タイトル: | 特許公報(B2)_腸内環境下ビフィズス菌増殖剤 |
出願番号: | 2004126086 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07H 3/06,A61K 31/702,A61P 1/00,A23C 9/13,A23L 1/30 |
古賀 泰裕 相場 勇志 竹田 博幸 JP 4669235 特許公報(B2) 20110121 2004126086 20040421 腸内環境下ビフィズス菌増殖剤 ホクレン農業協同組合連合会 390022954 物産フードサイエンス株式会社 000226415 佐川 慎悟 100110766 小林 基子 100133260 金丸 清隆 100145126 古賀 泰裕 相場 勇志 竹田 博幸 20110413 C07H 3/06 20060101AFI20110324BHJP A61K 31/702 20060101ALI20110324BHJP A61P 1/00 20060101ALI20110324BHJP A23C 9/13 20060101ALN20110324BHJP A23L 1/30 20060101ALN20110324BHJP JPC07H3/06A61K31/702A61P1/00A23C9/13A23L1/30 Z C07H 3/06 A61K 31/702 A61P 1/00 A23C 9/13 A23L 1/30 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開平10−175867(JP,A) 特開2003−048901(JP,A) 特開2003−055231(JP,A) 特開2003−183303(JP,A) 食品と科学,2004年 1月10日,46,81−87 第102回精糖技術研究会講演要旨,2004年,16−19 精糖技術研究会誌,2004年,52,13−18 4 2005306781 20051104 12 20070419 早川 裕之 本発明は、腸内環境下ビフィズス菌増殖剤に関し、特に、ビフィズス菌数よりもクロストリジウム属菌数が多い有害菌優勢腸内環境下においてビフィズス菌を増殖させる腸内環境下ビフィズス菌増殖剤に関するものである。 従来より、各種のオリゴ糖は、プレバイオティクスの代表とも呼ばれており、人間の腸内に棲みついているビフィズス菌や乳酸菌等の有用菌だけを増殖させたり、その活性を高めることによって人間の健康に有利に作用する難消化性の食品成分として知られている。このようなプレバイオティクスの概念で捉えられるオリゴ糖は、賦活された腸内有用菌が食生活に関連した疾病に良い影響を与えたり、予防するという観点から捉えるならば、ビフィズス菌を増殖させるという根本的機能には確実性が要求されるべきである。 一方、従来のビフィズス菌の増殖作用を有するオリゴ糖として、例えば、特開平10−175867号公報には、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖からなる群より選択される1種又は2種以上のオリゴ糖、並びにラフィノースを有効成分として含有するビフィズス菌増殖促進組成物が記載されている(特許文献1)。特開平10−175867号公報 しかしながら、本願発明者らは、後述するように、ある種のオリゴ糖は、腸内環境が悪い人には有効に機能しないことを突きとめた。つまり、腸内有害菌であるクロストリジウム属菌数が腸内有用菌であるビフィズス菌数よりも多い、いわゆる有害菌優勢腸内環境下では、オリゴ糖によるビフィズス菌増殖機能が弱められたり、あるいはほとんど作用しないという事実をはじめて見出した。そして、プレバイオティクスの本質的な役割に鑑みれば、有害菌の優勢な腸内環境を有する人々である高齢者や疾病者にも腸内改善効果を有するオリゴ糖を提供しなければならない。 本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ビフィズス菌数よりもクロストリジウム属菌数が多い腸内環境下においても、クロストリジウムを減少させてビフィズス菌を効果的に増殖させることができるビフィズス菌増殖用オリゴ糖を提供することを目的としている。 本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖の特徴は、1−ケストースを主成分として有しており、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数よりも多い腸内環境下において前記ビフィズス菌を増殖させる点にある。 また、本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖の特徴は、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数よりも多い腸内環境下において前記ビフィズス菌を増殖させる量の1−ケストースを含有している点にある。 さらに、本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖の特徴は、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数よりも多い腸内環境下において前記クロストリジウム属菌数を減少させるようにニストースの含有量を減少させている点にある。 また、本発明において、前記1−ケストースの量がニストースよりも多く含有されていることが好ましい。 さらに、本発明において、前記1−ケストースの純度が90%以上であることが好ましい。 また、本発明において、前記1−ケストースは、純度が95%以上の結晶化されたケストースであることが好ましい。 さらに、本発明において、前記ニストースは、純度が少なくとも4%以下にされていることが好ましい。 また、本発明において、前記腸内環境は、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数より4倍以上の有害菌優勢腸内環境であることが好ましい。 本発明によれば、ビフィズス菌数よりもクロストリジウム属菌数が多い有害菌優勢腸内環境下においても、クロストリジウムを減少させ、ビフィズス菌を効果的に増殖させて腸内を改善することができる。『実験1:本発明の課題を実証する実験』 まず、本発明の課題となる事実、すなわち、クロストリジウム属菌等の有害菌数がビフィズス菌数に対して優勢な腸内環境下においては、ある種のオリゴ糖によるビフィズス菌増殖機能が弱められるという事実について説明する。 本実験1では、無菌状態で生育させたマウスに人間の糞便を摂取させることにより、有害菌が優勢の腸内環境を再現し、このマウスにオリゴ糖を投与して、ビフィズス菌数の推移を測定した。 実験に供したマウスは、無菌状態で誕生させた雄マウス(BALB/c系統)であり、これらのマウスに人間の糞便を100倍に希釈したものを0.5ml経口接種し、無菌状態で4週間生育させた。そして、マウスの糞便を回収して菌叢分析を行い、有害菌の定着が確認されたマウスのみを使用した。本実験1では、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約5倍である腸内環境不全マウス(ビフィズス菌数1×109.5CFU/g糞、クロストリジウム属菌数1×1010.2CFU/g糞)を作成した。ここで、CFUとは、群落形成単位(Colony Forming Unit)を意味するものである。前記腸内環境不全マウスを5匹で1群とし、オリゴ糖を投与する投与群と、投与しないコントロール群を用意した。 次に、本実験1で使用するオリゴ糖は、最も一般的なフラクトオリゴ糖(「FOS」とも表記する)であり、オリゴ糖の純度が95%以上の組成物粉末(1−ケストース36%、ニストース51%、フラクトシルニストース8%)を使用した。そして、このフラクトオリゴ糖25mgを水に溶解し、これを投与群の各マウスに毎日強制的に経口投与した。 一方、コントロール群のマウスには、投与群に与えたオリゴ糖と同量の水を飲ませて比較した。なお、その他の一般飼料や水は自由摂取とし、一般飼料としては、日本クレア株式会社製の無菌動物用飼料(CL1)を使用し、水は滅菌処理したものを使用した。 そして、図1に示すように、投与群およびコントロール群の各マウスについて、投与前、2週間後、4週間後および6週間後における各マウスの糞便中のビフィズス菌の菌数を測定し、その平均値を算出した。その結果を図2に示す。 図2に示すように、投与群マウスは4週間後にビフィズス菌数が1×1010.2CFU/g糞となり有意に増殖したものの、6週間後には1×107.9CFU/g糞にまで急激に減少し、コントロール群のビフィズス菌数よりも少なくなってしまった。 また、本実験1では、さらに腸内環境の悪い状況下におけるビフィズス菌の増減挙動を観測するため、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の8倍である腸内環境不全マウス(ビフィズス菌数1×109.0CFU/g糞、クロストリジウム属菌数1×109.9CFU/g糞)を作成し、同様の試験を実施した。その結果、図3に示すように、投与群マウスのビフィズス菌数は、2週目まではほぼ同レベルを保持できたものの、4週間後には大きく減少してコントロール群に比べて有意に減少してしまった。そして、6週間後には更に減少し、コントロール群とほぼ等しい水準の1×106.0CFU/g糞以下になってしまった。 一般に、人間の腸内に存在するビフィズス菌数は1×1010CFU/g糞であり、クロストリジウム属菌数は1×107.0〜1×108.0CFU/g糞であることが知られている(「腸内フローラの分類と生体」光岡知足編:学会出版センター発行(1992),P78,P121参照)。したがって、本実験1で作成した腸内環境は相当悪い場合ではあるが、有害菌が優勢な腸内環境下では最も一般的なフラクトオリゴ糖のビフィズス菌増殖作用が働かないということが実証された。『実験2:実験1の結果の原因を究明する実験』 つぎに、実験1の結果、腸内有害菌であるクロストリジウム属菌数が腸内有用菌であるビフィズス菌数よりも多い腸内環境下においては、フラクトオリゴ糖によるビフィズス菌増殖機能が低下するという事実の原因を究明する実験を行った。 本願発明者らは、有害菌優勢腸内環境下におけるフラクトオリゴ糖の機能低下の原因は、使用したフラクトオリゴ糖の組成にあるのではないかと推測した。すなわち、フラクトオリゴ糖を構成する組成物のうち、含量51重量%であるニストースと、含量36重量%である1−ケストースに着目した。そして、ニストースあるいは1−ケストースの存在下では、ビフィズス菌と拮抗関係にあるクロストリジウム属菌が代を経る従ってそれらニストースあるいは1−ケストースを利用できるようになり、ビフィズス菌の増殖を抑えてしまうようになるのではないかと考えた。 そこで、本実験2を進めるにあたり、まず、上記実験1で使用した糞便中から最も菌数で優勢なクロストリジウム属菌を分離することとし、その結果、それがクロストリジウム・イノキウム(Clostridium innocuum)であると同定した。 つづいて、実験に使用する培養株を作成した。前記クロストリジウム・イノキウムを、図4にその組成を示す液体培地に接種して24時間育成した。その後、再び液体培地に接種して継代培養を行い、図5に示すように、10代繰り返し実施して継代培養株とした。このとき、図4に示す基礎液体培地の組成に占めるオリゴ糖として、純度が99.9%の1−ケストースを使用して継代培養したものを「ケストース継代培養株」とし、純度が99.5%のニストースを使用して継代培養したものを「ニストース継代培養株」とした。また、比較のため、継代培養を行わない株を「非継代株」とした。なお、本実験2で使用した1−ケストースおよびニストースは、和光純薬工業株式会社のものを使用しており、純度はHPLC(High Performance Liquid Chromatography)により測定した。 つづいて、準備した以上3株をオリゴ糖資化試験に供した。つまり、各3株をそれぞれ同数となるように上記液体培地に接種し、37℃の嫌気条件下で24時間培養させた。そして、各株について、1−ケストースおよびニストースをそれぞれ主成分とするオリゴ糖が添加された液体培地に接種し、クロストリジウム・イノキウムの生育度を3時間,6時間,9時間,12時間,24時間経過毎に濁度(OD)によって測定した。また、比較対象のコントロール群を作成するために、各3株をオリゴ糖を添加しない液体培地に接種し、培養して各株のクロストリジウム・イノキウムの生育度を測定した。 本実験2の結果を図6に示す。図6(a)に示すように、非継代株のクロストリジウム・イノキウムは、オリゴ糖を添加した2つの群およびオリゴ糖無添加のコントロール群のどの液体培地であってもクロストリジウム・イノキウムの育成度は類似した増殖程度を示した。すなわち、非継代株のクロストリジウム・イノキウムは1−ケストースおよびニストースのいずれもほとんど利用することができず、資化性が認められなかった。 一方、図6(b)に示すように、ニストース継代株のクロストリジウム・イノキウムは、オリゴ糖無添加の培地および1−ケストース添加培地では一旦増殖した後に減少するが、ニストース添加培地では増殖し続け、ニストースを利用できるようになっていることが認められた。 また、図6(c)に示すように、ケストース継代株のクロストリジウム・イノキウムの場合もニストース継代株に似た挙動を示した。つまり、オリゴ糖無添加の培地および1−ケストース添加培地では減少傾向を示し増殖に利用できなかったが、ニストース添加培地では急速に増加して、ニストースの資化性のみが確認された。 なお、本実験2で使用したクロストリジウム・イノキウムは、人間の腸内に存在する頻度は中程度(11人中3人程度)であるが、存在すればその菌数は1×108CFU/g糞程度と高いことが報告されている(「腸内フローラの分類と生体」光岡知足編:学会出版センター発行(1992)、P125)。そこで、上記実験2の結果に一般性があるかどうかを確認するため、クロストリジウム・イノキウムの保存菌株であるクロストリジウム・イノキウムJCM1292株を使用して上記と同様の実験を実施した。 この結果を図7に示す。図7(a)に示すように、非継代株のクロストリジウム・イノキウムは、1−ケストース添加培地およびニストース添加培地のいずれもコントロール群とほぼ同様の増殖を示し、資化性が認められなかった。一方、図7(b)および図7(c)に示すように、ニストース継代株およびケストース継代株のクロストリジウム・イノキウムは、図6に示した実験結果と同様に、1−ケストースを利用できるようにはならないが、ニストース添加培地において著しく増殖し、ニストースを利用するようになることが認められた。 以上の実験2の結果からニストースを長期に渡って摂取すると、ビフィズス菌のみならずクロストリジウム属菌をも増殖させてしまう可能性が示唆された。『本発明の実施形態』 以上の実験結果に基づき、本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖の実施形態について図面を参照しつつ説明する。 本願発明者らは、実験2の結果を分析することにより、1−ケストースを主成分とし、ニストースの含有量を極力低減したオリゴ糖は、クロストリジウム属菌がビフィズス菌よりも優勢な腸内環境下であってもクロストリジウム属菌の増殖を抑制し、ビフィズス菌を増殖させられると考えた。本実施形態のオリゴ糖における1−ケストースの量は、有害菌優勢腸内環境下においてもクロストリジウム属菌を減少させ、ビフィズス菌を増殖させられる含有量であればよい。少なくとも実験1および実験2で使用したフラクトオリゴ糖における含量36%よりも高くなくてはならない。そして、クロストリジウム・イノキウムの継代株がニストースを利用できるように変化することを考慮すると、1−ケストースの量はニストースの量よりも高くなくてはならないであろう。より好ましくは、1−ケストースの純度がより高く、ニストースの純度がより低く抑えられているオリゴ糖がよい。 ここで、1−ケストースは、図8に示すように、1分子のグルコースと2分子のフルクトースからなる三糖類のオリゴ糖である。1−ケストースを主成分とするオリゴ糖は、特開昭58−201980公報に開示されているような各種酵素でショ糖を原料に酵素反応を行い、1−ケストース含有組成物を得た後、特開2000−232878号公報で開示されているようなクロマト分離により1−ケストースの純度を上げ、最後に特公平6−70075号公報に開示されているような結晶化法で95%以上の結晶として製造することができる。 このように製造された結晶オリゴ糖は、溶解性に優れており、難消化性で低エネルギーである。そして、ビフィズス菌に特異的に資化され、ビフィズス菌の増殖効果が高いという性質を有している。本実施形態のビフィズス菌増殖用オリゴ糖としては、食品新素材有効利用技術シリーズNo.13「1−ケストース」(社団法人菓子総合技術センター発行)に記載されている1−ケストースが最も望ましい。 そして、本実施形態のオリゴ糖は、クロストリジウム属菌に資化性のあるニストースの組成を極力低減することにより、クロストリジウム属菌の増殖が抑制され、このクロストリジウム属菌と拮抗関係にあるビフィズス菌の増殖を促進させる作用を奏するものと解される。 つぎに、本実施形態におけるビフィズス菌増殖用オリゴ糖のより具体的な実施例について説明する。 本実施例1におけるビフィズス菌増殖用オリゴ糖は、1−ケストースを98重量%、ニストースを1重量%、ショ糖を1重量%の組成からなるオリゴ糖、つまり、1−ケストースの純度が98%のフラクトオリゴ糖である。前記実施例1のビフィズス菌増殖用オリゴ糖に対し、上述の実験1と同条件下の実験を行いビフィズス菌およびクロストリジウム属菌数の変化を測定した。 すなわち、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約5倍である腸内環境不全マウスを5匹1群で準備し、これらのマウスに対し、本実施例1のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を1匹あたり25mg摂取させた。そして、各マウスの糞便中のビフィズス菌およびクロストリジウム属菌の増減数を測定した。 この結果を図9に示す。図9には実験1で使用したコントロール群のマウスと従来の一般的なフラクトオリゴ糖の結果を合わせて示す。図9(a)に示すように、従来のフラクトオリゴ糖の投与群では、4週目までは増加傾向を示したものの6週間後にビフィズス菌数が激減してコントロール以下に至っていたのに対し、本実施例1のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群は、全体的に緩やかな増加傾向を示し、6週間後においてもビフィズス菌数は1×109.8CFU/g糞と高い値を維持し、ビフィズス菌の急激な減少は発生しなかった。 一方、クロストリジウム属菌数については、図9(b)に示すように、従来のフラクトオリゴ糖の投与群では、2週目に僅かに減少するような傾向が認められたが、4週目および6週目と逆に増殖し、全体的には1×1010.0〜1×1010.2CFU/g糞と高めに維持されていた。これに対し、本実施例1のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群では、2週目にかけて10分の1近く程度まで減少し、その後4週目および6週目と僅かに増加傾向を示したが、全体的には1×109.4〜1×109.9CFU/g糞を示し、コントロール群に対して有意差をもって低い値を示した。 以上の実施例1によれば、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約5倍である腸内環境下において、1−ケストースの純度が98%のオリゴ糖を使用することにより、ビフィズス菌増殖作用が確認された。 本実施例2では、前述の実施例1で使用した1−ケストースの純度が98%のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を使用し、より腸内環境の悪い状況下におけるビフィズス菌およびクロストリジウム属菌の増減数を測定した。腸内環境不全マウスとしては、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約8倍(ビフィズス菌数1×109.0CFU/g糞、クロストリジウム属菌数1×109.9CFU/g糞)のものを使用した。 実施例2の結果を図10に示す。図10(a)に示すように、従来の一般的なフラクトオリゴ糖の投与群では、2週目以降にビフィズス菌数が激減していたのに対し、本実施例2のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群は、減少傾向は認められず、4週目を経過すると、ビフィズス菌数が増加し始め、6週目には、1×109.4CFU/g糞と有意に高いビフィズス菌数レベルを保持するに至った。一方、クロストリジウム属菌数については、図10(b)に示すように、一般的なフラクトオリゴ糖の投与群では、クロストリジウム属菌数が2週目までは減少傾向を示したが、その後、増殖傾向に転換し、全体にわたってコントロール群と同レベルの1×1010.0〜1×1010.4CFU/g糞であり、クロストリジウム属菌数の増加を充分に抑えることができていない。これに対し、本実施例2のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群では、クロストリジウム属菌数は投与後から徐々に減少し、6週目には1×108.8CFU/g糞と投与前の菌数の約10分の1以下にまで減少することが認められた。 以上の実施例2により、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約8倍である腸内環境下において、1−ケストースの純度が98%のオリゴ糖を使用することにより、ビフィズス菌増殖作用が確認された。 実施例3におけるビフィズス菌増殖用オリゴ糖は、1−ケストースを90重量%、ニストースを4重量%、ショ糖を6重量%の組成からなるオリゴ糖であり、つまり、1−ケストースの純度が90%のオリゴ糖である。また、腸内環境不全マウスは、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約4倍(ビフィズス菌数1×109.6CFU/g糞、クロストリジウム属菌数1×1010.2CFU/g糞)のものを作成した。これらマウス群に対して本第3実施例のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群、従来の一般的なフラクトオリゴ糖を投与したマウス群、オリゴ糖を投与しないコントロール群について、6週間経過後のビフィズス菌およびクロストリジウム属菌の増減数を測定した。 実施例3の結果を図11に示す。図11(a)に示すように、従来の一般的なフラクトオリゴ糖の投与群では、ビフィズス菌数が1×108.3CFU/g糞となり、コントロール群の菌数1×109.2CFU/g糞に比べて有意に減少してしまったのに対し、本実施例3のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群では1×1010.1CFU/g糞となり、コントロール群に比べて有意に高いレベルを維持することが確認された。また、クロストリジウム属菌の増減数については、図11(b)に示すように、従来の一般的なフラクトオリゴ糖の投与群では、1×1010.4CFU/g糞となり、コントロール群の菌数1×1010.2CFU/g糞と比べてほぼ同レベルであったのに対し、本実施例3のビフィズス菌増殖用オリゴ糖を投与したマウス群では、1×109.3CFU/g糞となり、コントロール群に比べて有意に低いレベルを維持した。 以上の実施例3により、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約4倍である腸内環境下において、1−ケストースの純度が90%のオリゴ糖を使用することにより、ビフィズス菌増殖作用が確認された。また、ニストースの純度が少なくとも4%以下にされていれば、ビフィズス菌増殖作用が発揮されることが確認された。 以上のような本実施形態によれば、オリゴ糖の組成をビフィズス菌に資化性のある1−ケストースを主成分とし、クロストリジウム属菌に資化性のあるニストースを極力含まない組成にすることにより、ビフィズス菌よりもクロストリジウム属菌等の有害菌が優勢な腸内環境下であってもクロストリジウム属菌数の増加を抑制し、ビフィズス菌を増殖させることができる。 なお、本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、本実施形態では、1−ケストースの他の組成としてニストースおよびショ糖により構成されているが、これに限られるものではなく、1−ケストース結晶そのものはもちろん、あらゆる素材と任意の比率で混合することができる。特に、有用生菌素材や、きのこ由来多糖類などの他有用物質との組み合わせが可能である。また、ヨーグルトに代表される乳酸菌醗酵食品と供用することもできる。また、食形態としては粉、その溶解物、打錠物、カプセル状等、任意の形態を選択することができる。本実施形態における実験1の実験方法を示す図である。本実施形態の実験1において、従来のフラクトオリゴ糖をクロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約5倍であるマウス群に投与した場合のビフィズス菌数の推移を示すグラフである。本実施形態の実験1において、従来のフラクトオリゴ糖をクロストリジウム属菌数がビフィズス菌数の約8倍であるマウス群に投与した場合のビフィズス菌数の推移を示すグラフである。本実施形態における実験2で使用した基礎液体培地の組成を示す表である。本実施形態における実験2で使用したクロストリジウム・イノキウムの継代培養方法を示す模式図である。本実施形態における実験2において、(a)非継代株、(b)ニストース継代株、(c)1−ケストース継代株を各培養地で培養した場合のクロストリジウム・イノキウム菌数の推移を示すグラフである。本実施形態における実験2において、(a)非継代株、(b)ニストース継代株、(c)1−ケストース継代株を各培養地で培養した場合のクロストリジウム・イノキウムJCM1292株の菌数の推移を示すグラフである。本発明に係るビフィズス菌増殖用オリゴ糖の主成分である1−ケストースの構造式を示す図である。本実施例1において、1−ケストース純度98%のビフィズス菌増殖用オリゴ糖の有害菌優勢腸内環境下における(a)ビフィズス菌、(b)クロストリジウム属菌の菌数の推移を示すグラフである。本実施例2において、1−ケストース純度98%のビフィズス菌増殖用オリゴ糖の有害菌優勢腸内環境下における(a)ビフィズス菌、(b)クロストリジウム属菌の菌数の推移を示すグラフである。本実施例3において、1−ケストース純度90%のビフィズス菌増殖用オリゴ糖の有害菌優勢腸内環境下における6週間後の(a)ビフィズス菌数、(b)クロストリジウム属菌数を示すグラフである。 1−ケストースの純度が90重量%以上であるオリゴ糖を有効成分として含んでなる腸内環境下ビフィズス菌増殖剤であって、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数よりも多い腸内環境下において前記クロストリジウム属菌数を減少させて前記ビフィズス菌を増殖させる前記剤。 前記1−ケストースの純度が90重量%以上であるオリゴ糖が、1−ケストースの純度が95重量%以上の結晶化されたオリゴ糖である、請求項1に記載の剤。 ニストースの純度が少なくとも4%以下にされている、請求項1または請求項2に記載の剤。 前記腸内環境が、クロストリジウム属菌数がビフィズス菌数より4倍以上の有害菌優勢腸内環境である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の剤。