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タイトル:公開特許公報(A)_重水素化された炭化水素系化合物の製造方法
出願番号:2004069403
年次:2005
IPC分類:7,C07C5/00,B01J23/42,B01J23/44,B01J31/24,C07C9/15,C07C11/02,C07C13/263,C07C13/273,C07C13/275,C07C15/02,C07C15/073,C07C15/12,C07C29/00,C07C35/20,C07C35/205,C07C37/00,C07C39/06,C07C45/00,C07C49/213,C07C49/413,C07D323/00,C07B61/00,C07F9/50,C07M5:00


特許情報キャッシュ

松原 誠二郎 横田 優貴 大嶌 幸一郎 JP 2005097239 公開特許公報(A) 20050414 2004069403 20040311 重水素化された炭化水素系化合物の製造方法 国立大学法人京都大学 504132272 ローム株式会社 000116024 三菱化学株式会社 000005968 株式会社日立製作所 000005108 パイオニア株式会社 000005016 日本電信電話株式会社 000004226 鎌田 文二 100074206 東尾 正博 100084858 鳥居 和久 100087538 松原 誠二郎 横田 優貴 大嶌 幸一郎 JP 2003296554 20030820 7C07C5/00B01J23/42B01J23/44B01J31/24C07C9/15C07C11/02C07C13/263C07C13/273C07C13/275C07C15/02C07C15/073C07C15/12C07C29/00C07C35/20C07C35/205C07C37/00C07C39/06C07C45/00C07C49/213C07C49/413C07D323/00C07B61/00C07F9/50C07M5:00 JPC07C5/00B01J23/42 ZB01J23/44 ZB01J31/24 ZC07C9/15C07C11/02C07C13/263C07C13/273C07C13/275C07C15/02C07C15/073C07C15/12C07C29/00C07C35/20C07C35/205C07C37/00C07C39/06C07C45/00C07C49/213C07C49/413C07D323/00C07B61/00 300C07F9/50C07M5:00 3 OL 15 特許法第30条第1項適用申請有り 1.テフロン 4C022 4G069 4G169 4H006 4H039 4H050 4C022NA02 4G069AA02 4G069AA03 4G069AA06 4G069BA08B 4G069BA27B 4G069BB04B 4G069BC70A 4G069BC70B 4G069BC72A 4G069BC72B 4G069BC75A 4G069BC75B 4G069BE27B 4G069BE33B 4G069CD07 4G069DA08 4G069FC06 4G069FC07 4G169AA02 4G169AA03 4G169AA06 4G169BA08B 4G169BA27B 4G169BB04B 4G169BC70A 4G169BC70B 4G169BC72A 4G169BC72B 4G169BC75A 4G169BC75B 4G169BE27B 4G169BE33B 4G169CD07 4G169DA08 4G169FC06 4G169FC07 4H006AA02 4H006AC84 4H006BA23 4H006BA25 4H006BA26 4H006BA30 4H006BA37 4H006BA48 4H006BA55 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC31 4H006BC34 4H006BJ50 4H006BN30 4H006BS10 4H006FC22 4H006FC52 4H006FE11 4H006FE12 4H039CA19 4H039CA40 4H039CA60 4H039CA65 4H039CD10 4H050AA02 4H050AC10 4H050BA17 4H050BA30 4H050BA37 4H050BA48 4H050BA55 4H050BC10 4H050BC11 4H050BC31 4H050BC34 この発明は、重水素化された炭化水素系化合物の製造方法に関する。 アルカンやアルケン等の炭化水素系化合物の重水素化反応としては、シクロドデセンを1重量%DCl/D2O、200℃で重水素化する方法(非特許文献1)や、シクロオクテンをパラジウム触媒、140℃条件下で重水を用いて重水素化する方法(非特許文献2)、アルカンをパラジウム触媒及び重水素ガスで重水素化する方法(非特許文献3)等が知られている。T.Can.J.Chem.1974,52,2169J.Am.Chem.Soc.(1966),88(11)、2585−6J.Chem.Commun.,474(1967) しかしながら、上記非特許文献1に記載の方法は、酸性条件下であり、高温条件下では、反応中に反応物の分解が生じやすく、反応収率が低下しやすい。 また、上記非特許文献2に記載の方法は、触媒及び温度条件のみが記載されており、他の条件や収率が開示されていない。後述するように、本発明者らが確認実験を行ったところ、重水素化率は3重量%未満であり、軽水素と重水素との置換反応が十分に進行しなかった。 さらに、上記非特許文献3に記載の方法は、重水素ガスを用いるため、取扱いが大変となる場合がある。 そこでこの発明は、炭化水素系化合物の重水素化物を高い重水素化率で、収率よく製造する方法を提供することを課題とする。 この発明は、炭化水素系化合物と重水とを、8〜11族金属を含む触媒の存在下、160〜350℃、3〜20MPaの条件下で反応させることにより、上記課題を解決したものである。 所定の炭化水素系化合物を所定の触媒及び条件下で重水と水素置換反応を行うので、高い重水素化率を有する炭化水素系化合物の重水素化物を収率よく製造することができる。 以下において、この発明について詳細に説明する。 この発明は、炭化水素系化合物を、触媒の存在下、所定条件下で重水と反応させることにより、軽水素を重水素に置換する反応(以下、「重水素化置換反応」と称する。)を行い、重水素化された炭化水素系化合物を製造する方法である。 上記炭化水素系化合物とは、アルカン、アルケン若しくはこれらの誘導体をいう。このアルカン、アルケンの誘導体には、アルカン又はアルケンに官能基を付与した化合物、芳香環を有するアルカン又はアルケン、アルケンやアルカン又はアルケンの誘導体を重合して得られる有機重合体等が含まれる。上記官能基としては、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エーテル基、アミド基、リン元素を有する官能基等があげられる。上記のエーテル基を有するアルカンの具体例として、ポリエーテル化合物等があげられる。 上記有機重合体以外の炭化水素系化合物の炭素数は、特に限定されないが、8〜50が好ましく、8〜20がより好ましい。8未満だと、上記重水素化置換反応が十分に生じ難くなる傾向がある。一方、50より大きくてもよいが、上記重水素化置換反応が不十分となる場合がある。 また、有機重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、500以上が好ましく、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましい。500より小さくてもよいが、重合体の概念から外れるおそれがある。また、重量平均分子量の上限は、100万以下が好ましく、50万以下がより好ましく、30万以下がさらに好ましい。また、100万より大きい場合は、上記重水素化置換反応が十分に生じ得ない場合がある。 上記アルカンやアルケンとしては、鎖状のものや環状のものがあげられる。 上記鎖状アルカンの例としては、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン等があげられる。また、上記鎖状アルケンの例としては、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、イコセン等があげられる。 上記環状のアルカンの例としては、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロオクタデカン、シクロイコサン、シクロデカリン等があげられる。また、上記環状のアルケンの例としては、シクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、シクロテトラデセン、シクロペンタデセン、シクロヘキサデセン、シクロオクタデセン、シクロイコセン、ノルボルネン等があげられる。 上記ヒドロキシ基、カルボニル基、アルデヒド基等を有する鎖状アルケンの例としては、6−フェニル−1−ヘキセン−3−オル、1−フェニル−7−オクテン−3−オル、7−メチル−1−フェニル−6−ヘプテン−3−オル、1−フェニル−13−テトラデセン−4−オル、1−フェニル−10−ウンデセン−4−オル、3−フェニルプロピオンアルデヒド等があげられる。 上記ヒドロキシ基若しくはカルボニル基を有するシクロアルカンやシクロアルケンの例としては、シクロオクタノール、シクロデカノール、シクロドデカノール、シクロテトラデカノール、シクロペンタデカノール、シクロヘキサデカノール、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロテトラデカノン、シクロオクテノール、シクロデセノール、シクロテトラデセノール、シクロオクテノン、シクロドデセノン、シクロヘキサデセノン等があげられる。 また、上記の芳香環を有する化合物として具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に、アルキル基、アルキレン基、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エーテル基、リン元素を有する官能基等の官能基が結合した化合物があげられる。このような芳香環を有する炭化水素系化合物としては、ブチルベンゼン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキサイド等があげられる。 さらに、上記ポリエーテル化合物として具体的には、ポリエーテルに芳香環、アルキル基、アルキレン基、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、リン元素を有する官能基等の官能基を置換した化合物である。このようなポリエーテル化合物の例としては、ジベンゾ−18−クラウン−6等の、クラウンエーテルにベンゼン環が結合した化合物等があげられる。 上記有機重合体とは、有機単量体を重合反応にて得られた化合物をいう。この有機重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド、ポリイミド樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等があげられる。 上記触媒とは、重水素化置換反応を生じさせる触媒をいい、周期表の8族〜11族金属を含む触媒があげられる。上記8族金属としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)があげられ、上記9族金属としては、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)があげられる。また、上記10族金属としては、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)があげられ、上記11族金属としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)があげられる。これらの中でも、9族や10族が好ましく、Pd、Pt、Rh等が特に好ましい。 上記触媒は、均一系触媒でも不均一系触媒でもよいが、生成物との分離が容易である点で不均一系触媒が好ましい。この触媒の形態としては、上記金属単体、上記金属の化合物等があげられる。上記金属の化合物としては、塩化物等のハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、有機酸塩等があげられる。また、上記金属単体を使用する場合、この金属単体そのままでも使用できるが、担体に担持させると、より細かい金属を使用でき、金属触媒の比表面積を増大させることが可能となり、反応効率をより向上させることができる。このような担体としては、シリカ、アルミナ、グラファイト、活性炭等があげられる。 本発明の反応基質である炭化水素系化合物、重水及び触媒は、通常これらを含む反応液を調整した後、反応器に導入する。この際、必要に応じて、上記の炭化水素系化合物、重水及び触媒以外に、重水素で置換された水酸基を有するアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物(以下、「重水素化水酸化物」と称する。)が添加される。これを用いることにより、重水素化反応を塩基性下で行うことができる。上記重水素化水酸化物の中でも、NaOD、KOD、Mg(OD)2、Ca(OD)2等が好ましい。 上記の重水素化水酸化物を添加する方法としては、その重水素化水酸化物を直接添加する方法、上記反応器に導入される重水に上記重水素化水酸化物を前もって溶解させる方法等があげられる。また、添加するアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物の量が、反応器に導入される重水の量より極端に少ない場合は、重水素で置換されていない水酸基を有するアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を上記反応器に導入される重水に前もって溶解又は懸濁させてもよい。この場合、水酸化物は重水素化され、重水素化水酸化物として重水素化反応に寄与する。 さらに必要に応じて、重水素置換した水酸基を有するアルコール類等を添加してもよい。 上記反応液における炭化水素系化合物と触媒の混合比は、モル比で、炭化水素系化合物/触媒で、200/1〜4/1が好ましく、50/1〜100/1がより好ましい。200/1より大きいと、極端に反応が遅くなる場合がある。一方、4/1より小さいと、分解反応等の副反応が起こると共に、分離・精製が困難となる場合がある。 また、上記反応液における炭化水素系化合物と重水との混合比は、置換対象の軽水素と重水中の重水素の当量比で、重水素/軽水素=10/1〜5000/1が好ましく、50/1〜200/1がより好ましい。10/1より小さいと、加熱による対流の撹拌効果が薄く、一方、5000/1より大きいと、触媒と有機化合物の分散が大きいため希薄となり、反応速度が低下するおそれがある。 上記重水素化置換反応における反応温度は、160〜350℃がよく、160〜300℃が好ましい。160℃より低いと、重水素化置換反応が十分に生じない場合がある。一方、350℃より高いと、圧力との関係もあるが、かえって後述する重水素化率が低下する傾向がある。この反応温度を得る方法としては、反応器そのものを加熱する方法や、マイクロウェーブをかけて、反応器内の反応対象物を昇温させる方法等があげられる。 上記重水素化置換反応における反応圧力は、3〜20MPaがよく、3〜5MPaが好ましい。3MPaより低いと、重水素化置換反応が十分に生じない場合がある。一方、20MPaより高いと、圧力との関係もあるが、かえって後述する重水素化率が低下する傾向がある。 この反応圧力は、使用するオートクレーブに、上記の炭化水素系化合物、触媒、及び重水からなる反応液を、上記のオートクレーブの容量に対し、30〜80容積%、好ましくは、60〜80容積%を仕込み、密封した後、上記の反応温度に昇温させたときに、発生させることができる。上記のオートクレーブの容量に対する反応溶液の仕込み割合が、上記範囲を逸脱すると、上記の反応圧力を満足することができなくなり、後述する重水素化率が低下する傾向がある。 上記の反応温度の範囲及び反応圧力の範囲を満たす条件は、一般的に超臨界条件より低い亜臨界条件に該当する。この発明における条件は、超臨界条件ではないが、これは、超臨界条件下だと重水のpKwが亜臨界状態の11から再び上昇し、触媒と生成する活性種が発生しにくくなるためであり、また、超臨界条件での高温下(>400℃)では、炭化水素系化合物の分解等の好ましくない副反応が発生する傾向があるからである。 反応終了後に得られた重水素化炭化水素系化合物と触媒とは、炭化水素系化合物が反応性の高い置換基を有さずかつ触媒が非担持型触媒の場合には触媒成分を酸で洗い流すことにより分離できる。また、反応生成物と触媒との比重の差を利用して分離してもよい。分離した触媒は本発明の重水素化反応に再利用することができる。 上記炭化水素系化合物のうち、アルケンにおける重水素化置換反応は、まず、上記触媒の金属成分が二重結合に配位して、配位された部分の軽水素が重水素に置換する上記重水素化置換反応が生じ、次いで、この配位した金属成分が隣接する炭素−炭素結合又は炭素−水素結合に移動しながら、上記重水素化置換反応が連鎖的に生じるものと考えられる。なお、アルケンの種類によって、二重結合が分子中に残存する場合や、二重結合が分子中に残存せず、一重結合化する場合がある。 また、上記炭化水素系化合物のうち、アルカンにおける重水素化置換反応は、上記触媒によって、脱水素反応が生じてアルケンが生じ、次いで、上記の機構によって、重水素化置換反応が生じるものと考えられる。また、アルケンが生成しなくても、C−H結合に触媒が酸化的に直接反応し、重水素との交換を行う経路も存在すると考えられる。 さらに、上記炭化水素系化合物のうち、カルボニル基を有するアルカンにおける重水素化置換反応は、カルボニル基に上記触媒の金属成分が配位して、カルボニル基に隣接するメチレン部分の軽水素が重水素に置換する上記重水素化置換反応が生じるものと考えられる。この後、残りのアルカン部分の交換反応が起こり、化合物全体の重水素化が進行する。 また、上記炭化水素系化合物のうち、カルボニル基を有するアルケンにおける重水素化置換反応は、上記のアルケンの推定反応機構とカルボニル基を有するアルカンの推定反応機構の両方が生じるものと考えられる。 さらにまた、上記炭化水素系化合物のうち、ヒドロキシ基を有するアルカンにおける重水素化置換反応は、まず、ヒドロキシ基がカルボニル基に酸化され、次いで、上記のカルボニル基の場合と同様に、カルボニル基に隣接するメチレン基の軽水素が重水素に置換された後、アルカン部分の交換反応が起こり、化合物全体の重水素化が進行する。このようにして得られる化合物は、カルボニル基含有アルカンが全て重水素化されたものとなる。 また、上記炭化水素系化合物のうち、カルボキシル基を有するアルカン又はアルケンにおける重水素化置換反応は、上記のカルボニル基を有するアルカン又はアルケンの推定反応機構と同様の推定反応機構が生じるものと考えられる。そして、同時にカルボキシル基から脱炭酸が生じる場合があると考えられる。また、アルデヒド基、アミド基を有するアルカンにおける重水素化置換反応において、まず、これらの基がカルボキシル基に変換され、続いて、上記したカルボニル基を有するアルカンの重水素化反応が生じる場合や、直接脱カルボニル化反応が生じる場合がある。 さらにまた、上記炭化水素系化合物のうち、アルデヒド基を有するアルカン又はアルケンにおける重水素化置換反応は、塩基性条件下、これらのアルデヒド2分子が縮合し,異性化を経て生じるカルボン酸が脱炭酸する場合や、脱水を経て生じる不飽和アルデヒドが還元後、脱カルボニルする場合等もあると考えられる。 ところで、上記炭化水素系化合物が芳香環を有する場合、すなわち、上記の芳香環を有する化合物の場合、この芳香環の側鎖がアルケン、ヒドロキシ基、カルボニル基を有するアルケンの場合、芳香環の水素を重水素化せずに反応を終了させることができる。一方、上記芳香環の側鎖がアルカン、ヒドロキシ基、カルボニル基を有するアルカンの場合には、芳香環の水素に重水素化される。さらに、上記芳香環の側鎖がカルボキシル基の場合には、芳香環の水素に重水素化されると共に、脱炭酸が生じる。さらにまた、上記芳香環の側鎖がアルデヒド基、アミド基を有する場合において、まず、これらの基がカルボキシル基に変換され、続いて、上記したカルボニル基の場合と同様の重水素化反応が生じる場合がある。また、上記芳香環の側鎖がアルデヒド基の場合には、芳香環の水素に重水素化されると共に、塩基性条件下、これらのアルデヒド2分子が縮合し,異性化を経て生じるカルボン酸が脱炭酸する場合や、脱水を経て生じる不飽和アルデヒドが還元後、脱カルボニルする場合等もあると考えられる。 さらにまた、上記芳香環にリンが結合した場合、リンの価数によって重水素化される部位が異なる。例えば、トリフェニルホスフィンの場合、各芳香環のうち、オルト位の水素が重水素置換される。また、例えば、トリフェニルホスフィンオキシドの場合、全芳香環の全ての水素が重水素置換される。 また、上記ポリエーテル化合物の場合、エーテル結合している炭素原子に結合している軽水素は、重水素置換されることはないが、他の位置の軽水素が重水素置換される。例えば、ベンゾクラウンエーテルの場合には、芳香環の軽水素が重水素置換される。このベンゾクラウンエーテルとしては、18,24,30の員数を有するベンゾクラウンエーテルがあげられる。 この18,24,30の員数を有するベンゾクラウンエーテルの具体例としては、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、及びジベンゾ−30−クラウン−10のようなジベンゾクラウンエーテルや、ベンゾ−18−クラウン−6、ベンゾ−24−クラウン−8、及びベンゾ−30−クラウン−10のようなモノベンゾクラウンエーテルが例示される。 これらの重水素置換体は、金属錯体の立体配座解析用試薬として使用することができると考えられる。これは,金属の常磁性・反磁性にかかわらず,重水素核NMRの測定が可能であるからである。この用途目的に使用する場合、例えば、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、及びジベンゾ−30−クラウン−10の重水素化率は、50%以上あれば可能で、70%以上あれば好ましい。 上記有機重合体の重水素化置換反応は、上記と同様の推定反応機構で重水素化反応が生じるものと考えられる。例えば、ポリスチレンの場合、芳香環及び側鎖の全ての水素が重水素に置換され得る。 上記炭化水素系化合物を、上記条件下で重水素化置換反応を行ったとき、得られる重水素化物中の重水素化率は、40%以上がよい。重水素化率が40%未満だと、NMRや中性子散乱用測定溶媒や光学材料として使用しにくくなる。 上記炭化水素系化合物の中でも、環状のアルカンやアルケン、又はこれらにヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基等の上記官能基を有するもの、すなわち、シクロアルカン、シクロアルケン、又はヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基等の上記官能基を有するシクロアルケンやシクロアルカンを用いて、上記条件下で重水素化置換反応を行う場合は、得られる重水素化物中の重水素化率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。これらの炭化水素系化合物は、重水素化が起こりやすいので、NMRや中性子散乱用測定溶媒や光学材料として使用する場合は、重水素化率は高ければ高いほどよいからである。 上記重水素化率とは、上記重水素化反応によって、上記炭化水素系化合物中の軽水素が重水素に置換した割合の平均値をいう。また、上記ヒドロキシ基又はカルボニル基を有するアルケン等の、所定の部分のみが重水素化される化合物における重水素化率とは、上記重水素化反応によって、二重結合とヒドロキシ基若しくはカルボニル基との間にある軽水素、及びカルボニル基(ヒドロキシ基が酸化されて形成されるカルボニル基を含む)の両隣のメチレン基の軽水素等の、重水素化されうる部分の軽水素が重水素に置換した割合の平均値をいう。 上記炭化水素系化合物のうち、鎖状のアルカン、アルケン又はヒドロキシ基やこれらにカルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基等の上記官能基を有するもの、すなわち、鎖状アルカン、鎖状アルケン、又はヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基等の上記官能基を有する鎖状アルケンを用いて、上記条件下で重水素化置換反応を行う場合は、得られる重水素化物中の重水素化率は、40%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。鎖状の場合、末端の重水素化反応がより確実に起こりにくいため、シクロ体ほどの重水素化率が得難いからである。 上記芳香環を有する化合物を用いて、上記条件下で重水素化置換反応を行う場合、芳香環以外の部分は、上記の炭化水素系化合物の場合と同様の重水素化率を得ることが好ましい。また、芳香環の部分については、重水素化置換反応が全く生じなかったり、一部の軽水素のみにおいて重水素化置換反応が生じたり、全部の軽水素について重水素化置換反応が生じたりする。この場合、重水素化置換反応が生じる部分の軽水素の重水素化率は、40%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。 この発明にかかる重水素化された炭化水素系化合物は、NMRや中性子散乱用測定溶媒や光学材料として使用することができる。 以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、試験方法及び使用した原材料について、下記に説明する。[重水素化率の測定] 1H−NMR(米国バリアン社製:300MHz)を用いて、C−Hのピークを測定した。また、2H−NMR(米国バリアン社製:46MHz)を用いて、C−Dのピークを測定した。これらに対し、内部標準物質(1H−NMRにおいてはCHBr3、2H−NMRにおいてはCDCl2CDCl2)を用いて、重水素化率を算出した。なお、重水素化率とは、重水素化反応で、炭化水素系化合物中に存在する軽水素が反応中に重水素に変換された割合の平均値を意味する。 また、ガスクロマトグラフィーにより、重水素化体の回収率を求めた。[原材料]・表1に示す炭化水素系化合物…東京化成(株)製:試薬・重水(D2O)…カンブリッジ アイソトープ ラボラトリーズ(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.)社製・パラジウム活性炭素(Palladium-Activated Carbon,Pd 10%)…和光純薬(株)製・ルテニウム触媒(RuCl2(PPh3)3)…東京化成(株)製・二酸化白金(PtO2)…和光純薬(株)製 (実施例1〜15、比較例1) 表1に示す炭化水素系化合物5mmolに、表1に示す触媒を5mol%、重水(D2O)20molを、図1に示す容器2(テフロン製)に入れ、蓋3で閉じる。この容器2をオートクレーブ(四国理科(株)製、内容器容量30ml、材質:SUS316)1のオートクレーブ本体4に収納し、スプリング5をスプリングホルダー6に収納して、上記サンプル容器2の上に載せる。その上から、オートクレーブキャップ7で封をする。このオートクレーブ1には、その頭頂部にボルト8がオートクレーブキャップ7を貫通してねじ込まれる。これは、オートクレーブ1内部で過圧状態が生じたときの安全弁の役割を果たす。 このオートクレーブ1を250℃を保持している電気炉(図示せず)内に静置する。下記の方法で温度及び圧力を測定したところ、内部溶液が250℃に達すると、圧力は、5MPaとなった。 所定時間経過後、炉内からこのオートクレーブ1を取り出し、冷却後、容器2を取り出し、ヘキサンで生成物を抽出する。乾燥・濃縮後、上記の方法で分析した。その結果を表1に示す。 なお、温度及び圧力は、下記の方法で測定した。 まず、実施例1について、上記と全く同じ種類及び量の炭化水素系化合物、触媒、及び重水を図2に示すオートクレーブ11(セントラル科学貿易パール(株)製、内容器容量30ml、材質:SUS316)のオートクレーブ本体12に入れ、圧力計13、熱電対14、及び安全弁15を有する蓋16をネジ止めした。そして、上記のオートクレーブ1と同時に、250℃を保持している電気炉(図示せず)内に静置して、圧力及び温度を測定した。その結果、内部溶液が250℃に達すると、圧力は、5MPaとなった。そして、250℃、5MPaとなった時点から、表1に示す時間、その状態を保持させた。 オートクレーブ11を用いて得られた反応液を、オートクレーブ1の場合と同様にして分析したところ、実施例1と全く同様の結果が得られた。 ところで、実施例2〜21及び比較例1(但し、実施例16,17を除く)は、実施例1のうち、炭化水素系化合物の種類のみが異なるものなので、温度及び圧力は、実施例1と同様に変化する。このため、これらについては、オートクレーブ1のみを用いて実験を行い、実施例1の場合において、250℃、5MPaとなるまでの時間変化と温度及び圧力の変化との関係をそのまま適用した。 (実施例16) 表1に示す炭化水素系化合物2mmolに、表1に示す触媒0.1mmol、及び0.1mol/lのNaOD 20mlを、実施例1の温度及び圧力を測定する方法と同様にして、図2に示すオートクレーブ11に収納した。なお、0.1mol/lのNaODは、NaOH400mgを重水100gに溶解させることにより作製した。 このオートクレーブ11を、マイクロウェーブ(CEM(株)製:Dicover)を用いて、内温を250℃まで昇温した後に、その温度を保持している電気炉(図示せず)内に静置した。なお、このときの圧力は5MPaであった。 所定時間経過後、炉内からこのオートクレーブ11を取り出し、冷却後、内容物を取り出し、ヘキサンで生成物を抽出した。乾燥・濃縮後、上記の方法で分析した。その結果を表1に示す。 (実施例17) 表1に示す炭化水素系化合物2mmolに、表1に示す触媒0.1mmol、NaOH80mg、及び重水(D2O)20gを、実施例1の温度及び圧力を測定する方法と同様にして、図2に示すオートクレーブ11に収納した。以降は、実施例16と同様にして、内容物を取り出し、抽出し、分析した。その結果を表1に示す。 (実施例18,19) 表1に示す炭化水素系化合物5mmolに、10重量%Pd/活性炭100mg、及び0.1MNaOD(実施例16と同様の方法で作製) 20mlを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応を行った。反応後、炉内からこのオートクレーブ1を取り出し、冷却後、容器2を取り出し、クロロホルムで生成物を抽出する。乾燥・濃縮後、上記の方法で分析した。その結果を表1に示す。 (実施例20〜23) 表1に示す炭化水素系化合物2mmolに、二酸化白金0.1mmol、及び重水(D2O)15gを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応を行った。反応後、炉内からこのオートクレーブ1を取り出し、冷却後、容器2を取り出し、クロロホルムで生成物を抽出する。乾燥・濃縮後、上記の方法で分析した。その結果を表1に示す。 (実施例24〜31) 表2に示す重量平均分子量(表2において、「Mw」と略する。)を有するポリスチレン1g(10mmol)に、二酸化白金114mg(0.5mmol)、及び重水(D2O)15gを、用いた以外は、実施例1と同様にして、表2に示す時間、反応を行った。反応後、炉内からこのオートクレーブ1を取り出し、冷却後、容器2を取り出し、トルエンで生成物を抽出する。乾燥・濃縮後、上記の方法で分析した。その結果を表2に示す。 実施例22で得られた反応物から、芳香環の全てが重水素で置換された化合物を分取した。得られた化合物の1H−NMR、2H−NMR、13C−NMRのデータを下記に示す。また、MSのチャートを図3に示す。・1H-NMR(Varian 300 MHz) in CDCl3:4.0-4.1(m, 8H),4.1-4.25(m, 8H)・2H-NMR(Varian 46 MHz) in CDCl3:6.6-7.05(bs, 8D)・13C-NMR オフレゾナンス(Varian 75 MHz) in CDCl3:69.3,70.3,114.1 (m),121.0(m) 実施例23で得られた反応物から、芳香環の全てが重水素で置換された化合物を分取した。得られた化合物の1H−NMR、2H−NMR、13C−NMRのデータを下記に示す。また、MSのチャートを図4に示す。・1H-NMR(Varian 300 MHz) in CDCl3:3.82 (s, 8H), 3.85-3.95 (m, 8H), 4.1-4.15 (m, 8H), 6.85 (s,1.6H).・2H-NMR(Varian 46 MHz) in CDCl3:6.8-7.4・13C-NMR オフレゾナンス(Varian 75 MHz) in CDCl3:69.5, 70.0, 61.5, 115.1 (m),121.2 (m), 149.0 (s)実施例及び比較例で使用したオートクレーブの構造を示す断面図温度及び圧力を測定するために使用したオートクレーブの構造を示す断面図実施例22で得られた反応物のMSチャート実施例23で得られた反応物のMSチャート符号の説明1 オートクレーブ2 容器3 蓋4 オートクレーブ本体5 スプリング6 スプリングホルダー7 オートクレーブキャップ8 ボルト11 オートクレーブ12 オートクレーブ本体13 圧力計14 熱電対15 安全弁16 蓋 炭化水素系化合物と重水とを、8〜11族金属を含む触媒の存在下、160〜350℃、3〜20MPaの条件下で反応させる、重水素化された炭化水素系化合物の製造方法。 上記炭化水素系化合物は、アルカン、アルケン、アルカン若しくはアルケンに官能基を付与した化合物、芳香環を有するアルカン若しくはアルケン、ポリエーテル化合物又は有機重合体である請求項1に記載の重水素化された炭化水素系化合物の製造方法。 18,24又は30の員数を有するベンゾクラウンエーテルのベンゼン環上の軽水素全てを重水素で置換した重水素化ベンゾクラウンエーテル。 【課題】アルカン、アルケン、ヒドロキシ基又はカルボニル基を有するアルカン、及びヒドロキシ基又はカルボニル基を有するアルケンから選ばれる炭化水素系化合物の重水素化物を高い重水素化率で、収率よく製造することを課題とする。【解決手段】アルカン、アルケン、又はそれらの誘導体から選ばれる炭化水素系化合物と重水とを、8〜11族金属を含む触媒の存在下、160〜350℃、3〜20MPaの条件下で反応させる。【選択図】なし


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