タイトル: | 公開特許公報(A)_2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 2004092501 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C51/48,C07C27/02,C07C51/09,C07C63/38,C07B61/00 |
北山 雅也 若森 浩之 JP 2005272424 公開特許公報(A) 20051006 2004092501 20040326 2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法 株式会社上野製薬応用研究所 000146423 田中 光雄 100081422 松谷 道子 100106518 元山 忠行 100116311 冨田 憲史 100122301 志賀 美苗 100127638 北山 雅也 若森 浩之 7C07C51/48C07C27/02C07C51/09C07C63/38C07B61/00 JPC07C51/48C07C27/02C07C51/09C07C63/38C07B61/00 300 5 OL 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC46 4H006AD16 4H006BA02 4H006BA29 4H006BA32 4H006BB14 4H006BB46 4H006BC34 4H006BD35 4H006BD52 4H006BS30 4H039CA65 4H039CD90 本発明は、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルを塩基性化合物の存在下に加水分解し2,6−ナフタレンジカルボン酸のジカルボン酸塩の溶液を得た後に、酸析する工程を含んでなる、2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法に関する。 2,6−ナフタレンジカルボン酸(以下2,6−NDAと記載)はポリエチレンナフタレートや、液晶性ポリエステル、ポリアミドなど、種々の高分子用モノマーとして重要な化合物である。また、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステル(以下2,6−NDCと記載)は、2,6−NDA同様に、種々の高分子用モノマーとして重要である。2,6−NDCのうち、融点などの物性面や、モノマーとしての使いやすさから2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルが最も重要であり、広く利用されている。 従来2,6−NDAの製法としては、2,6位をアルキル基および/またはアシル基で置換されたナフタレンを、コバルト、マンガン等の重金属などを触媒に用い、アルキル基および/またはアシル基を分子状酸素により酸化する製法などが知られている。しかし、この方法により得られた粗2,6−NDAは、アルデヒド型の中間体や、酸化重合体などの不純物を含んでいるために、直接、高分子用モノマーとして使用する事はできないものであった。このため上記の方法により得られた粗2,6−NDAに関して、種々の精製方法が検討されている。 粗2,6−NDAの精製方法としては、メタノールなどの低級アルコールによりエステル化した後に、蒸留、再結晶などの方法により精製された2,6−NDCを得た後に、エステル基を分解し、高純度の2,6−NDAを得る方法が一般的に知られている。 上記の2,6−NDCのエステル基の分解による高純度の2,6−NDAの製法としては、酸触媒によりエステル基の分解を行う方法、特定の条件下で水によりエステル基の分解を行う方法、および塩基性触媒によりエステル基の分解を行う方法などが提案されている。 酸触媒によりエステル基を分解する方法としては、酸触媒および脂肪族カルボン酸の存在下に2,6−NDCのエステル基の分解を行い、高純度の2,6−NDAを得る方法が知られている(特許文献1を参照)。しかし、この方法においては反応に長時間を要し、エステル基の分解工程において副生物として脂肪族カルボン酸エステル類が生じてしまうなどの問題がある。 水を用いて特定の条件下でエステル基を分解する方法としては、液相条件下で、反応温度において生成する2,6−NDAの少なくとも約10%を可溶化するのに十分な量の水の存在下に、少なくとも華氏450度(摂氏232度)の反応温度で2,6−NDCのエステル基を加水分解する方法が知られている(特許文献2を参照)。しかし、この方法においては華氏450度以上の非常に高い温度を必要とすることや、水の沸点より非常に高い温度で反応することにより高圧で反応させる必要があるなど、工業的実施には困難を伴うものである。 塩基性触媒によりエステル基を分解する方法としては、水あるいは水と水混和性有機溶媒の混合溶媒中で塩基性触媒によりエステル基の加水分解を行った後に、酸析により2,6−NDAを回収する方法が知られている(特許文献3を参照)。しかし、この方法においては水、あるいは水と水混和性有機溶媒の混合溶媒に対する、2,6−NDCの溶解度が非常に小さいために、2,6−NDCが完全には加水分解されない、または完全に加水分解するには長時間を要するという問題がある。また、反応に使用した水混和性有機溶媒が、酸析後の母液に溶解しており、母液を再利用のために処理するには蒸留などの煩雑な溶媒回収操作が必要であることも問題である。特開平6−256256号公報特表平6−505512号公報特開平3−240750号公報 本発明は、高純度の2,6−NDAを高温、高圧などの激しい条件を必要とせず、特別な装置などを用いない簡易な工程で、短時間で製造する方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、2,6−NDCを塩基性化合物の存在下に加水分解し2,6−NDAのカルボン酸塩の溶液を得た後に、それを酸析する工程を含んでなる、2,6−NDAの製造方法について鋭意検討した結果、水非混和性アルコールおよび水からなる混合溶媒中で、塩基性化合物による加水分解を行い、反応後に有機層と水層に分液することにより得られた水層を酸析することにより、速やかに高純度の2,6−NDAが得られることを見出し、本発明の完成に到った。 すなわち、本発明は、2,6−NDCを塩基性化合物の存在下に加水分解し2,6−NDAのジカルボン酸塩の溶液を得た後に、それを酸析する工程を含んでなる2,6−NDAの製造方法において、 2,6−NDCを、2,6−NDCに対し3〜20倍重量の、水非混和性アルコール溶媒と水との重量比が10/100〜200/100である混合溶媒中にて、塩基性化合物の存在下に加水分解を行った後に、有機層と水層に分液し、得られた水層を酸析することにより2,6−NDAを得る事を特徴とする、2,6−NDAの製造方法に関する。 なお、本明細書および特許請求の範囲において低級とは、炭素原子数1〜6であるものを表す。 本発明に使用する2,6−NDCは、従来公知の何れの方法により得られた物でもよい。例えば、2,6位をアルキル基および/またはアシル基で置換されたナフタレンを、コバルト、マンガン等の重金属などを触媒に用い、アルキル基および/またはアシル基を分子状酸素により酸化することにより得られた粗2,6−NDAを、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下、低級アルコールなどと反応させることにより得ることが出来る。2,6−NDCにおける低級アルキルとは、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素であればいずれでもよいが、入手容易性の点などからメチルが好適である。 本発明で使用する、水非混和性アルコール溶媒は、室温で水と混合した場合に、液−液分離し二相系を形成するものであれば特に制限されない。水非混和性アルコール溶媒としては、例えば、n−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコールからなる群より選ばれる1種以上が好適に使用される。 本発明において使用する、水非混和性アルコール溶媒と水との混合溶媒の組成比は、重量比が10/100〜200/100、好ましくは13/100〜100/100である。 混合溶媒の使用量は、2,6−NDCに対して3〜20倍重量であるのが好ましく、5〜10倍重量を用いるのが特に好ましい。 混合溶媒の使用量が3倍重量より少なければ、基質濃度が高すぎるために反応液の攪拌に問題が生じ、速やかに反応が進行しにくい等の問題がある。また、使用量が20倍重量より多ければ、分液時に有機層へ分配する2,6−NDAのカルボン酸塩の量が増加し、歩留まりの点で問題となる。 本発明において加水分解に使用する塩基性化合物としては、アルカリ金属化合物が好ましい。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどのアルカリ金属の低級アルコキシドが挙げられる。加水分解に使用する塩基性化合物は、固体で用いてもよく、水またはアルコールなどの有機溶媒の溶液として添加しても良い。 塩基性化合物を溶液として用いる場合は、塩基性化合物添加後の、系内の水非混和性アルコール溶媒と水(塩基性化合物の水溶液から持ち込まれる水分を含む)との重量比は10/100〜200/100でなければならない。 塩基性化合物の使用量は、2,6−NDCのエステル基に対して1.0〜5.0当量、好ましくは1.1〜2.0当量である。 本発明において、加水分解は、40〜100℃で行うのが好ましく、60〜100℃で行うのが特に好ましい。反応系の沸点より高い温度で反応を行う場合には、耐圧反応容器を用い密閉系において反応を行えばよい。 加水分解反応時間は、2,6−NDCがほぼ完全に2,6−NDAの塩に転化される範囲では特に限定されないが、1〜5時間が好ましい。 加水分解後の反応液は、静置後に有機層と水層に分液する。分液操作は2,6−NDAのカルボン酸塩の析出を避ける為に、40〜80℃の加温下に行うのが好ましい。 分液後に得られた有機層は、そのまま、あるいは所望により蒸留等の精製処理を経た後に再び反応に使用することが可能である。 分液後に得られた水層は、必要に応じ、不溶性の異物を除去するためのろ過や、着色性物質、金属などを除去するための活性炭などの吸着剤処理を行っても良い。 かかる水層には、2,6−NDAのカルボン酸塩が溶解しているため、この水層を酸析することにより2,6−NDAが得られる。 本発明において酸析工程で使用する酸は特に限定されないが、鉱酸が好適に用いられる。鉱酸としては例えば、塩酸、フッ化水素酸のような二元酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸のようなオキソ酸が挙げられる。 酸析により得られた、2,6−NDAのスラリーは、遠心分離、フィルタープレスによるろ過などの常法により、分離される。分離された2,6−NDAは、必要により冷水、温水により洗浄した後に乾燥する。 このようにして得られた、2,6−NDAはポリエチレンナフタレートや、液晶性ポリエステル、ポリアミドなど、種々の高分子用モノマーとして、好適に利用される。 以下、実施例により本発明を詳細に説明する。(実施例1) 攪拌装置、温度計、ジムロート冷却器を取り付けた、容量1Lのガラス製四つ口コルベンに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル50g(0.204モル)、n−ブタノール40gおよび水250g(重量比16/100)からなる混合溶媒、および48%水酸化ナトリウム水溶液35.8g(0.43モル)を仕込んだ。 仕込み後のn−ブタノールと水の重量比は15/100であった。 攪拌下に室温から80〜85℃まで30分かけて昇温し、還流状態で30分反応を行った。反応終了後60℃に冷却した後、静置、分液した。 得られた水層に、30%硫酸78g(0.236モル)を加え酸析し、析出した2,6−NDAを吸引ろ過により回収した。得られた、2,6−NDAを温水中で懸濁洗浄した後にこれを吸引ろ過し、得られた2,6−NDAを80℃で乾燥した。 乾燥後に得られた、2,6−NDAは43.9g(0.203モル)であり、2,6−ナフタレンカルボン酸ジメチルエステルから、ほぼ定量的に短時間にて2,6−NDAを取得できた。(実施例2) 実施例1におけるn−ブタノールを、実施例1で分液して得られた有機層(水分約23%)50gに代える他は、実施例1と同様に反応を行ない、2,6−NDA44.0g(0.203モル)を得た。 仕込み後のn−ブタノールと水の重量比は14/100であった。 この実施例により、本発明の方法により生じる有機層は、水非混和性アルコールとして再利用できることが判明した。(実施例3) 攪拌装置、温度計、ジムロート冷却器を取り付けた、容量1Lのガラス製四つ口コルベンに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル40g(0.163モル)、n−ブタノール200gおよび水300g(重量比67/100)からなる混合溶媒、および48%水酸化ナトリウム水溶液28.6g(0.34モル)を仕込んだ。 仕込み後のn−ブタノールと水の重量比は63.5/100であった。 攪拌下に室温から80〜85℃まで30分かけ昇温し、還流状態で30分反応を行った。反応終了後60℃に冷却した後、静置、分液した。 得られた水層に、30%硫酸62.4g(0.189モル)を加え酸析し、析出した2,6−NDAを吸引ろ過により回収した。得られた、2,6−NDAを温水中で懸濁洗浄した後にこれを吸引ろ過し、得られた2,6−NDAを80℃で乾燥した。 乾燥後に得られた、2,6−NDAは34.9g(0.161モル)であり、2,6−ナフタレンカルボン酸ジメチルエステルから、ほぼ定量的に短時間にて2,6−NDAを取得できた。(比較例1) 実施例1における混合溶媒を、水300gに代え、反応温度を100℃とすることの他は実施例1と同様にして、室温から反応温度まで30分で昇温し、30分間反応を行った。その結果、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルは殆ど加水分解されなかった。(比較例2) 実施例1における混合溶媒を、n−ブタノール300gに代えることの他は実施例1と同様にして、室温から反応温度まで30分で昇温し、5時間反応を行った。その結果、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルは完全には加水分解されなかった。 2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルを塩基性化合物の存在下に加水分解し2,6−ナフタレンジカルボン酸のジカルボン酸塩の溶液を得た後に、それを酸析する工程を含んでなる2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法において、 2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルを、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルに対し3〜20倍重量の、水非混和性アルコール溶媒と水との重量比が10/100〜200/100である混合溶媒中にて、塩基性化合物の存在下に加水分解を行った後に、有機層と水層に分液し、得られた水層を酸析することにより2,6−ナフタレンジカルボン酸を得る事を特徴とする、2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 水非混和性アルコールが、n−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、2−フェノキシエタノール、およびベンジルアルコールからなる群より選択される1種以上のものである請求項1記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 塩基性化合物がアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、およびアルカリ金属の低級アルコキシドから選択される1種以上である請求項1または2記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 塩基性化合物の使用量が、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルのエステル基に対し1.0〜5.0当量である、請求項1〜3の何れかに記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 加水分解後の有機層を、水非混和性アルコールとして再使用する、請求項1〜4の何れかに記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法。 【課題】 高純度の2,6−NDAを高温、高圧などの激しい条件を必要とせず、特別な装置などを用いない簡易な工程で、短時間で製造する方法を提供すること。【解決手段】 2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルを塩基性化合物の存在下に加水分解し2,6−ナフタレンジカルボン酸のジカルボン酸塩の溶液を得た後に、それを酸析する工程を含んでなる2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法において、 2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルを、2,6−ナフタレンジカルボン酸のジ低級アルキルエステルに対し3〜20倍重量の、水非混和性アルコール溶媒と水との重量比が10/100〜200/100である混合溶媒中にて、塩基性化合物の存在下に加水分解を行った後に、有機層と水層に分液し、得られた水層を、酸析することにより2,6−ナフタレンジカルボン酸を得る事を特徴とする、2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造方法を提供する。【選択図】なし