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タイトル:特許公報(B2)_溶射被覆された物品の作製方法及び超音波試験法
出願番号:2004127502
年次:2011
IPC分類:G01N 29/04,C23C 4/00


特許情報キャッシュ

マシュー・スチュアート トマス・ジェイ・トムリンソン デビッド・ジェイ・ディーツ パッツィ・オーガスティン・ルッツォ JP 4700923 特許公報(B2) 20110311 2004127502 20040423 溶射被覆された物品の作製方法及び超音波試験法 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ 390041542 GENERAL ELECTRIC COMPANY 荒川 聡志 100137545 小倉 博 100105588 黒川 俊久 100129779 マシュー・スチュアート トマス・ジェイ・トムリンソン デビッド・ジェイ・ディーツ パッツィ・オーガスティン・ルッツォ US 10/422,386 20030424 20110615 G01N 29/04 20060101AFI20110526BHJP C23C 4/00 20060101ALI20110526BHJP JPG01N29/10 501C23C4/00 G01N29/00-29/52 特開2000−074888(JP,A) 特開平04−238265(JP,A) 特開平05−195186(JP,A) 特開平11−160293(JP,A) 特開2000−180422(JP,A) 特開平10−221309(JP,A) 7 2004325450 20041118 11 20070419 2009018531 20091001 岡田 孝博 竹中 靖典 信田 昌男 本発明は、溶射皮膜を有する物品の作製に関し、より詳細には、皮膜と物品基材間の結合の完全性を保証するための、このような物品の試験に関する。 金属皮膜は、溶射プロセスを用いて基材に施すことができる。このプロセスにおいて、通常、粉体又は線材の形態で供給される被覆材料は、溶射装置内で高温に加熱される。被覆材料は、完全に溶融して液滴を形成するか、部分的に溶融して半塑性粒子を形成するか、或いは溶融されずに固体粉体粒子とすることができる。加熱された被覆材料は、溶射装置から高速度で噴出されて、物品表面に向かって吹き付けられる。吹き付けられた材料は表面に堆積し、該材料が液体であれば凝固する。液滴及び粒子は、高速度で表面に衝突し、表面に平坦化される。凝固した皮膜が多くの場合は約0.150インチ程の所望の厚みに達するまで、堆積が継続される。 溶射プロセスの用途は非常に広範囲に及ぶ。溶射は、広範囲の組成物及び基材物品に使用することができ、多くの異なる種類の特性をもたらす。1つの実施例において、過去の使用の間に部分的に磨耗した物品を補強するため、被覆材料は基材物品と同じ組成を有することができる。他の実施例においては、表面に耐磨耗性皮膜を形成するために、皮膜は基材物品と異なる組成を有し、基材物品よりも耐磨耗性が高い。更に別の実施例においては、表面に磨耗性又はアブレイダブル皮膜を形成するため、皮膜は基材物品とは異なる組成を有し、基材物品よりも耐磨耗性が低い。溶射プロセスは、不規則で複雑な形状の物品基材を皮膜するのに使用することができる。 大部分の用途において、溶射皮膜は、該皮膜が施された全表面に対して結合ラインで確実に接合して良好な機械的結合を有さなければならない。皮膜区域が完全に基材から分離した、基材からの皮膜の層間剥離は存在してはならない。幾つかの過酷な用途においては、皮膜は、基材に更に冶金学的に結合されなければならない。 溶射皮膜の基材への結合の性質を判定する通常の手法は、被覆された物品の破壊的断面切断と、結合ライン区域の冶金学的検査である。標準的には、この手法は、良好に結合された皮膜を達成するプロセスパラメータを設定するために適用され、次いでこの同じパラメータが、皮膜製造作業で使用される。この手法は、溶射プロセスがこのように多用途であるので、皮膜及び基材物品構成の可能な種類の全範囲にわたって破壊試験を実施することが困難であるといった欠点を有する。試験材の破壊試験に関してプロセスが許容可能に設定されている場合であっても、生産パラメータの比較的軽微な変動が、生産物品の許容できない結合ライン構造をもたらす可能性がある。この状態における試験材の使用に関する別の問題は、試験材が生産部品とは異なるように作用する可能性があることである。熱処理及び機械加工などの皮膜後の作業は、当初は欠陥がなかった結合ラインに結合ライン欠陥をもたらす可能性がある。 溶射皮膜プロセス及び被覆された物品の結合ライン区域の評価に対する改良された手法についての必要性が存在する。本発明はこの必要性を満たすものであり、更に関連する利点を提供する。 本発明は、溶射皮膜を有する被覆された物品を提供する。皮膜と基材物品との間の結合ライン近傍区域の特性が、非破壊的に、正確に、且つ迅速に評価される。広範な皮膜/基材物品の組み合わせた、単純又は複雑な形状の実生産ハードウェアを、皮膜が物品基材に良好に結合されていることを確認するために容易に評価することができる。 溶着皮膜を有する物品を作製する方法は、表面を有する基材を準備する段階と、被覆された物品を形成する段階とを含む。形成する段階は、基材物品の表面上に被覆材料を溶射する段階を含み、被覆材料と基材物品との間の接触表面が結合ラインである。溶射プロセスの例には、高速度オキシ燃料溶射、空気プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、電気ワイヤアーク溶射、及び燃焼ワイヤ式又は燃焼粉体式溶射が含まれる。任意選択的であるが、溶射皮膜を有する物品は、溶射の段階の後に熱処理される。該方法は更に、超音波送信信号を被覆された物品に配向し、被覆された物品から超音波受信信号を受信し、該超音波受信信号を用いて結合ラインに隣接して位置する被覆された物品の結合ライン近傍区域を評価することによる、被覆された物品を非破壊的に試験する段階を更に含む。 対象となる用途において、基材物品はガスタービンエンジンの構成要素である。基材物品は、どのような実施可能な種類のものでもよいが、ニッケル基合金、鉄基合金、チタン基合金、及びコバルト基合金といった金属合金が特に対象となるものである。溶射被覆材料は、どのような実施可能な種類のものでもよいが、好ましくはNiCrAlのような材料である。溶射皮膜の厚みは、どのような実施可能な値でもよいが、通常は約0.05mm(0.002インチ)乃至約3.81mm(0.150インチ)である。 超音波送信信号は、どのような実施可能な周波数でもよいが、好ましくは約5MHZ(メガヘルツ)乃至約20MHZである。超音波受信信号は、反射信号又は送信信号のいずれでもよいが、反射信号が好ましい。超音波受信信号内の対象となる空間区域は、超音波受信信号内に空間(時間)ゲートを設けることによって分離され、結合ライン近傍区域が定められる。 殆どの基礎的な手法において、超音波受信信号に基づく結合ライン近傍区域の評価は、一般に、3つの主要な分類に分かれる。結合ライン区域から受信した超音波受信信号内に応答が存在しない場合には、基材物品からの皮膜の層間剥離が無く(すなわち完全な分離がない)、皮膜と基材間に金属結合が存在すると判断することができる。超音波受信信号内に結合ラインで強い超音波応答が存在する場合には、結合ラインでの層間剥離が存在しており、皮膜と基材はもはや緊密に接触していないと判断することができる。結合ラインから受信された弱い超音波応答が存在する場合には、層間剥離は存在せず、皮膜は基材に緊密に接触しているが、金属結合は無く、代わりに機械的結合があると判断することができる。全ての場合において、前面からの超音波応答は存在している。「応答」とは、超音波受信信号内のピークであり、超音波受信信号のバックグラウンドから識別される。好ましい許容基準に関して本明細書で用いられる、結合ライン近傍区域からの「強い」応答とは、約6.35mm(0.250インチ)厚の基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセントを超える振幅を有し、「弱い」応答とは、約6.35mm厚の基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセントを越えない実質的にゼロではない振幅を有する。場合によっては、熱処理の間に被覆材料と基材物品との相互拡散が増大することにより、機械的結合が金属結合化される。 本発明の手法は、溶射皮膜を有する高品質の物品を作製するための、信頼性のある、高度に再現性のある手法を提供する。該技法は、基材物品及び皮膜の広範囲な組成に対し、とりわけ約0.51mm(0.020インチ)を超える皮膜厚みに対し、全ての公知の種類の溶射プロセスに対して、及び、熱処理と非熱処理の両方の基材/皮膜組み合わせに対して、基材物品の広範囲な形状及び寸法と共に使用することができる。該プロセスに伴う試験及び評価は完全に非破壊的なものであって、そのため、該手法は試験片だけではなく生産ハードウェアの各部品に使用することができる。 本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例証のために示した添付図面と共に参照して、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら本発明の範囲は、この好ましい実施形態に限定されるものではない。 図1は、本発明の方法を実施する好ましい手法を示す。基材物品は、段階20で供給される。基材物品は、どのような実施可能な形状、寸法、及び構成のものとすることができる。対象となる基材物品の例には、シール及びフランジなどのガスタービンエンジンの構成部品の分野及び他の種類の物品が含まれる。基材物品は、どのような実施可能な原材料で作製してもよい。実施可能な原材料の例には、他の何れの元素よりも重量でニッケルを多く有するニッケル基合金、他の何れの元素よりも重量でコバルトを多く有するコバルト基合金、他の何れの元素よりも重量でチタンを多く有するチタン基合金、他の何れの元素よりも重量で鉄を多く有する鉄基合金、及び他の何れの元素よりも重量でアルミニウムを多く有するアルミニウム基合金が含まれる。特に対象となるニッケル基合金の実施例は、アロイ718であり、重量パーセントで、約50乃至約55パーセントのニッケル、約17乃至約21パーセントのクロム、約4.75乃至約5.50パーセントのニオブ+タンタル、約2.8乃至約3.3パーセントのモリブデン、約0.65乃至約1.15パーセントのチタン、約0.20乃至0.80パーセントのアルミニウム、最大1.0パーセントのコバルト、及び残部鉄で合計100重量パーセントとなる仕様組成を有する。炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、ホウ素、銅、鉛、ビスマス、及びセレンのような少量の他の元素もまた存在することができる。これらの基材物品及び組成は、好ましい実施形態の例証として提示されたものであり、限定のためではない。 図2から図3に示されるような被覆された物品40が、段階22で形成される。図において、被覆された物品40は、ガスタービンエンジンの周辺ガス経路シールセグメントの理想図である。形成段階22は、この場合はガス経路に面する内側対向表面である基材物品44の表面42に被覆材料を溶射して溶射皮膜46を形成する段階24を含む。一方が被覆材料41及び皮膜46で他方が基材物品44である、これらの間の接触表面が結合ライン48である。被覆材料41は、どのような実施可能な材料であってもよい。アロイ718基材上のシール用途に使用される好ましい被覆材料41の実施例は、NiCrAlであり、重量パーセントで、約4.5乃至約7.7パーセントのアルミニウム、約15.5乃至約20.5パーセントのクロム、最大3パーセントのマンガン、最大1パーセントの鉄、最大0.3パーセントの炭素、最大2パーセントのケイ素、最大3.5パーセントの他の元素、残部がニッケルであるが最低70パーセントのニッケルが好ましい公称組成範囲を有する。皮膜46は、どのような実行可能な厚みを有してもよく、典型的な厚みの範囲は、約0.05mm乃至約3.81mmである。本発明の手法は、好ましくは、約0.51mm乃至約3.81mmの皮膜厚みで使用される。 溶射段階24は、どのような実施可能な手法で行われてもよく、幾つかの溶射技法が当該技術分野で公知である。この例として、高速度オキシ燃料溶射(HVOF)、空気プラズマ溶射(APS)、減圧プラズマ溶射(LPPS)、電気ワイヤアーク溶射、及び燃焼ワイヤ式又は粉体式溶射が含まれる。要約すると、HVOFにおいては、燃料ガス及び酸化性物質の高速流が燃焼してHVOF溶着ガン内に高温を生成し、粉末形態の被覆材料の流れが燃焼ガス流に供給される。APS及びLPPSにおいては、電気アーク又は強力レーザビームによるなどしてプラズマが生成され、粉末形態の被覆材料が該プラズマに供給されて、基材物品に吹き付ける。APSは基本的に大気圧で行われ、不活性シールドガスが被覆材料の酸化を防止するために使用され、LPPSは、酸化を最低限に抑えるために減圧下で行われる。溶射段階24は、溶射皮膜46の厚みが所望の厚みに達するまで継続される。 任意選択的であるが、溶射皮膜46を有する基材物品44を含む、被覆された物品40は、溶射段階24が完了した後、段階26で熱処理することができる。どのような実施可能な熱処理を用いてもよい。アロイ718上へのNiCrAlの堆積である上述の例の場合には、熱処理は、好ましくは、約1700−1925゜Fの温度で約1−48時間行われる。該熱処理により、被覆材料41と基材物品44の原材料との相互拡散がある程度まで生じる。被覆された物品40は、必要に応じて熱処理前又は熱処理後に機械加工することができる。 理想的には、これらの段階20−段階26によれば、常に許容範囲にある被覆された物品40が製造されるであろう。しかしながら、実際には、基材物品44の形状、基材物品44の原材料及び被覆材料41、及び操作パラメータの変動といった広範囲な要因により、被覆された物品40が、結合ライン48に隣接してこれを取り巻く結合ライン領域50近傍に欠陥を有する原因となる可能性がある。このような欠陥は、溶射皮膜46が不満足な様態で行われることになる可能性がある。従って、どのような場合にこのような欠陥が存在するのか、及び被覆された物品40にこのような欠陥が無いのはどのような場合かを求めることは重要である。 これを判断するために、段階28で、被覆された物品40を超音波技法により非破壊試験する。段階30で、超音波送信信号が被覆された物品に向けて送信され、段階32で、超音波受信信号が被覆された物品から受信される。図3には、この検査を行うための超音波装置の1つの形態が示されている。この装置において、被覆された物品40は、タンク62内の超音波伝送用流体60(この場合は水)に浸漬される。超音波計測器66を有する超音波トランスデューサ64は、流体60を通過して被覆された物品40に向けられる超音波送信信号68を発生する。超音波送信信号68は、超音波トランスデューサ64に面する被覆された物品40の前面70に合焦される。超音波送信信号68は、被覆された物品40内に伝搬して、その中の特徴部で反射する。反射された超音波信号は、前面70を通って被覆された物品40から出て、流体60を通過して超音波受信信号72として超音波トランスデューサ64まで戻り伝搬する。(超音波計測器66では、時間ゲートでもある空間ゲートを使用して対象となる時間及び位置範囲外にある信号が除去されることから、物品の後壁からはどのような超音波信号も見られない。通常空間ゲートは、結合ライン近傍区域50に対応する。)超音波受信信号72は、超音波計測器66によって処理される。図3に示される本発明の好ましい手法は反射超音波技法であり、これは使い勝手が良く、対象となる結合ライン近傍区域が比較的前面70に近接しているという理由から選択される。しかしながら、超音波受信信号72が、超音波発信器から基材物品44を通過して、被覆された物品40の反対側に配置された超音波受信器に伝搬される場合には、透過技法を使用してもよい。反射又は透過接触プローブ装置のような他の実施可能な技法も同様に使用することができる。 超音波受信信号72は、段階34で評価される。超音波評価34の目的は、結合ライン近傍区域50が層間剥離しているか、機械的結合を示すか(層間剥離は無い)、又は金属結合を示すか(層間剥離は無い)どうかを判断することである。図4−図6には、観察される主要な3つの型の構造が示されており、図7−図9には、関連する超音波受信信号の一般波形がそれぞれ示されている。図7−図9は、超音波受信信号とその応答の性質を示す理想化された超音波波形である。「応答」とは、バックグラウンド信号におけるピークであり、バックグラウンド信号とは明らかに異なるものである。好ましい許容基準に関して本明細書で用いられる、結合ライン近傍区域からの「強い」応答とは、約0.250インチ厚の基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセントを超える振幅を有し、「弱い」応答とは、約0.250インチ厚の基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセントを越えない実質的にゼロではない振幅を有する。場合によっては、熱処理の間に被覆材料と基材物品との相互拡散が増大することにより、機械的結合が金属結合に変質する。通常の方法では、空間(又は等価的に時間)ゲートは、結合ライン近傍区域50に対応する部分だけを観察するように超音波受信信号に適用される。以下の説明は、該当する種類の構造が存在する側面区域、すなわち、ここでは特定の側方領域の結合ライン近傍区域50、における超音波受信信号に適用される。例えば、層間剥離は比較的小領域にわたって側方に延びている可能性があり、そのため、該領域においては結合ライン近傍からの強い応答超音波信号が存在するが、層間剥離の無い周辺領域においては結合ライン近傍からの応答超音波信号は存在しない。 図4には、結合ラインの層間剥離80を有する構造が示され、ここでは溶射コーティング46は表面42から物理的に分離され、これらの間には間隙が存在する。図7に示される対応する超音波受信信号72は、前面70からの応答84、被覆材料41からのバックグラウンド信号92、及び結合ラインの層間剥離80の表面近傍82からの強い応答86を示している。超音波信号68及び72は、結合ラインの層間剥離80を越える実質的な程度の伝搬をしないため、基材物品44からのバックグラウンド信号は存在しない。層間剥離における強い応答86は通常、バックグラウンド信号92及び94よりも極めて大きい。 図5には、皮膜−基材が接触しており(すなわち、層間剥離が無い)、機械的結合88を有するが金属結合の無い構造が示される。図4に示されるように溶射皮膜46は表面42から物理的には分離されていないが、代わりに冶金学的な不連続が存在し、これは溶射皮膜46と基材物品46との間の結合ライン48の位置で機械的には結合しているが完全には金属結合していない界面が存在することに伴うものである。図8に示される対応する超音波受信信号72には、前面応答84及び機械的結合からの付加的な弱い応答90が示されている。被覆材料41からのバックグラウンド信号92と、基材物品46からのバックグラウンド信号94が存在するが、これは機械的結合88が超音波信号68及び72を通過させるためである。 図6には、結合ラインの層間剥離が存在せず、被覆材料41と基材物品44との間に金属結合が存在する構造が示されている。金属結合が存在する場合には、一般に、皮膜と基材間の結合ラインにわたる相互拡散及び/又は粒子成長が存在するが、機械的結合では、これらは発生しないか、又は偶発的にしか発生しない。図9で示される対応する超音波受信信号72には、前面応答84、被覆材料41からのバックグラウンド信号92、及び基材物品44からのバックグラウンド信号94が示されており、結合ライン48の領域からの応答は見られない。図9において本来の結合ライン48の位置が、参考のために点線で示されているが、実際には、該結合ラインの存在及び位置は図9での超音波受信信号からは識別できない。 図4−図6の構造には、図4における、通常は全ての用途において許容されないと考えられる極めて不完全な層間剥離した結合ライン近傍区域50から、図5において、多くの溶射用途において許容されると考えられる機械的に結合した結合ライン近傍区域50、及び図6における、殆どの過酷な用途において必要とされる結合ライン近傍区域50の高品質な金属結合までの経過状況が示されている。図4に類似した構造が作製された場合には、被覆された材料40は廃棄されなければならず、又は可能であれば、被覆された物品40の熱間静水圧プレス成形による結合ライン層間剥離80を閉じるようにし、或いは、ショットピーニング高密度化及び再加熱処理又は局部的溶接補修などのといった他の好適な技法によるなどして補修することができる。図5の構造は殆どの用途において許容される。別法として、この構造は、任意選択的な熱処理26を設定することにより、或いは該熱処理が既に用いられている場合には、熱処理26の時間を延長し、又は熱処理温度を上げる(これらの変更が他の熱処理要件及び/又は基材物品44及び被覆材料41の限界に適合する限り)ことによって、図6の構造に類似するよう修正することができる。また、特に幾つかの物品が試験され、他の物品は試験されない場合には、非破壊検査28に続いて補足的熱処理36を用いることができる。許容できない物品には補足的熱処理36を行い、許容可能な物品には更なる熱処理は行わず、更に、先の許容できない物品は非破壊試験28で再試験することができる。追加的な熱処理26及び/又は36は、溶射皮膜46及び基材物品44に相互拡散をもたらし、これによって弱い超音波応答90の大きさが徐々に低下する。 被覆材料41及び基材物品44間の結合の評価に関してこれまで説明された技法は、結合ライン近傍区域50からの超音波応答(すなわちピーク)の存在する場合の相対高さ又は消失を用いるものである。この技法は、直接的で容易に適用される非破壊的評価手順と、結合の許容性の許容基準とを与える。場合によっては、超音波受信信号の他の部分、応答ピーク−高さ比率、及び同様なものを含む、より複雑な解析を使用することができる。結合ライン近傍区域50の実際の特性は、層間剥離から種々の強度の機械的結合、及び金属結合よって連続体上で異なり、本発明の手法は、全体の連続体を評価するのに使用することができる。産業用に実施するために、殆どの場合においては、層間剥離を示す結合ライン近傍区域からの強い応答、機械的結合を示す弱い応答、及び金属結合を示す実質的な無応答を含む3つの分類を使用することで十分である。 本発明の現在の好ましい実施において、許容基準は、結合ライン近傍区域からの「強い」応答を約6.35mm厚みを有する基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセントを超える振幅を有するものとして定義し、及び「弱い」応答を約6.35mm厚みを有する基材材料の較正試料背面からの応答振幅の約25パーセント以下である実質的にゼロではない振幅を有するものとして定義するように設定された。他の許容基準は、所望に応じて定めることができる。処理によっては、ある選択可能な量よりも大きな、結合ライン近傍区域からの任意の超音波応答は許容されない。他の場合においては、強い応答、弱い応答、及び実質的な無応答の識別は、何れの許容可能な方法でも定めることができる。 非破壊試験28は、溶射された物品の必要な処理法を決定するためのプロセス開発ツールとして、及び生産ハードウェアに対する、その許容可能性を決定するための許容試験として、これらの両方で使用することができる。 本発明の手法を実施化し、該超音波技法の実施可能性を破壊試験との比較において実証した。例えば、層間剥離を検出するためには、超音波較正向けに使用される標準ホールを試料の界面に設け、これらの強い応答によって確実に検出した。また、超音波検査によって層間剥離を検出し、次いで、層間剥離を示した区域を通る断面を用意することによって検証した。顕微鏡検査により層間剥離の存在を確認した。また、超音波検査技法を結合ライン近傍区域50からの弱い応答を生成した機械的結合皮膜にも適用することにより、界面を確実に検出した。該試料はその後、金属結合を生成するために熱処理され、その結果、超音波信号の応答が生じなかった。この試験において、完全な金属結合がこの試験中に破壊的解析によって確認された。 本発明の特定の実施形態を例証の目的で詳細に説明してきたが、様々な修正及び改善が本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行うことができる。請求項に示された参照番号は、本発明の範囲を狭めるものではなく、これらの理解を容易にすることを意図するものである。溶射皮膜を有する物品を作製する方法のブロックフロー図。被覆された物品の透視図。超音波試験中における、図2のライン3−3の被覆された物品の概要断面図。結合ラインの層間剥離が存在する、図3の区域4の概略拡大図。機械的に緊密な皮膜−基材接触を有するが、金属結合は存在しない図3の区域4の概略拡大図。結合ラインの層間剥離が存在せず、結合ラインに金属結合を有する図3の区域4の概略拡大図。図4の構造における時間の関数としての超音波受信信号の概略グラフ。図5の構造における時間の関数としての超音波受信信号の概略グラフ。図6の構造における時間の関数としての超音波受信信号の概略グラフ。符号の説明 40 被覆された物品 41 被覆材料 42 表面 44 基材 46 溶射皮膜 48 結合ライン物品 50 結合ライン近傍区域 60 超音波透過流体 62 タンク 64 超音波トランスデューサ 66 超音波計測器 70 前面 72 超音波受信信号 溶射皮膜(46)を有する物品を作製する方法であって、 表面(42)を有する基材物品(44)を準備する段階と、 被覆された物品(40)を形成する段階と、を含み、前記形成する段階が前記基材物品(44)の表面(42)上に被覆材料(41)を溶射する段階を含み、前記被覆材料(41)と前記基材物品(44)と間の接触表面が結合ライン(48)であり、 前記方法が更に、 前記被覆された物品(40)を非破壊的に試験する段階を含み、 前記非破壊的に試験する段階が、 超音波送信信号(68)を前記被覆された物品(40)に配向する段階と、 前記被覆された物品(40)から超音波受信信号(72)を受信する段階と、 前記超音波受信信号(72)を用いて前記結合ライン(48)に隣接して位置する前記被覆された物品(40)の結合ライン近傍区域(50)を評価する段階と、を含み、 前記評価する段階が、 前記結合ライン近傍区域(50)からの前記超音波受信信号(72)内に強い応答ピークが存在する場合に、層間剥離の存在を判断し、 前記結合ライン近傍区域(50)からの前記超音波受信信号(72)内に弱い応答ピークが存在する場合に、機械的結合の存在を判断し、 前記結合ライン近傍区域(50)からの前記超音波受信信号(72)内に応答ピークが存在しない場合に、金属結合の存在を判断することを特徴とする方法。前記準備する段階が、ニッケル基合金又はコバルト基合金製の基材物品(44)を準備する段階を含む請求項1に記載の方法。前記形成する段階が、前記溶射する段階の後に、被覆材料(41)を有する前記基材物品(44)を熱処理する段階を含む請求項1に記載の方法。前記溶射する段階が、高速度オキシ燃料溶射、空気プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、電気ワイヤアーク溶射、燃焼ワイヤ式溶射、又は燃焼粉体式溶射によって、被覆材料(41)を溶射する段階を含む請求項1に記載の方法。前記非破壊的に試験する段階が、5MHZ乃至20MHZの周波数で超音波送信信号(68)を配向する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。前記評価する段階が、前記結合ライン近傍区域(50)を定めるために超音波受信信号(72)内に空間ゲートを設定する段階を含む請求項1に記載の方法。前記非破壊試験の段階が、前記超音波受信信号(72)を反射超音波信号として受信する段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。


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