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タイトル:公開特許公報(A)_クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用
出願番号:2004135457
年次:2005
IPC分類:7,C12Q1/34,A61K45/00,A61P43/00,C12N15/09,G01N33/15,G01N33/50


特許情報キャッシュ

鍋島 陽一 遠山 治 JP 2005006647 公開特許公報(A) 20050113 2004135457 20040430 クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 廣田 雅紀 100107984 鍋島 陽一 遠山 治 JP 2003146953 20030523 7C12Q1/34A61K45/00A61P43/00C12N15/09G01N33/15G01N33/50 JPC12Q1/34A61K45/00A61P43/00 111G01N33/15 ZG01N33/50 ZC12N15/00 A 21 OL 28 特許法第30条第1項適用申請有り 2G045 4B024 4B063 4C084 2G045AA40 2G045BB01 2G045BB50 2G045BB51 2G045DA20 2G045DA36 2G045FA11 2G045FA18 2G045FB01 2G045FB03 2G045FB05 2G045FB12 2G045GC15 4B024AA01 4B024AA11 4B024BA12 4B024CA04 4B024CA07 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA03 4B024HA14 4B063QA01 4B063QA18 4B063QA19 4B063QQ35 4B063QQ67 4B063QQ75 4B063QR58 4B063QS28 4B063QS36 4B063QX02 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZC022 本発明は、クロソ(Klotho)蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用方法、特には、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法、及び、該方法を用いてクロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行う方法、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法に関する。 個体の老化機序の解明は、医学・生物学に残された最大の課題の一つである。老化は成熟期以後、加齢とともに各臓器の機能、あるいは統合する機能の低下が起こり、個体の恒常性を維持することができなくなり、最終的に死に至る過程を指す。このように老化は、広範囲に及ぶ多面的な現象であり、しかも、個体差が大きく、さらに環境や生活習慣の影響を受けることから、その実体を捉え、機序を説明することが困難であった。このような状況の中で、老化の実体を明らかにするために多くの独自の切り口を持った研究が進められてきた。例えば、(1)生物体を構成する細胞に着目したアプローチ、(2)生物個体の生理機能、免疫機能、内分泌系に着目したアプローチ、(3)実験動物の生存寿命に着目したアプローチ、また、(4)ヒトの早老症や老年性疾患を解析することで、老化の実体に迫ろうとするアプローチなどである。これらのアプローチは、それぞれ老化のある側面を捉えることを可能にしており、多くの老化に関する知識をもたらしたが、未だ老化の機序を一元的に説明するまでは至っていない。 その中にあって、黒尾らによって確立されたクロソ(Klotho)マウスは個体老化の実体、さらには機序の解析に一石を投じた。このマウスは、クロソ遺伝子の欠損によって、性成熟期に動脈効果、中膜や軟部組織の石灰化、肺気腫などヒト型老化様を呈し、短時間で死亡する。さらにクロソ遺伝子及び蛋白質は、主に腎臓遠位尿細管と脳脈絡叢に発現しているが、老化様表現型は発現部位を越え全身に及んでいる。これは、クロソの作用が組織−組織間を越えて作用しており、動物個体の恒常性を保ち、老化様表現型の発現を抑えていることを示している。このようにクロソの解析は、個体の恒常性の維持機構という立場で、老化の実体を理解するためのアプローチの一つと考え、研究が進められてきた。 クロソ遺伝子は、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化、生殖臓器の萎縮など、顕著かつ多彩な早期老化症状を呈するトランスジェニックマウス(クロソマウス)の外来遺伝子挿入部に存在し、その発現が低下するとマウスに前記老化症状を引き起こす原因遺伝子として同定された遺伝子である。クロソマウスは生後3週目までは野生型のマウスと同様に生育するが、その後は成長が止まり様々な老化の兆候を示す。6週齢になると、クロソマウスの活動性は野生型の50%程度に低下し、パーキンソン病様の歩行がみられる。性腺は萎縮しており不妊である。骨粗鬆症が顕著となるほか、大動脈弁、気管支、脳の脈絡叢に異所性の石灰化が生じる。動脈系では、血管内膜の肥厚や中膜の石灰化といった加齢に特徴的なメンケベルグ型の動脈硬化所見を示す。その他皮膚の萎縮や、肺気腫も観察されるようになる(WO98/29544、Nature, 390, 45, 1997)。クロソ遺伝子のcDNAの解析から、クロソ遺伝子はスプライシングの違いにより2種類のmRNAが転写され、該mRNAより2種類の蛋白質が翻訳される(以下、これら蛋白質を含め、クロソ遺伝子にコードされる蛋白質を「クロソ蛋白質」と呼ぶ)。 クロソ遺伝子変異が様々な老化症状を引き起こす機作や、クロソ蛋白質の分子機能はまだ明らかにされていない。クロソ遺伝子の発現は腎臓で高いが、激しい老化症状は、肺、骨、胃壁、皮膚等を含む全身臓器に及んでいる。このことから、その分子機能には何らかの分泌性の因子が存在し、作用を発揮していることが推定された(Nature, 390, 45, 1997)。クロソマウスとクロソ遺伝子発現トランスジェニックマウスとの交配実験および、膜結合型クロソ遺伝子のcDNAを組み込んだアデノウイルスベクターを用いてクロソマウス体内でクロソ蛋白質を発現させる実験等により、クロソマウスの老化症状発症の予防が達成されたことから、クロソ蛋白質の機能不全に由来する疾患の治療は、何らかの手段を用いてクロソ遺伝子を増強することにより達成されることが示唆されている(Nature, 390, 45, 1997、WO98/29544)。血管内皮細胞は、内皮依存性血管弛緩因子や内皮依存性血管収縮因子を放出して血管緊張を調節しているばかりでなく、血管内膜の透過性や血小板凝集にも深く関与しており、血栓性動静脈疾患の発症進展に重要な役割を演じている。 前記2種類のmRNAにコードされるクロソ蛋白質の内、一方の蛋白質はN末端のシグナル配列領域、細胞外ドメイン領域及びC末端の膜貫通ドメイン領域を有する構造を持つ1型膜蛋白(以下、「膜結合型クロソ蛋白質」と呼ぶ)であり、細胞外ドメインは細菌或いは植物のβ−グルコシダーゼに相同性を持つ2つのドメイン(KL1、KL2)より構成されている。これに対して、もう一方の蛋白は、N末端のシグナル配列領域とKL1ドメイン領域を有する分泌蛋白(以下、分泌型クロソ蛋白と呼ぶ)であることが明らかにされた(Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998)。 クロソ蛋白質は、約120kDaの1型膜蛋白質である。N末端側よりシグナル配列、β−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)に相同性のある2つの繰り返し領域を持つ細胞外領域(KL1、KL2)、1回膜貫通領域、短い細胞内領域を持つ。β−グルコシダーゼとは、高度に保存された酵素群であり、単糖−単糖間、単糖−オリゴ糖間及び単糖−非炭水化物間のグリコシド結合を加水分解するものであり、生体内において糖鎖の合成・分解、配糖体の合成・分解、細胞内シグナルの調節、解毒など生体維持に不可欠な機能を担っている。例として、ファミリー1グリコシダーゼ(glycosidase)には、リソソームβ−グルコシダーゼ(lysosomal beta-glucosidase)、細胞質β−グルコシダーゼ(cytosolic beta-glucosidase)、ラクターゼピロリジンヒドラーゼ(lactase philorizine hydrolase:LPH)、ミロシナーゼ(myrosinase)などがある。またファミリー2には、β−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、β−ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase:LacZ)、β−マンノシダーゼ(beta-mannosidase)などがある。多くのグリコシダーゼは2つの活性中心(求核基、酸塩基触媒基)を担うグルタミン酸残基を持ち、これらの働きによって酵素反応が2段階にわたって進む。 第一段階として、求核基が基質のアノマー炭素を攻撃し、酸塩基触媒基のカルボキシル基が糖−酵素(α−グリコピラノシル−酵素:alpha-glycopyranosyl-enzyme)中間体の形成を助ける。第二段階として、水分子による一般塩基触媒作用によりアノマー中心が攻撃を受ける。最終的に、グリコシド結合は切断される。興味深いことに、クロソ蛋白質は、活性に必要な2つのグルタミン酸残基の一方が、それぞれの領域で置換されている。KL1領域において、酸塩基触媒を担うグルタミン酸残基がアスパラギン酸に、KL2領域において求核基を担うグルタミン酸残基がアラニンまたはセリンに置換されている。このため、クロソ蛋白質が一次構造上に相同性を持つからといって、β−グルコシダーゼとして働くかは不明であった。しかし、植物が持つミロシナーゼは、酸塩基触媒を担うグルタミン酸がグルタミンに置換されているのにもかかわらず、S−グリコシド(S-glycoside)結合を持つグルコシノレート(glucosinolate)に対して、酵素活性が見られている。よってクロソ蛋白質も酵素として機能する可能性が考えられていた。 前記のとおり、クロソ遺伝子や該遺伝子がコードするクロソ蛋白質の欠失により、多彩な老化関連疾患が発症する機構や、クロソ蛋白質の機能については明らかにされていない点が多いが、その医薬等への利用については、特許公報上でいくつかの開示がなされている。再公表特許公報WO98/29544には、クロソ蛋白質のポリペプチド、該ポリペプチドを認識する抗体等を、早期老化症治療薬、成人病治療薬及び老化抑制薬等に用いること及びクロソ遺伝子を組み込んだベクター等を該老化抑制のための遺伝子治療に用いることが開示されている。WO00/27885には、血中での安定性を保持するために、クロソ蛋白質と免疫グロブリンとを結合させたキメラポリペプチドを老化症の予防・治療薬、或いは腎疾患、悪液質及び変形性関節炎等の予防・治療薬として用いることが開示されている。 また、特開2001−72607号公報には、クロソ遺伝子cDNAを組み込んだ組換えベクターを投与することにより、哺乳動物の血管内皮機能低下を伴う高血圧や動脈硬化等の疾患の予防・改善を図ることについて開示されている。 更に、関連する開示としては、WO01/005244には、二価の陽イオン金属を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物を食品や動物飼料に含有させて、摂取させることにより、ヒトや動物のクロソ蛋白質発現量増加又は減少に伴う疾患の予防又は治療を行うことについて開示されている。また、特表2003−514513号公報には、骨粗鬆症、皮膚障害、老化関連疾患、肺機能不全及び代謝症候群を含むさまざまな慢性疾患に対する素因と関連して、クロソ遺伝子中のリスク多型に関連する疾患の診断方法等について、開示されている。 上記のように、クロソ蛋白質やその遺伝子、及びその用途については、種々の開示がなされており、また、該クロソ蛋白質や遺伝子の検出方法やそれを用いたクロソ遺伝子の発現を増強させる化合物のスクリーニング方法等についての開示もなされているが(WO98/29544)、クロソ蛋白質の欠失が多彩な老化関連疾患をもたらす機構は、唯一、クロソ蛋白質の細胞外ドメインがβ−グルコシダーゼと相同性を持つこと以外は明らかになっていない。したがって、クロソ蛋白質の機能を明らかにすることが、生体においてクロソ蛋白質の機能に関与する物質を特定し、老化関連疾患に対するクロソ蛋白質の作用機構の解明を可能にし,更には、クロソ蛋白質の機能を増加させる物質の効果的な開発が可能になる。したがって、それらの解明が強く望まれていた。WO98/29544。WO00/27885。特開2001−72607号公報。WO01/005244。特表2003−514513号公報。Nature, 390, 45, 1997。Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998。 本発明の課題は、クロソ蛋白質の機能を明らかにし、クロソ蛋白質の測定法及びその利用方法を提供すること、特には、クロソ蛋白質が酵素活性を持つことを明らかにし、該特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法、更には、該方法を用いてクロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法、動物個体における特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うために、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供することにある。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、クロソ蛋白質の機能を明らかにすることで、クロソ蛋白質が関わっている個体老化制御機構を解明できる可能性があると考えた。クロソ蛋白質の一次構造に着目した時、クロソ蛋白質はβ−グルコシダーゼとして酵素活性を持つ可能性、或いは酵素活性は持たず、受容体などと結合することで機能する可能性が考えられた。しかし、クロソ蛋白質の直接の作用分子はわかっていないため、この2つの可能性について直接検証することは難しい。そこで、生体内作用分子の代わりに人工的に合成された類似物を用いることでin vitroにおいて傍証をとることは可能であることから、本発明においては、組換え型クロソ蛋白質を作製し、β−グルコシダーゼ活性測定に用いられている人工基質と反応させることで、クロソ蛋白質が酵素活性を持つ可能性を検証した。 この検証の中で、本発明者は、今回、その酵素活性の解析により、クロソ蛋白質が、4メチルウンベリフェル−グルクロニド(4Methylumberifel-Glucuronide:4-Methylumberifelyl-beta-D-glucuronide:4Mu-glucuronide)と反応し、β−グルクロニダーゼ活性(β‐glucuronidase)を持つことを解明し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明においては、該知見に基づいて、その特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法により、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を開発した。更に、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを解明したことによって、クロソ蛋白質が末端にグルクロン酸をもつ分子を切断し、活性化することが示唆され、そのことにより、動物個体における酵素特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うことが可能となり、この知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を開発した。このスクリーニング方法により、数多くの天然β−グルクルニドをスクリーニングした結果、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド(b-estradiol 3-b-D-glucuronide)、エストロン3βDグルクロニド(estrone 3-b-D-glucuronide)、及びエルトリオール3βDグルクロニド(estriol 3-b-D-glucuronide)などのステロイドβ−グルクロニドが、クロソ蛋白質によって加水分解されたことを見い出した。 従来、クロソ蛋白質の細胞外ドメインがβ−グルコシダーゼと相同性を持つという構造から生体分子末端のグルコースやガラクトースを切断する可能性が示唆されてきたが、これらは一般的な糖蛋白、糖鎖分子に含まれているものであり、酵素活性から特異的な基質を推定することは困難であると考えられてきた。しかし、本発明の知見により、アルカロイドやステロイドのような低分子量分子を含む特殊な分子がその生体内基質である可能性が示唆されたことから、クロソ蛋白質の酵素活性を指標にして生体内基質を同定することが可能であることが明らかとなった。また、本発明においては、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を開発した。 すなわち具体的には本発明は、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項1)や、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いる特異酵素活性の測定であることを特徴とする請求項1記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項2)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、β−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項3)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項4)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、天然基質のステロイドβ−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項5)からなる。 また本発明は、天然基質のステロイドβ−グルクロニドが、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドであることを特徴とする請求項5記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項6)や、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項7)や、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定が、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断のための測定であることを特徴とする請求項7記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項8)や、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断が、早期老化症状を呈する疾病の診断であることを特徴とする請求項8記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項9)や、早期老化症状を呈する疾病の診断が、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項10)からなる。 更に本発明は、早期老化症状を呈する疾病の診断が、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項11)や、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断が、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の診断であることを特徴とする請求項11記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項12)や、配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチド、又は該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドを用い、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することを特徴とする生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項13)や、請求項13記載のポリペプチド又は変異ポリペプチドを、イムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることを特徴とする請求項13記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項14)や、イムノグロブリンとしてイムノグロブリンFc領域を用いることを特徴とする請求項14記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項15)からなる。 また本発明は、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用した生体または生体細胞中の酵素基質の検出が、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項16)や、生体又は生体細胞中の酵素基質の検出が、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項17)や、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出が、天然基質としてのβ−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドの検出であることを特徴とする請求項17記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項18)や、クロソ遺伝子欠損モデル動物又は該動物由来の細胞に、被検物質を投与し、請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法によりクロソ蛋白質酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング方法(請求項19)や、クロソ遺伝子欠損モデル動物が、クロソマウスであることを特徴とする請求項19記載のクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング方法(請求項20)や、請求項19又は20記載のクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行うことを特徴とする早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニング方法(請求項21)からなる。 本発明においては、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)活性を持つことを解明し、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、本発明は、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法により、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を提供する。更に、本発明は、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを解明したことによって、クロソ蛋白質が末端にグルクロン酸をもつ分子を切断し、活性化することが示唆されたことにより、動物個体における酵素特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うことが可能となり、この知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を提供する。 本発明においては、本発明のスクリーニング方法を用いて、数多くの天然β−グルクルニドをスクリーニングし、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド(b-estradiol 3-b-D-glucuronide)、エストロン3βDグルクロニド(estrone 3-b-D-glucuronide)、及びエルトリオール3βDグルクロニド(estriol 3-b-D-glucuronide)などのステロイドβ−グルクロニドが、クロソ蛋白質によって加水分解されることを見い出した。また、本発明においては、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供する。 本発明は、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定してクロソ蛋白質酵素活性を測定することよりなる。該クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定は、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いて、行うことができる。該酵素基質を用いたβ−グルクロニダーゼ活性の測定は、それ自体公知の方法を用いることができる。β−グルクロニダーゼ活性の公知の測定方法としては、発色基質を用いて、β−グルクロニダーゼの酵素反応の結果、遊離する発色物質を比色測定する方法を挙げることができる。例えば、発色基質としてp−ニトロフェニルグルクロニドを用いた比色測定法(赤堀四郎、沖中重雄監修「臨床酵素学」朝倉書店、397−398)を挙げることができる。発色基質としては、その他に、フェノールフタレイン、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、p−クロロフェニル、8−ヒドロキシキノリン、1−O−ヒドロキシフェニル−アゾナフトール、6−ブロム−2−ナフチルなどの発色基を有するグルクロニド等を用いることができる。 望ましいβ−グルクロニダーゼ活性の測定方法として、蛍光基質を用いて測定する方法が挙げられる。蛍光測定方法として、4−メチルウンべリフェリル−β−D−グルクロニドを蛍光基質に用いる方法を挙げることができる(J. Biol. Chem., 254, 14, 6588-6597, 1979)。また、生体内基質である可能性が示唆されるβ−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドのような低分子量分子を、望ましい酵素基質として用いることができる。更に、近年、迅速かつ高感度な測定方法として開発されたルシフェリン−ルシフエラーゼ発光反応を利用する測定方法を用いることができる。例えば、D−ルシフェリン−O−β−D−グルクロニドのような発光基質を用いた測定方法を用いて測定することができる(特開2000−270894号公報)。該β−グルクロニダーゼ活性の測定方法を用いて、クロソ蛋白質の酵素活性の測定を行うには、それ自体既に公知の手法及び装置を使用して、実施することができる。 本発明においては、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定して、生体又は生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質の生成を測定することができる。クロソ遺伝子の発現の低下により、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病のような早期老化症状を呈する疾病を発症することが知られており、また、クロソ遺伝子の発現の低下により、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞のような血管内皮機能劣化に起因する疾病を発症することが知られている。したがって、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を用いて、クロソ蛋白質生成の検知・測定を行うことにより、生体又は生体細胞中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、これらの疾病の診断を行うことができる。生体又は生体細胞中のクロソ蛋白質生成の測定を行うには、生体中より、適宜の方法により試料を採取し、該試料及び採取した生体細胞に、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を適用して、クロソ蛋白質の生成を測定することができる。 また、本発明においては、クロソ蛋白質のポリペプチドを用い、該ポリペプチドと、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して、生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することにより生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行うことができる。本発明で用いられるクロソ蛋白質のポリペプチド及びその遺伝子は既に取得され、その構造が明らかにされている(Nature 390, 6655, 45-51, 1997、Biochem. Biophys. Res. Commun. 242, 3, 626-630, 1998)。マウスのクロソ蛋白質及び該クロソ蛋白質をコードする遺伝子のアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのデーターベースに、アクセッション番号 SEG_AB010089Sとして登録されており、該アクセッション番号により検索することができる。また、ヒトのクロソ蛋白質及び該クロソ蛋白質をコードする遺伝子のアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのデーターベースに、アクセッション番号 AB009666及びAB009667として登録されており、該アクセッション番号により検索することができる。 これらのクロソ蛋白質をコードする遺伝子は、エクソン1〜5の5つのエクソン部を有し、該エクソン部によってコードされるクロソ蛋白質のポリペプチドのうち、β−グルコシダーゼと構造的に相同性を有する細胞外ドメイン部分は、ヒトの遺伝子については、NCBIのデータベースに登録されているアクセッション番号:AB009666 エクソン1の2081〜2899番目、AB009667 エクソン2の12418〜12928番目、エクソン3の13698〜13966番目、及びエクソン4の19322〜19417番目によってコードされる部分である(配列表の配列番号1、そのアミノ酸配列を配列番号2に示した。)。また、マウスの遺伝子については、NCBIのデータベースに登録されているアクセッション番号:SEG_AB010089S1 エクソン1の687〜1511番目、SEG_AB010089S2 エクソン2の141〜651番目、エクソン3の2034〜2302番目、及びエクソン4の7906〜8001番目によってコードされる部分である(配列表の配列番号3、そのアミノ酸配列を配列番号4に示した。)。本発明においては、該クロソ蛋白質のポリペプチドを調製し、該ポリペプチドと、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用し、生体又は生体細胞中の酵素基質の検出を行うことができる。本発明において用いられるクロソ蛋白質のポリペプチドの調製は、この分野で通常用いられている遺伝子工学的手法を用いて行うことができる(WO98/29544)。 また、本発明における、クロソ蛋白質酵素の生体又は生体細胞中の酵素基質の検出には、クロソ蛋白質の変異ポリペプチドを用いることができる。該変異ポリペプチドとしては、該配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドが挙げられる。該変異ポリペプチドの調製は、この分野で通常用いられている遺伝子工学的手法を用いて行うことができる(WO98/29544)。該変異ポリペプチドを用い、該変異ポリペプチドと生体または生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して、該酵素の酵素基質を検出し、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う。 該生体中のクロソ蛋白質作用物質をスクリーニングするに際して、クロソ蛋白質のポリペプチド或いはその変異ポリペプチドの生体又は生体細胞中での安定性を保持するために、イムノグロブリンFc領域のようなイムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることができる。また、クロソ蛋白質のポリペプチドやその変異ポリペプチド或いはキメラポリペプチドを生体又は生体細胞中に導入するには、該ポリペプチドをコードする遺伝子の形で、生体又は生体細胞中へ導入することができる(WO00/27885)。生体または生体細胞中の物質とクロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性との酵素反応を利用した酵素基質の検出は、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出によって行うことができる。 本発明は、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を用いてクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性測定法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。該スクリーニング方法を行うには、クロソ遺伝子欠損モデル動物又は該動物由来の細胞に、被検物質を投与し、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法により、クロソ蛋白質酵素活性を測定し、生体又は生体細胞中でのクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定することにより行うことができる。クロソ遺伝子欠損モデル動物は、公知の方法により、モデル動物のクロソ遺伝子をノックアウトすることによって作製することができるが、既に公知のクロソマウスのような動物を用いることができる。該クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングにより、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病である早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。<クロソ蛋白質の機能の解明> 本実施例においては、クロソ蛋白質の機能を明らかにするために、組換え型クロソ蛋白質を作製し、該蛋白質をβ−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)活性測定等に用いられている人工基質と反応させることで、クロソ蛋白質の酵素活性を検証した。 [材料及び方法](発現ベクターの構築)マウスクロソ蛋白質及び、該蛋白質がコードされているDNA配列は、NCBIのデータベースに登録されている(アクセッション番号:SEG_AB010089S)。また、マウスクロソ蛋白質の膜貫通領域は、クロソDNAエクソン部分であるエクソン1〜5のうちのエクソン5に存在しており、NCBIに登録されているDNA配列(アクセッション番号:SEG_AB010089S3)の第895番目〜964番目(70bp)である。 組換え型蛋白質を得るために、クロソ(Klotho)膜貫通型領域よりC端側(マウスクロソDNAエクソン5部位の第820番目以降)を削除し、ヒトIgG1Fc領域を結合させたクロソ−Fc領域融合キメラ蛋白を発現するベクターを作製した。また、コントロールとしてラットLactose-Philorizin hydrolase(LPH:NCBIアクセッション番号:X56747)の膜貫通領域(ラットLPH DNAの第5632番目〜5695番目:64bp)よりC端側(ラットLPH DNAの第5632番目以降)を削除し、ヒトIgG1Fc領域を結合させたLPH−Fc領域融合キメラ蛋白を発現するベクターを作製した。なお、ラットLPHは前駆体領域を含み、融合キメラ蛋白質の作製には、ラットLPH DNAの第2548番目〜5632番目(3085bp)の配列を用いた。 次に、それぞれのcDNAを鋳型として、DNA断片をPCRにて増幅し、これをベクター構築に用いた。なお、PCRに用いたオリゴプライマー(国際試薬株式会社に合成を依頼)を、以下の表1に示した。 PCR反応は次の通りである。それぞれのDNA断片を、以下の条件で作製した。鋳型cDNA 100ng、0.3μm プライマー、0.2mM 各dNTPs、1mM MgSO4、20mM Tris−HCl pH7.5、7.5mM DTT、1unit KOD plus DNA polymerase(TOYOBO社より購入)。サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700;Applied Biosystemsより購入)の設定は、変性94℃ 15秒、アニーリング60℃ 30秒、伸長68℃ 1〜6分、20回で行った。これらのPCR断片は、クローニングベクター(PSP72;Promega社より購入、pBlueScript KS+;stratagene社より購入)に挿入し、サンガー法によって、それぞれの配列を解析した。配列解析は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kitを用いた(Applied Biosystemsより購入)。 (KL−Fcベクター(KLFc/pYT)の構築) 全長型マウスクロソcDNAから制限酵素を用いてEco RI-Xba I断片を切り出し、これをPSP72ベクターに挿入し、PSP72−KL fullを作製した。PSP72−KL−EP(mKL−S1、mKL−AS1由来のPCR断片)より制限酵素を用いてEco RI-Pst I断片を切り出し、PSP72−KLのEco RI-Pst Iサイト間へ挿入し、PSP72−KL full2を作製した。Fsp I-Bam HI断片(mKL−S2、mKL−AS2由来PCR断片)をPSP72−KL full2の同サイトへ挿入し、PSP72−KL(−TM)を得た。Fc断片(Bam HI-Xba I)をPSP72−KL(−TM)の同サイトへ挿入し、PSP72−KLFcを得た。PSP72−KLFcをXho Iで消化し、T4 DNA polymerase(TAKARA社より入手)で平滑化した後、Eco RVで消化しKLFc断片を切り出した。これを、Eco RVで消化し、アルカリホスファターゼ(TAKARA社より入手)で脱リン酸化処理した部位へ挿入し、順方向のものを選び、KLFc/pYTとした。 (LPH−Fcベクター(LPH−Fc/pcDNA3)の構築) pS34Tベクター(LPHβ領域に相当;Jean-Noel Frenud氏より入手)より、Kpn I-Acc IIIを切り出した。予めPCR断片(LPH−S1〜LPH−AS1由来)が挿入されているpBlueScript KS+(stratagene社より購入)のKpn I-Acc IIIサイトへ挿入し、pBSII/LPH(−TM)を得た。Fc断片(Bam HI-Xba I)をpcDNA3(Invitrogen社より入手)のBam HI-Xba Iサイトへ導入した。このベクターに、pBSII/LPH(−TM)より切り出したKpn I-Acc III断片をKpn I- Bam HIサイトへ挿入し、LPH−Fc/pcDNA3を得た。 (細胞への遺伝子導入)CHO細胞を次のような条件で培養した。MEMα(Sigma社より購入)、1%FCS(BioWest社より購入)、1% penicillin/streptmycin(Sigma社より購入)、2mM L-glutamine(Sigma)。CHO細胞にKLFcまたはLPHFcを安定発現させるためにLipofectAMINE plus(Invitrogen社より購入)を使って、40μgのDNAを1×108個/10cm plateの細胞に、導入した。2日間培養後、KLFcに関しては250μg/ml Hygromicin(Sigma社より購入)で選択した後、1〜10mM mthotrexate(Sigma社より購入)で引き続き選択を行った。LPHFcに関しては、1mg/ml G418(Invitrogen社より購入)で選択を行った。 (組換え型蛋白質の精製)KLFc及びLPHFcを安定発現するCHO細胞をMEMα培地(0.5%ultra low IgG fetal bovain serum、1% penicillin/streptmycin、2mM L-glutamineを含む)中で3日間培養した。その後、培養液を回収し、遠心(15,000g、60分、4℃)及びろ過フィルター(Sterivac-GP10,0.22μm;Millipore社より購入)によって死細胞等の不要物を取り除いた。その後、二段階にわたって限外ろ過(viva flow 50及びviva spin 20, poresize 100kDa;sartorius)を行った。得られた濃縮培養上清中のKLFc及びLPHFcは、ELISAで検定した。ELISAは、次のように行った。ヤギ抗ヒトIgG抗体(American Qualex社より購入)を結合させた96well plate(Falcon社より購入)を作製した。これらに、段階希釈した濃縮上清を入れて、室温にて反応させた。一次抗体としてHRPの結合したヤギ抗ヒトIgG抗体(BIOSOUCE社より購入)、発色試薬o-phenylendoamine dihydrochloride(OPD;Sigma社より購入)、発色反応停止試薬 4N H2SO4を順に加え、最後にmicroplate reader(Bio Rad社より購入)で検出した。標準物質には、精製ヒトIgG(ATENS RESEARCH AND TECHNOLOGY社より購入した)を用いた。 濃縮培養上清は、Sepharose beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を用いて2回前処理(非特異的なバックグラウンドを除く)を行った。濃縮培養上清を新チューブに移した後、rProteinA fast flow beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を加えた。4℃で2時間以上結合反応を行った後、ビーズを0.1M クエン酸ナトリウムバッファー〔0.2M NaCl、0.01%Tween20及びプロテアーゼ阻害剤(complete, BOERINGER MANNHEIM社より購入)を含む〕で5回洗った。その後、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーで2回洗い、これを酵素活性測定実験で使用した。 (ウエスタンブロット)濃縮培養上清は、Sepharose beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を用いて2回前処理(非特異的なバックグラウンドを除く)を行った。濃縮培養上清を新チューブに移した後、rProteinA fast flow beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を加えた。4℃で2時間以上結合反応を行った後、ビーズを0.1M クエン酸ナトリウムバッファー〔0.2M NaCl、0.01% Tween20及びプロテアーゼ阻害剤(complete, BOERINGER MANNHEIM社より購入)を含む〕で5回洗った。その後、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーで2回洗い、これを酵素活性測定実験で使用した。 (ゲル染色)SDS−PAGEの後、0.05% SYPRO Orange(Bio Rad社より購入)を含む7.5%酢酸中で16時間染色した。染色したゲルは、7.5%酢酸及び滅菌した脱イオン水で洗った後、STORM(blue filter使用;molecular dynamics)にて解析した。 (酵素アッセイ)基本条件を以下に示す。基質として0.5mM 4-methylumberifel-glycosides(グルクロニド、グルコシド、ガラクトシド、N−アセチル−グルコサミニド、N−アセチル−ガラクトサミニド、D−フコシド、マンノシド)(4Mu−glucuronide)を用いた。バッファーは、0.1M クエン酸ナトリウム(pH5.5)、0.05M NaCl、0.01% Tween20を用い、クロソとして10μg KLFcを、ネガティブコントロールとして、10μgのヒトIgG1をCHO由来の培養上清と混ぜて用いた。また、コントロールとしてラットLPHFcを用いた。β−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)は、アーモンド由来β−グルコシダーゼ(Sigma社より購入)、及びウシ肝臓由来β−グルコシダーゼ(Sigma社より購入)を用いた。反応温度は37℃、反応時間は0〜3時間の条件下で実験を行った。これらの実験は、100μgの反応系で、96well plateを用いて酵素反応を行った。反応のモニターは、Multilabel counter(ARVO sx;PerkinElmer社より購入)を用い、蛍光強度(emission;470nm、excitation 360nm)を測定することで行った。酵素活性は、得られた蛍光強度を反応生成物濃度に換算して表した。これは、既知濃度の4-Methylumbelliferoneから検量線を作成し換算した。 (速度定数の計算)基質は、0.0125mMから3.2mMの範囲で系列希釈を行った。KLFcは、20μg用いた。30分ごとに、一部サンプリングを行い、0.25M Na2CO3を加えることで反応を停止した。これらのサンプルを、Multilabel counterを用いて、蛍光強度(emission:470nm、excitation:360nm)を測定した。酵素活性は、既知濃度の4-Methylumbelliferoneを基にして、得られた蛍光強度を反応生成物に換算して表示した。得られた結果をLineweaver-Burkプロットに従い、Km値及びVmax値を計算した。 (pHの影響) 基本条件に基づき、pH4.5〜6.0までは、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0までは、0.1M リン酸ナトリウムバッファーを用いて、クロソ蛋白質のpHによる影響を調べた。 (阻害剤の影響)市販されているβ−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)の阻害剤の影響を調べた。β−グルコシダーゼに対する阻害剤として、Conduritol B epoxide, 1-deoxynojirimycinを、β−グルクロニダーゼに対する阻害剤として、D-Saccharic acid 1,4-lactone and Taurocholic acidを用いた。基本条件にこれらの阻害剤を0.1μM〜1mMの範囲で添加した。 (金属イオンの影響)基本条件下で、二価の金属イオン(Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Zn2+)を0.1mM〜1mMの範囲で添加した。 (反応温度の影響)30℃〜80℃の範囲で、基本条件に基づいて反応させた。 [試験の結果](組換え型クロソ蛋白質の作製及び精製)組換え型クロソ蛋白質を作製するために、マウスクロソ蛋白質の膜貫通領域、細胞内領域を削除し、そこにヒトイムノグロブリン(IgG)Fc領域を結合させた組換え型プラスミドを作製した。また、コントロール用酵素としてクロソ同様に1型膜蛋白質で、2回繰り返し構造を持つグルコシダーゼであるLPHを、クロソと同様に加工した。これらのプラスミドをCHO細胞に導入し、安定発現株を得た。図1にこれらの細胞から回収した培養上清をウエスタンブロットで解析した結果を示した。図1において、培養後のCHO細胞から培養上清を回収後、レーン1に非ベクター、レーン2にKLFc、レーン3にLPHFcをそれぞれ泳動し、実施例に基づいてイムノブロッットにより解析した。なお、図中のAは、クロソ蛋白質に対するイムノブロッット解析を、Bは、Fcタグに対するイムノブロッット解析をそれぞれ示した。分子量マーカーを左側に表示した。 約150kDa(KLFc)及び160kDa(LPHFc)にそれぞれバンドが認められたことから、目的の蛋白質が作られていることが確認された。そこで、この蛋白質を用いて、取扱説明書に従い、組換え型蛋白質を回収した。これら濃縮培養上清中の組換え蛋白質の濃度は、抗ヒトIgG1抗体によるサンドイッチELISAによって求めた。精製したKLFc、LPH Fc又はヒトIgGを含むCHO細胞培養上清を実施例に基づいて還元条件下で変性させたのちSDS−PAGEを行った。ゲルはSYPRO Orangeで染色した。なお、レーン2にKLFc 0.2μg、レーン3にLPFc 0.2μg、レーン4にコントロールとしてヒトIgG1 0.2μgを含むCHO上清培地、レーン5〜8には、段階的にBSA(0.0625〜0.5μg)を除いた条件下で培養したレーン1〜4と同様の蛋白質を表示した。図2に、回収したKLFc、LPHFcを約200μgずつSDS−PAGEにより展開し、その後SYPRO Orangeによりゲルの染色をした結果を示す。図1と同様な位置にバンドが確認された。レーン4〜7は系列希釈したBSAである。これらをもとにアプライされている組換え型蛋白質の量を計算すると、1レーンあたり約200ngとなる。これは、ELISAによって求めた濃度を支持している。 (クロソ蛋白質の酵素活性の有無)クロソ蛋白質が酵素活性をもつ可能性を検討するために、作製したKLFcと様々な蛍光性人工基質4Mu−glycosidesと反応させた。すなわち、実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を3時間インキュベートした。なお、パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した(図3)。白四角は、Glc、白ひし形はGal、白丸はGlcNAc、白三角はGalAc、黒四角はGlcA、黒ひし形はD−Flc、黒丸はMan、黒三角はXlyをそれぞれ示す。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。KLFcは4−Mu−glcAと反応し、他の基質に関しては、ほとんど活性を示さないことが明らかになった(図3A、表2)。別個に作製したKLFc安定発現細胞株から回収した様々な濃度のKLFcを用いて、同様の結果が得られるか調べた。その結果、KLFc量依存的に4−Mu−glcAと反応したことから、KLFc依存的に酵素活性を示すことが明らかになった。 (酵素パラメーターの計算)図4に示すように、反応生成物濃度[P]と時間をプロットした。なお、この実施例においては、組換え蛋白質を、0.0125〜3.2mMの一連の濃度勾配の4−Mu−GlcAでインキュベートした。パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。白四角は、3.2mM、白ひし形は1.6mM、白丸は0.8mM、白三角は0.4mM、黒四角は0.2mM、黒ひし形は0.1mM、黒丸は0.05mM、黒三角は0.025mMをそれぞれ示す。 それぞれの基質濃度における反応初速度V0を傾きより求めた。初期基質濃度[S]0、反応初速度V0を図6に示すようにLineweaver-Burkプロットによりプロットし、得られた直線からKm、Vmaxを求めた(この図では、pH5.5下で200倍超の濃度の4−Mu−GlcAを用いてKLFcの酵素活性を測定し、X軸に基質の初期濃度の逆数(1/[S]0;μM-1)を、Y軸に初速度の逆数(1/V0;h×μM-1)を表示した。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った)。この結果を表3に示した。一般にKmは基質濃度と反応初速度に相当するので、ここで得られた値は、Michaelis-Mentenの式に一致した(図5)。図5において、基質の初速度及び初期濃度をグラフ化し、X軸に基質の初期濃度([S]0;μM)を、Y軸に初速度(V0;μM/h)を表示した。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。 (pHの影響)クロソ蛋白質の最適pHを求めるために、pH4.5〜6.0までの低pH域では、クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0では、リン酸ナトリウムバッファーを用いて、実験を行った。pH5.5下で4−Mu−GlcAを用いてKLFcの酵素活性を測定した。pH4.5〜6.0までは、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0までは、0.1M リン酸ナトリウムバッファーを用いた。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。その結果、クロソはpH5.5付近で最も高い酵素活性を示すことが明らかになった(図7)。 (金属イオンの影響)β−グルコシダーゼの中には、二価の金属イオンにより活性が増強する酵素が知られている。数種類の金属イオンを用いることにより、クロソ蛋白質の、二価の金属イオンに対する反応性を検討した。Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+を0から1mMの範囲で用いたところ、酵素活性は金属イオンによる影響を受けないことが明らかになった。 (温度の影響)実施例に基づいて、種々の温度条件下でKLFcの酵素活性を解析した。定常状態の間、0.1M クエン酸バッファー(pH5.5)中のKLFcを種々の温度条件下で30分間培養し、酵素活性を解析した。白四角は、30℃、白ひし形は40℃、白丸は50℃、白三角は60℃、黒四角は70℃、黒ひし形は80℃をそれぞれ示す。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。酵素反応の最適温度を調べたところ、60℃までは温度依存的に反応が起こる(図8)。70℃以上になると最初の30分は反応が見られるが、30分を越えると急激に反応が遅くなることから、最適温度が、60℃前後にあることが示唆された。 (阻害剤の影響)人工的に合成された阻害剤の影響を調べた。実施例に基づいてKLFcの酵素活性をβ−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼに対する阻害剤の種々の濃度下で解析した。パネルAはD-saccharic acid、BはTaurocholic acid、Cは1-deoxynojirimycin、DはConduritol B epoxideを示した。四角は、KLFc、ひし形はβ−グルコシダーゼ、丸はβ−グルクロニダーゼをそれぞれ示し、阻害剤を含まないものをコントロールとした。この結果を図9に示す。まず、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼに対して競合的阻害を示すD-Saccharic acid 1,4-lactoneやTaurocholic acidを用いた。ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼと同様に酵素活性が阻害された。また、アーモンド由来β−グルコシダーゼに対して阻害活性を示す競合的阻害剤1-deoxynojirimycinやcatalytic site-directed covalent type阻害剤Conduritol B epoxideを用いて、同様の実験を行った。1-deoxynojirimycinは最大10mMまで用いたが、ほとんど阻害されなかった。Conduritol B epoxideは、弱いながらも、阻害を受けた。 [試験結果の解析](酵素活性について) 本実施例により、クロソ蛋白質は酵素活性を持つことが示された。クロソ蛋白質の基質特異性は非常に高く、4−Mu−グルクロニドのみと反応した。従って、クロソ蛋白質は、β−グルクロニダーゼであると推定された。クロソ蛋白質はB. Henrissaらの一次構造に基づく分類では、ファミリー1−グリコシダーゼに分類される。このファミリーの中には、β−グルクロニダーゼ活性を示すものは今まで知られておらず、この結果は、1−グリコシダーゼの分類法の概念を見直す必要があることを示唆している。クロソ蛋白質の酵素活性は、β−グルクロニダーゼに対する阻害剤で抑制される。このことからも、クロソ蛋白質の酵素活性が、β−グルクロニダーゼであることが支持される。古典的にはβ−グルクロニダーゼ活性を持つβ−グルコシダーゼとして、ファミリー2−グリコシダーゼに分類されるβ−グルクロニダーゼが知られている。 クロソ蛋白質は、この酵素と全く一次構造上は相同性がないにもかかわらず、このような活性をもつのはクロソ蛋白質の立体構造がβ−グルクロニダーゼとしての活性を持ちうる構造をとっている可能性がある。また、クロソ蛋白質は酵素ではなく、何らかのターゲット分子と結合することによって機能している可能性があった。そこで、3H−グルクロニドを用いて、結合が見られるかどうかを検討したが、全く結合が見られなかった。このことからも、クロソ蛋白質は酵素活性に基づいて機能を発揮する分子であることが確認された。 (クロソ蛋白質の生化学的所見)4−Mu−GlcAを用いてクロソ蛋白質の酵素パラメーターを求めた。先行研究で知られているヒト胎盤由来、血清由来β−グルクロニダーゼのKm値は、それぞれ0.045mM、0.06mMであり、これらと比べるとクロソ蛋白質のKm値は大きい。よって、既知のβ−グルクロニダーゼに比べ、基質に対する親和性は低い。また、クロソ蛋白質の比活性は、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼの約1/30、LPHの1/3である(LPHについては本実験の結果よりβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを初めて確認した)。クロソ蛋白質は、活性の弱い酵素であると考えられる。 更に、クロソ蛋白質の酵素活性は、pH5.5で活性が最大になる。β−グルクロニダーゼの酵素活性はクエン酸バッファーにより抑制的に影響を受けるが、クロソ蛋白質の活性はクエン酸バッファーにより影響を受けない。調べた限りにおいて、クロソ蛋白質の酵素活性は金属イオンの影響を全く受けない。クロソ蛋白質は、胆汁酸β−グルコシダーゼやα−マンノシダーゼとは異なり、金属イオン非要求性のグリコシダーゼであると考えられる。クロソ蛋白質の酵素活性は、β−グルクロニダーゼの阻害剤だけではなく、一部ではあるがβ−グルコシダーゼの阻害剤の影響を受ける。これは、従来知られているβ−グルクロニダーゼとは異なる点であり、クロソ蛋白質の生化学的性質の特徴を示す。 (クロソ蛋白質の生理活性について)クロソ蛋白質は、酵素領域を細胞外に持つため、細胞自律或いは細胞非自律的に標的前駆体分子を活性化していると推定され、活性化された分子がクロソマウスの変異表現型を抑えることに作用していると推定される。該クロソ蛋白質の標的分子としては、β−グルクロニドを持つ分子が想定される。生体内でβ−グルクロニドを持つものとしては、プロテオグリカンが考えられる。プロテオグリカンは、アミノ糖とウロン酸との二糖の繰り返し構造を持つ。このウロン酸としてβ−グルクロニドが使われている。また、解毒作用の一種であるグルクロン酸抱合により修飾を受けたグルクロン酸抱合体がある。これは脂溶性の高い物質を水溶性に変え排出しやすくするものである。他に、ステロイドホルモンや糖脂質などにも、β−グルクロニドが結合したものが見られる。植物性のフラボノイドやアルカノイドにもβ−グルクロニドが結合している。幾つかの既知の分子について例を挙げた。今回得られた知見から、β−グルクロニドを持つ生体活性因子を探すことでクロソタンパク質の直接の作用点を、明らかにすることができる。<クロソタンパク質の天然基質のスクリーニング>クロソタンパク質の天然基質のスクリーニングのために、以下のグルクロニドについて試験を行った:すなわち、天然基質のスクリーニングに、ステロイドグルクロニド(β−エストラジオール3−β―グルクロニド(estradiol-3GlcU)、β−エストラジオール17−βグルクロニド(estradiol-17GlcU)、アンドロステロングルクロニド(androsterone-GlcU)、エチオコラン−3α-ol-17−oneグルクロニド(etiocholan-3a-ol-17-one-GlcU)、テストステロンβ−グルクロニド(testosterone-GlcU)、エステロン3−β−グルクロニド(estrone-3GlcU)、5β-プレグナン3α,20α−ディオールグルクロニド(5b-pregnane-3a, 20a-diol-GlcU)、デヒドロイソアンドロステロン3−グルクロニド(dehyddroisoandrosterone-3GlcU)、5αアンドロスタン−3α,17β−ディオール 17β―D−グルクロニド(5a-androstane-3a,17b-diol 17GlucU)、エストリオール17β−β−D−グルクロニド(estriol-17GlucU)、エストリオール16α−β−D−グルクロニド(estriol-16GlucU)、エストリオール3β−D−グルクロニド(estriol-3GlucU)(シグマ社製)、プロテオグリカンの二糖(コンドロイシン(Chondorosine)、IdoUA-2S-GlcNS-6S, IdoUA-GlcNS-6S, IdoUA-GlcNS, IdoUA-GlcNac-6S, IdoUA-GalNAc, IdoUA-GalNAc-4S, IdoUA-GalNAc-6S, IdoUA-GalNAc-4S, 6S, IdoUA-GlcNAc, GlcA-GalNAc-4S, GlcA-GalNAc-6S)(生化学工業、Dextra Laboratories社製)及びインタクトなプロテオグリカン(コンドロイオチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸及びヘパラン硫酸)(生化学工業社製)を、競合阻害アッセイ(Inhibition assay)により試験した。 阻害アッセイ用に、各試薬(5mM)をKLFc、0.1mMの4Mu−GlcUを含む標準反応液に添加した。試薬の加水分解を調べるために、各基質(1mM)を、KLFc融合タンパク質と、標準的な条件下で、30時間インキュベーションした。Estradiol-3GlcU 及びestrone-3GlcUを水に溶解し、etiocholan-3a-ol-17-one-GlucU、testosterone-b-D-GlucU、5b-pregnane-3a、20-a-diol-GlcU をエタノールに溶解し、5a-androstane-3a、17 b-diol-17-GlucU及びestriol-3-GlucUをジメチルスルホキシドに溶解し、estradiol-17GlcU、dehydroisoandrostenone-3GlucU、estriol-17GlucU、estriol-16GlucUを、N,N-dimethylformamideに溶解した。ステロイドGlcUsの加水分解を分析するために、サンプルをHPLC(Waters Alliance HPLC system 2695 EX separation module)システムにかけ、Waters二重λ紫外可視検知機(Waters dualλUV-visible detector)にかけた。 シメトリ−C18カラム(4.6×150mm;Waters 社製)を逆の局面で、フローレート1.0ml/分で、40℃で使用した。サンプル10μlを、分析用のカラムに注入した。移動相1の勾配プログラムは以下の通りであった:水中の0.02%トリフルオロ酢酸及び10%アセトニトリルを0分間、その後0.02%トリフルオロ酢酸及び80%アセトニトリルで10分間、さらにその後0.02%トリフルオロ酢酸及び10%アセトニトリルで10.1分間、定組成的に溶離した。210又は260nmの吸光度を監視した。最後に、エストランGluCの触媒パラメーターを算出した。エストランGluCをKLFcで触媒した加水分解反応を、さまざまな基質濃度で行った。触媒定数は、エストランGluCsを用いた、Lineweaver-Burk plotによる3度の実験で決定した。コンドロイシン(chondrosine)の加水分解を分析するために、アミノ酸分析を、ニンヒドリン試薬の自動オンライン混合が可能な、Hitachi L-8500を用いて行った。 [実験方法及び結果]実施例1の実験方法を用いて、クロソタンパク質の天然基質についてのスクリーニングを行った。 (組換え型クロソの発現及び精製)組換え型クロソを発現するために、マウスクロソcDNA及びヒト免疫グロブリン遺伝子を用いて、発現ベクターを作製した。クロソの細胞外領域をコードする領域は、ヒト免疫グロブリンFc領域をコードするDNAに融合していた。コントロール実験に、ファミリー1β−グルコシダーゼに相同な2個の内部リピートを有する1型膜タンパク質である、マウスLPHを用いた。LPHFcの発現ベクターを、KLFcと同様に作製した。これらの発現構築物をCHO細胞に導入し、ステーブルなトランスフェクタントを得た。これらのクローンからの培養上澄を濃縮し、ウェスタンブロット分析を行った。融合タンパク質が、150kDa(KLFc)及び160kDa(LPHFc)の相対分子量でそれぞれ検出した(図1)。 組換え型タンパク質の濃度は、ELISAで、抗ヒトIgG抗体とで推定した。推定の信頼性を確認し、精製した融合タンパク質の質を調べるために、KLFc及びLPHFc(ELISAによる推定による各200ng)をSDS−PAGEにより単離し、ゲルをSYPRO Orangeで染色し、タンパク質を視覚化した(図2)。KLFcタンパク質は、単一バンドとして検出し、この融合タンパク質がタンパク質分解なしで精製できることを示唆した(図2、レーン1)。LPHFcタンパク質も精製することを可能である(レーン2)。70kDaで検出した弱いバンドは、ウシ胎児血清由来ウシ血清アルブミンのコンタミネーションのようである。ウシ血清アルブミンの段階希釈を、定量化の標準物質として用いた(図2、レーン4〜7)。シグナル強度を、標準物質と比較し、KLFc及びLPHFの量を計算した。結果は、ELISAで得たものと関連している。精製した融合タンパク質を、以下の実験に用いた。 (クロソタンパク質の酵素活性)KLFcタンパク質の酵素活性を検討するために、4Mu−グルコシドのパネルを調べた。これらの基質は、蛍光性でないが、加水分解された基質の量を推定するために、時間の関数として蛍光光度計を用いて測定した、蛍光4−methylumbelliferoneを遊離する。8種類のグルコシドを調べた。KLFcは4Mu−GluCと特異的に反応し、この基質を加水分解した。他の潜在的な基質の蛍光強度の変化は、IgG1で観察したバックグラウンドレベルと同様であり(実施例1、表2)、KLFcがこれらの分子を加水分解しないことを示唆した。一方で、LPHFc、β−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼは、表2に示す基質に対し、活性を示した。 表2は、クロソの特異的活性が、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼの約1/30、ラットLPH由来β−グルクロニダーゼの1/3であることを示す。クローンの変動を除外するために、別個に構築された3個の他のトランスフェクタントを調べ、これらのクローンから得た融合タンパク質、用量依存的方式と同様の結果を示すことを確認した。更に、0.5mMのFD−GlcU及びELF97−GlcU、他の蛍光基質共役β−グルクロン酸を調べたところ、同様の条件下で加水分解され、KLFcタンパク質のβ−グルクロニダーゼ活性を確認した。 (速度パラメーターの算出)KLFc融合タンパク質の基質飽和を、一連の4Mu−GlcU濃度で調べた。生成物の濃度([P])及び反応時間(t)は、実施例1の図4に示すようにプロットした。3.2及び1.6mMの基質が、同じレベルの生成物を結果として示し、基質飽和がKLFcタンパク質20μgに対し、1.6mMに達したことを示唆した。これらのラインの傾斜に基づき、基質の各初期濃度([S]0)の初期速度(v0)を計算した。[S]0及びv0を図5にプロットした。相互のLineweaver-Burk plotを、図6に示す。ミカエリス定数(Km)及び最大速度(Vmax)をこのプロットから計算し、実施例1の表3に示した。図5及び表3は、KLFc融合タンパク質4Mu−GlcUに対する反応が、ミカエル−メンテン動力学(Michaelis-Menten kinetics)と合致することを示した。 (最適pH及びニ価金属イオン)KLFcの酵素活性に対するpH効果を調べた(実施例1の図7)。クエン酸ナトリウム緩衝液をpH4.5〜6.0で使用し、リン酸ナトリウム緩衝液をpH6.0〜8.0で使用し、0.5増加ごとにpH4.5〜8.0までの最適な条件を決定した。4Mu−GlcUの処理に対するKLFcの最も高い活性を、pH5.5で観測し、それがKLFcに対する最適pHであることを示唆した。数種類のグルコシダーゼの活性の、金属イオンへの依存性が報告されている(30、31)ので、Ca2+、Mg2+、Mn2+及びZn2+のクロソの酵素活性に対する効果を調べた。しかし、これらの金属イオンは、KLFcの酵素活性を有さないようであった。 (阻害剤に対する影響)KLFc融合タンパク質をさらに特徴づけるため、β−グルクロニダーゼに対する既知の阻害剤の、酵素活性に対する効果を調べた(実施例1、図9)。ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼは、既知の酵素間の相違を測定するための標準物質をして用いた。ウシ肝臓由来βグルクトニダーゼに対する競合阻害剤であることが知られているD−糖酸1,4ラクトン(D-Saccharic acid 1,4-lactone)及タウロコール酸(Taurocholic acid)を、4Mu−GlcU加水分解反応液に添加した。図9A及びBに示すように、KLFcの酵素活性は、これらの阻害剤によって減少した。この阻害効果は、β―グルクロニダーゼでも観察されたが、KLFcに対して要求よりも低い用量であった。この結果は、KLFcの酵素活性が、β−グルクロニダーゼの既知の阻害剤によって阻害されていることを示唆した。 (クロソタンパク質の基質の候補) クロソの潜在的な未変性の基質を探索するために、プロテオグリカン(Int. J. Biochem.Cell Biol. 32,269-288,2000)、ステロイドホルモン(Chem. Biol. Interact. 129,171-193,2000;Steroids 64, 715-725,1999)、糖脂質(Biochem. J. 320-93-99,1996)、アルカロイド(Clin. Pharmacokinet, 40,485-499,2001)及びフラボノイド(FEBS Lett.,503,103-106)を含む、天然のグルクロニド接合体のスクリーニングを行った。まず、これらの化合物が、KLFc融合タンパク質によって加水分解作用を競合的に阻害できるかどうかを調べた。各化合物(5mM)を、10μgKLFc及び0.1mMの4Mu−Glucを含む反応液に添加した。プロテオグリカンの部分溶解やインタクトなプロテオグリカン(コンドロイオチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸及びヘパラン硫酸)由来のニ糖には、効果がなかった。 検査した11のステロイドGlcUの内、8個(androsterone-GlcU、 etiocholan-3a-ol-17-one GlcU、 estrone-3GlcU、estradiol-3GlcU、5b-pregnane-3a、20a-diol-GlcU, dehydroisoandrosterone-3GlcU、testosterone-GlcU及び estriol-3GlcU)が、KLFcによる4Mu−GlcUの加水分解の阻害効果を示した(図10)。どのプロテオグリカンも4Mu−GlcUの加水分解も阻害しなかった。ステロイドGlcUs(estradiol-3GlcU、 estrone-3GlcU、estriol-3GlcU、testosterone-GlcU、 androsterone-GlcU)が、KLFcと加水分解できるかどうか、さらに調べた。各グルクロニドを、KLFc融合タンパク質とインキューベーションした。反応生成物を、HPLC勾配クロマトグラムにかけ、210又は260nmの吸光度で検出した。その結果、KLFcは、estradiol-3GlcU, estrone-3GlcU, estriol-3GlcUを、4Mu−Glucで得たものと同様の触媒パラメーター(kcat及び kcat/Km)(実施例1表3、及び表4)と共に加水分解した。Testosterone-GlcUは、わずかにKLFcによって加水分解されたが、androsterone-GlcU及びコンドロイチンは、全くされなかった。本発明の実施例において、ウエスタンブロットによる、培養上清中のマウスクロソ−ヒトIgG Fc領域融合蛋白質及びラットLPH−ヒトIgG Fc領域融合蛋白質の発現をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図である。なお、図中のAは、クロソ蛋白質に対するイムノブロッット解析を、Bは、Fcタグに対するイムノブロッット解析をそれぞれ示した。分子量マーカーを左側に表示した。本発明の実施例において、ProteinA sepharoseで精製したKLFc蛋白質及びLPH Fc蛋白質をSDS−PAGEにより解析した結果を示す図である。本発明の実施例において、基質として4−Mu−グリコシドを用いたKLFcの酵素活性の解析結果を示す図である。実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を3時間インキュベートした。なお、パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。本発明の実施例において、KLFc初速度の測定結果を示す図である。実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を、0.0125〜3.2mMの一連の濃度勾配の4−Mu−GlcAでインキュベートした。パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。本発明の実施例において、KLFcの基質飽和曲線を示す図である。本発明の実施例において、KLFcのLineweaver-Burkプロットを示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性におけるpHの影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性における培養温度の影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性における阻害剤の影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、検査した11のステロイドGlcUの内、8個が、KLFcによる4Mu−GlcUの加水分解の阻害効果を示したことを示す図である。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いる特異酵素活性の測定であることを特徴とする請求項1記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、β−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、天然基質のステロイドβ−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。天然基質のステロイドβ−グルクロニドが、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドであることを特徴とする請求項5記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定が、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断のための測定であることを特徴とする請求項7記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断が、早期老化症状を呈する疾病の診断であることを特徴とする請求項8記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。早期老化症状を呈する疾病の診断が、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。早期老化症状を呈する疾病の診断が、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断が、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の診断であることを特徴とする請求項11記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチド、又は該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドを用い、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することを特徴とする生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。請求項13記載のポリペプチド又は変異ポリペプチドを、イムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることを特徴とする請求項13記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。イムノグロブリンとしてイムノグロブリンFc領域を用いることを特徴とする請求項14記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用した生体または生体細胞中の酵素基質の検出が、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。生体又は生体細胞中の酵素基質の検出が、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出が、天然基質としてのβ−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドの検出であることを特徴とする請求項17記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。クロソ遺伝子欠損モデル動物又は該動物由来の細胞に、被検物質を投与し、請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法によりクロソ蛋白質酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング方法。クロソ遺伝子欠損モデル動物が、クロソマウスであることを特徴とする請求項19記載のクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング方法。請求項19又は20記載のクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行うことを特徴とする早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニング方法。 【課題】 クロソ蛋白質の機能を明らかにし、クロソ蛋白質の測定法及びその利用方法を提供すること。【解決手段】 クロソ蛋白質が、β−グルクロニダーゼ活性(β‐glucuronidase)を持つことを解明し、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、本発明は、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定することにより、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を提供する。更に、本発明の知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を提供するとともに、該作用物質のスクリーニングを行った。また、本発明においては、本発明の方法を用いて、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供する。配列表


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特許公報(B2)_クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用
出願番号:2004135457
年次:2010
IPC分類:C12Q 1/34,C12N 15/09,G01N 33/15,G01N 33/50


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鍋島 陽一 遠山 治 JP 4402511 特許公報(B2) 20091106 2004135457 20040430 クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 廣田 雅紀 100107984 鍋島 陽一 遠山 治 JP 2003146953 20030523 20100120 C12Q 1/34 20060101AFI20091224BHJP C12N 15/09 20060101ALI20091224BHJP G01N 33/15 20060101ALI20091224BHJP G01N 33/50 20060101ALI20091224BHJP JPC12Q1/34C12N15/00 AG01N33/15 ZG01N33/50 Z C12Q 1/00−1/70 G01N 33/48−33/98 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed WPI BIOSIS(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) 国際公開第98/029544(WO,A1) 国際公開第00/027885(WO,A1) 国際公開第01/005244(WO,A1) 特開2001−072607(JP,A) 特開2003−245044(JP,A) 特開2003−246728(JP,A) 特表2003−514513(JP,A) 第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集,p. 649,1PC-097 The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol. 279,p. 9777-9784 Nature,1997年,Vol. 390,p. 45-51 Biochemical and Biophysical Research Communications,1998年,Vol. 242,p. 626-630 週刊医学のあゆみ、別冊,2001年,p. 74-79 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2002年,Vol. 99,p. 856-861 第43回歯科基礎医学会学術大会ならびに総会,2001年,p. 57(505),L-2 18 2005006647 20050113 27 20051219 特許法第30条第1項適用 第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集(平成15年11月25日)第649頁に発表 特許法第30条第1項適用 The Journal of Biological Chemistry,2004,Vol.279,No.11,p.9777−9784に発表 特許法第30条第1項適用 第25回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集(平成14年11月25日)第926頁に発表 滝口 尚良 本発明は、クロソ(Klotho)蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用方法、特には、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法、及び、該方法を用いてクロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行う方法、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法に関する。 個体の老化機序の解明は、医学・生物学に残された最大の課題の一つである。老化は成熟期以後、加齢とともに各臓器の機能、あるいは統合する機能の低下が起こり、個体の恒常性を維持することができなくなり、最終的に死に至る過程を指す。このように老化は、広範囲に及ぶ多面的な現象であり、しかも、個体差が大きく、さらに環境や生活習慣の影響を受けることから、その実体を捉え、機序を説明することが困難であった。このような状況の中で、老化の実体を明らかにするために多くの独自の切り口を持った研究が進められてきた。例えば、(1)生物体を構成する細胞に着目したアプローチ、(2)生物個体の生理機能、免疫機能、内分泌系に着目したアプローチ、(3)実験動物の生存寿命に着目したアプローチ、また、(4)ヒトの早老症や老年性疾患を解析することで、老化の実体に迫ろうとするアプローチなどである。これらのアプローチは、それぞれ老化のある側面を捉えることを可能にしており、多くの老化に関する知識をもたらしたが、未だ老化の機序を一元的に説明するまでは至っていない。 その中にあって、黒尾らによって確立されたクロソ(Klotho)マウスは個体老化の実体、さらには機序の解析に一石を投じた。このマウスは、クロソ遺伝子の欠損によって、性成熟期に動脈効果、中膜や軟部組織の石灰化、肺気腫などヒト型老化様を呈し、短時間で死亡する。さらにクロソ遺伝子及び蛋白質は、主に腎臓遠位尿細管と脳脈絡叢に発現しているが、老化様表現型は発現部位を越え全身に及んでいる。これは、クロソの作用が組織−組織間を越えて作用しており、動物個体の恒常性を保ち、老化様表現型の発現を抑えていることを示している。このようにクロソの解析は、個体の恒常性の維持機構という立場で、老化の実体を理解するためのアプローチの一つと考え、研究が進められてきた。 クロソ遺伝子は、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化、生殖臓器の萎縮など、顕著かつ多彩な早期老化症状を呈するトランスジェニックマウス(クロソマウス)の外来遺伝子挿入部に存在し、その発現が低下するとマウスに前記老化症状を引き起こす原因遺伝子として同定された遺伝子である。クロソマウスは生後3週目までは野生型のマウスと同様に生育するが、その後は成長が止まり様々な老化の兆候を示す。6週齢になると、クロソマウスの活動性は野生型の50%程度に低下し、パーキンソン病様の歩行がみられる。性腺は萎縮しており不妊である。骨粗鬆症が顕著となるほか、大動脈弁、気管支、脳の脈絡叢に異所性の石灰化が生じる。動脈系では、血管内膜の肥厚や中膜の石灰化といった加齢に特徴的なメンケベルグ型の動脈硬化所見を示す。その他皮膚の萎縮や、肺気腫も観察されるようになる(WO98/29544、Nature, 390, 45, 1997)。クロソ遺伝子のcDNAの解析から、クロソ遺伝子はスプライシングの違いにより2種類のmRNAが転写され、該mRNAより2種類の蛋白質が翻訳される(以下、これら蛋白質を含め、クロソ遺伝子にコードされる蛋白質を「クロソ蛋白質」と呼ぶ)。 クロソ遺伝子変異が様々な老化症状を引き起こす機作や、クロソ蛋白質の分子機能はまだ明らかにされていない。クロソ遺伝子の発現は腎臓で高いが、激しい老化症状は、肺、骨、胃壁、皮膚等を含む全身臓器に及んでいる。このことから、その分子機能には何らかの分泌性の因子が存在し、作用を発揮していることが推定された(Nature, 390, 45, 1997)。クロソマウスとクロソ遺伝子発現トランスジェニックマウスとの交配実験および、膜結合型クロソ遺伝子のcDNAを組み込んだアデノウイルスベクターを用いてクロソマウス体内でクロソ蛋白質を発現させる実験等により、クロソマウスの老化症状発症の予防が達成されたことから、クロソ蛋白質の機能不全に由来する疾患の治療は、何らかの手段を用いてクロソ遺伝子を増強することにより達成されることが示唆されている(Nature, 390, 45, 1997、WO98/29544)。血管内皮細胞は、内皮依存性血管弛緩因子や内皮依存性血管収縮因子を放出して血管緊張を調節しているばかりでなく、血管内膜の透過性や血小板凝集にも深く関与しており、血栓性動静脈疾患の発症進展に重要な役割を演じている。 前記2種類のmRNAにコードされるクロソ蛋白質の内、一方の蛋白質はN末端のシグナル配列領域、細胞外ドメイン領域及びC末端の膜貫通ドメイン領域を有する構造を持つ1型膜蛋白(以下、「膜結合型クロソ蛋白質」と呼ぶ)であり、細胞外ドメインは細菌或いは植物のβ−グルコシダーゼに相同性を持つ2つのドメイン(KL1、KL2)より構成されている。これに対して、もう一方の蛋白は、N末端のシグナル配列領域とKL1ドメイン領域を有する分泌蛋白(以下、分泌型クロソ蛋白と呼ぶ)であることが明らかにされた(Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998)。 クロソ蛋白質は、約120kDaの1型膜蛋白質である。N末端側よりシグナル配列、β−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)に相同性のある2つの繰り返し領域を持つ細胞外領域(KL1、KL2)、1回膜貫通領域、短い細胞内領域を持つ。β−グルコシダーゼとは、高度に保存された酵素群であり、単糖−単糖間、単糖−オリゴ糖間及び単糖−非炭水化物間のグリコシド結合を加水分解するものであり、生体内において糖鎖の合成・分解、配糖体の合成・分解、細胞内シグナルの調節、解毒など生体維持に不可欠な機能を担っている。例として、ファミリー1グリコシダーゼ(glycosidase)には、リソソームβ−グルコシダーゼ(lysosomal beta-glucosidase)、細胞質β−グルコシダーゼ(cytosolic beta-glucosidase)、ラクターゼピロリジンヒドラーゼ(lactase philorizine hydrolase:LPH)、ミロシナーゼ(myrosinase)などがある。またファミリー2には、β−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、β−ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase:LacZ)、β−マンノシダーゼ(beta-mannosidase)などがある。多くのグリコシダーゼは2つの活性中心(求核基、酸塩基触媒基)を担うグルタミン酸残基を持ち、これらの働きによって酵素反応が2段階にわたって進む。 第一段階として、求核基が基質のアノマー炭素を攻撃し、酸塩基触媒基のカルボキシル基が糖−酵素(α−グリコピラノシル−酵素:alpha-glycopyranosyl-enzyme)中間体の形成を助ける。第二段階として、水分子による一般塩基触媒作用によりアノマー中心が攻撃を受ける。最終的に、グリコシド結合は切断される。興味深いことに、クロソ蛋白質は、活性に必要な2つのグルタミン酸残基の一方が、それぞれの領域で置換されている。KL1領域において、酸塩基触媒を担うグルタミン酸残基がアスパラギン酸に、KL2領域において求核基を担うグルタミン酸残基がアラニンまたはセリンに置換されている。このため、クロソ蛋白質が一次構造上に相同性を持つからといって、β−グルコシダーゼとして働くかは不明であった。しかし、植物が持つミロシナーゼは、酸塩基触媒を担うグルタミン酸がグルタミンに置換されているのにもかかわらず、S−グリコシド(S-glycoside)結合を持つグルコシノレート(glucosinolate)に対して、酵素活性が見られている。よってクロソ蛋白質も酵素として機能する可能性が考えられていた。 前記のとおり、クロソ遺伝子や該遺伝子がコードするクロソ蛋白質の欠失により、多彩な老化関連疾患が発症する機構や、クロソ蛋白質の機能については明らかにされていない点が多いが、その医薬等への利用については、特許公報上でいくつかの開示がなされている。再公表特許公報WO98/29544には、クロソ蛋白質のポリペプチド、該ポリペプチドを認識する抗体等を、早期老化症治療薬、成人病治療薬及び老化抑制薬等に用いること及びクロソ遺伝子を組み込んだベクター等を該老化抑制のための遺伝子治療に用いることが開示されている。WO00/27885には、血中での安定性を保持するために、クロソ蛋白質と免疫グロブリンとを結合させたキメラポリペプチドを老化症の予防・治療薬、或いは腎疾患、悪液質及び変形性関節炎等の予防・治療薬として用いることが開示されている。 また、特開2001−72607号公報には、クロソ遺伝子cDNAを組み込んだ組換えベクターを投与することにより、哺乳動物の血管内皮機能低下を伴う高血圧や動脈硬化等の疾患の予防・改善を図ることについて開示されている。 更に、関連する開示としては、WO01/005244には、二価の陽イオン金属を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物を食品や動物飼料に含有させて、摂取させることにより、ヒトや動物のクロソ蛋白質発現量増加又は減少に伴う疾患の予防又は治療を行うことについて開示されている。また、特表2003−514513号公報には、骨粗鬆症、皮膚障害、老化関連疾患、肺機能不全及び代謝症候群を含むさまざまな慢性疾患に対する素因と関連して、クロソ遺伝子中のリスク多型に関連する疾患の診断方法等について、開示されている。 上記のように、クロソ蛋白質やその遺伝子、及びその用途については、種々の開示がなされており、また、該クロソ蛋白質や遺伝子の検出方法やそれを用いたクロソ遺伝子の発現を増強させる化合物のスクリーニング方法等についての開示もなされているが(WO98/29544)、クロソ蛋白質の欠失が多彩な老化関連疾患をもたらす機構は、唯一、クロソ蛋白質の細胞外ドメインがβ−グルコシダーゼと相同性を持つこと以外は明らかになっていない。したがって、クロソ蛋白質の機能を明らかにすることが、生体においてクロソ蛋白質の機能に関与する物質を特定し、老化関連疾患に対するクロソ蛋白質の作用機構の解明を可能にし,更には、クロソ蛋白質の機能を増加させる物質の効果的な開発が可能になる。したがって、それらの解明が強く望まれていた。WO98/29544。WO00/27885。特開2001−72607号公報。WO01/005244。特表2003−514513号公報。Nature, 390, 45, 1997。Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998。 本発明の課題は、クロソ蛋白質の機能を明らかにし、クロソ蛋白質の測定法及びその利用方法を提供すること、特には、クロソ蛋白質が酵素活性を持つことを明らかにし、該特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法、更には、該方法を用いてクロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法、動物個体における特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うために、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供することにある。 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、クロソ蛋白質の機能を明らかにすることで、クロソ蛋白質が関わっている個体老化制御機構を解明できる可能性があると考えた。クロソ蛋白質の一次構造に着目した時、クロソ蛋白質はβ−グルコシダーゼとして酵素活性を持つ可能性、或いは酵素活性は持たず、受容体などと結合することで機能する可能性が考えられた。しかし、クロソ蛋白質の直接の作用分子はわかっていないため、この2つの可能性について直接検証することは難しい。そこで、生体内作用分子の代わりに人工的に合成された類似物を用いることでin vitroにおいて傍証をとることは可能であることから、本発明においては、組換え型クロソ蛋白質を作製し、β−グルコシダーゼ活性測定に用いられている人工基質と反応させることで、クロソ蛋白質が酵素活性を持つ可能性を検証した。 この検証の中で、本発明者は、今回、その酵素活性の解析により、クロソ蛋白質が、4メチルウンベリフェル−グルクロニド(4Methylumberifel-Glucuronide:4-Methylumberifelyl-beta-D-glucuronide:4Mu-glucuronide)と反応し、β−グルクロニダーゼ活性(β‐glucuronidase)を持つことを解明し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明においては、該知見に基づいて、その特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法により、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を開発した。更に、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを解明したことによって、クロソ蛋白質が末端にグルクロン酸をもつ分子を切断し、活性化することが示唆され、そのことにより、動物個体における酵素特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うことが可能となり、この知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を開発した。このスクリーニング方法により、数多くの天然β−グルクルニドをスクリーニングした結果、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド(b-estradiol 3-b-D-glucuronide)、エストロン3βDグルクロニド(estrone 3-b-D-glucuronide)、及びエルトリオール3βDグルクロニド(estriol 3-b-D-glucuronide)などのステロイドβ−グルクロニドが、クロソ蛋白質によって加水分解されたことを見い出した。 従来、クロソ蛋白質の細胞外ドメインがβ−グルコシダーゼと相同性を持つという構造から生体分子末端のグルコースやガラクトースを切断する可能性が示唆されてきたが、これらは一般的な糖蛋白、糖鎖分子に含まれているものであり、酵素活性から特異的な基質を推定することは困難であると考えられてきた。しかし、本発明の知見により、アルカロイドやステロイドのような低分子量分子を含む特殊な分子がその生体内基質である可能性が示唆されたことから、クロソ蛋白質の酵素活性を指標にして生体内基質を同定することが可能であることが明らかとなった。また、本発明においては、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を開発した。 すなわち具体的には本発明は、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項1)や、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いる特異酵素活性の測定であることを特徴とする請求項1記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項2)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、β−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項3)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項4)や、β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、天然基質のステロイドβ−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項5)からなる。 また本発明は、天然基質のステロイドβ−グルクロニドが、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドであることを特徴とする請求項5記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項6)や、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項7)や、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定が、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断のための測定であることを特徴とする請求項7記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項8)や、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断が、早期老化症状を呈する疾病の診断であることを特徴とする請求項8記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項9)や、早期老化症状を呈する疾病の診断が、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項10)からなる。 更に本発明は、早期老化症状を呈する疾病の診断が、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項11)や、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断が、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の診断であることを特徴とする請求項11記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法(請求項12)や、配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチド、又は該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドを用い、生体又は生体細胞中から分離した物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することを特徴とする生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項13)や、請求項13記載のポリペプチド又は変異ポリペプチドを、イムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることを特徴とする請求項13記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項14)や、イムノグロブリンとしてイムノグロブリンFc領域を用いることを特徴とする請求項14記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項15)からなる。 また本発明は、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用した生体または生体細胞中の酵素基質の検出が、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項16)や、生体又は生体細胞中の酵素基質の検出が、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項17)や、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出が、天然基質としてのβ−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドの検出であることを特徴とする請求項17記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法(請求項18)からなる。 本発明においては、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)活性を持つことを解明し、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、本発明は、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法により、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を提供する。更に、本発明は、クロソ蛋白質がβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを解明したことによって、クロソ蛋白質が末端にグルクロン酸をもつ分子を切断し、活性化することが示唆されたことにより、動物個体における酵素特異的な基質を推定し、真の基質の同定とその情報に基づく生理活性物質の解析を行うことが可能となり、この知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を提供する。 本発明においては、本発明のスクリーニング方法を用いて、数多くの天然β−グルクルニドをスクリーニングし、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド(b-estradiol 3-b-D-glucuronide)、エストロン3βDグルクロニド(estrone 3-b-D-glucuronide)、及びエルトリオール3βDグルクロニド(estriol 3-b-D-glucuronide)などのステロイドβ−グルクロニドが、クロソ蛋白質によって加水分解されることを見い出した。また、本発明においては、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供する。 本発明は、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定してクロソ蛋白質酵素活性を測定することよりなる。該クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定は、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いて、行うことができる。該酵素基質を用いたβ−グルクロニダーゼ活性の測定は、それ自体公知の方法を用いることができる。β−グルクロニダーゼ活性の公知の測定方法としては、発色基質を用いて、β−グルクロニダーゼの酵素反応の結果、遊離する発色物質を比色測定する方法を挙げることができる。例えば、発色基質としてp−ニトロフェニルグルクロニドを用いた比色測定法(赤堀四郎、沖中重雄監修「臨床酵素学」朝倉書店、397−398)を挙げることができる。発色基質としては、その他に、フェノールフタレイン、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、p−クロロフェニル、8−ヒドロキシキノリン、1−O−ヒドロキシフェニル−アゾナフトール、6−ブロム−2−ナフチルなどの発色基を有するグルクロニド等を用いることができる。 望ましいβ−グルクロニダーゼ活性の測定方法として、蛍光基質を用いて測定する方法が挙げられる。蛍光測定方法として、4−メチルウンべリフェリル−β−D−グルクロニドを蛍光基質に用いる方法を挙げることができる(J. Biol. Chem., 254, 14, 6588-6597, 1979)。また、生体内基質である可能性が示唆されるβ−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドのような低分子量分子を、望ましい酵素基質として用いることができる。更に、近年、迅速かつ高感度な測定方法として開発されたルシフェリン−ルシフエラーゼ発光反応を利用する測定方法を用いることができる。例えば、D−ルシフェリン−O−β−D−グルクロニドのような発光基質を用いた測定方法を用いて測定することができる(特開2000−270894号公報)。該β−グルクロニダーゼ活性の測定方法を用いて、クロソ蛋白質の酵素活性の測定を行うには、それ自体既に公知の手法及び装置を使用して、実施することができる。 本発明においては、クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定して、生体又は生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質の生成を測定することができる。クロソ遺伝子の発現の低下により、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病のような早期老化症状を呈する疾病を発症することが知られており、また、クロソ遺伝子の発現の低下により、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞のような血管内皮機能劣化に起因する疾病を発症することが知られている。したがって、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を用いて、クロソ蛋白質生成の検知・測定を行うことにより、生体又は生体細胞中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、これらの疾病の診断を行うことができる。生体又は生体細胞中のクロソ蛋白質生成の測定を行うには、生体中より、適宜の方法により試料を採取し、該試料及び採取した生体細胞に、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を適用して、クロソ蛋白質の生成を測定することができる。 また、本発明においては、クロソ蛋白質のポリペプチドを用い、該ポリペプチドと、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して、生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することにより生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行うことができる。本発明で用いられるクロソ蛋白質のポリペプチド及びその遺伝子は既に取得され、その構造が明らかにされている(Nature 390, 6655, 45-51, 1997、Biochem. Biophys. Res. Commun. 242, 3, 626-630, 1998)。マウスのクロソ蛋白質及び該クロソ蛋白質をコードする遺伝子のアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのデーターベースに、アクセッション番号 SEG_AB010089Sとして登録されており、該アクセッション番号により検索することができる。また、ヒトのクロソ蛋白質及び該クロソ蛋白質をコードする遺伝子のアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのデーターベースに、アクセッション番号 AB009666及びAB009667として登録されており、該アクセッション番号により検索することができる。 これらのクロソ蛋白質をコードする遺伝子は、エクソン1〜5の5つのエクソン部を有し、該エクソン部によってコードされるクロソ蛋白質のポリペプチドのうち、β−グルコシダーゼと構造的に相同性を有する細胞外ドメイン部分は、ヒトの遺伝子については、NCBIのデータベースに登録されているアクセッション番号:AB009666 エクソン1の2081〜2899番目、AB009667 エクソン2の12418〜12928番目、エクソン3の13698〜13966番目、及びエクソン4の19322〜19417番目によってコードされる部分である(配列表の配列番号1、そのアミノ酸配列を配列番号2に示した。)。また、マウスの遺伝子については、NCBIのデータベースに登録されているアクセッション番号:SEG_AB010089S1 エクソン1の687〜1511番目、SEG_AB010089S2 エクソン2の141〜651番目、エクソン3の2034〜2302番目、及びエクソン4の7906〜8001番目によってコードされる部分である(配列表の配列番号3、そのアミノ酸配列を配列番号4に示した。)。本発明においては、該クロソ蛋白質のポリペプチドを調製し、該ポリペプチドと、生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用し、生体又は生体細胞中の酵素基質の検出を行うことができる。本発明において用いられるクロソ蛋白質のポリペプチドの調製は、この分野で通常用いられている遺伝子工学的手法を用いて行うことができる(WO98/29544)。 また、本発明における、クロソ蛋白質酵素の生体又は生体細胞中の酵素基質の検出には、クロソ蛋白質の変異ポリペプチドを用いることができる。該変異ポリペプチドとしては、該配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドが挙げられる。該変異ポリペプチドの調製は、この分野で通常用いられている遺伝子工学的手法を用いて行うことができる(WO98/29544)。該変異ポリペプチドを用い、該変異ポリペプチドと生体または生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して、該酵素の酵素基質を検出し、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う。 該生体中のクロソ蛋白質作用物質をスクリーニングするに際して、クロソ蛋白質のポリペプチド或いはその変異ポリペプチドの生体又は生体細胞中での安定性を保持するために、イムノグロブリンFc領域のようなイムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることができる。また、クロソ蛋白質のポリペプチドやその変異ポリペプチド或いはキメラポリペプチドを生体又は生体細胞中に導入するには、該ポリペプチドをコードする遺伝子の形で、生体又は生体細胞中へ導入することができる(WO00/27885)。生体または生体細胞中の物質とクロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性との酵素反応を利用した酵素基質の検出は、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出によって行うことができる。 本発明は、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を用いてクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法を、真の基質に作用する新規薬剤の開発へと発展させるために、本発明のクロソ蛋白質の酵素活性測定法を用いて、被検物質を投与した生体でのクロソ蛋白質の酵素活性の増減の状況を把握し、このことによってクロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。該スクリーニング方法を行うには、クロソ遺伝子欠損モデル動物又は該動物由来の細胞に、被検物質を投与し、本発明のクロソ蛋白質酵素活性の測定法により、クロソ蛋白質酵素活性を測定し、生体又は生体細胞中でのクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定することにより行うことができる。クロソ遺伝子欠損モデル動物は、公知の方法により、モデル動物のクロソ遺伝子をノックアウトすることによって作製することができるが、既に公知のクロソマウスのような動物を用いることができる。該クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングにより、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病である早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。<クロソ蛋白質の機能の解明> 本実施例においては、クロソ蛋白質の機能を明らかにするために、組換え型クロソ蛋白質を作製し、該蛋白質をβ−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)活性測定等に用いられている人工基質と反応させることで、クロソ蛋白質の酵素活性を検証した。 [材料及び方法](発現ベクターの構築)マウスクロソ蛋白質及び、該蛋白質がコードされているDNA配列は、NCBIのデータベースに登録されている(アクセッション番号:SEG_AB010089S)。また、マウスクロソ蛋白質の膜貫通領域は、クロソDNAエクソン部分であるエクソン1〜5のうちのエクソン5に存在しており、NCBIに登録されているDNA配列(アクセッション番号:SEG_AB010089S3)の第895番目〜964番目(70bp)である。 組換え型蛋白質を得るために、クロソ(Klotho)膜貫通型領域よりC端側(マウスクロソDNAエクソン5部位の第820番目以降)を削除し、ヒトIgG1Fc領域を結合させたクロソ−Fc領域融合キメラ蛋白を発現するベクターを作製した。また、コントロールとしてラットLactose-Philorizin hydrolase(LPH:NCBIアクセッション番号:X56747)の膜貫通領域(ラットLPH DNAの第5632番目〜5695番目:64bp)よりC端側(ラットLPH DNAの第5632番目以降)を削除し、ヒトIgG1Fc領域を結合させたLPH−Fc領域融合キメラ蛋白を発現するベクターを作製した。なお、ラットLPHは前駆体領域を含み、融合キメラ蛋白質の作製には、ラットLPH DNAの第2548番目〜5632番目(3085bp)の配列を用いた。 次に、それぞれのcDNAを鋳型として、DNA断片をPCRにて増幅し、これをベクター構築に用いた。なお、PCRに用いたオリゴプライマー(国際試薬株式会社に合成を依頼)を、以下の表1に示した。 PCR反応は次の通りである。それぞれのDNA断片を、以下の条件で作製した。鋳型cDNA 100ng、0.3μm プライマー、0.2mM 各dNTPs、1mM MgSO4、20mM Tris−HCl pH7.5、7.5mM DTT、1unit KOD plus DNA polymerase(TOYOBO社より購入)。サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700;Applied Biosystemsより購入)の設定は、変性94℃ 15秒、アニーリング60℃ 30秒、伸長68℃ 1〜6分、20回で行った。これらのPCR断片は、クローニングベクター(PSP72;Promega社より購入、pBlueScript KS+;stratagene社より購入)に挿入し、サンガー法によって、それぞれの配列を解析した。配列解析は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kitを用いた(Applied Biosystemsより購入)。 (KL−Fcベクター(KLFc/pYT)の構築) 全長型マウスクロソcDNAから制限酵素を用いてEco RI-Xba I断片を切り出し、これをPSP72ベクターに挿入し、PSP72−KL fullを作製した。PSP72−KL−EP(mKL−S1、mKL−AS1由来のPCR断片)より制限酵素を用いてEco RI-Pst I断片を切り出し、PSP72−KLのEco RI-Pst Iサイト間へ挿入し、PSP72−KL full2を作製した。Fsp I-Bam HI断片(mKL−S2、mKL−AS2由来PCR断片)をPSP72−KL full2の同サイトへ挿入し、PSP72−KL(−TM)を得た。Fc断片(Bam HI-Xba I)をPSP72−KL(−TM)の同サイトへ挿入し、PSP72−KLFcを得た。PSP72−KLFcをXho Iで消化し、T4 DNA polymerase(TAKARA社より入手)で平滑化した後、Eco RVで消化しKLFc断片を切り出した。これを、Eco RVで消化し、アルカリホスファターゼ(TAKARA社より入手)で脱リン酸化処理した部位へ挿入し、順方向のものを選び、KLFc/pYTとした。 (LPH−Fcベクター(LPH−Fc/pcDNA3)の構築) pS34Tベクター(LPHβ領域に相当;Jean-Noel Frenud氏より入手)より、Kpn I-Acc IIIを切り出した。予めPCR断片(LPH−S1〜LPH−AS1由来)が挿入されているpBlueScript KS+(stratagene社より購入)のKpn I-Acc IIIサイトへ挿入し、pBSII/LPH(−TM)を得た。Fc断片(Bam HI-Xba I)をpcDNA3(Invitrogen社より入手)のBam HI-Xba Iサイトへ導入した。このベクターに、pBSII/LPH(−TM)より切り出したKpn I-Acc III断片をKpn I- Bam HIサイトへ挿入し、LPH−Fc/pcDNA3を得た。 (細胞への遺伝子導入)CHO細胞を次のような条件で培養した。MEMα(Sigma社より購入)、1%FCS(BioWest社より購入)、1% penicillin/streptmycin(Sigma社より購入)、2mM L-glutamine(Sigma)。CHO細胞にKLFcまたはLPHFcを安定発現させるためにLipofectAMINE plus(Invitrogen社より購入)を使って、40μgのDNAを1×108個/10cm plateの細胞に、導入した。2日間培養後、KLFcに関しては250μg/ml Hygromicin(Sigma社より購入)で選択した後、1〜10mM mthotrexate(Sigma社より購入)で引き続き選択を行った。LPHFcに関しては、1mg/ml G418(Invitrogen社より購入)で選択を行った。 (組換え型蛋白質の精製)KLFc及びLPHFcを安定発現するCHO細胞をMEMα培地(0.5%ultra low IgG fetal bovain serum、1% penicillin/streptmycin、2mM L-glutamineを含む)中で3日間培養した。その後、培養液を回収し、遠心(15,000g、60分、4℃)及びろ過フィルター(Sterivac-GP10,0.22μm;Millipore社より購入)によって死細胞等の不要物を取り除いた。その後、二段階にわたって限外ろ過(viva flow 50及びviva spin 20, poresize 100kDa;sartorius)を行った。得られた濃縮培養上清中のKLFc及びLPHFcは、ELISAで検定した。ELISAは、次のように行った。ヤギ抗ヒトIgG抗体(American Qualex社より購入)を結合させた96well plate(Falcon社より購入)を作製した。これらに、段階希釈した濃縮上清を入れて、室温にて反応させた。一次抗体としてHRPの結合したヤギ抗ヒトIgG抗体(BIOSOUCE社より購入)、発色試薬o-phenylendoamine dihydrochloride(OPD;Sigma社より購入)、発色反応停止試薬 4N H2SO4を順に加え、最後にmicroplate reader(Bio Rad社より購入)で検出した。標準物質には、精製ヒトIgG(ATENS RESEARCH AND TECHNOLOGY社より購入した)を用いた。 濃縮培養上清は、Sepharose beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を用いて2回前処理(非特異的なバックグラウンドを除く)を行った。濃縮培養上清を新チューブに移した後、rProteinA fast flow beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を加えた。4℃で2時間以上結合反応を行った後、ビーズを0.1M クエン酸ナトリウムバッファー〔0.2M NaCl、0.01%Tween20及びプロテアーゼ阻害剤(complete, BOERINGER MANNHEIM社より購入)を含む〕で5回洗った。その後、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーで2回洗い、これを酵素活性測定実験で使用した。 (ウエスタンブロット)濃縮培養上清は、Sepharose beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を用いて2回前処理(非特異的なバックグラウンドを除く)を行った。濃縮培養上清を新チューブに移した後、rProteinA fast flow beads(Amersham Pharmacia Biotech社より購入)を加えた。4℃で2時間以上結合反応を行った後、ビーズを0.1M クエン酸ナトリウムバッファー〔0.2M NaCl、0.01% Tween20及びプロテアーゼ阻害剤(complete, BOERINGER MANNHEIM社より購入)を含む〕で5回洗った。その後、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーで2回洗い、これを酵素活性測定実験で使用した。 (ゲル染色)SDS−PAGEの後、0.05% SYPRO Orange(Bio Rad社より購入)を含む7.5%酢酸中で16時間染色した。染色したゲルは、7.5%酢酸及び滅菌した脱イオン水で洗った後、STORM(blue filter使用;molecular dynamics)にて解析した。 (酵素アッセイ)基本条件を以下に示す。基質として0.5mM 4-methylumberifel-glycosides(グルクロニド、グルコシド、ガラクトシド、N−アセチル−グルコサミニド、N−アセチル−ガラクトサミニド、D−フコシド、マンノシド)(4Mu−glucuronide)を用いた。バッファーは、0.1M クエン酸ナトリウム(pH5.5)、0.05M NaCl、0.01% Tween20を用い、クロソとして10μg KLFcを、ネガティブコントロールとして、10μgのヒトIgG1をCHO由来の培養上清と混ぜて用いた。また、コントロールとしてラットLPHFcを用いた。β−グルコシダーゼ(beta-glucosidase)は、アーモンド由来β−グルコシダーゼ(Sigma社より購入)、及びウシ肝臓由来β−グルコシダーゼ(Sigma社より購入)を用いた。反応温度は37℃、反応時間は0〜3時間の条件下で実験を行った。これらの実験は、100μgの反応系で、96well plateを用いて酵素反応を行った。反応のモニターは、Multilabel counter(ARVO sx;PerkinElmer社より購入)を用い、蛍光強度(emission;470nm、excitation 360nm)を測定することで行った。酵素活性は、得られた蛍光強度を反応生成物濃度に換算して表した。これは、既知濃度の4-Methylumbelliferoneから検量線を作成し換算した。 (速度定数の計算)基質は、0.0125mMから3.2mMの範囲で系列希釈を行った。KLFcは、20μg用いた。30分ごとに、一部サンプリングを行い、0.25M Na2CO3を加えることで反応を停止した。これらのサンプルを、Multilabel counterを用いて、蛍光強度(emission:470nm、excitation:360nm)を測定した。酵素活性は、既知濃度の4-Methylumbelliferoneを基にして、得られた蛍光強度を反応生成物に換算して表示した。得られた結果をLineweaver-Burkプロットに従い、Km値及びVmax値を計算した。 (pHの影響) 基本条件に基づき、pH4.5〜6.0までは、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0までは、0.1M リン酸ナトリウムバッファーを用いて、クロソ蛋白質のpHによる影響を調べた。 (阻害剤の影響)市販されているβ−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)の阻害剤の影響を調べた。β−グルコシダーゼに対する阻害剤として、Conduritol B epoxide, 1-deoxynojirimycinを、β−グルクロニダーゼに対する阻害剤として、D-Saccharic acid 1,4-lactone and Taurocholic acidを用いた。基本条件にこれらの阻害剤を0.1μM〜1mMの範囲で添加した。 (金属イオンの影響)基本条件下で、二価の金属イオン(Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Zn2+)を0.1mM〜1mMの範囲で添加した。 (反応温度の影響)30℃〜80℃の範囲で、基本条件に基づいて反応させた。 [試験の結果](組換え型クロソ蛋白質の作製及び精製)組換え型クロソ蛋白質を作製するために、マウスクロソ蛋白質の膜貫通領域、細胞内領域を削除し、そこにヒトイムノグロブリン(IgG)Fc領域を結合させた組換え型プラスミドを作製した。また、コントロール用酵素としてクロソ同様に1型膜蛋白質で、2回繰り返し構造を持つグルコシダーゼであるLPHを、クロソと同様に加工した。これらのプラスミドをCHO細胞に導入し、安定発現株を得た。図1にこれらの細胞から回収した培養上清をウエスタンブロットで解析した結果を示した。図1において、培養後のCHO細胞から培養上清を回収後、レーン1に非ベクター、レーン2にKLFc、レーン3にLPHFcをそれぞれ泳動し、実施例に基づいてイムノブロッットにより解析した。なお、図中のAは、クロソ蛋白質に対するイムノブロッット解析を、Bは、Fcタグに対するイムノブロッット解析をそれぞれ示した。分子量マーカーを左側に表示した。 約150kDa(KLFc)及び160kDa(LPHFc)にそれぞれバンドが認められたことから、目的の蛋白質が作られていることが確認された。そこで、この蛋白質を用いて、取扱説明書に従い、組換え型蛋白質を回収した。これら濃縮培養上清中の組換え蛋白質の濃度は、抗ヒトIgG1抗体によるサンドイッチELISAによって求めた。精製したKLFc、LPH Fc又はヒトIgGを含むCHO細胞培養上清を実施例に基づいて還元条件下で変性させたのちSDS−PAGEを行った。ゲルはSYPRO Orangeで染色した。なお、レーン2にKLFc 0.2μg、レーン3にLPFc 0.2μg、レーン4にコントロールとしてヒトIgG1 0.2μgを含むCHO上清培地、レーン5〜8には、段階的にBSA(0.0625〜0.5μg)を除いた条件下で培養したレーン1〜4と同様の蛋白質を表示した。図2に、回収したKLFc、LPHFcを約200μgずつSDS−PAGEにより展開し、その後SYPRO Orangeによりゲルの染色をした結果を示す。図1と同様な位置にバンドが確認された。レーン4〜7は系列希釈したBSAである。これらをもとにアプライされている組換え型蛋白質の量を計算すると、1レーンあたり約200ngとなる。これは、ELISAによって求めた濃度を支持している。 (クロソ蛋白質の酵素活性の有無)クロソ蛋白質が酵素活性をもつ可能性を検討するために、作製したKLFcと様々な蛍光性人工基質4Mu−glycosidesと反応させた。すなわち、実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を3時間インキュベートした。なお、パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した(図3)。白四角は、Glc、白ひし形はGal、白丸はGlcNAc、白三角はGalAc、黒四角はGlcA、黒ひし形はD−Flc、黒丸はMan、黒三角はXlyをそれぞれ示す。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。KLFcは4−Mu−glcAと反応し、他の基質に関しては、ほとんど活性を示さないことが明らかになった(図3A、表2)。別個に作製したKLFc安定発現細胞株から回収した様々な濃度のKLFcを用いて、同様の結果が得られるか調べた。その結果、KLFc量依存的に4−Mu−glcAと反応したことから、KLFc依存的に酵素活性を示すことが明らかになった。 (酵素パラメーターの計算)図4に示すように、反応生成物濃度[P]と時間をプロットした。なお、この実施例においては、組換え蛋白質を、0.0125〜3.2mMの一連の濃度勾配の4−Mu−GlcAでインキュベートした。パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。白四角は、3.2mM、白ひし形は1.6mM、白丸は0.8mM、白三角は0.4mM、黒四角は0.2mM、黒ひし形は0.1mM、黒丸は0.05mM、黒三角は0.025mMをそれぞれ示す。 それぞれの基質濃度における反応初速度V0を傾きより求めた。初期基質濃度[S]0、反応初速度V0を図6に示すようにLineweaver-Burkプロットによりプロットし、得られた直線からKm、Vmaxを求めた(この図では、pH5.5下で200倍超の濃度の4−Mu−GlcAを用いてKLFcの酵素活性を測定し、X軸に基質の初期濃度の逆数(1/[S]0;μM-1)を、Y軸に初速度の逆数(1/V0;h×μM-1)を表示した。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った)。この結果を表3に示した。一般にKmは基質濃度と反応初速度に相当するので、ここで得られた値は、Michaelis-Mentenの式に一致した(図5)。図5において、基質の初速度及び初期濃度をグラフ化し、X軸に基質の初期濃度([S]0;μM)を、Y軸に初速度(V0;μM/h)を表示した。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。 (pHの影響)クロソ蛋白質の最適pHを求めるために、pH4.5〜6.0までの低pH域では、クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0では、リン酸ナトリウムバッファーを用いて、実験を行った。pH5.5下で4−Mu−GlcAを用いてKLFcの酵素活性を測定した。pH4.5〜6.0までは、0.1M クエン酸ナトリウムバッファーを、pH6.0〜8.0までは、0.1M リン酸ナトリウムバッファーを用いた。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。その結果、クロソはpH5.5付近で最も高い酵素活性を示すことが明らかになった(図7)。 (金属イオンの影響)β−グルコシダーゼの中には、二価の金属イオンにより活性が増強する酵素が知られている。数種類の金属イオンを用いることにより、クロソ蛋白質の、二価の金属イオンに対する反応性を検討した。Ca2+、Mg2+、Mn2+、Zn2+を0から1mMの範囲で用いたところ、酵素活性は金属イオンによる影響を受けないことが明らかになった。 (温度の影響)実施例に基づいて、種々の温度条件下でKLFcの酵素活性を解析した。定常状態の間、0.1M クエン酸バッファー(pH5.5)中のKLFcを種々の温度条件下で30分間培養し、酵素活性を解析した。白四角は、30℃、白ひし形は40℃、白丸は50℃、白三角は60℃、黒四角は70℃、黒ひし形は80℃をそれぞれ示す。標準誤差をエラーバーで表示し、実験はn=3で行った。酵素反応の最適温度を調べたところ、60℃までは温度依存的に反応が起こる(図8)。70℃以上になると最初の30分は反応が見られるが、30分を越えると急激に反応が遅くなることから、最適温度が、60℃前後にあることが示唆された。 (阻害剤の影響)人工的に合成された阻害剤の影響を調べた。実施例に基づいてKLFcの酵素活性をβ−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼに対する阻害剤の種々の濃度下で解析した。パネルAはD-saccharic acid、BはTaurocholic acid、Cは1-deoxynojirimycin、DはConduritol B epoxideを示した。四角は、KLFc、ひし形はβ−グルコシダーゼ、丸はβ−グルクロニダーゼをそれぞれ示し、阻害剤を含まないものをコントロールとした。この結果を図9に示す。まず、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼに対して競合的阻害を示すD-Saccharic acid 1,4-lactoneやTaurocholic acidを用いた。ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼと同様に酵素活性が阻害された。また、アーモンド由来β−グルコシダーゼに対して阻害活性を示す競合的阻害剤1-deoxynojirimycinやcatalytic site-directed covalent type阻害剤Conduritol B epoxideを用いて、同様の実験を行った。1-deoxynojirimycinは最大10mMまで用いたが、ほとんど阻害されなかった。Conduritol B epoxideは、弱いながらも、阻害を受けた。 [試験結果の解析](酵素活性について) 本実施例により、クロソ蛋白質は酵素活性を持つことが示された。クロソ蛋白質の基質特異性は非常に高く、4−Mu−グルクロニドのみと反応した。従って、クロソ蛋白質は、β−グルクロニダーゼであると推定された。クロソ蛋白質はB. Henrissaらの一次構造に基づく分類では、ファミリー1−グリコシダーゼに分類される。このファミリーの中には、β−グルクロニダーゼ活性を示すものは今まで知られておらず、この結果は、1−グリコシダーゼの分類法の概念を見直す必要があることを示唆している。クロソ蛋白質の酵素活性は、β−グルクロニダーゼに対する阻害剤で抑制される。このことからも、クロソ蛋白質の酵素活性が、β−グルクロニダーゼであることが支持される。古典的にはβ−グルクロニダーゼ活性を持つβ−グルコシダーゼとして、ファミリー2−グリコシダーゼに分類されるβ−グルクロニダーゼが知られている。 クロソ蛋白質は、この酵素と全く一次構造上は相同性がないにもかかわらず、このような活性をもつのはクロソ蛋白質の立体構造がβ−グルクロニダーゼとしての活性を持ちうる構造をとっている可能性がある。また、クロソ蛋白質は酵素ではなく、何らかのターゲット分子と結合することによって機能している可能性があった。そこで、3H−グルクロニドを用いて、結合が見られるかどうかを検討したが、全く結合が見られなかった。このことからも、クロソ蛋白質は酵素活性に基づいて機能を発揮する分子であることが確認された。 (クロソ蛋白質の生化学的所見)4−Mu−GlcAを用いてクロソ蛋白質の酵素パラメーターを求めた。先行研究で知られているヒト胎盤由来、血清由来β−グルクロニダーゼのKm値は、それぞれ0.045mM、0.06mMであり、これらと比べるとクロソ蛋白質のKm値は大きい。よって、既知のβ−グルクロニダーゼに比べ、基質に対する親和性は低い。また、クロソ蛋白質の比活性は、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼの約1/30、LPHの1/3である(LPHについては本実験の結果よりβ−グルクロニダーゼ活性を持つことを初めて確認した)。クロソ蛋白質は、活性の弱い酵素であると考えられる。 更に、クロソ蛋白質の酵素活性は、pH5.5で活性が最大になる。β−グルクロニダーゼの酵素活性はクエン酸バッファーにより抑制的に影響を受けるが、クロソ蛋白質の活性はクエン酸バッファーにより影響を受けない。調べた限りにおいて、クロソ蛋白質の酵素活性は金属イオンの影響を全く受けない。クロソ蛋白質は、胆汁酸β−グルコシダーゼやα−マンノシダーゼとは異なり、金属イオン非要求性のグリコシダーゼであると考えられる。クロソ蛋白質の酵素活性は、β−グルクロニダーゼの阻害剤だけではなく、一部ではあるがβ−グルコシダーゼの阻害剤の影響を受ける。これは、従来知られているβ−グルクロニダーゼとは異なる点であり、クロソ蛋白質の生化学的性質の特徴を示す。 (クロソ蛋白質の生理活性について)クロソ蛋白質は、酵素領域を細胞外に持つため、細胞自律或いは細胞非自律的に標的前駆体分子を活性化していると推定され、活性化された分子がクロソマウスの変異表現型を抑えることに作用していると推定される。該クロソ蛋白質の標的分子としては、β−グルクロニドを持つ分子が想定される。生体内でβ−グルクロニドを持つものとしては、プロテオグリカンが考えられる。プロテオグリカンは、アミノ糖とウロン酸との二糖の繰り返し構造を持つ。このウロン酸としてβ−グルクロニドが使われている。また、解毒作用の一種であるグルクロン酸抱合により修飾を受けたグルクロン酸抱合体がある。これは脂溶性の高い物質を水溶性に変え排出しやすくするものである。他に、ステロイドホルモンや糖脂質などにも、β−グルクロニドが結合したものが見られる。植物性のフラボノイドやアルカノイドにもβ−グルクロニドが結合している。幾つかの既知の分子について例を挙げた。今回得られた知見から、β−グルクロニドを持つ生体活性因子を探すことでクロソタンパク質の直接の作用点を、明らかにすることができる。<クロソタンパク質の天然基質のスクリーニング>クロソタンパク質の天然基質のスクリーニングのために、以下のグルクロニドについて試験を行った:すなわち、天然基質のスクリーニングに、ステロイドグルクロニド(β−エストラジオール3−β―グルクロニド(estradiol-3GlcU)、β−エストラジオール17−βグルクロニド(estradiol-17GlcU)、アンドロステロングルクロニド(androsterone-GlcU)、エチオコラン−3α-ol-17−oneグルクロニド(etiocholan-3a-ol-17-one-GlcU)、テストステロンβ−グルクロニド(testosterone-GlcU)、エステロン3−β−グルクロニド(estrone-3GlcU)、5β-プレグナン3α,20α−ディオールグルクロニド(5b-pregnane-3a, 20a-diol-GlcU)、デヒドロイソアンドロステロン3−グルクロニド(dehyddroisoandrosterone-3GlcU)、5αアンドロスタン−3α,17β−ディオール 17β―D−グルクロニド(5a-androstane-3a,17b-diol 17GlucU)、エストリオール17β−β−D−グルクロニド(estriol-17GlucU)、エストリオール16α−β−D−グルクロニド(estriol-16GlucU)、エストリオール3β−D−グルクロニド(estriol-3GlucU)(シグマ社製)、プロテオグリカンの二糖(コンドロイシン(Chondorosine)、IdoUA-2S-GlcNS-6S, IdoUA-GlcNS-6S, IdoUA-GlcNS, IdoUA-GlcNac-6S, IdoUA-GalNAc, IdoUA-GalNAc-4S, IdoUA-GalNAc-6S, IdoUA-GalNAc-4S, 6S, IdoUA-GlcNAc, GlcA-GalNAc-4S, GlcA-GalNAc-6S)(生化学工業、Dextra Laboratories社製)及びインタクトなプロテオグリカン(コンドロイオチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸及びヘパラン硫酸)(生化学工業社製)を、競合阻害アッセイ(Inhibition assay)により試験した。 阻害アッセイ用に、各試薬(5mM)をKLFc、0.1mMの4Mu−GlcUを含む標準反応液に添加した。試薬の加水分解を調べるために、各基質(1mM)を、KLFc融合タンパク質と、標準的な条件下で、30時間インキュベーションした。Estradiol-3GlcU 及びestrone-3GlcUを水に溶解し、etiocholan-3a-ol-17-one-GlucU、testosterone-b-D-GlucU、5b-pregnane-3a、20-a-diol-GlcU をエタノールに溶解し、5a-androstane-3a、17 b-diol-17-GlucU及びestriol-3-GlucUをジメチルスルホキシドに溶解し、estradiol-17GlcU、dehydroisoandrostenone-3GlucU、estriol-17GlucU、estriol-16GlucUを、N,N-dimethylformamideに溶解した。ステロイドGlcUsの加水分解を分析するために、サンプルをHPLC(Waters Alliance HPLC system 2695 EX separation module)システムにかけ、Waters二重λ紫外可視検知機(Waters dualλUV-visible detector)にかけた。 シメトリ−C18カラム(4.6×150mm;Waters 社製)を逆の局面で、フローレート1.0ml/分で、40℃で使用した。サンプル10μlを、分析用のカラムに注入した。移動相1の勾配プログラムは以下の通りであった:水中の0.02%トリフルオロ酢酸及び10%アセトニトリルを0分間、その後0.02%トリフルオロ酢酸及び80%アセトニトリルで10分間、さらにその後0.02%トリフルオロ酢酸及び10%アセトニトリルで10.1分間、定組成的に溶離した。210又は260nmの吸光度を監視した。最後に、エストランGluCの触媒パラメーターを算出した。エストランGluCをKLFcで触媒した加水分解反応を、さまざまな基質濃度で行った。触媒定数は、エストランGluCsを用いた、Lineweaver-Burk plotによる3度の実験で決定した。コンドロイシン(chondrosine)の加水分解を分析するために、アミノ酸分析を、ニンヒドリン試薬の自動オンライン混合が可能な、Hitachi L-8500を用いて行った。 [実験方法及び結果]実施例1の実験方法を用いて、クロソタンパク質の天然基質についてのスクリーニングを行った。 (組換え型クロソの発現及び精製)組換え型クロソを発現するために、マウスクロソcDNA及びヒト免疫グロブリン遺伝子を用いて、発現ベクターを作製した。クロソの細胞外領域をコードする領域は、ヒト免疫グロブリンFc領域をコードするDNAに融合していた。コントロール実験に、ファミリー1β−グルコシダーゼに相同な2個の内部リピートを有する1型膜タンパク質である、マウスLPHを用いた。LPHFcの発現ベクターを、KLFcと同様に作製した。これらの発現構築物をCHO細胞に導入し、ステーブルなトランスフェクタントを得た。これらのクローンからの培養上澄を濃縮し、ウェスタンブロット分析を行った。融合タンパク質が、150kDa(KLFc)及び160kDa(LPHFc)の相対分子量でそれぞれ検出した(図1)。 組換え型タンパク質の濃度は、ELISAで、抗ヒトIgG抗体とで推定した。推定の信頼性を確認し、精製した融合タンパク質の質を調べるために、KLFc及びLPHFc(ELISAによる推定による各200ng)をSDS−PAGEにより単離し、ゲルをSYPRO Orangeで染色し、タンパク質を視覚化した(図2)。KLFcタンパク質は、単一バンドとして検出し、この融合タンパク質がタンパク質分解なしで精製できることを示唆した(図2、レーン1)。LPHFcタンパク質も精製することを可能である(レーン2)。70kDaで検出した弱いバンドは、ウシ胎児血清由来ウシ血清アルブミンのコンタミネーションのようである。ウシ血清アルブミンの段階希釈を、定量化の標準物質として用いた(図2、レーン4〜7)。シグナル強度を、標準物質と比較し、KLFc及びLPHFの量を計算した。結果は、ELISAで得たものと関連している。精製した融合タンパク質を、以下の実験に用いた。 (クロソタンパク質の酵素活性)KLFcタンパク質の酵素活性を検討するために、4Mu−グルコシドのパネルを調べた。これらの基質は、蛍光性でないが、加水分解された基質の量を推定するために、時間の関数として蛍光光度計を用いて測定した、蛍光4−methylumbelliferoneを遊離する。8種類のグルコシドを調べた。KLFcは4Mu−GluCと特異的に反応し、この基質を加水分解した。他の潜在的な基質の蛍光強度の変化は、IgG1で観察したバックグラウンドレベルと同様であり(実施例1、表2)、KLFcがこれらの分子を加水分解しないことを示唆した。一方で、LPHFc、β−グルコシダーゼ及びβ−グルクロニダーゼは、表2に示す基質に対し、活性を示した。 表2は、クロソの特異的活性が、ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼの約1/30、ラットLPH由来β−グルクロニダーゼの1/3であることを示す。クローンの変動を除外するために、別個に構築された3個の他のトランスフェクタントを調べ、これらのクローンから得た融合タンパク質、用量依存的方式と同様の結果を示すことを確認した。更に、0.5mMのFD−GlcU及びELF97−GlcU、他の蛍光基質共役β−グルクロン酸を調べたところ、同様の条件下で加水分解され、KLFcタンパク質のβ−グルクロニダーゼ活性を確認した。 (速度パラメーターの算出)KLFc融合タンパク質の基質飽和を、一連の4Mu−GlcU濃度で調べた。生成物の濃度([P])及び反応時間(t)は、実施例1の図4に示すようにプロットした。3.2及び1.6mMの基質が、同じレベルの生成物を結果として示し、基質飽和がKLFcタンパク質20μgに対し、1.6mMに達したことを示唆した。これらのラインの傾斜に基づき、基質の各初期濃度([S]0)の初期速度(v0)を計算した。[S]0及びv0を図5にプロットした。相互のLineweaver-Burk plotを、図6に示す。ミカエリス定数(Km)及び最大速度(Vmax)をこのプロットから計算し、実施例1の表3に示した。図5及び表3は、KLFc融合タンパク質4Mu−GlcUに対する反応が、ミカエル−メンテン動力学(Michaelis-Menten kinetics)と合致することを示した。 (最適pH及びニ価金属イオン)KLFcの酵素活性に対するpH効果を調べた(実施例1の図7)。クエン酸ナトリウム緩衝液をpH4.5〜6.0で使用し、リン酸ナトリウム緩衝液をpH6.0〜8.0で使用し、0.5増加ごとにpH4.5〜8.0までの最適な条件を決定した。4Mu−GlcUの処理に対するKLFcの最も高い活性を、pH5.5で観測し、それがKLFcに対する最適pHであることを示唆した。数種類のグルコシダーゼの活性の、金属イオンへの依存性が報告されている(30、31)ので、Ca2+、Mg2+、Mn2+及びZn2+のクロソの酵素活性に対する効果を調べた。しかし、これらの金属イオンは、KLFcの酵素活性を有さないようであった。 (阻害剤に対する影響)KLFc融合タンパク質をさらに特徴づけるため、β−グルクロニダーゼに対する既知の阻害剤の、酵素活性に対する効果を調べた(実施例1、図9)。ウシ肝臓由来β−グルクロニダーゼは、既知の酵素間の相違を測定するための標準物質をして用いた。ウシ肝臓由来βグルクトニダーゼに対する競合阻害剤であることが知られているD−糖酸1,4ラクトン(D-Saccharic acid 1,4-lactone)及タウロコール酸(Taurocholic acid)を、4Mu−GlcU加水分解反応液に添加した。図9A及びBに示すように、KLFcの酵素活性は、これらの阻害剤によって減少した。この阻害効果は、β―グルクロニダーゼでも観察されたが、KLFcに対して要求よりも低い用量であった。この結果は、KLFcの酵素活性が、β−グルクロニダーゼの既知の阻害剤によって阻害されていることを示唆した。 (クロソタンパク質の基質の候補) クロソの潜在的な未変性の基質を探索するために、プロテオグリカン(Int. J. Biochem.Cell Biol. 32,269-288,2000)、ステロイドホルモン(Chem. Biol. Interact. 129,171-193,2000;Steroids 64, 715-725,1999)、糖脂質(Biochem. J. 320-93-99,1996)、アルカロイド(Clin. Pharmacokinet, 40,485-499,2001)及びフラボノイド(FEBS Lett.,503,103-106)を含む、天然のグルクロニド接合体のスクリーニングを行った。まず、これらの化合物が、KLFc融合タンパク質によって加水分解作用を競合的に阻害できるかどうかを調べた。各化合物(5mM)を、10μgKLFc及び0.1mMの4Mu−Glucを含む反応液に添加した。プロテオグリカンの部分溶解やインタクトなプロテオグリカン(コンドロイオチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸及びヘパラン硫酸)由来のニ糖には、効果がなかった。 検査した11のステロイドGlcUの内、8個(androsterone-GlcU、 etiocholan-3a-ol-17-one GlcU、 estrone-3GlcU、estradiol-3GlcU、5b-pregnane-3a、20a-diol-GlcU, dehydroisoandrosterone-3GlcU、testosterone-GlcU及び estriol-3GlcU)が、KLFcによる4Mu−GlcUの加水分解の阻害効果を示した(図10)。どのプロテオグリカンも4Mu−GlcUの加水分解も阻害しなかった。ステロイドGlcUs(estradiol-3GlcU、 estrone-3GlcU、estriol-3GlcU、testosterone-GlcU、 androsterone-GlcU)が、KLFcと加水分解できるかどうか、さらに調べた。各グルクロニドを、KLFc融合タンパク質とインキューベーションした。反応生成物を、HPLC勾配クロマトグラムにかけ、210又は260nmの吸光度で検出した。その結果、KLFcは、estradiol-3GlcU, estrone-3GlcU, estriol-3GlcUを、4Mu−Glucで得たものと同様の触媒パラメーター(kcat及び kcat/Km)(実施例1表3、及び表4)と共に加水分解した。Testosterone-GlcUは、わずかにKLFcによって加水分解されたが、androsterone-GlcU及びコンドロイチンは、全くされなかった。本発明の実施例において、ウエスタンブロットによる、培養上清中のマウスクロソ−ヒトIgG Fc領域融合蛋白質及びラットLPH−ヒトIgG Fc領域融合蛋白質の発現をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図である。なお、図中のAは、クロソ蛋白質に対するイムノブロッット解析を、Bは、Fcタグに対するイムノブロッット解析をそれぞれ示した。分子量マーカーを左側に表示した。本発明の実施例において、ProteinA sepharoseで精製したKLFc蛋白質及びLPH Fc蛋白質をSDS−PAGEにより解析した結果を示す図である。本発明の実施例において、基質として4−Mu−グリコシドを用いたKLFcの酵素活性の解析結果を示す図である。実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を3時間インキュベートした。なお、パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。本発明の実施例において、KLFc初速度の測定結果を示す図である。実施例に記載のとおり、組換え蛋白質を、0.0125〜3.2mMの一連の濃度勾配の4−Mu−GlcAでインキュベートした。パネルAはKLFc、BはLPFc、Cはβ−グルコシダーゼ、Dはβ−グルクロニダーゼを示した。本発明の実施例において、KLFcの基質飽和曲線を示す図である。本発明の実施例において、KLFcのLineweaver-Burkプロットを示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性におけるpHの影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性における培養温度の影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、KLFcの酵素活性における阻害剤の影響を調べた結果を示す図である。本発明の実施例において、検査した11のステロイドGlcUの内、8個が、KLFcによる4Mu−GlcUの加水分解の阻害効果を示したことを示す図である。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、β−グルクロニド結合を有する酵素基質を用いる特異酵素活性の測定であることを特徴とする請求項1記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、β−グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。β−グルクロニド結合を有する酵素基質が、天然基質のステロイドβ−グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。天然基質のステロイドβ−グルクロニドが、β−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドであることを特徴とする請求項5記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ蛋白質のβ−グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定が、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断のための測定であることを特徴とする請求項7記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断が、早期老化症状を呈する疾病の診断であることを特徴とする請求項8記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。早期老化症状を呈する疾病の診断が、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。早期老化症状を呈する疾病の診断が、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断が、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の診断であることを特徴とする請求項11記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチド、又は該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドを用い、生体又は生体細胞中から分離した物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用して生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することを特徴とする生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。請求項13記載のポリペプチド又は変異ポリペプチドを、イムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることを特徴とする請求項13記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。イムノグロブリンとしてイムノグロブリンFc領域を用いることを特徴とする請求項14記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。生体又は生体細胞中の物質とのβ−グルクロニダーゼ酵素反応を利用した生体または生体細胞中の酵素基質の検出が、β−グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。生体又は生体細胞中の酵素基質の検出が、天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。天然基質としてのステロイドβ−グルクロニドの検出が、天然基質としてのβ−エストラジオール3−β−Dグルクロニド、エストロン3−β−Dグルクロニド、又はエルトリオール3−β−Dグルクロニドの検出であることを特徴とする請求項17記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。配列表


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