タイトル: | 特許公報(B2)_埋設管の検査方法 |
出願番号: | 2004142850 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 29/12,G01N 29/44 |
皆木 卓士 野崎 善治 二宮 隆志 久田 伸一 鎌田 敏郎 JP 4598433 特許公報(B2) 20101001 2004142850 20040512 埋設管の検査方法 積水化学工業株式会社 000002174 皆木 卓士 野崎 善治 二宮 隆志 久田 伸一 鎌田 敏郎 JP 2003134674 20030513 JP 2003401957 20031201 20101215 G01N 29/12 20060101AFI20101125BHJP G01N 29/44 20060101ALI20101125BHJP JPG01N29/12G01N29/22 504 G01N29/00−29/52 G01B17/00−17/08 JSTPlus(JDreamII) 特開平03−156363(JP,A) 鎌田敏郎,他2名,衝撃弾性波によるコンクリート下水管路の劣化診断手法,下水道研究発表会講演集,2002年 6月20日,第39回,P.476−478 皆木卓士,他3名,弾性波によるコンクリート下水管路の劣化診断手法に関する基礎研究,コンクリート工学年次論文集,2002年 6月 8日,第24巻,第1号,P.1539−1544 舟橋孝仁,他7名,弾性波の波形特定に基づくコンクリート下水管路の劣化診断手法に関する基礎的検討,土木学会年次学術講演会講演概要集,2002年 9月 1日,第57回,P.V−181 1 2005189227 20050714 7 20070118 比嘉 翔一 本発明は、埋設管の劣化状態を検査する検査方法に関する。 下水管路や農水管路においては、埋設管の経年に伴う腐食摩耗や破損により陥没や漏水などの事故が増加してきている。このため適切な劣化度診断とその調査結果に基づく、適切な修繕・更新が望まれている。 下水管路や農水管路の診断調査においては、一般に、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するために、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付け、及び定量的な劣化レベルの進行度の把握が必要となる。 このため、従来では、目視やTVカメラを用いて外観調査を行い、必要となればコアを抜いて物性を調査するという方法が一般に行われている。しかし、このような手法では、目に見える劣化しか捉えることができず、管外周や内部の劣化については見逃されてしまい、劣化現象を適切に定量的に把握することが困難であった。また、定量的なデータを集めるためにはコアを大量に抜く必要があり、下水管路や農水管路の強度を損ねたり、作業に手間がかかるという欠点がある。 一方、コンクリート構造物で行われている検査方法の応用も考えられている。例えば、弾性波を利用したひび割れ幅及び深さを予測するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この検査システムによれば、弾性波の振幅の大きさや、弾性波のカウント数(所定以上の振幅のカウント数)の減少を利用しているため、埋設管が埋設されている周囲状況の影響を受けやすく、検査精度が悪いという問題がある。特開平10−142200号公報 本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたもので、下水管路や農水管路等を構築している埋設管の劣化位置を、埋設環境に影響されずに高精度で検査することが可能な埋設管の検査方法を提供することを目的とする。 本発明の検査方法は、埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、衝撃弾性波試験を行って検査対象管の伝播波を複数の位置で測定し、その各位置で得られる伝播波について周波数スペクトルを解析し、それら周波数スペクトルにおける一定の周波数区間に対する高周波成分または低周波成分の面積の比率から、劣化位置を特定することを特徴としている。この発明の検査方法によれば、衝撃弾性波試験による伝播波の計測を検査対象管の複数の位置で行っているので、劣化位置を特定することが可能となる。 衝撃弾性波試験を行って検査対象管の伝播波を複数の位置で測定し、その各位置で得られる伝播波について周波数スペクトルを解析し、それら周波数スペクトル一定の周波数区間に対する高周波成分または低周波成分の面積の比率を評価して劣化位置を特定することが可能になる。 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 <実施形態> 本発明の実施形態を以下に説明する。 この実施形態において衝撃弾性波試験は以下のようにして行う。 [入力方法] 入力装置としてはハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できるが、打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマや、バネ、ピストン等を用いて一定の力でハンマ、鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法が望ましい。インパルスハンマを使用した際は、入力情報の数値データを計測しておき、解析時に反映させることができるようにしておくことが望ましい。 特に、最大ピークの強度を評価する際の入力装置としては、例えばインパルスハンマのような入力情報を数値化できる打撃具や、一定の力で打撃を行うことができる打撃具を使用するのが望ましい。 [受信方法] 受信子としては加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。 これらの入力装置や受信装置は、水や酸性水、塩基性水に接触することがあるためステンレスなどの耐食性に優れた材料で形成されていることが望ましい。 [計測方法」 インパルスハンマなどで管内面に弾性波を入力し、一方で管内にセットした受信子により、検査対象管を伝播した弾性波をキャッチし、記録装置により波形記憶を行わせる(受信データの計測)。また、入射位置と受信位置とは相対的な位置が同じになるように設置するのが望ましい。このとき、計測は検査対象管に対して、幾つか位置を変えて複数の位置で計測する。 [解析方法] 解析方法としては、例えば、以下の2つの方法がある。 (1)各計測位置で計測した波形データをFFTし、周波数スペクトルを描かせる。これらのスペクトル分布において、一定の周波数区間に対する高周波成分の面積の比率([高周波区間のスペクトル/一定の周波数区間のスペクトル面積]×100%)、または、一定の周波数区間に対する低周波成分の面積の比率([低周波区間のスペクトル/一定の周波数区間のスペクトル面積]×100%)を評価することにより、劣化位置を特定することが可能となる。 (2)上記各計測位置で計測した入力と受信のデータについて、入力(打撃側)と出力(受信側)の関係を考慮した周波数スペクトルを描かせる。これらのスペクトル分布において、一定の周波数区間に対する高周波成分の面積の比率、または、一定の周波数区間に対する低周波成分の面積の比率を評価することにより、劣化位置を特定することが可能となる。この(2)の解析法を採用する場合、インパルスハンマの打撃力(入力情報)を数値化しておく必要がある。 ここで、入力と出力との関係を考慮した周波数スペクトルとは、例えば、入力のフーリエスペクトルをA(f)、出力のフーリエスペクトルをB(f)、伝達関数(周波数応答関数)をH(f)とすると、H(f)=B(f)/A(f)の関係で表され、このH(f)を描かせたのがここでの周波数スペクトルの分布となる。 <実施例1> [サンプル準備] JIS A 5303のB型1種の規格に基づいた、呼び径250mm(管長:2m)のコンクリート製ヒューム管(日本ヒューム管製の製品)を用いて、以下のようなサンプルを準備した。・サンプルT51:無処理品・サンプルT52:周方向クラック導入品 図1に示すような導入方法にてクラック幅0.15mmのクラックを導入したもの。なお、クラック幅は、管外周においてスケール付きルーペで拡大して測定した(5点の平均値)。 [入射及び受信位置] 入射装置と受信装置を図2(a)〜(d)に示す各位置X1〜X4に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。 [使用機器] 入射装置:インパルスハンマ 受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物をねじ込んで使用した。 受信用アンプ:キーエンス製GA−245 データロガー(記録装置):キーエンス製NR−2000 [計測条件] 上記したサンプルT51及びT52を図3に示すように砂上に設置した状態で計測を行った。 [データ解析] 上記入射装置(インパルスハンマ)の打撃力から入力フーリエスペクトルA(f)を求めるとともに、上記した受信子で受信・記録した伝播波の波形データから出力フーリエスペクトルB(f)を求め、それら入力フーリエスペクトルA(f)と出力フーリエスペクトルB(f)を用いて、入力と出力との間の伝達関数(周波数応答関数)H(f)(H(f)=B(f)/A(f))を求めて、入力と出力との関係を考慮した周波数スペクトルを各サンプルT51、T52の各計測位置X1〜X4ごとに描いた。それら周波数スペクトルの分布グラフを図4(a)〜(h)に示す。 次に、計測位置X1〜X4で得られた周波数スペクトルの高周波面積比率を下記の式を用いて算出した。その結果を図5に示す。 図5に示す結果から明らかなように、計測位置X1、X2ではサンプルT51とサンプルT52との間に有意差(大きな差)がないのに対し、計測位置X2、X3ではサンプルT51とサンプルT52との間に、はっきりとした有意差(はっきりとした差)が生じている。すなわち、計測位置X2と計測X3との間にクラックが存在することを特定できる。 なお、以上の例では劣化位置の特定に高周波面積比率を用いているが、これに替えて、計測位置X1〜X4で得られた周波数スペクトルの低高周波面積比率を下記の式を用いて算出して、劣化位置(クラックの存在位置)を特定するようにしてもよい。 ここで、この実施例1において、データ解析により周波数スペクトルの高周波面積比率(または低周波面積比率)を求める方法として、上記した装置で受信・記録した伝播波の波形データを用い、FFT解析プログラム(株式会社アプティック製)で周波数スペクトルを描き、その作成した周波数スペクトルの分布グラフについてピーク本数を求めるという方法を採用してもよい。 本発明の検査方法は、下水管路や農水管路などの埋設管において、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するに際して、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付け、劣化箇所の特定及び定量的な劣化レベルの進行度の把握を行うのに有効に利用できる。本発明の実施例で採用するクラック導入方法を模式的に示す図である。サンプルへの計測機器の配置を示す図である。本発明の実施例1のサンプル設置条件を模式的に示す図である。本発明の実施例1の計測結果を示す図で各サンプルの周波数スペクトルの分布グラフである。本発明の実施例1の計測結果を示す図で各サンプルの周波数スペクトルの高周波面積比率を示す図である。 T51〜T52 埋設管のサンプル 埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、衝撃弾性波試験を行って検査対象管の伝播波を複数の位置で測定し、その各位置で得られる伝播波について周波数スペクトルを解析し、それら周波数スペクトルにおける一定の周波数区間に対する高周波成分または低周波成分の面積の比率から、劣化位置を特定することを特徴とする埋設管の検査方法。