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タイトル:公開特許公報(A)_DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びDNaseγ阻害剤
出願番号:2004220800
年次:2006
IPC分類:A61K 31/352,A61K 31/53,A61P 43/00,C07D 311/82,C07D 405/12,C12Q 1/34


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田沼 靖一 吉森 篤史 須永 賢 JP 2006036711 公開特許公報(A) 20060209 2004220800 20040728 DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びDNaseγ阻害剤 学校法人東京理科大学 000125370 一色国際特許業務法人 110000176 田沼 靖一 吉森 篤史 須永 賢 A61K 31/352 20060101AFI20060113BHJP A61K 31/53 20060101ALI20060113BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060113BHJP C07D 311/82 20060101ALI20060113BHJP C07D 405/12 20060101ALI20060113BHJP C12Q 1/34 20060101ALI20060113BHJP JPA61K31/352A61K31/53A61P43/00 105A61P43/00 111C07D311/82C07D405/12C12Q1/34 7 OL 17 4B063 4C062 4C063 4C086 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ34 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR57 4B063QS26 4B063QS36 4B063QX02 4C062HH21 4C063AA01 4C063BB09 4C063CC79 4C063DD43 4C063EE01 4C086BA08 4C086BC64 4C086GA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZC20 4C086ZC78 本発明は、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びそのスクリーニング方法により得られたDNaseγ阻害剤に関する。 アポトーシスは、現象論的に、細胞の縮小、クロマチンの凝縮、DNAの断片化などによって特徴付けられる細胞死のことで、ネクローシス(壊死)に対応する概念である。アポトーシスは、発生過程における形態形成や神経系ネットワークの構築ばかりでなく、成体における異常細胞の除去、内分泌系による恒常性の維持、免疫系の成立などに重要な役割を果たしている。アポトーシスの異常は、癌、自己免疫疾患、神経変性疾患肝炎、エイズなどの疾患の原因となる。このように、アポトーシスは極めて重要な細胞の基本機能の一つであるため、様々な疾患の病態解明から適正な治療法の開発までに及ぶ広範な医療領域において、常に考慮に入れられるべき重要な現象である。 アポトーシスの検出方法の一つともなっているDNAの断片化に関わる酵素としては、DNase I、DNase X、DNaseγ、CAD/DFF40、Endonuclease G、DNase IIなどが報告されている。しかしながら、これらのDNaseが実際に生体において働いているのか、またどのように使い分けられているのかに関して、即ち、各DNaseが特異的に関与する細胞の種類、分化状態、アポトーシス誘導刺激などに関して、全容は未だ解明されていない。 DNase Iの立体構造は、DNAと共結晶化されたタンパク質を用いて行われたX線結晶解析から明らかになった(非特許文献1参照)。この立体構造において、解離したDNAの二重鎖のうち、一方のDNA鎖が結合する活性中心と、もう一方のDNA鎖が結合するドメイン(以下、このドメインをDNA結合ポケットと呼ぶ)が同定された(非特許文献1参照)。活性中心に関しては、それを構成するアミノ酸配列に変異を導入することで、DNase γの活性が消失することが明らかになった(非特許文献2参照)が、DNA結合ポケットに関しては、DNase γ活性との関連は必ずしも明らかではなかった。J. Mol. Biol. 222, 645-67, 1991アポトーシスがわかる わかる実験医学シリーズ−基本&トピックス(編集:田沼靖一,出版社:羊土社,ISBN:4897069882)69頁 アポトーシスにおけるDNaseγの役割の解明やDNaseγ依存性アポトーシスの特異性の解明に対し、DNaseγのDNase活性を特異的に阻害することは一つの戦略となる。しかし、現在、そのための有効な活性阻害物質や阻害方法はなく、その開発が求められている。 そこで、本発明は、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びDNaseγのDNase活性を阻害する物質を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく、まずDNase I共結晶構造に基づいてDNaseγの立体構造を予測した。DNase Iの立体構造においては、DNase Iが2本鎖DNA を解離しながらDNAを切断する際に切断する側のDNA鎖が結合するDNase Iの酵素活性中心と、もう一方のDNA鎖が結合するDNA結合ポケットが存在するが、本発明者らは、DNaseγの立体構造において、このDNase IのDNA結合ポケットに対応するドメインを同定した。なお、本明細書では、実際にDNAに結合するかどうかに関わらず、DNase IのDNA結合ポケットに対応するDNaseγのドメインを、DNaseγのDNA結合ポケットと呼ぶこととする。 続いて、DNaseγのDNA結合ポケットと結合親和性の高い物質を化合物ライブラリーから選択し、その後、選択した化合物がDNaseγのDNase活性を阻害することができるか否かを実験的に調べることにより、DNaseγのDNase活性を阻害する物質(以下、DNaseγ阻害剤と呼ぶ)を見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明に係るDNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法は、立体的な結合障害を生じさせるためにDNaseγのDNA結合ポケットに物質を結合させることを含む。この物質としては、ヒトDNaseγ(配列番号1参照)のGlu13、Ser14、Asp42、Ser43、及びAsn44からなるS1ドメイン(配列番号2参照)の1又は2以上のアミノ酸残基と、DNaseγのSer10、Phe11、Gly12、Glu39、Ile40、及びLys41からなるS2ドメイン(配列番号3参照)の1又は2以上のアミノ酸残基とに結合するものであってもよいが、さらにDNaseγのArg72、Thr77、Tyr78、Lys79、Glu80、及びGln81からなるS3ドメイン(配列番号4参照)の1又は2以上のアミノ酸残基にも結合するものであってもよい。 具体的な物質として、例えば、下式(1)〜(4)からなるグループから選ばれるいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するものを用いることができる。 また、本発明に係るDNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法は、DNaseγのDNA結合ポケットに結合する物質を化合物ライブラリーから選択する1次スクリーニングと、選択した前記物質がDNaseγのDNase活性を阻害することができるかどうかを確認する2次スクリーニングと、を含む。 さらに、本発明に係るDNaseγ阻害剤は、下式(1)〜(4)からなるグループから選ばれるいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する。 本発明によれば、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びDNaseγのDNase活性を阻害する物質を提供することができる。 以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。==DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法== DNaseγのDNA結合ポケットは、X線解析やNMR(Nuclear Magnetic Resonance)法によっては未だに解明されていないが、DNaseIと同様、DNA切断の際のDNA結合部位であることが予想される。従って、DNA結合ポケットに結合する物質は、DNaseγに対するDNAの安定な結合に対し、立体的な結合障害を生じさせることにより、DNaseγのDNase活性に対する阻害効果を有すると考えられる。 そこで、立体的な結合障害を生じさせるためにDNaseγのDNA結合ポケットに物質を結合させれば、DNaseγのDNase活性を阻害することができる。結合させる物質はDNaseγのDNase活性を阻害することができるものであれば何でもよく、水素結合でDNA結合ポケットに結合する化合物、DNA結合ポケット周辺をエピトープとする抗体、DNA結合ポケットに強固に結合する修飾1本鎖DNAなどが挙げられる。==DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法== このDNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法を利用して、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質をスクリーニングすることができる。 まず、1次スクリーニングとして、化合物ライブラリーから、DNaseγのDNA結合ポケットと結合する物質を選択する。その物質のDNaseγに対する結合親和性(例えば、水素結合、疎水性相互作用など)の高い物質を選択することが好ましい。2次スクリーニングとして、1次スクリーニングで選択した物質がDNaseγのDNase活性を阻害することができるかどうかを実験的に確認することにより、実際にDNase活性を阻害する阻害物質を同定することができる。 1次スクリーニングは、例えば、コンピュータ上でDockingプログラムを用いて行うことができる。なお、化合物ライブラリーとしては、例えば、ChemACX、Maybridge Catalog and the Asinex database、Rare Chemical Library、World Drug Index、Cambridge Crystallographic Databaseなどのデータベースを用いることができる。 別法として、実験的に、DNaseγのDNA結合ポケットと結合する物質を選択することもできる。例えば、大腸菌などで発現させたDNaseγのDNA結合ポケット部分を担持させたアフィニティカラムを用い、化合物ライブラリーに属する化合物から、そのカラムに結合する化合物を選択してもよい。 2次スクリーニングでは、その物質が実際に、DNaseγのDNase活性に対する阻害効果を有するかどうかを実験的に確認する。確認方法は、in vitro、in vivoを問わず、DNaseγのDNase活性に対する阻害効果を確認できるものであれば何でもよい。 例えば、in vitroで、DNaseγと適当な長さのDNAとを含む溶液に1次スクリーニングで選択した物質を添加して酵素反応させることにより、この物質がDNase活性を阻害できるかどうか確認できる。 また、培養細胞にDNaseγ依存性アポトーシスを誘導し、1次スクリーニングで選択した物質を培地に添加して、この物質がDNAの断片化を阻害できるかどうか確認してもよい。この場合、この物質がアポトーシスの他の過程に対して有害な効果を示さないことを確認するのが望ましい。==DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質== 実施例に記載するように、上記スクリーニング法によって、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質として下式化合物(1)が得られた。また、化合物(1)とDNaseγのDNA結合ポケットとの結合様式を調べたところ、図1に示すように、化合物(1)は、DNaseγのS1(Glu13、Ser14、Asp42、Ser43、及びAsn44からなる。)、S2(Ser10、Phe11、Gly12、Glu39、Ile40、及びLys41からなる。)、S3(Arg72、Thr77、Tyr78、Lys79、Glu80、及びGln81からなる。)などのドメインにおけるアミノ酸残基と水素結合することが明らかになった。 また、同様に上記スクリーニング法によって、化合物ライブラリーから下式化合物(2)が得られた。化合物(2)とDNaseγのDNA結合ポケットとの結合様式を調べたところ、図2に示すように、化合物(2)は、DNaseγのS1、S2などのドメインにおけるアミノ酸残基と結合することが明らかになった。 これらの化合物のように、DNaseγのDNA結合ポケットのS1(Glu13、Ser14、Asp42、Ser43、及びAsn44からなる。)、S2(Ser10、Phe11、Gly12、Glu39、Ile40、及びLys41からなる。)、S3(Arg72、Thr77、Tyr78、Lys79、Glu80、及びGln81からなる。)などのドメインにおけるアミノ酸残基と水素結合する化合物は、安定にDNA結合ポケットに結合して、立体的な結合障害を生じさせることができる。 さらに、同様に上記スクリーニング法によって、化合物ライブラリーから、DNaseγのDNase活性を阻害する下式化合物(3)及び(4)が得られた。 以下、本発明の実施例について詳細に述べる。[実施例1]DNaseγの立体構造の予測(1)DNase I結晶構造(PDB code:2DNJ)を基に、ホモロジーモデリング法により、DNaseγの初期構造を構築した(図3参照)。なお、ホモロジーモデリング法のソフトウェアとしてModeller(http://salilab.org/modeller/modeller.html)を用いた。 (2)鋳型として用いたDNase Iの立体構造はDNAとの共結晶であることから、その複合体構造を基にDNaseγ/DNA複合体構造を構築した。 (3)分子動力学ソフトウェアであるAmberを用いてDNaseγ/DNA複合体構造の構造を最適化し、最終的な立体構造とした。 (4)予測したDNaseγ/DNA複合体の立体構造の妥当性を、Verify3Dを用いて評価した。 Verify3Dを用いた評価の結果、スコアが121.41であり、立体構造の妥当性目安値(S=exp(-0.83+1.008ln(L));Lは残基数で(L=256))が116.7以上であったことから、予測したDNaseγ/DNA複合体の立体構造は妥当であると判断した。また、予測したDNaseγ/DNA複合体の立体構造から、DNase IのDNA結合ポケットに対応するDNaseγのドメイン(S1, S2, S3)を予測した(図2参照)。これらのドメインに含まれるアミノ酸は、S1(Glu13、Ser14、Asp42、Ser43、Asn44)、S2(Ser10、Phe11、Gly12、Glu39、Ile40、Lys41)、S3(Arg72、Thr77、Tyr78、Lys79、Glu80、Gln81)であった。[実施例2]Docking ProgramによるDNaseγ阻害剤の1次スクリーニング 次に、実施例1で予測したDNaseγの構造を用いて、Dockingプログラム(Autodock 3.0)により、化合物ライブラリーに含まれる化合物とDNaseγのDNA結合ポケットとをドッキングさせ、その結合親和性スコアを計算することでDNaseγの阻害剤となりうる物質(下式化合物(1)〜(4))を選択した。なお、化合物ライブラリーとしてはChemACXを用い、パラメータとしては全てデフォルトで行った。 [実施例3]DNaseγのDNase活性に対する阻害効果(2次スクリーニング) 実施例2により選択された化合物(1)〜(4)がDNaseγのDNase活性を阻害することができるかどうかを確認するため、化合物(1)及び(2)をSigma社から、化合物(3)をFluka社から、化合物(4)をMolecular Probes社からそれぞれ購入し、in vitroで、DNaseγによるDNA切断活性の阻害効果を調べた。(1)各濃度の化合物(化合物(1)〜(4)のいずれか)とDNaseγ(final 8×10-4 Kunitz units/μl)とを反応液(50 mM Mops-NaOH (pH 7.2)、3 mM MgCl2、3 mM CaCl2、0.1 mg/ml BSA(bovine serum albumin)) 45μl中に懸濁し、37℃にて30分間インキュベートした。 (2)サケ精子DNA(0.5mg/ml) 5μlを加え、37℃にて20分間反応した(total 50μl)。 (3)10% PCAを50μl加えることにより反応を停止した。 (4)氷上20分間放置した。 (5)3000 rpm、4℃で15分間遠心した。 (6)上清を蒸留水で希釈し、DNaseγにより分解された酸可溶性DNA産物を吸光度A260を測定し、DNaseγの活性を算出し、IC50を求めた。 結果を表1に示す。 表1に示すように、化合物(1)〜(4)はいずれもDNaseγのDNase活性を阻害することが明らかとなった。特に化合物(1)及び化合物(2)は優れた阻害効果を示した。[実施例4]アポトーシスにおけるDNA断片化阻害効果の確認(2次スクリーニング) 次に、実施例2により選出された化合物が、培養細胞のアポトーシスにおいてゲノムDNA断片化を抑制することができるかどうかを調べた。(1)内因性のDNaseγの発現がほとんど検出されず、様々なアポトーシス刺激に対してDNAの断片化が生じないHeLa S3細胞を培地(10% FCSを含むダルベッコ改変イーグル培地)の入った3.5 cm dish に1×105個播種した。 (2)一晩培養し、培地を交換した後、DNaseγ依存性アポトーシス活性を細胞に与えるため、Human DNaseγのcDNAをベクターpcDNA3.1/Myc-His (Invitrogen社)のNot I SiteへサブクローニングしたhDNaseγの発現ベクターをHeLa S3細胞に導入した(サンプル3〜6)。なお、遺伝子導入はFuGene6(Roche社製)を用いて行った。 (3)さらに一晩培養し、培地を交換した後、0.5μM スタウロスポリン(STS;アポトーシス誘導剤)(サンプル2〜6)及び各濃度で化合物(1)(サンプル3〜6)を添加して24時間インキュベートした。 (4)細胞を回収し、プロティナーゼK(タンパク質分解酵素)及びRNase A(RNA分解酵素)で処理して、細胞から抽出物を得た後、その抽出物を1.8% アガロースゲルを用いて電気泳動した。結果を図4に示す。 以下、各サンプルに対する処理のまとめである。 (サンプル1)DNAのみ(サンプル2)ネガティブ・コントロール(STS(+) DNaseγ(−))(サンプル3)ポジティブ・コントロール(STS(+) DNaseγ(+))(サンプル4)(STS(+) DNaseγ(+) 化合物(1)(10 μM))(サンプル5)(STS(+) DNaseγ(+) 化合物(1)(30 μM))(サンプル6)(STS(+) DNaseγ(+) 化合物(1)(100 μM)) 図4に示すように、化合物(1)が、DNaseγによるゲノムDNA断片化を濃度依存的に抑制し、100μMではほぼ完全に抑制することが明らかになった。 さらに、化合物(1)がアポトーシスの他の過程、即ちゲノムDNA断片化以外の過程に影響を及ぼさないことを確認するため、アポトーシスの指標であるPARP(poly(ADP-ribose) polymerase-1)の切断に対する化合物(1)の効果を調べた。上述のようにhDNaseγの発現ベクターを導入したHeLa S3細胞を0.5μM スタウロスポリン(STS;アポトーシス誘導剤)及び100μMの化合物(1)で処理した後(サンプル4)、細胞をホモゲナイズして得られた抽出物を用いて、ウエスタンブロッティングを行った。コントロールとして、処理をしない細胞(サンプル1)、化合物(1)のみで処理した細胞(サンプル2)、STSのみで処理した細胞(サンプル3)、についても同様に実験を行った。1次抗体は、抗PARPモノクローナル抗体(和光No. 016-16831、1:500で使用)、2次抗体は、抗マウスIgG抗体(Promega社、1:1000で使用)を用い、Western-Blue(Promega社)を用いてシグナルを検出した。 図5(サンプル4)に示すように、化合物(1)の存在下においてもPARPの切断が検出されたことから、化合物(1)はアポトーシスの開始や進行にはほとんど影響を及ぼさず、DNaseγによるゲノムDNA断片化を特異的に阻害することが明らかになった。化合物(1)とDNaseγとの結合様式を示す図である。化合物(2)とDNaseγとの結合様式を示す図である。DNaseγの立体構造を示す図である。化合物(1)が、DNaseγによるDNA断片化を阻害する効果を示す図である。アポトーシスの指標であるPARP(poly(ADP-ribose) polymerase-1)の切断に対する化合物(1)の影響を調べた結果を示す図である。 DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法であって、 立体的な結合障害を生じさせるためにDNaseγのDNA結合ポケットに物質を結合させることを特徴とする阻害方法。 前記物質が、下式(1)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の阻害方法。 前記物質が、下式(2)〜(4)からなるグループから選ばれるいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の阻害方法。 前記物質が、DNaseγのGlu13、Ser14、Asp42、Ser43、及びAsn44からなるS1ドメインの1又は2以上のアミノ酸残基と、DNaseγのSer10、Phe11、Gly12、Glu39、Ile40、及びLys41からなるS2ドメインの1又は2以上のアミノ酸残基とに結合することを特徴とする請求項1に記載の阻害方法。 前記物質が、さらにDNaseγのArg72、Thr77、Tyr78、Lys79、Glu80、及びGln81からなるS3ドメインの1又は2以上のアミノ酸残基に結合することを特徴とする請求項4に記載の阻害方法。 DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法であって、 DNaseγのDNA結合ポケットに結合する物質を化合物ライブラリーから選択する1次スクリーニングと、 選択した前記物質がDNaseγのDNase活性を阻害することができるかどうかを確認する2次スクリーニングと、 を含むことを特徴とするスクリーニング方法。 下式(1)〜(4)からなるグループから選ばれるいずれかの化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するDNaseγ阻害剤。 【課題】DNaseγのDNase活性を阻害する阻害方法、DNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法、及びDNaseγのDNase活性を阻害する阻害物質を提供すること。【解決手段】DNase Iが2本鎖DNAを解離しながらDNAを切断する際、DNase Iの酵素活性中心と結合する1本鎖DNAと異なる側の1本鎖DNAが結合するDNA結合ポケットに対応するDNaseγのドメインに物質を結合させることにより、DNaseγのDNase活性を阻害することができる。このような阻害方法を利用して、DNaseγのドメインに結合する化合物を化合物ライブラリーから選択し、DNaseγのDNase活性を阻害することができるかどうかを確認するというスクリーニングを行う。これにより得られた物質は、DNaseγのDNase活性を阻害することができる。【選択図】なし配列表


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