タイトル: | 特許公報(B1)_バリダマイシンをバリエナミンおよびバリダミンに変換する新規微生物 |
出願番号: | 2004102489 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12N1/20,C12P19/26 |
辻田 和彦 松尾 憲樹 根岸 愛 根岸 恵則 JP 3586684 特許公報(B1) 20040813 2004102489 20040331 バリダマイシンをバリエナミンおよびバリダミンに変換する新規微生物 合同酒精株式会社 303036670 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 浅野 康隆 100089048 的場 ひろみ 100101317 辻田 和彦 松尾 憲樹 根岸 愛 根岸 恵則 JP 2003367059 20031028 20041110 7C12N1/20C12P19/26C12P19/26C12R1:01C12P19/26C12R1:07 JPC12N1/20 AC12P19/26C12P19/26C12R1:01C12P19/26C12R1:07 7 C12N 1/00 C12P 19/00 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) 特公平06−069380(JP,B2) 3 FERM P-19694 FERM P-19695 12 20040331 長井 啓子 本発明は、バリエナミンおよび(または)バリダミンの製造法に関する。 バリエナミンおよびバリダミンから誘導されるバリオールアミンは、それぞれα−グルコシダーゼ阻害活性を有しており、肥満、脂肪過多、糖尿病などの予防、治療薬として有用である。これらのN−置換体にはさらに強力なα−グルコシダーゼ阻害活性を有するものが知られている(特許文献1、特許文献2および特許文献3)。バリエナミンやバリダミンは、バリオールアミンおよびそのN−置換体の原料化合物として重要なものである。 非特許文献1には、バリダマイシンAまたはバリドキシルアミンAにシュードモナス・デニトリフィカンス(Pseudomonas denitrificans)の菌体を作用させることにより、バリエナミン[valienamine;1L-(1,3,4/2)-4-アミノ-6-ヒドロキシメチル-5-シクロヘキセン-1,2,3-トリオール]およびバリダミン[validamine;1L-(1,3,4/2,6)-4-アミノ-6-ヒドロキシメチル-1,2,3-シクロヘキサントリオール]が得られることが示されている。 また、特許文献4には、フラボバクテリウム・サッカロフィルム(Flavobacterium saccharophilum )IFO13984が、特許文献5にはサイトファーガ・ヘパリナ(Cytophaga heparina)IFO12017、ATCC13125が、バリダマイシンをバリエナミンおよびバリダミンに変換しうることが開示されている。 さらに、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)IFO12664、IFO13258、IFO13259、IFO13532、IFO13533、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)IFO3058やアエロモナス・ハイドロフィラ・サブスピーシス・アナエロゲネス(Aeromonas hydrophila subsp. anaerogenes)IFO13282、同サブスピーシス・ハイドロフィラ(subsp. hydrophila)IFO13286、同サブスピーシス・プロテオリティカ(subsp. proteolytica)IFO13287、アエロモナス・パンクタータ・サブスピーシス・キャビエ(Aeromonas punctata subsp. cavice)IFO13288、およびアエロモナス・サルモニシダ・サブスピーシス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida subsp. salmonicida)IFO12659についても、バリダマイシンをバリエナミンおよびバリダミンに変換しうることが知られている(特許文献6)。特開昭57−64648号公報特開昭57−114554号公報特開昭57−200335号公報特開昭57−54593号公報特開昭58−152496号公報特公平06−69380号公報Journal of Chemical Society Chemical Communications 746−747頁 1972年 本発明者らは、公知微生物以外にもバリダマイシンやバリドキシルアミンを変換して効率よくバリエナミンおよび(または)バリダミンを生成しうるものが存在しないか鋭意研究を重ねてきた。その結果、ペニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物またはその処理物がバリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用して効率よくバリエナミンおよび(または)バリダミンを生成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、ペニバチルス属に属し、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用してバリエナミンおよび(または)バリダミンを生成しうる酵素を産生する微生物、またはその処理物をバリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用させることによるバリエナミンおよび(または)バリダミンの製造に関する。 本発明により、ペニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物によって、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンを変換し、効率的にバリエナミンおよび(または)バリダミンを製造することができるようになった。 本発明の方法において原料として用いられるバリダマイシンの化学構造は、バリドキシルアミンとD−グルコースから成っている。バリドキシルアミンはA、B、Gが知られており、D−グルコースとの組み合わせによりバリダマイシンはA、B、C、D、E、F、Gが存在することが知られている[ザ・ジャーナル・オブ・アンティバイオティックス(J.Antibiotics)43巻 722〜726頁(1990年)]。 本発明においては、各種バリダマイシン、各種バリドキシルアミンあるいはその混合物を原料として用いることができ、例えばバリダマイシン生産菌の培養物あるいはその処理物も有利に用いることができる。 本発明の方法で用いられる微生物は、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンをバリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する能力を有するぺニバチルス属に属する微生物であればいずれでもよく、ぺニバチルス属に属する微生物としては、例えば、ぺニバチルス・パブリ(Paenibacillus pabuli)NBRC13638、ぺニバチルス・アルギノリティカス(Paenibacillus alginolyticus)NBRC15375、ぺニバチルス・ロータス(Paenibacillus lautus)NBRC15380、ぺニバチルス・コンドロイチナス(Paenibacillus chondroitinus)NBRC15376、ぺニバチルス・グルカノリティカス(Paenibacillus glucanolyticus)NBRC15330、ぺニバチルス・アミロリティカス(Paenibacillus amylolyticus)NBRC13625、ぺニバチルス・アピアリウス(Paenibacillus apiarius)DSM5581、ぺニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)NBRC15307等があげられる。 本発明に使用する微生物として特に好ましくは、発明者らによって土壌から新たに分離されたペニバチルス属に属する菌株であるペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3)およびペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3)が挙げられる。当該菌株は、以下に示すような菌学的性質を有する。 1239N-3株の形態学的・生理性状学的性質。A.形態的性質培養条件 Nutrient agar(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 細胞の形態 桿菌(0.7-0.8×2.0-3.0μm) 細胞の多形性の有無 − 運動性 +(周毛) 胞子の有無 +(準端立)B.培養的性質1.培養条件(平板) Nutrient agar(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 色 半透明 光沢 + 色素生産 −2.培養条件 Nutrient broth(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 表面発育の有無 + 培地の混濁の有無 +3.培養条件 ゼラチン穿刺培養 30℃ 生育状態 + ゼラチン液化 −4.培養条件 リトマス・ミルク 30℃ 凝固 − 液化 −(酸化)C.生理学的性質1.グラム染色性 −2.硝酸塩の還元 −3.脱窒反応 −4.MRテスト +5.VPテスト −6.インドール産生 −7.硫化水素の生成 −8.デンプンの加水分解 +9.クエン酸の利用(Koser) − (Christensen) −10.無窒素源の利用 硝酸塩 + アンモニウム塩 +11.ウレアーゼ −12.オキシダーゼ +13.カタラーゼ +14.生育pH範囲 4.5 − 7.0 + 9.0 +15.生育温度範囲(℃) 5 − 10 +w 45 + 50 −16.嫌気的生育性 +w17.O-Fテスト(酸化/発酵) −/−18.糖類からの酸産生/ガス産生 L−アラビノース −/− D−キシロース +/−D−グルコース +/−D−マンノース +/−D−フラクトース +/−D−ガラクトース +/−マルトース +/−スクロース +/−ラクトース +/−トレハロース +/−D−ソルビトール −/−D−マンニトール +/−イノシトール +/−グリセリン +/−19.β−ガラクトシダーゼ活性 +20.アルギニンジヒドロラーゼ活性 −21.リジンデカルボキシラーゼ活性 −22.トリプトファンデアミナーゼ活性 −23.ゼラチナーゼ活性 −24.カゼインの分解活性 −25.馬尿酸の加水分解性 − 1239N-3株の同定は、バージェイズ マニュアル オブ システマティック バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)vol.2(1986)の記載に基づいて行った。培養温度は30℃で行った。本菌株は、グラム染色陰性を示す好気性桿状細菌で、内生胞子を形成し、運動性があり、カタラーゼ陽性及びオキシダーゼ陽性を示し、ウレアーゼ陰性で、グルコースから酸を生成した。10℃で生育したが50℃では生育しなかった。さらに、16S rDNA(塩基配列約1600bp)による解析を行った結果、本菌は図1に示すようにペニバチルス(Paenibacillus)群にクラスタリングされた。以上の結果より、本菌株をペニバチルス属に属する細菌と同定し、ペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3)と命名した。 1275H-3株の形態学的・生理性状学的性質。A.形態的性質培養条件 Nutrient agar(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 細胞の形態 桿菌(0.7-0.8×2.0-3.0μm) 細胞の多形性の有無 − 運動性 +(周毛) 胞子の有無 +(端立)B.培養的性質1.培養条件(平板) Nutrient agar(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 色 クリーム色 光沢 + 色素生産 −2.培養条件 Nutrient broth(Oxoid, Hampshire, England)培地 30℃ 表面発育の有無 − 培地の混濁の有無 +3.培養条件 ゼラチン穿刺培養 30℃ 生育状態 − ゼラチン液化 −4.培養条件 リトマス・ミルク 30℃ 凝固 − 液化 −(酸化)C.生理学的性質1.グラム染色性 −2.硝酸塩の還元 −3.脱窒反応 −4.MRテスト +5.VPテスト −6.インドール産生 −7.硫化水素の生成 −8.デンプンの加水分解 +9.クエン酸の利用(Koser) − (Christensen) +10.無窒素源の利用 硝酸塩 + アンモニウム塩 +11.ウレアーゼ −12.オキシダーゼ −13.カタラーゼ +14.生育pH範囲 4.5 − 7.0 + 9.0 +15.生育温度範囲(℃) 5 − 10 + 37 + 40 +16.嫌気的生育成 +w17.O-Fテスト(酸化/発酵) −/−18.糖類からの酸産生/ガス産生 L−アラビノース −/− D−キシロース +/−D−グルコース +/−D−マンノース +/−D−フラクトース +/−D−ガラクトース +/−マルトース +/−スクロース +/−ラクトース +/−トレハロース +/−D−ソルビトール −/−D−マンニトール +/−イノシトール +/−グリセリン +/−19.β−ガラクトシダーゼ活性 −20.アルギニンジヒドロラーゼ活性 −21.リジンデカルボキシラーゼ活性 −22.トリプトファンデアミナーゼ活性 −23.ゼラチナーゼ活性 −24.カゼインの分解活性 −25.馬尿酸の加水分解性 − 1275H-3株の同定は、バージェイズ マニュアル オブ システマティック バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)vol.2(1986)の記載に基づいて行った。培養温度は30℃で行った。本菌株は、グラム染色陰性を示す好気性桿状細菌で、内生胞子を形成し、運動性があり、カタラーゼ陽性を示し、オキシダーゼ陰性及びウレアーゼ陰性で、グルコースから酸を生成した。10℃から40℃の範囲で生育した。さらに、16S rDNA(塩基配列約1600bp)による解析を行った結果、本菌は図2に示すようにペニバチルス(Paenibacillus)群にクラスタリングされた。以上の結果より、本菌株をペニバチルス属に属する細菌と同定し、ペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3)と命名した。 ペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3)およびペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3)は、平成16年2月19日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにそれぞれFERM P-19694およびFERM P-19695として寄託されている。 本発明には、これらの微生物の突然変異株や遺伝子組換え技術により製造した組換え体等も用いることができる。 本発明に使用される微生物の培養に用いられる培地は、本発明の微生物が資化することができる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、本発明の微生物の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでも用いることができる。 培地中の炭素源の具体例としては、例えば、グルコース、フラクトース、グリセロール、マルトース、スクロース、ソルビトール、スターチ等の炭水化物、酢酸、クエン酸等の有機酸、アルコール類や糖蜜等があげられる。 窒素源の具体例としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、乳酸アンモニウム等の各種無機酸アンモニウム塩や有機酸アンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、大豆粉、綿実かす等があげられる。 無機物の具体例としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等があげられる。 また必要に応じて、チアミン、ビオチン等のビタミン類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、アデニン、グアニン等の核酸関連物質を添加してもよい。 本発明に用いられる微生物の培養は、振盪培養、通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましい。通気攪拌培養の場合は、発泡を防ぐため消泡剤を適量添加するのが好ましい。培養は10〜80℃の温度範囲が好ましく、最も好ましくは24〜40℃で、2〜8日程度培養する。培養中pHは5.0〜10.0、好ましくは6.0〜8.5に保持する。pH調整は無機酸あるいは有機酸、アルカリ溶液、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。 このようにして得られる微生物の培養物の処理物としては、培養菌体、該菌体の乾燥物、超音波処理物、溶菌酵素処理物、界面活性剤処理物、有機溶媒処理物、機械的摩砕物等の菌体処理物、菌体の蛋白分画物、菌体および菌体処理物の固定化物等があげられる。 こうして生成したバリエナミンおよびバリダミンを培養液または菌体懸濁液から分離、精製するには、公知の種々の方法を選択し組み合わせて行うことができる。例えば濾過、遠心分離、濃縮、乾燥、凍結乾燥、吸着、脱着、各種溶媒に対する溶解度の差を利用する方法(例えば沈殿、結晶化、再結晶)、クロマトグラフィーなどが用いられる。またバリエナミンおよびバリダミンが、水に可溶で、一般の有機溶媒に難溶な塩基性物質であることを利用して、いわゆる水溶性塩基性物質の単離精製に用いられる方法、例えばイオン交換樹脂、活性炭、ハイポーラスポリマー、セファデックス、セルロース、イオン交換セルロース、シリカゲル、アルミナ等を用いるクロマトグラフィーや吸脱着法が有利に用いられる。 上記のように、ペニバチルス属に属する微生物またはその処理物をバリダマイシンやバリドキシルアミンに作用させることによって、α−グルコシダーゼ阻害剤の製造原料として有用な化合物であるバリエナミンおよび(または)バリダミンを効率よく製造することができるようになった。本発明の方法は、更に発酵工学の分野で一般に行われている菌株の育種改良、培養条件や反応条件の改良を行うことによって、工業的規模のバリエナミンおよび(または)バリダミンの製造法の一つとして用いることが可能である。 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 ペプトン1.0g、酵母エキス0.7g、塩化ナトリウム0.3gを水100mLに溶解した前培養培地にペニバチルス・パブリ(Paenibacillus pabuli)NBRC13638を接種し、30℃で24時間振盪培養した。次いで、30L発酵槽中に硫酸アンモニウム150g、リン酸水素二カリウム105g、リン酸二水素カリウム45g、硫酸マグネシウム七水和物1.5g、酵母エキス30g、バリダマイシンAの粗粉末(バリダマイシンA含有率:約60%)100gを15Lの水に溶解し、消泡剤3gを加えてpH7.1に調整した。この主発酵培地に前述の微生物培養液を移植し、30℃、通気量15L/min、攪拌数250rpmで96時間培養を行った。 得られた培養液を遠心分離し、上澄み液全量をアンバーライトIRC-50(NH4+型、ローム・アンド・ハース社製)のカラム12Lに通過吸着させ、カラムを水36Lで洗浄後、0.5Nアンモニア水20Lで溶出した。溶出画分を約500mLまで減圧濃縮した。この濃縮液の1/10量(50mL)をダウエックス1×2(OH−型、ダウ・ケミカル社製)のカラムクロマトグラフィー(2.0L)に供し、水で溶出した。各溶出画分は薄層クロマトグラフィー(シリカゲル60F254(メルク社製);展開溶媒 n-プロパノール/酢酸/水(4:1:1);呈色試薬 ニンヒドリン;バリエナミンRf=0.42 バリダミンRf=0.35)で調べた。先に溶出してくるバリダミンの溶出画分を減圧濃縮後、凍結乾燥するとバリダミンの白色粉末が82mg得られた。バリダミンの後に溶出してくるバリエナミンの溶出画分を減圧濃縮後、得られた濃縮液にエタノールを加えるとバリエナミンの結晶が980mg得られた。 ペニバチルス・アルギノリティカス(Paenibacillus alginolyticus)NBRC15375を実施例1の前培養培地で、30℃で24時間振盪培養した。この培養液10mLを同組成の培地1Lを含む三角フラスコに移植し、30℃で24時間振盪培養した。次いで、200L発酵槽中に実施例1と同組成の硫酸アンモニウム1200g、リン酸水素二カリウム840g、リン酸二水素カリウム360g、硫酸マグネシウム七水和物12g、酵母エキス240g、バリダマイシンAの粗粉末(バリダマイシンA含有率:約60%)800gを120Lの水に溶解し、消泡剤24gを加え、pH7.1に調整した。この主発酵培地に前培養液全量を移植し、30℃、通気量120L/min、攪拌数170rpmで96時間培養を行った。 得られた培養液を遠心分離し、上澄み液全量をアンバーライトIRC-50(NH4+型、ローム・アンド・ハース社製)100Lにバッチで撹拌・吸着させ、水100Lで3回洗浄後、0.5Nアンモニア水150Lで2回バッチ溶出した。溶出液300Lを減圧濃縮・乾固した後、水3Lに溶解し、この溶解液の1/10量(300mL)をダウエックス1×2(OH−型、ダウ・ケミカル社製)のカラムクロマトグラフィー(12L)に供し、水で溶出した。各溶出画分は実施例1と同様に薄層クロマトグラフィー(シリカゲル60F254(メルク社製);展開溶媒 n-プロパノール/酢酸/水(4:1:1);呈色試薬 ニンヒドリン;バリエナミンRf=0.42 バリダミンRf=0.35)で調べた。先に溶出してくるバリダミンの溶出画分を減圧濃縮後、凍結乾燥するとバリダミンの白色粉末が924mg得られた。バリダミンの後に溶出してくるバリエナミンの溶出画分を減圧濃縮後、得られた濃縮液にエタノールを加えるとバリエナミンの結晶が8.72g得られた。 ペニバチルス・ロータス(Paenibacillus lautus )NBRC15380を実施例1と同様に操作し、バリダミンの白色粉末50mgとバリエナミンの結晶672mgを得た。 ペニバチルス・コンドロイチナス(Paenibacillus chondroitinus)NBRC15376を実施例1と同様に操作し、バリダミンの白色粉末39mgとバリエナミンの白色粉末523mgを得た。 ペニバチルス・グルカノリティカス (Paenibacillus glucanolyticus)NBRC15330について、24mmφの試験管に入れた尿素0.15%、硫酸アンモニウム0.15%、硝酸アンモニウム0.15%、リン酸二水素カリウム0.15%、リン酸水素二ナトリウム12水和物0.15%、硫酸マグネシウム七水和物0.03%、塩化カルシウム二水和物0.001%、硫酸亜鉛七水和物0.001%、硫酸第二鉄七水和物0.001%、硫酸マンガン五水和物0.0001%、酵母エキス0.03%、精製バリダマイシンA0.5%を含む培地10mL(pH7.0)に一白金耳植菌し、30℃, 250rpmで振盪培養した。培養5日目に酵母エキス0.2%量を添加し、さらに2日間同条件で培養を継続した。 培養終了後、培養液を遠心分離し、上澄み液1mLをセップパックプラスCM(ウォーターズ社製)に通過吸着させ、水2mLで洗浄後、0.2Nアンモニア水1.5mLで溶出した。溶出液を窒素風乾した後、水に溶解し分析用サンプルとした。HPLC(カラムはTransgenomic社製CARBOSep CHO-682 7.8φ×200mm移動相は20mM Pb(NO3)2、流速0.6mL/min)を使用、サンプルは10μLインジェクションで検出(RI)したところ、バリエナミン298μgの生成が確認された。 ペニバチルス・アミロリティカス(Paenibacillus amylolyticus)NBRC13625、ペニバチルス・アピアリウス(Paenibacillus apiarius)DSM 5581、ペニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)NBRC 15307について、実施例5と同様に操作し、HPLC分析を行った結果、それぞれ、180μg、91μg、41μgのバリエナミンの生成が確認された。 ペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3 FERM P-19694)について、24mmφの試験管に入れたペプトン1.0%、酵母エキス0.7%、塩化ナトリウム0.3%を含む培地10mL(pH7.1)に一白金耳植菌し、30℃、250rpmで24時間振盪培養した。この培養液1.8mLを同組成の培地180mLに移植し、30℃で24時間振盪培養し、前培養液とした。次に、30L発酵槽中に硫酸アンモニウム180g、リン酸水素二カリウム126g、リン酸二水素カリウム54g、硫酸マグネシウム七水和物8g、酵母エキス36g、バリダマイシンAの粗粉末(バリダマイシンA含有率:約60%)120gを18Lの水に溶解し、消泡剤7.2gを加えてpH7.1に調整した。この主発酵培地に前培養液全量を加え、30℃、通気量18L/min、撹拌数250rpmで135時間培養を行った。 得られた培養液を遠心分離し、上澄み液5LをアンバーライトIRC-50(NH4+型、ローム・アンド・ハース社製)のカラム2Lに通過吸着させ、カラムを水4Lで洗浄後、0.5Nアンモニア水6Lで溶出した。溶出画分を減圧濃縮し、これをダウエックス1×2(OH−型、ダウ・ケミカル社製)のカラムクロマトグラフィー(0.5L)に供し、水で溶出した。バリエナミンの溶出画分を減圧濃縮後、この濃縮液にエタノールを加えるとバリエナミンの結晶が4.97g得られた。本菌株は、ペニバチルス属に属する微生物の中でも、主発酵培地に添加したバリダマイシンAの量に対するバリエナミン変換量に優れ、バリエナミンの工業的規模の製造法として応用できることが示唆された。 ペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3 FERM P-19695)の前培養液を実施例7と同様に作製した。次に、30L発酵槽中に硫酸アンモニウム180g、リン酸水素二カリウム126g、リン酸二水素カリウム54g、硫酸マグネシウム七水和物8g、酵母エキス36g、バリダマイシンAの粗粉末(バリダマイシンA含有率:約60%)180gを18Lの水に溶解し、消泡剤7.2gを加えpH7.1に調製した。この主発酵培地に前培養液全量を加え、30℃、通気量18L/min、撹拌数250rpmで92時間培養を行った。 得られた培養液を遠心分離し、上澄み液3LをアンバーライトIRC-50(NH4+型、ローム・アンド・ハース社製)のカラム2Lに通過吸着させ、カラムを水6Lで洗浄後、0.5Nアンモニア水6Lで溶出した。溶出画分を減圧濃縮し、これをダウエックス1×2(OH−型、ダウ・ケミカル社製)のカラムクロマトグラフィー(0.5L)に供し、水で溶出した。バリエナミンの溶出画分を減圧濃縮後、この濃縮液にエタノールを加えるとバリエナミンの結晶が5.25g得られた。本菌株は、ペニバチルス属に属する微生物の中でも、主発酵培地に添加したバリダマイシンAの量に対するバリエナミン変換量に優れ、バリエナミンの工業的規模の製造法として応用できることが示唆された。 本発明により、ペニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物によって、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンを分解させ効率的にバリエナミンおよび(または)バリダミンを製造することができるようになった。ペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3)と近縁種との近隣結合法による系統樹ペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3)と近縁種との近隣結合法による系統樹 バリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用してバリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する能力を有するペニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物を、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンを含有する培地で培養することにより、バリエナミンおよび(または)バリダミンを製造する方法。 バリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用してバリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する能力を有するペニバチルス(Paenibacillus)属に属する微生物由来であって、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンを、バリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する活性を有する酵素源をバリダマイシンまたはバリドキシルアミンを含む反応液中に添加して、バリエナミンおよび(または)バリダミンを製造する方法。 バリダマイシンまたはバリドキシルアミンに作用してバリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する能力を有するペニバチルス属に属する微生物ペニバチルス・エスピー1239N-3(Paenibacillus sp.1239N-3 FERM P-19694)およびペニバチルス・エスピー1275H-3(Paenibacillus sp.1275H-3 FERM P-19695)。【課題】微生物変換法により、バリダマイシンまたはバリドキシルアミンからバリエナミンおよび(または)バリダミンを効率良く製造する。【解決手段】バリダマイシンまたはバリドキシルアミンを、効率的にバリエナミンおよび(または)バリダミンに変換する能力を有するペニバチルス(Paenibacillus)属またはバチルス(Bacillus)属に属する微生物を利用して、バリエナミンおよび(または)バリダミンを工業的規模で効率的に製造する。【選択図】 なし