生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_エキノコックス症(多包虫症)検査用抗原
出願番号:2004064362
年次:2005
IPC分類:7,C07K14/435,G01N33/50,G01N33/53,C12N15/09


特許情報キャッシュ

迫 康仁 中尾 稔 中谷 和宏 山▲崎▼ 浩 伊藤 亮 JP 2005029558 公開特許公報(A) 20050203 2004064362 20040308 エキノコックス症(多包虫症)検査用抗原 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 下田 昭 100110249 迫 康仁 中尾 稔 中谷 和宏 山▲崎▼ 浩 伊藤 亮 JP 2003170273 20030616 7C07K14/435G01N33/50G01N33/53C12N15/09 JPC07K14/435G01N33/50 TG01N33/53 NC12N15/00 A 6 OL 10 2G045 4B024 4H045 2G045AA13 2G045BA11 2G045BB50 2G045CA26 2G045DA37 2G045FB03 2G045FB07 4B024AA11 4B024BA31 4B024CA04 4B024DA06 4B024HA11 4H045AA11 4H045AA30 4H045BA18 4H045BA19 4H045CA50 4H045DA86 4H045EA50 4H045FA74 4H045GA26 この発明は、エキノコックス症(多包虫症)の検査に用いる抗原に関する。 エキノコックス症(Echinococcosis)は、キツネに寄生するエキノコックスの虫卵が、キツネの排泄物を介して誤ってヒトの口に入り、感染が成立した際に惹起される、基本的には肝臓の慢性疾患である(非特許文献1〜3)。 エキノコックス症は平成11年4月1日施行の感染症予防法において、第4類感染症に分類され、届け出が義務づけられている寄生虫症である。 北海道ではキツネの50〜60%がエキノコックスに感染していると報告されている。エキノコックス症には、北海道の風土病として知られている「多包虫症」と、輸入症例が問題になる「単包虫症」とがある。 「多包虫症」は悪性腫瘍と同様に病巣が増大し続け、何らかの症状が出てから15年以内に死の転帰をたどる、現代の「死に至る病」である。多包虫症には早期診断、早期治療が絶対不可欠であり、現時点では外科的病巣切除が唯一の治療法である。外科的治療が不可能な場合にはアルベンダゾールを用いる化学療法が推奨されており、少なくとも病状悪化を抑える効果が認められ、治癒効果が得られる症例も報告されている。同剤の継続的投与により治癒率が高まる可能性も指摘され始めている。 既に、旭川医科大学では、多包虫症血清検査用抗原として分子サイズ18kDaのタンパク質Em18を用いた血清検査法を術前確定診断法として確立している(非特許文献4、5)。Em18はEM10(65kDa)のシステインプロテアーゼによる分解産物である。現在、多包虫症の血清検査の抗原は寄生虫幼虫より調整しているが、寄生虫材料を十分量用意することが困難なことや、品質の安定した抗原を調整することが困難なことが問題である。そのため大腸菌により発現させた組換え蛋白質を用いた血清検査法を開発してきた。 このような方法以外にも、エキノコックス属条虫の排泄分泌抗原を免疫抗原に利用したエキノコックス属条虫感染の診断方法(キツネ、犬等の診断法)が開発されている(特許文献1)。INFECTION CONTROL 2001 vol.10, No.7, 670-672Current Concepts in Infections Diseases vol.20, No.4, 18-19 (2001)岐阜県医師会雑誌 第14巻第1号 35-46 (2001)Ito A et al., Am J Trop Med Hyg, 60: 188-192 (1999)Sako Y et al., Journal of Clinical Microbiology vol.40, No.8, 2760-2765 (2002)特開2001-292766 大腸菌を用いる組換え抗原を作製する場合に、大腸菌由来の交雑物による非特異的な交差の影響、産生蛋白質の量など、票品の標準化等に問題が残されている。従って、化学的に合成したペプチドを抗原とすることがこの問題を打開することに理想的である。 本発明は、合成可能なサイズのアミノ酸配列から成る抗原を用いて行う、十分な感度を有するエキノコックス症の検査法を提供することを目的とする。 本発明者らは、多包虫症検査用抗原における患者血清中の抗体が認識する部位の同定を行った。その結果、従来多包虫症検査用抗原として使用してきたEm18分子(160アミノ酸残基)中の特定のアミノ酸配列がEm18と同等の検査感度を持つことが明らかとなった。 即ち、本発明は、配列番号1の389〜391番目から418〜428番目までのアミノ酸配列から成る多包虫症(エキノコックス症)検査用抗原である。この多包虫症検査用抗原は、配列番号3(配列番号1の390〜424番目)のアミノ酸配列から成ることが好ましい。 また、本発明は、これらいずれかの抗原を主成分とする多包虫症検査薬である。 また、本発明は、被検者の血清を上記抗原又は上記検査薬と反応させることから成る多包虫症の検査方法である。 更に、本発明は、上記の抗原を支持体に固定し、これに被検者の血清を反応させ、これに標識を付したプローブを反応させ、この標識を検出することから成る、多包虫症の検査方法である。 また、本発明は、被検者の血清からエキノコックス症(多包虫症)の抗体を検出するための検査キットであって、支持体に固定された上記の抗原から成る検査キットである。 本発明者らが多包虫症検査用抗原として使用してきたEm18分子(非特許文献4、160アミノ酸残基、配列番号2(配列番号1の349-508番目))は、既存の診断用抗原EM10(Frosch PM et al., Molecular and Biochemical Parasitology vol. 48, 121-130 (1991)、配列番号1)のシステインプロテアーゼによる分解生成物である。 本発明の抗原は、配列番号1の389〜391番目のいずれかから418〜428番目のいずれかまでの35〜40アミノ酸から成るペプチド断片である。これらはこのEm18の一部であり、Em18中に発明者らが見出した2つの抗原性領域(Antigenic region 1 & 2、配列番号1の366-384番目及び401-414番目)の一方を含む。その中でアミノ酸配列(KLAEMNRKLKEETAASAEERDRLMAQRDEVQREVE、配列番号3(配列番号1の390-424番目))が最も好ましい。これらの関係を図1に示す。 本発明の抗原を用いて、多包虫症に感染した被検者に生成する抗体と反応させることにより、エキノコックス症(多包虫症)を検査することができる。このような被検物として、被検者の血清、尿等が挙げられるが、好ましくは血清を用いる。被検者が多包虫症に感染していれば、血清中にその抗体が生成されて存在するため、この抗体と上記抗原とが反応する。この抗原抗体反応を検知する方法に特に制限はないが、イムノブロット法、ドットブロット法、ELISA法等が挙げられ、ELISA法を用いることが好ましい。 好ましい多包虫症の検査方法は、本発明の抗原を支持体に固定し、これに被検者の血清を反応させ、これに標識を付したプローブを反応させ、この標識を検出することから成る。各工程間に適宜洗浄工程を入れることが好ましい。 この支持体には、特に制限はないが、ポリスチレン等を用いることができる。 この抗原を、被検者(感染した場合)の血清中に存在する抗体と反応させ、更にこの抗体を認識するプローブを反応させる。このプローブとしては、抗ヒトIgG抗体、プロテインG、プロテインA、プロテインLなどが挙げられる。このプローブには通常標識を付す。この標識としては、放射性同位元素(125I)、酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ)が挙げられる。酵素抗体を用いた場合には、基質を反応させてその変化(着色等)を観察すればよい。 本発明の抗原は、合成可能であり、そのため多包虫症検査抗原として簡便かつ安定に供給することができ、かつ品質管理が容易である。 この抗原は、エキノコックス症(多包虫症)術前血清診断や血清学的予後判定に用いることができる。 以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。 本実施例では、まずEm18をコードする遺伝子の調整を行った。 Em18をコードする遺伝子は、RT-PCR法により調製した。すなわち、実験室内でスナネズミを用いて継代している多包虫よりメッセンジャーRNAを精製した後、オリゴdTプライマーと逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、Em18特異的なプライマー(Em18F;5'-AAGGAGTCTGACTTAGCGGAT-3'(配列番号4)、Em18R;5'-TTTGAGGTTGGCCAGCTTCGT-3'(配列番号5))を用いたPCRによりEm18をコードする遺伝子を調整した。 次に、ペプチドライブラリーの構築を行った。 Em18をコードするDNA断片をDNaseIによりてランダムに切断した後、短断片(50bp〜100bp)を精製しT4 DNA polymerase及びTth DNA polymeraseを用いて、DNAの3'末端にアデニン(dATP)を導入した。アデニンを導入されたDNA断片を、予め制限酵素EcoRVにより切断しその3'末端にチミン(dTTP)を導入してある大腸菌発現用プラスミドpSCREEN-1b(+)(図2に制限酵素地図を示す。)に連結させ、大腸菌に注入することによりペプチドライブラリーを構築した。このプラスミドを使用することによりEm18のランダムな短ペプチドはファージの頭部蛋白質であるT7 gene 10蛋白質との融合タンパク質として大腸菌内で発現される。なお、このペプチドライブラリーの構築には、NovaTope System(Novagen社)を使用した。 次に、ペプチドライブラリーのスクリーニングを行った。 LB寒天培地(1% Bacto Tryptone、0.5% Yeast Extract、0.5% NaCl、1.5% Agarose)角シャーレ(14cm×10cm:栄研器材社)1枚に1000個の大腸菌コロニーを発育させるように、37℃で一晩培養した。培養した角シャーレにニトロセルロース膜をのせ大腸菌コロニーを膜に吸着させた。大腸菌を吸着させた膜を、それぞれ1% SDS、0.5N NaOH、1M Tris-HCl (pH 7.5)を含んでいる濾紙上に10分、5分、5分づつのせ、大腸菌を破壊させ融合蛋白質を膜上に結合させた。この膜を洗浄液(界面活性剤Tween20を0.05%の濃度で加えてあるリン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl, 8.1mM Na2HPO4,2.68mM KCl, 1.47mM KH2PO4, pH7.4))で室温で2回洗浄し、ブロッキング緩衝液(20mM Tris-HCl, 1% Casein, 150mM NaCl, pH7.4)で1時間ブロッキングした。その後、ブロッキング緩衝液で200倍希釈した多包虫感染患者血清と室温で1時間反応させた。反応後の膜は、洗浄液で10分間4回洗浄した後、ブロッキング緩衝液で1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液で10分間5回洗浄し、発色用基質溶液(3,3'-diaminobenzideneをリン酸緩衝生理食塩水に0.05%の濃度に溶かし、0.018%過酸化水素を加えたもの)で発色させた。陽性大腸菌コロニー(患者血清中の抗体が反応するもの)は、液体LB培地(1% Bacto Tryptone、0.5% Yeast Extract、0.5% NaCl)で37℃、一晩培養した。約6000個の大腸菌コロニーをスクリーニングした結果、44個の陽性大腸菌コロニーを得ることができた。 次に、アミノ酸配列の決定及びアライメントを行った。 液体培養した大腸菌よりプラスミドを抽出しそれらの塩基配列を決定し、アライメントをとった。その結果を図3に示す。 なお、結果には同一のアミノ酸配列の場合は、1つしか示していない。このアライメントに結果、各陽性クローンでオーバーラップする領域から、2つの抗原性領域を決定した。クローンEm18C09、Em18C08、Em18C01、Em18C14及びEm18C07は抗原性領域1に含まれ、その他のクローンは抗原性領域2に含まれている。 本実施例では、クローン4種(Em18E21、Em18E20、Em18J05、Em18C09)について、イムノブロット解析を行い、これらが抗体を認識するアミノ酸配列を有しているかを調べた。 まず、Em18由来ペプチドを含む融合タンパク質の調製を行った。 各大腸菌クローンを250mlの液体LB培地に接種し、37℃で一晩培養した。培養した大腸菌を遠心分離により回収し、抽出緩衝液(50mM リン酸ナトリウム、0.3M NaCl、pH 8.0)に懸濁し、超音波処理することにより大腸菌を破壊した。遠心分離後、不溶性画分(融合蛋白質を含む)を抽出緩衝液にて2回洗浄し、6M尿素を含む抽出緩衝液に溶解した。溶解された蛋白質溶液を、固定金属アフィニティーレジンカラムにアプライし融合蛋白質をレジンに結合させた。その後、レジンは6M尿素を含む洗浄液(50mM リン酸ナトリウム、0.3M NaCl、pH 7.0)で洗浄し、非特異的にレジンに結合している蛋白質を除いた。レジンに特異的に結合している融合蛋白質は6M尿素を含む溶出緩衝液(150mM イミダゾール、50mM リン酸ナトリウム、0.3M NaCl、pH 7.0)でレジンより溶出させ回収した。本試験では金属固定アフィニティーレジンとしてTALON Metal Affinity Resins(Clontech社)を用いた。回収された融合蛋白質溶液に含まれる尿素はリン酸緩衝生理食塩水に透析することに除いた。融合蛋白質濃度はBCA protein assay kit(Pierce社)により決定した。 精製した各クローンの融合蛋白質を0.1% SDS含有12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)により30mAの定電流の条件下で分離した。融合蛋白質試料は、等容量のSDS-PAGE試料処理用緩衝液(4.0% SDS、10% 2-mercaptoethanol、20% Glycerol、125mM Tris-HCl pH 6.8)を加え、100℃で5分間蛋白質変性処理を施したものを使用した。SDS-PAGEにより分離した蛋白質は、polyvinylidene difluoride (PVDF)膜に、30Vの定電圧で2時間通電させ転写した。この膜を洗浄液で室温で2回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1時間ブロッキングした。その後、ブロッキング緩衝液で200倍希釈した多包虫感染患者血清(A及びB)と室温で1時間反応させた。反応後の膜は、洗浄液で10分間4回洗浄した後、ブロッキング緩衝液で1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液で10分間5回洗浄し、発色用基質溶液(3,3'-diaminobenzideneをリン酸緩衝生理食塩水に0.05%の濃度に溶かし、0.018%過酸化水素を加えたもの)で発色させた。 イムノブロットの結果を図4に示す。患者血清Aを用いた時は、全てのクローンが陽性(黒いバンドとして検出されている)となっており、患者血清Aの中にはこれら全てのクローンを認識する抗体が存在してることがわかる。一方、患者血清Bは、Em18C09を認識する抗体を持っていないことがわかる。即ち、抗原性領域1(図1)は全ての患者の血清に認識されるわけではなく、抗原性領域2(図1)を有するペプチド断片が検査用抗原としては適していることが分かる。 本実施例では、抗原性領域1からクローンEm18C09を、抗原性領域2から、Em18E20、Em18E21及びEm18J05を選び、ELISAにより血清検査用抗原としての評価を行った。この試験にはEm18に陽性である血清を用いた。 まず、実施例2に記載の方法でEm18由来ペプチドを含む融合タンパク質の調製を行った。 次に、ELISAによりどのクローンが検査用抗原として適しているか評価を行った。試験(n=68)は以下の手順で行った。 各クローンを96穴プラスチックプレート(Nalge Nunc社:MaxiSorpPlate)に400ng/穴で吸着させた。抗原液を捨てた後、リン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl, 8.1mM Na2HPO4,2.68mM KCl, 1.47mM KH2PO4, pH7.4)にて洗浄した。各穴にブロッキング緩衝液(20mM Tris-HCl, 1% Casein, 150mM NaCl, pH7.4)を300μL加えた後、再びシールし、37℃で1時間静置した。ブロッキング緩衝液を捨て、各穴にブロッキング緩衝液にて100倍希釈した被検血清を100μL加えた。軽くプレートを揺すり、血清を混和した。その後、37℃で1時間反応させ、被検血清を捨てた。洗浄液(リン酸緩衝生理食塩水に界面活性剤Tween20を0.05%の濃度で加えた。)を各穴に加え洗浄した。以上の工程を3回繰り返した。 洗浄液を捨てた後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体溶液(Cappel社製、ブロッキング緩衝液にて2000倍希釈したもの)を100μLづつ各穴に加えた。軽くプレートを揺すり、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体溶液を混和した。その後、37℃で1時間反応させた。その後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体溶液を捨て、洗浄液を各穴に加え洗浄した。以上を4回繰り返した。 各穴に発色基質(2,2'-azino-di-(ethyl-benzthiazoline sulfonate)を100mM クエン酸緩衝液(pH4.7)に0.4mMの濃度に溶かし、0.003% 過酸化水素を加えたもの。)を100μLづつ加えた。室温に静置した後(30分程度)、1%SDS溶液を各穴に加え(100μL/穴)反応を停止させた。 ELISAリーダーで吸光度(OD値)を測定し、OD値を基に判定した。本試験では、10個の陰性ヒト血清のOD値の平均にそれらの標準偏差を3倍したものを加えた数値以上のOD値を示した血清について陽性(多包虫感染患者)と判断した。 Em18陽性血清(n=68)の各クローンに対するELISAの結果を表1に示す。 Em18E21に関しては、全ての血清を陽性と判断できた。つまりEm18とEm18E21の感度は同一であり、Em18E21(40個のアミノ酸)でEm18と同等の感度を得るために十分であることがわかった。また、Em18E20は、Em18E21より若干劣るが、これも検査用抗原として高い感度を有している。従って、Em18E20とEm18E21との間のアミノ酸配列を有するペプチド断片は検査用抗原として有用であるといえる。他のクローンに関しては、陽性率が減少している。 実施例3において結果の良かったEm18E21について、更に診断抗原の領域を狭めるためにEm18E21のアミノ酸配列を基に、N又はC末端を欠失させたクローン5種(Em18D01(配列番号1の389〜424番目)、Em18D02(配列番号1の390〜424番目、配列番号3)、Em18D03(配列番号1の391〜424番目)、Em18D04(配列番号1の389〜423番目)、Em18D05(配列番号1の389〜422番目))を調整し、Em18E21に対して陽性かつ、Em18J05に対して陰性(12例)あるいは弱陽性(7例)である血清(計19例)を用いて診断用抗原としての有用性をELISA法を用いて検討した。 なお、欠失クローンの調整は、Em18E21のN又はC末端を欠失するように設計したプライマーを用いたPCRを行い、得られたDNA断片を発現用ベクターであるpSCREEN-1b(+)に連結し大腸菌に導入して行った。その後の操作はEm18E21と同じである。 DNA増幅には、プライマーF1:5'-GACAAACTGGCGGAGATGAAC-3'(配列番号6)、プライマーF2:5'-AAACTGGCGGAGATGAACAGA-3'(配列番号7)、プライマーF3:5'-CTGGCGGAGATGAACAGAAAG-3'(配列番号8)、プライマーR1:5'-CTCAACTTCGCGTTGCACTTC-3'(配列番号9)、プライマーR2:5'-AACTTCGCGTTGCACTTCGTC-3'(配列番号10)、プライマーR3:5'-TTCGCGTTGCACTTCGTCACG-3'(配列番号11)を使用した。Em18D01はプライマーF1とR1を、Em18D02はプライマーF2とR1を、Em18D03はプライマーF3とR1を、Em18D04はプライマーF1とR2を、Em18D05はプライマーF1とR3を使用し調整した。 結果を表2に示す。 以上の結果より、アミノ酸配列(KLAEMNRKLKEETAASAEERDRLMAQRDEVQREVE、配列番号3)が多包虫の血清診断に最適であると考えられる。EM10分子、Em18分子、本発明の抗原(EM18D02)の関係を示す図である。図中の番号はEM10(配列番号1)における位置を示す。実施例1で用いたプラスミドpSCREEN-1b(+)の制限酵素地図を示す図である。患者血清中の抗体に陽性のクローンのアミノ酸配列を示す図である。クローン4種(E21、E20、J05、C09)について、イムノブロット解析の結果を示す図である。配列番号1の389〜391番目から418〜428番目までのアミノ酸配列から成る多包虫症検査用抗原。配列番号3(配列番号1の390〜424番目)のアミノ酸配列から成る多包虫症検査用抗原。請求項1又は2に記載の抗原を主成分とする多包虫症検査薬。被検者の血清を請求項1又は2に記載の抗原又は請求項3に記載の検査薬と反応させることから成る多包虫症の検査方法。請求項1又は2に記載の抗原を支持体に固定し、これに被検者の血清を反応させ、これに標識を付したプローブを反応させ、この標識を検出することから成る、多包虫症の検査方法。被検者の血清からエキノコックス症(多包虫症)の抗体を検出するための検査キットであって、支持体に固定された請求項1又は2に記載の抗原から成る検査キット。 【課題】合成可能なサイズのアミノ酸配列から成る抗原を用いて行う、十分な感度を有するエキノコックス症(多包虫症)の検査法を提供する。【解決手段】従来多包虫症検査用抗原として使用してきたEm18分子(160アミノ酸残基)中の特定のアミノ酸配列がEm18と同等の検査感度を持つことが明らかとなった。Em18の389〜391番目から418〜428番目までのアミノ酸配列から成る多包虫症(エキノコックス症)検査用抗原を使用する。【選択図】なし配列表


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