タイトル: | 公開特許公報(A)_水溶性反応性ポリマー及びその製造方法及び生体試料修飾剤 |
出願番号: | 2004081422 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C08F30/02,C08F2/38,C12N9/96 |
石原 一彦 遊佐 真一 JP 2005239988 公開特許公報(A) 20050908 2004081422 20040224 水溶性反応性ポリマー及びその製造方法及び生体試料修飾剤 石原 一彦 592057341 石原 一彦 遊佐 真一 7C08F30/02C08F2/38C12N9/96 JPC08F30/02C08F2/38C12N9/96 7 書面 10 4B050 4J011 4J100 4B050CC07 4B050HH02 4B050KK14 4J011AA05 4J011AA06 4J011BA06 4J011HB00 4J011HB22 4J011NA01 4J011NA24 4J011NB04 4J011NB05 4J011NB06 4J100AE09P 4J100AE26P 4J100AL08P 4J100AM21P 4J100BA03P 4J100BA32P 4J100BA63P 4J100CA01 4J100CA04 4J100DA01 4J100DA04 4J100FA04 4J100FA19 4J100JA50 発明の詳細な説明 本発明は、新規な末端官能性のリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマー、その製造方法および用途に関する。 分子骨格中にホスホリルコリン基を含有するポリマーは、ホスホリルコリン基に由来する特異な性質が注目されている。例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンをモノマーユニットとするポリマー(以下、MPCポリマーと略す。)は生体系に存在するリン脂質と同一の極性基構造を有し、そのため高い親水性、保水性、生体適合性などを有することが明らかとなっている。そこでバイオマテリアルや化粧品原料等の応用開発が盛んになされるようになってきた。従来検討されてきたこれらのポリマーはすべて付加重合性モノマーを通常のフリーラジカル重合することにより得るため、(1)得られたポリマーの分子量分布が広がってしまう、(2)特定の官能基をポリマー鎖の特定の位置に挿入するなどの構造制御が困難であった。 一般に、分子量分布の小さなポリマー、あるいは複数のモノマーユニットの配列を考慮したブロック型ポリマーを得る方法として、アニオン重合が知られている。このアニオン重合を選択する理由は、反応開始時に比べて成長時の反応速度が小さいため、生成する分子鎖が均一な長さになりやすいためとされている。また、アニオン重合では、活性末端がイオン性を有するため、分子鎖の成長時、イオンとイオンとの反発に基づいて重合の停止反応が抑制される。その結果、活性末端のリビング性が得られ、重合反応の進行にともなって、順次、別種の単量体を添加することにより、ブロック型ポリマーを容易に得ることができる。しかしながら、アニオン重合では反応系から水分を十分に除去する必要がある。また、極性の大きいモノマーの場合は、このモノマーの極性基と分子の成長末端との間で副反応を生ずるため、基本的に重合させること自体が困難であり、その工業化において大きな制約となっている。 その他の分子量分布の制御法と官能基の導入法としては、メルカプト化合物のような連鎖移動定数の大きな化合物を利用し、ラジカルを補足後、これより重合を進める方法がある。しかしながら、重合機構が基本的にフリーラジカル重合であるために、重合率を上げていくと分子量分布で1.5以上、末端基導入率で70%以下のポリマーしか得られないため、工業的には大きな障害である。 これらの状況に鑑み、近年、リビングラジカル重合の検討が盛んになされている。安定遊離ラジカル重合法では、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)に代表されるニトロキシル化合物がラジカルキャップ剤としてよく利用されるが、TEMPOを用いた重合反応では、スチレン系モノマーの場合は重合が制御され重合率も高いものの、アクリル酸エステル系モノマーの場合は重合が困難であることが知られている。 一方、可逆的付加開裂連鎖移動重合法でのアクリル酸エステル系モノマーの重合については、水系溶媒を使用することにより、狭い分子量分布を持つポリマーを高収率で得られることが最近報告されている(Macromolecules、Vol.34、2248頁、2001年)。すなわち、可逆的付加開裂連鎖移動重合法においては、モノマーが親水性、疎水性を問わず適用可能である点が優れているが、リン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーを重合し、かつポリマー鎖の末端に特定の官能基を導入する例は報告されていない。 また、リン脂質極性基担持(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物のリビング重合については報告されている(Macromolecules、Vol.35、9306頁、2002年)。しかしながら原子移動重合によるため、重合開始剤系の臭素原子、触媒系のジピリジル及びその銅錯体が必要であり、これらを重合系あるいは合成されたポリマー鎖から除くことができないため、生体に対する毒性、障害性、生体関連分子の構造変化を誘起することが容易に予想できる。さらに含リン(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物の可逆的付加開裂連鎖移動重合法は公開特許公報2003−64132に記載があるが、有機溶媒を50%以上と多量に使用する合成系であるとともに、末端官能基の導入については全く考慮されておらず、構造明確なポリマーが不可欠な生体分子や細胞・生体組織への修飾剤としての用途を考えた場合、問題が多い。 有用なタンパク質やDNAを生体系から取り出す,あるいは微生物などを利用して新たに合成する技術は,近年,特に進み,これを利用した新しい医薬品製造,診断・検査試薬の開発などが注目されている。これらの生体分子に対して合成ポリマーを利用して分子修飾することによる高機能化、安定性の向上、安全性の獲得などが重要な技術となってきている。これまでは水溶性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEGと略記する)が広く用いられてきたが、分子構造が単純であり、ポリマー自体に新規機能を付与することが困難であること、PEGが生体分子に長期間接触すると生体分子の構造変化を誘起することも報告されている。すなわち、新しい生体分子、細胞・生体組織修飾用のポリマーの必要性は高まる一方である。 発明が解決しようとする課題 本発明では、狭い分子量分布とポリマー鎖末端に反応性官能基を有するリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマーを提供することを第1の目的としている。また、本発明の第2の目的は、リン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマーの製造方法において、水を主成分とする溶媒を使用し、リビングラジカル重合法により反応を行うことを特徴とするポリマーの製造方法を提供することにある。またさらに、本発明の第3の目的は、前記のポリマーを生体試料に対して簡便に修飾できる構造体とすることである。 課題を解決するための手段 本発明者らは、前記の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、リン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマー組成物を、水を主成分とする溶媒中で水溶性の重合開始剤系を選択し、可逆的付加開裂連鎖移動重合法を適用することにより、分子量分布の狭九、かつポリマー鎖末端に反応性官能基を有したポリマーが得られること、さらに、前記ポリマーが生体試料に対して優れた反応性を有し、これらの機能を飛躍的に高めることができることの知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示す(1)〜(3)である。(1)下記式[1]で示されるリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーを含むモノマー組成物を重合してなるポリマーであって、ポリマー鎖末端の片側あるいは両側に反応性官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した数平均分子量が、4,000〜500,000であり、多分散度(Mw/Mn)が、1.01〜1.50であるポリマー。(2)末端官能性のリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマーの製造方法において、水を主たる成分とする反応媒体中で可逆的付加開裂連鎖移動重合法により重合して得られるポリマーの製造方法。(3)前記のポリマーを有効成分とするタンパク質、核酸、多糖、細胞あるいは生体組織など生体試料の修飾剤。 本発明は、リン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーを含むモノマー組成物を重合してなるポリマーであって、ポリマー鎖末端の片側あるいは両側に反応性官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した数平均分子量が、4,000〜500,000であり、多分散度(Mw/Mn)が、1.01〜1.50であるポリマーである。本発明に用いるリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーは分子構造内に、ホスホリルコリン基、ホスホリルエタノールアミン基などの天然の存在するリン脂質分子の極性基と、重合性のアクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含むものが考えられる。 本発明で用いるリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーは、具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCと略す。)、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−ア(メタ)クリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4−ア(メタ)クリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−ア(メタ)クリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−ア(メタ)クリロイルオキシデシルホスホリルコリン、ω−ア(メタ)クリロイルポリオキシエチレンホスホリルコリン、2−アクリルアミドエチルホスホリルコリン、3−アクリルアミドプロピルホスホリルコリン、4−アクリルアミドブチルホスホリルコリン、6−アクリルアミドヘキシルホスホリルコリン、10−アクリルアミドデシルホスホリルコリン、ω−ア(メタ)クリルアミドポリオキシエチレンホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン、3−ア(メタ)クリロイルオキシプロピルホスホリルエタノールアミン、4−ア(メタ)クリロイルオキシブチルホスホリルエタノールアミン、6−ア(メタ)クリロイルオキシヘキシルホスホリルエタノールアミン、10−ア(メタ)クリロイルオキシデシルホスホリルエタノールアミン、ω−ア(メタ)クリロイルポリオキシエチレンホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。 本発明に用いるリビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動重合法が挙げられる。可逆的付加開裂連鎖移動重合法を用いる場合、通常、ラジカル発生剤、およびリビングラジカル連鎖移動剤としてジチオ化合物を使用する。ラジカル発生剤としては水溶性であれば特に限定されないが、4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタン酸)が好ましい。リビングラジカル連鎖移動剤として使用されるジチオ化合物は、アクリル酸誘導体モノマーを重合することができる化合物であれば特に限定されないが、ポリマー鎖の末端に反応性官能基を導入するという点及び水系での反応の観点から酢酸ジチオベンゾエートあるいは4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエートが好ましい。 ブロック共重合体については、異なる種類のモノマーを、逐次、リビングラジカル重合系に対して添加することにより得ることができる。 本発明のポリマーの製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲であれば任意の溶媒を選択することができるが、生体試料に対して修飾剤としての用途を考えると、水を主たる溶媒とし、49%を超えない範囲でアルコールなどの水溶性有機溶媒を添加した混合溶媒の一成分として使用することが好ましい。 重合反応については、本発明の効果を損なわない範囲において、任意の温度において行なってよい。具体的には、例えば熱分解によりラジカルを発生させる場合は、10℃〜90℃、より好ましくは、20℃〜70℃の条件が挙げられる。 反応容器については、重合反応を阻害しないかぎりにおいて特に制限がなく、ガラス製、ステンレス製など、適宜選択して使用することができる。反応系を加圧する場合は、耐圧容器を使用することが好ましい。 このようにして得られたポリマーは、標準ポリエチレングリコールを用いて換算したGPCの多分散度が1.01〜1.50、好ましくは1.10〜1.40である。ポリマー鎖末端の官能基の導入率が90%以上、このポリマーの収率は、60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上で得ることができる。 本発明のポリマーを生体試料修飾剤として用いる場合、ポリマーは水あるいは緩衝液あるいは生体試料に影響を与えない程度の少量の有機溶媒を混合した系に溶解することが必要である。 発明の効果 本発明によれば、末端官能性で水溶性のリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマーを、水を主たる溶媒中で精度良く合成でき、分子量分布が小さく、ポリマー鎖末端の官能基の導入率が高いポリマーを80%以上の高収率で得ることができる。また、同様に分子量分布が狭いブロック型ポリマーも高い収率で得ることができる。またさらに、上記のポリマーはタンパク質、核酸、多糖、細胞あるいは生体組織の修飾剤として使用すると、安定性、耐熱性、活性、生物学的特異性を高めあるいは長期間維持できる点で、優れた性能を示すので、産業上、とくにバイオテクノロジー、医療、製薬、食品などの分野に有用である。 以下に、本発明を具体例に基づいて詳細に説明する。次に、分析方法および条件等について記載する。1.数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)につぃて;ポリエチレングリコールを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定する。すなわち得られたポリマーを0.5重量%になるよう溶出溶媒を用いて希釈し、この溶液を孔径0.45μmのメンブランフィルタで濾過し、試験溶液とする。 水溶性のポリマーのGPC分析条件について以下に記載する。カラム;G3000PWXL×2本(東ソー社製)、溶出溶媒;20mMリン酸緩衝液、標準物質;ポリエチレングリコール(ポリマー・ラボラトリー社製)、検出;視差屈折計、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量測定(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の計算:東ソー社製インテグレータ内蔵分子量計算プログラム(SC−8020用GPCプログラム)、流速;0.5mL/分、試料溶液使用量;100μL、カラム温度は40℃に設定した。 構造確認は以下の方法によった。1H−NMRはポリマー20mgを重エタノール(d−6)1.5mLに溶解させた試料溶液を用いて、日本電子(株)製、α−500(500MHz)により30℃にて測定する。 実施例1(MPCホモポリマー、Mn=22,000、Mw/Mn=1.22、収率=85%)フラスコに4−シアノ吉草酸ジチオベンゾエート(CPADTBと略す。)14.0mg(0.05mmol)、水50mLを仕込み、かき混ぜながら容器内をアルゴンで置換した。次いで4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACPと略す。)14.0mg(0.05mmol)を添加しかき混ぜ、その後、MPC15g(50mmol)を添加し、60℃に加温し、6時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/アセトン(6/4)混合溶液1リットル中に滴下して固形のポリマーを得た。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記の水溶性のポリマーのGPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mnが22,000、Mw/Mnが1.32、収率が85%であった。分析の結果、ポリマー鎖末端にカルボキシル基を含んでいることが確認できた。カルボン酸の定量の結果、末端官能基の導入率は98%以上であった。 実施例2(末端基の変換)実施例1で得られたMPCホモポリマーを1Nの水素化ホウ素ナトリウム水溶液に溶解し、40℃で30分間保持した。反応後、混合液を乾燥アセトン中に投じ、白色沈殿を得た。水溶性のポリマーのGPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mnが21,000、Mw/Mnが1.31、収率が97%であった。分析の結果、ポリマー鎖末端にメルカプト基を含んでいることが確認できた。メルカプト基定量の結果、末端メルカプト基の導入率は97%以上であった。 実施例3(2−アクリロイルオキシジエチレンオキシドエチルホソホリルコリン(AOEOPCと略す)ホモポリマー、Mn=34,000、Mw/Mn=1.31、収率=77%)ガラス製試験管にCPADTB3.0mg(0.012mmol)、水30mLを仕込み、かき混ぜながら容器内をアルゴンで置換した。次いでACP3.0mg(0.012mmol)を添加しかき混ぜ、その後、AOEOPC15g(40mmol)を添加し、ガラス製試験管の上部を溶融して封管した。シリコーンオイルバスで50℃に加温し、8時間静置した。反応後、ガラス製試験管を開管し、反応混合液を取り出し、ジエチルエーテル/アセトン(6/4)混合溶液500ml中に滴下して固形のポリマーを得た。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。GPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mnが112,000、Mw/Mnが1.41、収率が77%であった。分析の結果、ポリマー鎖末端にカルボキシル基を含んでいることが確認できた。カルボン酸の定量の結果、末端官能基の導入率は95%以上であった。 実施例4(MPC/n−ブチルメタクリレート(BMAと略記する)ランダム共重合体、Mn=41,000、Mw/Mn=1.40、収率=73%)ガラス製試験管にCPADTB0.3mg(0.005mmol)、水30mL及びエタノール10mLを仕込み、容器内をアルゴンで置換した。次いでACP3.0mg(0.012mmol)を添加しかき混ぜ、その後、MPC9g(30mmol)及びBMA3.2g(20mmol)を添加しガラス製試験管を溶封した。これを60℃に加温し、12時間ふり混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル/アセトン/クロロホルム(6/2/2)混合溶液800ml中に滴下して固形のポリマーを得た。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。GPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mnが41,000、Mw/Mn=1.40、収率=73%であった。分析の結果、ポリマー中にホスホリルコリン基の存在を確認した。またポリマー中のMPCユニット組成は65mol%であった。ポリマー鎖末端にカルボキシル基を含んでいることが確認できた。カルボン酸の定量の結果、末端官能基の導入率は95%以上であった。 図1に実施例1、実施例3及び実施例4で得られたポリマーのGPCチャートを示す。分子量分布が極めて狭いことが明確にわかる。 比較例1(通常のラジカル重合、MPCホモポリマー、Mn=20,000、Mw/Mn=4.12、収率=70%)フラスコに、MPC15g(50mmol)、水50mLを仕込み、かき混ぜながら容器内をアルゴンガスで置換した。次いで水溶性ラジカル開始剤であるV−50 13.6mg(0.05mmol)を添加し、3時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、乾燥アセトン1リットル中に滴下して固形のポリマーを得た。前記の水溶性のポリマーのGPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mn=20,000、Mw/Mn=4.12、収率=70%であった。また構造の分析を行い、ポリマー中のホスホリルコリン基の存在を確認した。 図2に比較例1で得られたポリマーのGPCチャートを実施例1で得られたポリマーと比較して示す。明確な分子量分布の差異が認められる。 比較例2(通常のラジカル重合、MPC/BMA共重合体、Mn=21,000、Mw/Mn=4.52、収率=99%)フラスコに、MPC12g(40mmol)、BMA1.4g(10mmol)、水30mL、メタノール20mLを仕込み、かき混ぜながら容器内をアルゴンガスで置換した。次いでV−50 13.6mg(0.05mmol)を添加し、60℃まで昇温し6時間かき混ぜた。得られた溶液を取り出し、ジエチルエーテル1リットル中に滴下して固形のポリマーを得た。これを減圧乾燥し、ポリマーを得た。前記の水溶性のポリマーのGPC分析条件に従ってこのポリマーを分析した。結果は、Mnが21,000、Mw/Mnが4.52、収率が99%であった。組成および結果を表2に示す。また、実施例1−1と同様の分析を行い、ポリマー中のホスホリルコリン基の存在を確認した。 実施例5(酵素の修飾)実施例1で得られたポリマー100mgを水/メタノール混合液(6/4)に150ml溶解した。これにN−ヒドロキシスクシンイミド42,5mmolを加え、溶解し、4℃に冷却した。これにジシクロヘキシルカルボジイミドを41.8mmol加えて、4℃で1時間、次いで室温で23時間攪拌を続けた。反応後、溶液を−10℃に冷却し、副生成物をろ別した。ろ液をアセトン中に投じ、末端基活性化ポリマーを沈殿させた。パパイン(120mg)をリン酸緩衝液(pH7.0)120mlに溶解し、これに前述の末端基活性化ポリマーを添加して、室温にて2時間攪拌した。反応終了後、リン酸緩衝液に対して透析を行い、ポリマー鎖で修飾した酵素(パパイン)を得た。 比較例3(酵素の活性測定)実施例5と同様の方法で、実施例1で得られたポリマーの代わりにカルボキシル基を末端に有するPEG誘導体(Mn=5,000)を利用して、パパインの修飾をおこなった。 実施例6(酵素の活性測定)実施例5、比較例3で得られたポリマー鎖で修飾した酵素(パパイン)及び未修飾のパパインの酵素活性をベンゾイル−L−アルギニン−エチルエステル(BAEEと略記)を基質として、リン酸緩衝液(pH6.1)中で40℃にて測定した。酵素反応により基質が分解され、258nmの紫外吸収が増加するため、この経時的変化を追跡して、反応速度を求めた。 酵素の安定性実施例6による結果を図3に示す。未処理のパパインの活性は7日目に全く見られなくなり、パパインの安定性が悪いことがわかる。また、比較例3のPEG鎖修飾パパインでもやはり初期の7日目までに活性が50%に低下する。これらに対して、実施例5のポリマー修飾パパインでは28日目においても100%の活性を維持することがわかった。これらより実施例1で得られたポリマーのタンパク質修飾剤としての有効性が確認できた。 実施例7(細胞の修飾)実施例3で得られたポリマーを用いて、赤血球の表面を修飾した。ウサギから新鮮血を採取し、これをただちに遠心分離して赤血球を分離した。ハンクス緩衝液を用いて、血球密度が500,000個/mLとなるように調節した。この血球懸濁液1mLに実施例3で得られたポリマー40mLをハンクス緩衝液0.5mLに溶解した液を加えた。4℃にて3時間反応させて、遠心分離して血球を精製した。 比較例4(細胞の修飾)実施例7と同様の方法で、実施例3で得られたポリマーの代わりにカルボキシル基を末端に有するPEG誘導体を利用して、赤血球の修飾をおこなった。 比較例5(細胞の修飾)実施例7と同様の方法で、実施例3で得られたポリマーの代わりに比較例2で得られたポリマーを利用した。 実施例8(溶血性の評価)実施例7、比較例4及び比較例5のポリマー修飾赤血球及び未処理の赤血球を用いて、40℃にて3時間、30回/分で震蕩した際の溶血性を、懸濁液を遠心分離した後の上澄み液の413nmにおける吸光度から評価した。 細胞の安定性図4に溶血性試験の結果を示す。未処理の赤血球はほぼ100%溶血している。ポリマーで修飾した場合においても、構造により大きく差が出る。比較例5では、ポリマー末端の官能基濃度が低いために細胞と結合できない、あるいは分子量分布が大きく、界面活性作用がでるために細胞の破壊が阻止できない。また、比較例4ではポリマー構造の違いにより、細胞に与える効果が大きく、溶血を進めている。これらに対して、実施例7では効果的に溶血をほぼ完全に抑制している。 ポリマーのGPC測定の結果実施例1および比較例1のGPC測定の結果酵素の残存活性の経時変化の結果赤血球溶血性試験の結果 下記式[1]で示されるリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーを含むモノマー組成物を重合してなるポリマーであって、ポリマー鎖末端の片側あるいは両側に反応性官能基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した数平均分子量が、4,000〜500,000であり、多分散度(Mw/Mn)が、1,01〜1.50であるポリマー。(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜10の2価の炭化水素基及びオキシエチレン基を示し、R3は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R4、R5およびR6は同一でも異なってもよく水素あるいは炭素数1〜4の炭化水素基を示し、Aはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合から選ばれる2価の結合を示す。) 下記式[2]で示される末端官能性のリン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体ポリマーの製造方法において、水を主たる成分とする反応媒体中で可逆的付加開裂連鎖移動重合法により重合して得られるポリマーの製造方法。(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜10の2価の炭化水素基及びオキシエチレン基を示し、R3は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R4、R5およびR6は同一でも異なってもよく水素あるいは炭素数1〜4の炭化水素基を示し、Aはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合から選ばれる2価の結合を示す。Xは炭素ー炭素不飽和結合を有するモノマーから重合により得られるモノマーユニット、Y及びZは同一でも異なってもよく有機反応が可能な有機官能基を示す。) 請求項1に記載のポリマーを有効成分とするタンパク質修飾剤。 請求項1に記載のポリマーを有効成分とする核酸修飾剤。 請求項1に記載のポリマーを有効成分とする多糖修飾剤。 請求項1に記載のポリマーを有効成分とする細胞修飾剤。 請求項1に記載のポリマーを有効成分とする生体組織修飾剤。 【課題】生体試料を簡便に修飾できる分子量分布が小さく、かつポリマー鎖末端に反応性の官能基を有する水溶性リン脂質ポリマーを提供することにある。【解決手段】リン脂質極性基を有するアクリル酸誘導体モノマーを含むモノマー組成物を、水を主たる成分とする反応媒体中で可逆的付加開裂連鎖移動重合法により重合して得られるポリマーであって、ポリマー鎖末端の片側あるいは両側に生体試料に対して簡便に反応する官能基を有し、また数平均分子量が、4,000〜500,000であり、多分散度(Mw/Mn)が、1.01〜1.50であるポリマー。【選択図】なし