タイトル: | 公開特許公報(A)_光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法 |
出願番号: | 2004186005 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07D 277/06,C07B 53/00,C07B 61/00 |
樋口 靖 田中 昭宣 長谷見 隆司 杉田 将紀 JP 2006008556 公開特許公報(A) 20060112 2004186005 20040624 光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 永井 隆 100117891 樋口 靖 田中 昭宣 長谷見 隆司 杉田 将紀 C07D 277/06 20060101AFI20051209BHJP C07B 53/00 20060101ALN20051209BHJP C07B 61/00 20060101ALN20051209BHJP JPC07D277/06C07B53/00 CC07B61/00 300C07M7:00 4 OL 9 4C033 4H006 4H039 4C033AB01 4C033AB04 4C033AB17 4C033AB19 4H006AA02 4H006AC81 4H006BA69 4H039CA42 4H039CH10 本発明は、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法に関する。詳しくは、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドに一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を反応させて得られる一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法に関する。一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩は、各種工業薬品、農薬、及び医薬品の製造中間体として重要な物質である。(1)(2)(3)(4)(一般式(1)、(2)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基、一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2は各々独立した水素、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但しR1及びR2が同時に水素である場合を除く。また、一般式(4)中のR3及びR4は炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。) 4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド誘導体の4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸は、ハロゲン化メチルアルキルケトンとカルボニル化合物を水硫化アルキル及びアンモニアと反応させ、得られたチアゾリンにHCNを付加してチアゾリジンニトリルとし、次いでこれを加水分解することによって得られる(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法で合成される4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸はラセミ体であり光学活性を持たない。一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドそのものも、各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造原料として広範な活用が期待される化合物であり、産業上、非常に有用な化合物であるが、この光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドを加水分解することによって得られる光学活性2−アルキル−D−システインアミド、さらには光学活性2−アルキル−D−システインも、分子内にメルカプト基、アミノ基、及びカルボキシルアミド基又はカルボキシル基を有し、各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造原料として重要である。このように非常に重要な化合物であるにもかかわらず、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドの製造法は知られていない。Justus Liebigs,Ann.Chem.(1966),697,140−157 本発明の目的は、各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造原料として広範な活用が期待され、産業上、非常に有用な化合物である一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造法を提供することにある。 かかる実状に鑑み、本発明者らは一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法について鋭意研究を行ったところ、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドを、一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)と反応させることにより、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の1)〜4)に示す、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法に関する。1)一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造法であって、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドに一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を反応させることを特徴とする、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。(1)(2)(3)(4)(一般式(1)、(2)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基、一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2は各々独立した水素、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但しR1及びR2が同時に水素である場合を除く。また、一般式(4)中のR3及びR4は炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。)2)一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドに一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を反応させる際に塩基触媒を用いる、1)記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。3)一般式(1)、(2)中のRがメチル基である、1)又は2)記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。4)一般式(1)、(2)中のR、並びに一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2がともにメチル基である、1)〜3)の何れかに記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。 各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造原料として広範な活用が期待され、産業上、非常に有用な化合物である一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を製造するための、経済的で工業的に実施可能な方法を提供する。 以下に本発明の詳細について説明する。本発明の一般式(1)、(2)中のRは、炭素数1〜4の低級アルキル基でありそれ以外に特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル及びtertブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が好適であり、メチル基が特に好適である。一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2は各々独立した水素(但しR1及びR2が同時に水素である場合を除く)、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示しそれ以外に特に制限はないが、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル及びtertブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基、脂環としてはシクロペンタン環やシクロヘキサン環、シクロヘプタン環等が好適であり、R1及びR2が互いにメチル基の場合が特に好適である。また、一般式(4)中のR3及びR4は炭素数1〜3の低級アルキル基を示しそれ以外に特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル及びtertブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基が好適であり、メチル基が特に好適である。 また、一般式(1)の光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドは塩を形成することもできる。その種類は、実用上許容できる塩であれば特に制限はないが、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸、ギ酸や酢酸等の有機酸等が上げられ、特に扱いやすさの点で塩酸塩が好適である。 本発明で使用する一般式(2)で示される2−アルキル−D−システインアミドは、その製法等に特に制限はない。例えば、該当する4−アルキルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド誘導体を加水分解して2−アルキルシステインアミドのラセミ体を得、そのうちのL体のみを、生化学的不斉加水分解等により選択的に加水分解して、対応する2−アルキル−L−システインと未反応の2−アルキル−D−システインアミドの混合物となし、そのまま或いは両者を分離して用いることができる。 一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドを一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)と反応させることによって、一般式(1)で示されるチアゾリジン−4−カルボン酸アミドが誘導される。ここで使用する一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、一般式(4)で示されるケタール(アセタール)のR1及びR2は各々独立して水素又は炭素数1から4の低級アルキル基、或いは互いに一つの環を形成する炭素数3から8の脂環化合物であればよく、特に制限はないが、アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル及びtertブチルなどの直鎖又は分枝した低級アルキル基、シクロペンタン環やシクロヘキサン環等の脂環が好適であり、R1及びR2が互いにメチル基である場合が特に好適である。また一般式(4)のR4、R5は炭素数1から3のアルキル基であれば良く、メチル、エチル等がその例として挙げられる。このような化合物として、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトンジメチルアセタール等が挙げられ、特にアセトンが好適に使用される。用いるケトン又はアルデヒド、或いはケタール(アセタール)の量は、2−アルキル−D−システインアミドの1モル倍以上あればよく、特に上限はないが、反応速度の促進効果と、加熱や溶媒回収に掛かるコスト等を考慮して適宜決定されれば良い。 一般式(2)で示される光学活性な2−アルキル−D−システインアミド又はその塩を溶媒に溶かし、一般式(3)で示されるケトン又はアルデヒド、若しくは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を1モル倍以上加えて加熱攪拌すると反応が進行し、反応後に溶媒と未反応のケトン又はアルデヒド、或いはケタール(アセタール)を除去すると、目的とする光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドが得られる。反応に用いられる溶媒は特に制限されず、2−アルキル−D−システインアミド又はその塩と、ケトン又はアルデヒド、或いはケタール(アセタール)を溶解する溶媒を適宜選択して用いればよく、例えば、水、メタノールやエタノール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶媒、さらにはこれらの混合溶媒等が好適に用いられる。なお、2−アルキル−D−システインアミド又はその塩が、反応に用いるケトン又はアルデヒド、或いはケタール(アセタール)に溶解する場合には、そのケトン又はアルデヒド、或いはケタール(アセタール)を反応溶媒とするのが最も好ましい。反応は室温でも進むが、より速く反応を行なうためには、加熱還流下で反応を行なうのが実際的で好ましい。また、さらに好ましくは、反応によって生成する水を脱水剤を使用する等して除去しながら行なうのが望ましい。 またこの反応は塩基性条件でより好適に行なうことができる。用いる2−アルキルシステインアミドがアルカリ金属、有機アルカリ等の強塩基と塩を形成している場合には、そのまま使用すればよいが、塩酸塩や硫酸塩等のように酸との塩を形成している場合には、この酸分に対してやや過剰となる塩基を用いることにより、反応を速やかに進行させることができる。その際に用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウムや炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化テトラメチルアンモニウムや炭酸テトラエチルアンモニウム等の有機アルカリ等、一級アミンよりも強い塩基性を示す塩基であれば使用可能であるが、反応液の後処理の容易さやコスト的観点から、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムがより好適に用いられる。 反応後の反応液から有機溶媒を除去した後、これを最少量の水に溶かし、pH8から14、好ましくはpH9から13に調節すると、目的とする光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドが析出するので、これを取得する。濾液を非極性有機溶媒で抽出して溶媒を留去すると、さらに光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドが回収できる。得られた光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドは、物性に合わせて再結晶やクロマトグラフィー等の定法によって適宜精製できる。 本発明の方法によって、具体的には、例えば2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドを製造することができる。 本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって」限定されるものではない。実施例1 2−メチル−D−システインアミド塩酸塩10.0g(0.06mol)を100mLのメタノールに溶解させ、50mLのアセトン、12.7g(0.12mol)の炭酸ナトリウムを加え、これを窒素気流下で12時間加熱還流した。反応液を濃縮後、20mLの水を加えて析出した沈殿を濾取した。得られた沈殿をメタノールより再結晶して、無色立方晶8.1g(0.05mol)の2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドを得た。2−メチル−D−システインアミドからの収率は79%であった。この2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミドの結晶を光学異性体分離カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって分析した結果、光学純度は97%e.e.以上であった。2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド;無色立方晶(融点83℃)[α]D −37.4deg 0.95%水溶液質量スペクトル(CI法) m/z 175 (M+1)1H−NMR(90MHz,CDCl3)δ[ppm] 7.3(1H,s,br),5.9(1H,s,br),3.79(1H,d,J=12.0Hz),2.99(1H,d,J=12.0Hz),2.12(1H,s,br),1.64(3H,s),1.53(3H,s),1.50(3H,s)IR[cm−1](KBr) N−H 3429,3390,3307,3178,1579,1574 C−H 2976,2927,2866,1495,1479,1460,1454 C=O 1678元素分析 (測定値)C;48.64,H;8.13,N;16.24,(計算値)C;48.25,H;8.10,N;16.08さらに、2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド8.0g(0.05mol)を50mLの水に分散し、塩酸10mLを加えて撹拌し、濃縮乾固することにより無色立方晶の2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド塩酸塩9.6g(0.05mol)が当量的に得られた。この塩酸塩は、光学異性体分離カラムを用いた液体クロマトグラフィーによって分析した結果、光学純度は97%e.e.以上であった。2,2,4R−トリメチルチアゾリジン−4−カルボン酸アミド塩酸塩;無色立方晶(264℃にて分解)[α]D +58.0deg 0.86%水溶液1H−NMR(90MHz,D2O)δ[ppm] 3.72(1H,d,J=13.5Hz),3.45(H,d,J=13.5Hz),1.82(3H,s),1.83(3H,s),1.75(3H,s)IR[cm−1](KBr) N−H 3209,3182,3111,3074,1556 C−H 2993,2891,2760,1450,1446 C=O 1682元素分析 (測定値)C;40.11,H;7.19,N;13.40,(計算値)C;39.90,H;7.17,N;13.29 一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造法であって、一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドに一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を反応させることを特徴とする、一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。(1)(2)(3)(4)(一般式(1)、(2)中のRは炭素数1〜4の低級アルキル基、一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2は各々独立した水素、炭素数1〜4の低級アルキル基、又は両者が互いに結合した員数5〜8の脂環構造を示す。但しR1及びR2が同時に水素である場合を除く。また、一般式(4)中のR3及びR4は炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。) 一般式(2)で示される光学活性2−アルキル−D−システインアミドに一般式(3)で示されるアルデヒド又はケトン、或いは一般式(4)で示されるケタール(アセタール)を反応させる際に塩基触媒を用いる、請求項1記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。 一般式(1)、(2)中のRがメチル基である、請求項1又は2記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。 一般式(1)、(2)中のR、並びに一般式(1)、(3)、(4)中のR1及びR2がともにメチル基である、請求項1〜3の何れかに記載の一般式(1)で示される光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩の製造方法。 【課題】 各種工業薬品、農薬及び医薬品の製造原料として広範な活用が期待され、産業上、非常に有用な化合物である光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミドの、経済的で工業的に実施可能な製造方法を提供する。【解決手段】 光学活性2−アルキル−D−システインアミドを、アルデヒド又はケトン、或いはケタール(アセタール)と反応させることにより、光学活性チアゾリジン−4−カルボン酸アミド又はその塩を簡便な方法で効率よく製造することができる。