖を加水分解する酵素を阻害することから、蔗糖摂取時の血糖値上昇を抑制するという効果も知られている。このため、血糖値の気になる人のためのカロリー調節食品や、甘味料、糖尿病合併症抑制等の用途に注目されている。さらに、医薬品の合成原料としても有用な糖である。 L−アラビノースは、高等植物のヘミセルロース中にアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタンなどとして存在している。また遊離の状態では微量ではあるが味噌や酒などの発酵食品、インスタントコーヒーなどにも含まれる。 従来、L−アラビノースはコーンファイバー、アラビアガム、ビートパルプなどに含まれるヘミセルロースをアルカリ抽出し、これを酸分解または酵素分解することにより製造されている。これまでに、原料としてビートパルプを利用した方法が報告されているが(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)、酸分解法では食品や医薬品原料として不適当な副生成物が生じる可能性が高いうえ、特殊な反応装置が必要である。さらに、中和の際に大量の塩が生成し後処理が煩雑になる問題もあり、L−アラビノースを安価に製造する上での大きな問題点となっていた。また、ビートパルプをオートクレーブ処理(121℃で20分間)やプロテアーゼによる脱蛋白処理をすることでL−アラビノースを高収率で得る方法(例えば、特許文献2参照)も報告されているが、操作が煩雑となり、大量生産を目的とするには問題があった。 これらの問題に対し、本発明者らはアラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に対して、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン分解酵素を直接作用させてL−アラビノースを安価に製造する方法を見いだしている(例えば、特許文献3参照)。また、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン分解酵素にペクチナーゼを併用してL−アラビノースを効率よく遊離させる製造方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。さらに、L−アラビノースの収率を向上させる目的のため、酵素反応前に上記天然物を熱処理することが有効であることも見出している(例えば、特許文献5参照)。特開平9−299093号公報特開平11−313700号公報特開2001−286294号公報特開2002−095491号公報特願2002−190061号公報農芸化学会誌49巻、6号、p.295−305、1975年 しかしながら、上記の天然物に熱処理を施す方法においては、製造規模が大きくなる場合、酵素反応前の熱処理時間と反応開始温度までの冷却時間が長くなり、製造時間の短縮化への妨げとなっている。また、設備によっては熱処理が不可能な場合もあり、その場合には反応物の流動性(液化)や植物組織の崩壊性が十分ではなく、配管等で移送する際に配管等を詰まらせる可能性や固液分離効率も低下する問題がある。 本発明の目的は、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有天然物からL−アラビノース及びL−アラビノース含有酵素処理物を製造する際、第一に熱処理なしに反応物の流動性(液化)や植物組織の崩壊性を向上させることであり、第二に熱処理を実施した場合よりも酵素反応に関わる工程の時間を短縮することである。 本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討したところ、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有天然物にL−アラビノース遊離活性を有する酵素やペクチン分解活性を有する酵素の他に、D−グルコース遊離活性を有する酵素を併用した場合、熱処理等の前処理を実施しなくてもL−アラビノース遊離量を同程度に確保出来るだけでなく、反応物の流動性や植物組織崩壊性も十分に確保出来る事を見いだし、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に作用しL−アラビノース遊離活性を有する酵素を、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に直接作用させてL−アラビノースを製造する方法において、L−アラビノース遊離活性を有する酵素とともに繊維崩壊活性を有する酵素を作用させることを特徴とするL−アラビノース又はL−アラビノース含有酵素処理物の製造方法を要旨とするものであり、好ましくは、さらに、ペクチン分解活性を有する酵素を作用させる前記の方法である。 また、本発明は、前記のL−アラビノースの製造方法において、所定の酵素を作用させた後、得られた酵素処理物を固液分離して上澄液を回収することを特徴とするL−アラビノースの製造方法を要旨とするものである。 本発明によれば、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有天然物からL−アラビノース及びそれを含有する酵素処理物を得る際、熱処理等の前処理が不要となり、製造設備を限定することなく反応を行うことができる。さらに、反応終了物からの溶液回収量を向上させることができるため、前処理に要する時間と反応時間を合計した時間よりも短い時間で、十分なL−アラビノース遊離量を得ることができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明に用いるアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン含有天然物には、リンゴ、ビート(甜菜)、大豆、トウモロコシ、コメ、麦などのほか、これらの残さであるアップルファイバー、オレンジファイバー、ビートパルプ、ビートファイバー、トウモロコシ粕、落花生粕、大豆粕、みかんジュース粕等の副産物が挙げられる。廃棄物や副産物などを原料することは、安価に製造可能であることだけでなく、産業廃棄物の有効利用という環境保護という観点からも、非常に望ましい方法である。 オレンジファイバーやミカンジュース粕はみかんやオレンジからジュースを搾取した後の残さであり、約3〜10%のL−アラビノースをアラビナンなどの形で含んでいる。アップルファイバーはリンゴからリンゴ汁を搾取した後の残さであり、約4〜7質量%のL−アラビノースをアラビナンなどの形で含んでいる。ビートパルプはビートからビート糖液を搾取した後の残さであり、約12〜18%のL−アラビノースをアラビナンなどの形で含んでいる。落花生粕は落花生のからなどであり、約5%のL−アラビノースをアラビナンなどの形で含んでいる。これらに含まれるアラビナンは、L−アラビノースが直鎖状に連なるため、酵素によるL−アラビノース生成が比較的容易に起こる。特に、ビートパルプ、アップルファイバー、オレンジファイバーなどは、L−アラビノースが遊離しやすく、よい原料である。その他として、米糠やコーンファイバー、大豆粕などもよい原料である。 これらのアラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを有する天然物は、通常の搾取操作で得られるものであれば、いかなる起源や製法であっても使用可能である。 本発明に用いられるL−アラビノース遊離活性を有する酵素としては、アラビナーゼ(アラバナーゼ)、アラビノフラノシダーゼ等のアラビナン分解酵素が挙げられる。アラビナン分解酵素の起源としては、細菌(Bacillus subtilis、Streptomycessp.)、酵母(Rhodotorula sp.)、糸状菌(Aspergillus niger、A.oryzae、A.pulverulentus、A.terreus、A.japonicus、A.flavus、Trichoderma reesei、T.viride、Trichosporon penicillatum、Rhizopus sp.)などが挙げられるが、Aspergillus属由来の酵素が好適である。特にAspergillus niger由来の酵素が好ましい。 L−アラビノース遊離活性を有する酵素は、上記の菌株を培養した培養上清もしくは菌体中に生産されるが、これらの酵素を含有するいかなる画分を用いてもよい。また、必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することも可能である。また、市販の酵素を使用することも可能であり、特にスミチームARS、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)が好ましい。その他の市販のセルラーゼ、及びキシラナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクタナーゼなどのヘミセルラーゼ酵素剤もまた、アラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン含有物に作用させるとL−アラビノースを遊離する活性を示す場合がある。これら酵素が標記されている活性に加えて幾分かはアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン分解活性を有する場合や、主成分である酵素に加えて不純物としてアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン分解酵素を含んでいる場合があるためである。 本発明に用いられるペクチン分解活性を有する酵素(ペクチナーゼ)は、ペクチンに作用するものであれば特に限定されるものではない。由来としては細菌(Bacillus Subtilis、Streptomycessp.、Erwinia sp.)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(Aspergillus niger 、A.alliaceus、A.flavus、A.pulverulentus、A.japonicus、Trichosporon penicillatum、Rhizopus sp.、Trichoderma reesei)、高等植物などがあげられ、Aspergillus属由来の酵素が最適である。 ペクチン分解活性を有する酵素は、上記菌株を培養した培養上清もしくは菌体中に生産されるが、これらの酵素を含有するいかなる画分を用いてもよい。また、必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することも可能である。また、市販の酵素を使用することも可能であり、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームAP2(新日本化学工業株式会社製)、スミチームAP2−LIQUID(新日本化学工業株式会社製)、スミチームSPC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームMC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームPMAC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームCXC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームPTE(新日本化学工業株式会社製)、スミチームLC(新日本化学工業株式会社製)、中性ペクチナーゼ(新日本化学工業株式会社製)、ペクチナーゼPL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、ペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、ペクチナーゼGL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、ペクチナーゼA「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、セルロシンPC5(HBI株式会社製)、セルロシンPE60(HBI株式会社製)、セルロシンPEL(HBI株式会社製)、可溶性ペクチナーゼT(HBI株式会社製)、セルロシンME(HBI株式会社製)、ペクチナーゼSS(ヤクルト薬品工業株式会社製)、ペクチナーゼ3S(ヤクルト薬品工業株式会社製)、ペクチナーゼHL(ヤクルト薬品工業株式会社製)、マセロチームA(ヤクルト薬品工業株式会社製)、ROHAPECT D5L(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT D5S(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT MA PLUS(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT MAX(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT PTE(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT PL(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT B1(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT VR−C(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT 7104(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT DA6L(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT 10L(株式会社樋口商会製)、ROHAPECT AP1(株式会社樋口商会製)、スクラーゼN(三共株式会社製)、スクラーゼS(三共株式会社製)、ペクチネックス(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ペクチネックスウルトラSP−L(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ウルトラザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ビノザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ピールザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、シトロザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、オリベックス(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ノボファーム12(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ビノフロー(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ビールザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ペクチナーゼナガセ(ナガセケムテックス株式会社製)、ペクチナーゼXP−534(ナガセケムテックス株式会社製)などが挙げられる。これら市販のペクチナーゼには、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有物に作用させるとL−アラビノース遊離活性を示す場合がある。特に、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)はその活性が高く、使用するには好ましい。 本発明に用いられる繊維崩壊活性を有する酵素としては、セルロースなどの多糖類に対して作用するものであれば特に限定されない。本発明においては、β−グルカナーゼ、β−グルコシダーゼ活性を有するものがより好ましい。酵素の起源としては、細菌(Arthrobacter sp.、Bacillus subtillis、Bacteroides succinogenes、Cellulomonas sp.、Cellvibrio gilvus、Clostridium sp.、Cytophagasp.、Myrothecium vercaria、Ruminococcus sp.、Pseudomonas fluorescensvar.cellulosa)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(Aspergillus niger、A.oryzae、A.pulverulentus、A.terreus、A.japonicus、A.flavus、Humicola insolens、Irpex lacteus、Penicilliumsp.、Rhizoctoina solani、Trichoderma reesei、T.viride、T.koningi、Trichosporon penicillatum、Rhizopus sp.)などが挙げられるが、Aspergillus属やTrichoderma属由来の酵素が好適である。 繊維崩壊活性を有する酵素は、上記の菌株を培養した培養上清もしくは菌体中に生産されるが、これらの酵素を含有するいかなる画分を用いてもよい。また、必要に応じてこれらの酵素を含有する画分を常法により精製あるいは部分精製して使用することも可能である。また、市販の酵素を使用することも可能であり、一般的にセルラーゼ、キシラナーゼやペクチナーゼ等のヘミセルラーゼに分類される酵素が挙げられる。例えば、スミチームAC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームAC−LIQUID(新日本化学工業株式会社製)、スミチームC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームACH(新日本化学工業株式会社製)、スミチームACH−LIQUID(新日本化学工業株式会社製)、スミチームGML(新日本化学工業株式会社製)、スミチームBGA(新日本化学工業株式会社製)、スミチームBGT(新日本化学工業株式会社製)、スミチームX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームNX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームSC(新日本化学工業株式会社製)、スミチームCAP(新日本化学工業株式会社製)、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム株式会社製)、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム株式会社製)、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム株式会社製)、YL−NL「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)、セルロシンAC40(HBI株式会社製)、セルロシンAL(HBI株式会社製)、セルロシンT2(HBI株式会社製)、セルロシンHC100(HBI株式会社製)、セルロシンTP25(HBI株式会社製)、セルロシンHC(HBI株式会社製)、セルロシンB(HBI株式会社製)、セルロシンGM5(HBI株式会社製)、ヘミセルラーゼM(HBI株式会社製)、セルラーゼ“オノズカ”3S(ヤクルト薬品工業株式会社製)、セルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)、パンセラーゼBR(ヤクルト薬品工業株式会社製)、VERON191(樋口商会株式会社製)、フィニザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ウルトラフロ(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ビスコザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、グルカネックス(ノボザイムズジャパン株式会社製)、ペントパン(ノボザイムズジャパン株式会社製)、セレミックス(ノボザイムズジャパン株式会社製)、プロモザイム(ノボザイムズジャパン株式会社製)、セルクラスト(ノボザイムズジャパン株式会社製)、セルレースナガセ(ナガセケムテックス株式会社製)、セルラーゼXL−531(ナガセケムテックス株式会社製)、ドリセラーゼKSM(協和エンザイム株式会社製)、ツニカーゼ(大和化成株式会社製)、グレイナーゼ(大和化成株式会社製)、ソフィターゲン(タイショーテクノス株式会社製)、キタラーゼ(ケイアイ化成株式会社製)、グリンドアミルH(ダニスコカルタージャパン株式会社製)、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社製)、ビガラーゼM(洛東化成工業株式会社製)などである。 本発明において、作用させるL−アラビノース遊離活性を有する酵素の量は、原料1kg当り、アラビナーゼ(アラバナーゼ)の場合、10〜100,000ユニット、好ましくは、100〜50,000ユニット、さらに好ましくは、500〜10,000ユニットである。アラビノフラノシダーゼの場合、10〜100,000ユニット、好ましくは、100〜50,000ユニット、さらに好ましくは、100〜10,000ユニットである。 なお、アラバナーゼのユニット数は、直鎖のCM-(1,5)-α-L-arabinanから1分間に1μmolのarabinoseに相当する還元糖を生成する酵素量を表し、基質としてArabinazymeTablet (Mwgazyme社製)を用いて測定された値である。すなわち、サンプル酵素液0.5mlを試験管に入れ40℃で予温する。Arabinazyme Tablet 1個を投入し、10分後に2%W/Vトリズマ(Tris(hydroxymethyl)amino methane:シグマ社製)液10mlを加え、ミキサーで攪拌する。約5分間室温に放置した後、再度攪拌し、ろ紙(Whatman No.1)でろ過した後、水を対照に590nmの吸光度を測定する。反応ブランクは、サンプル酵素液0.5mlを試験管に入れ40℃で予温する。2%W/Vトリズマ(Tris(hydroxymethyl)amino methane:シグマ社製)液10mlを加え、ミキサーで攪拌する。この後、Arabinazyme Tablet 1個を投入、攪拌し、ろ紙(WhatmanNo.1)でろ過した後、水を対照に590nmの吸光度を測定する。計算式は、アラバナーゼ u/g=(21.7×(反応液の吸光度−ブランクの吸光度)+0.5)÷1,000÷0.5÷サンプル液の濃度g/ml)で、(反応液の吸光度−ブランクの吸光度)が0.1〜1.0の幅で測定する。 また、アラビノフラノシダーゼのユニット数は、Carbohydrate Polymers ,9,25(1988)に記載された方法で測定された値である。すなわち、0.1%W/V p-nitrophenyl-α-L-arabinofuranoside(シグマ社製)の0.05M酢酸ナトリウムバッファ(pH 5.0 )0.35mlに酵素溶液0.05mlを加える。30℃で1時間反応させた後、2mMのdisodiumethylenediamenetetraacetate(EDTA:シグマ社製)を含む0.5M1のグリシンバッファ(水酸化ナトリウムでpH9.0に調製)を加え、400nmの吸光度を測定してp-nitrophenolの濃度を求める。p-nitrophenolが1分間に1μmolの生成する酵素量を1ユニットとして、酵素溶液のユニット数を求める。 本発明において、作用させるペクチン分解活性を有する酵素の量は、ペクチナーゼの場合、原料1kg当たり、100〜1,000,000ユニット、好ましくは1,000〜500,000ユニット、さらに好ましくは10,000〜300,000ユニットである。 なお、ペクチナーゼの力価は、ぺクチナーゼによってペクチンを加水分解したときの反応混合液の粘度低下で測定(参考:赤堀四郎,酵素研究法2,p163,朝倉書店(1960)によった。 すなわち、ペクチンとしてアップルペクチン(Herbstreith社製)を用いて、アップルペクチン1.2%、50mM酢酸緩衝液(pH4.0:酵素の至適pHで行う)、40℃で酵素反応を行う。反応2〜8分後に適宜、キャノンフェンスケ型粘度計で、40℃での流下時間を測定する。反応時間は約5分で半減期を迎えるように酵素サンプル濃度(約8u/ml)を調製する。ブランク(酵素のない基質溶液)の流下時間をBとし、水の流下時間をWとし、反応60秒でW+(B-W)/2になる活性を1ユニットと定義する。 本発明において、作用させる繊維崩壊活性を有する酵素の量は、原料1kg当たり、100〜500,000ユニット、好ましくは1,000〜100,000ユニット、さらに好ましくは5,000〜50,000ユニットである。 なお、繊維崩壊力の測定方法は、ろ紙にセルラーゼが作用するときにろ紙が崩壊する時間により測定する(官報号外第28号、p.8〜9(平成2年3月20日、大蔵省印刷局発行))。ろ紙は、酵素定量用ろ紙(紙厚0.29〜0.31mm、重量125〜135g/m2、α繊維含量98.5%以上、灰分量0.05%以下)を1cm×1cmの大きさに切って用いる。酵素を1M酢酸緩衝液(pH4.5:酵素の至適pHで行う)に2.8-4.0ユニットとなるように溶解し、この酵素液5mlをL字型試験管に入れ、37℃で5分間放置した後、それぞれに1cm×1cmの大きさに切ったろ紙を2枚ずつ入れる。37℃で、毎分65回転、振幅60mmで振とうし、ろ紙が完全に崩壊して微細な繊維となるまでの時間を測定する。セルラーゼが37℃で、1cm×1cmの大きさのろ紙2枚を1分間で完全に崩壊させる酵素量を1,000ユニットと定義する。 本発明において各酵素を作用させる具体例としては以下のようにすればよい。なお、新日本化学工業株式会社製の酵素におけるペクチナーゼ活性およびアラバナーゼ活性の測定法は上記した本発明でのユニット数の測定法と同様である。 アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有天然物に作用させる酵素の量は、例えば、ペクチン分解活性とL−アラビノース遊離活性を有する酵素であるスミチームPX(新日本化学工業株式会社製、ペクチナーゼ力価6000ユニット/mL、アラバナーゼ力価100ユニット/mL)の場合、ペクチナーゼ力価として基質1gあたり1〜1000ユニット、さらに好ましくは10〜200ユニットが適当である。この添加量でもL−アラビノース遊離活性は十分であるが、必要に応じてL−アラビノース遊離活性を有する酵素を添加してもよい。例えば、スミチームARS(新日本化学工業株式会社製、アラバナーゼ力価400ユニット/mL)の場合、アラバナーゼ力価として基質1gに対して0.004〜40ユニット、好ましくは0.02〜20ユニット、さらに好ましくは0.04〜10ユニットが適当である。なお、このアラバナーゼ力価は、40℃、pH4で1分間にアラビノースを1μmol基質から遊離させる酵素量を1ユニットとする。 さらに繊維崩壊活性を有する酵素については、例えば、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社製、繊維素崩壊力6000ユニット/g)やセルロシンT2(HBI株式会社製、繊維素崩壊力6000ユニット/g)の場合、力価として基質1gあたり0.01〜1000、好ましくは0.1〜600、より好ましくは1〜300ユニットが適当である。例えば、ぺクチナーゼと組み合わせる場合、ぺクチナーゼ力価100ユニットに対して、0.1〜100、好ましくは1〜50ユニットを添加するのが適当である。 本発明においては、上記の各酵素をアラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン含有天然物に作用させるが、各酵素は同時に作用させても、それぞれを別々に作用させても構わない。 L−アラビノース遊離活性を有する酵素を先に作用させ、後で繊維崩壊活性を有する酵素を作用させた場合、繊維崩壊活性を有する酵素が繊維を崩壊させてもL−アラビノース遊離活性を有する酵素が失活する場合があり、十分なL−アラビノースが遊離しない場合が考えられることから、繊維崩壊活性を有する酵素を先に作用させるか、同時に作用させるほうが好ましい。 ペクチン分解活性を有する酵素も同時または後で、作用させるほうが好ましい。 反応で用いる水の量としては、基質に対して0.5〜50倍が好ましく、さらに好ましくは5〜20倍が適当である。水分量が多すぎると酵素濃度が低くなり、水分量が少なすぎると酵素と基質の接触が不均一になり、結果的にL−アラビノース遊離量が増えないため好ましくない。 L−アラビノースを遊離させる際の反応条件としては、それぞれの反応基質と酵素の性質に応じた最適条件を選べばよい。反応の温度としては酵素が失活しない温度であって、腐敗を防止するために微生物が増殖しにくい温度とすることが望ましい。具体的には、20〜90℃、好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは45〜75℃がよい。反応液のpHとしては酵素の至適条件下で反応を行うのが望ましく、pH2〜9、好ましくはpH2.5〜8、さらに好ましくはpH3〜6とするのがよい。反応時間は使用する基質と酵素の量に依存するが、通常3〜48時間に設定するのが作業上好ましい。 反応が進むにつれ、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン成分が加水分解され、L−アラビノースが遊離する。これをそのまま、あるいはさらに乾燥すれば、L−アラビノース含有酵素処理物が得られる。また、反応後の懸濁液を固液分離し上澄みを分取すれば、L−アラビノース含有糖液が得られる。固液分離は、ろ過や遠心分離で良く、好ましくはスクリューデカンタなどの方法で連続的に分離する。スクリューデカンタで分離した後、ろ過することでより清澄な糖液が得られる。このようにして得られるL−アラビノースを、イオン交換樹脂や活性炭等による定法に従って精製することも可能である。また、得られたL−アラビノース含有溶液を濃縮、冷却、エタノール等の溶媒添加によって、結晶L−アラビノースを得ることも可能である。実施例1 ビートパルプ100g(北海道糖業株式会社製、水分約11%)に50℃のイオン交換水200ml、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)0.269mL(ぺクチナーゼ1,614ユニット、アラバナーゼ27ユニット)、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社製)0.03g(繊維素崩壊力180ユニット)添加し、攪拌下(36回/min)50℃で6時間反応させた。L−アラビノース及びその他の糖質遊離量は、反応開始3時間後から1時間おきに上澄み液を採取し、遠心分離後の上清を高速液体カラムクロマトグラフィーで測定して確認した。分析用カラムはAminex HPX−87H(バイオラッド社製)、カラム温度60℃、流速0.6ml/min、イオン交換水で溶出を行った。検出は示差屈折計を用い、標準品の定量値からL−アラビノース遊離量を求めた。その結果、反応6時間目でのL−アラビノース遊離量は10.4g、ビートパルプからの遊離収率は10%以上であった。また、D−グルコース遊離量も顕著に増加し、10.9g遊離していた。この時点で、ビートパルプの植物繊維は大きく崩壊し、流動性も良好であり、反応容器から容易に排出することができた。また、この反応液は数分放置すると、パルプ残分の沈降により容易に上澄み液が得られる状態であった。さらに、油圧絞り機(駒形機械製作所)で75kg/cm2で圧搾して反応溶液を回収すると回収溶液量は185mlと反応時に添加した水量の9割以上であり、L−アラビノースの回収は、9.9gと95%を回収できた。比較例1 実施例1において、エンチロンMCHを添加しない他はすべて実施例1と同様にして反応させ、同じく実施例1と同様にしてL−アラビノース遊離量を求めた。その結果、反応6時間目でのL−アラビノース遊離量は10.1g、ビートパルプからの遊離収率は10%であった。この時のD−グルコース遊離量は5.1gであり、エンチロンMCHを併用した実施例1の場合と比較して、ビートパルプの植物繊維はあまり崩壊せず、流動性は十分ではなく、反応容器から容易に排出されず、残渣をかき出す必要があった。この反応液はしばらく放置しても、パルプ残分の沈降はほとんど起こらず、反応溶液を吸水した膨潤状態が続く状態であった。さらに、圧搾(実施例1と同様)により反応溶液を回収したが、回収溶液量は145mlと反応時に添加した水量の7割程度であり、L−アラビノース遊離量は実施例1と同程度であるにもかかわらずL−アラビノース回収量は7.3gと72%の回収で、3割近くロスすることになった。比較例2 ビートパルプ100g(北海道糖業株式会社製、水分約11%)にイオン交換水60mlを添加し、オートクレーブで115℃、30分の加圧加熱処理を実施した。この際、加熱時間及び酵素反応に適当な温度までの冷却時間を含めて2時間以上を必要とした。次に、50℃程度に冷却した時点で、50℃のイオン交換水140ml、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)0.269mL(ぺクチナーゼ1,614ユニット、アラバナーゼ27ユニット)添加し、攪拌下(36回/min)50℃で6時間反応させた。L−アラビノース及びその他の糖質遊離量は、実施例1と同様に行なった。その結果、反応6時間目でのL−アラビノース遊離量は13.0g、ビートパルプからの遊離収率は12.4%であった。この時のD−グルコース遊離量は4.8gであり、比較例1よりはビートパルプの植物繊維崩壊と流動性は良かったが、実施例1と比較すると不十分であった。しばらく放置すると、パルプ残分が若干沈降して上澄み液が少し得られる状態であったが、反応溶液を吸水した膨潤状態が続く状態であった。さらに、圧搾(実施例1と同様)により反応溶液を回収したが、回収溶液量は反応時に添加した液量の8割程度であり、L−アラビノースを2割近くロスすることになった。実施例1と比べ、回収されたアラビノース量はほぼ同じであったが、実施例1では反応開始から反応終までは6時間であるが、比較例2では前処理から反応終了まで8時間に要した。反応スケールが大きくなればなるほど、前処理での温度の上げ下げに要する時間が長くなるので、実施例1の方法は比較例2よりも明らかに有利である。アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に作用しL−アラビノース遊離活性を有する酵素を、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に直接作用させてL−アラビノースを製造する方法において、L−アラビノース遊離活性を有する酵素とともに繊維崩壊活性を有する酵素を作用させることを特徴とするL−アラビノースの製造方法。さらに、ペクチン分解活性を有する酵素を作用させる請求項1記載のL−アラビノースの製造方法。請求項1又は2記載のL−アラビノースの製造方法において、所定の酵素を作用させた後、得られた酵素処理物を固液分離して上澄液を回収することを特徴とするL−アラビノースの製造方法。アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に作用しL−アラビノース遊離活性を有する酵素を、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物に直接作用させてL−アラビノース含有酵素処理物を製造する方法において、L−アラビノース遊離活性を有する酵素とともに繊維崩壊活性を有する酵素を作用させることを特徴とするL−アラビノース含有酵素処理物の製造方法。さらに、ペクチン分解活性を有する酵素を作用させる請求項4記載のL−アラビノース含有酵素処理物の製造方法。 【課題】 L−アラビノースおよびL−アラビノース含有アラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン含有天然物を容易かつ安価に製造する方法を提供する。【解決手段】 アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物から、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンなどの多糖を分離抽出することなく、L−アラビノース遊離活性を有する酵素、繊維崩壊活性を有する酵素、ペクチン分解活性を有する酵素を同時または別々に作用させることを特徴とするL−アラビノースまたはL−アラビノース含有酵素処理物の製造方法。【選択図】 なし


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