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タイトル:公開特許公報(A)_化粧料用ポリマーエマルション
出願番号:2004186219
年次:2006
IPC分類:A61K 8/00,A61Q 19/00,A61K 8/72,A61K 8/06


特許情報キャッシュ

辻 誠 桑原 一夫 JP 2006008561 公開特許公報(A) 20060112 2004186219 20040624 化粧料用ポリマーエマルション 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 辻 誠 桑原 一夫 A61K 8/00 20060101AFI20051209BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20051209BHJP A61K 8/72 20060101ALI20051209BHJP A61K 8/06 20060101ALI20051209BHJP JPA61K7/48A61K7/00 JA61K7/00 N 5 OL 13 4C083 4C083AD091 4C083AD092 4C083AD132 4C083BB24 4C083CC01 4C083CC05 4C083CC31 4C083EE06 4C083EE07 本発明は、化粧料への優れた配合安定性、優れた化粧料塗布性,高い化粧持続性をもたらすことができる化粧料用ポリマーエマルション、及びそれを含有する化粧料に関する。 ポリマーエマルションは塗料,製紙,印刷,化粧料等の分野で使用されており、用途に合わせて物性(造膜温度,皮膜の硬さ,乾燥時間,塗布性など)が制御されている。 ポリマーエマルションは界面活性剤を使用して得られるエマルションと界面活性剤を使用せずに得られるエマルション(ソープフリーポリマーエマルション)に大別できる。ソープフリーポリマーエマルションの定義は様々であるが、本明細書において、「ソープフリーポリマーエマルション」とは、界面活性剤、高分子型乳化剤(ノニオン性,アニオン性,カチオン性)、反応型界面活性剤等の乳化剤を含まないポリマーエマルションを指す。 化粧料に界面活性剤を多く用いたポリマーエマルションを配合すると、ヨレ(塗布時に発生する消しゴムかす状の凝集物)が発生し、化粧料塗布性を悪化させる。また、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,糖誘導体等の高分子型乳化剤は、化粧料塗布性が悪化する等、配合に制約がある。反応型界面活性剤は、コスト面に制約がある。 特許文献1には、重合時に乳化剤を使用しない無乳化剤重合樹脂エマルションを配合することにより、耐水性を向上させたメイクアップ化粧料が開示されている。しかしながら、配合安定性、塗布性、化粧持続性等において十分に満足できるものではなかった。 更に、従来化粧料用エマルションとして使用されているアクリル酸アルキル共重合体エマルション(日本エヌエスシー(株)製ヨドゾール等)は、皮膜物性に関しては良好であったが、化粧料配合時のエタノール存在下では、エマルションの凝集や沈降が起こり、また、界面活性剤(花王(株)製エマール20C)を用いて化粧品種別配合成分規格記載の「アクリル酸アルキル共重合体エマルション(2)」を合成した場合、塗布時のヨレが発生した。 従って、柔軟な皮膜を形成する、安価な化粧料用ポリマーエマルションで、配合安定性(耐エタノール性)に優れ、且つ塗布時のヨレが発生しないものはこれまで無かった。特開昭54−49338号公報 本発明の課題は、柔軟な皮膜を形成する、安価なポリマーエマルションで、配合安定性(耐エタノール性)、塗布性(耐ヨレ性)に優れる化粧料用ポリマーエマルション、及びそれを配合した化粧料を提供することにある。 本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を含み、(A)成分と(B)成分との重量比が、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であるモノマー成分を共重合させて得られるポリマーで、そのガラス転移温度(Tg)が5〜−50℃であるポリマーを含む化粧料用ソープフリーポリマーエマルション、及びこのポリマーエマルションを含有する化粧料を提供する。(A):一般式(I)で表される疎水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、あるいは−CH2OR3(R3は炭素数4〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)で表される基、Xは−O−又は−NH−を示す。](B):一般式(II)、(III)又は(IV)で表される親水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は前記の意味を示し、Mは水素原子又はカチオンを示す。][式中、R1及びXは前記の意味を示す。R4は−(CH2)nOH(nは1〜4の数を示す)、−CH2OCH3、−R5SO3M(R5は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、Mは前記の意味を示す)、−R6N(R7)(R8)(R6は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す)、あるいは−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R6、R7及びR8は前記の意味を示し、R9は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y-はアニオンを示す)で表される基を示す。][式中、Mは前記の意味を示す。] 本発明のポリマーエマルションは、皮膚や毛髪用の化粧料に配合することができ、優れた配合安定性(耐エタノール性)、塗布性、造膜性、塗膜安定性、耐水性等を示し、汗や皮脂により流れたり、とれたりすることがなく、化粧崩れを防止することができ、更に塗布時のヨレの発生を防止することができる。 [モノマー成分] 本発明のポリマーを構成するモノマー成分は、上記(A)成分及び(B)成分を含むものである。 (A)成分の疎水性モノマーは、上記一般式(I)で表されるが、一般式(I)において、R2としては炭素数1〜6、更に1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、Xとしては−O−が好ましい。 (A)成分の疎水性モノマーとしては、アルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数1〜6のN−アルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等のアルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等のアルキル基の炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。これらの(A)成分は1種又は2種以上を混合して用いることができ、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸n−ブチルを混合して用いることが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を含む概念である。 (B)成分の親水性モノマーは、上記一般式(II)、(III)又は(IV)で表されるが、一般式(II)、(III)又は(IV)において、Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、総炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニルアミン、総炭素数1〜22のアルカノールアミン、塩基性アミノ酸等のカチオンが挙げられ、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンが好ましく、カリウムイオン又はナトリウムイオンが特に好ましい。 また、一般式(III)において、R4で示される基のうち−R5SO3Mとしては、R5が−C(CH3)2CH2−で表される基が好ましく、−R6N(R7)(R8)としては、−(CH2)mN(CH3)2(mは1〜4の数)が好ましく、−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-としては、−(CH2)mN+(CH3)2(R10)・Y-(mは1〜4の数、R10はメチル基又はエチル基)が好ましい。ここでY-で示されるアニオンとしては、Cl-、Br-等のハロゲンイオン、R11SO4-(R11はメチル基又はエチル基)等のアルキル硫酸イオンが挙げられる。 (B)成分のモノマーの中では(メタ)アクリル酸又はその塩、一般式(III−1)で表される化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸又はその塩が更に好ましい。[式中、R1及びXは前記の意味を示し、R4-1は−R5SO3M又は−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R5、M、R6、R7、R8、R9及びY-は前記の意味を示す)を示す。] モノマー成分中の(A)成分と(B)成分の割合は、重量比で、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であり、80/20〜99/1が好ましく、85/15〜99/1が更に好ましい。(A)/(B)の重量比が80/20より小さいと、ポリマーの水への溶解度が大きくなり、安定なエマルションを形成することが困難になる。また、(A)/(B)の重量比が99.9/0.1よりも大きい場合には、ヨレが発生しやすくなる。 本発明のモノマー成分は、上記(A)成分及び(B)成分以外に、これらモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとして、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等が挙げられる。 [ポリマーエマルション] 本発明のポリマーエマルションの製造方法は、ソープフリーポリマーエマルションが得られるものであれば特に限定されないが、上記のようなモノマー成分を、重合開始剤の存在下、界面活性剤、高分子型乳化剤、反応型界面活性剤等の乳化剤を用いずに乳化重合する方法が好ましい。乳化重合の場合、用いる溶媒の主成分は水であり、場合によっては低級アルコールなどの親水性溶剤を混合しても良い。反応温度は、溶媒の沸点以下に設定される。反応系内のモノマー濃度は特に限定されないが、生産効率と凝集物抑制の観点から、1〜60重量%が望ましい。 重合開始剤の量は特に限定されないが、経済性と残存モノマー量低減の観点から、モノマー100重量部に対して0.01〜10重量部が望ましい。モノマー(或いはモノマー溶液)を、水を主成分とする溶媒中に予め混合した後、重合しても良いし、滴下しながら重合しても良い。重合開始剤(或いは重合開始剤溶液)も同様に、水を主成分とする溶媒中に予め混合しても良いし、滴下しても良い。 本発明に用いられる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のパーオキサイド類、及び2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド]}、2,2’−アゾビス[(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンジアミン]四水塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類などの有機系重合開始剤、並びに過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などの無機系重合開始剤などが挙げられる。また、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸及びその塩等の還元剤を重合開始剤と組合せて用いる、いわゆるレドックス系重合開始剤も使用することができる。 また、重合時には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。使用される重合連鎖移動剤の具体例としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタンなどの炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが50重量%以上のものが好ましい)、さらに9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;キサンテン、2,5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を組合せて使用してもよい。 本発明のポリマーエマルションを構成するポリマーのガラス転移温度(Tg)は、5〜−50℃であり、−5〜−50℃が好ましく、−10〜−50℃が更に好ましく、−20〜−50℃が特に好ましい。Tgが5℃より高い場合にはポリマーが硬いために十分な付着性を持つ皮膜を形成させることが困難であり、Tgが−50℃より低い場合にはヨレが発生し易くなり、使用感が低下する。尚、本明細書において、Tgは下記の測定法で測定した値である。 <Tgの測定法> ポリマーエマルションを減圧乾燥した後の皮膜のTgを、下記測定条件で、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。 セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200(ソフトウェアEXSTAR6000熱分析レオロジーシステム)を用い、温度プログラムは以下の4つの段階から成り、第3段階で得られるTg曲線より、Tgを求めた。・第1段階:20℃→20℃/minで昇温→100℃で1分間保持・第2段階:100℃→200℃/minで降温→−120℃で10分間保持・第3段階:−120℃→10℃/minで昇温→100℃で1分間保持・第4段階:100℃→20℃/minで降温→20℃で2分間保持。 本発明のポリマーエマルション中のポリマーの平均粒径は、0.01〜1.5μmが好ましく、0.2〜1.0μmが更に好ましい。尚、ここでポリマーの平均粒径は、HORIBA製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置にて、水に分散して測定した値である。 本発明のポリマーエマルションのポリマー濃度は、0.1〜90重量%が好ましく、10〜60重量%が更に好ましい。 [化粧料] 本発明のポリマーエマルションは化粧料の皮膜形成基剤として特に有用であり、本発明のポリマーエマルションの1種又は2種以上を混合して化粧料に配合することができる。2種以上を混合する場合、Tgの異なるポリマー2種以上を組合せることもできる。 化粧料への本発明のポリマーエマルションの配合量は、本発明の良好な効果を得、また、化粧料の粘度が高くなるのを防ぎ、良好な製剤化及び皮膚や毛髪への塗布性を得る観点から、全化粧料中のポリマー量として、1〜60重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましい。 本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリマーエマルション以外に化粧料成分として一般に使用されている成分、例えば油分、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、染料、顔料、香料等を適宜配合することができる。 油分としてはジメチルポリシロキサンに代表されるシリコーン系オイル、イソパラフィン、スクアラン等に代表される炭化水素系オイル、ミリスチン酸イソプロピル等に代表されるエステル系オイル、フォンブリン等に代表されるフッ素系オイル等化粧品に使用できるようなオイルが挙げられる。保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。粉体としては、無機物、有機物に限定されず化粧品に使用できる粉体であれば配合することが出来る。 本発明の化粧料は、それぞれの用途に応じて常法に従い製造することができる。本発明の化粧料は、各種ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラ、ネイルエナメル等のメイクアップ化粧料類、パック、口紅、ほほ紅、サンスクリーン等の皮膚化粧料類、毛髪化粧料、薬用化粧料などに広く応用することができる。 例中の%は、特記しないかぎり重量%である。 実施例1 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水1318gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸カリウム3.8g、イオン交換水37.8gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル121.0g、アクリル酸n−ブチル612.6g、80%アクリル酸水溶液28.4gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水726.6gを反応容器に投入し、系内の温度を40℃以下にした。30%水酸化ナトリウム水溶液14.7g、イオン交換水43.3gを反応容器に加え、アクリル酸を部分中和した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール75.0gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−27℃であった。 実施例2 攪拌機、還流管、滴下ロート(2本)、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水175gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸アンモニウム0.5g、イオン交換水5gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル30g、アクリル酸n−ブチル60gを仕込み、残るもう一つの滴下ロートに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)10g、イオン交換水20gを仕込み、同時に反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水80gを反応容器に投入した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール10gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.7μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−9℃であった。 実施例3 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水131.8gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、和光純薬製重合開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬製)0.38g、イオン交換水3.78gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにアクリル酸エチル68.0g、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウム エチルサルフェート80%水溶液(日東理研工業(株)製80%MOEDES)9.5gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水70gを反応容器に投入した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール7.6gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約92%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−1℃であった。 比較例1 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に花王(株)製界面活性剤エマール20C 2g,イオン交換水175gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸アンモニウム0.5g,イオン交換水5gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル16g、アクリル酸n−ブチル81g、80%アクリル酸水溶液3gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。系内の温度を40℃以下にした後、30%水酸化ナトリウム水溶液を反応容器に加え、アクリル酸の35モル%を部分中和した。固形分50%になるまで系内から水を減圧留去した。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.07μmであった。このエマルションの塗布皮膜のTgは−27℃であった。 比較例2 メタクリル酸メチルの添加量を430.9g、アクリル酸n−ブチルの添加量を302.4g、80%アクリル酸水溶液の添加量を28.4gとする以外は実施例1と同様にして固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.5μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは20℃であった。 比較例3 アクリル酸n−ブチルの添加量を733.3g、80%アクリル酸水溶液の添加量を28.4gとし、メタクリル酸メチルを添加しない以外は実施例1と同様にして固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−51℃であった。 実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリマーエマルションについて、下記方法で耐ヨレ性及び耐エタノール性を評価した。結果を表1に示す。 <耐ヨレ性> ポリマーエマルションを手の甲に載せて擦り、目視判断する。消しゴム状のカスが出なければ「良好」,出れば「不良」 <耐エタノール性> ポリマーエマルションの固形分1重量部に対し、イオン交換水1重量部,エタノール1重量部を混合し、目視判断する。凝集物が析出しなければ「良好」,析出すれば「不良」 処方例1〜3及び比較処方例1 実施例1〜3及び比較例1で得られたポリマーエマルションを用い、下記組成の各成分を混合して化粧料を調製した。この化粧料中のポリマー固形分は11重量%であった。得られた化粧料について、下記方法で塗布性、顔の違和感及び定着性を評価した。結果を表2に示す。 <化粧料組成> 固形分60%の粒子スラリー 5重量部 固形分50%のポリマーエマルション(実施例1〜3又は比較例1) 2重量部 固形分1%のハイドロゲル(花王(株)製ポイズ310) 2重量部 尚、固形分60%の粒子スラリーは、以下の方法で合成したものである。 ビーカーに、水2100g、5%ポリビニルアルコール(EG−30、日本合成(株)製)水溶液300gを入れ混合した。別のビーカーにメタクリル酸ステアリルを450g(1.240mol)、アクリル酸ブチルを50g(1.404mol)、エチレングリコールジメタクリレートを6g、過酸化ラウロイルを12g入れ攪拌した。過酸化ラウロイルを溶解した後、前述のポリビニルアルコール水溶液と混合し、ラインミキサーにより乳化を行った(乳化粒径13μm)。乳化液を3L反応容器に入れ、窒素ガスにより溶存酸素を除去した後、乳化液を70℃に昇温し、6時間重合を続けた。冷却後、静置分離、デカンテーションを行い、固形分60%の粒子スラリーを得た(収率97%)。 <評価方法>・塗布性:化粧料を顔に塗布し、目視判断する。消しゴム状のカスが出なければ「良好」、出れば「不良」・顔の違和感:化粧料を顔に塗布乾燥し、顔のつっぱり感を評価する。つっぱり感がなければ「良好」、あれば「不良」・定着性:化粧料を顔に塗布乾燥し、顔の表情を変えた後、目視判断する。乾燥皮膜が顔から剥がれなければ「良好」、剥がれれば「不良」 下記(A)成分及び(B)成分を含み、(A)成分と(B)成分との重量比が、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であるモノマー成分を共重合させて得られるポリマーで、そのガラス転移温度(Tg)が5〜−50℃であるポリマーを含む化粧料用ソープフリーポリマーエマルション。(A):一般式(I)で表される疎水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、あるいは−CH2OR3(R3は炭素数4〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)で表される基、Xは−O−又は−NH−を示す。](B):一般式(II)、(III)又は(IV)で表される親水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は前記の意味を示し、Mは水素原子又はカチオンを示す。][式中、R1及びXは前記の意味を示す。R4は−(CH2)nOH(nは1〜4の数を示す)、−CH2OCH3、−R5SO3M(R5は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、Mは前記の意味を示す)、−R6N(R7)(R8)(R6は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す)、あるいは−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R6、R7及びR8は前記の意味を示し、R9は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y-はアニオンを示す)で表される基を示す。][式中、Mは前記の意味を示す。] (A)成分が、アルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種であり、(B)成分が(メタ)アクリル酸又はその塩、一般式(III−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の化粧料用ポリマーエマルション。[式中、R1及びXは請求項1記載の意味を示し、R4-1は−R5SO3M又は−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R5、M、R6、R7、R8、R9及びY-は請求項1記載の意味を示す)を示す。] ポリマーの平均粒径が0.01〜1.5μmである請求項1又は2記載の化粧料用ポリマーエマルション。 皮膜形成剤である請求項1〜3いずれかに記載の化粧料用ポリマーエマルション。 請求項1〜4いずれかに記載のポリマーエマルションを含有する化粧料。 【課題】 柔軟な皮膜を形成する、安価なポリマーエマルションで、配合安定性(耐エタノール性)、塗布性(耐ヨレ性)に優れる化粧料用として有用なポリマーエマルション、及びそれを配合した化粧料の提供。 【解決手段】 (A)(メタ)アクリル酸アルキル(C1-6)エステル等の疎水性モノマー、及び(B)(メタ)アクリル酸(塩)、式(III−1)で表される化合物等の親水性モノマーを含み、(A)/(B)(重量比)=80/20〜99.9/0.1であるモノマー成分を共重合させて得られ、Tgが5〜−50℃であるポリマーを含む化粧料用ソープフリーポリマーエマルション、及びこのポリマーエマルションを含有する化粧料。【化1】[R1はH又はメチル基、Xは−O−又は−NH−、R4-1は−R5SO3M又は−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R5はC1-5のアルキレン基、MはH又はカチオン、R6はC1-4のアルキレン基、R7、R8及びR9はC1-3のアルキル基、Y-はアニオン)を示す。]【選択図】 なし


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特許公報(B2)_化粧料用ポリマーエマルション

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タイトル:特許公報(B2)_化粧料用ポリマーエマルション
出願番号:2004186219
年次:2010
IPC分類:A61K 8/06,A61K 8/81,A61Q 1/00,A61Q 19/00


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辻 誠 桑原 一夫 JP 4536433 特許公報(B2) 20100625 2004186219 20040624 化粧料用ポリマーエマルション 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 辻 誠 桑原 一夫 20100901 A61K 8/06 20060101AFI20100812BHJP A61K 8/81 20060101ALI20100812BHJP A61Q 1/00 20060101ALI20100812BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20100812BHJP JPA61K8/06A61K8/81A61Q1/00A61Q19/00 A61K 8/00−8/99 A61Q 1/00−99/00 特開平09−141079(JP,A) 特開昭62−243607(JP,A) 特開平04−103516(JP,A) 特公昭60−009692(JP,B1) 特開平01−203313(JP,A) 特開昭54−151139(JP,A) 特開平08−253536(JP,A) 特開平11−209417(JP,A) 特開平06−057080(JP,A) 化粧品ハンドブック,日光ケミカルズ株式会社,1996年11月 1日,pp.121-124 3 2006008561 20060112 11 20070119 川島 明子 本発明は、化粧料への優れた配合安定性、優れた化粧料塗布性,高い化粧持続性をもたらすことができる化粧料用ポリマーエマルション、及びそれを含有する化粧料に関する。 ポリマーエマルションは塗料,製紙,印刷,化粧料等の分野で使用されており、用途に合わせて物性(造膜温度,皮膜の硬さ,乾燥時間,塗布性など)が制御されている。 ポリマーエマルションは界面活性剤を使用して得られるエマルションと界面活性剤を使用せずに得られるエマルション(ソープフリーポリマーエマルション)に大別できる。ソープフリーポリマーエマルションの定義は様々であるが、本明細書において、「ソープフリーポリマーエマルション」とは、界面活性剤、高分子型乳化剤(ノニオン性,アニオン性,カチオン性)、反応型界面活性剤等の乳化剤を含まないポリマーエマルションを指す。 化粧料に界面活性剤を多く用いたポリマーエマルションを配合すると、ヨレ(塗布時に発生する消しゴムかす状の凝集物)が発生し、化粧料塗布性を悪化させる。また、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,糖誘導体等の高分子型乳化剤は、化粧料塗布性が悪化する等、配合に制約がある。反応型界面活性剤は、コスト面に制約がある。 特許文献1には、重合時に乳化剤を使用しない無乳化剤重合樹脂エマルションを配合することにより、耐水性を向上させたメイクアップ化粧料が開示されている。しかしながら、配合安定性、塗布性、化粧持続性等において十分に満足できるものではなかった。 更に、従来化粧料用エマルションとして使用されているアクリル酸アルキル共重合体エマルション(日本エヌエスシー(株)製ヨドゾール等)は、皮膜物性に関しては良好であったが、化粧料配合時のエタノール存在下では、エマルションの凝集や沈降が起こり、また、界面活性剤(花王(株)製エマール20C)を用いて化粧品種別配合成分規格記載の「アクリル酸アルキル共重合体エマルション(2)」を合成した場合、塗布時のヨレが発生した。 従って、柔軟な皮膜を形成する、安価な化粧料用ポリマーエマルションで、配合安定性(耐エタノール性)に優れ、且つ塗布時のヨレが発生しないものはこれまで無かった。特開昭54−49338号公報 本発明の課題は、柔軟な皮膜を形成する、安価なポリマーエマルションで、配合安定性(耐エタノール性)、塗布性(耐ヨレ性)に優れる化粧料用ポリマーエマルション、及びそれを配合した化粧料を提供することにある。 本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を含み、(A)成分と(B)成分との重量比が、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であるモノマー成分を共重合させて得られるポリマーで、そのガラス転移温度(Tg)が5〜−50℃であるポリマーを含む化粧料用ソープフリーポリマーエマルション、及びこのポリマーエマルションを含有する化粧料を提供する。(A):一般式(I)で表される疎水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、あるいは−CH2OR3(R3は炭素数4〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)で表される基、Xは−O−又は−NH−を示す。](B):一般式(II)、(III)又は(IV)で表される親水性モノマーの少なくとも1種[式中、R1は前記の意味を示し、Mは水素原子又はカチオンを示す。][式中、R1及びXは前記の意味を示す。R4は−(CH2)nOH(nは1〜4の数を示す)、−CH2OCH3、−R5SO3M(R5は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、Mは前記の意味を示す)、−R6N(R7)(R8)(R6は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す)、あるいは−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R6、R7及びR8は前記の意味を示し、R9は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y-はアニオンを示す)で表される基を示す。][式中、Mは前記の意味を示す。] 本発明のポリマーエマルションは、皮膚や毛髪用の化粧料に配合することができ、優れた配合安定性(耐エタノール性)、塗布性、造膜性、塗膜安定性、耐水性等を示し、汗や皮脂により流れたり、とれたりすることがなく、化粧崩れを防止することができ、更に塗布時のヨレの発生を防止することができる。 [モノマー成分] 本発明のポリマーを構成するモノマー成分は、上記(A)成分及び(B)成分を含むものである。 (A)成分の疎水性モノマーは、上記一般式(I)で表されるが、一般式(I)において、R2としては炭素数1〜6、更に1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、Xとしては−O−が好ましい。 (A)成分の疎水性モノマーとしては、アルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数1〜6のN−アルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等のアルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等のアルキル基の炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。これらの(A)成分は1種又は2種以上を混合して用いることができ、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸n−ブチルを混合して用いることが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を含む概念である。 (B)成分の親水性モノマーは、上記一般式(II)、(III)又は(IV)で表されるが、一般式(II)、(III)又は(IV)において、Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、総炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニルアミン、総炭素数1〜22のアルカノールアミン、塩基性アミノ酸等のカチオンが挙げられ、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンが好ましく、カリウムイオン又はナトリウムイオンが特に好ましい。 また、一般式(III)において、R4で示される基のうち−R5SO3Mとしては、R5が−C(CH3)2CH2−で表される基が好ましく、−R6N(R7)(R8)としては、−(CH2)mN(CH3)2(mは1〜4の数)が好ましく、−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-としては、−(CH2)mN+(CH3)2(R10)・Y-(mは1〜4の数、R10はメチル基又はエチル基)が好ましい。ここでY-で示されるアニオンとしては、Cl-、Br-等のハロゲンイオン、R11SO4-(R11はメチル基又はエチル基)等のアルキル硫酸イオンが挙げられる。 (B)成分のモノマーの中では(メタ)アクリル酸又はその塩、一般式(III−1)で表される化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸又はその塩が更に好ましい。[式中、R1及びXは前記の意味を示し、R4-1は−R5SO3M又は−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y-(R5、M、R6、R7、R8、R9及びY-は前記の意味を示す)を示す。] モノマー成分中の(A)成分と(B)成分の割合は、重量比で、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であり、80/20〜99/1が好ましく、85/15〜99/1が更に好ましい。(A)/(B)の重量比が80/20より小さいと、ポリマーの水への溶解度が大きくなり、安定なエマルションを形成することが困難になる。また、(A)/(B)の重量比が99.9/0.1よりも大きい場合には、ヨレが発生しやすくなる。 本発明のモノマー成分は、上記(A)成分及び(B)成分以外に、これらモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有することができる。他のモノマーとして、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等が挙げられる。 [ポリマーエマルション] 本発明のポリマーエマルションの製造方法は、ソープフリーポリマーエマルションが得られるものであれば特に限定されないが、上記のようなモノマー成分を、重合開始剤の存在下、界面活性剤、高分子型乳化剤、反応型界面活性剤等の乳化剤を用いずに乳化重合する方法が好ましい。乳化重合の場合、用いる溶媒の主成分は水であり、場合によっては低級アルコールなどの親水性溶剤を混合しても良い。反応温度は、溶媒の沸点以下に設定される。反応系内のモノマー濃度は特に限定されないが、生産効率と凝集物抑制の観点から、1〜60重量%が望ましい。 重合開始剤の量は特に限定されないが、経済性と残存モノマー量低減の観点から、モノマー100重量部に対して0.01〜10重量部が望ましい。モノマー(或いはモノマー溶液)を、水を主成分とする溶媒中に予め混合した後、重合しても良いし、滴下しながら重合しても良い。重合開始剤(或いは重合開始剤溶液)も同様に、水を主成分とする溶媒中に予め混合しても良いし、滴下しても良い。 本発明に用いられる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のパーオキサイド類、及び2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド]}、2,2’−アゾビス[(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンジアミン]四水塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類などの有機系重合開始剤、並びに過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などの無機系重合開始剤などが挙げられる。また、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸及びその塩等の還元剤を重合開始剤と組合せて用いる、いわゆるレドックス系重合開始剤も使用することができる。 また、重合時には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。使用される重合連鎖移動剤の具体例としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタンなどの炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが50重量%以上のものが好ましい)、さらに9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;キサンテン、2,5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を組合せて使用してもよい。 本発明のポリマーエマルションを構成するポリマーのガラス転移温度(Tg)は、5〜−50℃であり、−5〜−50℃が好ましく、−10〜−50℃が更に好ましく、−20〜−50℃が特に好ましい。Tgが5℃より高い場合にはポリマーが硬いために十分な付着性を持つ皮膜を形成させることが困難であり、Tgが−50℃より低い場合にはヨレが発生し易くなり、使用感が低下する。尚、本明細書において、Tgは下記の測定法で測定した値である。 <Tgの測定法> ポリマーエマルションを減圧乾燥した後の皮膜のTgを、下記測定条件で、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。 セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200(ソフトウェアEXSTAR6000熱分析レオロジーシステム)を用い、温度プログラムは以下の4つの段階から成り、第3段階で得られるTg曲線より、Tgを求めた。・第1段階:20℃→20℃/minで昇温→100℃で1分間保持・第2段階:100℃→200℃/minで降温→−120℃で10分間保持・第3段階:−120℃→10℃/minで昇温→100℃で1分間保持・第4段階:100℃→20℃/minで降温→20℃で2分間保持。 本発明のポリマーエマルション中のポリマーの平均粒径は、0.01〜1.5μmが好ましく、0.2〜1.0μmが更に好ましい。尚、ここでポリマーの平均粒径は、HORIBA製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置にて、水に分散して測定した値である。 本発明のポリマーエマルションのポリマー濃度は、0.1〜90重量%が好ましく、10〜60重量%が更に好ましい。 [化粧料] 本発明のポリマーエマルションは化粧料の皮膜形成基剤として特に有用であり、本発明のポリマーエマルションの1種又は2種以上を混合して化粧料に配合することができる。2種以上を混合する場合、Tgの異なるポリマー2種以上を組合せることもできる。 化粧料への本発明のポリマーエマルションの配合量は、本発明の良好な効果を得、また、化粧料の粘度が高くなるのを防ぎ、良好な製剤化及び皮膚や毛髪への塗布性を得る観点から、全化粧料中のポリマー量として、1〜60重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましい。 本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリマーエマルション以外に化粧料成分として一般に使用されている成分、例えば油分、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、染料、顔料、香料等を適宜配合することができる。 油分としてはジメチルポリシロキサンに代表されるシリコーン系オイル、イソパラフィン、スクアラン等に代表される炭化水素系オイル、ミリスチン酸イソプロピル等に代表されるエステル系オイル、フォンブリン等に代表されるフッ素系オイル等化粧品に使用できるようなオイルが挙げられる。保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。粉体としては、無機物、有機物に限定されず化粧品に使用できる粉体であれば配合することが出来る。 本発明の化粧料は、それぞれの用途に応じて常法に従い製造することができる。本発明の化粧料は、各種ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラ、ネイルエナメル等のメイクアップ化粧料類、パック、口紅、ほほ紅、サンスクリーン等の皮膚化粧料類、毛髪化粧料、薬用化粧料などに広く応用することができる。 例中の%は、特記しないかぎり重量%である。 実施例1 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水1318gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸カリウム3.8g、イオン交換水37.8gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル121.0g、アクリル酸n−ブチル612.6g、80%アクリル酸水溶液28.4gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水726.6gを反応容器に投入し、系内の温度を40℃以下にした。30%水酸化ナトリウム水溶液14.7g、イオン交換水43.3gを反応容器に加え、アクリル酸を部分中和した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール75.0gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−27℃であった。 実施例2 攪拌機、還流管、滴下ロート(2本)、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水175gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸アンモニウム0.5g、イオン交換水5gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル30g、アクリル酸n−ブチル60gを仕込み、残るもう一つの滴下ロートに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)10g、イオン交換水20gを仕込み、同時に反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水80gを反応容器に投入した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール10gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.7μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−9℃であった。 実施例3 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器にイオン交換水131.8gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、和光純薬製重合開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬製)0.38g、イオン交換水3.78gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにアクリル酸エチル68.0g、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウム エチルサルフェート80%水溶液(日東理研工業(株)製80%MOEDES)9.5gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。引き続き、イオン交換水70gを反応容器に投入した。固形分53%になるまで系内から水を減圧留去した後、冷却し、99.5%エタノール7.6gを加えた。若干の凝集物をメッシュ濾過で除去し、固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約92%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−1℃であった。 比較例1 攪拌機、還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に花王(株)製界面活性剤エマール20C 2g,イオン交換水175gを投入し、窒素気流下、撹拌を行い、70℃に昇温した。系内が70℃に達してから、過硫酸アンモニウム0.5g,イオン交換水5gから成る水溶液を加えた。一方、滴下ロートにメタクリル酸メチル16g、アクリル酸n−ブチル81g、80%アクリル酸水溶液3gを仕込み、反応容器に3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、75℃まで昇温し、更に3時間かけて熟成を行った。系内の温度を40℃以下にした後、30%水酸化ナトリウム水溶液を反応容器に加え、アクリル酸の35モル%を部分中和した。固形分50%になるまで系内から水を減圧留去した。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.07μmであった。このエマルションの塗布皮膜のTgは−27℃であった。 比較例2 メタクリル酸メチルの添加量を430.9g、アクリル酸n−ブチルの添加量を302.4g、80%アクリル酸水溶液の添加量を28.4gとする以外は実施例1と同様にして固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.5μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは20℃であった。 比較例3 アクリル酸n−ブチルの添加量を733.3g、80%アクリル酸水溶液の添加量を28.4gとし、メタクリル酸メチルを添加しない以外は実施例1と同様にして固形分50%のソープフリーポリマーエマルションを得た(収率約95%)。エマルション中のポリマーの平均粒径は0.6μmであった。このソープフリーポリマーエマルションの塗布皮膜のTgは−51℃であった。 実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリマーエマルションについて、下記方法で耐ヨレ性及び耐エタノール性を評価した。結果を表1に示す。 <耐ヨレ性> ポリマーエマルションを手の甲に載せて擦り、目視判断する。消しゴム状のカスが出なければ「良好」,出れば「不良」 <耐エタノール性> ポリマーエマルションの固形分1重量部に対し、イオン交換水1重量部,エタノール1重量部を混合し、目視判断する。凝集物が析出しなければ「良好」,析出すれば「不良」 処方例1〜3及び比較処方例1 実施例1〜3及び比較例1で得られたポリマーエマルションを用い、下記組成の各成分を混合して化粧料を調製した。この化粧料中のポリマー固形分は11重量%であった。得られた化粧料について、下記方法で塗布性、顔の違和感及び定着性を評価した。結果を表2に示す。 <化粧料組成> 固形分60%の粒子スラリー 5重量部 固形分50%のポリマーエマルション(実施例1〜3又は比較例1) 2重量部 固形分1%のハイドロゲル(花王(株)製ポイズ310) 2重量部 尚、固形分60%の粒子スラリーは、以下の方法で合成したものである。 ビーカーに、水2100g、5%ポリビニルアルコール(EG−30、日本合成(株)製)水溶液300gを入れ混合した。別のビーカーにメタクリル酸ステアリルを450g(1.240mol)、アクリル酸ブチルを50g(1.404mol)、エチレングリコールジメタクリレートを6g、過酸化ラウロイルを12g入れ攪拌した。過酸化ラウロイルを溶解した後、前述のポリビニルアルコール水溶液と混合し、ラインミキサーにより乳化を行った(乳化粒径13μm)。乳化液を3L反応容器に入れ、窒素ガスにより溶存酸素を除去した後、乳化液を70℃に昇温し、6時間重合を続けた。冷却後、静置分離、デカンテーションを行い、固形分60%の粒子スラリーを得た(収率97%)。 <評価方法>・塗布性:化粧料を顔に塗布し、目視判断する。消しゴム状のカスが出なければ「良好」、出れば「不良」・顔の違和感:化粧料を顔に塗布乾燥し、顔のつっぱり感を評価する。つっぱり感がなければ「良好」、あれば「不良」・定着性:化粧料を顔に塗布乾燥し、顔の表情を変えた後、目視判断する。乾燥皮膜が顔から剥がれなければ「良好」、剥がれれば「不良」 下記(A)成分及び(B)成分を含み、(A)成分と(B)成分との重量比が、(A)/(B)=80/20〜99.9/0.1であるモノマー成分を共重合させて得られるポリマーで、そのガラス転移温度(Tg)が5〜−50℃であるポリマーを含むソープフリーポリマーエマルションを含有する皮膚用化粧料。(A):アルキル基の炭素数1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種(B):一般式(III−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種[式中、R1は水素原子又はメチル基、Xは−O−又は−NH−、R4−1は−R5SO3M(R5は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、Mは水素原子又はカチオンを示す)又は−R6N+(R7)(R8)(R9)・Y−(R6は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、R7、R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y−はアニオンを示す)を示す。] ポリマーの平均粒径が0.01〜1.5μmである請求項1記載の皮膚用化粧料。 ポリマーエマルションが皮膜形成剤である請求項1又は2記載の皮膚用化粧料。


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