タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族化合物の製造方法 |
出願番号: | 2004097903 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12P13/00,C12N1/20,C12N15/09,C12Q1/04 |
落合 淳 小田 忍 金子 桂 末広 聡人 加藤 純一 JP 2005278525 公開特許公報(A) 20051013 2004097903 20040330 芳香族化合物の製造方法 メルシャン株式会社 000001915 落合 淳 小田 忍 金子 桂 末広 聡人 加藤 純一 7C12P13/00C12N1/20C12N15/09C12Q1/04C12N1/20C12R1:38C12P13/00C12R1:38 JPC12P13/00C12N1/20 AC12N15/00 AC12Q1/04C12N1/20 AC12R1:38C12P13/00C12R1:38 5 OL 10 4B024 4B063 4B064 4B065 4B024AA03 4B024CA01 4B024GA27 4B063QA13 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QR32 4B064AE01 4B064BH04 4B064BH05 4B064CA02 4B064CC03 4B064CD07 4B064CD12 4B064CE08 4B064CE10 4B064DA01 4B065AA41X 4B065AC20 4B065BA23 4B065BB08 4B065BD32 4B065CA05 4B065CA10 4B065CA16 4B065CA44本発明は、医薬品の合成中間体として利用可能な芳香族化合物の生物学的変換による製造方法に関する。式(II)で示される芳香族化合物は主としてキナゾリン骨格を有する各種化合物の合成中間体として用いられている。キナゾリン骨格はさまざまな医薬の基本骨格として有用であり、例えば、4-アミノ-6,7-ジアルコキシキナゾリン骨格を有するイレッサが高い抗腫瘍効果をもつことが示されている(非特許文献1参照)。(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表し、R2はヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す)特に式(II-A)で示される6-アミノ-m-トルイル酸は、優れたヒスタミンH2アンタゴニスト活性を有する4-キナゾリノン誘導体の合成中間体として有用である(非特許文献2参照)。かかる6-アミノ-m-トルイル酸の製造方法としては、一般に入手可能なニトロ誘導体を還元によってアミノ基に変換する方法があり、収率も比較的良いが、原料となる6-ニトロ-m-トルイル酸は大変高価である(非特許文献3参照)。また、6-ニトロ-m-トルイル酸を得るには3-メチル安息香酸を硝酸と硫酸の混酸によるニトロ化方法があるが、一般に位置選択性および過剰ニトロ化などの反応を制御する必要がある(非特許文献4参照)。キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)62,5749(2002)ケミカル・アンド・ファルマシューティカル・ブレテン(Chemical&Pharmaceutical Bulletin)36,2955(1988)西村重雄、高木弦著「接触水素化反応 有機合成への応用」東京化学同人出版 211頁田村類著「実験化学講座(第4版)ニトロおよびニトロソ化合物」394頁本発明は、前記した従来技術が抱える問題点の少ない、生物学的変換方法による前記式(II)で示される芳香族化合物の新規な製造方法を提供するものである。本発明者らは、上記課題を解決するために広範な微生物群から下記式(I)で示される芳香族化合物の置換基R1に隣接するメチル基を位置選択的に酸化し、下記式(II)で示される芳香族化合物に変換しうる微生物を探索したところ、高い変換能を有する微生物を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。[1]式(I)、(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表す)で示される芳香族化合物の、式(II)、(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表し、R2はヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す)で示される芳香族化合物への生物学的変換方法による、式(II)で示される芳香族化合物の製造方法であって、(A)前記生物学的変換方法を行うことができるものであって、かつシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物の培養菌体またはその培養菌体の調製物の存在下で、式(I)で示される芳香族化合物をインキュベーション処理する工程、(B)インキュベーション処理液から式(II)で示される芳香族化合物を採取する工程、を含んでなる方法。[2]生物学的変換方法に用いる微生物の培養菌体が安息香酸を含有する培地で培養されたものである[1]記載の方法。[3]生物学的変換方法を行うことができる菌株が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株(FERM P-19756)またはシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.) AO37株(FERM P-19757)である[1]または[2]記載の方法。[4]前記式(I)で示される芳香族化合物を前記式(II)で示される芳香族化合物へ変換する能力をもつシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物。[5]シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株(FERM P-19756)またはシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.) AO37株(FERM P-19757)である[4]記載の微生物。本発明の生物学的変換方法では、シュードモナス(Pseudomonas)属に属し、前記式(I)で示される芳香族化合物を前記式(II)で示される芳香族化合物へ変換する能力を有する微生物の培養菌体またはその培養菌体の調製物であれば、種および株の種類を問うことなく使用することができる。またこれらの菌株から分離され、前記変換反応を触媒する酵素(以下、単に酸化酵素というときがある)を用いることもできる。そのような微生物の好ましい例として、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株およびシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.) AO37株を挙げることができる。シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年3月29日付けでPseudomonassp. AO11として寄託されている(受託番号 FERM P-19756)。またシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)AO37株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年3月29日付けでPseudomonassp. AO37として寄託されている(受託番号 FERM P-19757)。AO11株の16srRNA遺伝子の5'末端側の約500塩基の配列は、配列番号1のとおりである。BLASTを用いたDNA塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)による相同性検索の結果、本株の配列はシュードモナス・ニトロレデュセンス(株名 MS367、AccessionNo.AY297786)と99.8%の相同性を示し、最も近縁であることが示唆された。しかしながら、AO11株の16SrDNAに対し完全に一致する既知種基準株由来の配列は検索されなかったので、AO11株をシュードモナス(Pseudomonas)属に属する判断した。またAO37株の16srRNA遺伝子の5'末端側の約500塩基の配列は、配列番号2のとおりである。BLASTを用いたDNA塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)による相同性検索の結果、本株の配列はシュードモナス・ニトロレデュセンス(株名 MS367、AccessionNo.AY297786)と99.8%の相同性を示し、最も近縁であることが示唆された。しかしながら、AO37株の16SrDNAに対し完全に一致する既知種基準株由来の配列は検索されなかったので、AO37株をシュードモナス(Pseudomonas)属に属する判断した。なお、配列の決定は以下のとおり行った。被験菌株の培養液を集菌後、PrepMan Method(Applied Biosystems社)を用いてDNA抽出を行った。PCR増幅には、MicroSeq50016SrDNA Kit(Applied Biosystems社)を用い、PCR産物の精製、サイクルシークエンスには、MicroSeq500 16SrDNABacterial Sequencing Kit(Applied Biosystems社)を用いた。サーマルサイクラーには、GeneAmp PCRSystem 9600(Applied Biosystems社)を、DNAシークエンサーにはABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)を使用した。なお、基本操作はApplied Biosystems社のプロトコール(P/N4308132 Rev.A)に従った。本発明によれば、前述した性質をもつ微生物の培養菌体またはその培養菌体の調製物の存在下で、出発原料(基質)である式(I)で示される芳香族化合物がインキュベーション処理される。この処理は前記微生物を培養する際、または培養後その培養液中に基質を添加して行うか、あるいは場合により前記微生物の培養菌体を集菌し、例えばそのまま、もしくは凍結乾燥処理、噴霧乾燥処理、有機溶媒(例えばアセトン)処理、破砕処理等の前処理を行った後に使用するか、酸化酵素を粗精製または精製単離した後に緩衝液中に懸濁し、これに基質を添加し、インキュベーションして反応を行うこともできる。培養液への基質の添加は、培養前または培養開始後一定期間(2〜4日間)経過したときのいずれの時期に行ってもよい。上記菌体は上記の微生物を栄養源含有培地に接種し、好気的に培養することにより製造できる。このような培養菌体の調製物を用意するための微生物の培養および、基質が添加された状態で行われる微生物の培養は、原則的には一般微生物の培養方法に準じて行うことができるが、通常は液体培養による振とう培養、通気攪拌培養等の好気的条件下で実施するのが好ましい。特に安息香酸またはその塩を含有する培地を用いて微生物を培養すると変換能を著しく増大することができ、目的の式(II)で示される芳香族化合物を効率的に得ることができる。なお、栄養源含有培地への安息香酸またはその塩の添加量は、遊離の酸として、2〜4g/Lが好適である。培養に用いられる培地としては、これら微生物が生育できる培地であればよく、各種の合成培地、半合成培地、天然培地等いずれも利用可能である。培地組成としては炭素源としてのグルコース、マルトース、キシロース、フルクトース、シュークロース、スターチ、デキストリン、グリセロール、マンニトール、オートミール等を単独または組合せて用いることができるが、上述したとおり安息香酸またはその塩を用いることが好ましい。窒素源としては、ペプトン、肉エキス、大豆粉、カゼイン、アミノ酸、麦芽エキス、酵母エキス、尿素、クエン酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム等の有機窒素源、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等の無機窒素源を、単独または組合せて用いることができる。その他、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化コバルト等の塩類、ビタミン類も必要に応じ添加して使用することができる。なお、培養中発泡が著しいときは、公知の各種消泡剤を適宜培地中に添加することもできる。好適な培地として、例えば、Nutrient Broth培地(ペプトン5g/L、肉エキス3g/L、塩化ナトリウム5g/L)を挙げることができる。培養条件は、上記微生物が良好に生育し得る範囲内で適宜選択することができる。通常、pH5.0〜10.0、20〜30℃、好ましくはpH6.5〜8.0、25〜28℃であり、通常1〜3日、好ましくは3日程度培養する。上述した各種の培養条件は、使用する微生物の種類や特性、外部条件等に応じて適宜変更でき、最適条件を選択できる。また、培養菌体の調製物は、培養終了後、遠心分離または濾過により分離した菌体または凍結乾燥処理、噴霧乾燥処理、有機溶媒処理、破砕処理等の前処理を行った菌体を適当な溶液に懸濁して調製する。菌体の懸濁に使用できる溶液は、前記した培地であるか、あるいはトリス-酢酸、トリス-塩酸、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の緩衝液を単独または混合したものである。緩衝液のpHは、好ましくは5.0〜9.0、さらに好ましくは7.0〜8.5である。基質となる式(I)で示される芳香族化合物は、液体のままか、あるいは水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等に希釈して培養液または菌体の懸濁液に添加することができ、その添加量は、例えば培養液の場合、培養液1L当り0.1〜10gであり、好ましくは1〜5gである。基質の添加は一度に行ってもよいが、添加量が比較的多い場合は、数度にわたって、または連続的に行ってもよい。基質添加後は、1〜3日間、好ましくは1日間、振とうあるいは通気攪拌等の操作を行い、反応を進行させることにより基質である式(I)で示される芳香族化合物を、式(II)で示される目的の芳香族化合物に変換することができる。こうして生成した、目的の式(II)で示される芳香族化合物を反応混合物から単離するには、種々の既知精製手段を選択、組合せて行うことができる。例えば、疎水性吸着樹脂への吸着、溶出や、酢酸エチル、n-ブタノール等を用いた溶媒抽出、シリカゲル等によるカラムクロマトグラフィー法、あるいは薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留等を、単独あるいは適宜組合せ分離精製することができる。以下、本発明について具体例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例1土壌から分離した各種の微生物を2mlの安息香酸培地(安息香酸ナトリウム3g、硫酸アンモニウム3g、リン酸二水素カリウム1.2g、塩化ナトリウム5g、硫酸マグネシウム七水和物0.2g、酵母エキス0.5g、微量元素溶液(硫酸亜鉛七水和物100mg、ホウ酸300mg、塩化カルシウム六水和物200mg、塩化銅二水和物10mg、モリブデン酸ナトリウム二水和物30mg、塩化ニッケル六水和物20mg、塩化マンガン四水和物30mg、硫酸鉄七水和物2g、蒸留水1L)1ml、蒸留水1L、pH7.2、安息香酸ナトリウムは蒸留水に溶解し除菌フィルター(DISMIC-13CP、ADVANTEC社)により濾過した後、高圧蒸気滅菌した培地に添加)を含む遠沈管に植菌し、30℃、220rpmで2日間振とう培養を行った。生育が確認できた菌株について、前培養液を同培地100mlを含む500ml三角フラスコに植菌し、30℃、220rpmで2日間振とう培養を行った。培養後、菌体を高速遠心分離機により集菌(8,000rpm、20分間)した。得られた菌体を生理食塩水により洗浄後、グルコース1%(w/v)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)5mlに懸濁した。菌体懸濁液を遠沈管に1ml分注し、基質である2,4-ジメチルアニリン(ジメチルスルホキシドに溶解したもの)を0.1%(w/v)になるように添加した。その後、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、反応液に酢酸エチル500μlを加え抽出を行った。抽出後、高速遠心分離機に供し(12,000rpm、5分間)、酢酸エチル層を薄層クロマトグラフィー(Silicagel 60F254、Merck社、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:1)により分離した。基質の減少と生成物2-アミノ-メチルベンジルアルコール、6-アミノ-m-トルイル酸およびアントラニル酸の生成を5%リンモリブデン酸により検出した。高速液体クロマトグラフィーによる分析条件は以下の通りである。カラム:ZORBAX Rx-SIL(φ4.6×250mm、5μm、Agilent社)カラム温度:35℃溶離液:ヘキサン:イソプロピルアルコール:酢酸=50:50:0.01流速:0.75ml/min検出:240nm分析の結果、AO11株の反応液に生成物2-アミノ-5-メチルベンジルアルコールおよび6-アミノ-m-トルイル酸が存在することを確認した。また、AO37株の反応液に生成物アントラニル酸が存在することを確認した。実施例2実施例1により得られたシュードモナス・エスピーAO11株を実施例1と同様に安息香酸培地で前培養した。次いで得られた前培養液を同培地100mlを含む500ml三角フラスコ14本に植菌し、30℃、220rpmで2日間振とう培養を行い、1.4Lの培養液を得た。これを実施例1と同様の条件で処理して、菌体懸濁液70mlを調製した。これを遠沈管に分注(1ml/本)した後、2,4-ジメチルアニリンを0.1%(w/v)になるように添加し、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、反応液全量を酢酸エチル70mlにより二回抽出し、酢酸エチル層を得た。この酢酸エチル層を乾固し、乾固物を少量の酢酸エチルに溶解後、分取用薄層クロマトグラフィー(Silicagel 60F254、Merck社、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供することにより、生成物2-アミノ-5-メチルベンジルアルコール21.0mg(収率30%)および6-アミノ-m-トルイル酸3.8mg(収率5.4%)を単離し、1H-NMR分析および13C-NMR分析により構造を確認した。6-アミノ-m-トルイル酸の構造確認は、市販品(東京化成工業社)と比較することにより行った。2-アミノ-5-メチルベンジルアルコールの1H-NMRおよび13C-NMR(400MHz、CD3OD、標準物質TMS使用): 13C(ppm) 1H(ppm) 1 144.34 -2 127.23 -2 -CH2 63.55 4.54(s)3 130.56 6.91(s)4 128.60 -4 -CH3 20.50 2.19(s)5 117.60 6.66(d),J=8.15Hz6 130.20 6.87(d),J=8.15Hz実施例3実施例1により得られたシュードモナス・エスピーAO37株を実施例1と同様に安息香酸培地で前培養、次いで本培養し、400mlの培養液を得た。これを実施例1と同様の条件で処理して、菌体懸濁液20mlを調製し、遠沈管に分注(1ml/本)した後、2,4-ジメチルアニリンを0.05%(w/v)になるように添加し、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、反応液全量を酢酸エチル70mlにより二回抽出し、酢酸エチル層を得た。この酢酸エチル層を乾固し、乾固物を少量の酢酸エチルに溶解後、分取用薄層クロマトグラフィー(Silicagel 60F254、Merck社、展開溶媒はクロロホルム:メタノール=10:1)に供することにより、生成物アントラニル酸0.72mg(収率7.2%)を単離し、1H-NMR分析(市販品(和光純薬工業社)と比較)により構造を確認した。実施例4シュードモナス・エスピーAO11株を0.5%(w/v)グリセロールを含む安息香酸培地2mlに植菌し、実施例1と同様の方法によって培養を行った。培養後、培養液に2,4-ジメチルアニリンを0.05%((w/v)、約4.1mM)になるように添加し、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーによる分析を行った結果、生成物2-アミノ-5-メチルベンジルアルコール1.1mM、6-アミノ-m-トルイル酸0.62mMの生成を確認した。実施例50.5%(w/v)グリセロールを含む安息香酸培地を用いる他は、実施例2と同様の方法によってシュードモナス・エスピーAO11株を培養し、1.4Lの培養液を得た。次いで菌体を高速遠心分離機により集菌(8,000rpm、20分間)した。得られた菌体を生理食塩水により洗浄後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)80mlに懸濁した。菌体懸濁液を遠沈管に分注(1ml/本)した後、2,4-ジメチルアニリンを0.1%(w/v)になるように添加し、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、反応液全量を酢酸エチル80mlにより二回抽出し、酢酸エチル層を得た。その後、実施例2に示す方法により生成物6-アミノ-m-トルイル酸の単離を行った。構造確認は1H-NMR分析により行った。その結果、生成物6-アミノ-m-トルイル酸を16.8mg(収率21%)得た。安息香酸培地にグリセロールを添加した培地を使用することにより、実施例2と比較して生成物6-アミノ-m-トルイル酸の収率を上げることができた。実施例6シュードモナス・エスピーAO11株を0.5%(w/v)グリセロールを含む安息香酸培地1.4Lに植菌し、実施例1に示す方法によって培養を行った。培養後、実施例5に示す条件により菌体懸濁液80mlを調製し、遠沈管に分注(1ml/本)した後、2,4-ジメチルニトロベンゼンを0.1%(w/v)になるように添加し、30℃、220rpmで20時間反応を行った。反応後、反応液全量を酢酸エチル80mlにより二回抽出し、酢酸エチル層を得た。この酢酸エチル層を乾固し、乾固物を少量の酢酸エチルに溶解後、分取用薄層クロマトグラフィー(Silicagel 60F254、Merck社、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供することにより、生成物2-ニトロ-5-メチルベンジルアルコール1.9mg(収率2.4%)を単離し、1H-NMR分析および13C-NMR分析(400MHz、CDCl3、標準物質TMS使用)により構造を確認した。 13C(ppm) 1H(ppm) 1 145.65 -2 136.76 -2 -CH2-OH 62.84 4.95(d),-OH 2.55(t),J=6.66Hz3 130.72 7.51(s)4 145.65 -4 -CH3 21.60 2.47(s)5 129.06 7.26(overlap)6 125.37 8.04(d),J=8.44Hz式(I)、(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表す)で示される芳香族化合物の、式(II)、(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表し、R2はヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す)で示される芳香族化合物への生物学的変換方法による、式(II)で示される芳香族化合物の製造方法であって、(A)前記生物学的変換方法を行うことができるものであって、かつシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物の培養菌体またはその培養菌体の調製物の存在下で、式(I)で示される芳香族化合物をインキュベーション処理する工程、(B)インキュベーション処理液から式(II)で示される芳香族化合物を採取する工程、を含んでなる方法。生物学的変換方法に用いる微生物の培養菌体が安息香酸を含有する培地で培養されたものである請求項1記載の方法。生物学的変換方法を行うことができる菌株が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株(FERM P-19756)またはシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.)AO37株(FERM P-19757)である請求項1または2記載の方法。前記式(I)で示される芳香族化合物を前記式(II)で示される芳香族化合物へ変換する能力をもつシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物。シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) AO11株(FERM P-19756)またはシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.) AO37株(FERM P-19757)である請求項4記載の微生物。 【課題】 医薬品の合成中間体として利用可能な式(II)で示される芳香族化合物の生物学的変換による新規な製造方法の提供。【解決手段】 出発原料の芳香族化合物を、式(II)で示される芳香族化合物に変換する能力を有する微生物の培養菌体またはその培養菌体の調製物の存在下、出発原料をインキュベーション処理し、その処理液から目的物を採取する。なお微生物としては、シュードモナス(Pseudomonas)属に属するものを挙げることができる。【化9】(但し、式中、R1はアミノ基またはニトロ基を表し、R2はヒドロキシメチル基またはカルボキシル基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す)【選択図】 なし配列表