タイトル: | 公開特許公報(A)_献血の採血適否判定方法 |
出願番号: | 2004127328 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/53,G01N33/543 |
齋藤 宏 松田 武英 恩田 知明 JP 2005283549 公開特許公報(A) 20051013 2004127328 20040329 献血の採血適否判定方法 株式会社バイオサイバー 501011484 齋藤 宏 504159992 齋藤 宏 松田 武英 恩田 知明 7G01N33/53G01N33/543 JPG01N33/53 DG01N33/543 521 3 2 書面 7 献血の直前に献血者または供血者が献血にたえられる量の貯蔵鉄を有するか否かを知るために、前採血血液を用いて免疫化学的分析法により血清フェリチン値を測定し、献血のための採血の適否を判定する方法に関する分野の技術。 現在は献血者が貧血であれば、その献血者本人の貧血症状を更に増悪させる要因になるので、必ず献血直前に貧血の有無検査を行っている。献血時の貧血検査法として現在は、ヘモグロビン量の検査または血液比重の検査から貧血の有無を判定する方法を使っている。実際献血車などで多く使われている方法は主に比重法で、それは簡便で安価であるが、血漿蛋白濃度や白血球の影響を受けて貧血がないと誤って評価される恐れがある。非特許文献1によると、比重やヘモグロビン量を測定しても貯蔵鉄の量を知ることは出来ないと書かれており、“献血により「貧血の無い鉄欠乏」または「鉄欠乏性貧血」に陥るか否か”などを判定するためには貯蔵鉄の量を判定できる血清フェリチンの測定が必要不可欠である。 医師法第24条で、給血者の健康を保護するために「採血によってその者の健康に障害を生ずると認められる者を給血者としないこと」と定められており、その中の1つが「貧血者又はその疑いのある者」となっている。この法律を忠実に実施するには本願発明の方法を献血時に適用する以外にない。 発明が解決しょうとする課題 鉄欠乏性貧血は極めて多い疾患であり、特に若い有月経期の女性に多いが閉経後の女性でもしばしば発見される。本願発明は、貧血は無いが鉄が減少または欠乏した人が献血することにより鉄欠乏性貧血に陥ることをなくすためになされたものである。「鉄欠乏性貧血の確実な診断には貯蔵鉄の指標である血清フェリチンの測定は不可欠な検査である」と非特許文献1に記載してある。しかしこの血清フェリチンの量は、極微量であり、その測定には大型の免疫学的な分析装置が必要とされている。一般的な献血では、貧血を判定するための検査として、簡単な比重試験だけで済まされ、その結果だけで採血の適否が判定されていた。実際このような「貯蔵鉄レベルを調べない献血により供血者を鉄欠乏性貧血にする恐れがあ」と非参考文献1が警告している。今までは、この血清フェリチンの検査が高価である、その測定機器が大きい、測定に時間がかかる、測定に熟練を要するなどの理由のため今までは、移動式献血車等の採血現場で、採血前に血清フェリチンの定量または半定量を行うことは実質不可能であった。 本願発明ではこの血清フェリチンの定量または半定量が、特許文献1のイムノクロマト法および特許文献2の簡易定量機器の原理に基づき開発された専用診断薬により、献血前の試験的採血液で簡単に短時間内に測定出来ることが明らかになった。特許第3481894号特願2002−154509齋藤宏 著「鉄代謝異常の臨床」1999年(株)医薬ジャー ナル社,大阪G.O.Walters,F.M.Miller,and M.Worwood: Serumferritin concentration and iron stores in normal subjects.J.clin.Path.,26,770−772,1973 本願発明では、献血直前に血清フェリチンの定量または半定量を行い、鉄欠乏性貧血を起こす恐れのある献血者からの採血を防止することで医師法第24条にいう「貧血者又はその疑いのある者」から採血しないことが徹底できることになる。非特許文献1のp39〜44に記載されているように若い女性の約9%に鉄欠乏性貧血が発見され、23%に及ぶ貧血の無い鉄欠乏が存在すると記載されており、400mL献血により鉄欠乏性貧血に陥る恐れのある貯蔵鉄の減少した人の割合は更に多い。現在の貧血検査だけでは、鉄の減少や鉄欠乏の人の存在は不明であるのでこれらの人から献血のための採血が行われていることは隠されている大きな社会問題である。 課題を解決するための手段 本願発明は、血清フェリチンの定量又は半定量を特許文献1のイムノクロマト法を用い、献血前の試験的採血液による検査を5分間以内に行ない結果的に20ng/mLから30ng/mL以下の献血者からの採血は実施しないことに活用できることを見出した。 400mL献血に際して起きる血清フェリチン値の変動を図1に片対数グラフで示した。図1(1)縦軸が血清フェリチン値(ng/mL)で、(2)がその正常値下限の12ng/mLである。(3)は本願発明でカットオフレベルとしている血清フェリチン値20ng/mLを示した。(4)が正常域の貯蔵鉄で、(5)は貯蔵鉄の欠乏域を表している。下段(6)はヘモグロビン量(g/dL)で、(7)はヘモグロビンの正常値下限といわれる12g/dLの位置を示した。(8)が現在献血に行くと採血される範囲で、(9)が本願発明で実施される献血対象範囲。(10)が400mL採血でも鉄欠乏性貧血に陥らない範囲、(11)が鉄欠乏性貧血に陥る範囲である。従って(12)により本願発明を実施すれば鉄欠乏性貧血に陥らない範囲が設定できることになる。 貯蔵鉄が正常かそれ以下の低値域にある場合、非特許文献(2)によると「血清フェリチン1mg/mLは貯蔵鉄8mgに相当する。それゆえ、血清フェリチン値が20ng/mLの人の貯蔵鉄は160mgである。ヘモグロビン15g/dLの献血者から400mL採血するとヘモグロビンの鉄200mgが失われる。その結果、不足したへモグロビンを合成し補充する為に貯蔵鉄200mgが造血のために動員され、貯蔵鉄は160−200=−40mgとなって枯渇(13)し鉄欠乏に陥ることとなる。従って本願発明の実施は、医師法第24条にも明記してあるように、ボランティアで献血に参加してくれる人を、絶対に献血で鉄欠乏性貧血に陥らせてはならないという基本的概念に貢献し得る。 血清フェリチン値を基準にした、鉄欠乏性貧血の現状と献血による採血で失われる貯蔵鉄の減少とそれに伴う「血清フェリチン値の低下概念図」を図2に示した。非特許文献1によると鉄欠乏性貧血域(16)では「血清フェリチンの量が12ng/mL以下になる」と記載されている。逆に鉄過剰域(17)では約250ng/mL以上になるとされている。図1に示すように血清フェリチン量が20ng/mLの人から400mL採血した場合(14)、貯蔵鉄は100mg以下と枯渇し(15)、血清フェリチン値も確実に鉄欠乏域に入る。図2で説明すると献血カットオフ位置(18)、20ng/mLからの血清フェリチン値の低下(19)を見ると前述のように12ng/mL未満となり、鉄欠乏性貧血に陥る事が理解できる。 本願発明は、400mL献血後、献血者が鉄欠乏性貧血に陥ることの無いよう血清フェリチン値を少なくとも、この20ng/mL或いは25ng/mL或いは30ng/mLをカットオフ値として献血の適否を判定する方法を提示するものである。30ng/mLでも400mLの採血をすれば前述の如く鉄欠乏になる。発明の実施の1形態は、特許文献1を献血の適否判定に使うために献血前に予備採血5分後測定結果が出る迅速な方法であり、特別な機械を使わないで目視で判定出来る簡便測定方法である。またはイムノクロマト法の試験紙片の読み取り機器である簡易測定機器である特許文献2の機器を使用することもできる。これらの方法を使用することにより、献血に訪れたボランティアから献血前の採血で血清フェリチン値を測定することが可能になり、採血を「鉄欠乏性貧血に陥る恐れの無い人」に限定する事が出来るようになった。 イムノクロマト測定法の試験紙片を図3に示す。発明の実施の1形態は、特許文献1を利用して測定する方法を活用して実施される。即ち区分Aの金コロイド標識抗体(20)に抗ヒトフェリチンマウスモノクローナル抗体と金コロイド標識ウサギIgG、区分Bのテストライン(21)に抗ヒトフェリチンマウスモノクローナル抗体、区分Cの対象のコントロールライン(22)に抗ウサギIgGヤギ抗体をそれぞれ固相化して、献血者の血清または血漿(検体)を検体注入口サンプルパット(23)に一定量注入すれば、検体はクロマト法の原理で展開し標識抗体(20)と結合しさらに区分B(21)及びC(22)の特異抗体と一定比率で結合するので、それを目視または専用機器によりそれぞれ色調を測定し機器内部の検量線からその濃度を定量する事ができる。(24)は余った検体を吸収するパットである。 図4に、反射光測定装置で読み取った光学的測定濃度(AD)値とフェリチン濃度の関係を示した。図3の区分B(21)のラインはフェリチン濃度に比例して変化する(26)が、区分C(22)のラインはフェリチン濃度等の影響を受けることなく一定となる図4(25)。図3区分C(22)の光学的測定濃度(AD)値を献血のカットオフ値であるフェリチン濃度20ng/mLに設定することにより図4の(25)と(26)を比較できる特許文献2のような光学的濃度測定装置を用いフェリチン濃度の定量が可能となり、採血の適否判断に適用できた。 当然特許文献1のように目視による比較も可能でありカットオフ値以下の濃度であるか否かの判定もできる。 このフェリチン濃度の測定は、従来から使われている一般的な分光光度計を用いる酵素抗体法や蛍光光度計や発光強度を測定する光度計等を用いる酵素抗体法でも実施する事ができる。それらを献血時に即応して検査できるシステムはこの分野の技術者には簡単に作成でき、そのカットオフ値を20ng/mLまたは25ng/mL或いは30ng/mL以上の検体についてのみ採血可能なようにすることは容易である。 発明の効果 医師法第24条で、献血者の健康を保護するために「採血によってその者の健康に障害を生ずると認められる者を献血者としないこと」と定められており、その中の1つが「貧血者又はその疑いのある者」となっているが、現実は血液の比重を測定して貧血の有無を判定する方法を使っているだけで、貯蔵鉄レベルの検査は全く行われていない。理由は現在献血の現場で、迅速にかつ簡単にフェリチン値の定量または半定量を実施する具体的な方法が無かったためで、厳密に法を適用すると献血そのものへの影響例えば献血希望者数の減少などの方が大きくなるので現実的でなかった。本願発明は、鉄欠乏性貧血の診断に必要な血清フェリチン値を献血現場で簡便に直接測定できる方法を提供できる事により、医師法第24条の理念を実践し、献血者の健康を守る点で画期的な発明である。 血清フェリチンの代謝 血清フェリチン値の低下概念図 イムノクロマト測定法の試験紙片 フェリチン濃度と光学的濃度との関係図 符号の説明 (1)血清フェリチンng/mL(2)血清フェリチン12ng/mL(3)血清フェリチンカットオフ20ng/mL(4)貯蔵鉄正常域mg(5)貯蔵鉄の欠乏域(6)ヘモグロビン g/dL(7)ヘモグロビン正常下限(8)現在献血に行くと採血される範囲(9)本願発明実施後採血される範囲(10)400mL献血で鉄欠乏性貧血に陥らない範囲(11)400mL献血後鉄欠乏性貧血に陥る範囲(12)本願実施で鉄欠乏性貧血に陥らない範囲(13)貯蔵鉄−200mg損失(14)400mL献血(15)貯蔵鉄の枯渇レベルの上限(16)鉄欠乏性貧血の範囲(17)鉄過剰域(18)本願献血カットオフレベル(19)400mL献血による血清フェリチン値の低下(20)区分A 金コロイド標識抗体(21)区分B テストライン(22)区分C コントロールライン(23)検体注入口サンプルパット(24)吸収パット(25)区分Cの光学濃度(26)区分Bの光学濃度 鉄欠乏性貧血を防止するために献血実施直前に予備採血した全血または血漿中のフェリチンの濃度を測定し、その値が一定値以上の場合にのみ献血用採血を行う事を特徴とする献血の採血適否判定方法 献血実施直前の貯蔵鉄レベルの指標であるフェリチン濃度の一定値を20ng/mL或いは25ng/mL或いは30ng/mLとする請求項1の献血用採血の適否判定方法 献血実施直前のフェリチンの濃度測定を行う測定法が免疫クロマト法を用いる定量法あるいは目視でカットオフレベルを判定できるイムノクロマト法を用いる半定量法あるいは酵素免疫抗体測定法、蛍光免疫抗体測定法、発光免疫抗体測定法である請求項1の献血の採血適否判定方法 【課題】鉄欠乏性貧血は極めて多い疾患であり、特に若い有月経期の女性に多いが閉経後の女性でもしばしば発見される。本願発明は、貯蔵鉄が減少、欠乏した人からの献血、換言すれば献血により鉄欠乏性貧血になる恐れのある人から献血のための採血をしないためなされたものである。鉄欠乏性貧血の確実な診断には血清フェリチン値の測定は不可欠な検査であると非特許文献1に記載してある。本願発明では、献血直前に血清フェリチンの定量または半定量を行い、鉄欠乏性貧血を起こす恐れのある供血者からの献血を行わないことで医師法にいう「貧血者又はその疑いのある者」からの採血をしないことが徹底できる。【解決の手段】選択図に示すように血清フェリチン値が健常といわれている約20ng/mLまたは30ng/mL未満の人から献血のための採血を400mL行うと、鉄欠乏性貧血にする恐れがあるので、それを簡易測定法で献血前に行う献血の採血適否判定法を提供する。【選択図】 図2