タイトル: | 公開特許公報(A)_プルキンエ細胞における遺伝子の発現のための発現ベクター |
出願番号: | 2004234912 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09,A01K 67/027,A61K 48/00,A61P 21/00,A61P 25/28 |
平井 宏和 寅嶋 崇 JP 2006050956 公開特許公報(A) 20060223 2004234912 20040811 プルキンエ細胞における遺伝子の発現のための発現ベクター 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 細田 芳徳 100095832 平井 宏和 寅嶋 崇 C12N 15/09 20060101AFI20060127BHJP A01K 67/027 20060101ALI20060127BHJP A61K 48/00 20060101ALI20060127BHJP A61P 21/00 20060101ALI20060127BHJP A61P 25/28 20060101ALI20060127BHJP JPC12N15/00 AA01K67/027A61K48/00A61P21/00A61P25/28 8 OL 22 4B024 4C084 4B024AA01 4B024BA11 4B024BA21 4B024BA63 4B024CA04 4B024CA05 4B024CA06 4B024DA02 4B024EA02 4B024FA02 4B024GA12 4B024GA18 4B024HA08 4B024HA14 4B024HA17 4C084AA13 4C084MA65 4C084NA14 4C084ZA021 4C084ZA221 4C084ZB212 本発明は、小脳に関する基礎医学生物学研究及び小脳疾患の遺伝子治療に応用可能なウイルスベククーを用いた、効率的にプルキンエ細胞に遺伝子を発現させるための技術に関する。さらに詳しくは、本発明は、プルキンエ細胞における遺伝子発現用ベクター、小脳への核酸の導入方法、トランスジェニック動物の作製方法及び小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤に関する。 小脳は、複数の筋肉が関与する協調運動(例えば、歩行等)を行なうときに、個々の筋肉の伸縮や該伸縮のタイミングを巧みに調節し、運動を正確かつ円滑に行なわせる働きがある。したがって、小脳に損傷があるとこの調節が失われ、歩行障害、言語障害等が見られる。 小脳皮質への入力は、大脳皮質からの入力と脊髄からの入力とがあり、当該小脳皮質への入力は、最終的には、小脳皮質からの唯一の出力神経細胞であるプルキンエ細胞に伝えられる。 従来、プルキンエ細胞への遺伝子導入技術として、極めて高い力価のアデノウイルスを用いた培養プルキンエ細胞への遺伝子導入(特許文献1及び非特許文献1を参照のこと)、ヘルペスウイルスを用いた遺伝子導入(非特許文献2を参照のこと)、アデノウイルス随伴ウイルスを用いた生体マウスの小脳におけるプルキンエ細胞への遺伝子導入(非特許文献3及び非特許文献4を参照のこと)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)を用いた生体マウスの小脳におけるプルキンエ細胞への遺伝子導入等が検討されている(非特許文献5)。 しかしながら、アデノウイルスは、プルキンエ細胞に対して、極めて低い親和性を示すにすぎないため、前記特許文献1又は非特許文献1に記載の方法は、培養プルキンエ細胞への遺伝子導入効率が低いという欠点がある。また、前記アデノウイルスは、免疫原性があり、感染部位に炎症を引き起こす場合があるという欠点がある。一方、前記非特許文献2に記載の方法は、ヘルペスウイルスにより神経障害が引き起こされる場合があるという欠点がある。さらに、非特許文献3及び非特許文献4に記載のアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入並びに非特許文献5に記載のFIVによる遺伝子導入によれば、プルキンエ細胞への遺伝子導入は可能となるが、プルキンエ細胞に限定した遺伝子発現ではなく、効率が低く、小脳の他の神経細胞やグリア細胞にもタンパク質発現が誘導されるという欠点がある。特開平9−28378号公報ミツヒロ ハシモト(Mitsuhiro Hashimoto)ら、Human Gene Therapy、第7巻、第149−158頁、1996年1月20日マルタ アグド(Maruta Agudo)ら、Human Gene Therapy、第13巻、第665−674頁、2002年3月20日ウイリアム エフ.ケメラー(William F. Kaemmerer)、Molecular Therapy、第2巻、第446頁−457頁、2000年11月ジョセフ エム.アリスキー(Joseph M.Alisky)ら、Molecular Neuroscience、第11巻、第2669頁−第2673頁、2000年8月アリスキー(Alisky,JM)ら、Neuroreport、第11巻、第2669−2673頁、2000年8月21日 本発明の1つの側面は、効率的に小脳プルキンエ細胞に選択的に遺伝子を発現させることで、これまで非常に困難であったプルキンエ細胞遺伝子導入を介した小脳の医学生物学的研究や小脳疾患の遺伝子治療を可能にする、発現ベクターを提供することにある。また、本発明の別の側面は、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患に対し、効率のよい治療効果を得ること等を可能にする、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤に関する。さらに、本発明の他の側面は、従来、作製が極めて困難であることから行なわれていなかったウイルスベクターを用いた小脳をターゲットとするトランスジェニック動物の作製、タンパク質の小脳プルキンエの選択的な発現を可能にする、非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法に関する。本発明のさらに他の側面は、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の研究等に有用なトランスジェニック動物を、効率よく作製することが可能な、トランスジェニック動物の作製方法に関する。 本発明の要旨は、〔1〕 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置されてなる、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクター、〔2〕 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置され、レンチウイルスに由来するベクター骨格中の配列番号:3に示される塩基配列を含有しないものである、前記〔1〕記載の発現ベクター、〔3〕 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを有効成分として含有してなる、小脳表面のクモ膜下腔に注入するための、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤、〔4〕 導入対象の核酸が、脳由来神経栄養因子、グリア細胞由来神経栄養因子、ポリグルタミンの分解促進タンパク質及びP/Q型カルシウムチャネルからなる群より選ばれたポリペプチド、又は該ポリペプチドの変異体若しくは該ポリペプチドの機能阻害のためのドミナントネガティブ体をコードする核酸である、前記〔3〕記載の治療剤、〔5〕 小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患が、脊髄小脳変性症である、前記〔3〕又は〔4〕記載の治療剤、〔6〕 発現ベクターが、下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結され、レンチウイルスに由来するベクター骨格中の配列番号:2に示される塩基配列を含有しないものである、前記〔3〕〜〔5〕いずれか1項に記載の治療剤、〔7〕 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法、並びに〔8〕 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、トランスジェニク動物の作製方法、に関する。 本発明の発現ベクターによれば、導入対象の核酸、リボザイム、RNAi等を、効率的に小脳プルキンエ細胞に導入して、発現させることができ、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患に対し、効率よくプルキンエ細胞に治療剤を供給することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の発現ベクターによれば、これまで困難であることからほとんど行なわれていなかったウイルスベクターによるプルキンエ細胞の遺伝子改変を容易にし、小脳の基礎医学生物学研究に有用である。 また、本発明の小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤によれば、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患に対し、効率のよい治療効果を得ることができるという優れた効果を奏する。 本発明の非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法によれば、広範囲の小脳プルキンエ細胞に遺伝子発現が可能となり、ウイルスベクターを用いたトランスジェニック動物、例えば、小脳疾患モデル動物の作製が可能であるという優れた効果を奏する。 本発明のトランスジェニク動物の作製方法によれば、トランスジェニック動物、例えば、小脳疾患モデル動物の作製が、効率よく、より短期間で行なうことができるという優れた効果を奏する。 本発明は、1つの側面は、L7プロモーター又はカルビンディンプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置されてなる、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクター、好ましくは、小脳表面のクモ膜下腔に注入して、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターに関する。具体的には、本発明は、1つの側面では、下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置されてなる、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターに関する。 本発明の発現ベクターは、レンチウイルス由来のベクター又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターの基本骨格を有するため、高い導入効率でプルキンエ細胞に導入対象の核酸を導入することができるという優れた効果を発揮する。なお、本発明の発現ベクターには、前記レンチウイルス由来のベクター又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターの基本骨格が用いられているため、ベクター導入による生体における免疫応答、神経障害性等が抑制される点で有利である。 また、本発明の発現ベクターは、L7プロモーター又はカルビディンプロモーターを含有しているため、プルキンエ細胞において、効率的に導入遺伝子の翻訳産物を発現させることができるという優れた効果を発揮する。 さらに、本発明の発現ベクターは、レンチウイルス由来のベクター又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターの基本骨格と、L7プロモーター又はカルビディンプロモーターとが組み合わされて用いられているため、プルキンエ細胞において、高い選択性で、効率よく導入対象の核酸の翻訳産物を発現させることができるという優れた効果を発揮する。 前記レンチウイルス由来のベクターとしては、例えば、pCL20c(St.Jude Children’s Research Hospital提供)、pLenti6/V5−DEST等が挙げられる。 前記アデノ随伴ウイルス由来のベクターとしては、例えば、pAAV(Stratagen社製)等が挙げられる。 本明細書において、「基本骨格」とは、特定の細胞内において、維持、複製されるに十分な因子を含む構成単位を意味する。したがって、本発明においては、汎用のレンチウイルス由来のベクター又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターにおける不要な部分を除去して得られたものも用いられうる。ウイルスベクターの力価を向上させる観点から、例えば、レンチウイルス由来のベクターであるpLenti6/V5−DESTの場合、配列番号:3で示される塩基配列を有する部分が除去されていることが好ましい。したがって、例えば、下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置され、レンチウイルスに由来するベクター骨格中の配列番号:3に示される塩基配列を含有しないものである、発現ベクターも本発明に含まれる。 本明細書において、「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが転写を開始するために認識し、特異的に結合するDNA領域をいい、本発明においては、プルキンエ細胞への選択性をより向上させる観点から、プルキンエ細胞特異的なプロモーターであることが望ましい。 また、本明細書において、「作動可能に結合(した)」又は「作動可能に連結(した)」とは、本来の機能を発揮するように配置された状態を意味し、例えば、プロモーターにより、制御できるように、導入対象の核酸が配置され、かつ該核酸によりコードされた産物が該プロモーターの制御下に発現されるように配置された状態を意味する。 本発明の発現ベクターに用いられるL7プロモーターとしては、(1)配列番号:1に示される塩基配列を有するプロモーターが挙げられる。なお、天然の遺伝子が自然発生的に変異を起こして生じたバリアントであっても、該遺伝子によりコードされる産物が、本来の機能を発揮する場合があるため、本発明に用いられるL7プロモーターは、同等の機能を発揮するバリアントであってもよい。なお、かかるバリアントは、人為的に、例えば、慣用の部位特異的変異導入方法等により作製されうる。かかるバリアントの塩基配列としては、(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列を有するプロモーター等が挙げられる。 また、本発明の発現ベクターに用いられるカルビンディンプロモーターとしては、(A)配列番号:2に示される塩基配列を有するプロモーター、及びそのバリアントのプロモーター、例えば、(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列を有するプロモーター等が挙げられる。 なお、本発明においては、前記L7プロモーター又はカルビンディンプロモーターの代わりに、制御下の遺伝子を、プルキンエ細胞特異的に発現させうる他のプロモーターを用いてもよい。例えば、後述の本発明の核酸導入方法により、本発明の発現ベクターを用いる場合には、小脳分子層及びプルキンエ細胞層の細胞に選択的に感染指せることが可能であり、興奮性神経細胞特異的プロモーターの使用でプルキンエ細胞特異的な遺伝子発現が可能となる。かかる観点からは、プロモーターとして、NSEプロモーター(配列番号:4)、シナプシンIプロモーター(配列番号:5)等が挙げられる。 前記(2)又は(B)の塩基配列としては、例えば、(a)配列番号:1又は2において、少なくとも1ヌクレオチド残基の変異(置換、欠失、挿入、付加等)を有する塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、(b)配列番号:1又は2の核酸とストリンジェント、好ましくは高ストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸の塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、(c)配列番号:1又は2に示される塩基配列に対し、HigginsらによるClustalW法によるマルチプルアライメント(例えば、Gap penalty 5、Fixed Gap penalty 10、windowssize 5、Floating Gap 10)により、最適な状態にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも80%、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、等が例示される。なお、前記(a)〜(c)の塩基配列の長さは、プロモーターとしての機能を発揮する範囲であればよく、例えば、配列番号:1又は2の核酸と同等の長さを有することが望ましく、高力価のウイルスを得る観点から、3000ヌクレオチド長以下、好ましくは、2000ヌクレオチド長以下、より好ましくは、500ヌクレオチド長以下であることが望ましい。 なお、本明細書において、前記「少なくとも1ヌクレオチド残基」とは、プルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を発揮する範囲であればよく、例えば、1個又は数個のヌクレオチド残基を意味する。 また、本明細書において、前記「ストリンジェントな条件」とは、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5% SDSと5×デンハルトと100μg/ml 変性断片化サケ精子DNAと50% ホルムアミドを含む溶液中、配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸とともに55℃で一晩保温し、低イオン強度、例えば、2×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、37℃以上、ストリンジェントには、42℃以上、よりストリンジェントには、50℃以上、より一層ストリンジェントには、60℃以上等の条件下での洗浄を行なう条件により達成されうる。 前記核酸多型は、具体的には、1) RNAポリメラーゼが転写を開始するために認識し、特異的に結合するDNA領域としての機能、2) 発現対象の核酸をプルキンエ細胞において効率的に発現させる機能等を発揮するための構造を維持する範囲での多型であればよい。 前記(1)の機能は、例えば、プルキンエ細胞中に含まれるRNAポリメラーゼと、試験対象の核酸との結合の有無を検出することにより評価されうる。結合の有無の検出は、ゲルシフトアッセイにおける移動度、表面プラズモン解析における光学的センサーグラム又は質量センサーグラム化、フットプリント法等により行われうる。 前記(2)の塩基配列を有する核酸のプロモーターとしての機能は、例えば、試験対象の核酸の下流にレポーター遺伝子を作動可能に連結させ、構築物を得、得られた構築物を、マウスあるいはラット小脳グリア細胞+神経細胞の混合培養に感染、あるいは固体マウスの小脳表面クモ膜下腔に投与することにより評価されうる。前記評価により、レポーター遺伝子が、プルキンエ細胞特異的に発現した場合、当該核酸が、本発明の発現ベクターに適したプロモーターであることの指標となる。 本発明の発現ベクターによる導入対象の核酸としては、目的に応じ、特に限定されるものではなく、例えば、小脳の発達、生理機能を制御するタンパク質をコードする核酸、具体的には例えば、小脳プルキンエ細胞のシナプス形成や可塑性に関与するタンパク質をコードする核酸、治療用途に用いうるタンパク質やsiRNAを発現させうる核酸、具体的には、細胞内で生じた凝集体を分解若しくは除去する酵素をコードする核酸、細胞内において、低下している機能を補いうるタンパク質等をコードする核酸、細胞内において、過剰な機能の発現を抑制しうるsiRNAを発現させうる核酸等;その他物質生産に関連するタンパク質をコードする核酸、特定物質を分解するタンパク質をコードする核酸等が挙げられる。前記導入対象の核酸としては、より具体的には、例えば、小脳シナプス形成および可塑性制御分子としてδ2型グルタミン酸受容体、AMPA型グルタミン酸受容体をコードする核酸、治療用として脳由来神経栄養因子あるいはグリア細胞由来神経栄養因子をコードする核酸、脊髄小脳変性症の原因となるポリグルタミンの生産を抑制するsiRNAあるいはポリグルタミンの分解促進タンパク質をコードする核酸、脊髄小脳変性症6型の病因遺伝子であるP/Q型カルシウムチャネル、さらに前記タンパク質の変異体、機能阻害のためのドミナントネガティブ体をコードする核酸等が挙げられる。 本発明の発現ベクターとしては、上記のような構造を有しているものであればよく、例えば、配列番号:6に示される塩基配列を有するベクターpCL20c L7(図5)、配列番号:7に示される塩基配列を有するベクターpCL20c Calp(図6)、配列番号:8に示される塩基配列を有するベクターpAAV L7(図7)等が挙げられる。なお、前記pCL20c L7においては、該pCL20c L7中のBamHI認識部位に導入対象の核酸が挿入されうる。pCL20c Calpにおいては、該pCL20c Calp中のClaI認識部位に導入対象の核酸が挿入されうる。前記pAAV L7においては、該pAAV L7中のBamHI認識部位に導入対象の核酸が挿入されうる。 本発明は、別の側面では、前記(1)又は(2)の塩基配列を有するL7プロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを有効成分として含有してなる、小脳表面のクモ膜下腔に注入するための、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤に関する。 また、本発明の治療剤は、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療に適した導入対象の核酸が作動可能に連結された発現ベクターを有効成分として含有することに1つの大きな特徴がある。本発明の治療剤は、前記発現ベクターを含有しているため、導入対象の核酸を、効率的に小脳プルキンエ細胞に導入することができ、発現させることができるという優れた効果を発揮する。したがって、本発明の治療剤によれば、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患に対し、効率のよい治療効果を得ることができるという優れた効果を発揮する。 本明細書において、「小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患」としては、脊髄小脳変性症1型、2型、6型等が挙げられる。 前記治療剤の薬理評価は、治療対象となる疾患の種類により異なるが、脊髄小脳変性症の場合、治療剤を、小脳表面のクモ膜下腔に投与した後、細胞学的にはプルキンエ細胞(および小脳のその他の細胞)に見られるポリグルタミン凝集塊の減少によって、さらに臨床的(動物の場合は行動学的)には小脳失調の改善程度により行われうる。脊髄小脳変性症の病因はポリグルタミンの蓄積であり、このため小脳失調が出現すると考えられることから、細胞内のポリグルタミン凝集塊が減少し、小脳失調が改善した場合、治療剤が、薬理作用を示すことの指標となりうる。 本発明の治療剤においては、治療対象となる疾患の種類等に応じ、有効成分である発現ベクターに組み込む導入対象の核酸を適宜選択することができる。例えば、脊髄小脳変性症6型の場合、プルキンエ細胞に多く発現している電位依存性Caチャネルα1Aサブユニット遺伝子の変異による機能異常を相補又は抑制しうる因子又はエレメントをコードする核酸、例えば、変異した電位依存性Caチャネルα1Aサブユニット遺伝子の発現を抑制するsiRNAを発現させ得る核酸、細胞質封入体を分解するタンパク質をコードする核酸等が用いられうる。また、脊髄小脳変性症1型、2型の場合、核内及び細胞質封入体を分解するタンパク質をコードする核酸、脳由来又はグリア細胞由来神経栄養因子をコードする核酸等が挙げられる。 本発明の治療剤は、好ましくは、小脳表面のクモ膜下腔に注入することにより、投与されうる。本発明の治療剤を小脳表面のクモ膜下腔に注入することにより、注入部位周辺の少数のプルキンエ細胞のみに限局することなく、小胞分子層及びプルキンエ細胞層全体に高い親和性で、かつ広範囲に有効成分を送達することができる点で有利である。また、小脳表面のクモ膜下腔への本発明の治療剤の注入は、下オリーブ核や小脳核への注入に比べ、脳実質の損傷を抑制でき、臨床応用に優れる。したがって、本発明の治療剤によれば、治療効果をより向上させることができる。 また、本発明の治療剤の投与には、注入の際、脳圧を安定して維持させる観点から、好ましくは、一定した速度で注入可能な手段、例えば、ハミルトンシリンジとそれを取りつけることができるマイクロマニピュレーター及び注入のためのマイクルインジェクションポンプ等を用いることが望ましい。注入速度は、脳圧を安定して維持できる範囲であれば特に限定されるものではなく、個体の年齢、体重、疾患状態等に応じて、適宜設定され得る。例えば、10nl/分〜800nl/分、好ましくは、50nl/分〜400nl/分、より好ましくは、100nl/分〜200nl/分であることが望ましい。 本発明の治療剤の投与量は、治療効果を発揮させるに適した量であれば特に限定されるものではなく、個体の年齢、体重、疾患状態等に応じて、適宜設定され得る。例えば、また、本発明の治療剤の投与回数は、治療効果を発揮させるに十分な回数であればよい。レンチウイルスを基本骨格とする場合、遺伝子が染色体に組み込まれることから、1回の投与でもよく、組み込まれる遺伝子のコピー数を増加させ、より広範囲の細胞に導入させるために、小脳表面の場所を変更して(右、正中、左など)3回程度であってもよい。アデノ随伴ウイルスを基本骨格とする場合、長期にわたる発現が確認されていることから前記レンチウイルスの場合と同様に行い、小脳失調の状態によって追加投与を行なってもよい。 本発明は、他の側面では、前記L7プロモーター、又は前記カルビンディンプロモーターのいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法に関する。 なお、本発明の核酸導入方法は、ヒトへの応用も可能である。 本発明の核酸導入方法においては、前記治療剤と同様の手法により、導入対象の核酸を保持した本発明の発現ベクターをクモ膜下腔に注入することにより、広範な小脳プルキンエ細胞に特異的に該核酸を発現させることができ、トランスジェニック動物、例えば、小脳疾患モデル動物の作製が可能である。 したがって、本発明は、さらに他の側面では、前記L7プロモーター、又は前記カルビンディンプロモーターのいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、トランスジェニク動物の作製方法に関する。 本発明のトランスジェニク動物の作製方法によれば、トランスジェニック動物、例えば、小脳疾患モデル動物の作製が、効率よく、より短期間で行なうことができる。 本発明のトランスジェニック動物の作製方法によれば、特に限定されないが、マウス、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル等に代表される非ヒト動物のトランスジェニック動物を作製することができる。 以下、実施例、比較例等により本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例等により限定されるものではない。プルキンエ細胞における外来遺伝子産物発現用レンチウイルスベクターの作製(1)ウイルスの産生 以下の操作を、P2実験室で行なった。 対数増殖期のHEK293FT細胞(インビトロジェン供給)をPBS(−)に分散させ、ついで、10cmディッシュ(ファルコン社製)あたり5×105細胞となるように播種した。播種後の10cmディッシュに、10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM 10mlを添加し、その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で培養した。24時間後、前記ディッシュ中の培地を、新しい培地(10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM) 10mlと交換した。その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で0.5時間培養した。 一方、pCAG−KGP1R(St.Jude Children’s Research Hospital) 3μg、pCAG−RTR2(St.Jude Children’s Research Hospital) 1μg、pCAGGS−VSVG(St.Jude Children’s Research Hospital) 1μg、pCL20c L7−GFP(図2) 5μgそれぞれを450μl 滅菌水に溶解させ、プラスミド溶液を得た。なお、前記pCL20c L7−GFPは、図1に示されるpCL20c MSCV−GFP(St.Jude Children’s Research Hospital;配列番号:9)のMSCVプロモーター部分を、配列番号:1に示される塩基配列を有するL7プロモーターに置き換えたものである。 得られたプラスミド溶液に2.5M CaCl2 50μlを添加し、撹拌した。得られた混合物を、5分間静置させた後、前記混合物に、2xBBS〔組成:50mM N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4(pH6.95)〕 500μlを添加し、すばやく撹拌した。その後、得られた混合物を、室温で30分間静置させた。 前記ディッシュにプラスミド溶液を均等に滴下し、穏やかにディッシュ内の培地と混合した。その後、細胞を、3体積% CO2、35℃で培養した。以下、バイオハザード対策用安全キャビネットの中で操作を行なった。 24時間後、前記ディッシュ中の培地を、新しい培地(10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM) 10mlと交換した。その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で48時間培養した。(2)濃縮 前記(1)で得られたディッシュから、培地を回収して、50ml 遠沈管に移し、1000rpm(120×g)、4分間遠心分離して、上清を得た。得られた上清を、フィルター(ミリポア社製、0.22μm径)に通した。得られた濾液を、ベックマン社製ローターSW28.1を用いた超遠心分離(25,000rpm、2時間、4℃)に供して、ウイルス粒子を沈殿させ、上清を除去した。 得られたウイルス粒子沈殿物をリン酸緩衝化生理食塩水(Mg2+とCa2+とを含有しない)〔以下、PBS(−)〕に懸濁し、最終量を200μlとし、プルキンエ細胞感染用ウイルス液を得た。なお、すぐに使用しないウイルス液を、20μlずつ分注し、−80℃で保存した。(3)ウイルス力価の測定 対数増殖期のHEK293FT細胞をPBS(−)に分散させ、ついで、6ウェルディッシュ(イワキ硝子社製)に1ウェルあたり104細胞となるように播種した。播種後の6ウェルディッシュに、10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM 10mlを、2ml/ウェルとなるように添加し、その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で24時間培養した。 ウイルス液を103〜108倍となるように培地で希釈し、前記ウェル内の培地に添加した。また、同時に、ポリブレン(SIGMA社製、商品名:Hexadimethrine Bromide)を6μg/mlとなるように各ウェルに添加した。その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で96時間培養した。 ウェルの中の緑色蛍光タンパク質(GFP)発現細胞を蛍光顕微鏡(オリンパス社製、商品名:CKX41)下でセルカウンター(アズワン社製、商品名:数取器)を用いて計測し、ウイルスの力価を算出した。10n希釈ウイルス液を添加した中、Y個の細胞のGFP発現細胞が見出された場合、ウイルス力価は、Y×10nTU/ml (TU: transduction unit)として算出される。HEK293FT等の細胞系は、増殖速度が速いため、これらの細胞においては、L7プロモーター等の細胞特異的プロモーターも細胞特異性を示すことなく活性を有する。(4)プルキンエ細胞における外来遺伝子産物発現用改良レンチウイルスベクター インビトロジェン社製のレンチウイルスベクター(商品名:pLenti6/V5−DEST)の場合、そのまま使用すると超遠心分離による濃縮を行った場合であっても106 TU/mlの力価しか得られないが、該ベクターからSV40プロモーターとBlasticidine耐性遺伝子を除去することで、108 TU/mlの力価を得ることができた。プルキンエ細胞における外来遺伝子産物発現用アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの作製(1)ウイルスの産生 以下の操作を、P1実験室で行なった。 対数増殖期のAAV293細胞(ストラタジーン供給)をPBS(−)に分散させ、ついで、10cmディッシュ(ファルコン社製)あたり5×105細胞となるように播種した。播種後の10cmディッシュに、10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM 10mlを添加し、その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で培養した。24時間後、前記ディッシュ中の培地を、新しい培地(10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM) 10mlと交換した。その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で0.5時間培養した。 一方、pAAV−RC 3.3μg、pHelper 3.3μg又はpAAV L7-GFP 3.3μgを450μl 滅菌水に溶解させ、プラスミド溶液を得た。なお、pAAV L7-GFPは、pAAV−CMV−GFP(図3)のCMVプロモーターをL7プロモーターに置き換えたものである。 得られたプラスミド溶液に2.5M CaCl2 50μlを添加し、撹拌した。得られた混合物を、5分間静置させた後、前記混合物に、2xBBS 500μlを添加し、すばやく撹拌した。その後、得られた混合物を、室温で30分間静置させた。 前記ディッシュにプラスミド溶液を均等に滴下し、穏やかにディッシュ内の培地と混合した。その後、細胞を、3体積% CO2、35℃で培養した。以下、バイオハザード対策用安全キャビネットの中で操作を行なった。 24時間後、前記ディッシュ中の培地を、新しい培地(10重量% ウシ胎仔血清含有DMEM) 10mlと交換した。その後、細胞を、5体積% CO2、37℃で48時間培養した。(2)濃縮 前記(1)で得られたディッシュから、古い培地を除去し、該ディッシュにPBS(−) 2mlを添加して洗浄した。洗浄後のディッシュにPBS(−) 10mlを添加し、37℃で5分間静置させた。 前記ディッシュから細胞を剥がし、該細胞を遠沈管に回収した。1000rpm(120×g)で4分間の遠心分離により、上清を除去した。得られた沈澱を、細胞と等量のPBS(−)に懸濁した。得られた懸濁液について、ドライアイス入りエタノールと37℃に設定したウォーターバスとを用い、凍結と融解とを3回繰り返した。 得られた産物を、13000rpm(8000×g)で10分間遠心分離し、上清を回収した。 ベックマン社製ローターSW28.1用のチューブに、底から順に、CsCl−HNE1.50〔4M CsCl−HNE(組成:CsCl 67.3g、1M Hepes 5ml、5N NaCl 3ml)〕 4ml、CsCl−HNE1.25〔2.2M CsCl−HNE(組成:CsCl 33.7g、1M Hepes 5ml、5N NaCl 3ml)〕 4ml、上清 約10mlを重層し、得られたチューブを超遠心分離〔25000rpm(85470×g)、3時間、4℃〕に供し、ウイルスを含む溶液の層を回収した。 回収したウイルスを含む溶液を、商品名:Slide−A−Lyzer〔PIERCE社製〕を用いて、ウイルスを含む溶液の100倍の容量のHN緩衝液〔組成:1M HEPES、5M NaCl(pH7.4)〕に対し、24時間透析した。なお、透析中、前記HN緩衝液を3回交換した。得られた透析物を、商品名:Amicon Ultra−4(Millipore社製)を用いて、最終量200μlまで濃縮し、ウイルス液を得た。(3)ウイルス力価の測定 前記実施例2の(2)と同様に行なった。マウス小脳クモ膜下腔へのベクターの接種 以下の操作は、P2実験室にて行い、また、ウイルスベクター接種後のマウスはHEPAフィルター付の感染動物用ラック(トキワ科学器械株式会社製、商品名:バイオクリーンカプセルユニットT−BCC−M4)内で飼育した。 マウス(SLC供給、4〜10週齡)に、ペントバルビタール(商品名:ネンブタール)を、体重30gあたり200μl、腹腔内投与にて麻酔した。 なお、以下の操作は、バイオハザード対策用安全キャビネットの中で行なった。 麻酔後、マウスを、小動物固定装置〔ナリシゲ社製、商品名:SG−4〕を用いて固定した。また、体温コントローラー〔F・S・T、商品名:体温コントロールシステム(マウス用) FST−HPSM〕にて、マウス体温を37℃となるように維持した。マウスの頭部の毛を刈った後、Bregmaより数ミリ吻側から小脳直上にかけて皮膚を切開した。ついで、実体顕微鏡(ニコン社製、商品名:SMZ645)下で、Bregmaより5.5〜7.5mm尾側の正中部の頭蓋骨に、マイクロドリル〔浦和工業社製、商品名:パワーコントローラーUC100+HB1(ドリル)〕を用いて、内径2〜3mmの穴を開けた。また、注射針を用いて、骨の下の硬膜及びクモ膜に穴を開けた。 前記実施例1で得られた外来遺伝子産物発現用レンチウイルスベクターを、商品名:レックスフィルマイクロシリンジ(WPI社製、10μl容量)に充填し、該フレックスフィルマイクロシリンジをマイクロマニピュレーターに取りつけたウルトラマイクロポンプ2(WPI社製)にセットした。 マイクロシリンジの針先を、No.5の穴より約0.5mm刺入し、クモ膜下腔に留置後、外来遺伝子産物発現用レンチウイルスベクターを、ウルトラマイクロポンプ2専用デジタルコントローラーMicro4(商品名、WPI社製)を用いて、100nl/分の速度で40分間、計4μl注入した。 注入後、切開したマウスの皮膚を、縫合糸付き眼科用微小針(夏目製作所社製、商品名:眼科用弱弯針C67−0)で縫合した。その後、固定装置からマウスをはずし、ヒーティングパッド(昭和精機工業社製、商品名:ゴムマットヒーターSG−15)上に置いたケージ(安全キャビネット内)で観察した。マウスが、麻酔から覚醒した後、マウスケージを感染動物用ラックに戻し、7〜14日間維持した。 なお、対照として、L7プロモーターの代わりにCMVプロモーターを保持するレンチウイルスベクターを用いて、同様に、マウスに接種した。 接種後7〜14日目におけるマウスについて、4% ホルムアルデヒド−PBで灌流固定後、脳を摘出した。蛍光実体顕微鏡を用いて脳全体の蛍光写真を撮影後、30% シュークロースで24時間処理後、凍結切片を作製した。作製された脳切片を、一次抗体(Rat Anti-GFPAb;ナカライ社製)と共に24時間室温でインキュベーションし、ついで、二次抗体(Goat Anti-Rat IgGAb;モレキュラープローブ社製)で2時間、室温でインキュベーションし、顕微鏡用標本を得た。その後、蛍光顕微鏡で標本の観察を行なうことによりベクターの局在を調べた。 その結果、図8(L7プロモーターを保持するレンチウイルスベクターを用いた場合)および図10(MSCVプロモーターを保持するレンチウイルスベクターを用いた場合)に示されるように小脳直上クモ膜下腔へのウイルス投与により、小脳に限局したGFPの発現が見られた。凍結切片では、L7プロモーターを保持するレンチウイルスベクター(本発明)を用いた場合、プルキンエ細胞に限局して遺伝子の発現が見られた(図9)が、MSCVプロモーターを保持するレンチウイルスベクターを用いた場合、小脳プルキンエ細胞に加えて、星状細胞やバーグマングリアへの発現も認められる(図11)。実体顕微鏡写真において、L7プロモーターを保持するレンチウイルスベクターを接種した小脳のGFP蛍光強度が弱い一つの理由として、遺伝子発現がプルキンエ細胞に限局していることが挙げられる。 また、かかる方法により、広範囲の小脳プルキンエ細胞に遺伝子発現が見られることより、トランスジェニック動物が作製できることがわかる。 前記実施例1〜3において、L7プロモーターの代わりに、カルビンディンプロモーターを用いて、同様の操作を行なう。レンチウイルスの基本骨格を有するベクターの一例を図6に示す。かかるベクターによれば、L7プロモーターを用いた場合と同様に、プルキンエ細胞に限局して遺伝子の発現が見られる。 本発明により、効率的なプルキンエ細胞へのタンパク質供給が可能になり、脊髄小脳変性症等に代表される疾患の治療への応用が可能になる。図1は、pCL20c MSCV−GFPの概略図である。図2は、pCL20c L7−GFPの概略図である。図3は、pAAV CMV−GFPの概略図である。図4は、pAAV L7−GFPの概略図である。図5は、本発明の発現ベクターの一例であるpCL20c L7(配列番号:6)の概略図である。図6は、本発明の発現ベクターの一例であるpCL20c Calp(配列番号:7)の概略図である。図7は、本発明の発現ベクターの一例であるpAAV L7(配列番号:8)の概略図である。図8は、小脳プルキンエ細胞特異的なGFP遺伝子の発現例を示す図である。かかる図は、in vivoマウスの小脳直上クモ膜下腔に、L7プロモーターの制御下でGFP遺伝子を発現するレンチウイルス〔pCL20c L7−GFP;1.0×109TU/mlの力価〕を用い、マイクロインジェクションポンプを用いて100nl/分の速度で40分かけて4μl投与し、7日後に4% パラフォルムアルデヒド+リン酸緩衝液にて環流固定し、得られた脳を蛍光実体顕微鏡で観察した結果である。スケールバーは、50μmである。図9は、小脳分子層、プルキンエ細胞層への非特異的なGFP遺伝子の発現例を示す図である。図8の小脳から凍結切片を作製した。スケールバーは、50μmを示す。図10は、かかる図は、in vivoマウスの小脳直上クモ膜下腔に、MSCVプロモーターの制御下でGFP遺伝子を発現するレンチウイルス〔pCL20c MSCV−GFP2.5×109TU/mlの力価〕を、マイクロインジェクションポンプを用いて100nl/分の速度で40分かけて4μl投与し、7日後に4% パラフォルムアルデヒド+リン酸緩衝液にて環流固定し、得られた脳を蛍光実体顕微鏡で観察した結果である。図11は、小脳分子層、プルキンエ細胞層への非特異的なGFP遺伝子の発現例を示す図である。図10の小脳から凍結切片を作製した。スケールバーは、50μmである。 配列番号:1は、L7プロモーターの配列である。 配列番号:2は、カルビンディンプロモーターの配列である。 配列番号:3は、レンチウイルスベクター(インビトロジェン社製、商品名:pLenti6/V5−DEST)から除去した部分の配列を示す。 配列番号:4は、NSEプロモーターの配列である。 配列番号:5は、シナプシンIプロモーターの配列である。 配列番号:6は、pCL20c L7の配列である。 配列番号:7は、pCL20c Calpの配列である。 配列番号:8は、pAAV L7の配列である。 配列番号:9は、pCL20c MSCV-GFPの配列である。 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置されてなる、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクター。 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置され、レンチウイルスに由来するベクター骨格中の配列番号:3に示される塩基配列を含有しないものである、請求項1記載の発現ベクター。 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを有効成分として含有してなる、小脳表面のクモ膜下腔に注入するための、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤。 導入対象の核酸が、脳由来神経栄養因子、グリア細胞由来神経栄養因子、ポリグルタミンの分解促進タンパク質及びP/Q型カルシウムチャネルからなる群より選ばれたポリペプチド、又は該ポリペプチドの変異体若しくは該ポリペプチドの機能阻害のためのドミナントネガティブ体をコードする核酸である、請求項3記載の治療剤。 小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患が、脊髄小脳変性症である、請求項3又は4記載の治療剤。 発現ベクターが、下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結され、レンチウイルスに由来するベクター骨格中の配列番号:2に示される塩基配列を含有しないものである、請求項3〜5いずれか1項に記載の治療剤。 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のくも膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法。 下記(1)若しくは(2):(1)配列番号:1に示される塩基配列、若しくは(2)該配列番号:1とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するL7プロモーター、又は下記(A)若しくは(B):(A)配列番号:2に示される塩基配列、若しくは(B)該配列番号:2とは核酸多型により、少なくとも1ヌクレオチド残基が異なる塩基配列であって、かつ該塩基配列の下流に作動可能に結合した核酸をプルキンエ細胞に特異的に発現させる機能を有するポリヌクレオチドの塩基配列、を有するカルビンディンプロモーター、のいずれかのプロモーターを含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来のベクターであり、かつ該プロモーターの下流に導入対象の核酸が作動可能に連結された、小脳プルキンエ細胞に導入対象の核酸を発現させるための発現ベクターを非ヒト動物のくも膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させることを特徴とする、トランスジェニク動物の作製方法。 【課題】小脳に関する基礎医学研究及び小脳疾患の遺伝子治療に応用可能なウイルスベクターを用いた、効率的にプルキンエ細胞に遺伝子を発現させるための技術を提供する。【解決手段】L7プロモーター配列若しくはその誘導配列、又はカルビンディンプロモーター若しくはその誘導配列を含有したレンチウイルス又はアデノ随伴ウイルス由来で、該プロモーターの下流に導入対象の核酸を作動可能に連結できるように配置された発現ベクター、該発現ベクターを有効成分として含有してなる、小脳表面のクモ膜下腔に注入するための、小脳プルキンエ細胞における障害を病因とする疾患の治療剤、該発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させる、非ヒト動物の小脳プルキンエ細胞への核酸導入方法、並びに該発現ベクターを非ヒト動物のクモ膜下腔に導入し、プルキンエ細胞特異的に発現させる、トランスジェニク動物の作製方法からなる。【選択図】なし配列表