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タイトル:特許公報(B2)_液体培養による大腸菌ツーハイブリッドシステム
出願番号:2004143156
年次:2010
IPC分類:C12Q 1/02,C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

長瀬 隆弘 小原 收 中島 大輔 JP 4554269 特許公報(B2) 20100723 2004143156 20040513 液体培養による大腸菌ツーハイブリッドシステム 財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 596175810 阿部 正博 100100181 長瀬 隆弘 小原 收 中島 大輔 20100929 C12Q 1/02 20060101AFI20100909BHJP C12N 15/09 20060101ALI20100909BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20100909BHJP JPC12Q1/02C12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 15/00−15/90 JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特表2003−524371(JP,A) 特開2003−159063(JP,A) Genes Dev.,1998年,Vol. 12,pp.745-754 Anal. Biochem.,2003年,Vol. 316,pp.171-174 J. Biotechnol.,2004年 2月,Vol. 107,pp.233-243 実験医学,2000年,Vol. 18, No. 19,pp.2716-2717 12 2005323522 20051124 24 20070425 特許法第30条第1項適用 2003年11月25日 第26回日本分子生物学会年会組織委員会発行「第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」の第913ページに発表 高山 敏充 本発明は、蛋白質間相互作用の包括的な解析に使用することができる、大腸菌ツーハイブリッドシステム (E2H)、及び、該システムで選択された陽性クローンに含まれるベイト(bait)遺伝子又は標的(target) 遺伝子を同定する方法に関するものである。 ヒトゲノム配列の解読がほぼ終了した現在、研究者の興味は遺伝子産物の機能解析へと向けられている。ポストゲノムにおける蛋白質解析において、網羅的な蛋白質間相互作用解析は蛋白質の発現解析や、立体構造解析等と並んで重要である。なぜなら、蛋白質は複数のパートナーと相互作用することでその機能を示す場合が多く、蛋白質間相互作用のネットワークを明らかにすることにより蛋白質の機能を推測できるからである。実際に、出芽酵母、線虫、マウスでは、ゲノムワイドの包括的な蛋白質間相互作用解析が行われ、数多くの新規相互作用が示されてきた。それと同時に、DIP(http://dip.doe-mbi.ucla.edu/)、BIND(http://www.blueprint.org/bind/bind.php)、YeastInteraction Database(http://portal.curagen.com/extpc/com.curagen.portal.servlet.Yeast)などの蛋白質間相互作用データベースには大量の情報が蓄積されてきている。 従来から用いられている網羅的な蛋白質間相互作用解析法として、酵母ツーハイブリッドシステム(Yeast Two-Hybrid System: Y2H)(非特許文献1)、蛋白質複合体をマススペクトロメトリーで分析する方法等がある。前者は、比較的簡便で汎用されている方法ではあるが、酵母は形質転換効率が低く、増殖も遅い上、プラスミドの抽出も手間であるといった欠点を持つ。また、後者は、よりネイティブに近い環境下での相互作用を調べることができるという利点を持つが、マススペクトロメトリーの高価な機器が必要となる。 そこで、酵母ツーハイブリッドシステムにおける上記の欠点を解決するために、酵母に替えて大腸菌における転写活性化を利用した、大腸菌ツーハイブリッドシステム(E. coli Two-Hybrid System: E2H)が開発された(非特許文献2)。この大腸菌ツーハイブリッドシステムには以下のような利点がある。1)形質転換効率が高く増殖も速い大腸菌を用いるので、大きなライブラリーを迅速にスクリーニングすることができる。2)プラスミドの調整が容易である。3)真核生物蛋白質との相同性が低く、毒性を受けにくい。4)Bait及びTarget蛋白質の核への局在が必要無い。5)マススペクトロメトリーのように特別な機器を必要としない。このシステムは、翻訳後修飾が必要とされない蛋白質間の相互作用を解析するのに特に適している。この大腸菌ツーハイブリッドシステムの概要を図1に示す。 しかしながら、いずれの系にも形質転換した菌を寒天プレート上にまき、抗生物質に対する耐性や栄養要求性で陽性クローンの選別を行なうものである。大腸菌ツーハイブリッドシステムにおいても、直径10 cmの寒天プレートに1-2 x 105個の形質転換体をまくことが推奨されており、大量解析をする場合には煩雑なプレート処理の簡略化が求められる。 又、酵母ツーハイブリッドシステムによるタンパク質間相互作用のスクリーニングにおいて、手間のかかるβ-ガラクトシダーゼアッセイを省略することによるスクリーニングの簡便化を目指した変法(非特許文献3)も開発されている。通常の酵母ツーハイブリッドシステムにおいては、ヒスチジン要求性を指標にヒスチジンマイナスの寒天プレート上で陽性クローンを選別し、続くβ-ガラクトシダーゼアッセイで相互作用の強さを定量化するのに対して、この方法では、β-ガラクトシダーゼアッセイの代わりに個別のクローンをヒスチジン非含有液体培地で培養し、その増殖曲線を調べることにより陽性/陰性クローンの選別のほか、相互作用の強さを定量化でき、β-ガラクトシダーゼアッセイより感度が良いとされている。しかしながら、この方法では、一度プレートに酵母のコロニーを形成させ、その後に液体培養をする必要があり、又、1つのwellにおける液体培養毎に一組のベイト(bait)遺伝子対 標的(target)遺伝子の組み合わせによる相互作用しかアッセイしていないものである。Chien, C-T., Bartel, P. L., Sternglanz, R. &Fields, S. The two-hybrid system: A method to identify and clone genes for proteinsthat interact with a protein of interest. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88,9578-9582, (1991).Dove, S.L. & Hochschild, A. Conversion of the ω subunit of Escherichia coli RNApolymerase into a transcriptional activatior or an activation target. Genes toDev., 12, 745-754, (1998).Diaz-Camino, C., Risseeuw, E.P., Liu, E. & Crosby, W.L. Ahigh-throughput system for two-hybrid screening based on growth curve analysisin microtiter plates. Anal. Biochem. 316, 171-174. (2003). そこで発明者は、より簡便に、かつハイスループットに蛋白質間相互作用を解析できる系の開発は非常に重要であると考え、本研究では、大腸菌ツーハイブリッドシステムを基にした新たな蛋白質間相互作用の包括的なスクリーニングシステムの開発を目指し鋭意研究の結果、本発明を完成した。その概要を図2に示す。 即ち、本発明は、第一に、液体培養にて陽性クローンを選択することを特徴とする、大腸菌ツーハイブリッドシステム、に係る。この液体培養における主要な特徴の一つは、ベイト(bait)遺伝子と 標的(target)遺伝子との様々な組み合わせを有する複数種類のクローンから陽性クローンを選択することである。尚、本発明において、「ベイト遺伝子」及び「標的遺伝子」には、蛋白質全体をコードする完全長DNA以外に、例えば、ドメイン(又は、領域)と呼ばれる、各蛋白質を構成する一部分のポリペプチドをコードするDNA断片も含まれる。 本発明は第二に、本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステムで選択された陽性クローンに含まれるベイト遺伝子又は標的遺伝子のDNA配列を同定する方法であって、(1)タイプIIs制限酵素で各遺伝子を含むベクターを消化することにより各遺伝子の5’ 末端及び3’ 末端から一定の長さの塩基配列(夫々、「5’タグ」及び「3’タグ」という)を残して、それ以外の各遺伝子のDNA配列を切り出し、(2)各ベクターをセルフライゲーションしてそこに残された5’タグ及び3’タグを連結させて連結タグ配列を得、(3)該連結タグ配列を含む領域をPCRで増幅し、(4)得られたPCR産物を互いに連結してコンカテマーを形成し、(5)該コンカテマーを配列決定し、及び(6)該コンカテマーに含まれる連結タグ配列の塩基配列を決定する、ことから成る、前記方法に係る。 本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステムでは、陽性クローンの選別を液体中で行なうことによって、プレート処理を省略することにより多検体を解析できるものである。即ち、一つの wellにおいて、約30,000 個の陰性クローン中に1個しか存在しないような陽性クローンが液体培養で選択できることが確認された。これは約30,000クローンからなるTarget遺伝子ライブラリーを一つのwellでスクリーニング出来るということを意味し、約300万個のクローンも96-wellのマイクロタイタープレート1枚でスクリーニング可能となる。このように、本発明システムを用いることによって、よりハイスループットなスクリーニングが可能となる。 例えば、標的遺伝子として、既に配列解析されたタンパク質コード領域を含むcDNAを600-900塩基対のDNA断片にしたcDNAライブラリー由来の各DNA断片をベクターに繋いで使用した場合には、ベクターに対して向きとフレームが合えば、200-300アミノ酸の部分断片が融合タンパク質の形で発現する。その結果、このようなDNA断片を一つの遺伝子当り約3,000個調製すると、液体培養に96-wellプレートを用いた場合には、1 wellあたり、約10遺伝子由来の約3万個の形質転換体を解析でき、96-wellプレート1枚では約1000種類の遺伝子産物の部分配列に対して、対象となるタンパク質ドメインとの相互作用の解析を行なうことができる。例えば、ヒトのタンパク質をコードする全遺伝子が32,000種類とすれば、本発明のシステムを用いることによって、全ての完全長cDNAを持っていた場合に96-wellプレート32枚で全てのタンパク質ドメインに対するスクリーニングが可能になる。 更に、本発明では、菌が増殖したwellからプラスミドDNAを単離し、シーケンス解析することにより相互作用するアミノ酸配列が特定できるが、特に、本発明の同定方法を用いることによって、ベイト遺伝子又は標的遺伝子のDNA配列及びアミノ酸配列を迅速に効率的に決定することが可能となる。 大腸菌ツーハイブリッドシステムにおいてベイト遺伝子にコードされる蛋白質との融合蛋白質を形成する蛋白質としては、大腸菌に含まれるリポーター遺伝子のプロモーターの上流のオペレーター等の発現調節配列に結合し、RNAポリメラーゼと相互作用するものであれば、当業者に公知の任意のものを使用することが出来る。例えば、λリプレッサー(λファージのCI蛋白質:λcI)を使用する場合には、それに応じて、大腸菌に含まれるリポーター遺伝子のプロモーターの上流には、λオペレーターが含まれている。又、標的遺伝子は、それにコードされる蛋白質が、通常、RNAポリメラーゼのαサブユニットに結合して融合蛋白質を形成するようにベクターにコードされる。 本発明のシステムで使用するレポーター遺伝子としては当業者に公知の任意のものを使用することが出来る。例えば、アンピシリン耐性遺伝子又はストレプトマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子を挙げることが出来る。このような抗生物質耐性遺伝子をリポーター遺伝子として使用した場合には、液体培養における陽性クローンの選択は、培地に対応する抗生物質、例えば、アンピシリン又はカルベニシン、ストレプトマイシン等を添加することにより行う。液体培養に使用する培地の種類、培養温度・時間等の培養条件、及び抗生物質の添加量及び添加時期等については、当業者が適宜選択することが出来る。尚、特に抗生物質耐性遺伝子産物が分泌型の蛋白質である場合には、培養開始時に加えて、その後の培養中に少なくとも1回、抗生物質を培地に添加することが好ましい。 本発明のシステムにおける液体培養を実施する環境、器具又は装置等に特に制約はないが、本発明の特徴を生かしてその効果を充分に発揮するには、例えば、96-wellマイクロタイタープレートのような多検体を同時処理することが可能な器具を使用することが好ましい。 陽性クローンを選択した後に、それに含まれるベイト遺伝子又は標的遺伝子を同定する必要があるが、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression: Velculescu, V.E., Zhang, L.,Vogelstein, B. & Kinzler, K.W. Serial analysis of gene expression. Science270, 484-487. (1995))を応用した本発明の同定方法で行うことが好ましい。その為に、ベイト遺伝子及び標的遺伝子の各挿入部位の両側に、タイプIIs制限酵素による切断部位が挿入された該遺伝子内になるように、逆方向反復配列で該酵素の認識部位を有するベクターを使用する。タイプIIs制限酵素は、認識部位から一定(1〜16個)の塩基数だけ離れた位置でDNAを切断する制限酵素であり、その代表例として、BsgI、FokI、AlwI等を挙げることが出来る。使用する制限酵素の種類に応じて、得られる5’タグ及び3’タグの塩基数が異なる。因みに、BsgIを使用した場合には、11個の塩基から成る5’タグ及び3’タグが得られる。 更に、ベイト遺伝子及び標的遺伝子の各挿入部位の両側に、GateWay(商標)テクノロジーにおけるattB 配列を挿入することによって、本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステムにおいて陽性として選択されたクローンに含まれるDNA断片を、GateWay相同組換え技術を利用することによって、目的の発現ベクター系に容易に組み換えることが出来る。 ベイト遺伝子及び標的遺伝子の夫々を含む各ベクターには、形質転換菌の選択のために、従来の大腸菌ツーハイブリッドシステムにおいて含まれているような任意のその他の要素、例えば、pBR322由来のColE1又はp15A等に由来する複製起点、lacUV5、lpp、又はlacZ等のプロモーター、並びに、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、又はカナマイシン等の各種薬剤に対する耐性遺伝子を含むことが出来る。 使用する大腸菌及びベクターの種類、及び形質転換法等は、従来の大腸菌ツーハイブリッドシステムに準ずるものであり、目的等に応じて、当業者が適宜選択ないし変更することが出来る。 ベイト遺伝子産物及びそれとの蛋白質間相互作用を解析する対象となる標的遺伝子の種類及びその取得源・調製方法等に特に制限はない。例えば、蛋白質をコードするDNA領域のみをクローン化して得られたcDNAライブラリーを出発材料として使用することが出来る。具体的には、例えば、このような出発材料が大きな分子量の蛋白質コードしているような場合には、これらをショットガン法で処理して得られるcDNA断片の混合物(cDNAショットガンライブラリー)等の当業者に公知の任意の方法で調製されたcDNA断片の混合物に由来する標的遺伝子を使用することが出来る。 以下の実施例においては、「かずさcDNAプロジェクト」(Nagase, T., Kikuno, R. & Ohara, O.The Kazusa cDNA project for identification of unknown human transcripts. C. R.Biol. 326, 959-966. (2003))において主にヒト脳ライブラリーからクローニングされた約2,000個の新規遺伝子に対するcDNA(KIAAと4桁の数字を用いて表示)を解析の対象として本発明を実施した。 KIAAの特徴は大きな蛋白質(平均936アミノ酸残基)をコードする長鎖cDNA(平均5.1 kb)であるということである。大きな蛋白質は真核生物特異的な機能にしばしば関与していることが知られおり、興味ある研究対象ではあるが、蛋白質をコードするcDNAサイズが大きくクローニングが難しい等の理由からその解析は遅れていた。また、大きな蛋白質はマルチドメイン構造をとることにより、scaffold蛋白質として多くの相互作用に関与しうると考えられる。従って、KIAAの網羅的な蛋白質間相互作用解析を行うことで、より多くの新規な相互作用情報を得ることができると期待される。 一方、KIAA cDNAについて蛋白質コード配列をGATEWAYテクノロジー(Invitrogen)のエントリーベクターに組み込む作業が現在進んでいて、そのリコンビネーションテクノロジーを用いることにより、迅速にネイティブ型もしくはある種のタグ配列との融合型KIAA蛋白質発現ベクターを作製することができる。これら蛋白質コード配列が濃縮したcDNAを蛋白質相互作用解析のためのライブラリーに用いることにより、効率良くスクリーニングできることが予想されると共に、E2Hで相互作用を検出した場合、すぐに全長のKIAA蛋白質を用いて培養細胞などの異なった実験系で相互作用を確認することができる。 以下の実施例で使用する、53BP2はASPP2とも呼ばれる蛋白質で、1,128アミノ酸残基からなり、PYモチーフ、Ankyrinリピート、SH3ドメインを持つ。もともと酵母Two-Hybridシステムで野生型p53には結合するが、変異型p53には結合しない蛋白質として見つかったもので、p53の転写活性化を亢進させる、G2/M期で細胞周期の回転を抑制する、アポトーシスを誘導するなどの機能を持つとされている。また、53BP2は現在までにYAP65、Bcl-2、NF-κB subunit p65などを含むさまざまな蛋白質と相互作用することが報告されている。 本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。〔配列番号:1〕各ベクターに挿入される配列〔配列番号:2〕pBT-FPプライマー〔配列番号:3〕pBT-RPプライマー〔配列番号:4〕pTRG-FPプライマー〔配列番号:5〕pTRG-RPプライマー〔配列番号:6〕pTRG-FP2プライマー〔配列番号:7〕pTRG-RP2プライマー 以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、実施例における各種遺伝子操作は、特に断わりがない限り、Molecular cloning, 3rd edition(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)等に記載されている当該技術分野における標準的方法に従った。[材料と方法]KIAA cDNAショットガンライブラリーの作製 Baitには相互作用を調べたいドメインをコードするcDNA配列、Targetには12遺伝子のKIAAcDNAの混合物を600-900 bp(200-300アミノ酸残基)に断片化したKIAA cDNAショットガンライブラリーを用いた。断片化するのにはいくつか理由がある。第一に、KIAAの多くは大きな蛋白質をコードしており、大腸菌の中で発現することが難しいと考えられるからである。次に、少しずつ異なった蛋白質領域をコードする複数の断片が陽性クローンとして検出された時、それらの共通部分から相互作用に必要なドメインを狭めることができるからである。最後に、修飾等による構造変化にともなって内側に隠れていたドメインが表面に出てくるような蛋白質の場合、断片化したものであればそういった蛋白質全体の構造的なものを無視して相互作用を調べることができるからである。 また、cDNAショットガンライブラリーは、KIAAの蛋白質コード配列(平均2.9kb)のみがクローニングされたプラスミド(ベクター部分 2.3 kb)を断片化することによって作製されるので、非翻訳領域を含まない蛋白質コード領域のみが濃縮された質の高いものになり、効率の良いスクリーニングを行うことができると考えられる。 具体的には、目的のKIAA cDNAを含むプラスミドを超音波処理で断片化した後、Mung Bean Nuclease、更に、DNA BluntingKit(TaKaRa)を用いて末端平滑化処理を行った。1%アガロースゲル電気泳動で目的のサイズのDNA断片を分離し、精製後、Ligation high(TOYOBO)を用いて以下の処理を行ったpTRG7のSmaIサイトにライゲーションした。pTRG7をSma I消化後、Bacterial Alkaline Phosphataseで脱リン酸化し、更に1%アガロースゲル電気泳動でベクター断片を精製した。ライゲーション産物をCompetenthigh JM109(TOYOBO)にプロトコールに従って形質転換し、12.5 μg/mlテトラサイクリンを含むLBプレート上で選択した。但し、SOC培地での耐性遺伝子の発現は30℃で3時間行い、プレートでの培養も30℃で行った。形成したコロニーをLB培地でかき集め、プラスミドを抽出した。Bait、Targetベクターの改変 λcI融合蛋白質発現ベクターであるpBT及びRNAポリメラーゼαサブユニット融合蛋白質発現ベクターであるpTRG(共にStratagene)を改変し、pBT5、pTRG5及びpTRG7ベクターを構築した。 pBTをBsgI、SgrA Iで、pTRGをPvu II、Bsm Iで消化した後、末端平滑化処理、セルフライゲーションさせることで、それぞれのベクターのBsgIサイトを破壊した。続いて、マルチプルクローニングサイトのNot IサイトからXho Iサイトに、5’-GCGGCCGCACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTGTGCAGCCCGGGCTGCACACCCAGCTTTCTTGTACAAAGTGGTCTCGAG-3’という配列(配列番号1)を挿入し、pBT5、pTRG5とした。 両ベクターともDNA断片はpBT5、pTRG5のSmaIサイト(上記配列の中央の下線部分)に導入されるが、Sma Iサイトの近傍がパリンドロミックな配列になっているためか、ベクターをSmaIにより完全に直鎖状にできなかった。そこで、pTRG5についてはpcDNA6/TR(Invitrogen)由来の無関係な2.7 kb Sma I断片をpTRG5のSmaIサイトに挿入し、pTRG7とした。相互作用既知のドメインをコードするcDNA配列のベクターへの導入 p53を除く各遺伝子についてはドメインを含む領域を、KOD-Plus-(TOYOBO)を用いたPolymerase Chain Reaction(PCR)によって増幅した(表1)。p53については、Bsp1286I消化によりドメインを含む領域を切り出した後、Blunting high(TOYOBO)を用いて末端平滑化処理した。それらのDNA断片をpBT5、pTRG5のSmaIサイトにサブクローニングした後、各プラスミドをDNAシークエンシングし挿入配列を確認した。大腸菌Two-Hybridシステムレポーター株コンピテントセル BacterioMatchtwo-hybrid system reporter strain competent cells (Δ(mcrA)183 Δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173endA1 supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 lac [F’ laqIq bla lacZKanr] )(Stratagene)を基に、スクリーニング用の大量のコンピテンントセルを以下の手順により作製し、実験に使用した。 BacterioMatchtwo-hybrid system reporter strain competent cellsをSOC培地(2%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.05%塩化ナトリウム、0.248%硫酸マグネシウム、0.0186%塩化カリウム、0.4%グルコース)を用いて37℃で30分間培養した後、50μg/mlカナマイシン含有LB寒天プレート(1%ポリペプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.5%塩化ナトリウム、0.1%グルコース、1.2%寒天粉末)にストリークし、37℃で一晩培養した。シングルコロニーを3mlのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.5%塩化ナトリウム、0.1%グルコース)を用いて37℃で一晩前培養し、その80 μlを200ml SOB培地(2%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、0.05%塩化ナトリウム、0.248%硫酸マグネシウム、0.0186%塩化カリウム)に植菌、18℃で本培養を行った。OD600が0.6になったところで氷水中で10分間冷やし培養を止め、4℃、1500x gで15分間遠心した。沈澱した菌体を67 mlのトランスフォーメーションバッファー(10 mM PIPES(pH 6.8) 、15 mMCaCl2、250 mM KCl、55 mM MnCl2)に懸濁し、氷水中に10分間おいた後、再度遠心した。菌体を16mlのトランスフォーメーションバッファーに懸濁し、1.2 ml DMSO(最終濃度0.7%)を加え氷水中に10分間おいた後、分注し液体窒素で凍結、-80℃に保存した。JM109株コンピテントセル Competenthigh JM109 (recA1 supE44 endA1 hsdR17 gyrA96thi Δ(lac-proAB) [F’ traD36 proAB+ lacZΔM15](TOYOBO)を使用した。大腸菌Two-Hybridスクリーニング寒天プレート上で行う場合の手順 大腸菌の形質転換は以下のように行った。Bait DNA 20 ng、Target DNA 10 ngをレポーター株コンピテントセル50 μlと混ぜ氷上で30分間インキュベートした後、42℃で45秒間熱処理し、さらに氷上で2分間インキュベートした。450μl SOC培地を加えて、30℃で90分振とう培養し耐性遺伝子を発現させた後、12.5 μg/mlテトラサイクリン、34 μg/mlクロラムフェニコール、50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天プレート(TCKプレート)及び500 μg/mlカルベニシリンを含むTCKプレート(CTCKプレート)に形質転換体を適当量に播き、30℃で20-22時間培養した。非選択培地であるTCKプレートで形質転換体を計数し、選択培地であるCTCKプレートで陽性クローンの選択を行った。CTCKプレート上に形成したコロニーを単離し、pTRG-FP及びpTRG-RPプライマーとLATaq(TaKaRa)を用いてコロニーPCRを行った後、産物をDNAシークエンシングした。液体培養中で行う場合の手順 Bait DNA20 ng、Target DNA 10 ngをレポーター株コンピテントセル50 μlと96 well PCRプレート(Thermo-Fast 96,Non-Skirted、ABgene)上で混ぜ、上記に従って形質転換を行った後、96 deep-well block(2 ml、丸底、MATRIX)に移し450μlのSOC培地を加えた。AirPore Tape Sheet(QIAGEN)でシールし、30℃で3時間BioShaker MBR-024(TAITEC)を用いて1000min-1で振とう培養して耐性遺伝子を発現させた後、910 x gで10分遠心し、沈澱した菌体を600 μg/mlカルベニシリン、12.5μg/mlテトラサイクリン、34 μg/mlクロラムフェニコール、50 μg/mlカナマイシンを含むLB培地(CTCK液体培地)1 mlに懸濁した。形質転換体数を調べるため、うち10μlをTCKプレートに播き30℃で20-22時間培養した後、コロニーを計数した。96 deep-well blockは30℃、1000 min-1で振とう培養し、18時間後に12mg/mlカルベニシリン、0.25 mg/mlテトラサイクリン、0.68 mg/mlクロラムフェニコール、1 mg/mlカナマイシンを含むLB培地 50 μlを添加した。OD600は培養20 μlをMicroWell plate(96 well、平底、NUNC)に採取し、10倍希釈した後、SPECTRAMAX 250(Molecular Device社)を用いて測定した。対数増殖期が終わり、定常期に入ったところでOD600の測定を止め、培養の一部を採取しTCKプレートにストリーク、30℃で一晩培養した。コロニーを単離し、コロニーPCRを行った後、その産物をDNAシークエンシングした。DNAシークエンシング プラスミドDNAあるいはExonucleaseI及びShrinp Alkaline Phosphatase処理されたコロニーPCR産物を、各ベクタープライマーとBigDye Terminatorversion 1.1(Applied Biosystems)でサイクルシークエンス反応した後、ABI PRISM 377 DNA Sequencer(AppiedBiosystems)を用いて塩基配列の解析を行った。pBTベクタープライマーにはpBT-FP(配列番号2:5’-TCCGTTGTGGGGAAAGTTATC-3’)及びpBT-RP(配列番号3:5’-GGGTAGCCAGCAGCATTC-3’)、pTRGベクタープライマーにはpTRG-FP(配列番号4:5’-CAGCCTGAAGTGAAAGAA-3’)及びpTRG-RP(配列番号5:5’-ATTCGTCGCCCGCCATAA-3’)をそれぞれ用いた。[実験]実験1:陽性クローンの希釈実験 液体培養中に異なるBait-Target DNAを保持する10,000クローンの大腸菌が存在し、その中に陽性を示すBait-Targetの組み合わせを持つクローンが1つだけ存在しているとする。ライブラリーのスクリーニングを行うためには、このような状況下で9,999個の陰性クローン中から1個の陽性クローンのみを選択できなければならない。まず、我々の目指しているスクリーニングシステムにおける重要なポイントの1つである液体培養での陽性クローンの選択が可能であるかどうかの検討を、液体培養中での大腸菌ツーハイブリッドスクリーニングの方法に準じて行った。 その為に、寒天プレート上で表1に示した組み合わせを用いて予め実施した大腸菌ツーハイブリッドにおいて陽性を示すことが確認されたbait-Targetの組み合わせであるGRB2-SOS1及びYAP65-53BP2と、pBTLGF2-pTRGGal11P(BacterioMatch E2Hのキットに付属しているポジティブコントロール)をレポーター株にコトランスフォーメーションして得られた形質転換体を、陰性を示す組み合わせであるpBT5(空ベクター)-pTRG5(空ベクター)の形質転換体で希釈した後(表2)、CTCK液体培地で培養した。OD600測定終了後、それぞれの培養からGenElutePlasmid MiniPrep Kit(SIGMA)を用いてプラスミドを抽出し、1%アガロースゲル電気泳動で解析した。 得られた結果を図4に示した。図4の A−Cを見ると、pBT5-pTRG5の形質転換体のみの培養(NC:ネガティブコントロール)が40時間付近までほとんど増殖していないのに対して、GRB2-SOS1、YAP65-53BP2、LGF2-Gal11Pはそれぞれ、およそ30,000個の陰性クローン中に約1個の陽性クローンしか存在しないと推測される培養V(表2)でも増殖していることが分かる。さらに、それらの液体培養から抽出したプラスミドを電気泳動すると、それぞれGRB2-SOS1、YAP65-53BP2、LGF2-Gal11P由来のプラスミドのみが観察された(図4)。すなわち、pBT5-pTRG5ではなく、GRB2-SOS1、YAP65-53BP2、LGF2-Gal11PのDNAを保持しているクローンのみが選択的に増殖したということになる。 以上の結果より、以上の液体培養の条件では、少なくとも約30,000個の陰性クローン中に1個しか存在しないような陽性クローンでも選択・検出できるということが確認された。実験2:KIAA cDNAショットガンライブラリーのスクリーニング(寒天プレート上) そこで、次に、表3に示すYAP65及びWWドメインを持つKIAAのそれぞれについてショットガンライブラリーを作製し、53BP2のPYモチーフをBaitに通常のプロトコール通りCTCK寒天プレート上でスクリーニングを行ったところ、53BP2のPYモチーフはすでに相互作用することが報告されているYAP65のWWドメインの他に、KIAA0093、KIAA1301のWWドメインとも相互作用することが明らかとなった(表4)。尚、その際、YAP65のライブラリーから得られた、cDNAがクローニングされていたベクターの配列をコードしていたクローン、KIAA1301のライブラリーから得られたoutof frameのクローン及び「挿入配列なし」のクローンは擬陽性であった可能性が高いと考えられる。実験3:KIAAcDNAショットガンライブラリーのスクリーニング(液体培養) 続いて複数種類の遺伝子を同じ液体培養液中でスクリーニングすることができるかどうか調べるために、図5に示すように53BP2のPYモチーフをBait、12遺伝子由来のKIAA cDNAショットガンライブラリーをTargetとして、液体培養でのE2Hスクリーニングを行った。表5に各ショットガンライブラリーに含まれるcDNAの遺伝子名、表6にそれぞれのライブラリーについて実際にスクリーニングしたクローンの数を示す。 スクリーニングにおける大腸菌の増殖曲線を図6に示すが、ネガティブコントロール(NC)よりも速く増殖したLibrary A - 1−4、B-1−4、C-3、D-1−4、G-1及び、特に増殖が速くなかったH-3については、液体培養からシングルコロニーを単離した後、各2クローンずつコロニーPCR産物をテンプレートとしてシークエンシングし、陽性を示したクローンのcDNA配列を解析した(表7)。 以上の結果から、YAP65、KIAA0093のWWドメインは液体培養でのスクリーニングにおいても陽性を示し、CTCK寒天プレート上での結果と一致した。このことから、液体培養でのcDNAショットガンライブラリーのスクリーニングは可能であることが確認された。 KIAA1301はCTCK寒天プレート上でのみ、KIAA0705は液体培養でのみ陽性を示した。表3及び表6に示してあるリダンダンシーは、cDNA上の同じ領域をコードするクローンがライブラリーの中にいくつくらい存在するかを示す値で、この値が大きいほど質の良いライブラリーということになる。今回、陽性クローンをできるだけ取りこぼさないよう、このリダンダンシーの値がなるべく大きくなるようにライブラリーを作製したが、KIAA1301とKIAA0705がそれぞれ陰性を示した方のライブラリーには陽性クローンが存在しなかったか、あるいは、ライブラリー中に陽性クローンは存在したが、スクリーニングサイズが足りず、検出出来なかった可能性が考えられる。 PIK3C2β、KIAA0236、KIAA1686は液体培養のスクリーニングで陽性を示した。しかしながら、PIK3C2βの154-433アミノ酸残基及びKIAA1686の568-842アミノ酸残基には予測されるドメインがないこと、さらにKIAA1686については増殖が遅かったこと、KIAA0236の1551-1696アミノ酸残基はDNA結合ドメインであるC2H2型のZnフィンガーであることなどから、これらについては擬陽性であった可能性がある。また、LibraryD-4 「挿入配列なし」のクローン及びcDNAがクローニングされていたベクター配列をコードしていたG-1のクローンも擬陽性であった可能性が高いと考えられる。 ところで、WWドメインは約35残基のアミノ酸からなるドメインであり、細胞内シグナル伝達に関与する蛋白質、構造蛋白質などさまざまな蛋白質に見られる結合モジュールで、プロリンに富むアミノ酸配列をリガンドとして認識し、そのリガンドへの特異性から5つのクラスに分類されている。今回調べたHECT型ユビキチンライゲースファミリーに属する3つの遺伝子、KIAA0093、KIAA1301、KIAA1625のWWドメインはPPxY型のリガンドに結合することからクラスIのWWドメインに分類されると考えられる。そして、Baitに用いた53BP2のPYモチーフ(PPPY)はクラスI型のリガンドである。実験の結果、53BP2のPYモチーフはKIAA0093、KIAA1301のWWドメインには結合したが、KIAA1625には結合しなかった。今回作製したcDNAショットガンライブラリーの中にKIAA1625のWWドメインを含む陽性クローンが偶然存在しなかった等の可能性もあるかも知れない。しかしながら、WWドメインとPYモチーフの間には相互作用の選択性があることが分かっているので(Pirozzi,G. et al. Identification of novel human WW domain-containing proteins bycloning of ligand targets. J. Biol. Chem. 272, 14611-14616. (1997).)、53BP2のPYモチーフがKIAA0093、KIAA1301のWWドメインに対して選択的に結合したとも考えられる。53BP2のPYモチーフがHECT型ユビキチンライゲースファミリーのWWP1、WWP2のWWドメインへ結合するという報告はあるが(同上)、KIAA0093、KIAA1301に結合するという報告は現在なされていない。 いずれにしても、本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステムによるスクリーニングによって、少なくともこのシステムにおいては53BP2のPYモチーフはHECT型ユビキチンライゲースファミリーに属するKIAA0093及びKIAA1301、さらに、KIAA0705のWWドメインに結合するということが示唆された。実験4:陽性クローンからの効率的な相互作用ドメイン情報収集法の構築 細胞内で発現しているmRNA由来の短いタグ配列を数珠上につなげてシークエンシングすることで、遺伝子の発現を網羅的に解析する方法として、既に記載したSAGEという方法がある。液体培養でのE2Hスクリーニングによって得られた陽性クローンから相互作用ドメインを効率的に同定するために、我々はこのSAGEを応用した同定方法の確立を目指した。 cDNAショットガンライブラリーのDNA断片が挿入されているSmaIサイト近傍の配列は図7Aに示すようになっている。タイプIISの制限酵素であるBsg Iは、図7Bに示すようにその認識部位から離れた配列を切断するため、BsgI消化することにより末端11 bpをタグ配列としてベクター側に残した形でDNA断片を切り出すことができる。さらに、そのベクターをセルフライゲーションさせることで、DNA断片の5’末端側と3’末端側の11bpずつがくっついた計22 bpのタグ配列となる。タグ配列を含む領域のPCR産物(602 bp)をBsrG I消化した後、70 bpのDNA断片を分離してライゲーション(コンカテネーション)することで、タグ配列がいくつも連なったコンカテマーが得ることができる。そして、このコンカテマーをシークエンシングし、タグ配列を解析することで、陽性クローンを同定することができる(図7C)。その際、タグ配列からはDNA断片に関する次の情報を読み取ることができる。1)KIAAの種類(計22 bpあれば、ショットガンライブラリーに含まれる12種類のKIAAのうちどれであるかを同定できると考えられる)、2) DNA断片の5’末端及び3’末端、すなわち、DNA断片がコードしているKIAAcDNA領域(さらに、5’末端の配列からインフレームであったかどうかがわかる)及び、3)TargetベクターにDNA断片が挿入されていた向き。 この方法の優れている点は2つある。第一に、複数の陽性クローンを含む液体培養から抽出したプラスミドを、単一クローン化することなしにそのままシークエンシングできるという点である。Bsg I消化するプラスミドが複数クローンの混合物であったとしても、それらは最終的にコンカテマーとして連なった形でクローニングされ、シークエンシングされるからである(図7C)。第二に、1度のシークエンシングで多くの情報を得られるという点である。コンカテマーはタグ配列を含む70bpのDNA断片からなっているので、1度にシークエンシングできる長さが500-600 bpであるとすると、7-8クローン分の情報が得られることになる。従って、コストのかかるシークエンシングの回数を減らすことができる。 具体的には、pTRG5に53BP2 PYモチーフをコードするDNA断片が導入されたプラスミドをBsg I消化して挿入配列を切り出し、DNABlunting Kitで末端平滑化処理した後、DNA Ligation Kit(TaKaRa)でプラスミドをセルフライゲーションさせた。その産物をテンプレートに、pTRG-FP2プライマー(配列番号6:5’-GGCTTCTACCCGAGTTCA-3’)及びpTRG-RP2プライマー(配列番号7:5’-GACGCTCAGTGGAACGAAAA-3’)と、LA Taqを用いてPCRを行なった。PCR産物をBsrGI消化した後、4% NuSieve GTG Agarose(BioProducts)ゲルで電気泳動し目的の70 bpのDNA断片を分離した。このDNA断片をLigationhighを用いてライゲーション(コンカテネーション)した後、1.5%アガロースゲルで電気泳動して、800-1,200 bpのDNA断片(コンカテマー)を分離した。Acc65Iサイトにこのコンカテマーをサブクローニングし、コロニーPCR産物をシークエンシングした。 得られた結果を図8に示す。図8のコンカテマーのレーンのバンドは70 bpのラダー上になっており、タグ配列を含む70 bpのDNA断片がコンカテネーションされていることが分かる。ここからコンカテマーを精製し、pBCSK(+)にクローニング後、シークエンシングした結果が図9になる。53BP2 PYモチーフのDNA断片の5’末端11 bpと3’末端11 bpがくっついて22 bpのタグ配列となったものがさらに3つ連なったコンカテマーを形成しているのが分かる。従って、本発明の同定方法によって大腸菌ツーハイブリッドシステムにおいて陽性となったクローンに含まれる遺伝子(DNA断片)を同定することが可能であることが示された。 本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステム及び同定方法は、簡便かつハイスループットな蛋白質間相互作用の解析を可能にし、ヒト蛋白質等の相互作用の網羅的、包括的なスクリーニングシステムを提供するものである。従って、ヒト遺伝子産物の機能解析の進展に寄与できるものと期待される。大腸菌ツーハイブリッドシステムの概要を示す。λオペレーターに結合するλcIとの融合蛋白質(Bait) とRNAポリメラーゼ(RNAP) αサブユニットN末端ドメインとの融合蛋白質(Target)に相互作用があった場合、レポーター遺伝子のプロモーター上にRNAポリメラーゼがリクルートされ、アンピシリン耐性遺伝子及びlacZ 遺伝子の転写が活性化される。Camr はクロラムフェニコール耐性遺伝子、Tetr はテトラサイクリン耐性遺伝子、Ampr はアンピシリン耐性遺伝子、lacZはベータガラクトシダーゼ遺伝子を示す。p15A及び ColE1 は複製のオリジン、PlacUV5,Plpp/PlacUV5,及び PlacZ はプロモーターである。本発明の大腸菌ツーハイブリッドシステムにおける一例の概要を示す。陽性クローンの希釈実験の結果を示すグラフである。GRB-SOS1、YAP65-53BP2、LGF2-Gal11Pの形質転換体をpBT5-pTRG5の形質転換体で希釈した後、培養した。NCはネガティブコントロール(pBT5-pTRG5の形質転換体のみ)を示す。OD600の測定を終了した時点で大腸菌からプラスミドを抽出した。陽性クローンの希釈実験における液体培養から抽出したプラスミドの電気泳動の結果を示す写真である。レーン4、7、10はそれぞれ培養 Vの液体培養から抽出したプラスミドを泳動した(200 ng/レーン)。他のレーンはコトランスフォーメーションに用いたプラスミドを泳動した(100ng/レーン)。Mはサイズマーカーを指す(スーパーコイルDNAラダー、Invitrogen)。1%アガロースゲルで電気泳動した後、0.5 mg/mlエチジウムブロマイドで染色した。KIAAcDNAショットガンライブラリーのスクリーニング(液体培養)の概要を示した模式図である。KIAA cDNAショットガンライブラリーのスクリーニングにおける大腸菌の増殖曲線を示すグラフである。1つのcDNAショットガンライブラリーにつき4wellの液体培養(上図では1〜4の数字であらわした)でスクリーニングを行った。液体培養1wellあたりの形質転換体数(スクリーニングサイズ)は表7に示してある。NC(ネガティブコントロール)はpBT5-pTRG5の形質転換体(形質転換体数1wellあたり29,068個)である。尚、各図における横軸は時間を示す。SAGEを応用した本発明の同定方法の概要を示した模式図である。A:pBT5、pTRG5のマルチプルクローニングサイトの配列を示す。全てのDNA断片はSmaIサイトにサブクローニングした。attB1、attB2はGatewayテクノロジーのリコンビネーションに関係する配列である。B: Bsg Iの認識サイトを示す。C:陽性クローンからの効率的な相互作用ドメイン情報収集法の概要を示す。コンカテマーの電気泳動の結果を示す写真である。タグ配列をライゲーションして得たコンカテマーの電気泳動像を示す。Mはサイズマーカーを指す(100 bp DNAラダー、Invitrogen)。1.5%アガロースで電気泳動後、エチジウムブロマイドでDNAを染色し、FluorImager(Molecular Dynamics)でバンドを検出した。コンカテマーのシークエンシングの結果を示す図である。A. pTRG5のSma Iサイトに53BP2のPYモチーフをコードするDNA断片がクローニングされたプラスミドを実験の材料に用いた。そのプラスミドのクローニングサイト近傍の配列及びDNA断片末端の配列(5'及び3'タグ配列:二重線および、点線)を示す。B.pBCSK(+)のAcc65 Iサイトにクローニングされたコンカテマーのシークエンシング結果を示す。BsrG Iサイトで連なって、3merのコンカテマーが形成されている様子が分かる。また、BsrGIサイトの近傍の塩基配列(星印*)の違いから5'及び3'タグ配列の方向が分かる。ベイト遺伝子及び標的遺伝子の各挿入部位の両側に、タイプIIs制限酵素による切断部位が挿入された該遺伝子内になるように、逆方向反復配列で該酵素の認識部位を有するベクターを使用し、液体培養にて陽性クローンを選択することを特徴とする、大腸菌ツーハイブリッドシステム。液体培養において、ベイト(bait)遺伝子と 標的(target)遺伝子との様々な組み合わせを有する複数種類のクローンから陽性クローンを選択することを特徴とする、請求項1に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。液体培養をマイクロタイタープレートで行う、請求項1又は2記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。ベイト遺伝子にコードされる蛋白質及びλリプレッサー(λファージのCI蛋白質:λcI)との融合蛋白質、並びに、標的遺伝子にコードされる蛋白質及びRNAポリメラーゼのαサブユニットとの融合蛋白質の相互作用の結果、レポーター遺伝子が発現することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。レポーター遺伝子が抗生物質耐性遺伝子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。抗生物質耐性遺伝子がアンピシリン耐性遺伝子又はストレプトマイシン耐性遺伝子である、請求項5記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。陽性クローンの選択に際して、培養開始時及びその後の培養中に少なくとも1回、抗生物質を培地に添加する、請求項5又は6記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。標的遺伝子がcDNAライブラリーをショットガン法で処理して得られるcDNA断片の混合物(cDNAショットガンライブラリー)に由来するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。タイプIIs制限酵素がBsgI である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。ベイト遺伝子及び標的遺伝子の各挿入部位の両側に、GateWay(商標)テクノロジーにおけるattB 配列が挿入されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステム。請求項1〜10のいずれか一項に記載の大腸菌ツーハイブリッドシステムで選択された陽性クローンに含まれるベイト遺伝子又は標的遺伝子を同定する方法であって、(1)タイプIIs制限酵素で各遺伝子を含むベクターを消化することにより各遺伝子の5’ 末端及び3’ 末端から一定の長さの塩基配列(夫々、「5’タグ」及び「3’タグ」という)を残して、それ以外の各遺伝子のDNA配列を切り出し、(2)各ベクターをセルフライゲーションしてそこに残された5’タグ及び3’タグを連結させて連結タグ配列を得、(3)該連結タグ配列を含む領域をPCRで増幅し、(4)得られたPCR産物を互いに連結してコンカテマーを形成し、(5)該コンカテマーを配列決定し、及び(6)該コンカテマーに含まれる連結タグ配列の塩基配列を決定する、ことから成る、前記方法。5’タグ及び3’タグが夫々11個の塩基から成る、請求項11記載の方法。配列表


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