タイトル: | 公開特許公報(A)_糖ペプチドの製造方法 |
出願番号: | 2004213351 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07K 9/00,C07K 1/06 |
西村 紳一郎 比能 洋 松下 隆彦 JP 2006028141 公開特許公報(A) 20060202 2004213351 20040721 糖ペプチドの製造方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 島村 直己 100101904 西村 紳一郎 比能 洋 松下 隆彦 C07K 9/00 20060101AFI20060106BHJP C07K 1/06 20060101ALI20060106BHJP JPC07K9/00C07K1/06 5 OL 9 (出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム/糖鎖エンジニアリングプロジェクト/糖鎖構造解析技術開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願 4H045 4H045AA20 4H045BA53 4H045EA20 4H045FA33 4H045FA41 4H045FA42 4H045FA51 4H045FA58 4H045FA59 本発明は、糖ペプチドを効率的に合成する方法に関する。 糖鎖は核酸やタンパク質と並んで生体を構成する主要成分であり、生体のエネルギー源としてよく知られているが、近年、生体内の情報伝達、タンパク質の品質管理、構造安定化、タンパク質輸送のための標識など、様々な高次機能を担っていることが明らかとなってきた。 しかしながら、糖鎖は、糖鎖単独ではなく脂質やタンパク質などと結合した複合糖質として機能していることが多く、その機能の発現機構は非常に複雑であり、その複合糖質の構造と機能の研究は未解明部分が極めて多い。また、タンパク質の研究分野でも糖鎖と協同してその機能を果たしていると思われるものが多数見つかっているが、その詳細な機構の研究は現状ではきわめて困難である。 これらの研究を推し進め、さらに医薬などへと活用するためには、糖鎖単独ではなく糖ペプチドのような複合糖質の状態で均一な試料を用意する必要がある。しかしながら、糖ペプチドは糖鎖とペプチドとの双方が極めて多様性に富んでいるため、必要な糖ペプチドをそのつど天然物から調達することは事実上不可能である。このようなことから、糖ペプチドの迅速な合成法の開発が期待されている。 糖ペプチド合成法としては、糖アミノ酸を原料として用いる固相合成法が挙げられる。しかしながら、糖アミノ酸の立体障害が大きいため、通常の糖アミノ酸残基を含まないペプチド合成に比べ、その収率及び反応速度が低下するという問題がある。また、糖アミノ酸は通常のアミノ酸に比べ大量に調製するのが困難であり、糖ペプチドの合成において糖アミノ酸は小過剰量でしか使用できないという問題がある。 また、これまでの糖ペプチドの合成例はほとんどがその糖部分が単糖であり、オリゴ糖(特に生体内では一般的な糖鎖構造である分岐型のオリゴ糖)を有する糖ペプチド合成の報告例は極めて少なく、その調製に時間を要し、また収率も極めて低かった。 また、生体高分子が介在する反応を促進する方法として、その生体高分子を含む反応系(例えば、酵素反応、抗体抗原反応等)にマイクロ波を照射することを特徴とする方法が知られているが(例えば、特開2001−265175号公報)、糖ペプチドの合成については何ら開示していない。特開2001−265175号公報 本発明は、上記従来技術の諸問題を解決し、種々の糖鎖及びペプチドからなる糖ペプチドを迅速且つ効率的に製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、糖ペプチドの合成において、糖アミノ酸と他の糖アミノ酸残基又はアミノ酸残基とのペプチド結合形成反応がマイクロ波の照射により促進されることを見出し、本願発明を完成させるに至った。 即ち、本願発明は以下の発明を包含する。(1)糖アミノ酸を用いる糖ペプチドの製造方法において、マイクロ波を照射しながらペプチド結合形成反応を行うことを特徴とする糖ペプチドの製造方法。(2)糖アミノ酸のアミノ酸残基が、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸及びトリプトファンからなる群より選択される前記(1)記載の製造方法。(3)糖アミノ酸の糖残基が、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、フコース、シアル酸、イズロン酸及びグルクロン酸並びにこれらの構成糖単位を含むオリゴ糖からなる群より選択される前記(1)又は(2)記載の製造方法。(4)糖アミノ酸の糖残基とアミノ酸残基とが、グリコシド結合、アミド結合又は炭素−炭素結合により結合している前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。(5)マイクロ波の波長が2300〜2600MHzである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。 本発明により、単一の糖ペプチドを短時間で効率的に合成する方法が提供される。また、本発明の方法では、ペプチド結合形成反応が選択的に促進されるため、例えば、エステル系保護基のペプチド鎖中のアミノ基への転移反応等の副反応が相対的に低減し、目的とする糖ペプチドを良好な収率で得ることができる。また、高効率でペプチド形成反応が進行するので、大過剰の原料糖アミノ酸を必要とせず、調製や入手が困難な糖アミノ酸の使用量を大幅に低減することができる。 本発明で用いられる「糖アミノ酸」とは、アミノ酸に糖残基が結合した化合物のことを言う。 本明細書でいうアミノ酸とは、同一分子内に−NH2又は−NH−及び−COOHを有する化合物で、α−、β−、γ−及びδ−アミノ酸等が挙げられる、また、L−及びD−アミノ酸のいずれでもよい。糖アミノ酸のアミノ酸として好ましいものは、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸及びトリプトファン等である。 また、糖残基としては単糖及びオリゴ糖(2〜20糖、好ましくは2〜10糖、さらに好ましくは2〜5糖)のいずれでもよく、また、各構成糖はペントース、ヘキソース及びヘプトース等のいずれであってもよい。3糖以上のオリゴ糖である場合には直鎖状糖鎖及び分岐状糖鎖のいずれでもよい。糖残基の具体例としては、例えば、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、フコース、シアル酸、イズロン酸及びグルクロン酸等の単糖類、並びにこれらの構成糖単位を含み直鎖状又は分岐状に結合したオリゴ糖が挙げられる。糖残基中に存在する水酸基、アミノ基及び/又はカルボキシル基は、通常用いられる保護基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、レブリノイル基、ホルミル基、フタロイル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、アリル基、硫酸基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基等)で保護していてもよい。 糖アミノ酸は、上記アミノ酸と上記糖残基とが結合したものであるが、その結合様式は特に限定されるものではなく、例えば、グリコシド結合(O−グリコシド、N−グリコシド、S−グリコシド、C−グリコシド等)、アミド結合及び炭素−炭素結合等が挙げられる。 次に、本発明の糖ペプチドの製造工程について詳細に説明する。 本発明の方法は、以下のように、原料として糖アミノ酸を用い、通常のペプチド合成反応系にマイクロ波を照射しながら行う。 本発明の方法は、慣用のペプチド固相合成を利用して行うのが好ましい。ペプチド固相合成法を利用する場合は以下のようにして行うことができる。 まず、固相担体に最初の糖アミノ酸(又はアミノ酸)のN末端アミノ基又はC末端カルボキシル基を結合し(例えば、C末端のカルボキシル基をクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、p−アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合する)、所望により縮合剤を用いて、順次糖アミノ酸(又はアミノ酸)を結合していく。 縮合剤としては、例えば、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジエチルホスホリルシアニデート、アジドトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩等の有機リン化合物、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジハイドロキノリン(EEDQ)、1−イソブチル−2−イソブチル−1,2−ジヒドロキシキノリン等のキノリン系ペプチド縮合剤、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、DCC等のカルボジイミド類等があげられる。 本発明では、この固相合成反応をマイクロ波を照射しながら行う。本明細書で言う「マイクロ波」とは波長約0.3〜30cm程度の電磁波(1〜100GHzに相当する)のことをいう。マイクロ波の波長としては、好ましくは2300〜2600MHzであるが、さらに好ましくは2350〜2550MHz、特に好ましくは2400〜2500MHzである。 本発明者らは、固相合成反応においてマイクロ波を照射することにより、ペプチド形成反応が促進されるという予想外の効果を見出した。これは、マイクロ波は誘電率の高い分子のみを活性化するが、固相合成反応系に存在する反応種の中で最も極性が高いのはアミノ基及びカルボン酸であるので、マイクロ波を照射するとこれらの官能基が誘電分極して選択的に活性化・加熱され、ペプチド形成反応が促進されるものと推察される。他の官能基は活性化されないので副反応を大幅に低減することができる。 マイクロ波照射によりペプチド形成反応が促進され、従来法と比較して大幅に反応時間を減らすことができる。さらに、マイクロ波は固相担体の内部にまで到達するので、従来は反応の進行が困難な部位(例えば、固相担体の内部)に存在するような反応種でも反応させることが可能となる。 さらに、マイクロ波照射と同時に、振動や超音波を加えて固相合成反応を行ってもよい。 この反応工程において反応に関与すべきでない官能基は、保護基により保護するのが好ましい。アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc),p−ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9ーフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)等が挙げられる。カルボキシル基の保護基としては例えばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基が挙げられる。 固相合成における反応温度は、特に限定されないが、通常0〜80℃とするが、好ましくは25〜50℃である。反応時間は、反応温度やマイクロ波の出力等にもよるが、例えば0.1〜120分であり、好ましくは1〜60分、さらに好ましくは1〜30分である。従来法による糖アミノ酸のカップリング法では室温において通常数時間〜24時間程度の反応時間を必要とするが、これと比較すると本発明の製造方法では上記のように短時間でペプチド結合形成反応が完了し、非常に効率的である。その他の反応条件は、通常のペプチド固相合成を参考にすることができる。 縮合反応終了後、場合により保護基を除去し、そして得られた糖ペプチドのC末端と担体樹脂との結合を切断する。切り離された糖ペプチドは通常の方法にしたがって精製され、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いて精製できる。 合成した糖ペプチドの配列は、例えば、エドマン分解法でN−末端からアミノ酸配列を読み取るプロティンシークエンサー、MALDI-TOF MS/MS等で分析することができる。 本発明の製造方法は、特には糖アミノ酸残基を1〜30個程度有する糖ペプチドを製造するのに好適である。また、試薬・溶媒の供給、反応系の制御、洗浄等のペプチド固相合成の各工程を自動化した市販の一般的な自動ペプチド固相合成装置にマイクロ波を発生するためのマイクロは出力手段を備えた糖ペプチド自動合成装置を用いて、本発明の製造方法を自動化して行うことも可能である。 以下の実施例より本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 本実施例で用いられる略語は以下の意味を有する。DMF:N,N-ジメチルホルムアミドDCM:ジクロロメタンHOBT:N-ヒドロキシベンゾトリアゾールDIEA:ジイソプロピルエチルアミンFmoc-Ala-OH:N-α-Fmoc-L-アラニンFmoc-Gly-OH:N-α-Fmoc-L-グリシンFmoc-Pro-OH:N-α-Fmoc-L-プロリンFmoc-Arg(Pbf)-OH:N-α-Fmoc-Nγ-(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)-L-アルギニンFmoc-Asp(OtBu)-OH:N-α-Fmoc-L-アスパラギン酸 β-t-ブチルエステルFmoc-Val-OH:N-α-Fmoc-L-バリンFmoc-His(Trt)-OH:N-α-Fmoc-N-トリチル-L-ヒスチジンFmoc-Thr(Ac7core2)-OH:N-α-Fmoc-O-{O-(2',3',4',6'-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1'→3)-O-[2''-アセトアミド-3'',4'',6''-トリ-O-アセチル-2''-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1''→6)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル}-L-スレオニンFmoc-Ser(Ac7core2)-OH:N-α-Fmoc-O-{O-(2',3',4',6'-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1'→3)-O-[2''-アセトアミド-3'',4'',6''-トリ-O-アセチル-2''-デオキシ-β-D-グルコピラノシル-(1''→6)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル}-L-セリン また、本実施例で行ったマイクロ波照射下における実験は、マイクロ波の出力可変により温度制御の可能なマイクロ波式有機化学合成装置グリーン・モチーフ・I(東京電子株式会社製)を用いて行った。(実施例1) 以下のようにして固相担体(TentaGel S RAM resin,0.25mmol/g,ラップポリマー社製)にFmoc-Ala-OHを担持した。 Fmoc-Ala-OH(127mg)を0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(1.03ml)に溶解し、続いてDIEA(141μl)を添加した。この溶液を固相担体(547mg)に加えて室温で2時間攪拌した。反応終了後、固相担体をDMF(15ml)で5回洗浄した後、20%ピペリジン/DMF溶液(15ml)を添加して室温で20分間攪拌した。樹脂をDMF(15ml)で5回、DCM(15ml)で5回洗浄して20時間乾燥した。 次いで、以下のようにして、マイクロ波照射下において、アラニン担持固相担体とCore2と呼ばれる分岐型3糖のアセチル保護体がスレオニンの水酸基に結合したFmoc-糖アミノ酸(Fmoc-Thr(Ac7core2)-OH)との縮合反応を行った。 Fmoc-Thr(Ac7core2)-OH(46.9mg)を0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(97.4μl)に溶解し、続いてDIEA(13.3μl)を添加した。この溶液を固相担体(100mg)に加え、反応容器をグリーン・モチーフ・Iに入れ、上部からは熱電対を差込み、側面からは振盪器を取り付けて反応容器を振盪させながら、50℃においてマイクロ波(40W、2450MHz)を照射した。4分後、マイクロ波照射を停止し、樹脂をDMF(5ml)で5回、DCM(5ml)で5回洗浄し、20時間乾燥した。Fmoc基の定量により縮合反応率は94%と算出された。(実施例2) 以下のようにして、実施例1において調製した、Fmoc-Thr(Ac7core2)-OHが結合したアラニンを担持した固相担体と、Core2のアセチル保護体がセリンの水酸基に結合したFmoc-糖アミノ酸(Fmoc-Ser(Ac7core2)-OH)との縮合反応を行った。 実施例1において調製した、Fmoc-Thr(Ac7core2)-OHが結合したアラニンを担持した固相担体に20%ピペリジン/DMF溶液(5ml)を加えた。20分後、樹脂をDMF(5ml)で5回、DCM(5ml)で5回洗浄して20時間乾燥した。Fmoc-Ser(Ac7core2)-OH(21.4mg)を0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(44.9μl)に溶解し、続いてDIEA(6.15μl)を添加した。この溶液を固相担体(59.3mg)に加え、反応容器をグリーン・モチーフ・Iに入れ、上部からは熱電対を差込み、側面からは振盪器を取り付けて反応容器を振盪させながら、50℃においてマイクロ波(40W、2450MHz)を照射した。20分後、マイクロ波照射を停止し、樹脂をDMF(5ml)で5回、DCM(5ml)で5回洗浄し、20時間乾燥した。Fmoc基の定量により縮合反応率は85%と算出された。(実施例3) 以下のようにして、アラニン担持固相担体にCore2のアセチル保護体を有する糖ペプチド鎖(MUC1)を担持した。 実施例1において用いた固相担体(59.3mg)に以下のFmoc-糖アミノ酸又はFmoc-アミノ酸を順にマイクロ波照射下にて縮合反応させた:Fmoc-Ser(Ac7core2)-OH(21.4mg)、Fmoc-Gly-OH(10.7mg)、Fmoc-Pro-OH(12.1mg)、Fmoc-Ala-OH(11.3mg)、Fmoc-Pro-OH(12.1mg)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(23.3mg)。Fmoc-糖アミノ酸は0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(44.9μl)として用い、Fmoc-アミノ酸は0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(89.8μl)として用いた。また、塩基として添加したDIEAは、Fmoc-糖アミノ酸を用いる場合には6.15μlを用い、Fmoc-アミノ酸を用いる場合には12.3μlを用いた。各縮合反応は、実施例1と同様にしてグリーン・モチーフ・I反応装置を用いて、50℃においてマイクロ波(40W、2450MHz)を照射して行った。マイク照射時間は、Fmoc-糖アミノ酸を用いる場合においては30分間、Fmoc-アミノ酸を用いる場合においては10分間とした。 各縮合反応終了後、樹脂をDMF(5ml)で5回洗浄し、20%ピペリジン/DMF溶液に入れて3分間マイクロ波(40W、2450MHz)を照射した。Fmoc基を脱保護し、樹脂をDMF(5ml)で5回洗浄した。このようにして、縮合反応と脱保護とを繰り返し、ペプチド鎖の伸長反応を行った。 次いで、得られた固相担体の一部(28.0mg)に、以下のFmoc-糖アミノ酸又はFmoc-アミノ酸を順にマイクロ波照射下で縮合させた:Fmoc-Thr(Ac7core2)-OH(8.10mg)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(9.31mg)、Fmoc-Pro-OH(7.63mg)、Fmoc-Ala-OH(7.04mg)、Fmoc-Ser(Ac7core2)-OH(13.5mg)、Fmoc-Thr(Ac7core2)-OH(6.81mg)、Fmoc-Val-OH(15.4mg)、Fmoc-Gly-OH(13.5mg)、Fmoc-His(Trt)-OH(28.04mg)、Fmoc-Ala-OH(7.04mg)。Fmoc-Thr(Ac7core2)-OHは0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(14.1μl)として用い、Fmoc-Ser(Ac7core2)-OHは0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(28.3μl)として用い、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Pro-OH及びFmoc-Ala-OHは0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(56.6μl)として用い、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-His(Trt)-OHは0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(113.1μl)として用いた。 上記各縮合反応も同様にしてグリーン・モチーフ・I反応装置を用いて、50℃においてマイクロ波(40W、2450MHzMHz)を照射して行った。マイクロ波照射時間は、Fmoc-糖アミノ酸を用いる場合においては30分間、Fmoc-アミノ酸を用いる場合においては15分間とした。 各縮合反応終了後、樹脂をDMF(5ml)で5回洗浄し、20%ピペリジン/DMF溶液に入れて3分間マイクロ波(40W、2450MHzMHz)を照射した。Fmoc基を脱保護し、樹脂をDMF(5ml)で5回洗浄した。このようにして、縮合反応と脱保護とを繰り返し、ペプチド鎖の伸長反応を行った。 Fmoc基の定量により縮合反応率は37%と算出された。(比較例1) 以下のようにして、実施例2に対する比較実験を行った。 実施例1と同様にしてFmoc-Thr(Ac7core2)-OHが結合したアラニンを担持した固相担体から、脱Fmoc化した乾燥固相担体を得た(7.4mg)。Fmoc-Ser(Ac7core2)-OH(2.67mg)を0.4M HBTU,HOBT/DMF溶液(5.60μl)に溶解し、次いでDIEA(0.77μl)を添加した。この溶液を先の固相担体に添加し、室温で12時間振盪した。反応終了後、樹脂をDMF(5ml)で5回、DCM(5ml)で5回洗浄して20時間乾燥した。Fmoc基の定量により縮合反応率は76%と算出された。 糖ペプチドはその生理活性や機能が注目されており、医薬への応用も期待されている。従来は、均一な(単一の)糖ペプチド、特にオリゴ糖残基を有する糖ペプチドを合成することは困難であったが、本発明の方法はそのような糖ペプチドでも短時間で効率的に合成でき、糖ペプチドを利用する医薬品開発や糖ペプチドライブラリ合成、生化学研究用サンプル調製に有用である。 糖アミノ酸を用いる糖ペプチドの製造方法において、マイクロ波を照射しながらペプチド結合形成反応を行うことを特徴とする糖ペプチドの製造方法。 糖アミノ酸のアミノ酸残基が、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸及びトリプトファンからなる群より選択される請求項1記載の製造方法。 糖アミノ酸の糖残基が、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、キシロース、マンノース、ガラクトース、グルコース、フコース、シアル酸、イズロン酸及びグルクロン酸並びにこれらの構成糖単位を含むオリゴ糖からなる群より選択される請求項1又は2記載の製造方法。 糖アミノ酸の糖残基とアミノ酸残基とが、グリコシド結合、アミド結合又は炭素−炭素結合により結合している請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。 マイクロ波の波長が2300〜2600MHzである請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。 【課題】 迅速かつ高収率な糖ペプチド製造方法を提供する。【解決手段】 糖アミノ酸を用いる糖ペプチドの製造方法において、マイクロ波を照射しながらペプチド結合形成反応を行うことを特徴とする糖ペプチドの製造方法。【選択図】 なし