タイトル: | 公開特許公報(A)_レトロウイルスを用いて改変された細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞治療 |
出願番号: | 2004097253 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,A61K35/28,A61K35/76,A61P31/04,A61P35/00,C12N5/10 |
小野寺 雅史 濱仲 早苗 鍋倉 宰 中内 啓光 JP 2005278492 公開特許公報(A) 20051013 2004097253 20040329 レトロウイルスを用いて改変された細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞治療 株式会社リプロセル 503341675 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 小野寺 雅史 濱仲 早苗 鍋倉 宰 中内 啓光 7C12N15/09A61K35/28A61K35/76A61P31/04A61P35/00C12N5/10 JPC12N15/00 AA61K35/28A61K35/76A61P31/04A61P35/00C12N5/00 B 55 OL 58 特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年11月5日 日本免疫学会発行の「日本免疫学会総会・学術集会記録 第33巻」に発表 特許法第30条第1項適用申請有り 2003年11月25日 第26回日本分子生物学会年会組織委員会発行の「第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」に発表 4B024 4B065 4C087 4B024AA01 4B024BA32 4B024BA36 4B024CA02 4B024DA02 4B024EA02 4B024HA17 4B065AA91X 4B065AA91Y 4B065AA93Y 4B065AA97Y 4B065AB01 4B065BA02 4B065CA24 4B065CA45 4C087AA01 4C087BB44 4C087BC83 4C087NA14 4C087ZB26 4C087ZB33 4C087ZB35 本発明は、レトロウイルスを用いて改変された樹状細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞治療に関する。本発明の治療法によって、癌、腫瘍、病原体感染症(例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫など)の処置および/または予防が可能となる。さらに、本発明は、遺伝子治療に用いる細胞を患者に投与した後に、自殺させることにより、その投与した細胞による副作用を避けるための遺伝子に関する。 (養子免疫治療法) 免疫をもった個体の感作リンパ球、血清中の抗体、γグロブリン、またはプラスミドDNAなどを注入することによって免疫能を受動的に伝達する治療法、すなわち、養子免疫療法が公知である。 樹状細胞(DC)は、強い抗原提示能を持つ細胞である。樹状細胞は、T細胞依存性領域に達した後、抗原をクラスII抗原と結合した形で提示し、特異的T細胞(静止状態のT細胞を含む)を活性化することにより免疫応答を開始させる。そのため、樹状細胞は都合のよい標的である。しかし、樹状細胞は、抗原をクラスII抗原と結合した形で提示するため、その養子免疫治療を受ける患者由来の細胞を用いるか、またはその患者のMHCと実質的に同一のMHCを有する個体由来の細胞を用いる必要があり、従って、養子免疫治療に用いる樹状細胞を大量に調製することは困難である。従来法として公知の抗原提示細胞に対して、所望の抗原のフラグメントをパルスする方法では、所望の抗原を提示する細胞を増殖させることができず、そのため、樹状細胞の量的な問題を克服することができない。また、養子免疫において抗原となるペプチドを樹状細胞にパルスする方法を用いる場合には、抗原提示に適したフラグメントを選択する必要が生じるが、その選択には時間と労力がかかる。また、抗原となる腫瘍の確保も困難である。一方、樹状細胞に効率よく遺伝子導入を行い、かつその発現量を維持できる安全なベクターが従来知られていなかったため、ペプチドをパルスする以外に樹状細胞を養子免疫治療に用いる方法は、従来存在しなかった。 強力に抗原提示をすることができる細胞が確立されていないため、現在利用可能な養子免疫治療法では、十分な養子免疫反応を得ることができない(EBウイルスに関して、非特許文献1および2;CMVに関して、非特許文献3;DC/ペプチドに関して、非特許文献4および5)。従って、強力な抗原提示細胞である樹状細胞を用いて、養子免疫治療を行う方法の確立が望まれている。 (遺伝子導入ベクター) 哺乳動物細胞に対する遺伝子導入ベクターとしては、種々のベクターが公知である。例えば、代表的なウイルス由来のベクターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。 レトロウイルスベクターは、例えば、非特許文献6に記載され、・宿主染色体に組込まれるので、永続的な治療遺伝子の発現が期待できる;・血球系の細胞に高い感染効率を示す;・比較的毒性が少ない;および・扱いが比較的容易である;というような利点を有するため、遺伝子治療用ベクターとして用いられている。しかし、養子免疫治療のために樹状細胞に抗原提示を行わせるのに適切なベクターは未だ開発されていない。 従って、レトロウイルスによって外来遺伝子を導入された樹状細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞療法、ならびにその治療法のための細胞、およびベクターを提供することが望まれている。Nat Med 2:551−555, 1996.Blood 91:2925−2934, 1998.、Hum Gene Ther 11:1453−1463, 2000.、Nat Med 4:328−332, 1998.Cancer Res 61:6451−6458, 2001.Mann.R.ら,Cell(1983)33:153−159 本発明は、レトロウイルスによって外来遺伝子を導入された細胞(例えば、樹状細胞)を用いた養子免疫遺伝子細胞治療を提供することを課題とする。 本発明は、腫瘍抗原をコードする遺伝子をレトロウイルスによって樹状細胞に導入した、腫瘍の処置または予防のための組成物を提供することを課題とする。本発明は、ウイルス由来抗原をコードする遺伝子をレトロウイルスによって樹状細胞に導入した、ウイルス感染の処置または予防のための組成物を提供することを課題とする。 本発明は、患者より樹状細胞を単離する工程、レトロウイルスを用いて樹状細胞に腫瘍抗原をコードする遺伝子を導入する工程、その遺伝子導入された樹状細胞を患者に戻す工程を含む、癌の処置方法を提供することを課題とする。また、本発明はそのような処置方法に使用するためのレトロウイルスを提供することを課題とする。 本発明は、患者より樹状細胞を単離する工程、レトロウイルスを用いて樹状細胞にウイルス抗原をコードする遺伝子を導入する工程、その遺伝子導入された樹状細胞を患者に戻す工程を含む、ウイルス感染の処置・予防方法を提供することを課題とする。また、本発明はそのような処置方法に使用するためのレトロウイルスを提供することを課題とする。 本発明は、ヒト由来のタンパク質を使用し、静止細胞のアポトーシス誘導による細胞死を誘導し、かつ治療薬以外の薬剤で細胞の自殺を誘導する、自殺遺伝子を提供することを課題とする。 本発明は、一部、長い末端反復配列(LTR)内のネガティブコントロール領域(NCR)、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を導入したレトロウイルスを用いて抗原遺伝子を導入した造血前駆細胞を、サイトカインを用いて樹状細胞に分化させることによって、養子免疫治療に適した樹状細胞を調製できることを見出したことにより達成された。 したがって、本発明は、以下を提供する。1.所望の抗原をコードする遺伝子を導入された樹状細胞であって、ここで該樹状細胞は、幹細胞内で外来遺伝子を発現することが可能なベクターで該遺伝子を導入されている、樹状細胞。2.前記ベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、項目1に記載の樹状細胞。3.造血前駆細胞をサイトカイン存在下で培養することによって分化誘導された、項目1に記載の樹状細胞。4.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、項目2に記載の樹状細胞。5.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、項目4に記載の樹状細胞。6.前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、項目4に記載の樹状細胞。7.前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、項目2に記載の樹状細胞。8.前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、項目7に記載の樹状細胞。9.前記所望の抗原は、病原体由来の抗原である、項目1に記載の樹状細胞。10.前記所望の抗原は、ウイルス由来の抗原である、項目9に記載の樹状細胞。11.前記所望の抗原は、腫瘍抗原である、項目1に記載の樹状細胞。12.前記所望の抗原は、HER2抗原、WT1抗原、ヒトHERT抗原、MAGE−3抗原、またはMART−1抗原である、項目1に記載の樹状細胞。13.項目9に記載の樹状細胞を含有する、病原体感染の処置または予防のための、薬学的組成物。14.項目11に記載の樹状細胞を含有する、腫瘍の処置または予防のための、薬学的組成物。15.病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、項目9に記載の樹状細胞の使用。16.腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、項目11に記載の樹状細胞の使用。17.所望の抗原をコードする遺伝子を導入された樹状細胞を作製するための方法であって、以下:(1)レトロウイルスベクターを用いて、単離された造血前駆細胞に、所望の抗原をコードする遺伝子を導入する工程;および(2)サイトカイン存在下で該造血前駆細胞を培養して、該造血前駆細胞を樹状細胞に分化させる工程、を包含する方法。18.前記レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、項目17に記載の方法。19.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、項目18に記載の方法。20.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、項目19に記載の方法。21.前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、項目19に記載の方法。22.前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、項目18に記載の方法。23.前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、項目22に記載の方法。24.前記所望の抗原は、病原体由来の抗原である、項目17に記載の方法。25.前記所望の抗原は、ウイルス由来の抗原である、項目24に記載の方法。26.前記所望の抗原は、腫瘍抗原である、項目17に記載の方法。27.前記所望の抗原は、HER2抗原、WT1抗原、ヒトHERT抗原、MAGE−3抗原、またはMART−1抗原である、項目17に記載の方法。28.前記造血前駆細胞は、該樹状細胞を投与することによって処置される患者由来である、項目17に記載の方法。29.項目17に記載の方法によって作製された樹状細胞。30.項目29に記載の樹状細胞を含有する、薬学的組成物。31.項目24に記載の方法によって作製された樹状細胞を含有する、病原体感染の処置または予防のための、薬学的組成物。32.項目26に記載の方法によって作製された樹状細胞を含有する、癌の処置または予防のための、薬学的組成物。33.病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、項目24に記載の方法によって作製された樹状細胞の使用。34.腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、項目26に記載の方法によって作製された樹状細胞の使用。35.病原体由来の抗原をコードする遺伝子を含有するレトロウイルスベクターであって、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、レトロウイルスベクター。36.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、項目35に記載のレトロウイルスベクター。37.前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、項目35に記載のレトロウイルスベクター。38.前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、項目35に記載のレトロウイルスベクター。39.腫瘍抗原をコードする遺伝子を含有するレトロウイルスベクターであって、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、レトロウイルスベクター。40.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、項目39に記載のレトロウイルスベクター。41.前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、項目39に記載のレトロウイルスベクター。42.前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、項目39に記載のレトロウイルスベクター。43.病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、項目35に記載のレトロウイルスベクターの使用。44.腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、項目37に記載のレトロウイルスベクターの使用。45.癌を処置または予防するための方法であって、以下:(1)患者から造血前駆細胞を単離する工程;(2)レトロウイルスベクターを用いて、該造血前駆細胞に、腫瘍抗原をコードする遺伝子を導入する工程であって、該レトロウイルスベクターは、該腫瘍抗原をコードする遺伝子を含有し、そして、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、工程;(3)サイトカインを用いて、該遺伝子を導入した造血前駆細胞を樹状細胞に分化誘導する工程;および(4)該樹状細胞を、該患者に導入する工程、を包含する、方法。46.病原体感染を処置または予防するための方法であって、以下:(1)患者から造血前駆細胞を単離する工程;(2)レトロウイルスベクターを用いて、該造血前駆細胞に、病原体由来の抗原をコードする遺伝子を導入する工程であって、該レトロウイルスベクターは、該抗原をコードする遺伝子を含有し、そして、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、工程;(3)サイトカインを用いて、該遺伝子を導入した造血前駆細胞を樹状細胞に分化誘導する工程;および(4)該樹状細胞を、該患者に導入する工程、を包含する、方法。47.前駆細胞を用いて、所望の抗原をコードする遺伝子を導入された分化細胞を作製するための方法であって、以下:(1)レトロウイルスベクターを用いて、単離された前駆細胞に、所望の抗原をコードする遺伝子を導入する工程;および(2)該前駆細胞を培養して、所望の細胞に分化させる工程、を包含する方法。48.前記レトロウイルスは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、項目47に記載の方法。49.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、項目48に記載の方法。50.前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、項目49に記載の方法。51.前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、項目49に記載の方法。52.前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、項目48に記載の方法。53.前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、項目52に記載の方法。54.項目47に記載の方法によって作製された分化細胞。55.項目54に記載の分化細胞を含有する、組成物。 本発明によって、レトロウイルスを用いて外来遺伝子を導入された樹状細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞療法が提供される。本発明の一態様を模式的に図3に示す。本発明の効果として、(1)遺伝子改変樹状細胞の大量調製が可能である、(2)導入遺伝子が過剰発現し、樹状細胞中でも発現が維持され得る、(3)多種のMHCクラスIエピトープ拘束性CTLの誘導が可能である、(4)MHCクラスII拘束性ヘルパーT細胞が誘導される可能性がある、という点が挙げられ得る。その結果、本発明によって、強力な癌抗原特異的細胞性・体液性免疫反応が惹起され得る。本発明によって、腫瘍抗原をコードする遺伝子をレトロウイルスによって樹状細胞に導入した、腫瘍の処置または予防のための組成物が提供される。本発明によって、ウイルス由来の抗原をコードする遺伝子をレトロウイルスによって樹状細胞に導入した、ウイルス感染の処置または予防のための組成物が提供される。 また、本発明によって、患者より樹状細胞を単離する工程、レトロウイルスを用いて樹状細胞に抗原をコードする遺伝子を導入する工程、その遺伝子導入された樹状細胞を患者に戻す工程を含む、癌、ウイルス感染の処置・予防方法が提供される。また、本発明によって、そのような処置方法に使用するためのレトロウイルスが提供される。 さらに、本発明によって新規の自殺遺伝子が提供される。 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。 (用語の定義) 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。 本明細書において使用される場合、「遺伝子治療」とは、外来遺伝子を生体内に導入することによって行われる治療をいう。 本明細書で使用される場合、「遺伝子導入」とは、生体内またはインビトロにおいて、標的細胞内に、天然、合成または組換えの所望の遺伝子をコードする核酸またはその核酸の断片を、導入された遺伝子がその生物学的活性を維持するように、導入することをいう。本発明において導入される遺伝子または遺伝子断片は、特定の配列を有するDNA、RNAまたはこれらの合成アナログである核酸を包含する。また、本明細書において使用される場合、遺伝子導入、トランスフェクション、およびトランスフェクトは、互換可能に使用される。 本明細書で使用される場合、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」は互換可能に使用される。「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。 本明細書で使用される場合、「外来遺伝子」とは、遺伝子導入ベクター内に含まれ、遺伝子導入ベクターによって遺伝子が導入される宿主細胞以外の起源の核酸をいう。本発明の1つの局面において、この外来遺伝子は、遺伝子導入ベクターによって導入された遺伝子が発現するために適切な調節配列(例えば、転写に必要なプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリA付加シグナル、ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなど)と作動可能に連結される。本発明の別の局面において、外来遺伝子は、この外来遺伝子の発現のための調節配列を含まない。 遺伝子導入ベクター内に含まれる外来遺伝子は、代表的にはDNAまたはRNAの核酸分子であるが、導入される核酸分子は、核酸アナログ分子を含んでもよい。遺伝子導入ベクター内に含まれる分子種は、単一の遺伝子分子種であっても、複数の異なる遺伝子分子種であってもよい。 本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。 本明細書において、核酸分子の「断片(フラグメント)」とは、参照核酸分子の全長よりも短く、本発明の薬学的組成物の製造に充分な長さを有するポリヌクレオチドをいう。したがって、本明細書におけるフラグメントは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。 本明細書において使用される場合、「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。 本明細書において「生物学的活性」は、「機能的性質」と互換可能に用いられる。本明細書において、「生物学的活性」および「機能的性質」とは、ある因子(例えば、核酸)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が増殖因子をコードする遺伝子である場合、その機能的性質は、その増殖因子を宿主細胞内で発現させ、好ましくは、その発現によって細胞の増殖を促進することを包含する。例えば、ある因子が酵素をコードする遺伝子である場合、その機能的性質は、その酵素活性を宿主細胞内で発現させ、好ましくは、その酵素活性が検出可能になることを包含する。別の例では、ある因子がリガンドをコードする遺伝子である場合、そのリガンドが対応するレセプターへ結合するリガンドを発現させ、好ましくは、そのリガンドの発現によって、そのリガンドに対応するレセプターを有する細胞を変化させることを包含する。 本明細書において使用される場合、遺伝子の「制御領域」とは、遺伝子の発現を制御する領域をいう。代表的な制御領域としては、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリA付加シグナル、ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書において使用される場合、遺伝子の「プロモーター」とは、そのプロモーターと作動可能に連結された遺伝子の転写を開始し得る核酸配列をいう。 本明細書において使用される場合、「細胞傷害遺伝子」とは、宿主哺乳動物細胞内において発現した場合に、その宿主哺乳動物細胞を示させる遺伝子をいう。細胞傷害遺伝子としては、例えば、以下の種々の遺伝子が周知である:ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼ。なお、ヘルペスチミジンキナーゼは、カンシクロビル存在下で、細胞傷害遺伝子として作用する。 本明細書において使用される場合、「養子免疫」とは、免疫動物のリンパ球を移入することにより非免疫動物に免疫を与えることをいう。 本明細書において使用される場合、「養子免疫治療」は、「養子免疫療法」と互換可能に使用され、免疫をもった個体の感作リンパ球、血清中の抗体、γグロブリン、またはプラスミドDNAなどを注入することによって免疫能を受動的に伝達する治療法をいう。 本発明においてレトロウイルスベクターを用いて発現する所望の抗原としては、例えば、病原体由来の抗原、腫瘍抗原などが挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書において使用される場合、「病原体」とは、疾病を起こす物質であって、例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫が挙げられるが、これらに限定されない。病原体ウイルスとしては、HIV、HBV、HCV、単純ヘルペスウイルス、、HTLV-1、インフルエンザウイルス、ヒトパピローマウイルス、およびポリオウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。病原体細菌としては、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、インフルエンザ桿菌、および肺炎球菌が挙げられるが、これらに限定されない。病原体真菌としては、Candida属の真菌、およびカニリ原虫が挙げられるが、これらに限定されない。「病原体由来の抗原」とは、病原体が有する抗原であり、一般的には、患者によって、異種であると認識される抗原である。 本明細書において使用される場合、「癌」は、そうでないことが明示されない限り「腫瘍」と互換可能に用いられ、種々の悪性新生物を意味する。 本明細書において使用される場合、「腫瘍抗原」とは、腫瘍に関連している抗原、または特定の腫瘍細胞に特異的に発現している抗原をいう。腫瘍抗原としては、HER2、WT1、ヒトHERT、MAGE−3、およびMART−1が挙げられるがこれらに限定されない。 本明細書において使用される場合、「樹状細胞」とは、脳を除く生体内各種組織器官に分布する骨髄細胞由来の樹枝状形態をとる細胞をいう。この細胞群には、リンパ系樹状細胞、ランゲルハンス細胞、ベール細胞、相互連結細胞、間質細胞などが含まれる。樹状細胞は、MHCクラスI抗原およびクラスII抗原強陽性である。樹状細胞は、生体内では、異物の侵入により開始される炎症反応に伴い、異物をピノサイトーシスにより取り込んで、局所から輸入リンパ管を経て所属リンパ節あるいは血流に乗って脾臓へと移動する。T細胞依存性領域に達した後、抗原をクラスII抗原との複合体として提示し、特異的T細胞を活性化させることにより免疫応答を開始させる。 本発明において使用される場合、「造血前駆細胞」とは、種々の血球系細胞の前駆細胞をいい、そうでないと明示しない限り、多能性幹細胞、造血系細胞に特化した造血幹細胞、多能性前駆細胞、骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞を包含する。 本発明において使用される場合、「分化」とは、1つの単純な系または細胞集団が、2つ以上の互いに異質な系または細胞集団に分かれることをいう。 本明細書において「予防(する)」は、生物が病気にかかるかまたは異常な状態を発生する可能性を減少させることをいう。 本明細書において「処置(する)」は、治療効果を有すること、および生物における異常な状態を少なくとも部分的に軽減するかまたは抑止することをいう。 本明細書において「抗原提示細胞」は、外来物質を取り込んで、細胞内でペプチド断片にまで分解し、次に、MHCクラス分子の溝にそのペプチドを入れて細胞表面に出す細胞をいう。抗原提示細胞としては、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞、活性化T細胞が挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書において「自殺遺伝子」とは、宿主細胞内に導入された場合に、その宿主細胞を死滅させる遺伝子をいう。好ましくは、その自殺遺伝子は、細胞外の刺激(例えば、薬剤、熱、温度、光、リガンド分子、レセプターアゴニスト、レセプターアンタゴニスト)によって、細胞を死滅させるように、その自殺機能が制御される。 本明細書において使用される場合、「キット」とは、複数の容器、および製造業者の指示書を含み、そして各々の容器が、本発明の薬学的組成物、その他の薬剤、およびキャリアを含む製品をいう。 本明細書において使用される場合、「被検体」とは、本発明の薬学的組成物が投与される対象であり、ヒト、マウス、ウシ、ニワトリなどの動物が挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。 本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。 必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。 (一般技術) 本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。 人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。 (遺伝子治療) 特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫など)の感染症、および癌、腫瘍を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。 当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。 遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。 (レトロウイルスベクターの調製および使用の一般的方法) 遺伝子導入ベクターとしてのレトロウイルスは、現在よく理解されている。レトロウイルスは、タンパク外被の内部に閉じ込められた二本鎖RNAゲノムから成る。5’末端から3’末端にかけてそのゲノム自体は、以下を含む:キャップ、5’翻訳領域、「ψ」と命名されたRNA区分すなわちパッケージ部位(このRNA区分は、タンパク中に包装され得るRNAに必要である)、およびいくつかのタンパク−−レトロウイルスの核タンパク(gag)、逆転写酵素(pol)、および頭殻タンパク(env)の−−のためのコード配列。3つのウイルスタンパクは、ウイルスゲノムの感染に必要である。パッケージング部位は、添加した感染性ウイルスを生産するのに必要である。 レトロウイルスは、そのタンパクをコードするRNA領域の2重鎖cDNAコピーを含む「プロウイルス」段階を経る。しかしながら、この段階では、その転写されない3’領域および5’領域は、このタンパクをコードするcDNAのいずれかの末端にて、長い末端繰り返し配列(LTR)を含むように修飾される。この長い末端繰り返し配列は、DNAの転写を生じる適当なプロモーター配列およびエンハンサー配列だけでなく、このコード部分に関して、作動可能な位置で転写を終了させる配列を供給する。 通常の感染では、プロウイルスの2重鎖cDNAは、宿主細胞のゲノムの中に吸収され得る。そして、これらの効果から、RNAゲノムを含む追加のウイルス粒子の生産物は、そのタンパクカプセルにパッケージされる。このウイルス産生の段階においては、このプロウイルス中にψパッケージ部位が存在することが、重要である。 ベクターとして使用するように修飾されたレトロウイルスが宿主細胞に感染した際に、所望の外来遺伝子を発現するように、レトロウイルスのタンパクをコードする配列をその所望の外来遺伝子に置き換えて使用することが行われている。しかしながら,これを達成するには,この修飾されたウイルスゲノムは,頭殻タンパクを合成し得、かつ外来DNAのRNA転写をパッケージし得るヘルパーウイルスを必要とする。 それゆえ、遺伝子治療のためには、プロウイルスDNA形は、適当なベクターの中に挿入され、複写され、そしてヘルパーウイルスの援助をうけてウイルス外被にパッケージされる。一般的な総説としては、Anderson,W.F.Science(1984)226:401−409:Coffin,J.,「Genome Structure」、in RNA Tumor Viruses, Vol2,Weiss et al,eds,2d ed,(1985),Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。 遺伝子治療の研究に対して最も一般的に用いられるレトロウイルスは、ネズミ科の肉腫ウイルス(MSV)またはモロニーネズミ科の白血病ウイルス(MoMLV)である(Mann.R.ら,Cell(1983)33:153−159)。これらのレトロウイルスのプロウイルス形は、単離され、そして増幅のためにほぼ標準的な細胞のクローニングベクターに挿入される。パッケージ部位に沿ったプロウイルスの挿入(これは、制御配列を含む長い末端繰り返し配列に隣接するgag、polおよびenvをコードしているmRNAを含む)は、このタンパクをコードするRNAを含む領域を所望の外来遺伝子に置き換えるように扱われる。このDNAが、完全なウイルス、またはパッケージ部位のみが欠けている欠損ウイルスで感染された宿主細胞にトランスフェクトされる場合、修飾されたプロウイルスから合成されるRNAは、宿主細胞内において、他の細胞に再感染するためのウイルス粒子にパッケージされる。このことにより、感染によって、所望の活性成分または薬剤をコードするDNAを細胞に導入するために必要な材料が供給される。 このようにして組換えウイルスを産生するのに代表的な2つの方法がある。一つの方法では、修飾されたプロウイルスDNAは、その細胞中に共存する修飾されていないウイルスからの感染に耐える細胞にトランスフェクトされる。正常なウイルスベクターは、パッケージする材料を合成し、そして、修飾されたプロウイルスによって生成するmRNAのいくつかは、正常なビリオンに類似の方法で、パッケージされる。次いで、これはタンパクの生産のために、標的細胞に感染させるべく用いられ得る。しかしながら、これらの集められたウイルス外被に加えて、再パッケージされた正常ウイルスもある数で存在する。このウイルスは、供給運搬用ウイルスから分離されないなら、ビリオン生産過程の生成物に感染された宿主細胞にて、さらにウイルス感染を簡単に引き起こす。 もっと有用な他の方法では、所望の遺伝子を含むプロウイルスのクローニングベクターは、欠損ウイルス外被を生産するように、遺伝コード的に修飾された細胞をトランスフェクトするのに用いられる(この欠損ウイルス外被は、実際には、空の供給運搬物である)。これらの細胞は、ψパッケージ部位を欠いている変異体レトロウイルスのプロウイルス型の統合によって得られる。そして、いくつかのこのような細胞系列は、それらを求める全ての技術に利用できる。ψ−1またはψ−2と命名されたこれら2つの系列は、Mann.Rら、Cell(1983)33:159−159に、広範囲に記述されている。これは、MoMLVプロウイルス挿入物を含むプラスミドを用いて、宿主NIH−3T3繊維芽細胞をトランスフェクトすることにより作られる。この挿入物からは、ψパッケージ部位が削除されている。このψ−2細胞は、一世代の中で固有のウイルスのウイルス外被に相当する細胞あたり、いくらかの空のウイルス外被を明らかに生産する。これらの細胞が、外来遺伝子位とパッケージ部位(ψ)の両方を含んでいるプロウイルスのDNAでトランスフェクトされるとき、それらは、修飾されたウイルスを産むように、外来遺伝子を含むプロウイルスDNAからこれらの空の外被に、mRNAの転写物をパッケージする。この修飾されたウイルスは、普通はMoMLVに対する宿主である(この場合ではネズミ科の動物の)細胞を感染させる、しかしながら、この組み換え体(修飾されたウイルス)は、それが「感染させる」細胞中にさらに修飾されたビリオン(または他の)ビリオンの産生を引き起こし得ない点で欠損があることは注目されるべきである。この組み換え体は、「感染された」細胞において、この遺伝子がコードするタンパクの産生を引き起こし得る。しかし、その感染は、追加のビリオンが全く生産されないので、付加的な細胞を広げることができない。 人間に対する薬剤の調製のために、ψ2よりも有用であるのは、ψ−AM系列である。この系列は、Cone,R.D.,ら,Proc Natl Acad Sci USA(1984)81:6349−6353から得られる。これらの系列は、NIH−3T3細胞をトランスフェクトすることによっても得られる。しかし、pMAV−ψ−と命名されるベクターを用いねばならない。このベクターも、ψパッケージング部位を欠く欠損プロウイルスの挿入物を含む。しかし、pMAV−ψ−は、MoMLVのgag−pol配列をコードするハイブリッドであり、そして外被配列は、両性のウイルス4070Aに由来する。これらの細胞系列によって生産された空の頭殻は、偽ウイルスを生産するような共トランスフェクトされ修飾されたプロウイルスDNAのRNA転写物をパッケージする。この偽ウイルスは、人間、野ネズミおよびハツカネズミの細胞を認識し感染させる。 一般に使用されるレトロウイルスとしては、例えば、LXSN、GCsap(MLV)、およびGCsap(PCMV)が挙げられる。これら従来のレトロウイルスは:宿主染色体に組込まれるので、永続的な治療遺伝子の発現が期待できる;血球系の細胞に高い感染効率を示す;比較的毒性が少ない;および、扱いが比較的容易である、というような利点を有する。しかし、造血幹細胞や胚性幹細胞などの未熟な細胞で、導入した遺伝子の発現が時間とともに低下する、という欠点も同時に有する。 ニューロン前駆細胞(NPC)(Suzukiら、J.Neuorchem.2002、82、953−960)、ならびに胎生期癌細胞(EC細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、およびマウス造血系幹細胞(Haleneら、Blood、94、3349−3357、1999)、に対する遺伝子導入のために、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスが用いられている。ネガティブコントロール領域(NCR)は、転写因子YY1の結合部位である。上記ウイルスのNCRの変異は、YY1の結合を妨げる変異である。ネガティブ調節領域(NRE)は、幹細胞因子(SCF)の結合部位である。上記ウイルスのNREの変異は、SCFの結合を妨げる変異である。従って、本願発明の方法において使用する遺伝子導入ベクターとして適切なレトロウイルスベクターは、YY1の結合を妨げるNCR内の変異、およびSCFの結合を妨げるNRE内の変異を有する。 このYY1結合部位のコンセンサス配列は、(AまたはC)CATNTTであり、ここで、Nは任意の配列である。このYY1結合配列内において、1番目のAまたはC、2番目のC、3番目のA、および4番目のTはYY1との結合に必須である。従って、本発明のレトロウイルスベクターのNCR配列は、この1番目の残基をT、2番目の残基をTに置換した変異を有する。 MLVのNREは、例えば、配列GGGGGCTCGTCCGGGATTTGGAGACCC(配列番号2)を有する。このSCF結合部位のコンセンサス配列は、未だ同定されていないが、このSCF結合配列内において、14番目のGがSCFとの結合に必須である。従って、本発明のレトロウイルスベクターのNRE配列は、この14番目の残基がAに置換された変異を有するdl587rev(ウイルス名)由来のprimer binding siteを有する。また、変異NREは、例えば、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCC(配列番号4)を有する。 従来は、レトロウイルスベクターを用いて造血幹細胞に所望の抗原をコードする遺伝子を導入し、その後、その造血幹細胞を分化させることにより、所望の抗原を提示する樹状細胞が調製可能なことは、教示も示唆もされていなかった。また、そのような樹状細胞を用いて、ウイルス感染、癌などの疾患の処置および/または予防が可能であることもまた、教示も示唆もされていなかった。 本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または複数のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態の本発明の遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。 本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1または複数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。本発明の遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。このようなポリヌクレオチド形態の本発明の遺伝子または遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。 本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、本発明の遺伝子には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。 本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。 本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。 本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。 用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。 本明細書において用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。 本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。 本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。 アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。 本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。 本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。 本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能(例えば、他の分子との特異的相互作用)が保持されているかどうかによって決定され得る。 本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。 本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。 本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。 本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。 従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチド(例えば、ウイルス抗原またはその改変体もしくはフラグメントなど)の発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチド(例えば、ウイルス抗原またはその改変体もしくはフラグメントなど)の発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。このような遺伝子または遺伝子産物(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の発現の増加または減少は、本発明の治療形態、予後形態または予防形態において有用であり得る。 本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。 本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practicalapproach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、NucleicAcid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。 DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド) ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。 本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。 本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。 約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1MNaClにおける融解温度の適切な概算は、Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、DevelopmentalBiology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。 本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。 (1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較; (2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較; (3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較; (4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較; (5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。 BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。 (遺伝子、タンパク質分子、核酸分子などの改変) あるタンパク質分子(例えば、Fasタンパク質の細胞死ドメインなど)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。 上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。 あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。 親水性指数もまた、本発明のアミノ酸配列を改変するのに有用である。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。 本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。 本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。 本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。 本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、短縮化、脂質化(lipidation)、ホスホリル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。 本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。 (治療/予防のための投与および組成物) 本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による、感染症(例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染)、癌の処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。 本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。 本発明が対象とする動物は、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。 本発明の細胞が医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。 そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、本発明の細胞を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。 本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。 例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。 以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。 非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、直腸、および膣等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、およびプロピレングリコール等が挙げられる。 液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。 注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。 さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。 本発明の医薬は、非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。 様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。 特定の実施形態において、本発明の細胞または組成物を、処置の必要な領域(例えば、中枢神経、脳など)に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、本発明の細胞を投与する際、細胞が吸着されない材料を使用するために注意が払われなければならない。 別の実施形態において、細胞または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。 さらに別の実施形態において、細胞または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。 本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。 本発明の細胞を含む薬学的組成物の投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人、皮下投与により体重あたり1x106〜1x107個の細胞を投与する。 本明細書中、「投与する」とは、本発明の細胞などまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、生物の細胞または組織に取り込むことを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。 異常な状態はまた、生物へのシグナル伝達経路に異常を有する細胞の群に化合物を投与することによって予防または処置され得る。次いで、細胞を投与することの生物機能に対する効果が、モニターされ得る。この生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、またはヤギ、より好ましくは、サル(monkeyまたはape)、および最も好ましくは、ヒトである。 本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。 本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果、または病原体感染もしくは癌の兆候の減少または消滅によって支持され得る。 本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。 血漿、腫瘍および主要器官中での薬物および代謝産物の血漿半減期および体内分布はまた、障害を阻害するのに最も適切な薬物の選択を容易にするように決定され得る。このような測定が行われ得る。例えば、HPLC分析は、薬物で処置された動物の血漿において行われ得、放射線標識された化合物の位置が、X線、CATスキャンおよびMRIのような検出方法を用いて決定され得る。スクリーニングアッセイにおいて強力な阻害活性を示すが、薬物動態学的特徴が不十分な化合物は、化学構造の変更や再試験によって最適化され得る。この点について、良好な薬物動態学的特徴を示す化合物が、モデルとして使用され得る。 毒性研究はまた、血液細胞組成物を測定することによって行われ得る。例えば、毒性研究は、以下のような適切な動物モデルにおいて行われ得る:(1)細胞がマウスに投与される(未処置のコントロールマウスもまた、使用されるべきである);(2)各々の処置群中の1匹のマウスから尾静脈を介して血液サンプルを周期的に得る;そして(3)上記サンプルを、赤血球および白血球の数、血液細胞組成物ならびにリンパ球と多形核細胞との割合について分析する。各々の投薬レジメンについての結果とコントロールとの比較は、毒性が存在するか否かを示す。 各々の毒性研究の終了の際に、動物を屠殺することによって、さらなる研究を行い得る(好ましくは、American Veterinary Medical Association guidelines Report of the American Veterinary Medical Assoc.Panel on Euthanasia,(1993)J.Am.Vet.Med.Assoc.202:229−249に従う)。次いで、各処置群からの代表的な動物が、転移、異常な病気または毒性の直接的な証拠のために全体的な検屍によって試験され得る。組織における全体の異常が記載され、組織が組織学的に試験される。体重の減少または血液成分の減少を引き起こす細胞は、主要な器官に対する有害作用を有する細胞と同様に好ましくない。一般的に、有害作用が大きいほど、その細胞は好ましくない。 (造血系細胞の増幅) 造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する 骨髄系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。 リンパ球系では、CMLでは、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、B細胞系とT細胞系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。B細胞系のラインといたしましては前駆B細胞、前駆前駆B細胞(pre-pre-B-cell)、初期B細胞(early-B-cell)などへと分化し、中間B細胞(intermediate- B-cell)、成熟B細胞(matureB-cell )、形質球様細胞(plasmacytoid- B-cell) 、形質細胞(plasma-cell)へと分化する。T細胞系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(commonthymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーT細胞へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性T細胞へと分化する系統が存在する。したがって、これらのT細胞および/またはB細胞の異常の処置または予防についても本発明の因子または組成物は有効であり得る。このような分化に関する模式的スキームを図1に示す。図1では、分化において有用なマーカーも記載されている。このような分化に関するより詳細な説明については、赤司浩一、最新医学 56(2)、15−23,2001を参照のこと。この文献は、本明細書において参考として援用される。 例えば、造血幹細胞をGM−CSFおよびIL−4存在下で培養することによって、造血幹細胞を樹状細胞に分化誘導することができる。より具体的には、造血幹細胞または前駆細胞を、幹細胞因子(stem cell factor;SCF)、Flt-3リガンド、および/またはトロンボポイエチンで処理することによって、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、およびマクロファージなどの細胞に分化誘導することが可能である(図1)(樹状細胞 基礎から臨床へ 南江堂 2000年)。また、B細胞への分化誘導には、SCFとIL-7を用い、活性化T細胞への分化誘導は、IL-2と抗CD3抗体を用いて行う。 本明細書において、以下の略号を分化細胞系統に使用する。n:好中球m:マクロファージe:好酸球mast:マスト細胞M:巨核球E:赤血球GM:顆粒球/マクロファージGEM:顆粒球/赤血球/マクロファージGMM:顆粒球/マクロファージ/巨核球GEMM:顆粒球/赤血球/マクロファージ/巨核球。 (造血幹細胞の同定法) 以下に代表的な造血幹細胞の同定法を説明する。 a.脾コロニー形成法 致死量放射線照射したマウスに同系マウスの造血細胞を静注すると、8〜14日目に脾臓表面に隆起(コロニー)が認められる。各々のコロニーが種々の血液細胞から成っているが、1個のコロニーは1個の幹細胞に由来しており、この脾コロニーを形成する母細胞はCFU-S(colonyforming unit in spleen)と呼ばれる。8日目に形成される脾コロニー(Day 8 CFU-S)を形成する細胞は赤芽球が主体であるのに対し、12日目形成される脾コロニー(Day12 CFU-S)は、赤芽球のほかに顆粒球や巨核球、更にはBリンパ球まで含み増殖能も高く、多能性幹細胞に由来している。Day 12 CFU-Sは多能性幹細胞の指標として用いられている。また、抗癌剤である5-fluoro-uracil(5-FU)投与後に残存する造血幹細胞は非常に高い増殖能を示すことより、CFU-Sの母細胞にあたるpre-CFU-Sと呼ばれる。当初未分化な造血幹細胞の指標になると思われたDay12 CFU-Sも実は不均一な細胞集団であり、必ずしも未分化な造血幹細胞の指標にはなりえない。 b.長期骨髄再構築能 移植した細胞により致死量放射線照射されたマウスの造血系を再構築し、長期間維持する事ができるか否かを観察する方法である。現在、造血幹細胞の多分化能と自己複製能をみる上で最も信頼性が高い。マーカーとしては、ネオマイシン耐性遺伝子の発現や、雄雌の性染色体、コンジェニックマウス等が用いられている。この方法では定量化が困難であったが、最近ではドナーの造血細胞とともにレシピエントの造血細胞を移植し、その再構築の割合を調べる競合再集団アッセイが用いられるようになった。また、ヒトにおいてはマウスのようにin vivoの移植実験系を組むことは困難であるので、リンパ球が欠如するために拒絶反応を起こさない免疫不全マウス(scid mouse)にヒトの造血幹細胞を移植するScid-huマウスが用いられる。この系では、マウスの中で長期間ヒトの造血機構を維持することができる。 c.インビトロコロニー法 造血細胞(骨髄細胞・脾細胞等)を各種サイトカイン存在下にメチルセルロース、軟寒天等の半固形培地中で培養し、形成された細胞集団(コロニー)から造血幹細胞の数や性質を推定する方法である。このコロニーを分析することにより、in vitroにおいて種々の造血前駆細胞や造血幹細胞の分化・増殖過程の観察や測定が可能になっている。混合コロニー(CFU-Mix,CFU-GEMM)や分化能の高いコロニー(HPP-CFC;highproliferative potential colony forming cells)は、単系統のコロニーを形成する細胞(CFU-GM, BFU-E)等より未分化であり、芽球コロニー形成細胞(CFU-blast)は最も未分化であるとされている。この方法によりinvitroにおいて造血幹細胞や前駆細胞の増殖・分化過程をとらえることができる。さらに、近年では無血清培地を用いたり造血幹細胞の単細胞培養を行うことにより、造血に関与する種々のサイトカインの作用を推定することができる。 d.ストロマ細胞との共培養系 造血幹細胞の分化・増殖には造血微小環境が密接に関与している。1977年Dexterらは、骨髄間質(ストロマ)細胞上で造血幹細胞が数ヵ月以上の長期間にわたって培養可能であることを示した(Dexter培養法)が、その後造血を維持するストロマ細胞株が次々に樹立され、invitro において造血微小環境の再現が可能になった。この培養系では、造血前駆細胞は早期にコロニー形成能を失うのに対して、未分化な造血幹細胞は長期間コロニー形成能や骨髄再構築能を維持できる。このため、未分化な造血幹細胞活性の測定にも用いられる。特にヒトにおいてはinvivoの系が用いにくいため、ストロマ細胞上で長期間コロニー形成能を維持できる細胞をLTC-IC(Long term culture-initiatingcells)として未分化な造血幹細胞の指標として用いられている。 以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。 以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigmaから得た。動物の飼育は、National Society for Medical Researchg作成した「Principles of Laboratory Animal Care」およびInstitute of Laboratory Animal Resourceが作成、National Institute of Healthが公表した「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication, No. 86−23, 1985,改訂)に遵って、動物愛護精神に則って行った。ヒトを対象とする場合は、事前に同意を得た上で実験を行った。 (実施例1:胚性幹細胞への遺伝子導入) 本発明のレトロウイルスベクターを用いるES細胞への遺伝子導入を以下の方法によって、行った。 1.マウスES細胞への遺伝子導入 (1−1)ES細胞 (1−1−a)フィーダー細胞の調製 胎生13〜14日目のC57BL/6マウス胎仔(妊娠C57BL/6マウス、日本SLC、Tokyo)から頭部ならびに内臓組織を取り除いた後、細かく切り刻み、EDTA−リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.2〜7.4)で希釈した0.1%トリプシン(2,5%トリプシン、GIBCO BRL、Gatehrsberg、MD)にて懸濁し、37℃、20分間振とう処理した。その後、10%胎仔牛血清(FCS、MOREGATE、Austrajia)、1% L−グルタミン/ストレプトマイシン/ペニシリン(Sigma、ST Louis、MO)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM 高グルコース、GIBCO BRL)で3日間培養し、0.1%トリプシン処理にて回収し、凍結保存した。 フィーダーとしては、上記培地にて3日間培養した後、10μg/mLマイトマイシンC(Sigma)処理し、ゼラチンコート(0.1%ブタ皮膚、Sigma)したフラスコ上で1mlあたり4×104個の細胞濃度で使用した。培養は37℃5%CO2インキュベーターで行った。 (1−1−b)マウスES細胞の培養 使用したES細胞株はマウスE14で、15%FCS(JRH BlOSCIENCES、Lenexa、KS)、MEM非必須アミノ酸(SIGMA)、O.01M 2−メルカプトエタノール(Sigma)、1000単位/ml LIF(CHEMICON、ESGRO 1x107単位/ml)、1%L−グルタミン(Invitrogen Corpolation、Carlsbad,CA)添加DMEM(GIBCO BRL)を用い、上記フィーダー細胞上で培養した。培地は毎日交換し、フィーダー細胞は2〜3日おきに交換した。継代に際してはEDTA−PBSで希釈した0.25%トリプシンを用いて回収した後、新しいフィーダー細胞上に1mlあたり2×104個の細胞濃度で播種した。 (1−2)レトロウイルスベクター (1−2−a)レトロウイルスベクターの構造 pDΔNsapの作製法は以下の通りである。MoMLV由来のスプライスタイプレトロウイルスベクターpGCsap(MLV)(J. Virol 72:1769-1774, 1998)の3’LTR領域をメチル化抵抗性レトロウイルスPCMV(Proc NatlAcad Sci USA 87: 9202-9206, 1900, Gene Therapy 1: 136-138, 1994)のLTRに変更し(pGCsap)20を作製し、さらにこのpGCsapのプライマー結合部位を抑制性転写因子である幹細胞因子が結合しないd1587rev由来のプライマー結合部位に変更したベクターがpGCDsapであり、このpGCDsapのNCRに変異をいれたベクターがpDΔNsapである。pGCsapとpDΔNsapのNcoI、NotI部位にマーカー遺伝子としてのEGFP遺伝子を挿入し、pGC/EGFPとpDΔNsap/EGFPを作製した。 (1−2−b)レトロウイルスベクターの産生 パッケージング細胞株としてMulligan博士より供与された水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ(VSV−G)を産生する293gpgを使用した(Proc Natl Acad Sci USA 93:11400-11406.)。VSV−Gは強い細胞毒性を有するため、その発現はテトラサイクリン薬剤誘導系(tet−off)により制御されている。これら293gpgを10%FCS(MOREGATE)、1%L−グルタミン/ストレプトマイシン/ペニシリン(Sigma、ST Louis、MO)、0.3mg/mL G418(GIBCO BRL)、2μg/mL ピューロマイシン(Sigma)、1μg/ml テトラサイクリン(Sigma)を添加したDMEMにて培養した。 ウイルス産生の際には、80%程度のコンフルエント状態の細胞に、293gpg組み込んだpGCsapまたはpDΔNsapを導入し、PBSで洗浄し、テトラサイクリンを含まない10%FSC/DMEM培地に交換することでVSV−Gの発現を誘導し、ウイルスを産生させた。ウイルスの調製は、テトラサイクリン除去後48時間目に培地を交換し、その後24、48、72時間目(テトラサイクリン除去後、72、96、120時間目)に培養上清を回収し、そして、これら培養上清から0.45μmのフィルター(マイレックス−HV 0.45、MiIlipore、Bedford、MA)を用いて細胞來雑物を取り除き、4℃、6000g、16時間、培養上清を遠心濃縮することでウイルスをペレット化した。なお、遠心せずに、テトラサイクリン除去後、72、96、120時間目の培養液を用いることによっても感染させることができた。その後、これらウイルスペレットを無血清培地(StemPro−34 SFA、GIBCO Invitrogen)で溶解(4℃、48時間撹絆)することで100倍濃縮の無血清ウイルス上清を得た。ウイルス力価はジャーカット細胞を標的とした感染実験で、pGCsap、DΔNsapEGFPともに2,5×106I.U.(感染単位)/mlであった。 (1−2−c)ES細胞への感染 E14細胞の継代時に、上記(1−2−b)で作製した100μl濃縮ウイルスと10μ1/mL硫酸プロタミン(SIGMA)をともにES細胞培養系に添加することで行った(感染多重度=10)。 (1−3)テラトーマ作製 250cGyの半致死線量放射線(137Cs、MBR−1520R、日立製作所、東京)を照射した非肥満糖尿病/重篤複合型免疫欠損マウス(non−obese diabetic/severe combined immunodeficiency(NOD/SClD)マウス)(三協ラボ、東京)の腹腔に5×106個のDΔNsapEGFP導入ES細胞を移植し、移植4週間後に腫瘍塊を摘出し、解析した。 (1−4)キメラマウス作製 文献(A.L.Joyner. Gene Targeting: A Practical Approach. Oxford UniversityPress (1993), J Bio Chem 272:12611-12615, 1997))に準じ、DΔNsapEGFP導入E14(129由来)をC57/BLマウス3,5日胚盤胞に移入し、この胚を偽妊娠ICRレシピエントマウスの子宮内に移植することでキメラマウスを作成した。出生したマウスの由来をそのコートカラーから選別し、キメラマウスの場合、EGFP遺伝子をプローブとしたサザンブロット、ゲノムPCR、EGFPの発現検出のためのFACS、および免疫組織染色を行った。さらに、EGFPの発現を認めたマウスはC57BL/6Nマウス(日本クレア、東京)と掛け合わせることでF1、F2マウスを作成した。 (実施例2:OVA抗原をコードする遺伝子を導入した樹状細胞の作製) (1)分化抗原陰性/c−kit陽性細胞(lin(−)/c−kit(+))の単離・骨髄単核球細胞にビオチン結合抗分化抗原抗体混合液(ビオチン結合体化系列抗原モノクローナル抗体混合物(biotin conjugated lineage−Ag mAb mixture)=抗CD4、CD8、B220、Mac1、Gra1、Ter119モノクローナル抗体混合物)10μlを細胞に加え、懸濁した。・氷上で30分間放置した。・10mlの染色培地(2%FBS/PBS)を加えて懸濁した。・4℃、1500rpmで5分間遠心した。・吸引することによって、上清を捨てた。出来るだけ細胞を残すため、完全に上清を除く必要は無い(約100μ1の上清を残す)。・以下のように、分化抗原に結合するストレプトアビジン結合磁気ビーズを調製した。>>ストレプトアビジン結合磁気ビーズ溶液をゆっくり回しながら、瓶底のビーズ塊が溶けるまで懸濁した。この時、強く懸濁するとストレプトアビジンと磁気ビーズが離れるため、決して乱暴に扱ってはいけない。>>15mlチューブに3mlのSMを注ぎ、そこに(骨髄単核球の細胞数計測時に記録した)150μlのストレプトアビジン結合磁気ビーズ溶液を加えて懸濁した。>>MPC磁気スタンド(ベリタス社製、http://www.veritastk.co.jp/)にチューブを装着した。>>吸引することによって、溶液(磁石に結合しなかったビーズを含む)を捨てた。この操作によって正常に機能するストレプトアビジン結合磁気ビーズのみがチューブ内に残る。>>チューブをMPCから外した。・(100μlのSMに懸濁した)細胞溶液の全量をストレプトアビジン結合磁気ビーズ入りのチューブに移し、優しく懸濁した。・氷上に30分間放置した。・チューブをMPCに装着した。・溶液部分(磁石に結合しなかった部分=lin(−)/c−kit(+/一))を採取し、10mlのSMの入った15mlチューブに移した。・4℃、1500rpmで5分間遠心した。・吸引することによって、上清を捨てた。出来るだけ細胞を残すため、完全に上清を除く必要は無い(約100μlの上清を残す)。 (lin(−)/c−kit(+)の単離)・細胞にFITC結合c−kit抗体を加え、懸濁した。・氷上に30分以上放置した。・10mlのSMを加えて優しく懸濁した。・4℃、1500rpmで5分間遠心した。・吸引することによって、上清を捨てた。出来るだけ細胞を残すため、完全に上清を除く必要は無い(約100μlの上清を残す)。・10μl/107細胞の割合でMACS用抗FITC抗体結合磁気ビーズを加えた。・氷上、または6〜12℃に30分以上放置した。‘10mlのSMを加えて優しく懸濁する。・4℃、1500rpmで5分間遠心した。・吸引することによって、上清を捨てた。出来るだけ細胞を残すため、また、この状態の細胞を、磁気ビーズ結合細胞を磁石で回収するためにMACSカラム(第一化学薬品社製、http://www.shiyaku-daiichi.jp/catalog_pub/shiyaku/macs/index.html)に通すため、完全に上清を除く必要は無い(約500μ1の上清を残す)。・以下のように、MACSでc−kit陽性細胞を選択した(この段階でlin(−)/c−kit(+)が選択される)。>>MACSにMSカラムと5mlポリスチレンチューブを装着した。>>サンプルを流す前に500μ1のSMをカラムに加えて通過させた。>>カラムの通過液の落下が止まったら、別の5mlポリスチレンチューブ(ネガティブ画分採取用)に変えた。>>サンプルを優しく、かつ完全に懸濁した。>>サンプルをカラムに加えた。通過液はネガティブ画分(c−kit陰性細胞分画)となる。>>カラムの通過液の落下が止まったらサンプルの入っていた15mlチューブに500μ1のSMを加えて懸濁し、カラムに加えた。>>カラムの通過液の落下が止まったら500μ1のSMをカラムに加えて洗浄した。この操作を3回繰り返した。>>結果として、ネガティブ分画(c−kit陰性細胞分画)が単離された。>>MACSからカラムを取り外し、新しい5mlポリスチレンチューブ(ポジティブ分画採取用)の上に載せた。>>200μlのSMをカラムに加えて、ピストンで細胞(c−kit陽性細胞)を押し出した。この操作を5回繰り返した。・結果として、分化抗原陰性/c−kit陽性細胞が単離された。 (2)レトロウイルスベクターの調製 (2−a)レトロウイルスベクターの構造 上記実施例1「(1−2−a)レトロウイルスベクターの構造」に記載されるpDΔNsapを作製した。このpDΔNsapから、OVAウイルス抗原をコードする遺伝子を含むDΔNsamOVAを作製した(図2)。具体的には、pDΔNsapのNcoI部位に変異を入れ、XhoI-ClaIにIRES/EGFPをクローニングし、pDΔNsamを作製した。また、pDΔNsamのBamHI-XhoIにOVAcDNAをクローニングし、pDΔNsamOVA/EGFPを作製した。図2中のECF−1は、EC細胞因子Iを示し、NREは、ネガティブ調節領域を示し、NCRは、ネガティブコントロール領域を示す。d.r.は、ダイレクトリピートを示す。PBSは、プライマー結合部位を示す。PCMVは、5’から2つ目のダイレクトリピートを欠損すること以外は、MSCVと同一である。このGCDNsamを用いて、GCDNsamOVA/EGFPを作製した。 (2−b)レトロウイルスベクターの産生 上記実施例1(1−2−b)に従って、レトロウイルスベクターを産生した。 (2−c)造血幹細胞への感染 上記(1)で調製した造血系幹細胞を、SCF、Flt3リンガンド、トロンボポイエチン存在下で、上記(1−2−b)で作製した100μl濃縮ウイルスと10μ1/mL硫酸プロタミン(SIGMA)とともに培養することで行った(感染多重度=10)。 (3)樹状細胞の誘導(1.分化抗原陰性細胞増殖段階(0日目〜3日目))・(0日目)上記(2)でレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入した細胞を培地で懸濁し、24穴プレートに〜7.5×105/1mlずつ細胞を撒いた。そして各ウェルの細胞に組換えヒトTPO(rhTPO)(100ng/ml)、組換えマウスFlt−3リガンド(rFlt−3リガンド)(10ng/ml)、組換えマウスSCF(rmSCF)(50ng/ml)を加えた。・(2日目)rhTPO、rFlt−3リガンド、rmSCFを加えてさらに2日間培養し、細胞を増殖させた。この操作によって、造血幹細胞、造血前駆細胞への遺伝子導入のためのウイルス感染をおこなった。(2.遺伝子導入段階(1日目〜2日目))・濃縮VSV−Gウイルス上清100μlを2日にわたり培養に添加した。(3.樹状細胞分化段階(4日目〜12日目))・(4日目)4℃、1000rpmで5分間遠心し、上清を吸引により捨てた。・(4日目)PBSを加えて4℃、1000rpmで5分間遠心し、PBSを吸引により捨てた。・(4日目)培地を加え、さらにGM−CSF・IL−4(各10ng/ml)を加えた。・(6日目)4℃、1000rpmで1分間遠心し、上層の75%の培地を吸引により捨てて培地とGM−CSF、IL−4(10ng/ml)を加えた。この操作により浮遊系細胞である顆粒球は除かれる。・(8日目)4℃、1000rpmで1分間遠心し、上層の75%の培地を吸引により捨てて培地とGM−CSF、IL−4(10ng/ml)を加えた。この操作により浮遊系細胞である顆粒球は除かれた。・(10日目)接着細胞塊と弱く接着している細胞(樹状細胞前駆細胞・未成熟樹状細胞)を剥がして集め、24穴プレートに2〜3×105/mlずつ細胞を撒き、GM−CSF・IL−4(各10ng/ml)を加えた。・(11日目または12日目)細胞を採取した。非接着細胞が成熟樹状細胞である。・FACSを用いて、採取した非接着細胞の成熟樹状細胞マーカー(CD11c・CD40・CD86・MHCII(1−Ab))を確認した。その細胞分析結果を図3に示す。 (実施例3:OVA導入DCの抗原提示能) OVA導入DCの抗原提示能を確認するために、B3Z細胞を用いた。B3Z細胞は、OT−1由来CD8陽性T細胞とミエローマのハイブリドーマ細胞であり、その細胞表面のT細胞レセプターがMHCクラスI上に提示されたOVAエピトープ(SIINFEKL)を認識して、LacZを発現する細胞である。従って、LacZの発現によって、MHCクラスI上のOVAエピトープの抗原提示を確認することができる。 具体的には、実施例2において調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVAを発現するDC)のエフェクター細胞としての機能を、EL4細胞(EL4)(C57BL/6由来の胸腺腫)、EG7細胞(EG7)(EL4細胞をOVAでトランスフェクションした細胞)、未処理の樹状細胞(DC)、OVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)と比較した。OVAペプチドDCは、アミノ酸配列SIINFEKLを有するペプチド10μMをDCへ添加することによって作製した。なお、ペプチド自体の投与は、フロイント不完全アジュバント100μと混合して、皮下投与することによって、行った。その比較は、種々のエフェクター細胞と、T細胞であるB3Z細胞を図5に示した比率で混合し、B3Z細胞のLacZ発現量を、OD570によって測定することによって、行った。その結果、実施例2において調製した遺伝子導入樹状細胞は、OVAペプチドをパルスした樹状細胞、およびOVAウイルスに感染した細胞であるEG7細胞と同程度の抗原提示能を示した。結果を図5に示す。 (実施例4:OVA発現DCによるワクチン効果) 実施例2で調製した樹状細胞によるワクチン効果を確認した。図6に示すプロトコールを用いて、DCワクチン投与を行った。5×106個のEG7細胞によるチャレンジを皮下注射により行った日を「0日目」とした。「−14日目」および「−7日目」に、実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC)、および実施例3で調製したOVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)の、それぞれ1×106個を皮下注射によりマウスにワクチン投与し、腫瘍のサイズを測定した。ワクチン投与していないマウスをコントロールとして用いた(ワクチンなし)。その結果、OVA Tx DCは、OVAペプチドDCよりも優れる顕著なワクチン効果を示した。その結果を図7に示す。 また、種々の用量を用いて、実験を行ったところ、実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC)は、5×105細胞以上の用量を用いた場合に、高いワクチン効果を示し、1×105細胞の用量を用いた場合に、中程度のワクチン効果を示し、5×104細胞以下の用量を用いた場合には、ワクチン効果を示さなかった。これに対して、実施例3で調製したOVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)は、1×106細胞以上の用量を用いた場合に、中程度のワクチン効果を示し、5×105細胞以下の用量を用いた場合には、ワクチン効果を示さなかった(図8)。 (実施例5:OVA発現DCによるCTL誘導効果) 実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVA発現DC)を用いることによるOVA特異的CTL細胞の増加を、実施例3で調製したOVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)の場合と比較した。各々のDCを5×103細胞個、1×104細胞個、5×104細胞個、および1×105細胞個を、マウスに注入し、腫瘍接種後14日目後、その脾臓を取り出し、造血細胞を調製し、FACSによる分析を行った。OVA特異的CTLの定量をするために、ペプチドSIINFEKL(配列番号1)をPE標識MHCテトラマーで標識し、脾臓より調製した細胞と混合し、PEの蛍光を指標として測定した。その結果を図9に示す。CD8+細胞中のOVA特異的CTL細胞の量を図9右のグラフに示した。グラフに示されるように、遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVA発現DC)は、ペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)と同程度に、特異的CTLを誘導した。 (実施例6:リシススポットアッセイによるCTL総数の定量) 実施例5の実験は、CTL誘導の指標にはなるが、OVAの特定のペプチドSIINFEKLに対して特異的なCTLのみについての結果を示している。そこで、OVA特異的CTLの総数を定量するために、リシス−スポットアッセイを行った(Nat.Med 9: 231, 2003)。脾臓からの、細胞の調製は、実施例5と同様に行った。OVAおよびEGFPをトランスフェクションした細胞であるEG7細胞の溶解を、溶解した細胞より遊離するEGFPタンパク質の蛍光強度を指標として測定した。この細胞の溶解は、エフェクター細胞存在下において行われるので、遊離するEGFPタンパク質の量は、OVA特異的CTLの細胞数の指標となる。コントロールとして、OVAによってトランスフェクションされていないEL4細胞を用いた。エフェクター細胞として、実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVA発現DC)、および実施例3で調製したOVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)を用い、コントロールとしてエフェクター細胞を用いることなく実験を行った。その結果を図10に示す。図10左下の棒グラフに示されるように、OVA Tx DCを用いた場合、OVAペプチドDCよりも大量のCTLが誘導された。ネガティブコントロールの値を引いたところ、OVA Tx DCは、OVAペプチドDCの約3.4倍量のCTLを誘導した。 (実施例7:樹状細胞によるOVA特異的抗体の誘導) 実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVA発現DC)をマウスに導入することによって、OVA特異的抗体が誘導されるか否かを決定した。比較対照として実施例3で調製したOVAペプチドでパルスした樹状細胞(OVAペプチドDC)を導入したマウス、およびネガティブコントロールとして樹状細胞の導入を行わなかったマウスを用いた。5x105個の樹状細胞をマウスの皮下に注射し、14日後にマウス血清を調製し、OVA抗原に対するELISAを行った。その結果を図11および図12に示す、OVAペプチドDCは、ネガティブコントロールと同程度の値を示した。これに対して、OVA Tx DC(OVA発現DC)は、ネガティブコントロールおよびOVAペプチドDCよりもはるかに高いレベルの抗OVA抗体産生を誘導したことが示された。この結果は、本発明の遺伝子導入樹状細胞は、T細胞応答を惹起するのみならず、B細胞応答をも惹起したことを示す。従って、本発明の方法によって調製された樹状細胞は、細胞性免疫応答のいならず、液性免疫応答をも惹起し得るという、予測されない効果を奏し、そのために、優れたワクチンであることが理解できる。 (実施例8:遺伝子導入樹状細胞による治療) 実施例2で調製した樹状細胞による治療効果を確認した。OVA発現DCによる治療モデル実験を、図13のスキームに従って行った。2×106個のEG7細胞によるチャレンジを皮下注射により行った日を「0日目」とした。「2日目」、「4日目」、および「6日目」に、実施例2で調製した遺伝子導入樹状細胞(OVA Tx DC;OVA発現DC)5×106個を、注射により皮下および腫瘍周辺部にワクチン投与し、腫瘍のサイズを測定した。ワクチン投与していないマウスをコントロールとして用いた(ワクチンなし)。その結果、OVA Tx DC(OVA発現DC)は優れたワクチン効果を示し、腫瘍チャレンジ後14〜18日で、腫瘍がほぼ消失した。その結果を図14に示す。 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。 本発明に従って、病原体感染および/または腫瘍の処置、予防、および/または予後のための組成物が提供される。図1は、造血細胞の分化に関する模式的スキームを示す。図2は、レトロウイルスベクター内の転写因子結合部位の模式図を示す。図3は、樹状細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞療法の一態様を示す模式図である。図4は、マウス造血前駆細胞へのOVAウイルス感染とDCへの誘導の結果を示す。図5は、B3Z細胞を用いたOVA導入DCの抗原提示能についての結果を示す。図6は、DCワクチン投与プロトコールを示す模式図である。図7は、OVA発現DCによるワクチン効果についての結果を示す。図8は、各種ワクチンの効果比較についての結果を示す。図9は、OVAペプチドにより誘導されるCTL数を示す。図10は、リシス−スポットアッセイによるCTLの総数の結果を示す。図11は、OVA特異的抗体の産生の結果を示す。図12は、OVA特異的抗体の産生の結果を示す。図13は、OVA発現DCによる治療モデル実験のプロトコールを模式的に示す図である。図14は、OVA発現DCによるワクチン効果の結果を示す。配列番号1:MHCクラスI上に提示されたOVAエピトープのアミノ酸配列SIINFEKL配列番号2:MoMLVのNRE配列(1)配列番号3:MoMLVのNRE配列(2)配列番号4:DΔNのNRE配列(1)配列番号5:DΔNのNRE配列(2)配列番号6:MoMLVのECF−1結合部位の配列配列番号7:DΔNのECF−1結合部位の配列配列番号8:MoMLVのSp1結合部位の配列配列番号9:DΔNのSp1結合部位の配列所望の抗原をコードする遺伝子を導入された樹状細胞であって、ここで該樹状細胞は、幹細胞内で外来遺伝子を発現することが可能なベクターで該遺伝子を導入されている、樹状細胞。前記ベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、請求項1に記載の樹状細胞。造血前駆細胞をサイトカイン存在下で培養することによって分化誘導された、請求項1に記載の樹状細胞。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、請求項2に記載の樹状細胞。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、請求項4に記載の樹状細胞。前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、請求項4に記載の樹状細胞。前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、請求項2に記載の樹状細胞。前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、請求項7に記載の樹状細胞。前記所望の抗原は、病原体由来の抗原である、請求項1に記載の樹状細胞。前記所望の抗原は、ウイルス由来の抗原である、請求項9に記載の樹状細胞。前記所望の抗原は、腫瘍抗原である、請求項1に記載の樹状細胞。前記所望の抗原は、HER2抗原、WT1抗原、ヒトHERT抗原、MAGE−3抗原、またはMART−1抗原である、請求項1に記載の樹状細胞。請求項9に記載の樹状細胞を含有する、病原体感染の処置または予防のための、薬学的組成物。請求項11に記載の樹状細胞を含有する、腫瘍の処置または予防のための、薬学的組成物。病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項9に記載の樹状細胞の使用。腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項11に記載の樹状細胞の使用。所望の抗原をコードする遺伝子を導入された樹状細胞を作製するための方法であって、以下:(1)レトロウイルスベクターを用いて、単離された造血前駆細胞に、所望の抗原をコードする遺伝子を導入する工程;および(2)サイトカイン存在下で該造血前駆細胞を培養して、該造血前駆細胞を樹状細胞に分化させる工程、を包含する方法。前記レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、請求項17に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、請求項18に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、請求項19に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、請求項19に記載の方法。前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、請求項18に記載の方法。前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、請求項22に記載の方法。前記所望の抗原は、病原体由来の抗原である、請求項17に記載の方法。前記所望の抗原は、ウイルス由来の抗原である、請求項24に記載の方法。前記所望の抗原は、腫瘍抗原である、請求項17に記載の方法。前記所望の抗原は、HER2抗原、WT1抗原、ヒトHERT抗原、MAGE−3抗原、またはMART−1抗原である、請求項17に記載の方法。前記造血前駆細胞は、該樹状細胞を投与することによって処置される患者由来である、請求項17に記載の方法。請求項17に記載の方法によって作製された樹状細胞。請求項29に記載の樹状細胞を含有する、薬学的組成物。請求項24に記載の方法によって作製された樹状細胞を含有する、病原体感染の処置または予防のための、薬学的組成物。請求項26に記載の方法によって作製された樹状細胞を含有する、癌の処置または予防のための、薬学的組成物。病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項24に記載の方法によって作製された樹状細胞の使用。腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項26に記載の方法によって作製された樹状細胞の使用。病原体由来の抗原をコードする遺伝子を含有するレトロウイルスベクターであって、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、レトロウイルスベクター。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、請求項35に記載のレトロウイルスベクター。前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、請求項35に記載のレトロウイルスベクター。前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、請求項35に記載のレトロウイルスベクター。腫瘍抗原をコードする遺伝子を含有するレトロウイルスベクターであって、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、レトロウイルスベクター。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、請求項39に記載のレトロウイルスベクター。前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、請求項39に記載のレトロウイルスベクター。前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、請求項39に記載のレトロウイルスベクター。病原体感染の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項35に記載のレトロウイルスベクターの使用。腫瘍の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項37に記載のレトロウイルスベクターの使用。癌を処置または予防するための方法であって、以下:(1)患者から造血前駆細胞を単離する工程;(2)レトロウイルスベクターを用いて、該造血前駆細胞に、腫瘍抗原をコードする遺伝子を導入する工程であって、該レトロウイルスベクターは、該腫瘍抗原をコードする遺伝子を含有し、そして、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、工程;(3)サイトカインを用いて、該遺伝子を導入した造血前駆細胞を樹状細胞に分化誘導する工程;および(4)該樹状細胞を、該患者に導入する工程、を包含する、方法。病原体感染を処置または予防するための方法であって、以下:(1)患者から造血前駆細胞を単離する工程;(2)レトロウイルスベクターを用いて、該造血前駆細胞に、病原体由来の抗原をコードする遺伝子を導入する工程であって、該レトロウイルスベクターは、該抗原をコードする遺伝子を含有し、そして、該レトロウイルスベクターは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)内、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有し、ここで、該NCR内の変異は、該NCRとYY1との結合を妨げる変異であり、そして、該NRE内の変異は、該NREと幹細胞因子との結合を妨げる変異である、工程;(3)サイトカインを用いて、該遺伝子を導入した造血前駆細胞を樹状細胞に分化誘導する工程;および(4)該樹状細胞を、該患者に導入する工程、を包含する、方法。前駆細胞を用いて、所望の抗原をコードする遺伝子を導入された分化細胞を作製するための方法であって、以下:(1)レトロウイルスベクターを用いて、単離された前駆細胞に、所望の抗原をコードする遺伝子を導入する工程;および(2)該前駆細胞を培養して、所望の細胞に分化させる工程、を包含する方法。前記レトロウイルスは、U3領域内のネガティブコントロール領域(NCR)、およびプライマー結合部位(PBS)内のネガティブ調節領域(NRE)内に変異を有するレトロウイルスベクターである、請求項47に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、NCRへのYY1の結合を妨げる変異である、請求項48に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)の変異は、YY1結合配列のコンセンサス配列である(AまたはC)CATNTT配列中の変異であり、ここで、Nは任意の塩基を示す、請求項49に記載の方法。前記ネガティブコントロール領域(NCR)は、配列TTATTTTを有する、請求項49に記載の方法。前記ネガティブ調節領域(NRE)の変異は、NREへの幹細胞因子の結合を妨げる変異である、請求項48に記載の方法。前記ネガティブ調節領域(NRE)は、配列GGAGGTTCCACCGAGATTTGGAGACCCCを有する、請求項52に記載の方法。請求項47に記載の方法によって作製された分化細胞。請求項54に記載の分化細胞を含有する、組成物。 【課題】 本発明は、レトロウイルスによって外来遺伝子を導入された細胞を用いた養子免疫遺伝子細胞療法を提供することを課題とする。【解決手段】 LTR内のNCR、およびPBS内のNRE内に変異を導入したレトロウイルスを用いて抗原遺伝子を前駆細胞に導入した。そして、その前駆細胞を所望の細胞に分化させることによって、養子免疫治療に適した細胞を提供する。その前駆細胞から分化誘導される細胞は、例えば、樹状細胞である。【選択図】 なし配列表