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タイトル:公開特許公報(A)_オゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法
出願番号:2004044088
年次:2005
IPC分類:7,A61K33/00,A01N25/02,A01N25/04,A01N59/00,A61K47/10,A61P17/00,A61P17/02


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芝 ▲あき▼彦 塩田 剛太郎 JP 2005232094 公開特許公報(A) 20050902 2004044088 20040220 オゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法 株式会社ブイエムシー 592160652 荒船 博司 100090033 荒船 良男 100093045 芝 ▲あき▼彦 塩田 剛太郎 7A61K33/00A01N25/02A01N25/04A01N59/00A61K47/10A61P17/00A61P17/02 JPA61K33/00A01N25/02A01N25/04 103A01N59/00 AA61K47/10A61P17/00 101A61P17/02 6 OL 10 4C076 4C086 4H011 4C076AA11 4C076BB31 4C076CC18 4C076DD38 4C076EE23 4C076EE51 4C086AA01 4C086AA02 4C086HA08 4C086MA02 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA17 4C086NA02 4C086ZA89 4C086ZB35 4H011AA02 4H011BA01 4H011BB18 4H011BC03 4H011BC18 4H011BC19 4H011DA13 4H011DA17 4H011DH03 4H011DH13 本発明は、オゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法に関する。 オゾンには強力な酸化作用があり、殺菌に役立つことが各種研究により実証されている。気体のオゾンの一般的な製造方法としては、空気に放電して一部をオゾン化する方法がある。 また、気体のオゾンの他に、オゾンを水に溶け込ませたオゾン水も利用されている。オゾン水の製造方法としては、空気を放電して製造したオゾンを何らかの方法で水に溶かし込む方法や、白金等のオゾン生成触媒機能を有する電極を用いて水を直接電気分解し、発生する酸素の一部をオゾン化し、即座に水に溶け込ませるものがある。 この他に、濃度0.01〜500ppmのオゾンを含む気体をオゾン発生器で発生させ、これを粘度が1〜106Pa・sの液体に溶解またはマイクロバブル化して封入したオゾン封入粘稠体が知られている。気体のオゾンやオゾン水には定着性がないため、用途が限られていたが、オゾン封入粘稠体により、クリームやペーストとして特定の部位に定着させオゾンを作用させることができる(特許文献1参照)。特開平10−139645号公報 ところで、オゾン封入粘稠体を実際に殺菌剤として使用する創傷部位には、オゾンを使用する被酸化物(有機物、血液等)が多数存在するため、高濃度のオゾンが溶存している必要があり、終濃度で80ppm程度のオゾン濃度が必要である。しかし、上記のオゾン封入粘稠体では、濃度0.01〜500ppmのオゾンを含む気体を、粘度が1〜106Pa・sの液体に溶解またはマイクロバブル化して封入するため、オゾンの終濃度が極めて低くなり、実用に適したものとなっていなかった。 また、オゾン封入粘稠体の製造直後のオゾン濃度が低い場合には、保管期間が長くなるとオゾン濃度が低下し、殺菌効果を維持することができなかった。また、粘稠体の種類によっては、オゾンに酸化されて有害な酸化物(過酸化物)が生じる恐れもあった。 本発明の課題は、殺菌効果及び創傷治癒効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間維持するとともに、有害な酸化物(過酸化物)が生じないオゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法を提供することである。 以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、オゾン溶存グリセリン溶液であって、75%以上の非酸化のグリセリン溶液にオゾンが400ppm以上溶存していることを特徴とする。 請求項1に記載の発明によれば、高濃度で非酸化のグリセリンにオゾンが高濃度で溶存しているため、殺菌効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間保持することができる。 請求項2に記載の発明は、オゾン溶存混合溶液であって、請求項1に記載のオゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合してなり、オゾンが80ppm以上溶存していることを特徴とする。 高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、化粧水や美容液に利用する場合には、グリセリンの濃度を低下させる必要があるが、請求項2に記載の発明によれば、オゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合することで、グリセリンの刺激性を抑えることができる。また、オゾンが80ppm以上溶存しているため、充分な殺菌能力を発揮することができる。 なお、オゾンを水に溶解させた後にオゾン水にグリセリンを加えると、グリセリン濃度に依存して速やかに酸化力が消失するが、オゾンをグリセリンに溶存させた後にオゾン溶存グリセリン溶液を水で希釈しても酸化力が失われない。 また、ワセリンやポリエチレングリコールを高濃度のオゾンと気液接触させる場合には、有害な酸化物(過酸化物)が生じるが、高濃度のグリセリンに高濃度のオゾンを溶存させてから、ワセリンまたはポリエチレングリコールと混合する場合には、有害な酸化物(過酸化物)が生じない。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液に、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つを混合し、攪拌することで、酸化力の失われない、また有害な酸化物(過酸化物)を含まないオゾン溶存混合溶液を製造することができる。 請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のオゾン溶存グリセリン溶液の製造方法であって、75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させることを特徴とする。 請求項3に記載の発明によれば、75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させることで、高濃度のグリセリンにオゾンを高濃度で溶存させたオゾン溶存グリセリン溶液を製造することができる。 請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のオゾン溶存混合溶液の製造方法であって、請求項3に記載の製造方法で製造されたオゾン溶存グリセリン溶液と、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つとを混合し、攪拌することを特徴とする。 請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果を得ることができる。 請求項5に記載の発明は、オゾン溶存グリセリン溶液の保存方法であって、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を、冷蔵保存または冷凍保存することを特徴とする。 ここで、冷蔵保存とは、−5℃以上10℃以下で保存することであり、冷凍保存とは、−5℃以下で保存することである。なお、オゾン溶存グリセリン溶液のグリセリン濃度やオゾン濃度は任意である。 請求項5に記載の発明によれば、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を、冷蔵保存または冷凍保存することで、常温保存するよりもオゾン濃度を長期間、高濃度に維持することができる。 請求項6に記載の発明は、オゾン溶存グリセリン固化物であって、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を冷却し、固化させたことを特徴とする。 ここで、オゾン溶存グリセリン固化物は、冷却し、固化した状態のオゾン溶存グリセリン溶液であり、グリセリンが結晶化して固化していてもよいし、過冷却状態になり溶液全体の粘性が高くなって固化していてもよい。また、グリセリンが単独で固化していてもよいし、溶液を構成する他の成分とともに固化していてもよい。なお、オゾン溶存グリセリン溶液のグリセリン濃度やオゾン濃度は任意である。 請求項6に記載の発明によれば、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液が冷却されて固化しているため、液体の状態よりもオゾンを放出しにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 本発明によれば、高濃度のグリセリン溶液に高濃度のオゾンを溶存させているため、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンの溶存濃度を、殺菌剤等に用いるのに充分な濃度で長期間維持することができる。 また、オゾン溶存グリセリン溶液を、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれかと混合するため、酸化力の失われない、また有害な酸化物(過酸化物)を含まないオゾン溶存混合溶液を製造することができる。 また、オゾン溶存グリセリン溶液を冷蔵保存または冷凍保存することで、常温保存するよりもオゾン濃度を長期間、高濃度に維持することができる。また、オゾン溶存グリセリン溶液を冷却して固化することで、液体の状態よりもオゾンが放出されにくくし、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のオゾン溶存グリセリン溶液は、高濃度のグリセリン溶液とオゾン濃度の高い気体とを気液接触させることで製造することができる。 オゾン濃度の高い気体は、例えば酸素ガスに無声放電することでオゾンを生成するオゾン発生装置で製造することができる。酸素ガスを用いる場合には、医療用の酸素ボンベを用いてもよいし、また酸素発生装置で製造された酸素ガスを用いてもよい。空気を用いると、窒素酸化物が生成される。空気を用いてオゾン濃度の高い気体を生成し、ヨウ化カリウム適定法でオゾン濃度を測定すると、ヨウ化カリウム消費量が見かけ上増加するが、これは窒素酸化物のためである。窒素酸化物は有害物質であるため、空気を用いる方法は実際の使用に適さない。 高濃度のグリセリン溶液としては、グリセリン濃度75%以上のグリセリン溶液を用いることができるが、日本薬局方品の84〜87重量%のグリセリンが好ましく、日本薬局方品のグリセリン濃度98%以上の濃グリセリンを用いることがより好ましい。また、濃度98.5%以上の精製グリセリンを用いることがさらに好ましい。グリセリン濃度が高いと、オゾンをより高濃度に溶存させることができるからである。 高濃度のグリセリン溶液とオゾン濃度の高い気体とを気液接触させる方法としては、例えばタンクに高濃度(例えば98%以上)のグリセリン溶液を入れ、散気管を用いてタンク内にオゾン濃度の高い気体を微細な気泡として放出する方法がある。例えば、オゾン濃度80g/kL(約37000ppm)の気体を濃グリセリン中に約7日間曝気することにより、オゾン濃度約3000ppmのオゾン溶存グリセリン溶液を製造することができる。 オゾンの終濃度はグリセリン濃度に依存して定まり、前述の方法の場合、グリセリン濃度75%ではオゾンの終濃度は約400ppm、グリセリン濃度85%ではオゾンの終濃度は約500ppm、グリセリン濃度90%ではオゾンの終濃度は約1000ppm、グリセリン濃度98%ではオゾンの終濃度は約3000ppmとなる。 最終的に得られるオゾン溶存グリセリン溶液は、グリセリン濃度75%以上でオゾン濃度400ppm以上であることが好ましく、グリセリン濃度80%以上でオゾン濃度500ppm以上であることがより好ましく、グリセリン濃度90%以上でオゾン濃度1000ppm以上であることがさらに好ましく、グリセリン濃度98%以上でオゾン濃度3000ppm以上であることが最も好ましい。グリセリンが高濃度であるほど、オゾンを高濃度にすることができ、殺菌効果及び創傷治癒効果を高めることができるとともに、オゾン濃度を長期間にわたり維持することができるからである。このように製造されたオゾン溶存グリセリン溶液は、オゾンの初期濃度が高濃度であり、後述するようにオゾン濃度の半減期が長くなり、殺菌剤として必要なオゾン濃度を長期間にわたり維持することができる。 また、オゾン濃度の半減期が長いことからわかるように、このオゾン溶存グリセリン溶液から放出されるオゾンの量は極めて少ない。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液の使用部位、到達部位においてオゾンを少しずつ長期間にわたり放出させることができる。また、放出されるオゾンの量が極めて少ないため、このオゾン溶存グリセリン溶液は、高濃度のオゾンが溶存しているのにもかかわらず、全くオゾン臭がしない。 なお、オゾン溶存グリセリン溶液を−5℃以上10℃以下で冷蔵保存または−5℃以下で冷凍保存することで、オゾン溶存グリセリン溶液から放出されるオゾンの量をさらに少なくすることができ、常温保存するよりもオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 特に、オゾン溶存グリセリン溶液を冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とした場合には、液体の状態よりもオゾンが放出されにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。ここで、オゾン溶存グリセリン固化物は、冷却し、固化した状態のオゾン溶存グリセリン溶液であり、グリセリンが結晶化して固化していてもよいし、過冷却状態になり溶液全体の粘性が高くなっていてもよい。また、グリセリンが単独で固化していてもよいし、溶液を構成する他の成分とともに固化していてもよい。 ここで、グリセリン濃度75%以上でオゾン濃度400ppm以上のオゾン溶存グリセリン溶液に限らず、任意の濃度のオゾン溶存グリセリン溶液が、冷蔵保存または冷凍保存することでオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とする場合も同様である。 なお、オゾンを濃グリセリンに溶存させることで、グリセリンが酸化されることも想定されるため、今回、原料グリセリン及びオゾン溶存グリセリン溶液の1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを計測し、比較した。その結果、原料グリセリンのスペクトルと、オゾン溶存グリセリン溶液のスペクトルとの間に差異はなく、グリセリンの酸化物は検出されなかった。したがって、濃グリセリンに高濃度のオゾンを溶存させても、グリセリンはオゾンにより酸化されないことがわかった。 また、気体のオゾンの自然半減期は2時間程度とされているが、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンの半減期は、後述するように、それよりもはるかに長いものであった。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンは気泡の状態で存在するのではなく、グリセリンに溶存しているものと推定される。実際にオゾン溶存グリセリン溶液を生成した直後には、多数の気泡を肉眼で観察できるが、数時間放置するとこれらの気泡は観察されなくなる。 なお、オゾン溶存グリセリン溶液は用途によってはそのまま使用することもできるが、化粧水や美容液に利用する場合には、高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、グリセリンの濃度を20%以下にすることが好ましい。このため、オゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈することが好ましい。 このような希釈剤としては、オゾンにより酸敗しにくいものが適しており、水、ワセリン、ポリエチレングリコールなどが適している。水を希釈剤とする場合は、純水または超純水を使用することが好ましい。水に不純物が混入していると、オゾンに酸化されて皮膚に刺激を与えたり薬効を低下させたりする酸化物(過酸化物)が生成される恐れがあるためである。 ワセリンを使用する場合は、不純物が少なく酸敗されにくい精製ワセリンを用いることが好ましい。不純物があるとオゾンに酸化されて皮膚に刺激を与えたり薬効を低下させたりする酸化物(過酸化物)が生成されるからである。このような精製ワセリンとしては、丸石製薬社製のプロペト(登録商標)や、日興リカ社製のサンホワイト(登録商標)等を用いることができる。 ポリエチレングリコールを使用する場合は、日本薬局方で定められたマクロゴール軟膏を用いることが望ましい。マクロゴール軟膏は、液体のマクロゴール400と固体のマクロゴール4000とをほぼ1:1で混合したものであるが、用途に応じて粘度を調整するために混合比を適宜変更してもよい。また、粘度を調整するために高分子剤を添加してもよい。マクロゴールには吸湿性があるため、グリセリンと混合することで保湿性が高い軟膏とすることができる。 これらの希釈剤でオゾン溶存グリセリン溶液を希釈したオゾン溶存混合溶液は、オゾン濃度が80ppm以上であることが好ましい。オゾン濃度が80ppm以上であれば、殺菌能力を発揮することができる。また、オゾン濃度が100ppm以上であれば、より殺菌能力を発揮することができる。さらに、オゾン濃度が500ppm以上であれば、創傷治癒効果を得ることができ、オゾン濃度が1000ppm以上であれば、後述するように、優れた創傷治癒効果を発揮することができる。 上記のオゾン溶存混合溶液もまた、−5℃以上10℃以下で冷蔵保存または−5℃以下で冷凍保存することで、オゾン溶存混合溶液から放出されるオゾンの量をさらに少なくすることができ、常温保存するよりもオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 また、オゾン溶存混合溶液も、オゾン溶存グリセリン溶液と同様に、冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とすることができる。オゾン溶存グリセリン固化物とした場合には、液体の状態よりもオゾンが放出されにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 濃グリセリンとオゾンとを気液接触させ、オゾン溶存グリセリン溶液を製造した。ここで、濃グリセリンとは、日本薬局方品の98%以上の濃度のグリセリンを意味する。 接触槽として、容量50Lのテフロン(登録商標)製タンクを用いた。タンクの底面に散気管を設置し、オゾンを微細な気泡としてタンク内に供給することができるようにした。オゾン発生装置には、90%以上の濃度の酸素を原料として毎時100gのオゾン発生能力を有する無声放電式オゾン発生装置を使用した。 タンクに22kgの濃グリセリンを入れ、オゾン発生装置に毎分20Lの酸素を送り込み、発生したオゾンを含む気体を散気管からタンク内に7日間放出し、終濃度3000ppmのオゾン濃度のオゾン溶存グリセリン溶液を得た。 得られたオゾン溶存グリセリン溶液を常温、冷蔵(約5℃)、冷凍(約−20℃)のいずれかで保存し、オゾン濃度の半減期を計測した。オゾン濃度の測定にはヨウ化カリウム適定法を用いた。 得られたオゾン溶存グリセリン溶液を常温で保存したところ、約6ヶ月でオゾン濃度が半減した。また、冷蔵時には、約16ヶ月でオゾン濃度が半減した。また、3年間冷凍保存したところ、オゾン濃度の変化率は98%であり、ほとんど変化しなかった。これは、冷凍することでオゾン溶存グリセリン溶液のグリセリンが結晶化したため、あるいは溶液全体の粘性が高くなったため、液体の状態よりもオゾンが放出されにくくなったと考えられる。 濃グリセリンから上記製造方法にて製造されたオゾン溶存グリセリン溶液(以下、オゾンジェルという)及びこれにマクロゴール軟膏を混合したオゾン溶存混合溶液(以下、オゾン軟膏という)と、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水と比較検討した。 〔実験材料〕 4週齢雄性Wistar系ラットを16匹、オゾン軟膏(VMC社製)、比較対照としてオゾンジェル(VMC社製)、強電解酸性ジェル(MIZ社製)、電解酸性機能水(OXILIZER(登録商標)、三浦電子社製)を用いた。 オゾン軟膏及びオゾンジェルは、ともにオゾンの溶存濃度が1000ppmに調整してあるものを用いた。強電解酸性ジェルはpH2.14、酸化還元電位463mV、有効塩素濃度0ppmのソフトタイプを用い、電解酸性機能水はpH2.14、酸化還元電位1157mV、有効塩素濃度37.33ppmに調整したものを用いた。 〔実験方法〕 エチルエーテルによりラットに麻酔を施した後、背部の皮膚をヒビテンにて消毒し剃毛した。その部位にデルマパンチ(スティーフェル・ラボラトリウム社製)を用いて、直径5mm、深さ約1mmの創傷部位を4箇所、作製した。各創傷部位に1日2回(AM9:00、PM9:00)、オゾン軟膏、オゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水をそれぞれ塗布した。 創傷部位作製1、3、5、7日目にラットの創傷部位の直径を計測し、その後直ちに屠殺し試料を採取した。なお、直径の計測は1つの少々部位につき4箇所で行い、その平均値を計測結果とした。 採取した試料をパラフィン包埋し、切片を作製した後、HE染色を施し、試料の上皮の再生度、肉芽組織の形成度を観察した。また、アザン染色を行い、創傷治癒過程における膠原繊維の増殖度を検討した。 〔結果及び考察〕<<肉眼的な観察>> <1日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では98.1%、強電解酸性ジェルでは93.5%、オゾンジェルでは98.0%、オゾン軟膏では94.3%であったが、有意差は認められなかった。 <3日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では82.5%、強電解酸性ジェルでは82.5%、オゾンジェルでは80.5%、オゾン軟膏では86.5%であったが、有意差は認められなかった。 <5日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では70.5%、強電解酸性ジェルでは66.5%、オゾンジェルでは63.5%、オゾン軟膏では63.0%であったが、有意差は認められなかった。 <7日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では57.5%、強電解酸性ジェルでは51.0%、オゾンジェルでは44.0%、オゾン軟膏では41.5%であった。電解酸性機能水とオゾン軟膏、電解酸性機能水とオゾンジェル、強電解酸性ジェルとオゾン軟膏の間に有意差が認められた。<<HE染色における組織学的観察>> <1日例、3日例> 明らかな差異は認められなかった。 <5日例> 3日例と比較し、電解酸性機能水では、肉芽組織の再生を認め、フィブリン層の吸収促進が見られた。強電解酸性ジェルでは、上皮下に炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織の形成が見られ、僅かではあるが創傷中心に向かう基底細胞の再生と繊維形成が認められた。オゾンジェルでは、炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織の形成、創傷部辺縁より上皮の再生が認められた。オゾン軟膏では、肉芽組織内の炎症性細胞浸潤がやや消退しており、比較的良好な上皮の再生が認められた。 <7日例> 電解酸性機能水では肉芽組織はやや消退し、郵送細胞の減少が見られた。強電解酸性ジェルでは上皮下の炎症細胞浸潤はほぼ消退し、線維性結合組織で形成され、毛細血管の形成が見られた。オゾンジェル、オゾン軟膏では、上皮下の炎症性細胞はほぼ消退しており、毛細血管の豊富な線維性結合組織が形成され、上皮の再生も良好であった。<<アザン染色における組織学的所見>> <1日例、3日例> 明らかな差異は認められなかった。 <5日例、7日例> 線維性結合組織の再生度は、オゾン軟膏、オゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水の順に良好であることが確認された。 以上の結果より、オゾン軟膏は、オゾンジェル、強電解酸性ジェルと比較して、肉眼的な観点からほぼ同様な治療経過を呈した。上皮の再生度についても、組織学的にはオゾン軟膏が最も良好で、次いでオゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水の順に良好であった。オゾン軟膏は強電解酸性ジェル、オゾンジェルのように創傷部への刺激がなく、塗布しやすい長所を有しているので、創傷部への治療薬として応用できる可能性が示唆された。 75%以上の非酸化のグリセリン溶液にオゾンが400ppm以上溶存していることを特徴とするオゾン溶存グリセリン溶液。 請求項1に記載のオゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合してなり、オゾンが80ppm以上溶存していることを特徴とするオゾン溶存混合溶液。 請求項1に記載のオゾン溶存グリセリン溶液の製造方法であって、75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させることを特徴とするオゾン溶存グリセリン溶液の製造方法。 請求項2に記載のオゾン溶存混合溶液の製造方法であって、請求項3に記載の製造方法で製造されたオゾン溶存グリセリン溶液と、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つとを混合し、攪拌することを特徴とするオゾン溶存混合溶液の製造方法。 非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を、冷蔵保存または冷凍保存することを特徴とするオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法。 非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を冷却し、固化させたことを特徴とするオゾン溶存グリセリン固化物。 【課題】殺菌効果及び創傷治癒効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間維持するとともに、有害な酸化物(過酸化物)が生じないオゾン溶存グリセリン溶液及びオゾン溶存混合溶液を提供する。【解決手段】75%以上の非酸化のグリセリン溶液にオゾンが400ppm以上溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液であるので、殺菌効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間保持することができる。また、オゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合することで、グリセリンの刺激性を抑えることができる。また、オゾン溶存グリセリン溶液に、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つを混合し、攪拌することで、酸化力の失われない、また有害な酸化物(過酸化物)を含まないオゾン溶存混合溶液を製造することができる。【選択図】なし


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特許公報(B2)_オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法

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タイトル:特許公報(B2)_オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法
出願番号:2004044088
年次:2011
IPC分類:A61K 33/00,A61K 8/22,A61K 8/34,A61K 9/06,A61K 9/08,A61K 47/10,A61P 17/00,A61P 17/02


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芝 ▲あき▼彦 塩田 剛太郎 JP 4677192 特許公報(B2) 20110204 2004044088 20040220 オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法 株式会社オゾテック 506129016 葛和 清司 100102842 芝 ▲あき▼彦 塩田 剛太郎 20110427 A61K 33/00 20060101AFI20110407BHJP A61K 8/22 20060101ALI20110407BHJP A61K 8/34 20060101ALI20110407BHJP A61K 9/06 20060101ALI20110407BHJP A61K 9/08 20060101ALI20110407BHJP A61K 47/10 20060101ALI20110407BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110407BHJP A61P 17/02 20060101ALI20110407BHJP JPA61K33/00A61K8/22A61K8/34A61K9/06A61K9/08A61K47/10A61P17/00 101A61P17/02 A61K 33/00 A61K 8/00 A61K 9/00 A61K 47/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平05−301819(JP,A) 特開平10−139645(JP,A) 寺門都愛 他,オゾンジェルを用いた創傷治癒促進効果について ,日本補綴歯科学会学術大会抄録集,2003年,Vol.110th,p.134 寺門都愛 他,オゾンジェルの創傷治癒に及ぼす影響について,日本口腔機能水学会誌,2003年,Vol.4, No.1,p.38-9 新實一仁 他,オゾンジェルの殺菌効果について ,昭和歯学会雑誌,2004年,Vol.24, No.2,p.103-109 寺門都愛,オゾンジェルの創傷治癒促進効果の病理組織学的研究,日本口腔機能水学会誌,2004年,Vol.5, No.1,p.7-15 2 2005232094 20050902 9 20070131 伊藤 基章 本発明は、オゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法に関する。 オゾンには強力な酸化作用があり、殺菌に役立つことが各種研究により実証されている。気体のオゾンの一般的な製造方法としては、空気に放電して一部をオゾン化する方法がある。 また、気体のオゾンの他に、オゾンを水に溶け込ませたオゾン水も利用されている。オゾン水の製造方法としては、空気を放電して製造したオゾンを何らかの方法で水に溶かし込む方法や、白金等のオゾン生成触媒機能を有する電極を用いて水を直接電気分解し、発生する酸素の一部をオゾン化し、即座に水に溶け込ませるものがある。 この他に、濃度0.01〜500ppmのオゾンを含む気体をオゾン発生器で発生させ、これを粘度が1〜106Pa・sの液体に溶解またはマイクロバブル化して封入したオゾン封入粘稠体が知られている。気体のオゾンやオゾン水には定着性がないため、用途が限られていたが、オゾン封入粘稠体により、クリームやペーストとして特定の部位に定着させオゾンを作用させることができる(特許文献1参照)。特開平10−139645号公報 ところで、オゾン封入粘稠体を実際に殺菌剤として使用する創傷部位には、オゾンを使用する被酸化物(有機物、血液等)が多数存在するため、高濃度のオゾンが溶存している必要があり、終濃度で80ppm程度のオゾン濃度が必要である。しかし、上記のオゾン封入粘稠体では、濃度0.01〜500ppmのオゾンを含む気体を、粘度が1〜106Pa・sの液体に溶解またはマイクロバブル化して封入するため、オゾンの終濃度が極めて低くなり、実用に適したものとなっていなかった。 また、オゾン封入粘稠体の製造直後のオゾン濃度が低い場合には、保管期間が長くなるとオゾン濃度が低下し、殺菌効果を維持することができなかった。また、粘稠体の種類によっては、オゾンに酸化されて有害な酸化物(過酸化物)が生じる恐れもあった。 本発明の課題は、殺菌効果及び創傷治癒効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間維持するとともに、有害な酸化物(過酸化物)が生じないオゾン溶存グリセリン溶液、オゾン溶存グリセリン固化物、オゾン溶存混合溶液、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法、オゾン溶存混合溶液の製造方法、及びオゾン溶存グリセリン溶液の保存方法を提供することである。 したがって本発明は、オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法であって、グリセリンの濃度が75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させ、オゾンを400ppm以上溶存させることを含む、前記製造方法に関する。 また本発明は、化粧水または美容液の製造方法であって、グリセリンの濃度が75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させ、オゾンを400ppm以上溶存させ、オゾン溶存グリセリン溶液を調製すること、該オゾン溶存グリセリン溶液に、希釈剤を混合して、グリセリンの濃度が20%以下であり、オゾン濃度が80ppm以上であるオゾン溶存混合溶液を調製すること、を含む、前記製造方法に関する。 本発明の一態様によれば、オゾン溶存グリセリン溶液であって、75%以上の非酸化のグリセリン溶液にオゾンが400ppm以上溶存していることを特徴とする。 かかる態様においては、高濃度で非酸化のグリセリンにオゾンが高濃度で溶存しているため、殺菌効果を発揮するのに充分なオゾン濃度を長期間保持することができる。 本発明の一態様によれば、オゾン溶存混合溶液であって、前記のオゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合してなり、オゾンが80ppm以上溶存していることを特徴とする。 高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、化粧水や美容液に利用する場合には、グリセリンの濃度を低下させる必要があるが、かかる態様においては、オゾン溶存グリセリン溶液を水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つと混合することで、グリセリンの刺激性を抑えることができる。また、オゾンが80ppm以上溶存しているため、充分な殺菌能力を発揮することができる。 なお、オゾンを水に溶解させた後にオゾン水にグリセリンを加えると、グリセリン濃度に依存して速やかに酸化力が消失するが、オゾンをグリセリンに溶存させた後にオゾン溶存グリセリン溶液を水で希釈しても酸化力が失われない。 また、ワセリンやポリエチレングリコールを高濃度のオゾンと気液接触させる場合には、有害な酸化物(過酸化物)が生じるが、高濃度のグリセリンに高濃度のオゾンを溶存させてから、ワセリンまたはポリエチレングリコールと混合する場合には、有害な酸化物(過酸化物)が生じない。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液に、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つを混合し、攪拌することで、酸化力の失われない、また有害な酸化物(過酸化物)を含まないオゾン溶存混合溶液を製造することができる。 本発明の一態様によれば、前記のオゾン溶存グリセリン溶液の製造方法であって、75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させることを特徴とする。 かかる態様においては、75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させることで、高濃度のグリセリンにオゾンを高濃度で溶存させたオゾン溶存グリセリン溶液を製造することができる。 本発明の一態様によれば、前記のオゾン溶存混合溶液の製造方法であって、前記の製造方法で製造されたオゾン溶存グリセリン溶液と、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれか1つとを混合し、攪拌することを特徴とする。 かかる態様においては、前記と同様の効果を得ることができる。 本発明の一態様によれば、オゾン溶存グリセリン溶液の保存方法であって、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を、冷蔵保存または冷凍保存することを特徴とする。 ここで、冷蔵保存とは、−5℃以上10℃以下で保存することであり、冷凍保存とは、−5℃以下で保存することである。なお、オゾン溶存グリセリン溶液のグリセリン濃度やオゾン濃度は任意である。 かかる態様においては、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を、冷蔵保存または冷凍保存することで、常温保存するよりもオゾン濃度を長期間、高濃度に維持することができる。 本発明の一態様によれば、オゾン溶存グリセリン固化物であって、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液を冷却し、固化させたことを特徴とする。 ここで、オゾン溶存グリセリン固化物は、冷却し、固化した状態のオゾン溶存グリセリン溶液であり、グリセリンが結晶化して固化していてもよいし、過冷却状態になり溶液全体の粘性が高くなって固化していてもよい。また、グリセリンが単独で固化していてもよいし、溶液を構成する他の成分とともに固化していてもよい。なお、オゾン溶存グリセリン溶液のグリセリン濃度やオゾン濃度は任意である。 かかる態様においては、非酸化のグリセリン溶液にオゾンが溶存しているオゾン溶存グリセリン溶液が冷却されて固化しているため、液体の状態よりもオゾンを放出しにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 本発明によれば、高濃度のグリセリン溶液に高濃度のオゾンを溶存させているため、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンの溶存濃度を、殺菌剤等に用いるのに充分な濃度で長期間維持することができる。 また、オゾン溶存グリセリン溶液を、水、ワセリン、ポリエチレングリコールのいずれかと混合するため、酸化力の失われない、また有害な酸化物(過酸化物)を含まないオゾン溶存混合溶液を製造することができる。 また、オゾン溶存グリセリン溶液を冷蔵保存または冷凍保存することで、常温保存するよりもオゾン濃度を長期間、高濃度に維持することができる。また、オゾン溶存グリセリン溶液を冷却して固化することで、液体の状態よりもオゾンが放出されにくくし、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のオゾン溶存グリセリン溶液は、高濃度のグリセリン溶液とオゾン濃度の高い気体とを気液接触させることで製造することができる。 オゾン濃度の高い気体は、例えば酸素ガスに無声放電することでオゾンを生成するオゾン発生装置で製造することができる。酸素ガスを用いる場合には、医療用の酸素ボンベを用いてもよいし、また酸素発生装置で製造された酸素ガスを用いてもよい。空気を用いると、窒素酸化物が生成される。空気を用いてオゾン濃度の高い気体を生成し、ヨウ化カリウム適定法でオゾン濃度を測定すると、ヨウ化カリウム消費量が見かけ上増加するが、これは窒素酸化物のためである。窒素酸化物は有害物質であるため、空気を用いる方法は実際の使用に適さない。 高濃度のグリセリン溶液としては、グリセリン濃度75%以上のグリセリン溶液を用いることができるが、日本薬局方品の84〜87重量%のグリセリンが好ましく、日本薬局方品のグリセリン濃度98%以上の濃グリセリンを用いることがより好ましい。また、濃度98.5%以上の精製グリセリンを用いることがさらに好ましい。グリセリン濃度が高いと、オゾンをより高濃度に溶存させることができるからである。 高濃度のグリセリン溶液とオゾン濃度の高い気体とを気液接触させる方法としては、例えばタンクに高濃度(例えば98%以上)のグリセリン溶液を入れ、散気管を用いてタンク内にオゾン濃度の高い気体を微細な気泡として放出する方法がある。例えば、オゾン濃度80g/kL(約37000ppm)の気体を濃グリセリン中に約7日間曝気することにより、オゾン濃度約3000ppmのオゾン溶存グリセリン溶液を製造することができる。 オゾンの終濃度はグリセリン濃度に依存して定まり、前述の方法の場合、グリセリン濃度75%ではオゾンの終濃度は約400ppm、グリセリン濃度85%ではオゾンの終濃度は約500ppm、グリセリン濃度90%ではオゾンの終濃度は約1000ppm、グリセリン濃度98%ではオゾンの終濃度は約3000ppmとなる。 最終的に得られるオゾン溶存グリセリン溶液は、グリセリン濃度75%以上でオゾン濃度400ppm以上であることが好ましく、グリセリン濃度80%以上でオゾン濃度500ppm以上であることがより好ましく、グリセリン濃度90%以上でオゾン濃度1000ppm以上であることがさらに好ましく、グリセリン濃度98%以上でオゾン濃度3000ppm以上であることが最も好ましい。グリセリンが高濃度であるほど、オゾンを高濃度にすることができ、殺菌効果及び創傷治癒効果を高めることができるとともに、オゾン濃度を長期間にわたり維持することができるからである。このように製造されたオゾン溶存グリセリン溶液は、オゾンの初期濃度が高濃度であり、後述するようにオゾン濃度の半減期が長くなり、殺菌剤として必要なオゾン濃度を長期間にわたり維持することができる。 また、オゾン濃度の半減期が長いことからわかるように、このオゾン溶存グリセリン溶液から放出されるオゾンの量は極めて少ない。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液の使用部位、到達部位においてオゾンを少しずつ長期間にわたり放出させることができる。また、放出されるオゾンの量が極めて少ないため、このオゾン溶存グリセリン溶液は、高濃度のオゾンが溶存しているのにもかかわらず、全くオゾン臭がしない。 なお、オゾン溶存グリセリン溶液を−5℃以上10℃以下で冷蔵保存または−5℃以下で冷凍保存することで、オゾン溶存グリセリン溶液から放出されるオゾンの量をさらに少なくすることができ、常温保存するよりもオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 特に、オゾン溶存グリセリン溶液を冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とした場合には、液体の状態よりもオゾンが放出されにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。ここで、オゾン溶存グリセリン固化物は、冷却し、固化した状態のオゾン溶存グリセリン溶液であり、グリセリンが結晶化して固化していてもよいし、過冷却状態になり溶液全体の粘性が高くなっていてもよい。また、グリセリンが単独で固化していてもよいし、溶液を構成する他の成分とともに固化していてもよい。 ここで、グリセリン濃度75%以上でオゾン濃度400ppm以上のオゾン溶存グリセリン溶液に限らず、任意の濃度のオゾン溶存グリセリン溶液が、冷蔵保存または冷凍保存することでオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とする場合も同様である。 なお、オゾンを濃グリセリンに溶存させることで、グリセリンが酸化されることも想定されるため、今回、原料グリセリン及びオゾン溶存グリセリン溶液の1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを計測し、比較した。その結果、原料グリセリンのスペクトルと、オゾン溶存グリセリン溶液のスペクトルとの間に差異はなく、グリセリンの酸化物は検出されなかった。したがって、濃グリセリンに高濃度のオゾンを溶存させても、グリセリンはオゾンにより酸化されないことがわかった。 また、気体のオゾンの自然半減期は2時間程度とされているが、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンの半減期は、後述するように、それよりもはるかに長いものであった。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液中のオゾンは気泡の状態で存在するのではなく、グリセリンに溶存しているものと推定される。実際にオゾン溶存グリセリン溶液を生成した直後には、多数の気泡を肉眼で観察できるが、数時間放置するとこれらの気泡は観察されなくなる。 なお、オゾン溶存グリセリン溶液は用途によってはそのまま使用することもできるが、化粧水や美容液に利用する場合には、高濃度のグリセリンには肌への刺激性があるため、グリセリンの濃度を20%以下にすることが好ましい。このため、オゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈することが好ましい。 このような希釈剤としては、オゾンにより酸敗しにくいものが適しており、水、ワセリン、ポリエチレングリコールなどが適している。水を希釈剤とする場合は、純水または超純水を使用することが好ましい。水に不純物が混入していると、オゾンに酸化されて皮膚に刺激を与えたり薬効を低下させたりする酸化物(過酸化物)が生成される恐れがあるためである。 ワセリンを使用する場合は、不純物が少なく酸敗されにくい精製ワセリンを用いることが好ましい。不純物があるとオゾンに酸化されて皮膚に刺激を与えたり薬効を低下させたりする酸化物(過酸化物)が生成されるからである。このような精製ワセリンとしては、丸石製薬社製のプロペト(登録商標)や、日興リカ社製のサンホワイト(登録商標)等を用いることができる。 ポリエチレングリコールを使用する場合は、日本薬局方で定められたマクロゴール軟膏を用いることが望ましい。マクロゴール軟膏は、液体のマクロゴール400と固体のマクロゴール4000とをほぼ1:1で混合したものであるが、用途に応じて粘度を調整するために混合比を適宜変更してもよい。また、粘度を調整するために高分子剤を添加してもよい。マクロゴールには吸湿性があるため、グリセリンと混合することで保湿性が高い軟膏とすることができる。 これらの希釈剤でオゾン溶存グリセリン溶液を希釈したオゾン溶存混合溶液は、オゾン濃度が80ppm以上であることが好ましい。オゾン濃度が80ppm以上であれば、殺菌能力を発揮することができる。また、オゾン濃度が100ppm以上であれば、より殺菌能力を発揮することができる。さらに、オゾン濃度が500ppm以上であれば、創傷治癒効果を得ることができ、オゾン濃度が1000ppm以上であれば、後述するように、優れた創傷治癒効果を発揮することができる。 上記のオゾン溶存混合溶液もまた、−5℃以上10℃以下で冷蔵保存または−5℃以下で冷凍保存することで、オゾン溶存混合溶液から放出されるオゾンの量をさらに少なくすることができ、常温保存するよりもオゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。 また、オゾン溶存混合溶液も、オゾン溶存グリセリン溶液と同様に、冷却してオゾン溶存グリセリン固化物とすることができる。オゾン溶存グリセリン固化物とした場合には、液体の状態よりもオゾンが放出されにくく、オゾン濃度をより長期間、高濃度に維持することができる。〔実施例1〕 濃グリセリンとオゾンとを気液接触させ、オゾン溶存グリセリン溶液を製造した。ここで、濃グリセリンとは、日本薬局方品の98%以上の濃度のグリセリンを意味する。 接触槽として、容量50Lのテフロン(登録商標)製タンクを用いた。タンクの底面に散気管を設置し、オゾンを微細な気泡としてタンク内に供給することができるようにした。オゾン発生装置には、90%以上の濃度の酸素を原料として毎時100gのオゾン発生能力を有する無声放電式オゾン発生装置を使用した。 タンクに22kgの濃グリセリンを入れ、オゾン発生装置に毎分20Lの酸素を送り込み、発生したオゾンを含む気体を散気管からタンク内に7日間放出し、終濃度3000ppmのオゾン濃度のオゾン溶存グリセリン溶液を得た。 得られたオゾン溶存グリセリン溶液を常温、冷蔵(約5℃)、冷凍(約−20℃)のいずれかで保存し、オゾン濃度の半減期を計測した。オゾン濃度の測定にはヨウ化カリウム適定法を用いた。 得られたオゾン溶存グリセリン溶液を常温で保存したところ、約6ヶ月でオゾン濃度が半減した。また、冷蔵時には、約16ヶ月でオゾン濃度が半減した。また、3年間冷凍保存したところ、オゾン濃度の変化率は98%であり、ほとんど変化しなかった。これは、冷凍することでオゾン溶存グリセリン溶液のグリセリンが結晶化したため、あるいは溶液全体の粘性が高くなったため、液体の状態よりもオゾンが放出されにくくなったと考えられる。〔実施例2〕 濃グリセリンから上記製造方法にて製造されたオゾン溶存グリセリン溶液(以下、オゾンジェルという)及びこれにマクロゴール軟膏を混合したオゾン溶存混合溶液(以下、オゾン軟膏という)と、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水と比較検討した。〔実験材料〕 4週齢雄性Wistar系ラットを16匹、オゾン軟膏(VMC社製)、比較対照としてオゾンジェル(VMC社製)、強電解酸性ジェル(MIZ社製)、電解酸性機能水(OXILIZER(登録商標)、三浦電子社製)を用いた。 オゾン軟膏及びオゾンジェルは、ともにオゾンの溶存濃度が1000ppmに調整してあるものを用いた。強電解酸性ジェルはpH2.14、酸化還元電位463mV、有効塩素濃度0ppmのソフトタイプを用い、電解酸性機能水はpH2.14、酸化還元電位1157mV、有効塩素濃度37.33ppmに調整したものを用いた。〔実験方法〕 エチルエーテルによりラットに麻酔を施した後、背部の皮膚をヒビテンにて消毒し剃毛した。その部位にデルマパンチ(スティーフェル・ラボラトリウム社製)を用いて、直径5mm、深さ約1mmの創傷部位を4箇所、作製した。各創傷部位に1日2回(AM9:00、PM9:00)、オゾン軟膏、オゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水をそれぞれ塗布した。 創傷部位作製1、3、5、7日目にラットの創傷部位の直径を計測し、その後直ちに屠殺し試料を採取した。なお、直径の計測は1つの少々部位につき4箇所で行い、その平均値を計測結果とした。 採取した試料をパラフィン包埋し、切片を作製した後、HE染色を施し、試料の上皮の再生度、肉芽組織の形成度を観察した。また、アザン染色を行い、創傷治癒過程における膠原繊維の増殖度を検討した。〔結果及び考察〕<<肉眼的な観察>><1日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では98.1%、強電解酸性ジェルでは93.5%、オゾンジェルでは98.0%、オゾン軟膏では94.3%であったが、有意差は認められなかった。<3日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では82.5%、強電解酸性ジェルでは82.5%、オゾンジェルでは80.5%、オゾン軟膏では86.5%であったが、有意差は認められなかった。<5日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では70.5%、強電解酸性ジェルでは66.5%、オゾンジェルでは63.5%、オゾン軟膏では63.0%であったが、有意差は認められなかった。<7日例> 創傷部位の直径の縮小率は、電解酸性機能水では57.5%、強電解酸性ジェルでは51.0%、オゾンジェルでは44.0%、オゾン軟膏では41.5%であった。電解酸性機能水とオゾン軟膏、電解酸性機能水とオゾンジェル、強電解酸性ジェルとオゾン軟膏の間に有意差が認められた。<<HE染色における組織学的観察>><1日例、3日例> 明らかな差異は認められなかった。<5日例> 3日例と比較し、電解酸性機能水では、肉芽組織の再生を認め、フィブリン層の吸収促進が見られた。強電解酸性ジェルでは、上皮下に炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織の形成が見られ、僅かではあるが創傷中心に向かう基底細胞の再生と繊維形成が認められた。オゾンジェルでは、炎症性細胞浸潤を伴う肉芽組織の形成、創傷部辺縁より上皮の再生が認められた。オゾン軟膏では、肉芽組織内の炎症性細胞浸潤がやや消退しており、比較的良好な上皮の再生が認められた。<7日例> 電解酸性機能水では肉芽組織はやや消退し、郵送細胞の減少が見られた。強電解酸性ジェルでは上皮下の炎症細胞浸潤はほぼ消退し、線維性結合組織で形成され、毛細血管の形成が見られた。オゾンジェル、オゾン軟膏では、上皮下の炎症性細胞はほぼ消退しており、毛細血管の豊富な線維性結合組織が形成され、上皮の再生も良好であった。<<アザン染色における組織学的所見>><1日例、3日例> 明らかな差異は認められなかった。<5日例、7日例> 線維性結合組織の再生度は、オゾン軟膏、オゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水の順に良好であることが確認された。 以上の結果より、オゾン軟膏は、オゾンジェル、強電解酸性ジェルと比較して、肉眼的な観点からほぼ同様な治療経過を呈した。上皮の再生度についても、組織学的にはオゾン軟膏が最も良好で、次いでオゾンジェル、強電解酸性ジェル、電解酸性機能水の順に良好であった。オゾン軟膏は強電解酸性ジェル、オゾンジェルのように創傷部への刺激がなく、塗布しやすい長所を有しているので、創傷部への治療薬として応用できる可能性が示唆された。 オゾン溶存グリセリン溶液の製造方法であって、グリセリンの濃度が75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させ、オゾンを400ppm以上溶存させることを含む、前記製造方法。 化粧水または美容液の製造方法であって、グリセリンの濃度が75%以上のグリセリン溶液に、オゾンを含むガスを気液接触させ、オゾンを400ppm以上溶存させ、オゾン溶存グリセリン溶液を調製すること、該オゾン溶存グリセリン溶液に、希釈剤を混合して、グリセリンの濃度が20%以下であり、オゾン濃度が80ppm以上であるオゾン溶存混合溶液を調製すること、を含む、前記製造方法。


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