生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_タンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法
出願番号:2004105644
年次:2010
IPC分類:C07K 1/113,C07K 1/08


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中澤 隆 山口 実 九山 浩樹 安藤 英治 上山 憲一 岡村 高明 乗岡 茂巳 JP 4556473 特許公報(B2) 20100730 2004105644 20040331 タンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法 株式会社島津製作所 000001993 喜多 俊文 100098671 江口 裕之 100102037 中澤 隆 山口 実 九山 浩樹 安藤 英治 上山 憲一 岡村 高明 乗岡 茂巳 JP 2003357787 20031017 20101006 C07K 1/113 20060101AFI20100916BHJP C07K 1/08 20060101ALI20100916BHJP JPC07K1/113C07K1/08 C07K 1/00−19/00 MEDLINE/CAplus/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特表平09−511225(JP,A) 特開平10−293130(JP,A) 特表平10−505598(JP,A) 特開平08−333389(JP,A) タンパク質化学I アミノ酸・ペプチド, 共立出版株式会社, 1982, pp.546-549, 580-585 Rapid Commun. Mass Spectrom., 2004.03.02, Vol.18, No.7, pp.799-807 2 2005139163 20050602 11 20060605 佐々木 大輔 本発明は、タンパク質・ペプチド化学分野に関する。 従来から、タンパク質・ペプチドのC末端にアミノ基、水酸基、チオール基などの求核基を有する化合物で修飾する方法として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)やN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などを用いてタンパク質又はペプチドのC末端を活性エステル化し、アミノ基と反応させる方法が行われている。しかし、これら試薬は、タンパク質・ペプチドのアスパラギン酸残基やグルタミン酸残基が有する側鎖カルボキシル基にも反応するために、C末端を選択的に修飾するためには、上記アミノ酸残基の側鎖カルボキシル基をあらかじめ保護しておく必要があった。 一方、特開平10−293130号公報には、タンパク質又はペプチドのC末端をオキサゾロンとし、C末端アミノ酸を遊離させ、得られたアミノ酸を分離し同定する操作を繰り返すことによって、タンパク質又はペプチドのC末端からのアミノ酸配列を決定する方法が開示されている。特開平10−293130号公報 そこで本発明の目的は、タンパク質又はペプチドのC末端を選択的に修飾する安価でかつ簡便な方法を提供することにある。 本発明者らは、鋭意検討した結果、オキサゾロン環形成反応を介してタンパク質又はペプチドのC末端を修飾することによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、以下の発明を含む。(1)C末端を修飾すべきタンパク質又はペプチドのC末端において、酸無水物を作用させることによって、分子内でオキサゾロン環を形成し、前記オキサゾロン環をペンタフルオロフェノール及び4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールから選ばれる活性エステル化剤を反応させて開環することによって活性エステルに変換し、その後、求核基を有する化合物を反応させることによって、前記C末端が前記求核基を有する化合物で修飾されたタンパク質又はペプチドを得る、タンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法。 (2)前記求核基がアミノ基、水酸基及びチオール基から選ばれる、(1)に記載のタンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法。 本発明によると、タンパク質又はペプチドのC末端を選択的に修飾する安価でかつ簡便な方法を提供することができる。本発明は、オキサゾロン環形成反応を用いることにより、生体試料中のタンパク質やペプチドに対して側鎖の保護などの前処理を施すことなく、C末端の選択的修飾を可能にするという重要な利点を有する。 本発明は、オキサゾロン環形成反応を用いる、タンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法である。すなわち、本発明においては、タンパク質又はペプチドのC末端側においてオキサゾロン環を形成し、適切な方法で開環することによって、C末端が修飾されたタンパク質又はペプチドを得る。オキサゾロン環の開環に際し、開環と同時にC末端が修飾されたタンパク質又はペプチドを直接得ても良い(第1形態)し、開環して活性エステルに一旦変換した後に、C末端が修飾されたタンパク質又はペプチドを得ても良い(第2形態)。以下、本発明の例として第1形態と第2形態とを挙げ、本発明を詳細に説明する。 まず、第1形態として、オキサゾロン環形成後、オキサゾロン環の開環と同時にC末端が修飾されたタンパク質又はペプチドを得る形態について説明する。 本発明においては、まず、C末端を修飾すべきタンパク質又はペプチドのC末端残基において分子内でオキサゾロン環を形成する反応を行う。この反応の一例を下記式(I)に示す。式(I)においては、無水酢酸を作用させてオキサゾロン環形成を行っている。 ここでオキサゾロン環は、アスパラギン酸残基やグルタミン酸残基の側鎖のカルボキシル基に対しては形成されない。従って、オキサゾロン環形成反応を利用する本発明においては、タンパク質又はペプチドのC末端を選択的に修飾することが可能になる。すなわち、従来のようにタンパク質又はペプチドの側鎖カルボキシル基をあらかじめ保護しておく必要がなくなる。 オキサゾロン環を形成する反応は、タンパク質又はペプチドにオキサゾロン環形成のための試薬を作用させることによって行う。 オキサゾロン環形成のための試薬としては、酸無水物を用いる。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水安息香酸、オルトスルホ安息香酸無水物、無水プロピオン酸等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、無水酢酸を用いることが特に好ましい。上記試薬を用いることは、以下の点で好ましい。まず、安価でかつ安定である。次に、反応後における過剰試薬の除去が簡単である。すなわち、過剰試薬を除去するために、従来のようにゲル濾過などのカラムクロマトグラフィーを使用する必要がなく、減圧乾燥によって簡便に行うことができる。 オキサゾロン環形成のための試薬の量としては、例えばペプチドの1当量以上を用いることができる。この試薬は、無溶媒で用いることができる。反応は、例えば、室温〜200℃で1分間〜一晩の条件で行うことができる。これらの条件は当業者が適宜決定することができる。反応終了後における過剰の無水酢酸の除去は、減圧することによって行うことができる。 次に、求核基を有する化合物を反応させる。求核基としては、アミノ基、水酸基、チオール基など、オキサゾロン環を開環させることができるものが挙げられる。求核基がアミノ基である化合物を用いた場合の、この反応の一例を下記式(II)に示す。この反応により、前記オキサゾロン環が開環し、タンパク質又はペプチドのC末端に修飾基が導入される。すなわち、求核基がアミノ基である化合物が一般式XNH2で表されるとき、タンパク質又はペプチドのC末端のカルボキシル基がCONHX基に変換される。求核基がアミノ基である化合物としては、各種アミノ酸の誘導体などが挙げられる。求核基が水酸基である化合物としては、側鎖水酸基を有するセリン、スレオニン、チロシンなどのアミノ酸の誘導体などが挙げられる。求核基がチオール基である化合物としては、側鎖チオール基を有するシステインなどのアミノ酸の誘導体などが挙げられる。ここで、アミノ酸の誘導体は、ペプチドやタンパク質であってもよい。 この反応は、上記のオキサゾロン環形成反応が行われたタンパク質又はペプチドと、求核基を有する化合物とを、塩基の存在下で撹拌させることによって行うことができる。 求核基を有する化合物は、例えばペプチドの1〜100当量用いることができ、溶液又は懸濁液で用いることができる。溶液又は懸濁液に用いられる溶媒又は懸濁用液としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機溶媒を用いる場合、求核基を有する化合物が溶液又は懸濁液全体に対して0.01〜50重量%となるように用いることができる。 塩基としては、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら塩基は、タンパク質又はペプチドの1〜100当量用いることができる。求核基を有する化合物は、上記有機溶媒に溶解又は懸濁させて用いるかわりに、これら塩基に溶解又は懸濁させて用いても良い。また、上記有機溶媒と上記塩基とを混合したものに溶解又は懸濁させて用いても良い。反応は、例えば、0〜200℃で1分間〜一晩の条件で行うことができる。これらの条件は、当業者が適宜決定することができる。反応終了後における過剰の塩基の除去は、減圧することによって行うことができる。 次に、第2形態として、オキサゾロン環を開環して活性エステルに一旦変換した後に、C末端が修飾されたタンパク質又はペプチドを得る方法について説明する。 上述の第1形態の方法は、非水系において非常に効率が高い。しかし、場合によっては、ペプチド側鎖官能基の脱水反応、ペプチド鎖の逐次的分解、Dakin-West反応などの副反応が起こることもあるため、以下に記載する条件を用いてオキサゾロン環形成を行うことがより好ましい。すなわち本発明においては、オキサゾロン環形成のための試薬として、酸無水物をカルボン酸との混合物(酸−酸無水物混合物)として用いることも好ましい。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができるが、後述するように、本反応においてカルボン酸の作用によりペプチド側鎖官能基に生じるアシル基の脱離の簡便さを考慮すると、ギ酸を用いることが好ましい。 酸無水物としては、上述の第1形態におけるものを用いることができる。特に好ましい酸−酸無水物混合物の一例としては、ギ酸と酸無水物とからなる混合物が挙げられる。 カルボン酸と酸無水物との混合物は、例えば体積基準で1:10〜10:1、好ましくは1:2〜2:1の混合比で用いることができる。本発明においては、前記混合比が1:1程度であることが特に好ましい。 このような酸−酸無水物混合物を用いてオキサゾロン環形成を行う場合、反応は、例えば、0〜200℃で1分間〜一晩の条件で行うことができる。これらの条件は、当業者が適宜決定することができる。反応終了後における過剰の酸−酸無水物混合物の除去は、減圧することによって簡便に行うことができる。 このように、カルボン酸と酸無水物との混合物を用いることは、下記の利点をさらに有する点で好ましい。 まず、上述のようなカルボン酸は大多数のタンパク質・ペプチドを容易に溶解させることができるため、本発明の適用範囲が飛躍的に広げられる。 次に、上記酸−酸無水物混合物として用いることによって、酸無水物を単独で用いる第1形態の方法よりも低温でオキサゾロンが生成するため、上記副反応の多くを抑制することができる。 また、カルボン酸と酸無水物との混合物を用いるオキサゾロン環形成は、活性エステル化剤の存在下で行う。すなわち、単一の反応溶液中に活性エステル化剤をさらに存在させることによって、生成したオキサゾロン環を速やかに活性エステルに変換することができる。従って、この活性エステル化反応は、上述のオキサゾロン環形成反応のための条件と同様の条件の下で行うことができる。 活性エステル化剤としては、一般にペプチド合成に用いられる比較的酸性度の高い水酸基を有する化合物を用いる。具体的には、ペンタフルオロフェノール及び4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールが挙げられる。これらは、溶媒や反応条件に応じて当業者が適宜選択することができる。ペンタフルオロフェノールや4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールは、その活性エステルが水溶液中でも比較的安定である点で好ましい。すなわち、ペプチドを取り扱う実験に適した条件である水系に広く適用することができるという利点を有する。 無水酢酸とギ酸とからなる酸−酸無水物混合物にペンタフルオロフェノールを添加した反応系を例に挙げ、オキサゾロン環形成及び活性エステルの生成の一例を下記式(III)に示す。 オキサゾロン環形成及び活性エステル生成の一連の反応は、以下のように説明することができる。C末端が修飾されるべきタンパク質又はペプチド、酸−酸無水物混合物、及び活性エステル化剤が共存する反応系中においては、タンパク質又はペプチドのC末端カルボキシル基と酸−酸無水物混合物とのオキサゾロン環形成反応、及び、活性エステル化剤の水酸基と酸−酸無水物混合物とのアシル化反応の2つの反応が競合する。そしてこの2つの反応のうち、オキサゾロン環形成反応の方が優先的に起こる。すなわち、酸−酸無水物混合物に対して、ペプチドのC末端カルボキシル基が、活性エステル化剤の水酸基よりも優先的に反応する。この結果、オキサゾロン環が形成される。次に、C末端カルボキシル基と酸−酸無水物混合物との優先的反応によってアシル化を免れた一部の活性エステル化剤の水酸基が、生成したオキサゾロンと反応する。この結果、活性エステルが生成する。 従って、実際の反応において上記酸−酸無水物混合物、活性エステル化剤及びC末端が修飾されるべきタンパク質又はペプチドの比率は、上述の反応機構を考慮して設定することができる。上記酸−酸無水物混合物を大過剰に用い、活性エステル化剤とタンパク質又はペプチドとをモル基準で1:10〜1000:1、好ましくは5:1〜50:1の混合比で用いることができる。本発明においては、前記混合比が20:1程度で用いることが特に好ましい。なお、使用する大過剰の酸−酸無水物混合物の具体的量としては、例えば通常の反応において溶媒として用いる程度の量など、当業者が適宜決定することができる。 なお、オキサゾロン環形成反応中においては、オキサゾロン環形成と同時にペプチド側鎖のアミノ基や水酸基もカルボン酸によってアシル化される場合がある。カルボン酸にギ酸を用いた場合は、これら側鎖官能基はホルミル化される。上述の第1形態の方法では、無水酢酸によってこれら側鎖官能基はアセチル化されるが、本形態の方法でギ酸を用いた場合のほうが、側鎖のアシル基をより簡便に除去することができるという点で好ましい。ギ酸によって導入されたホルミル基は、例えばヒドロキシルアミンやヒドラジンなどの試薬で除去することができる。 このように活性エステルを介する方法は、生成したオキサゾロン化合物が系中で速やかに開環して活性エステルへ変換されるため、オキサゾロン環の加水分解やペプチド鎖の逐次的分解などの副反応を抑制することができる。 このようにして得られた活性エステルは、反応液中の過剰量の酸−酸無水物混合物を減圧下で留去した後に、以下に述べる反応に使用することができる。 上述のように活性エステル化されたタンパク質又はペプチドのC末端は、求核基を有する化合物をカップリングさせることによって所望の形に修飾することができる。求核基を有する化合物としては、上述の第1形態で述べたものと同様のものを用いることができる。求核基を有する化合物が一般式XNH2で表わされるアミノ基含有化合物であるとき、この反応の一例を下記式(IV)に示す。 このカップリング反応は、上記活性エステルと求核基を有する化合物とを、適当な溶媒中で撹拌させる事によって行うことができる。 この反応においては、求核基を有する化合物の量としては、特に制限はない。上述したように、活性エステルは、その合成に用いた反応液中の過剰量の酸−酸無水物混合物を減圧下で留去するという簡便な処理によって次のカップリングに使用することができる。留去後の反応容器内には、活性エステルとともに、用いたカルボン酸と活性エステル化剤とのエステルが副生成物として残存している。カップリング反応においては、この副生成物のエステルが求核基を有する化合物を一部アシル化するという副反応が起こり得る。使用する活性エステル化剤によっては、求核基を有する化合物は副生成物のエステルと同等かそれ以上の量が必要となる場合もある。しかし、特に活性エステル化剤としてペンタフルオロフェノールを用いる場合などは、副生成物のペンタフルオロフェニルエステルが求核基を有する化合物より多量に存在するほうが、カップリング反応の副反応である一部アシル化が比較的抑えられて目的のカップリング反応がより効率よく起こる。 求核基を有する化合物は、溶液又は懸濁液で用いることができる。溶媒又は懸濁用液としては、上述の第1形態で述べたものと同様の有機溶媒を用いることができるが、活性エステルの種類によっては、水を用いることもできる。 このカップリング反応は、例えば、0〜200℃で1分〜48時間の条件で行うことができる。反応の結果、反応溶液中には、求核基を有する化合物がペプチドとカップリングして生成した目的のC末端修飾ペプチドと、求核基を有する化合物が前記ペンタフルオロフェノールによってアシル化された副生成物とが共存することになるが、両者の分離又は区別は公知の方法によって容易に行うことができる。 以上のようにして、タンパク質又はペプチドのC末端を選択的に修飾することができる。例えば、本発明の修飾法を用いてタンパク質・ペプチドのC末端にイオン化促進物質を導入することによって、MALDIのような質量分析において高感度分析を行うことが可能となる。また例えば、本発明の修飾法を用いてタンパク質・ペプチドのC末端をラベル化することによって、MS/MS分析においてより確かなアミノ酸配列情報を得ることが可能となる。さらに、C末端にアミノ酸誘導体を逐次反応させることにより、或いはフラグメント縮合法により、ペプチドの合成を行うことも可能となる。 以下、求核基を有する化合物として、システイン酸又はアルギニンメチルエステルを用いた例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。[実施例1] 本実施例では、ペプチド Z-Gly-Gly-Phe のC末端にシステイン酸を導入した。このペプチドは、N末端がZで表されるベンジルオキシカルボニル基で保護されている。 上記ペプチド41mg(0.1mmol)に無水酢酸0.5mlを加え、115℃で15分間反応させた。反応後、無水酢酸を減圧留去し、さらにトルエンを加えて2回減圧留去した。得られた生成物に、システイン酸17mgをN−メチルモルホリン0.5mlに懸濁したものを加え、一晩反応させた。反応後、過剰のN−メチルモルホリンを減圧留去し、その後、50重量%アセトニトリル水溶液1mlを加え、3時間撹拌した。得られた生成物をMALDI-TOF MSで確認を行った。図1に、このとき得られたスペクトルを示す。図1においては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンピークの相対強度(%Int.)を示す。図1によると、負イオン検出モードで563.08(m/z)が検出されており、従って、目的物が生成していることが確認された。[実施例2] 本実施例では、ペプチドZ-Gly-Gly-Phe のC末端にアルギニンメチルエステルを導入した。 上記ペプチド41mg(100μmol)に無水酢酸0.5mlを加え、115℃で15分間反応させた。反応後、無水酢酸を減圧留去し、さらにトルエンを加えて2回減圧留去した。得られた生成物に、アルギニンメチルエステル200μmolをN−メチルモルホリン0.5mlに懸濁したものを加え、一晩反応させた。反応後、過剰のN−メチルモルホリンを減圧留去し、その後、50重量%アセトニトリル水溶液1mlを加え、3時間撹拌した。得られた生成物をMALDI-TOF MSで確認を行った。図2に、このとき得られたスペクトルを示す。図2においては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンピークの相対強度(%Int.)を示す。図2によると、正イオン検出モードで584.27(m/z)が検出されており、従って、目的物が生成していることが確認された。[実施例3] ロイシン−エンケファリン(Leucine-enkephalin)のC末端を活性エステル化し、その後、アルギニンメチルエステルとのカップリングを行った。 Leucine-enkephalin 2.8mg(5μmol)を、ギ酸:無水酢酸=1:1(体積比)の混合物0.5mlに溶解し、ペンタフルオロフェノール18mg(100μmol)を加え、この結晶が溶けてから60℃で20分間加熱した。反応後、溶媒をロータリーエバポレーターを使用して減圧留去し、さらに残渣にトルエンを加えて減圧留去を繰り返した。残留物に、アルギニンメチルエステル二塩酸塩(H-Arg-OMe・2HCl)26.1mg(100μmol)を水0.5mlに溶解しさらにトリエチルアミン50μlを加えて塩酸塩を中和した液を加え、一夜室温で撹拌した。反応液はpH9から10であった。反応生成物は直接MALDI-TOF MSで分析した。 図3に、このとき得られたスペクトルを示す。図3においては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンピークの相対強度(%Int.)を示す。図3によると、正イオンモード740.27(m/z)が検出されており、N末端がホルミル化し、アルギニンのメチルエステルが加水分解した目的物の生成が確認された。本実施例1で得られたMALDI-TOF MSスペクトルである。本実施例2で得られたMALDI-TOF MSスペクトルである。本実施例3で得られたMALDI-TOF MSスペクトルである。 C末端を修飾すべきタンパク質又はペプチドのC末端において、酸無水物を作用させることによって、分子内でオキサゾロン環を形成し、前記オキサゾロン環をペンタフルオロフェノール及び4−スルホ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールから選ばれる活性エステル化剤を反応させて開環することによって活性エステルに変換し、その後、求核基を有する化合物を反応させることによって、前記C末端が前記求核基を有する化合物で修飾されたタンパク質又はペプチドを得る、タンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法。 前記求核基がアミノ基、水酸基及びチオール基から選ばれる、請求項1に記載のタンパク質又はペプチドのC末端を修飾する方法。


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