生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_人工シュウ酸カルシウム系結晶
出願番号:2004225254
年次:2006
IPC分類:C07C 55/06,C07C 51/43


特許情報キャッシュ

手嶋 勝弥 JP 2006045078 公開特許公報(A) 20060216 2004225254 20040802 人工シュウ酸カルシウム系結晶 大日本印刷株式会社 000002897 山下 昭彦 100101203 岸本 達人 100104499 手嶋 勝弥 C07C 55/06 20060101AFI20060120BHJP C07C 51/43 20060101ALI20060120BHJP JPC07C55/06C07C51/43 6 OL 11 4H006 4H006AA01 4H006AA02 4H006AB20 4H006AD15 4H006BS70 本発明は、生体親和・代替材料、物性測定用標準材料等に用いることが可能な人工シュウ酸カルシウム系結晶およびその製造方法に関するものである。 シュウ酸カルシウム系結晶は、一般に溶液法や焼成法等により製造することができる。 溶液法では、例えば塩化カルシウムの水溶液にシュウ酸アンモニウムを加えると結晶が析出することが知られている。しかしながら、このような溶液法では結晶の成長速度が速いため、結晶成長や粒径の制御が困難であり、結晶性が低下するという問題がある。また、溶液を攪拌することにより反応させるため、結晶成長過程において核が発生したり、結晶同士の衝突により結晶が破壊したりするという不具合が生じ、品質が低下するという問題もある。 一方、シュウ酸カルシウム系結晶の原料粉末を焼成して結晶を生成する焼成法では、長時間焼成を行うと結晶粒が粗大化するため機械的強度が低下するなどの問題があり、この方法においても高品質な結晶を得ることは困難である。また、高温で焼成するため無水物の結晶しか得られないという問題もある。 また、いずれの方法においても結晶成長の制御が難しいことから、結晶面を有する結晶を製造することは困難である。 なお、本発明に関する先行技術文献は、発見されていない。 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、結晶面を有する高品質な人工シュウ酸カルシウム系結晶、およびこのような人工シュウ酸カルシウム系結晶を容易に製造することが可能な人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法を提供することを主目的とするものである。 上記目的を達成するために、本発明は、{101}面、{110}面、{010}面、{001}面、{100}面、{310}面、{121}面、{301}面、{130}面、{411}面、および{321}面からなる群から選択される少なくとも1つの結晶面を有することを特徴とする人工シュウ酸カルシウム系結晶を提供する。 本発明によれば、人工シュウ酸カルシウム系結晶が結晶面を有するものであるので、例えば生体材料等として使用する際には生体との親和性がよく、生体物質の成長に有利であるという利点を有する。 また本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、自形を有することが好ましい。本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶が自形を有する、すなわち、人工シュウ酸カルシウム系結晶固有の結晶面で構成された外形をしていることから、種々の用途に用いることが可能となるからである。 さらに本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される結晶であることが好ましい。 CaC2O4・xH2O (1) CaaHb(C2O4)c・yH2O (2)(ここで、式(1)中、x≦3であり、また式(2)中、2a+b=2c、y≦2である。) 本発明はまた、ゲル法により、結晶面を有する人工シュウ酸カルシウム系結晶を製造することを特徴とする人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法を提供する。 ゲル法では反応溶液がゲル中に徐々に拡散することにより結晶を育成することから、結晶成長速度をゲルマトリックス密度により制御することができ、純度が高く結晶性の良好な結晶を製造することができる。また、反応場がゲル中であることから、結晶同士の衝突による結晶の破壊を抑制することができ、高品質の結晶を製造することが可能となる。さらに、用いるゲルのマトリックス密度やゲルの厚さを調整することにより、ゲル中での反応溶液の拡散透過速度を制御することができ、ゲル中での反応速度を制御することが可能となり、結晶成長および粒径の制御だけでなく、結晶の形状等も制御することができるという効果も期待できる。また、ゲル法では低温条件で結晶を育成することができ、結晶成長の制御が可能であることから、欠陥の少ない人工シュウ酸カルシウム系結晶を製造することができる。 また本発明においては、上記人工シュウ酸カルシウム系結晶が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される結晶であることが好ましい。 CaC2O4・xH2O (1) CaaHb(C2O4)c・yH2O (2)(ここで、式(1)中、x≦3であり、また式(2)中、2a+b=2c、y≦2である。) 上記の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、ゲル法により製造することが比較的容易であるからである。 さらに本発明においては、上記ゲル法において用いるゲルが、シリカゲルまたは寒天ゲルであることが好ましい。これらのゲルは、比較的マトリックス密度を制御しやすく、反応溶液を効率的にゲル中に拡散させることができるからである。 本発明によれば、人工シュウ酸カルシウム系結晶が所定の結晶面を有しており、自形を有するものであるので、例えば生体材料等として使用する際には生体との親和性がよく、生体物質の成長に有利であるという効果を奏する。 本発明は、人工シュウ酸カルシウム系結晶およびその製造方法を含むものである。以下、それぞれについて詳細に説明する。 A.人工シュウ酸カルシウム系結晶 まず、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶について説明する。 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、{101}面、{110}面、{010}面、{001}面、{100}面、{310}面、{121}面、{301}面、{130}面、{411}面、および{321}面からなる群から選択される少なくとも1つの結晶面を有することを特徴とするものである。 従来の溶液法または焼成法では、結晶成長の制御が困難であり、二次核発生による結晶への核の付着、双晶の形成および結晶同士の衝突による結晶の破壊などにより結晶表面の状態が荒れるため、得られた結晶は結晶面を有してなく、結晶固有の外形を有するものではなかった。これに対し、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は結晶面を有するものであるので、例えば生体材料等として使用する際には生体との親和性がよく、生体物質の成長に有利であるという利点を有する。 また、シュウ酸カルシウム系結晶は、ヒトや動物の体内、あるいは植物中で生成するものであり、ヒトや動物の体内、例えば腎臓や膀胱あるいはそれらの導管等に生成した場合は結石等の病気の原因となる。しかしながら、このように腎臓等に結石としてシュウ酸カルシウム系結晶が生成した場合、シュウ酸カルシウム系結晶は硬組織として存在することはない。これに対し、本発明においては、人工シュウ酸カルシウム系結晶を骨や歯などの硬組織に利用することを目的としており、生体材料として積極的に利用可能である。 ここで、上記結晶および結晶面はX線回折装置を用いてそれぞれ同定および測定するものとする。この際、後述する人工シュウ酸カルシウム系結晶の種類に応じて、晶系および格子定数を適宜選択する。また本発明において、人工シュウ酸カルシウム系結晶が所定の結晶面を有するとは、所定の結晶面のいずれかに帰属されるピークが検出されればよいものとする。 また本発明において、例えば{101}面とは、(101)面と等価な全ての面、すなわち(101)面およびその倍数である(202)面、(303)面および(404)面などを意味するものとし、他の所定の結晶面についても同様とする。 さらに、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は自形を有することが好ましい。本発明において自形を有するとは、人工シュウ酸カルシウム系結晶が、人工シュウ酸カルシウム系結晶固有の結晶面で構成された外形をしている状態を意味するものである。このような自形を有する人工シュウ酸カルシウム系結晶は、生体材料や生体形成材料などの生体親和・代替材料、物性測定用標準材料等の種々の用途に用いることが可能である。 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶がもつ自形としては、例えば六角板状や、六角板状を基本形状とし、その双晶である放射状または球晶、あるいは針状、板状、およびこれらの集合体などが挙げられる。このように、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶における自形としては複数の形状を挙げることができる。ここで、上記の自形は、走査型電子顕微鏡(SEM)または光学顕微鏡を用いて確認することができる。 このような人工シュウ酸カルシウム系結晶としては、炭素、酸素、カルシウムを主たる構成元素とする結晶のうち、O−C=O結合を含むものであれば特に限定されないが、中でも本発明においては、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される結晶であることが好ましい。 CaC2O4・xH2O (1) CaaHb(C2O4)c・yH2O (2) なお、上記式(1)においてはx≦3を表す。また、上記式(2)においては2a+b=2c、y≦2を表す。 また本発明において、人工シュウ酸カルシウム系結晶はゲル法により作製されることが好ましい。ゲル法とは、ゲル中への反応溶液の拡散を駆動力として結晶核生成および成長を促す方法であり、例えば第2反応溶液を含んだゲル中に第1反応溶液を拡散させることにより結晶を育成できる。このようにゲル法では反応溶液がゲル中に徐々に拡散することにより結晶を育成することから、結晶成長速度をゲルマトリックス密度により制御することができ、純度が高く結晶性の良好な結晶を得ることが可能となり、さらに結晶成長および粒径の制御が容易であるという利点を有する。 なお、ゲル法等の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法に関しては、後述する「B.シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法」に記載するため、ここでの説明は省略する。 さらに本発明においては、人工シュウ酸カルシウム系結晶を上述したゲル法により作製することにより、純度の高いものとすることができるが、具体的な純度としては、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶中に含まれる不純物の含有量が20重量%以下、中でも15重量%以下、特に10重量%以下であることが好ましい。 なお、上記不純物の含有量は、X線光電子分光法、エネルギー分散型蛍光X線分析法、あるいは電子プローブマイクロ分析法を用いて測定した値とする。 また、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、欠陥の少ないものであることが好ましい。結晶中に欠陥が存在する場合、人工シュウ酸カルシウム系結晶の有する性質が変化する可能性があり、目的とする用途に用いることが困難となる場合があるからである。本発明においては、人工シュウ酸カルシウム系結晶は自形を有し、結晶固有の結晶面で構成された外形をしていることから、欠陥の少ないものとすることができるのである。 なお、欠陥が少ないとは、具体的にX線回折パターンにおけるピークの半値幅により判断することができる。ここでは、半値幅が小さいほど結晶中に欠陥が少ないとする。 一般に欠陥の生成は吸熱反応であることから、結晶中に欠陥が生じるにはエネルギーが必要であり、温度が高いほど多くの欠陥が導入されるといえる。本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶は、上述したようにゲル法により作製されることが好ましく、ゲル法では低温条件で結晶を育成することができ、かつ結晶成長の制御が可能であることから、自形の発達したものとすることができるのである。 B.人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法 次に、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法について説明する。 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法は、ゲル法により、結晶面を有する人工シュウ酸カルシウム系結晶を製造することを特徴とするものである。 ゲル法とは、ゲル中への反応溶液の拡散を駆動力として結晶核生成および成長を促す方法である。例えば、第2反応溶液を含んだゲル中に第1反応溶液を拡散させ、ゲル中への第1反応溶液の拡散を駆動力として、結晶を育成することができる。また例えば、ゲル中に第1反応溶液および第2反応溶液を拡散させ、ゲル中で、拡散した第1反応溶液および第2反応溶液を反応させることにより、結晶を育成することもできる。 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の一例を示す工程図である。図1に示すように、シュウ酸供給材料を含む第2反応溶液を含有するシリカゲル2の上部に、カルシウム供給材料を含む第1反応溶液1aを注入すると、第1反応溶液1aはシリカゲル2のゲルマトリックスを介して拡散する。これにより、シリカゲル2内部において結晶核が生成し、人工シュウ酸カルシウム系結晶3が成長する。 図2は、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の他の例を示す工程図である。図2に示すように、シリカゲル2の上部に、シュウ酸供給材料を含む第1反応溶液1aおよびカルシウム供給材料を含む第2反応溶液1bを注入すると、第1反応溶液1aおよび第2反応溶液1bはシリカゲル2のゲルマトリックスを介して拡散する。これにより、シリカゲル2内部において第1反応溶液1aおよび第2反応溶液1bが反応して結晶核が生成し、人工シュウ酸カルシウム系結晶3が成長する。 このようにゲル法では反応溶液がゲル中に徐々に拡散することにより結晶を育成することから、結晶成長速度をゲルマトリックス密度により制御することができ、純度が高く結晶性の良好な結晶を製造することができる。また、反応場がゲル中であることから、結晶同士の衝突による結晶の破壊を抑制することができ、結晶面を有する高品質な結晶を製造することが可能となる。さらに、用いるゲルのマトリックス密度やゲルの厚さを調整することにより、ゲル中での反応溶液の拡散透過速度を制御することができ、ゲル中での反応速度を制御することが可能となるため、結晶成長および粒径の制御だけでなく、結晶の形状等も制御することができるという効果も期待できる。 また一般に、結晶中の欠陥の生成は吸熱反応であることから、結晶中に欠陥が生じるにはエネルギーが必要であり、温度が高いほど多くの欠陥が導入される。従来の溶液法および焼成法においては高温条件を必要とし、結晶成長の制御が困難であることから、欠陥が生じやすいという不具合があったが、本発明に用いられるゲル法は低温条件でよく、結晶成長の制御が可能であることから、欠陥の少ない人工シュウ酸カルシウム系結晶を製造することができる。 したがって、本発明により製造された人工シュウ酸カルシウム系結晶は、純度が高く結晶性が良好であり欠陥が少ないことから、生体材料や生体形成材料などの生体親和・代替材料、物性測定用標準材料等の種々の用途に用いることが可能となる。 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法としては、ゲル中への反応溶液の拡散を駆動力として結晶を育成できる方法であれば特に限定されないが、上述したように大きく分けて2つの態様がある。本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の第1の態様は、第2反応溶液を含有するゲルを調製するゲル調製工程と、第1反応溶液を調製する第1反応溶液調製工程と、上記ゲルおよび上記第1反応溶液を接触させ、上記ゲル中に上記第1反応溶液を拡散させて結晶を成長させる結晶成長工程と、上記結晶および上記ゲルを分離する結晶分離工程とを有するものである。また、本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の第2の態様は、ゲルを調製するゲル調製工程と、第1反応溶液を調製する第1反応溶液調製工程と、第2反応溶液を調製する第2反応溶液調製工程と、上記ゲルに上記第1反応溶液および第2反応溶液を接触させ、上記ゲル中に上記第1反応溶液および第2反応溶液を拡散させて結晶を成長させる結晶成長工程と、上記結晶および上記ゲルを分離する結晶分離工程とを有するものである。 以下、各態様について説明する。 1.第1の態様 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の第1の態様は、第2反応溶液を含有するゲルを調製するゲル調製工程と、第1反応溶液を調製する第1反応溶液調製工程と、上記ゲルおよび上記第1反応溶液を接触させ、上記ゲル中に上記第1反応溶液を拡散させて結晶を成長させる結晶成長工程と、上記結晶および上記ゲルを分離する結晶分離工程とを有する。 以下、このような人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の各工程について説明する。 (1)ゲル調製工程 まず、本態様の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法におけるゲル調製工程について説明する。本態様におけるゲル調製工程は、第2反応溶液を含有するゲルを調製する工程である。 本態様に用いられるゲルとしては、第2反応溶液を支持することができるものであれば特に限定されなく、一般に支持体として用いられるゲルを使用することができる。中でも本態様においては、シリカゲルまたは寒天ゲルを用いることが好ましい。これらのゲルは、比較的マトリックス密度を制御しやすく、後述する第1反応溶液を効率的にゲル中に拡散させることができるからである。 ここで、上記シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液をpH調整することにより得ることができる。ケイ酸ナトリウムは、ケイ酸ナトリウム水溶液のpHを調整することにより、イオン化し、かつ、マトリックスを形成するため、三次元網目構造を有するシリカゲルとなる。 また、本態様に用いられる第2反応溶液としては、上記ゲルと反応性を持たないものであり、人工シュウ酸カルシウム系結晶の形成材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。 上記シュウ酸カルシウム系結晶の形成材料は、シュウ酸供給材料およびカルシウム供給材料に分けることができ、上記第2反応溶液にはシュウ酸供給材料およびカルシウム供給材料のいずれか一方が含有されているものである。本態様においては、第2反応溶液にシュウ酸供給材料およびカルシウム供給材料のどちらが含有されていてもよいが、第2反応溶液にシュウ酸供給材料が含有されている場合は、後述する第1反応溶液にカルシウム供給材料が含有されている必要があり、第2反応溶液にカルシウム供給材料が含有されている場合は、後述する第1反応溶液にシュウ酸供給材料が含有されている必要がある。 上記シュウ酸供給材料としては、炭素および酸素を主たる構成元素とする化合物であり、O−C=O結合を有するものであって、水溶性であり、ゲルと反応性を持たないものであれば特に限定されないが、例えばシュウ酸、シュウ酸クロリド、シュウ酸チタニウムカリウム、シュウ酸二アンモニウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸チタニルバリウム、シュウ酸鉄およびこれらの水和物等を挙げることができる。本発明においては上記の中でも、シュウ酸二アンモニウムあるいはシュウ酸二ナトリウムを用いることが好ましい。また、上記の化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 また、上記カルシウム供給材料としては、カルシウムを主たる構成元素とする化合物であり、水溶性であって、上記ゲルと反応性を持たないものであれば特に限定されないが、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酪酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリピロリン酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、酸化カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、およびこれらの水和物が挙げられる。また、上記の化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては上記の中でも、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、およびこれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。 さらに、上記第2反応溶液に用いられる溶媒としては、上記シュウ酸供給材料または上記カルシウム供給材料を溶解または分散させることができるものであれば特に限定されないが、通常は水が用いられる。 このような第2反応溶液をゲルに含有させる方法としては、ゲル中に第2反応溶液が均一に分散される方法であれば特に限定されないが、例えばゲルの形成材料および第2反応溶液を混合しpHを制御する、あるいは、冷却または加熱することにより、ゲルの形成材料をゲル化させる方法等を用いることができる。 また、上記ゲル中におけるシュウ酸供給材料またはカルシウム供給材料の濃度としては、これらの材料を水に溶解させる際、その飽和濃度以下であればよい。飽和濃度以下であれば、結晶の育成が可能であるからである。また、上記濃度により、結晶サイズや核発生数に影響が及ぼされると考えられるが、濃度の下限値としては特に限定されない。得られた結晶が微細である場合は、注射器などにより生体内に直接注入することができるという利点を有するからである。 (2)第1反応溶液調製工程 次に、本態様の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法における第1反応溶液調製工程について説明する。本発明における第1反応溶液調製工程は、第1反応溶液を調製する工程である。 本態様に用いられる第1反応溶液としては、上記ゲルと反応性を持たず、上記ゲルを通過することができ、シュウ酸供給材料またはカルシウム供給材料のいずれか一方を含有するものであれば特に限定されるものではない。 なお、シュウ酸供給材料、カルシウム供給材料、およびこれらの濃度等に関しては、上記ゲル調製工程に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。 (3)結晶成長工程 次に、本態様の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法における結晶成長工程について説明する。本態様における結晶成長工程は、上記ゲルおよび上記第1反応溶液を接触させ、上記ゲル中に上記第1反応溶液を拡散させて結晶を成長させる工程である。 上記ゲルおよび上記第1反応溶液を接触させる方法としては、ゲルが破壊されない方法であれば特に限定されるものではないが、例えば図1に示すようにゲル2が入った容器4に第1反応溶液1を注入する方法等が挙げられる。 本工程においては、ゲル中における第2反応溶液の濃度、すなわちシュウ酸供給材料またはカルシウム供給材料の濃度が一定であるため、時間の経過とともに結晶の成長速度が低下する傾向にある。したがって、結晶の成長速度を一定に保持したい場合は、第1反応溶液の濃度が濃くなるように適宜調製してもよく、または第1反応溶液の濃度を一定にして第1反応溶液の供給速度を速くしてもよい。 本工程における温度としては、ゲルが破壊されない、あるいは結晶成長を妨げない温度であれば特に限定されなく、通常は室温程度とする。 (4)結晶分離工程 次に、本態様の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法における結晶分離工程について説明する。本態様における結晶分離工程は、上記結晶および上記ゲルを分離する工程である。 結晶およびゲルを分離する方法としては、例えば温水中でゲル溶解させる方法等が挙げられる。ゲルを溶解させる媒体としては、温水に限定されるものではないが、経済的および環境的に水系の媒体が最も有効である。水系の媒体として、温水の他に、沸騰水(熱水)も使用することができる。 本態様により製造された人工シュウ酸カルシウム系結晶の平均粒径としては特に限定されるものではない。粒径が小さい結晶、例えば100μm未満のものは、例えばナノ粒子として生体内に直接注入することが可能となるからである。また、粒径が大きい結晶、例えば100μm以上のものは、加工が容易となり、例えば骨形成材料として直接使用が可能となるからである。 なお、上記人工シュウ酸カルシウム系結晶のその他の点に関しては、上述した「A.人工シュウ酸カルシウム系結晶」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。 2.第2の態様 本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の第2の態様は、ゲルを調製するゲル調製工程と、第1反応溶液を調製する第1反応溶液調製工程と、第2反応溶液を調製する第2反応溶液調製工程と、上記ゲルに上記第1反応溶液および第2反応溶液を接触させ、上記ゲル中に上記第1反応溶液および第2反応溶液を拡散させて結晶を成長させる結晶成長工程と、上記結晶および上記ゲルを分離する結晶分離工程とを有する。 なお、第1反応溶液調製工程および結晶分離工程については、上記第1の態様に記載したものと同様であり、第2反応溶液調製工程については、上記第1の態様の第1反応溶液調製工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。 (1)ゲル調製工程 本態様におけるゲル調製工程は、ゲルを調製する工程である。ゲルを調製する方法としては特に限定されないが、例えばゲルの形成材料のpHを制御する、あるいは、ゲルの形成材料を冷却または加熱することにより、ゲル化することができる。 なお、ゲルについては、上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。 (2)結晶成長工程 本態様における結晶成長工程は、上記ゲルに第1反応溶液および第2反応溶液を接触させ、上記ゲル中に第1反応溶液および第2反応溶液を拡散させて結晶を成長させる工程である。 上記ゲルに第1反応溶液および第2反応溶液を接触させる方法としては、ゲルが破壊されることなく、かつゲル中で第1反応溶液および第2反応溶液が反応するような方法であれば特に限定されないが、例えば図2に示すようにゲル2が入った容器4に第1反応溶液1aおよび第2反応容器1bを個別に注入する方法等が挙げられる。 この際、用いられる容器としては、少なくとも2箇所の注入口を有するものであれば特に限定されなく、例えば図2に示すようなU字管の他に、筒状の容器や、三口フラスコ等を用いることができる。 なお、結晶成長工程のその他の点については、上記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。 なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するもの、またはそれらの均等物は、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。 [実施例] 0.5Mに調整したNa2SiO3・9H2O水溶液(15ml)を試験管にいれ、その後、第2反応溶液として0.10Mに調整した(NH4)2C2O4・H2O水溶液(15ml)を上記Na2SiO3・9H2O水溶液中に添加し、十分に攪拌した後、2Mに調整した酢酸(7.5ml)を加え、再度攪拌した。この試験管中の溶液がゲル化した後、第1反応溶液として0.10Mに調整したCa(NO3)2水溶液(15ml)を、ゲルが破壊されないように静かに注ぎ、室温にて静置した。結晶育成後、温水中でゲルを溶解し、育成した結晶を分離した。60日間の育成後、最大、約1.0mmに達する無色透明のCaC2O4・H2Oの六角板状結晶を育成できた。得られた結晶をX線回折分析したところ{101}面が確認できた。本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の一例を示す工程図である。本発明の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法の他の例を示す工程図である。 {101}面、{110}面、{010}面、{001}面、{100}面、{310}面、{121}面、{301}面、{130}面、{411}面、および{321}面からなる群から選択される少なくとも1つの結晶面を有することを特徴とする人工シュウ酸カルシウム系結晶。 自形を有することを特徴とする請求項1に記載の人工シュウ酸カルシウム系結晶。 下記一般式(1) CaC2O4・xH2O (1)(ここで、x≦3である。)または下記一般式(2) CaaHb(C2O4)c・yH2O (2)(ここで、2a+b=2c、y≦2である。)で表される結晶であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工シュウ酸カルシウム系結晶。 ゲル法により、結晶面を有する人工シュウ酸カルシウム系結晶を製造することを特徴とする人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法。 前記人工シュウ酸カルシウム系結晶は、下記一般式(1) CaC2O4・xH2O (1)(ここで、x≦3である。)または下記一般式(2) CaaHb(C2O4)c・yH2O (2)(ここで、2a+b=2c、y≦2である。)で表される結晶であることを特徴とする請求項4に記載の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法。 前記ゲル法において用いるゲルが、シリカゲルまたは寒天ゲルであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の人工シュウ酸カルシウム系結晶の製造方法。 【課題】結晶面を有する高品質な人工シュウ酸カルシウム系結晶並びにその結晶の製造方法の提供。【解決手段】{101}面、{110}面、{010}面、{001}面、{100}面、{310}面、{121}面、{301}面、{130}面、{411}面、および{321}面からなる群から選択される少なくとも1つの結晶面を有することを特徴とする人工シュウ酸カルシウム系結晶で、該結晶は、ゲル法により製造される。【選択図】なし


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