生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物
出願番号:2004060160
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/353,A23L1/30,A23L2/52,A61P3/04,A61P3/10,A61P43/00,C07D311/62,C12N9/99


特許情報キャッシュ

小林 誠 海野 知紀 角田 隆巳 JP 2005247747 公開特許公報(A) 20050915 2004060160 20040304 リパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物 株式会社 伊藤園 591014972 竹内 三郎 100072084 市澤 道夫 100110962 小林 誠 海野 知紀 角田 隆巳 7A61K31/353A23L1/30A23L2/52A61P3/04A61P3/10A61P43/00C07D311/62C12N9/99 JPA61K31/353A23L1/30 ZA61P3/04A61P3/10A61P43/00 111C07D311/62C12N9/99A23L2/00 F 5 OL 11 4B017 4B018 4C062 4C086 4B017LC03 4B017LG14 4B017LP01 4B017LP18 4B018LB08 4B018MD08 4B018MD10 4B018MD59 4B018MD60 4B018ME03 4B018ME04 4B018ME06 4B018MF04 4C062FF44 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA70 4C086ZC20 4C086ZC35本発明は、脂肪の消化吸収に関与する消化酵素であるリパーゼの活性を阻害するリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害作用を備えた飲食物に関する。 近年、日本人の食生活の高カロリー化が進み、脂肪摂取割合が高くなっていることが問題視されている。脂肪の過剰摂取は、肥満ばかりでなく、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞などの疾病を引き起こすおそれもある。 食事中の脂肪(トリグリセリド、中性脂肪)はそのままでは消化管から吸収されず、消化酵素の一つであるリパーゼ(膵リパーゼ)によって2−モノアシルグリセロールと脂肪酸に分解されてはじめて消化管から吸収される。吸収された2−モノアシルグリセロールは小腸細胞内でトリグリセリドに再合成され、血中に放出される。血中に放出されたトリグリセリドは、リポタンパクリパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解され、脂肪組織に取り込まれ、トリグリセリドに再合成される。一方、ホルモン感受性リパーゼは脂肪組織中のトリグリセリドを分解して血中に脂肪酸を放出させる。 肥満や糖尿病などを抑制するために、このような脂肪の消化吸収酵素であるリパーゼの活性を阻害することが有効である。脂肪の消化吸収酵素の働きを妨げることで,脂肪の分解吸収が妨げられ、摂取された脂肪は排泄に促され、過剰なエネルギー摂取が抑制されることになる。 このような観点から、従来からリパーゼ活性阻害剤の探索がなされている。中でも、安全で摂取し易いという観点から天然物由来の成分の探索が盛んに行われ、多数の天然物由来のリパーゼ阻害剤がこれまでに報告されている。例えば、シャクヤク、オオレン、オオバク、ボタンピ、ゲンノショウコ、チャ、クジンなどの生薬の溶媒抽出エキス(特許文献1)、ピーマン、かぼちゃ、しめじ、まいたけ、ひじき、緑茶、紅茶、ウーロン茶の水抽出物(特許文献2)、ドッカツ、リョウキョウ、ビンロウシ、ヨウバイヒ、ケツメイシの抽出物(特許文献3)、ヒノキチオール(特許文献4)、ブドウ種子、カキ葉、プーアル茶 、オトギリソウ、リンゴ、タラ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉などの抽出物(特許文献5)、ユッカ、高麗人参、ジャスミン茶 、山査子、黄杞茶 、ルイボス茶 、大豆胚芽、生姜、および杜仲茶からの抽出物(特許文献6)など、様々な天然物由来の成分にリパーゼ阻害活性が報告されている。 このような天然植物の中でも、茶葉の抽出物、特にカテキンに優れた脂質の消化吸収抑制作用があることが知られており、リパーゼ阻害作用についても報告がなされている。 例えば特許文献7の3頁に記載された試験例2には、茶カテキンの中でも、(−)エピカテキンガレート(ECg)及び(−)エピガロカテキンガレート(EGCg)に、リパーゼの活性を有効に阻害し、脂質の消化吸収抑制機能がある旨が報告されている。 また、特許文献8には、カテキン類を高濃度で含有する茶抽出物の製造方法の発明が開示され、この製造方法によって得られた茶抽出物は、脂質吸収阻害力が最も強いといわれているエピガロカテキンガレートを40〜60%含むので、膵臓から分泌される消化酵素(リパーゼ)の働きを阻害する旨の開示がなされている。特開昭64−90131特開平3−219872特開平5−255100特開平8−268882特開平9−227398特開2002−275077特開平3−228664特開平9−322710本発明は、新たな観点から茶に由来する成分のリパーゼ阻害活性について検討し、その結果得られた新たな知見に基づいて、安全性が高く優れた阻害活性を備えたリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物を提供せんとするものである。 本発明者は、茶抽出物を水に溶解し、これを加熱(レトルト)処理し、加熱処理前後の茶抽出物について、リパーゼ(膵リパーゼ)阻害活性に与える影響を検討した。その結果、加熱処理した「熱異性化カテキン抽出物」の方が「元の抽出物」よりも強いリパーゼ阻害活性を示すことを見出した。また、既に優れたリパーゼ阻害活性を示すことが知られているECg及びEGCgのリパーゼ阻害作用と、これを熱異性化してなるCg及びGCgのリパーゼ阻害活性とを比較検討したところ、ECg及びEGCgよりもCg及びGCgの方が優れたリパーゼ阻害活性を示すことを見出した。 本発明は、これらの知見に基づいて想到したものである。 すなわち、本発明は、(−)GCg及び(−)Cgのいずれか、或いはこれらの混合成分を有効成分とするリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物(本発明では食品及び飲料をまとめて「飲食物」という。よって、飲食物には食品及び飲料が含まれる。)である。 なお、本発明において「リパーゼ阻害飲食物」とは、リパーゼ阻害作用を備え、リパーゼの活性を阻害する用途に用いる飲食物の意である。 非エピ体である(−)GCg及び(−)Cgは、エピ体である(−)EGCg及び(−)ECgが熱異性化してなるエピマーである。すなわち(−)EGCg及び(−)ECgの一つの不斉炭素原子が反転した立体配置を持つジアステレオマー(鏡像異性体以外のすべての立体異性体)である。これら(−)GCg及び(−)Cgは、天然物(例えば茶葉)中には僅かに含まれるのみであるが、天然物(例えば茶葉)中に多く含まれている(−)EGCgや(−)ECgを熱異性化すことによって産業上利用できる程度に得ることができる。 なお、本発明において「全カテキン」とは、(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCg、(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgの8種類のカテキンの意であり、「エステル型カテキン類」とは(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgのカテキンの意である。 また、「エピ体」とは(−)EC、(−)EGC、(−)ECg及び(−)EGCgを示し、「非エピ体」とは(−)C、(−)GC、(−)Cg及び(−)GCgを示す。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を有効成分とする」の「有効成分とする」とは、(−)GCg又は(−)Cgのリパーゼ阻害作用が阻害されなければ、その他の成分、例えば(−)EC、(−)ECg、(−)EGCgなどの成分を含んでいてもよいという意を包含するものである。 (−)GCgの重合体、(−)GCgと他のカテキンとの共重合体、(−)Cgの重合体、或いは(−)Cgと他のカテキンとの共重合体は、「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」の均等物であると考えることができる。 次に本発明の実施の形態について説明する。(リパーゼ阻害剤) 本発明のリパーゼ阻害剤は、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を所望濃度で配合することによって製造することができる。但し、(−)GCg及び(−)Cgの薬理活性を阻害しない範囲でその他の成分を配合したり、その他の処理を施すことは適宜可能である。 (−)GCg及び(−)Cgは、従来公知の方法或いは今後公知となる方法によって得ることができる。すなわち、(−)GCg及び(−)Cgは、茶葉を含めて天然植物中にほとんど存在しないが、例えば「(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物」を加熱処理して熱異性化(エピマ−化)を促すことにより得ることができる。 よって、本発明の有効成分である「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、例えば、(−)EGCg及び(−)ECgのいずれか、或いはこれらの混合物を含有するカテキン溶液を加熱処理して当該(−)EGCg又は当該(−)ECgを熱異性化して得られる熱異性化カテキン溶液から(−)GCg又は(−)Cgを高濃度で含有する熱異性化カテキン精製物を分離・精製することにより得ることができる。 この際、上記のカテキン溶液は、(−)EGCgや(−)ECgを溶解したものでもよいし、また、茶の抽出液或いは浸出液などであってもよい。 カテキン溶液の加熱処理は、約80℃以上に加熱処理するのが好ましく、カテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキンはほとんど熱異性化しない可能性があるからである(末松伸一ら、:日食工誌、39,178(1992))。 熱異性化カテキン溶液からカテキン精製物を分離・精製する方法は、従来公知の方法或いは今後公知となる方法を採用することができる。一例を挙げれば、被処理液(例えば茶の抽出液)を例えば水−アセトニトリル−リン酸の混合液を移動相とした逆相HPLCにかけ、アセトニトリル濃度でグラジエントをかけることによって(−)GCg及び(−)Cgをそれぞれ分離することができる。 熱異性化カテキン精製物は、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物の精製物における含有濃度が50wt%以上、特に60wt%以上、中でも特に80wt%以上であるものが好ましい。 「(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物」は、それぞれ単独で本発明の有効成分として配合することが可能であるが、既に或いは将来的にリパーゼ阻害作用が認められた物質、例えば(−)ECg、(−)EGCgのいずれか或いはこれら二種類以上の組合せからなる混合物などと混合し、これらを有効成分とすることも可能である。 単独で本発明の有効成分として配合する場合、例えば(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、精製水や生理食塩水などに溶解してリパーゼ阻害剤(例えば経口投与剤、腹腔内投与剤等)とすることもできる。 本発明のリパーゼ阻害剤は、経口投与剤または非経口投与剤(筋肉注射、静脈注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与など)として使用することができ、それぞれの投与に適した配合及び剤型とするのが好ましい。 剤型について言えば、例えば経口投与剤用としては液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、丸剤などの形態に調製することができ、非経口投与剤用としては注射剤、アンプル剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤などの形態に調製することができる。 配合(製剤)について言えば、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。また、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどの無毒性の添加剤を配合することも可能である。 本発明のリパーゼ阻害剤は、医薬品のほか、医薬部外品、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品、食品添加剤、その他ヒト以外の動物に対する薬剤や餌、餌用添加剤などとして提供することもできる。 例えば、医薬部外品として調製し、これを瓶ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とすることにより、より一層摂取し易くすることができる。 リパーゼ阻害効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品としては、例えば、(−)GCg、(−)Cg、或いはこれらの混合物、或いはこの混合物を含むカテキン溶液を、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた一種或いは二種以上と混合したり、或いは、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓、乾燥食品、サプリメントなどに添加して製造することができる。 中でも、脂肪を多く含んだ飲食物に(−)GCg、(−)Cg、或いはこれらの混合物、或いはこの混合物を含むカテキン溶液などを加えて飲食物を調製すれば、含有脂肪の割に脂肪吸収量を抑制することができるから、ダイエット飲食物などとして有効に提供することができる。(リパーゼ阻害飲食物) 次に、本発明に係るリパーゼ阻害飲食物、すなわちリパーゼの活性を阻害する効果を備えた飲食物(食品及び飲料を含む。)、中でも茶由来のリパーゼ阻害飲料について詳しく説明する。 上述のように、(−)GCg及び(−)Cgは、天然の茶中にほとんど存在しないが、天然の茶に多く含まれている(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物を加熱処理することにより得ることができる。 よって、本発明のリパーゼ阻害飲食物は、例えば、(−)EGCg及び(−)ECgのいずれか、或いはこれらの混合物を含有するカテキン溶液(これら以外を含んでいてもよい。)を加熱処理して、当該(−)EGCg又は当該(−)ECgを熱異性化して得られる熱異性化カテキン溶液から(−)GCg又は(−)Cgを高濃度で含有する熱異性化カテキン精製物を分離・精製し、この熱異性化カテキン精製物を飲食物原料として配合することにより製造することができる。 この際、上記のカテキン溶液は、(−)EGCgや(−)ECgを溶解したものでもよいし、また、茶の抽出液或いは浸出液などであってもよい。 カテキン溶液の加熱処理は、約80℃以上に加熱処理するのが好ましく、カテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキンはほとんど熱異性化しない可能性があるからである(末松伸一ら、:日食工誌、39,178(1992))。 熱異性化カテキン溶液からカテキン精製物を分離・精製する方法は、従来公知の方法或いは今後公知となる方法を採用することができる。一例を挙げれば、被処理液(例えば茶の抽出液)を例えば水−アセトニトリル−リン酸の混合液を移動相とした逆相HPLCにかけ、アセトニトリル濃度でグラジエントをかけることによって(−)GCg及び(−)Cgをそれぞれ分離することができる。 熱異性化カテキン精製物は、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物の精製物における含有濃度が50wt%以上、特に60wt%以上、中でも特に80wt%以上であるものが好ましい。 また、本発明のリパーゼ阻害飲料は、茶葉を抽出して得られた茶抽出液を精製、乾燥して茶抽出精製物を得、この茶抽出精製物を水又は茶抽出液に溶解して高カテキン含有溶液を得、この高カテキン含有溶液を80℃以上に加熱処理して熱異性化カテキン溶液を得、この熱異性化カテキン溶液を飲料原料として製造することができる。 この際、茶抽出精製物は、(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物の精製物における含有濃度が50wt%以上、特に60wt%以上、中でも特に80wt%以上であるものが好ましい。 なお、市販の茶抽出精製物を用いることもできる。例えば、テアフラン30A(商品名;伊藤園社製)は、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした緑茶抽出物であり、テアフラン90S(商品名;伊藤園社製)は、緑茶を熱水抽出処理して得た抽出物を、水と低・高濃度アルコールを使って吸着カラムにて分離し乾燥させ、茶ポリフェノール濃度を約85〜99.5%とした緑茶抽出物である。その他、市販の茶抽出物として三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、サントリー(株)製「サンウーロン」等も用いることができる。 また、本発明のリパーゼ阻害飲料は、茶葉を抽出することにより高カテキン含有溶液を得、この高カテキン含有溶液を80℃以上に加熱処理して熱異性化カテキン溶液を得、この熱異性化カテキン溶液を飲料原料として製造することもできる。 上記のように製造する場合、原料とし得る茶は、(−)EGCg及び(−)ECgを含有していれば特に種類、部位などには制限されないが、例えば茶生葉、紅茶やプアール茶等の発酵茶、ウーロン茶や包種茶等の半発酵茶、緑茶や釜煎り緑茶、ほうじ茶等の不発酵茶のいずれか(単独)、又は、これらの2種類以上の混合物を抽出して得られるもの、或いはそれぞれを抽出して得られたものの混合物を用いることができる。 茶の抽出は、茶を水、温水又は熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水、或いは人体に無害なエタノール水溶液又はエタノールなどの有機溶媒で抽出して茶抽出物を得ればよい。更にこの茶抽出物を溶媒抽出法、樹脂吸着法、限外濾過・逆浸透濾過等の濾過などの精製手段によってカテキン、中でも(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高める方向に精製して茶抽出物を得ることもできる。抽出の際、(−)EGC及び(−)ECgの含有量を高めるべく塩酸等を添加して酸性条件下で抽出を行ってもよい。 上記の場合、高カテキン含有溶液は、固形物換算濃度で(−)EGCg、(−)ECg或いはこれらの混合物の精製物における含有濃度が50重量%以上、特に60重量%以上、中でも特に80重量%以上であるものが好ましい。具体的には、(−)EGCg及び(−)ECgを約500mg/L以上含有するように調製するのが好ましい。カテキン溶液の(−)EGCg及び(−)ECgの濃度が500mg/L未満では、途中で濃縮工程が必要となるため生産コストが過大となる可能性がある。 カテキン溶液又は高カテキン含有溶液の加熱処理は、約80℃以上で加熱処理するのが好ましい。例えば100℃×15分加熱、115℃×20分加熱、120℃×3〜30分加熱、123℃×10分加熱、131℃×30秒加熱、133℃×45秒のいずれにおいても、カテキン類の熱異性化が認められている。 カテキン溶液の加熱処理が80℃未満では、エピ体から非エピ体への変換(熱異性化)が容易に起こらず、また平衡がエピ体リッチの方向にシフトするため好ましくない。 好ましくはカテキン溶液をpH5〜6に調製した上で加熱処理するのが好ましい。pH4.5以下ではカテキン類はほとんど熱異性化しないという旨の報告もある(末松伸一ら、:日食工誌、39,178(1992))。 本発明のリパーゼ阻害飲料は、上記のようにして得られたカテキン溶液の加熱処理液をそのまま或いは風味改善のため適宜緑茶抽出液やその他の物質を添加して調製すればよい。 ちなみに、本発明のリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物は、上記のようにして得られた高カテキン含有溶液の加熱処理液をさらに濃縮・乾燥し、得られた固形物を配合して製造することができる。この際の濃縮・乾燥工程は、減圧濃縮や凍結乾燥など通常の濃縮・乾燥方法により行うことができる。 このようにして得られたリパーゼ阻害飲食物は、主原料が天然物、特に日常多量に飲用している茶から得た成分を用いるので、安心して日常的に飲むことができる保健飲料として提供することができる。 本発明のリパーゼ阻害飲食物の好ましい配合組成は、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgを合計で、全カテキン合計含有量の約70重量%以上含有し、かつ、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量が、エステル型カテキン類である(−)EGCg、(−)ECg、(−)GCg及び(−)Cgの合計含有量の約40重量%以上であるのが好ましい。 本発明者の検討の結果、4種類のエステル型カテキンにリパーゼ阻害活性が認められたが、エステル型カテキン類のみで飲食物中のカテキンを構成しようとすると、風味が不足するため摂取しにくいものとなる。そこで、緑茶抽出物を添加して飲食物中の(−)ECの濃度を指標としてその値を、市販の緑茶飲料の2倍程度までの値とすることにより摂取の困難さを改善しようとすると、緑茶抽出物の必要添加量は最大当該飲食物の全カテキン含有量と等量程度となり、この場合の本発明のリパーゼ阻害飲食物中の4種類のエステル型カテキン類の合計含有量は、8種類の全カテキンの合計含有量の約70重量%以上となる。エステル型カテキン類の含有割合について検討した結果、全カテキンの合計含有量の約70重量%以上となるように飲料を調製するのが呈味性及びリパーゼ阻害作用の上で好ましいことが確認された。 以上の条件を満たす本発明のリパーゼ阻害飲食物は、そのエステル型カテキンの合計量と同量のEGCgを含有する飲食物と同等若しくはそれ以上のリパーゼ阻害作用を発揮する。(必要摂取量及び含有量) 本発明のリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物におけるエステル型カテキン類の必要摂取量は、1日当たり約300〜2100mg程度であると考えられる。 使用方法によっても異なるが、(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、乾燥重量換算で大人一日に120〜2100mg、好ましくは250〜1500mg程度摂取するのが好ましい。 上記の必要摂取量から考えると、固形形態のリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物の場合、エステル型カテキン類を約0.1〜100重量%含有させるようにするのが好ましく、中でも(−)GCg、(−)Cg或いはこれらの混合物を、約0.04〜100重量%、特に約0.1〜40重量%配合するのが好ましい。 エステル型カテキン類約0.1重量%未満では、摂取すべき固形物の量が1日当たり約2kgを超えることがあるため好ましくない。 他方、飲料形態のリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物の場合、エステル型カテキン類を約500〜6000mg/L程度の濃度で含有させるのが好ましい。 エステル型カテキン類濃度が500mg/L未満では、摂取すべき飲料の体積が1日当たり4Lを超えることがあるため好ましくない。6000mg/Lを超えると、カテキン類が高濃度となり渋味が強すぎるため好ましくない。より好ましくは、エステル型カテキン類濃度750〜3750mg/L程度である。(試験) カテキンによる食後中性脂肪の上昇抑制および体脂肪蓄積抑制のメカニズムを明らかにするため、各種カテキンが膵リパーゼ阻害作用を有するかどうか検討した。(試験サンプルの準備)1)緑茶抽出精製物 EGCg及びECgを含有する緑茶抽出精製物として伊藤園製「テアフラン9S」( 組成は表1)を用意し、試験サンプルとした。2)緑茶抽出精製物の熱異性化 緑茶抽出精製物(伊藤園製「テアフラン90S」)4.05gを、60℃の温水3L に溶解し、この溶液を35℃に冷却した後、ビタミンC(アスコルビン酸)を225m g加え、さらに重曹でpH6.0に調整した。そして、窒素フローを行いながら巻き締 めして缶に充填し、レトルト殺菌(123℃、7分)を行った。缶充填後、冷却した後 開缶し、エバポレーターにて濃縮して凍結乾燥して3.42g(乾燥重量)の試験サン プルを得た。3)カテキン標準品 EGCg、ECg、GCg及びCgの各カテキン標準品は、和光純薬工業社製のもの を使用した。(リパーゼ活性測定法) L−K Hanらの報告に準じ、下記組成からなる脂質エマルション100μL(※)に、膵リパーゼ溶液50μL(終濃度5unit/tube)および茶抽出物(伊藤園社製茶ポリフェノール:商品名「テアフラン90S」)溶液100μL(終濃度0.5〜2.0mg/mL)を添加し、30分、37℃でインキュベーションした。酵素反応で遊離したオレイン酸を定量(※※)することにより、残存酵素活性を測定した。※ 脂質エマルションの組成 Triolein 80mg Phosphatidylcholine 10mg Sodium Taurocholate 5mg 0.1M TES buffer (pH7.0) + 0.1M NaCl 9mL※※ 遊離脂肪酸の定量 1) インキュベーション液(#)250μLに、2%メタノールを含むクロロホルム-n -ペプタン(1:1)混液3mLを加えた。(#インキュベーション液の組成:脂質エ マルション100μL、膵リパーゼ50μL、テアフラン90S溶液100μL) 2) 10分間振とう後、2000g、25℃、5分間遠心分離した。 3) 有機層(下層)に銅試薬1mLを加えた。 4) 10分間振とう後、2000g、25℃、10分間遠心分離した。 5) 有機層(上層)0.5mLに、0.1%(w/v)bathcurproine、0.05%(w/v)3-(2)-tert-butyl-4-hydroxyanisol(クロロホルムに溶解)0.5mLを加えた。 6) 吸光度480nmを測定した。(結果) テアフラン90Sの熱異性化によるリパーゼ活性阻害の増強に関しては、テアフラン90S及びその熱異性体ともに、添加量依存的に膵リパーゼ活性を抑制した(図1)。また、テアフラン90Sに比べ、その熱異性体は膵リパーゼ阻害活性がより一層強いという結果を得た(図1)。 各カテキンのリパーゼ活性阻害に関しては、ガレート型カテキン(EGCg及びECg)を比較した結果、添加量依存的に膵リパーゼ活性を抑制した(図2及び図3)。 また、EGCgとGCg、ECgとCgを、それぞれ0.5mg/mLの濃度となるように添加し、それぞれのリパーゼ活性阻害作用を比較した結果、EGCgよりもGCgの方が活性阻害効果が高く、ECgよりもCgの方が活性阻害効果が高いという結果であった(図4)。緑茶抽出精製物とその熱異性化物のリパーゼ活性に及ぼす影響を比較したグラフである。EGCg及びECgのリパーゼ活性に及ぼす影響を濃度毎に示したグラフである。GCg及びCgのリパーゼ活性に及ぼす影響を濃度毎に示したグラフである。カテキン添加濃度0.5mg/mLにおけるリパーゼ活性に与える影響を、EGCgとGCg、ECgとCgとでそれぞれ比較したグラフである。 (−)GCg及び(−)Cgのいずれか、或いはこれらの混合成分を有効成分とするリパーゼ阻害剤。 (−)EGCg及び(−)ECgのいずれか、或いはこれらの混合物を含有するカテキン溶液を加熱処理して当該(−)EGCg又は当該(−)ECgを熱異性化して得られる熱異性化カテキン溶液の精製物を有効成分とする請求項1記載のリパーゼ阻害剤。 (−)GCg及び(−)Cgのいずれか、或いはこれらの混合成分を有効成分とするリパーゼ阻害飲食物。 (−)EGCg及び(−)ECgのいずれか、或いはこれらの混合物を含有するカテキン溶液を加熱処理して当該(−)EGCg又は当該(−)ECgを熱異性化して得られる熱異性化カテキン溶液の精製物を飲食物原料として配合してなる請求項3記載のリパーゼ阻害飲食物。 茶葉を抽出して得られた茶抽出液を精製、乾燥して、全カテキン濃度50wt%以上の茶抽出精製物を得、この茶抽出精製物を水又は茶抽出液に溶解して高カテキン含有溶液を得、この高カテキン含有溶液を80℃以上に加熱処理して熱異性化カテキン溶液を得、この熱異性化カテキン溶液を飲料原料としてなるリパーゼ阻害飲料。 【課題】 茶に由来する成分のリパーゼ阻害活性について検討し、安全性が高く優れた阻害活性を備えたリパーゼ阻害剤を提供する。【解決手段】優れたリパーゼ阻害活性が知られたECg及びEGCgよりも、これを熱異性化してなるCg及びGCgの方が優れたリパーゼ阻害活性を示すことを見出した。そこで、(−)GCg及び(−)Cgのいずれか、或いはこれらの混合成分を有効成分とするリパーゼ阻害剤及びリパーゼ阻害飲食物を提供する。【選択図】 なし


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