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タイトル:公開特許公報(A)_環状化合物の製造方法
出願番号:2004074518
年次:2005
IPC分類:7,C07C67/347,C07C69/753


特許情報キャッシュ

倉片 洋 寺田 和代 木内 孝司 JP 2005263643 公開特許公報(A) 20050929 2004074518 20040316 環状化合物の製造方法 日本ゼオン株式会社 000229117 倉片 洋 寺田 和代 木内 孝司 7C07C67/347C07C69/753 JPC07C67/347C07C69/753 Z 7 OL 9 4H006 4H006AA02 4H006AC21 4H006BC10 4H006BJ30 4H006KA31 4H006KC20 本発明は、ジエンとジエノフィルのディールスアルダー付加体である環状化合物の製造方法に関し、さらに詳しくは、ジエンと鎖状ジエノフィルとのディールスアルダー付加反応において、鎖状ジエノフィルの重合体等の副生成物が少なく、目的とする環状化合物の収率が高い、環状化合物の製造方法に関する。 ノルボルネン誘導体やテトラシクロドデセン誘導体等の環状化合物は、透明樹脂や光学樹脂等の合成樹脂の原料として有用である。これらの環状化合物は、従来から、鎖状ジエノフィルにジエンをディールスアルダー付加することにより合成されている。例えば、鎖状ジエノフィルにシクロペンタジエン(ジエン)をディールスアルダー付加することによりノルボルネン誘導体(環状化合物)が得られる。さらに得られたノルボルネン誘導体をジエノフィルとして、シクロペンタジエン(ジエン)を(二段目の)ディールスアルダー付加することによりテトラシクロドデセン誘導体(環状化合物)が得られる。ここで、テトラシクロドデセン誘導体を目的物質とする製造方法では、中間物質であるノルボルネン誘導体が、他の工程で得られる場合を除き、これを一旦単離または濃縮してから二段目のディールスアルダー付加を行うと、製造工程が複雑になったり、全体としてテトラシクロドデセン誘導体の収率が低下したりする問題点があり、一段目と二段目のディールスアルダー付加反応は同時に行われることが一般的である。 鎖状ジエノフィルへのジエンのディールスアルダー付加反応では、ジエン及び鎖状ジエノフィルが付加重合活性を有していること、ジエンがジエノフィルとしても働くことなどから、ジエンの付加重合反応、鎖状ジエノフィルの付加重合反応、ジエン同士のディールスアルダー付加反応が競争反応として起こる。特に、反応が比較的高温、例えば50℃〜250℃で行なわれる場合には、目的物である環状化合物の生成と同時に、ジエンの付加重合体や鎖状ジエノフィルの付加重合体等の副生成物が多く副生し、目的物の収率が低くなるという問題点、および目的物を十分に精製しないと、これを原料として合成される合成樹脂の透明性や光学特性に悪影響を与えるという問題点が生じている。さらに、副生成物と目的物とが、蒸留等の精製工程で分離しにくいことが多く、そのような場合には、精製工程でさらに収率が低下するという問題が生じる。そこで、副生成物の生成を抑制することが必要となる。 各種の重合禁止剤を用いることにより、副生成物の生成を抑制して、目的となる環状化合物を製造する方法が提案されている。非特許文献1には、アクリル酸等のアクリレート(鎖状ジエノフィル)にシクロペンタジエン(ジエン)を、100℃以下の温度でディールスアルダー付加して、ノルボルネン誘導体(環状化合物)を製造する方法において、ハイドロキノンを重合禁止剤として用いることが開示されている。特許文献1では、メチルメタアクリレートやアクリルニトリル等のオレフィン類(鎖状ジエノフィル)に、シクロペンタジエン(ジエン)を、180℃×5hrの条件でディールスアルダー付加し、テトラシクロドデセン誘導体を製造する方法において、N,N−ジメチルヒドロキシルアミンやN,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミンと特定フェノール化合物とを併用して重合禁止剤として用いることが開示されている。特許文献2には、オレフィンに共役ジエンをディールスアルダー付加させる方法において、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等の鎖状ジアミン化合物を重合禁止剤として用いることが開示されている。しかしながら、鎖状ジエノフィルにジエンをディールスアルダー付加させる反応で従来用いられてきた重合禁止剤では充分に副生成物を抑制できないという問題点があった。特開平4−198154号公報特開昭57−7131号公報Y.Kobuke et al.、JACS、p6548−6533、November 4,1970 本発明は、鎖状ジエノフィルへのジエンのディールスアルダー付加反応により環状化合物を製造する方法において、目的物質の収率が高く、副生成物の少ない環状化合物の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、鎖状ジエノフィルにジエンをディールスアルダー付加させる反応において、環状アミンを重合禁止剤として用いることにより効果的に副生成物を低減でき、目的物質を収率よく製造できることを見出した。さらに本発明者らは、環状アミンとして2級の環状アミンが好ましいこと;ジエンが環状ジエンである場合、および鎖状ジエノフィルが鎖状オレフィンである場合に本発明の製造方法が好ましく適用できること;鎖状ジエノフィルが、極性基を有する鎖状オレフィンである場合に、本発明の製造方法が特に好ましく適用できること;鎖状ジエノフィルが、プロトン性極性基又は後処理でプロトン性極性記基を発現する基を有する鎖状オレフィンである場合に、本発明の製造方法が特に好ましく適用できること;およびディールスアルダー付加反応時の反応温度は120℃以上であることが好ましいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。 かくして本発明によれば、環状アミン存在下で、鎖状ジエノフィルにジエンをディールスアルダー付加することを特徴とする環状化合物の製造方法が提供される。さらに、そのような製造方法の好ましい実施態様として、環状アミンが2級の環状アミンである上記の製造方法;ジエンが環状ジエンである上記の製造方法;鎖状ジエノフィルが鎖状オレフィンである上記の製造方法;鎖状ジエノフィルが、極性基を有する鎖状オレフィンである上記の製造方法;鎖状ジエノフィルが、プロトン性極性基又は後処理でプロトン性極性記基を発現する基を有する鎖状オレフィンである上記の製造方法;およびディールスアルダー付加反応時の反応温度は120℃以上である上記の製造方法が提供される。 本発明の環状化合物の製造方法は、目的物質の収率が高く、副生成物が少ないという利点がある。 本発明で、ジエンとは分子内に共役する2つの炭素−炭素不飽和結合を有する化合物であり、ジエノフィルとディールスアルダー付加反応する化合物であれば特別な限定は無い。かかるジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1−フェニルブタジエンおよびクロロプレンなどの鎖状ジエン;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンおよびヘキサクロルシクロペンタジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。本発明で得られる環状化合物を重合して得られる合成樹脂の耐熱性に優れることから、環状ジエン(分子内に環構造を有し、その環構造内に2つの炭素−炭素不飽和結合を有する化合物)が好ましい。環状ジエンの中でも、鎖状ジエノフィルとのディールスアルダー付加反応の反応性に優れることから五員環の環状ジエンが好ましく、より好ましくはシクロペンタジエンである。シクロペンタジエンは、可逆的なディールスアルダー付加反応により容易に二量化しジシクロペンタジエンとなるため、シクロペンタジエンの供給源としては通常はジシクロペンタジエンが用いられる。純度95〜98重量%のジシクロペンタジエンが市場で入手可能である。 ジエンとディールスアルダー付加反応し、分子内に炭素−炭素二重結合または三重結合を1つ以上有する化合物がジエノフィルである。本発明に用いられる鎖状ジエノフィルとは、ジエノフィルのうち鎖状のものであり、分子内に環構造をもたないものか、又はディールスアルダー付加反応に係る二重結合または三重結合が環構造中にないものをいう。鎖状ジエノフィルには格別な限定はないが、通常は分子内に炭素−炭素二重結合が1つである鎖状オレフィンが用いられる。鎖状ジエノフィルとして、鎖状オレフィンを用いる場合は、三重結合または複数の二重結合を有する鎖状ジエノフィルを用いる場合に比べて、副生成物の抑制をしやすく、本発明の効果を顕著に発揮することができ好ましい。また、鎖状オレフィンとしては、極性を有するもの、非極性のもののいずれの場合であっても、本発明の製造方法を適用できるが、極性基を有するもの場合に本発明の効果を顕著に発揮することができ好ましい。 極性基は、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含んだ原子団である。極性基には格別な限定はないが、プロトン性極性基または後反応によりプロトン性極性基を発現できる極性基が好ましい。プロトン性極性基は、へテロ原子に水素原子が隣接した原子団を有するものであり、たとえば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルフォニル基、スルフィニル基、スルフェニル基およびリン酸基などの酸素原子に水素原子が隣接して結合した原子団を有する基;1級アミノ基、2級アミノ基、イミド基およびアミド基などの窒素原子に水素原子が隣接して結合した原子団を有する基;などが挙げられる。これらの中でも、酸素原子に水素原子が隣接して結合した原子団を有する基が好ましく、ヒドロキシル基やカルボキシル基がより好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。 後反応によりプロトン性極性基を発現できる極性基は、ディールスアルダー反応後に、加水分解反応、酸化反応、水素化反応などの反応によりプロトン性極性基を発現できる基である。そのような基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基などのエーテル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびアセトオキシ基などのエステル基;オキシカルボニルオキシ基、カルボニルオキシカルボニル基、アミド基、イミド基、シアノ基、アルデヒド基、エポキシ基などが挙げられ、好ましくは、エステル基、アミド基およびシアノ基であり、より好ましくは、エステル基およびシアノ基などである。後反応等として、加水分解反応によりプロトン性極性基を発現できる基が好ましい。 鎖状オレフィンの具体的な例を説明すると、非極性の鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテンおよびスチレンなどを挙げることができる。プロトン性極性基を有する鎖状オレフィンの具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アトロパ酸およびケイ皮酸などのなどの不飽和カルボン酸;アリルアルコール、ビニルアルコール、メチルビニルメタノール、クロチルアルコール、メタリルアルコール、1−フェニルエテン−1−オール、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、3−ブテンー2−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ぺンテン−1−オールおよび2−ヘキセン−1−オールなどの不飽和アルコール;などが挙げられ、好ましくはアクリル酸とマレイン酸である。後反応によりプロトン性極性基を発現できる極性基を有する鎖状オレフィンの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびグリシジルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびグリシジルメタアクリレートなどのメタアクリレート;アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどの不飽和シアノ化合物;などが挙げられ、好ましくはメチルメタクリレートおよびアクリロニトリルなどである。 これらの鎖状ジエノフィルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。鎖状ジエノフィルに対するジエンの使用割合は、目的とする環状化合物により異なり、適宜選択される。ノルボルネン誘導体など、鎖状ジエノフィルにジエンを1対1のモル比でディールスアルダー付加反応させて得られる環状化合物が目的物質である場合、鎖状ジエノフィルとジエンのモル比で、通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30の範囲である。テトラシクロドデセン誘導体など、鎖状ジエノフィルにジエンを1対2のモル比でディールスアルダー付加反応させて得られる環状化合物が目的物質である場合、鎖状ジエノフィルとジエンのモル比で、通常5/95〜80/20、好ましくは10/90〜70/30、より好ましくは20/80〜50/50の範囲である。 本発明においては、重合禁止剤として環状アミンを用いることが特徴である。環状アミンは、環構造の中に窒素原子を有するアミンである。該窒素原子には2つまたは3つの炭素原子が隣接して結合し、該窒素原子と隣接して結合する2つの炭素原子を含んで該環構造が形成されている。該窒素原子に該環内の2つの炭素原子が隣接して結合する場合は、そのような環状アミンを2級の環状アミンといい、該環内の2つの炭素原子と該環外の1つの炭素原子が隣接して結合する場合は、3級の環状アミンという。環状アミンは好ましくは2級の環状アミンである。該環構造は不飽和環でも飽和環でもよいが、該窒素と隣接する2つ炭素原子との間の結合は飽和結合であることが好ましく、該環構造が飽和環であることが特に好ましい。該環構造の中で、ヘテロ原子は窒素だけであるものが好ましい。該窒素に隣接して該環構造を構成する2つの炭素原子は2級、3級、または4級の炭素であるが、3級または4級であることが好ましく、4級の炭素であることが特に好ましい。これらの好ましい場合に、本発明の効果が顕著に発揮される。 2級の環状アミンとしては、例えば、ピロール、インドリン、イソインドリンおよびカルバゾールなどの含窒素5員環構造を有する2級の環状アミン;ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、チオモルホリンおよびフェネチアジンなどの含窒素6員環構造を有する2級の環状アミンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは含窒素6員環構造を有する2級の環状アミンであり、より好ましくは、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの、環構造中のヘテロ原子が窒素原子のみのものである。 これらの環状アミンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、用いるジエンと鎖状ジエノフィルの合計の重量に対して、通常10〜10,000ppm、好ましくは50〜5,000ppm、より好ましくは100〜3,000ppmの範囲である。 本発明においては、環状アミン以外の、その他の重合禁止剤を併用して用いることができる。その他の重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4ーメトキシフェノール、2,6−ジクロロペンチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,5’−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−ジフェニルメタン、テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート}およびブチルヒドロキシアニソール等のフェノール系重合禁止剤;t−ブチルカテコール、ヒドロキノン、レゾルシンおよびピロガロール等のキノン系重合禁止剤;N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジイソプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジ−n−ブチルヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルヒドロキシルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−ニトロフェニル)−p−フェニレンジアミン、N−メチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジベンジル−p−フェニレンジアミン、N−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−ベンジル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジベンジル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(Β−ニトロ−α−フェニルエチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス−p−ジフェニリル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−o−トリル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−Β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−ブチル−N’−ベンジル−p−フェニレンジアミンおよびN−シクロヘキシル−N’−フェニレンジアミンなどの鎖状アミン系重合禁止剤;などを挙げることができる。これらのその他の重合禁止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの、その他の重合禁止剤は、それぞれの効果を有し、適切な使用量はそれぞれに違ってくる。従って、その使用量は特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるべきである。その他の重合禁止剤の種類によっては、組み合わせて使用する環状アミンよりも多い量を使用する場合もあり得るが、一般的には、組み合わせて用いる環状アミンよりも少ない重量で用いることが好ましい。 本発明においては、ディールスアルダー付加反応に不活性な溶媒を用いて、鎖状ジエノフィル、ジエンおよび環状アミンを希釈して反応を行うこともできる。用いることができる溶媒としては、例えば、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼンおよびトルエン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール類;アセトンおよびシクロペンタノンなどのケトン類;ジメチルエーテルおよびジエチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。 一般的にディールスアルダー付加反応は、特に触媒を要せず、加熱することにより反応が起こる。反応温度は、格別な限定はないが、通常120℃以上、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。このような温度範囲である時に、高次の多環の環状化合物(ジエノフィルに複数のジエンが、ディールスアルダー付加反応した目的生成物)が効率良く製造でき好適である。反応時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜10時間であり、反応温度によって適宜選択される。反応終了後の環状化合物の精製方法は、環状化合物の種類に応じて適宜選択され、本発明の製造方法では副生成物の生成が少ないため、通常の蒸留によって目的生成物の環状化合物を単離出来る。蒸留条件としては、高温では目的生成物が分解しやすいため、減圧下で行うことが好ましく、蒸留塔内の温度は通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。 本発明の製造方法により、環状化合物が得られる。例えば、鎖状のジエノフィルに鎖状ジエンが一つ付加すると環構造を一つ有する環状化合物が得られ、二つ付加すると環構造を二つ有する化合物が得られ、以降n個付加すると環構造をn個有する化合物が得られる。鎖状のジエノフィルに短環の鎖状ジエンが一つ付加すると環構造を二つ有する環状化合物が得られ、二つ付加すると環構造を四つ有する化合物が得られ、以降n個付加すると環構造を2n個有する化合物が得られる。特に環状ジエンがシクロペンタジエンである場合、ジエノフィルにシクロペンタジエンが一つ付加するとノルボルネン環を有する環状化合物が得られ、二つ付加するとテトラシクロドデセン環合物などが得られ、以降n個付加すると(n−1)個のノルボルナン環と1個のノルボルネン環構造を有する環状化合物などが得られる。 得られる環状化合物の具体的な例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンおよび5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの極性基を有さないノルボルネン類;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンおよび8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどの極性基を有さないテトラシクロドデセン類;5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンおよび5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの極性基を有するノルボルネン類;8−ヒドロキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−ヒドロキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8,9−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンおよび8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどの極性基を有するテトラシクロドデセン類;などを挙げることができる。 上記の環状化合物の中でも、二重結合が一つである環状オレフィン化合物の製造方法として本発明の製造方法は適している。また、本発明の製造方法では、従来技術よりも、より低い反応温度でディールスアルダー付加反応を行うことができたり、得られた環状化合物を、より低温で及びより短時間で精製することができたりすることから、極性基を有する環状化合物の製造方法として好適であり、極性基を有する環状オレフィン化合物の製造方法として特に好適である。 本発明の製造方法によって得られる環状化合物は、重合副生成物の含有量が極めて少なく、透明樹脂や光学樹脂等の合成樹脂の原料として好適である。 以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、部及び%は、特にことわりの無い限り、質量基準である。<実施例1〜2及び比較例1〜3>環状化合物として8−カルボキシメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンを得る目的で次の実験を行った。鎖状ジエノフィルとしてアクリル酸メチルと、ジエンとしてジシクロペンタジエン(環状ジエンであるシクロペンタジエンの供給源として。純度98%)をモル比で1:1(鎖状ジエノフィルに対するシクロペンタジエンのモル比で1:2)で混合し、表1に示す重合禁止剤を各2,000ppm加えて、ステンレス製オートクレーブに入れた。オートクレーブ中の気層を窒素置換した後、内容物を200℃に加熱し、3時間でディールスアルダー付加反応を行った。反応終了後、ガスクロマトグラフ法およびゲルパーミエーションクロマトグラフ法により、目的物質の収率と副生成物の量を定量分析し、下記基準で結果をまとめて表1に表示した。<目的物の収率>◎:35%以上○:25%以上35%未満△:10%以上25%未満×:10%未満<副生成物量>◎:5%未満○:5%以上10%未満△:10%以上15%未満×:15%以上 本発明により、副生成物が少なく、目的とする環状化合物の収率が高い、環状化合物の製造方法が提供される。本発明の製造方法により製造される環状化合物は、透明樹脂や光学樹脂等の合成樹脂の原料として有用である。 環状アミン存在下で、鎖状ジエノフィルにジエンをディールスアルダー付加することを特徴とする環状化合物の製造方法。 環状アミンが2級の環状アミンである請求項1に記載の製造方法。 ジエンが環状ジエンである請求項1または2に記載の製造方法。 鎖状ジエノフィルが鎖状オレフィンである請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。 鎖状オレフィンが極性基を有するものである請求項4記載の製造方法。 極性基が、プロトン性極性基、または後処理でプロトン性極性基を発現する極性基である請求項5記載の製造方法。 ディールスアルダー付加の反応温度が120℃以上である請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。 【課題】鎖状ジエノフィルへのジエンのディールスアルダー付加反応により、透明樹脂や光学樹脂等の合成樹脂の原料として有用である環状化合物を製造する方法において、目的物質の収率が高く、副生成物の少ない環状化合物の製造方法を提供すること。【解決手段】ディールスアルダー付加させる反応において、環状アミンを重合禁止剤として用いる環状化合物の製造方法。環状アミンは好ましくは2級の環状アミンであり、ジエンは好ましくは環状ジエンであり、鎖状ジエノフィルは好ましくは鎖状オレフィンである。【選択図】なし


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