タイトル: | 公開特許公報(A)_糞便採取及び保存容器 |
出願番号: | 2004046745 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N33/48 |
原田 邦男 永井 啓一 岡野 和宣 角田 弘之 野口 清輝 JP 2005233903 公開特許公報(A) 20050902 2004046745 20040223 糞便採取及び保存容器 株式会社日立製作所 000005108 平木 祐輔 100091096 原田 邦男 永井 啓一 岡野 和宣 角田 弘之 野口 清輝 7G01N33/48 JPG01N33/48 G 2 1 OL 7 (出願人による申告)平成15年度、経済産業省、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(再)委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願 2G045 2G045CB04 2G045HA13 2G045HA14 本発明は、採取された自然排出便を採取し、検査のために保存・運搬するための糞便採取及び保存容器に関するものである。 欧米では、大腸がんが癌死亡率の上位を占めている。日本でも大腸がんの患者数は近年急激に増加している。これは日本人の食生活が欧米型の肉食が中心となったことに原因があると考えられている。国内では毎年約6万人程度が大腸がんに羅患しており、臓器別の死亡数でも、胃がん、肺がんに続く3番目の多さであり、今後のさらなる増加も予想されている。しかしながら、大腸がんは他のがんと異なり、早期がんであれば手術により、100%近く治せることが知られている。従って、大腸がんは早期がん検診の対象となり、数多くの検査法が考案されてきた。 大腸がんの早期発見のための検査法として注腸検査や内視鏡検査などが行なわれている。注腸検査とはバリウムを大腸内に注入し、大腸の粘膜面に付着させ、その表面の凹凸をX線により調べる方法である。内視鏡検査は大腸の中を直接内視鏡で調べる方法である。これらの検査法は大腸がんの発見に対して、高い感度と特異性を有している。加えて、内視鏡検査では早期がんや前がん状態のポリープを切除できる利点も有している。しかし、これらの検査法は被験者への負担が大きく、コストも高い、特に内視鏡検査では操作に熟練を要し、合併症のリスクを伴っている。そのため、無症状の一般人を対象にした大腸がん検査には向いていない。 そこで、一般人の大腸がん一次スクリーニング法として、便潜血検査が広く利用されている。便潜血検査とは糞便に含まれるヘモグロビンの存在を調べることにより、腸内の出血の有無を診断し、間接的に大腸がんの発生を予測する方法である。 便潜血検査法には大きく分けて化学的検査法と免疫検査法の2種類が存在する。化学的便潜血検査法とは、ヘモグロビンのペルオキシダーゼ活性を利用した方法であり、基質として加えられた過酸化水素が分解される際に生じた活性酸素により、濾紙に含まれたグアヤックが、青緑色の酸化グアヤックに変わる反応を利用している。ヘモカルトII濾紙(藤沢薬品)や、シオノギB濾紙(塩野義製薬)などが市販品として検査に使用されている。 免疫的便潜血検査とは主に、抗ヒトヘモグロビン抗体の特異的なヒトヘモグロビンへの結合を利用しており、その特異性の高さから、現在では便潜血検査法の主流になりつつある。逆受身無血球凝集法(イムディアHem−Sp、富士レオビ)、磁性粒子凝集傾斜法(マグストリーム Hem−Sp、 富士レオビ)、ラテックス凝集法(イムノカルト、中外製薬)などが知られている。 このように広く大腸がん検査に利用されている便潜血検査だが、検査の有用性に対しては疑問の声も上がっている。ヘモカルトIIを使用した化学的便潜血反応で陽性判定になるには大腸内で1日当たり20mgの出血が必要だが、実際の大腸がん患者の出血は10mg以下であると考えられている。そのため、便潜血反応の感度は26%程度であり、実際の大腸がん患者のおよそ1/4しか発見できず、3/4を見逃しているとの報告もある(下記非特許文献1)。更に、陽性判定被験者の中で実際に大腸がんであったのは8.3%に過ぎず、多くの擬陽性を含んでいる。 そこで、より精度の高い新しい一次スクリーニング用検査法の開発が切望されている。その候補として、糞便中に剥離したがん細胞を利用した検査法に注目が集まっている。大腸がんに伴い、間接的におこる腸内の出血を調べる便潜血検査法に比べて、本方法は直接がん細胞を調べるため、より信頼性の高い検査法になりうると考えられる。 糞便中のがん細胞を調べる検査法では、糞便から直接抽出した核酸を利用して遺伝子診断を行なう方法が下記特許文献1等に報告されている。具体的な遺伝子変異検出法としては、シークエンス法、PCR−RFLP(polymerase chain reaction-restriction enzyme fragment length polymorphism) 法、SSCP(single-stranded conformational polymorphism) 法、PTT(protein truncation test) 法などが開発されている。遺伝子変異の検出以外にもマイクロサテライトの不安定性 (MSI, microsatellite instability) やlongDNA (L−DNA) の出現などを指標に診断を行なう方法が知られている。 遺伝子変異の診断の対象となる遺伝子として、K−ras,APC,P53,DCC等が広く知られている。遺伝子の発現量の違いに目を付けた、新たな診断の対象となりうる遺伝子の探索はマイクロアレイ等を利用して現在でも活発に行なわれている。CD44遺伝子のスプライシングバリアントの発現パターンをマーカーとする方法なども提言されている。 これらの検査法で問題になるのは、糞便中には様々な細菌や正常細胞由来の核酸が存在しており、糞便から回収されるがん細胞由来の遺伝子の割合が非常に微量(約0.05%)であるという事である。これはがん細胞由来遺伝子の変異や微妙な発現パターンの変化を調べる際に大きな妨げとなり、これらの方法の実用化を困難にしている。 そこで、より確実な大腸がん診断に向けて、糞便から直接がん細胞を回収し、診断する方法が考えられている。糞便からがん細胞を回収するためには、2つのステップが重要である。ひとつは糞便中に存在する細胞を糞便から解離するステップであり、もう一つは解離した細胞を回収するステップである。 下記特許文献2には、糞便から細胞を解離するステップで糞便を冷却し、糞便の表面下に存在する細胞を解離させる前処理法が報告されている。具体的には、特許請求の範囲第1項に、『便をそのゲル氷点未満の温度に冷却する工程』を必須とするとの記載があり、この方法では冷却して氷結した糞便の表面を削り取り、糞便表面下に存在するがん細胞を解離させるものである。また、ストマッカーと呼ばれる固形物をマイルドに粉砕できる装置を使い、糞便全体を懸濁し、細胞を解離させる方法も報告されている。 解離した細胞を回収するステップでは、パーコールを利用した遠心分離法(下記非特許文献2)や、抗ヒト抗体を結合させた磁気ビーズを利用した回収法(下記非特許文献3)が報告されている。中でも上皮系細胞特異的に結合するBer−EP4抗体を結合させた磁気ビーズは市販されており(Dynabeads Epithelial Enrich、ダイナル社)、大腸がん細胞株に結合することが知られている。下記特許文献2でもBer−EP4結合磁気ビーズが糞便からのがん細胞の回収に利用されている。 一般人を対象にした大規模な大腸がん検査では、自動化システムによる多検体の大量処理が必要である。糞便から直接細胞を回収し大腸がんの検査を行なう方法は、その信頼性において非常に優れた方法である。そこで、排出された糞便を採取し、確実に保存・運搬するための容器の開発が望まれていた。 糞便を採取し、検査まで保存する方式には、ろ紙法とスティック法に大別される。最近は、受検者と検査技師の双方に好まれるスティック法が多く用いられている。特表2002−515973号公報(WO97/28450)特表平11−511982号公報(WO97/09600)Jama, Vol.269,1262-7, 1993Int J Cancer, Vol.52, 347-50, 1992Lancet, Vol.359, 1917-9, 2002, Apmis, Vol.110, 239-46, 2002 本発明は、スティック法に用いられ、排出された糞便を採取し、確実に保存・運搬するための容器を提供する。 上記の課題を解決するために、本発明では、回収チューブと外筒からなる二重構造とし、外筒とキャップを組合せて糞便採取及び保存容器とした。 即ち、本発明の糞便採取及び保存容器の回収チューブは、スティック法で排出便に突き刺して自然排出便を採取するための開口部を有し、採取した糞便と保存液を貯蔵する。回収チューブは外筒に挿入される。外筒は、前記回収チューブを入れる開口部と、該開口部付近に設けられた雄ネジ部を有する。外筒はキャップと螺合されて本発明の糞便採取及び保存容器を構成する。キャップは、前記外筒の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部と、前記外筒の開口部に圧入して勘合する凹部を有する。 本発明の糞便採取及び保存容器は、排出された糞便を容易に採取することが可能であるとともに、検査時まで、確実に保存・運搬するためことが可能である。本発明により、多数の被検者を対象にした大規模な大腸がん検査を効率化することが出来、糞便から回収した細胞を用いた細胞学的、免疫学的、生化学的分析を高い精度で行なうことで大腸がん検査を有効にする。 図1に、本発明の糞便採取及び保存容器の全体の断面図を示す。本発明の糞便採取及び保存容器は、回収チューブ1、外筒2、及びキャップ3と組合せて成る。図2に、回収チューブ1を示す。回収チューブ1は開口部4を有し、図3のように、開口部4を排出便に突き刺して、スティック法で自然排出便を採取する。糞便を採取した後は、保存液を所定量加え、採取した糞便と保存液を貯蔵する。図4に示すように、回収チューブ1は外筒2に挿入される。外筒2は、前記回収チューブ1を入れる開口部5と、該開口部5付近に設けられた雄ネジ部6を有する。図5に、キャップ3を示す。キャップ3は、雌ネジ部7と、凹部8を有する。雌ネジ部7は、前記外筒2の雄ネジ部6と螺合する。凹部8は、前記回収チューブ1の開口部4に圧入して勘合する。 このように構成された本発明の糞便採取及び保存容器は、振動を与えることにより、糞便と保存液を撹拌することが出来る。予め、回収チューブ1中にピストン状等の錘を入れておくと撹拌が効率的である。キャップ3の凹部8と回収チューブ1の開口部4が勘合しているため、撹拌時及び運搬時に糞便や保存液が漏れることはない。 図6に、検査時にキャップ3から外筒2を外した様子を示す。上記の通り、キャップ3の凹部8と回収チューブ1の開口部4が勘合しているため、検査処理時までこの状態で保持することが出来る。糞便回収時には、回収チューブにピストン等を挿入することにより、内容物を押し出すことが出来る。本発明の糞便採取及び保存容器の全体の断面図を示す。回収チューブを示す。回収チューブを用いたスティック法を示す。回収チューブが外筒に挿入された状態を示す。キャップを示す。キャップと回収チューブが勘合した状態を示す。符号の説明1:回収チューブ、2:外筒、3:キャップ、4:回収チューブの開口部、5:外筒の開口部、6:外筒の雄ネジ部、7:キャップの雌ネジ部、8:キャップの凹部。 自然排出便を採取及び保存する容器であって、 排出便に突き刺して自然排出便を採取するための開口部を有し、採取した糞便と保存液を貯蔵する回収チューブと、 前記回収チューブを入れる開口部と、該開口部付近に設けられた雄ネジ部を有する外筒と、 前記外筒の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部と、前記外筒の開口部に圧入して勘合する凹部を有するキャップと、からなる糞便採取及び保存容器。 前記回収チューブ中に採取した糞便と保存液を撹拌するための錘を入れたことを特徴とする請求項1に記載の糞便採取及び保存容器。 【課題】 スティック法に用いられ、排出された糞便を採取し、確実に保存・運搬するための容器を提供する。【解決手段】 排出便に突き刺して自然排出便を採取するための開口部4を有し、採取した糞便と保存液を貯蔵する回収チューブ1と、前記回収チューブ1を入れる開口部5と、該開口部5付近に設けられた雄ネジ部6を有する外筒2と、前記外筒2の雄ネジ部6と螺合する雌ネジ部7と、前記回収チューブの開口部4に圧入して勘合する凹部8を有するキャップ3とからなる糞便採取及び保存容器。【選択図】 図1