タイトル: | 特許公報(B2)_シリコン単結晶ウェーハの評価方法およびこれを用いたシリコン単結晶ウェーハ |
出願番号: | 2004110437 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 25/72,H01L 21/66 |
塩多 孝明 JP 4127233 特許公報(B2) 20080523 2004110437 20040402 シリコン単結晶ウェーハの評価方法およびこれを用いたシリコン単結晶ウェーハ 株式会社SUMCO 302006854 森 道雄 100103481 塩多 孝明 20080730 G01N 25/72 20060101AFI20080710BHJP H01L 21/66 20060101ALI20080710BHJP JPG01N25/72 GH01L21/66 N G01N 25/72 H01L 21/66 特開2001−081000(JP,A) 特開平08−111444(JP,A) 特開平09−199558(JP,A) 特開2003−188242(JP,A) 特開2001−240496(JP,A) 4 2005292054 20051020 8 20060707 ▲高▼見 重雄 本発明は、シリコン単結晶ウェーハの加工工程で製品出荷前に適用できる評価方法であって、さらに詳しくは、ウェーハの表面層に潜在する加工歪み等のダメージを顕在化させたのち、顕在化した歪みを含むそのウェーハの表面性状を評価するシリコン単結晶ウェーハの評価方法およびこれを用いたシリコン単結晶ウェーハに関するものである。 通常、ウェーハは単結晶インゴットから切り出されたのち、側面部が欠けたり、シリコン屑が発生したり、または熱処理などで周辺部から歪みによる結晶欠陥の発生を防止するため、面取り加工が行われる。その後、表面の平坦度やウェーハの平行度を高めるために、ラッピングやポリシングによって鏡面研磨加工が施された後、洗浄して出荷される。 しかしながら、鏡面研磨加工後のウェーハであっても、選択エッチングすると潜在化していたダメージが顕在化し、ウェーハ表面に現れることがある。このような潜在化するダメージとして面取り加工等で残留する加工歪みがあるが、これらがウェーハ表面に潜在歪みとして存在すると、そこに形成される半導体素子の性能や歩留りに悪影響を及ぼすことになる。 このため、従来から、シリコン単結晶ウェーハの結晶欠陥や残存するダメージ等による結晶特性を評価および試験する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ウェーハに対しての高温酸化熱処理を、長時間にわたって行なうとともに、ボートの出し入れスピードを速くし、この熱処理を多段階で行なった後、ウェーハの結晶欠陥、加工特性の評価を行なうシリコン単結晶ウェーハの評価試験方法を提案している。 具体的には、シリコン単結晶ウェーハに対しての高温酸化熱処理を行なうにあたって、高温度条件の熱処理炉などにおいてボートの出し入れスピードを急激に速くし、しかも処理時間を極端に長くし、さらにこの処理を2回以上繰り返して行なうようにしているので、ウェーハの表面、裏面での欠け、傷付き、表面の結晶欠陥、バルクの結晶特性などを、顕在化できて確実に評価できるとしている。 ところが、特許文献1の熱処理は一段だけではスリップ等の発生は顕著でなく、二段階以上の熱処理を加えることが必要になる。また、高温で長時間熱処理を行うことからウェーハ表面が著しく酸化するので、選択エッチングやその他の手法で酸化膜を除去することが必要になる。 したがって、従来提案の評価試験方法では、煩雑な熱処理が必要となり、しかも、熱処理を実施したのち、選択エッチングを行うことが必要になることから、評価対象とされたウェーハにとっては破壊試験となり、良好な評価結果であってもその後製品として採用することができない。特開平5−21568号公報 前述の通り、従来のシリコン単結晶ウェーハの評価試験方法によれば、評価のための熱処理後において、選択エッチング等で酸化膜を除去することが必要になる。このため、評価対象とされたウェーハは、その後製品として適用できない。 また、従来の評価試験方法で採用される熱処理はバッチ処理で行われるため、ウェーハは熱処理ボートに搭載され、エッジ部を保持された状態で熱処理が施される。このため、熱処理後にエッジ部で顕在化したダメージが、面取り加工等の熱処理前に残留した加工歪みによるものか、熱処理にともなって新たに加えられた歪みによるものか判別できないことがある。 本発明は、従来のウェーハ評価試験方法が具備する問題点を解消するためになされたものであり、ウェーハ表面に潜在する歪みを顕在化してシリコン単結晶ウェーハの評価試験を行う場合に、煩雑な熱処理や酸化膜の除去処理を必要とすることなく、加工歪みの発生要因を適切に判断でき、しかもウェーハ表面の評価試験後において、良品については製品ウェーハとして出荷することができる、シリコン単結晶ウェーハの評価方法およびこれを用いたシリコン単結晶ウェーハを提供することを目的としている。 本発明者は、上記の課題を解決するため、種々の検討を加えた結果、ウェーハの表面層で潜在化する歪みは、面取り加工やラッピング工程において、加工工具によってウェーハ表面が押圧されたり、加工液や研磨剤に含有するミクロな異物によってウェーハ表面が押圧または擦過される場合に、局部的に発生する微少な加工歪みが残留するものであることを明らかにした。 さらに、検討を加えた結果、ウェーハ表面に潜在する加工歪みを顕在化するには、急速昇降温による加熱条件で顕在化処理を施すのが有効であることに着目した。すなわち、シリコン単結晶ウェーハに急速昇温の条件で900℃以上に加熱することによって、ウェーハ面内の中心部と外周面には著しい温度差が生じ、これに起因した熱応力が発生する。この熱応力が潜在的に残留する加工歪みに作用することによって、加工歪みが起点となりスリップが発生し、これにともなって、加工歪みの顕在化が促進される。 本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)シリコン単結晶ウェーハの評価方法および(2)のシリコン単結晶ウェーハを要旨としている。(1)シリコン単結晶ウェーハの表面層に潜在する歪みを顕在化し評価する方法であって、前記ウェーハに10〜300℃/secの昇降温速度で、900〜1250℃×1sec以上の加熱による顕在化処理を施したのち、顕在化した加工歪みを含む前記ウェーハの表面性状を評価することを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの評価方法である。 上記の顕在化処理は、加工歪みの発生要因を適切に判断できるようにするため、ウェーハ端部を保持しない枚葉式熱処理炉を用いて行うことが望ましい。(2)上記(1)の評価方法を、ウェーハの面取り加工後に用いることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハである。また、必要に応じて、上記(1)の評価方法を、ウェーハの面取り加工後に抜き取りで採用することができる。 本発明のシリコン単結晶ウェーハの評価方法によれば、急速昇降温の条件で短時間加熱による顕在化処理を施すことにより、煩雑な熱処理や酸化膜の除去処理を必要とすることなく、ウェーハの表面層に潜在する歪みを顕在化できるので、ウェーハ表面の特性を効果的に評価できるとともに、加工歪みの発生要因を適切に判断できる。 しかも、本発明の評価方法を用いたシリコン単結晶ウェーハは、ウェーハ表面性状の評価試験後において、良品については製品ウェーハとして採用することができるので、良品率の確保に併せ、評価試験にともなう製造コストの増加を抑制することができる。 本発明の評価方法では、評価対象とするシリコン単結晶ウェーハに10〜300℃/secの昇降温速度で、900〜1250℃×1sec以上の加熱による顕在化処理を施したのち、顕在化した歪みを含む前記ウェーハの表面性状を評価することを特徴としている。したがって、本発明の顕在化処理後の評価において、ウェーハの表面性状が良好であることが明らかであれば、製品ウェーハとしてそのまま出荷することができる。 評価対象とされるウェーハの表面性状は、ウェーハの表面層の該当位置にダメージが存在すると、そこに形成される半導体素子の性能、歩留りに悪影響を及ぼすものを対象とするものであり、本発明の顕在化処理によって顕在化された歪み等のダメージのみならず、スクラッチ等の目視で判定されるものも含まれる。 本発明の顕在化処理によって顕在化された歪みは、光学的な検査手段を用いるのが望ましい。例えば、ウェーハ面内に発生したスリップの発生状況を測定するには、内部応力の分布状態を目視的に観察することができる JENA WAVE社製歪み検査装置(SIRDTM)を使用するのが有効である。 本発明の顕在化処理では、昇降温速度を10〜300℃/secにする必要がある。昇降温速度が10℃/sec未満であると、ウェーハの中心部と外周面に急激な温度差を生ずることができず、加工歪みを起点としてスリップを確実に発生することができない。一方、昇降温速度が300℃/secを超えるようになると、ウェーハ面内に発生する温度差が大きくなり過ぎて、ウェーハに反りが発生し保持治具に安定して保持されない事態が発生するおそれがある。 さらに、本発明の顕在化処理では、加熱温度を900〜1250℃とし、加熱時間を1sec以上とする必要がある。加熱温度が900℃未満であると、ウェーハ面内の温度分布が比較的小さいために熱応力を充分に発生することができず、加工歪みを起点としてスリップを確実に発生することができない。一方、加熱温度が高温になる程、加工歪みを起点としたスリップの発生が顕著になるが、加熱処理炉の設備的制約、例えば、加熱源や熱処理用の石英治具の耐熱限界に制約され、加熱温度の上限を1250℃とする。上記の加熱温度は、さらに1150〜1250℃とするのが望ましい。 また、本発明の顕在化処理では、急速加熱によりウェーハ面内に大きな温度差を生じさせ、これに起因した熱応力を発生させることを意図している。したがって、長時間に及ぶ加熱時間は必要でなく、1sec程度の短時間加熱であっても、所期の作用を発揮させることができる。 本発明の顕在化処理では、ウェーハの裏面内部(端部を除く)を保持する、枚葉式熱処理炉を用いて行うことが望ましい。前述の通り、加熱処理をバッチ処理で行う場合には、ウェーハは熱処理ボートに搭載され、エッジ部が保持された状態で加熱処理が施される。このため、加熱処理後に顕在化したダメージが、加熱処理前の加工歪みによるものか、熱処理にともなって新たに加えられた歪みであるか判別できない。したがって、枚葉式熱処理炉を使用することによって、加工歪みの発生要因を適切に判断することができる。 本発明のシリコン単結晶ウェーハは、上記の顕在化処理を面取り加工後に実施したものである。面取り加工後にウェーハ表面性状を評価することによって、製品ウェーハとして採用できない不具合品を適宜排除でき、製品ウェーハの品質管理を確立するとともに、ポリシングによる鏡面研磨加工での無駄作業をなくすことが可能になる。 本発明のシリコン単結晶ウェーハは、上記の顕在化処理を面取り加工後に実施する場合に、抜き取りで実施することができる。面取り加工等の加工条件に応じて、全数の評価試験に限定されず、抜き取りによる評価試験を選択することによる、効率的な品質管理が可能になる。 本発明の評価方法による効果を確認するため、CZ法で育成した8インチの単結晶インゴットからスライシング加工で切り出したのち、その周辺部に面取り加工を施した供試ウェーハを準備した。 供試ウェーハは、縦型炉を用いてバッチ処理を行い、熱処理ボートのトップ部(供試ウェーハ:Top1、2、3)、ミドル部(同:Mid1、2)およびボトム部(同:Bot1、2、3)にチャージし、650℃で1時間のドナーキラー熱処理を実施した。 そこで、比較例はドナーキラー熱処理まで実施し、ウェーハをJENA WAVE社製歪み検査装置(SIRDTR)SirTecを使用し、スリップの発生状況を測定した。 次に、本発明例として、上記のドナーキラー熱処理後に、枚葉式のMattson製急速昇降温炉AST2800eを用い、昇温速度50℃/sec、加熱条件1200℃×10sec、および降温速度30℃/secの顕在化処理を実施した。 さらに、本発明例は上記の顕在化処理ののち、同様に、同じJENA WAVE社製歪み検査装置(SIRD)SirTecを使用し、ウェーハ表面のスリップ発生状況を測定した。 図1は、ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのトップ部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示しており、同(a)は比較例(ドナーキラー熱処理まま)の発生状況を、(b)は本発明例(ドナーキラー熱処理および顕在化処理)の発生状況をそれぞれ示している。 同様に、図2は、ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのミドル部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示しており、また、図3は、ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのボトム部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示している。それぞれ、同(a)は比較例の発生状況であり、(b)は本発明例の発生状況を示している。 図1および図2に示す測定結果では、比較例および本発明例のいずれからもスリップの発生は観察できなかった。ドナーキラー熱処理に際して、ボトム側の熱分布が最も乱れやすいことから、図3に示すように、熱処理ボートのボトム部にチャージされた供試ウェーハのうち、本発明例のBot2、3でウェーハの外周面近傍に顕在化された歪みが観察された。 図1〜図3の結果から、枚葉式の急速昇降温炉を用いた本発明の顕在化処理により、加工歪みを顕在化させ、加工歪みの発生要因を調査することが可能になり、製品出荷前のウェーハ、例えば、面取り加工後のウェーハに適用することによって、効率的に不具合品を選別、排除でき、半導体基板の品質管理に有効であることが認識された。 本発明のシリコン単結晶ウェーハの評価方法によれば、急速昇降温の条件で短時間加熱による顕在化処理を施すことにより、煩雑な熱処理や酸化膜の除去処理を必要とすることなく、ウェーハの表面層に潜在する歪みを顕在化できるので、ウェーハの表面性状を効果的に評価できるとともに、加工歪みの発生要因を適切に判断できる。 しかも、本発明の評価方法を用いたシリコン単結晶ウェーハは、ウェーハ表面の評価試験後において、良品については製品ウェーハとして出荷することができるので、半導体基板の品質管理に有効であるとともに、評価試験にともなう製造コストの増加を抑制することができる。 これにより、本発明の評価方法は、半導体基板を形成するためのシリコン単結晶ウェーハの表面性状を検査するのに最適な評価方法として、広い分野で適用することができる。ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのトップ部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示す図であり、同(a)は比較例の発生状況を、(b)は本発明例の発生状況をそれぞれ示している。ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのミドル部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示す図である。ドナーキラー熱処理時に熱処理ボートのボトム部にチャージされた供試ウェーハのスリップの発生状況を示す図である。 シリコン単結晶ウェーハの表面層に潜在する加工歪みを顕在化し評価する方法であって、前記ウェーハに10〜300℃/secの昇降温速度で、900〜1250℃×1sec以上の加熱による顕在化処理を施したのち、顕在化した加工歪みを含む前記ウェーハの表面性状を評価することを特徴とするシリコン単結晶ウェーハの評価方法。 前記顕在化処理が枚葉式熱処理炉を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶ウェーハの評価方法。 ウェーハの面取り加工後に請求項1または2に記載の評価方法が行われたことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ。 ウェーハの面取り加工後に抜き取りで請求項1または2に記載の評価方法が行われたことを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ。