生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_マルトース−1−リン酸の製造法
出願番号:2004148134
年次:2010
IPC分類:C12P 19/12,C12N 9/12


特許情報キャッシュ

五十嵐 一暁 瀧澤 修一 檜垣 紀彦 JP 4464196 特許公報(B2) 20100226 2004148134 20040518 マルトース−1−リン酸の製造法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 五十嵐 一暁 瀧澤 修一 檜垣 紀彦 20100519 C12P 19/12 20060101AFI20100422BHJP C12N 9/12 20060101ALN20100422BHJP JPC12P19/12C12N9/12 C12P 19/00−19/64 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed WPI BIOSIS(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) 特開2003−79337(JP,A) 2 2005328719 20051202 12 20061226 滝口 尚良 本発明は、微生物を用いたマルトース−1−リン酸の製造法に関する。 マルトース−1−リン酸は、ほうれん草のクロロプラスト(例えば、非特許文献1参照)やMycobacterium属細菌の菌体内(例えば、非特許文献2参照)に存在する。その生理活性として、各種細胞接着阻害に関与することが報告され(例えば、非特許文献3、4及び5参照)、食品や化粧品、pH緩衝剤、研究用試薬、酵素の基質原料等として利用可能である。 マルトース−1−リン酸の製造には、マルトース−1−リン酸生成酵素を利用する方法が知られており、斯かるマルトース−1−リン酸生成酵素として、Actinoplanes missouriensisのマルトースキナーゼ(例えば、非特許文献6参照)やほうれん草に含まれるマルトース合成酵素(例えば、非特許文献7参照)が報告されている。しかしながら、前者はマルトースとリン酸を基質に反応する際にATPが必要であり、後者は基質にグルコース−1−リン酸が2分子必要となるため、これらを用いた方法では基質が高価であり、マルトース−1−リン酸の工業的生産に用いることは実用的ではない。FEBS Letters 1976、61(2):192-3Enzyme Microb. Technol.、1995、17、140-146Atherroscleosis 1998、136(2):297-303Acta Histochem. 1997、99(4):401-410J. Immunol. 1989、143(11):3666-3672Arch Microbiol. 2003、180(4):233-239Planta. 1982、154:87-93 本発明は、マルトオリゴ糖やデキストリン等の糖類を原料とし、大量のマルトース−1−リン酸を安価で得ることができるマルトース−1−リン酸の製造法を提供することに関する。 本発明者らは、培養により多量のマルトース−1−リン酸を培地中に生産する菌を種々検討したところ、コリネバクテリウム属細菌を糖類及び高濃度のリン酸類又はその塩が存在する条件下で培養した場合に、高濃度のマルトース−1−リン酸が直接培地中に生産され、マルトース−1−リン酸の大量製造が可能であることを見出した。 すなわち本発明は、コリネバクテリウム属細菌を、糖類及び1mM以上のリン酸類又はその塩を含有する培地中で培養し、培地中に生成蓄積されたマルトース−1−リン酸を採取するマルトース−1−リン酸の製造法を提供するものである。 本発明の方法によれば、高濃度のマルトース−1−リン酸を直接培地中に生産させることが可能であり、大量のマルトース−1−リン酸を安価に且つ複雑な工程を行うことなく、製造することができる。 本発明において用いられるコリネバクテリウム属細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)に属し、糖類及び一定濃度のリン酸類又はその塩の存在下、培地中にマルトース−1−リン酸を産生するものであればよく、例えばCorynebacterium sp. JCM1300や、Corynebacteriumflavescens、Corynebacterium glutamicum、Corynebacteriumhoagii、Corynebacterium vitaeruminis、Corynebacteriumpilosum、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium matruchoti、Corynebacteriumminutissimum、Corynebacterium striatum、Corynebacteriumcallunae等が挙げられ、特にCorynebacterium sp. JCM1300、Corynebacteriumflavescens JCM1317、Corynebacterium glutamicum JCM1318、Corynebacteriumhoagii JCM1319、Corynebacterium glutamicum JCM1321、Corynebacteriumvitaeruminis JCM1323、Corynebacterium pilosum JCM3714、Corynebacteriumamycolatum JCM7447、Corynebacterium matruchotii JCM9386、Corynebacteriumminutissimum JCM9387、Corynebacterium striatum JCM9390、Corynebacteriumcallunae IFO15359が好ましく、マルトース−1−リン酸生産性の高さの点から、Corynebacterium sp. JCM1300、Corynebacterium hoagii JCM1319、Corynebacterium glutamicumJCM1321、Corynebacterium callunae IFO15359がさらに好ましい。 培地に添加される糖類としては、好ましくはグルコースを構成糖として含有する単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖類が挙げられ、更に好ましくはα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖、例えばデンプン、アミロース、デキストリン、マルトース、マルトオリゴ糖、アミロペクチン、グリコーゲン、デンプン分解物等が挙げられる。このうち、安価なデンプン、デキストリン、マルトオリゴ糖が特に好ましい。斯かる糖は、これらの2種以上を混合して用いてもよい。 培地中の糖類の濃度は、効果の点から1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは、10〜70質量%、特に20〜50質量%とするのが好ましい。 培地に添加されるリン酸類又はその塩としては、例えばリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、二リン酸、ポリメタリン酸及びこれらの塩類が挙げられ、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。特に好ましいリン酸類の塩としては、例えばリン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム等が挙げられる。本発明においては、リン酸類とその塩又は数種のリン酸類の塩を混合して用いることが好ましい。 培地中のリン酸類又はその塩の濃度は、効果の点から1mM以上であることが必要であるが、好ましくは1mM〜2Mの範囲、特に50mM〜1Mの範囲が望ましい。 本発明において用いられる培地は、上記コリネバクテリウム属細菌が生育できるものであればよく、上記の糖及びリン酸類又はその塩の他に、炭素源、窒素源、金属ミネラル類、ビタミン類等を含有する液体培地等が使用できる。 ここで、糖質以外の炭素源としては、例えば酢酸塩等の有機酸塩が挙げられ、窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機及び有機アンモニウム塩、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物等の窒素含有有機物、グリシン、グルタミン酸、アラニン、メチオニン等のアミノ酸等が挙げられ、金属ミネラル類としては、例えば塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらを単独で又は必要に応じ混合して用いればよい。 培養は、微生物が十分に生育できる条件となるようpH及び温度を適宜調整して行われるが、通常pH4〜pH8、温度25℃〜40℃で12時間〜96時間で行われることが好ましい。また培養方法は、静置培養、振とう培養、醗酵槽による培養の他、休止菌体反応及び固定化菌体反応も用いることができる。 培地中に生成蓄積したマルトース−1−リン酸の採取は、公知の方法に従って行えばよい。上記培養によれば、マルトース−1−リン酸の他に、グルコース−1−リン酸等のリン酸化糖類も生産され得る。従って、菌体を分離除去した後、必要に応じて限外ろ過、逆浸透膜、電気透析、イオン交換膜、イオン交換樹脂、活性炭、合成吸着剤処理等を行い、晶析、塩析することによりマルトース−1−リン酸を分離することが好ましい。また必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィー等の手段を用いて更に精製することができる。 また、以下に示すように、本発明のマルトース−1−リン酸の製造法においてマルトース−1−リン酸生産を触媒する酵素は従来知られていない新しい酵素である。従って、グルコース−1−リン酸等のリン酸化糖を触媒する酵素の遺伝子領域をゲノムから削除または不活化した菌体を用いることで、目的のマルトース−1−リン酸のみを選択的に取得することができる。特にコリネバクテリウム属細菌を使用する場合は、菌体外マルトデキストリンホスホリラーゼの遺伝子を不活化した菌体を用いることが好ましい。この場合の標的遺伝子の削除または不活化の方法は公知の方法(Mol. Gen. Genet. , 223, 268, 1990等)に従って行えばよい。 本発明のマルトース−1−リン酸の製造法においては、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖とリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成し得るマルトース−1−リン酸生成酵素が関与する。斯かる酵素は、従来知られていない全く新しいタイプのマルトース−1−リン酸生成酵素である。以下に、その酵素学的性質について説明する。 尚、酵素活性の測定は、基質に2%デキストリンマックス1000及び1Mリン酸緩衝液(pH7)を用い、適宜希釈した酵素を加え、37℃にて1時間保温後、生成したマルトース−1−リン酸をHPLCにて定量することにより行った(参考例1参照)。 1)作用 グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する。 すなわち、本酵素は、リン酸類又はその塩の存在下において、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖に作用して、マルトース単位を認識して加リン酸分解をするホスホリラーゼ活性を有する。ホスホリラーゼは、これまでグルコース等、単糖を認識してグルコース−1―リン酸等を生成する酵素しか報告されておらず、このように二糖を認識して二糖リン酸を生成するタイプものはこれまでに全く知られていない。 一方、本酵素は、リン酸類の非存在下においては、マルトオリゴ糖に作用して、マルトース単位で転移をする。すなわち、マルトヘキサオース(DP=6)に作用させることにより、マルトオリゴ糖(DP=4、DP=6、DP=8、DP=10等)が、また、マルトヘプタオース(DP=7)に作用させることにより、マルトオリゴ糖(DP=5、DP=7、DP=9、DP=11等)が生成するように、マルトペンタオース以上のオリゴ糖に作用してマルトース単位で転移する活性を有する。従来、マルトシルトランスフェラーゼは、Eur. J. Biochem. (1998) 250, 1050-1058に報告があるが、当該酵素に、マルトース−1−リン酸を生成するという報告は無い。また、従来のマルトシルトランスフェラーゼは、マルトトリオース(DP=3)等の低分子に作用し、DP=3以上のオリゴ糖に作用させたとき、低分子のDP=1〜3の低重合度オリゴ糖を生成するが、本酵素は、マルトオリゴ糖DP=3,4にはほとんど作用せず、マルトオリゴ糖DP=5には作用しにくい。また、DP=5以上のマルトオリゴ糖に作用させてもDP=1〜3の低重合度のオリゴ糖をほとんど生成しない。従って、本酵素は従来のマルトシルトランスフェラーゼとは異なる酵素である。 かように、本酵素は、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖に作用して、マルトース単位を認識して加リン酸分解をするホスホリラーゼ活性とマルトース単位で伸長していくマルトース転移活性を有するこれまでに知られていない全く新しいタイプの酵素である。以上より、本酵素は、マルトデキストリン・マルトシルホスホリラーゼ、マルトデキストリン:オルトリン酸−α−1−マルトシルトランスフェラーゼ、又はマルトシルトランスフェラーゼのように命名できる。 2)基質特異性 リン酸類又はその塩との存在下で、グルコース重合度6以上のα−1,4グルコシド結合を含むオリゴ糖、多糖又はそれらの分解物によく作用してマルトース−1−リン酸を生成する。グルコース重合度5のオリゴ糖に若干作用し、重合度2〜4のオリゴ糖には殆ど作用しない。ここで、多糖としては、例えばアミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、澱粉等が挙げられる。 3)分子量 ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)による分子量は約75kDa(但し、SDS−PAGE法では測定条件により5kDa程度上下することがある)である。 4)至適pH 基質としてpH5.5〜8.5の各pHの700mMリン酸緩衝液及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素を0.28U/mLとなるように加え、37℃、1時間反応させ、酵素活性を測定した場合、至適pHは6.5〜8.0付近であり、pH5.5〜8.5範囲で、pH7.5(最大活性)との相対活性50%を示す。 5)至適温度 基質として1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素0.168U/mLとなるように加え、30℃〜70℃の各温度にて1時間反応させ、95℃で10分間処理し酵素を失活させ、反応液を101倍希釈して酵素活性を測定した場合、至適温度は35〜50℃であり、30℃〜55℃の広い範囲で活性を有する。実施例1 マルトース−1−リン酸の生産法 菌株としては、Corynebacterium sp. JCM1300、Corynebacterium flavescens JCM1317、Corynebacteriumglutamicum JCM1318、Corynebacterium hoagii JCM1319、Corynebacteriumglutamicum JCM1321、Corynebacterium vitaeruminis JCM1323、Corynebacteriumpilosum JCM3714、Corynebacterium amycolatum JCM7447、Corynebacteriummatruchotii JCM9386、Corynebacterium minutissimum JCM9387、Corynebacteriumstriatum JCM9390、Corynebacterium callunae IFO15359を用いた。菌株をSCD寒天プレート(日本製薬)に塗末し、30℃にて一晩培養した。種培養には大試験管10mL仕込みの0.67%Yeast Nitrogen Base(Difco)に菌株を一白金耳植菌し、30℃で一晩、250rpmで振とう培養を行った。 主培養は0.67%Yeast Nitrogen Base(Difco)、10%デキストリンマックス1000(松谷化学)、400mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を含む培地にて35℃で6日間、250rpm振とう培養を行った。 上精のマルトース−1−リン酸は、DIONEX社のDX500クロマトグラフィシステムにて定量した。 カラム:CarboPac PA1(日本ダイオネックス社 4×250 mm)、検出器:ED40パルスドアンペロメトリー検出器、溶離液:A液;100 mM水酸化ナトリウム溶液 B液;1M酢酸ナトリウムを含む100mM水酸化ナトリウムを用いた。 注入から初期濃度A液90%:B液10%、0〜17分A液18.5%:B液81.5%のリニアグラジエントにより分析した。標準として100mM、50mMのSIGMA社マルトース−1−リン酸を用いた。約15.5分にピークが現れた。培養上精は200倍希釈し、20μLを注入した。分析の結果を表1に示す。 これより、リン酸及びα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖を含有した培地でコリネバクテリウム属を培養することによりマルトース−1−リン酸を生産することができた。また、培養上清中には、マルトース−1−リン酸の他に、グルコース−1−リン酸等のリン酸化糖類も生産され得る。従って、菌体を分離除去した後、必要に応じて限外ろ過、逆浸透膜、電気透析、イオン交換膜、イオン交換樹脂、活性炭、合成吸着剤、晶析等を行い、イオン交換クロマトグラフィーすることによりマルトース−1−リン酸の分離を行った。参考例1 マルトース−1−リン酸生成酵素の活性測定法 マルトース−1−リン酸生成酵素の活性測定を検討し、次の反応条件を設定した。 基質には2%デキストリンマックス1000及び1Mリン酸緩衝液(pH7)の条件下、適宜希釈した酵素を加え、37℃にて1時間保温後、生成したマルトース−1−リン酸を実施例1で示したHPLCにて定量した。すなわち、マルトース−1−リン酸は、DIONEX社のDX500クロマトグラフィシステムにて定量した。カラム:CarboPac PA1(4×250 mm)、検出器:ED40パルスドアンペロメトリー検出器、溶離液:A液;100 mM水酸化ナトリウム溶液B液;1M酢酸ナトリウムを含む100 mM水酸化ナトリウムを用いた。注入から初期濃度A液90%:B液10%、0〜17分A液18.5%:B液81.5%のリニアグラジエントにより分析した。標準として100 mM、50 mMのSIGMA社マルトース−1−リン酸を用いた。約15.5分にピークが現れた。1分間で1μMのマルトース−1―リン酸を生成する量を1U(ユニット)とした。参考例2 マルトース−1−リン酸生成酵素の生産 使用菌株はCorynebacterium glutamicum JCM1321を使用した。菌をSCD寒天培地(日本製薬)に塗末し、30℃にて一晩生育させた。種培養としては、0.5% 酵母エキス、4% アミノ酸調味液K(味の素)、3% 液糖マルトリッチ(昭和産業)、100 mM リン酸緩衝液(pH7)の培地をヒダ付き三角フラスコに50 mL仕込み、生育した菌株を1白金耳接種し、30℃、210 rpmで一晩振とう培養を行った。主培養としては、0.5% 酵母エキス、1% アミノ酸調味液K(味の素)、0.5% 硫酸アンモニウム、10% デキストリンマックス1000(松谷化学)、10%塩化カルシウム2水和物、200ppm 硫酸マグネシウム、25ppm塩化第二鉄、400 mMリン酸緩衝液(pH7)の培地を160本のヒダ付き三角フラスコに50 mL仕込み、種菌を1%植菌し、30℃、210rpmで一晩振とう培養を行った。 培養上精中にマルトース−1−リン酸生成酵素が240U/L生産された。参考例3 マルトース−1−リン酸生成酵素の単離精製 参考例2で得られた本培養液6Lを遠心分離後、上精を限外濾過モジュールACP-13000(旭化成)により濃縮し、10 mMリン酸緩衝液(pH8)にて透析を行った。濃縮透析液をDEAE−Toyopearl 650Mカラム(東ソー;5×15cm)に吸着させ、同緩衝液2Lで洗浄した後、1M塩化ナトリウム1.5Lにて溶出させ、粗酵素液を得た。 粗酵素液は、BIO-CAD60システム(パーセプティブ)により精製を進めた。まず、粗酵素液1580mLに1M硫酸アンモニウムを加え、1M硫酸アンモニウムと50mMリン酸緩衝液にて平衡化した疎水クロマトカラムPOROS PE/M(φ10×100mm)に添着させ、50mMリン酸緩衝液(pH8)中で1000 mMから360mMの硫安の濃度勾配で150mLを、次いで360 mM〜0 mMまでの硫安濃度勾配で375mLを流速12mL/分にて流した。その結果、約360mM硫安で溶出されたフラクションにマルトース−1−リン酸生成酵素のピークが認められた。活性フラクションは10mMリン酸緩衝液(pH8)中で透析し、酵素液74mLを得た。 透析酵素溶液はさらに、20mMリン酸緩衝液(pH8)で平衡化された陰イオン交換カラムPOROS HQ/M(φ10x100mm)添着させ20mMリン酸緩衝液(pH8)中で0から50mMまでの塩化ナトリウムの濃度勾配で450mLを流速12mL/分で流した。その結果、非吸着画分から濃度勾配が始まった直後に活性画分が現れ、その画分を10mMリン酸緩衝液(pH8)中で透析を行い、9.3mLの酵素液を得た。 再度本酵素液を同様な条件で陰イオン交換カラムPOROS HQ/M(φ10x100mm)処理を行った結果、塩化ナトリウムの濃度勾配が始まった直後にマルトース−1−リン酸生成酵素と思われるピークを検出した。 ピークトップのフラクションをCentriprep YM-3(MILLIPORE)により0.6mLまで10倍濃縮し、SDS-PAGEを行った結果、ほぼ単一のバンドを検出し、分子量約75kDaと推定された。さらに、本サンプルのアミノ末端のアミノ酸配列を決定したところ、Gly-Arg-Leu-Gly-Ile-Asp-Asp-Val-Arg-Pro-Arg-Ile-Leu-Asp-Gly-Asn-Pro-Ala-Lys-Ala-Val-Val-Gly-Glu-Ile-Val-Pro-Val-Ser-Ala-Ile-Val-Trp-Arg-Glu(配列番号1)であった。参考例4 マルトース−1−リン酸生成酵素の酵素学的性質(1)至適pH 基質としてpH5.5〜8.5の各pHの700 mMリン酸緩衝液及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素を0.28U/mLとなるように加え、37℃、1時間反応させた。95℃で10分間処理することにより反応を停止させ、反応液を101倍希釈して実施例1のHPLC手法によりマルトース−1−リン酸を定量した。 その結果、図1に示すように、至適pHは6.5〜8.0付近であり、pH5.5〜8.5の範囲でpH7.5との相対活性50%を示し、広く反応することが判った。(2)至適温度 基質として1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素0.168U/mLとなるように加え、30℃〜70℃の各温度にて1時間反応させ、95℃で10分間処理し酵素を失活させ、反応液を101倍希釈して実施例1に示したHPLC手法によりマルトース−1−リン酸を定量した。その結果、図2に示すように、至適温度は35℃〜50℃付近であり、30℃〜55℃の広い範囲で活性を有していた。(3)基質特異性 (i)デキストリンとリン酸からマルトース−1−リン酸を生成する反応 0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.5%デキストリンマックス1000(松谷化学)及び250mMのリン酸緩衝液(pH7)を37℃にて15時間反応させ、実施例1に示す手法にてマルトース−1−リン酸を定量した。その結果、145μMのマルトース−1−リン酸を生成した。 (ii)各種マルトオリゴ糖とリン酸からのマルトース−1−リン酸を生成する反応 0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.5%の各鎖長の異なった基質(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース(生化学工業))及び250mMのリン酸緩衝液(pH7)を37℃にて15時間反応させ、実施例1に示す手法にてマルトース−1−リン酸を定量した。その結果を表2に示す。 (iii)マルト−ス転移反応 0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.0%の各鎖長の異なった基質(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース(生化学工業))を37℃にて1時間反応させ、実施例1に示す手法にてHPLC分析を行った(結果はピーク面積で示す)。マルトオリゴ糖(DP=1〜11)の保持時間はデキストリン(松谷化学)分析から推定した。その結果を表3に示す。 参考例5 コリネバクテリウム属細菌によるホスホリラーゼの生産 Corynebacterium vitaeruminis JCM1323及びCorynebacterium callunaeIFO15359を、SCD寒天培地(日本製薬株式会社)に塗末し30℃にて培養した。本菌の一白金耳を液体培地(0.67%のYeast Nitrogen Base(Difco社)、50, 100,200 mMのリン酸緩衝液(pH7)、15%のデキストリン(sigma社 potato由来))に接種し、30℃で6日間振とう培養を行った。培養液を遠心分離により菌体除去後の上清のマルトデキストリンホスホリラーゼ活性を測定した。 上清のマルトデキストリンホスホリラーゼ活性は、Weinhausel(Enzyme Microb. Technol., 17, 140-146(1995))の方法を一部改変し行った。96穴マイクロプレート上で適宜希釈した培養上清サンプル20μLに酵素反応液(200 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、2% デキストリン、100 mM Tris-酢酸緩衝液(pH6.8)、2 mM EDTA、10 mM 硫酸マグネシウム、2 mM NAD、10μMグルコース−1,6−二リン酸、1.2unit/mlホスホグルコムターゼ(ウサギ筋肉由来、ロシュダイアグノスティック社製)、1.2 unit/ml グルコース−6−リン酸脱水素酵素(Leuconostoc mesenteroides由来、ロシュダイアグノスティック社製))を180μL加え、37℃で340 nmのG1P生成に起因する吸光度上昇を測定した。酵素単位1ユニット(U)は、1分間に1μmolのグルコース−1−リン酸(G1P)を生成する量とした。結果を表4に示す。 表4より、培地中のリン酸濃度を高くすることにより、菌体外に生産されるマルトデキストリンホスホリラーゼが産生することが確認された。よって、本酵素の遺伝子領域をゲノムから削除又は不活化することで、グルコース−1−リン酸を生成せずに、マルトース−1−リン酸のみを生産することができる。マルトース−1−リン酸生成酵素のpH−活性曲線を示す図である。マルトース−1−リン酸生成酵素の温度−活性曲線を示す図である。 コリネバクテリウム属細菌を、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖からなる糖類及び1mM以上のリン酸類又はその塩を含有する培地中で培養し、培地中に生成蓄積されたマルトース−1−リン酸を採取するマルトース−1−リン酸の製造法。 リン酸類又はその塩の濃度が50mM〜2000mMである請求項1記載の製造法。配列表


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