タイトル: | 公開特許公報(A)_亜硝酸酸化還元酵素遺伝子検出用プライマー |
出願番号: | 2004044542 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,C02F3/34,C12Q1/68 |
赤司 昭 JP 2005229929 公開特許公報(A) 20050902 2004044542 20040220 亜硝酸酸化還元酵素遺伝子検出用プライマー 株式会社神鋼環境ソリューション 000192590 角田 嘉宏 100065868 古川 安航 100106242 赤司 昭 7C12N15/09C02F3/34C12Q1/68 JPC12N15/00 AC02F3/34 101AC02F3/34C12Q1/68 A 6 OL 15 4B024 4B063 4D040 4B024AA11 4B024BA08 4B024CA04 4B024CA05 4B024CA09 4B024GA19 4B024HA08 4B024HA12 4B024HA14 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ44 4B063QR08 4B063QR42 4B063QR55 4B063QR62 4B063QR66 4B063QR82 4B063QS12 4B063QS16 4B063QS25 4B063QS34 4B063QS36 4B063QX01 4D040BB01 4D040BB91 4D040BB93 本発明は、亜硝酸酸化還元酵素(nitrite oxidoreductase:NOR)遺伝子を検出するためのPCR(polymerase chain reaction)プライマーに関するものである。 微生物を用いる排水の生物学的窒素除去は、化学式1に示される亜硝酸型硝化脱窒反応及び化学式2に示される硝酸型硝化脱窒反応の2種類の反応がある。 亜硝酸型硝化脱窒法は、硝化反応において、硝酸型硝化脱窒法と比較して必要な酸素量が25%少ないため、曝気量を25%削減することが可能であり、曝気にかかる電力を節約することが可能である。また、脱窒反応においても、硝酸型硝化脱窒法と比較して水素供与体として必要なメタノールを40%削減することが可能であり、排水処理コストを削減することが可能である。このため、近年、新しい省エネルギー型の窒素除去方法として、亜硝酸から脱窒する亜硝酸型硝化脱窒法が注目されている(非特許文献1)。 アンモニアの硝化に関与する酵素群(化学式3)のうち、アンモニア酸化酵素(AMO)とヒドロキシルアミン酸化酵素(HAO)をコードする遺伝子については、各種排水処理装置や自然界から多くの遺伝子がPCR法等により検出され、排水処理装置の処理特性との関連性についての報告もなされている。 この亜硝酸型硝化脱窒法を確立するためには、排水中のアンモニアの一部又は全ての酸化を亜硝酸で停止させ、硝酸が生成しない硝化プロセスが必要となる。すなわち、排水処理装置において亜硝酸酸化細菌の増殖を抑制するか、又は亜硝酸酸化細菌の亜硝酸酸化還元酵素(NOR)をコードする遺伝子(nitrite oxidoreductase beta subunit:norB)の発現を抑制し、亜硝酸から硝酸が生成されるステップを抑制する運転を行うことが必要となる。 ここで、亜硝酸酸化細菌数を定量する方法としては、最確数法(most probable number method:MPN法)が多く用いられてきた(非特許文献2)。また、亜硝酸酸化細菌の迅速な検出・定量方法として、16SrRNA遺伝子をターゲットとするPCR法による方法が報告されている(非特許文献3、4)。 一方、NORをコードする遺伝子の研究例は極めて少なく、亜硝酸酸化細菌として、Nitrobacter hamburgensis 由来の遺伝子が唯一クローニングされているにすぎず、その遺伝子配列が決定されているだけである(非特許文献5)。また、この遺伝子をPCR法により検出、定量した例も見当たらない。R. van Kempen et al., Wat. Sci. Technol., 44, p145-152 (2001).下水試験方法上巻(1997年版):社団法人日本下水道協会、p608-611.Hebe M. Dionisi et al., 2003 Appl. Environ. Microbiol., 69, p6597-6604.Hebe M. Dionisi et al. 2002 Appl., Environ. Microbiol., 68, p245-253.K. Kirstein and E. Bock, Arch. Microbiol., 160, P447-453 (1993). 生物学的排水処理装置における亜硝酸酸化細菌の定量方法として、MPN法は、結果が出るまでに約1〜2ヶ月もの期間を必要とするため、排水処理装置の運転管理への適応は不可能であった。また、16SrRNA遺伝子をターゲットとするPCR法も、2〜3日以内に遺伝子数(∝亜硝酸酸化細菌数)を定量することが可能であるが、NOR遺伝子を対象とした定量法ではないために排水処理装置の処理性能に直結した解析は不可能であった。 本発明は、排水処理装置中のNORコード遺伝子であるnorBのコピー数を、PCR法を用いて迅速に定量するためのプライマーを提供することを目的とする。 本発明は、排水処理装置中の亜硝酸酸化細菌が有するnorBを、PCR法を用いて増幅・検出するためのプライマーに関する。また、本発明は、PCR法を用いて排水処理装置中のnorBコピー数を定量する方法に関する。 具体的に、本発明は、(1) 亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBに特異的な一対のPCR用プライマーであって、当該プライマーが配列番号:1及び2に記載の塩基配列から構成されることを特徴とするプライマー;(2) 亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBに特異的な一対のPCR用プライマーであって、当該プライマーが配列番号:3及び4に記載の塩基配列から構成されることを特徴とするプライマー;(3)上記(1)又は(2)に記載のPCRプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBをPCR法によって検出する方法;(4)上記(1)又は(2)に記載のPCRプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBコピー数をPCR法によって定量する方法;(5)前記PCR法がC−PCR法(competitive PCR法)法、リアルタイムPCR法(real time PCR法)法、MPN−PCR法(most probable number PCR法)又はRLD−PCR法(replicative limiting dilution PCR法)のいずれかである上記(4)に記載の定量方法、(6)上記(1)又は(2)に記載のプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBをPCR法によって検出し、そのコピー数をPCR法によって定量しながら運転することを特徴とする生物学的排水処理方法、に関する。 本発明のプライマーセットを用いることにより、排水処理装置中のnorB遺伝子数を、PCR法によって迅速に検出することが可能となる。また、norB遺伝子のコピー数を、PCR法によって迅速に定量することが可能となる。それにより、排水処理装置において亜硝酸酸化細菌の増殖を抑制し、又は亜硝酸酸化細菌のnorB遺伝子の発現を抑制し、亜硝酸から硝酸が生成されるステップを抑制する運転を行うことが可能となる。さらに、排水処理装置において亜硝酸型硝化脱窒法を安定して実施することが可能となる。 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り下記に限定されるものではない。(プライマーの設計) データベース上に唯一登録されている Nitrobacter hamburgensis のnorBのDNA配列を基に、下記プライマーセットを設計した。 プライマーセット1 norB269f: 5’- actggaacaacgtggagacc − 3’(配列番号1) norB443r: 5’- gtcggcagataggggttgta − 3’(配列番号2) プライマーセット2 norB155f: 5’- acatccgagctcaagtttcg − 3’(配列番号3) norB557r: 5’- atgtacttgcccgtcaccat − 3’(配列番号4)(PCR産物のクローニング)活性汚泥からのDNAの抽出と精製 民間工場の排水処理設備から採取した活性汚泥に含まれるDNAを鋳型として、プライマーセット1を用いてPCRを行った。活性汚泥からのDNA抽出は、ISOPLANT II(株式会社ニッポンジーン製)を用い、製造業者の推奨する方法に従って実施した。抽出したDNAに、20μg/mLの濃度になるようRNase(株式会社ニッポンジーン製)を添加し、37℃で30分間処理して混在するRNAを分解した後、製造業者の推奨する方法に従ってBIOSPINカラム(日本バイオラッドラボラトリー株式会社製)を用いてDNAを精製した。この精製したDNAをPCRの鋳型として使用した。1)プライマーセット1を用いるPCR条件の検討 DNA 10 ng、DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-(東洋紡績株式会社製)0.5 unit、1×PCR Buffer(東洋紡績株式会社製)、0.2 mM dNTP(東洋紡績株式会社製)、1 mM MgSO4、及び0.5μM 各プライマーからなる反応液を用いて、表1の条件でPCR反応を行った。 PCR産物は、常法に従い、3%アガロースゲル電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドで染色し、紫外線下で観察した。全てのアニーリング条件で、目的とする約175bpの単一バンドが増幅された(図1)。 次に、このバンドがnorB遺伝子であるか否かを確認するため、60.0℃、62.2℃、及び63.7℃のアニーリング温度で得られたPCR産物の遺伝子配列を決定し、既知の遺伝子配列との相同性を比較した。PCR産物は、MinElute PCR Purification Kit(株式会社キアゲン製)を用いて精製後、Zero Blunt TOPO PCR Purification Kit(インビトロジェン株式会社製)を用いてクローニングし、大腸菌を形質転換した。任意に選出した形質転換体24ケからプラスミドを精製した後、プライマーセット1を用いて増幅した。PCR産物は、上記精製キットを用いて精製した。このPCR産物を、制限酵素HaeIII、HhaI、及びHpaIIで別々に切断した後、その一部をポリアクリルアミドゲル電気泳動し、その泳動パターンを比較した。泳動パターンの異なるクローンを選出し、塩基配列を決定した。2)BLAST相同性検索 プライマーセット1によって得られたPCR産物の塩基配列及び該塩基配列から推定されるアミノ酸配列と、既知の遺伝子及び蛋白質との相同性検索は、BLASTホモロジー検索(http://www.ncbi.nlm.gov/)により実施した。表2にプライマーセット1を用いたときに得られたPCR産物のBLASTホモロジー検索の結果を示す。プライマーセット1を用いた場合、60.0℃及び62.2℃のアニーリング温度において、それぞれ4種類のクローンが得られた。それらのうち、クローン1〜3は、Nitrobacter hambuergensisのnorB遺伝子と塩基配列で、それぞれ88%、86%及び93%の相同性を示した。また、アミノ酸レベルでは、それぞれ95%、96%及び96%の相同性を示した。クローン4は、norB遺伝子とは全く関連性が見られない遺伝子であったことから、プライマーのミスマッチにより増幅されたものと推測された。63.7℃のアニーリング温度において3種類のクローンが得られ、全てnorB遺伝子と高い相同性を示した。以上の結果から、プライマーセット1のPCR条件として、DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-を用いた場合、MgSO4 濃度1 mM、アニーリング温度63.7℃において目的とするnorB遺伝子のみが増幅され、最適なPCR条件であることが示された。なお、クローン1〜3の塩基配列は、配列表の配列番号:5〜7に示した。 1)プライマーセット2を用いるPCR条件の検討 DNA 10 ng、DNAポリメラーゼとしてAmpliTaq Gold(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)1.25 unit、1×PCR Buffer(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)、0.2 mM dNTP(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)、2.5 mM MgSO4、及び0.5μM 各プライマーからなる反応液を用いて、表3の条件でPCR反応を行った。 PCR産物は、常法に従い、3%アガロースゲル電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドで染色し、紫外線下で観察した。アニーリング温度53.5℃以下で、目的とする約400bpの単一バンドが増幅された(図2)。 次に、このバンドがnorB遺伝子であるか否かを確認するため、実施例1と同様にして、48.6℃のアニーリング温度で得られたPCR産物の遺伝子配列を決定し、既知の遺伝子配列との相同性を比較した。2)BLAST相同性検索 プライマーセット2によって得られたPCR産物の塩基配列及び該塩基配列から推定されるアミノ酸配列と、既知の遺伝子及び蛋白質との相同性検索は、実施例1と同様にBLASTホモロジー検索により実施した。表4にプライマーセット2を用いたときに得られたPCR産物のBLASTホモロジー検索の結果を示す。 プライマーセット2を用いた場合、48.6℃のアニーリング温度において、2種類のクローンが得られ、Nitrobacter hamburgensisのnorB遺伝子と塩基配列で、それぞれ90%及び91%の相同性を示した。また、アミノ酸レベルでは、それぞれ98%及び96%の相同性を示した。以上の結果から、プライマーセット2のPCR条件として、DNAポリメラーゼとしてAmpliTaq Goldを用いた場合、MgSO4 濃度2.5 mM、アニーリング温度48.6℃において目的とするnorB遺伝子のみが増幅され、最適なPCR条件であることが示された。なお、クローン5及び6の塩基配列は、配列表の配列番号:8及び9に示した。(norB遺伝子コピー数の定量) プライマーセット1を用いて、活性汚泥中のnorB遺伝子コピー数の定量実験を行った。定量法として、この実施例ではC−PCR法を採用した。 競合的DNAは、competitive DNA Construction Kit(宝バイオ株式会社製)を用いて製造業者の推奨する方法に従って作製した。標的DNA 10 ng、1×PCR Buffer(東洋紡績株式会社製)、 0.2 mM dNTPs(東洋紡績株式会社製)、1 mM MgSO4、及び0.5μM 各プライマー、1×106〜1.56×104コピーの競合的DNA、及びKOD-Plus-(東洋紡績株式会社製)0.5 unitからなる反応液を用いて、表5に示す条件でC−PCRを実施した。 PCR産物は、常法に従い、3%アガロースゲル電気泳動を行い、電気泳動ゲル撮影/解析システムEDAS290(Kodak)により、norB遺伝子と競合DNAに相当するバンドの蛍光強度を測定した。本実施例では、図3(A)に示した4つの競合DNAコピー数における、標的DNAと競合DNAの蛍光強度を測定した。norB遺伝子のコピー数は、図3(B)に示した両対数グラフにおいて、norB遺伝子に相当するバンドの蛍光強度が、競合DNAの蛍光強度と等しくなる点、すなわち、log(Fl. Target / Competitor = 0)であるときのy軸の値から算出した。本実施例では、10 ngの標的DNAあたり105.44コピーのnorB遺伝子が存在した。本実施例で用いた活性汚泥1mLから精製したDNAは、3260 ngであったため、活性汚泥1mL中に含まれるnorB遺伝子は、105.44 × 3260/10 = 107.95 コピーであると算出された。 本実施例のnorB遺伝子コピー数の定量法では、2日以内に操作が終了するため、MPN法と比較して極めて短時間で定量を行うことが可能であった。なお、norB遺伝子の定量方法は、C−PCR法に限らず、リアルタイムPCR法、MPN−PCR法又はRLD−PCR法を用いても実施することが可能である。これらのうち、迅速に定量結果が得られるという点ではリアルタイムPCR法が最も好ましい。 また、本発明を適用しうる生物学的排水処理装置としては、微生物を装置内に浮遊させる活性汚泥処理装置、微生物を付着させた担体を用いる流動床式処理装置又は固定床式処理装置等が挙げられる。これら排水処理装置中のnorB遺伝子コピー数を、PCR法を用いて迅速に定量することにより、定量結果に基づいて排水処理装置の運転条件を変化させて生物学的排水処理を効果的に継続することも可能となる。 このように、本発明のプライマーセットを用いる定量法は、迅速かつ正確にnorB遺伝子を検出し、またそのコピー数を定量することができるため、排水処理装置において亜硝酸酸化細菌の増殖を抑制し、又は亜硝酸酸化細菌のnorB遺伝子の発現を抑制し、亜硝酸から硝酸が生成されるステップを抑制する運転を行うことが可能となる。また、排水処理装置において亜硝酸型硝化脱窒法を安定して実施することが可能となる。プライマーセット1によるPCR産物のアガロース電気泳動写真である。プライマーセット2によるPCR産物のアガロース電気泳動写真である。(A)C−PCRにおけるPCR産物のアガロース電気泳動写真である。 (B)C−PCRにおけるnorB遺伝子の検量線である。 亜硝酸酸化還元酵素遺伝子(nitrite oxidoreductase β-subunit)norBに特異的な一対のPCR用プライマーであって、当該プライマーが配列番号:1及び2に記載の塩基配列から構成されることを特徴とするプライマー。 亜硝酸酸化還元酵素遺伝子(nitrite oxidoreductase β-subunit)norBに特異的な一対のPCR用プライマーであって、当該プライマーが配列番号:3及び4に記載の塩基配列から構成されることを特徴とするプライマー。 請求項1又は2に記載のプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBをPCR法によって検出する方法。 請求項1又は2に記載のプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBコピー数をPCR法によって定量する方法。 前記PCR法がC−PCR法、リアルタイムPCR法、MPN−PCR法又はRLD−PCR法のいずれかである請求項4に記載の定量方法。 請求項1又は2に記載のプライマーを用いて、排水処理装置中の亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBをPCR法によって検出し、そのコピー数をPCR法によって定量しながら運転することを特徴とする生物学的排水処理方法。 【課題】 亜硝酸酸化細菌が有する亜硝酸酸化還元酵素遺伝子norBを検出・定量するためのPCRプライマーセットを提供することを目的とする。【解決手段】 Nitrobacter hamburgensisの有する亜硝酸酸化還元酵素遺伝子の塩基配列に基づいてプライマーを作成した。2種類のプライマーからなるプライマーセット1及び2を用いて活性汚泥のDNAを鋳型としてPCRを行い、それぞれに最適なPCR条件を求めた。PCR産物を精製後、プラスミドベクターに連結し、大腸菌を形質転換し、クローンを得た。BLAST検索の結果、いずれのプライマーセットから得られたクローンもNitrobacter hamburgensisのnorB遺伝子と高い相同性を示した。C−PCR法を用いることにより、norB遺伝子コピー数の定量も可能となった。【選択図】 なし配列表