タイトル: | 公開特許公報(A)_共凝集抑制剤 |
出願番号: | 2004041842 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K7/16 |
上村 隆明 荒 勝俊 JP 2005232057 公開特許公報(A) 20050902 2004041842 20040218 共凝集抑制剤 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 上村 隆明 荒 勝俊 7A61K7/16 JPA61K7/16 8 OL 7 4C083 4C083AC131 4C083AC132 4C083AD211 4C083AD212 4C083CC41 4C083EE32 4C083EE33 4C083EE34 本発明は、粘膜及び歯面での口腔内細菌の共凝集を抑制する共凝集抑制剤に関する。 歯周病は、病原性細菌の歯面への付着、定着により発症へと向かう口腔内感染症である。歯周病関連細菌の歯面への定着機構は、先ず、唾液の薄膜(ペリクル)によって覆われたエナメル質表面に、ストレプトコッカス オラリス、ストレプトコッカス サンガイス、ストレプトコッカス ゴードニィ、アクチノマイセス ナエスランディ等の初期定着細菌が吸着する。そして、これら初期定着細菌は増殖に伴って互いに共凝集(co-aggregation)を起こし、歯垢(プラーク)の形成を開始する。次いで、プラークの成熟化に伴い、微生物菌叢が通性嫌気性菌から偏性嫌気性菌へと遷移し、フソバクテリウム ヌクレアタムに代表される偏性嫌気性菌が初期定着細菌に共凝集する。そして、当該フソバクテリウム ヌクレアタムにアクチノバシルス アクノマイセテムコミタンス、ポルフィロモナス ギンギバリス、プレボテラ インターメディア等の歯周病関連細菌が共凝集し、定着すると考えられている。 斯かる共凝集は、細菌同士の非特異的静電気的相互作用やレクチン・レセプター型相互作用、粘着性多糖合成による付着作用、非特異性疎水的相互作用によって引き起こされるものであり、病原性細菌の歯面への定着においては、特に重要な役割を果たしている。 口腔内感染症の予防手段としては、従来から、病原性細菌の歯面への定着を阻害することが有力であると考えられており、例えば特定のアミノ糖を用いて口腔内細菌の共凝集を阻害し歯垢形成を抑制すること(例えば、特許文献1参照)、S.サンギスより単離されたオリゴ糖類を用いて歯垢の構築を阻害すること(例えば、特許文献2参照)、キサンタンガム、ガム・トラガカンス、グアーガム等を用いて細菌凝集を阻害すること(例えば、特許文献3参照)、等が報告されている。 一方、マンニトール及びパラチニットは、甘味料として食品等に用いられているが、これらが口腔内細菌の共凝集を抑制することは全く知られていない。特開平6−24948号公報米国特許第7,349,772号明細書米国特許第4,855,128号明細書 本発明は、粘膜や歯面での口腔内細菌の共凝集を抑制することによって口腔内病原細菌の歯面への付着・定着を防止することを目的とする。 本発明者らは、プラーク形成に関与する口腔内細菌の共凝集に着目し、共凝集を抑制する成分について検討したところ、マンニトール又はパラチニットが、フソバクテリウム ヌクレアタムと、それ以外の口腔内細菌との共凝集を抑制する作用があり、口臭、齲蝕及び歯周病関連細菌の歯面への付着・定着を防止することができ、歯周病関連疾患の予防・改善に有用であることを見出した。 すなわち、本発明は、マンニトール又はパラチニットを有効成分とするフソバクテリウム ヌクレアタムと他の口腔内細菌との共凝集抑制剤を提供するものである。 また本発明は、マンニトール又はパラチニットを口腔内に投与してフソバクテリウム ヌクレアタム属細菌と他の口腔内細菌との共凝集を抑制する方法を提供するものである。 本発明の共凝集阻害剤によれば、フソバクテリウム ヌクレアタムとその他の口腔内細菌の共凝集を抑制することができ、口臭原因細菌、齲蝕関連細菌、歯周病関連細菌等の口腔内病原細菌の歯面への付着を防止でき、口臭、齲蝕及び歯周病等の口腔内疾患を予防・改善することができる。 本発明において用いられるマンニトールとしては、D−マンニトールが好ましく、「マンニトール」(和光純薬工業)等の市販品を用いればよい。 パラチニットは、二糖類の糖アルコールであり、還元パラチノースとも言われ、α-D-グルコピラノシル-1,6-マンニトールおよびその異性体であるα-D-グルコピラノシル-1,6-ソルビトールの混合物である。 当該パラチニットは、シュークロースを原料とし、シュークロースを糖転移酵素によりパラチノースとした後に、水素添加反応させることによって得ることができるが、本発明においては、「粉末パラチニットPNP」(三井製糖)等の市販品を用いることもできる。 マンニトール又はパラチニットを有効成分とする本発明の共凝集抑制剤は、フソバクテリウム ヌクレアタム属細菌と他の口腔内細菌との共凝集を抑制するものであるが、これは、後記実施例に示すように、マンニトール及びパラチニットが、フソバクテリウム ヌクレアタムと齲蝕関連細菌等の口腔内病原細菌との共凝集を抑制し、マンニトールにあっては、更にフソバクテリウム ヌクレアタムと口腔内初期定着細菌(以下、「初期定着細菌」という)との共凝集をも抑制することに基づくものである。 一般に、口臭原因細菌、齲蝕関連細菌及び歯周病関連細菌等の口腔内病原細菌の歯面への付着・定着は、フソバクテリウム ヌクレアタムが初期定着細菌に付着した後に、フソバクテリウム ヌクレアタムと共凝集を起こすことによりなされると考えられていることから、フソバクテリウム ヌクレアタムと口腔内病原細菌との共凝集を直接抑制すること又はフソバクテリウム ヌクレアタムと初期定着細菌との共凝集を抑制することができれば、口腔内病原細菌の歯面への付着・定着を防止することが可能となる。 従って、上記共凝集抑制作用を有するマンニトール及びパラチニットを用いれば、口腔内病原細菌の歯面への付着・定着を防止でき、口臭、齲蝕及び歯周病等の歯周病関連疾患に対して予防・改善効果が期待できる。特に、マンニトールは、フソバクテリウム ヌクレアタムと口腔内病原細菌及び初期定着細菌の共凝集を共に抑制することから、特に好ましい。 ここで、口臭原因細菌としてはフソバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、齲蝕関連細菌としてはストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcusmutans)、ストレプトコッカス ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)等のミュータンス連鎖球菌、歯周病関連細菌としては、例えば、アクチノバシルス アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillusactinomycetemcomitans)等のアクチノバシルス属細菌、ポルフィロモナス ギンギバリス (Porphyromonasgingivalis)等のポルフィロモナス属細菌、プレボテラ インターメディア (Prevotella intermedia)等のプレボテラ属細菌他、バクテロイデス フォーサイサス(Bacteroidesfosythus)、トレポネーマ デンティコーラ(Treponema denticola)等が挙げられる。 また、初期定着細菌とは、プラーク形成において、唾液の薄膜(ペリクル)によって覆われたエナメル質表面に、最初に付着・凝集する口腔内細菌をいい、例えば、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス サンガイス(Streptococcussanguis)、ストレプトコッカス ゴードニィ(Streptococcus gordonii)等のストレプトコッカス属細菌、アクチノマイセス ナエスランディ(Actinomycesnaeslundii)等のアクチノマイセス属細菌等が挙げられる。 一方、フソバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)は、口臭、歯周炎及び急性壊死性潰瘍性歯肉炎局所での菌数増加が認められると同時に、プラーク形成において、上記初期定着細菌に付着する偏性嫌気性菌である。 マンニトール及びパラチニットは、共凝集抑制剤としてそのまま用いることもできるが、適当な薬学的使用可能な媒体で希釈調製して用いることもできる。 斯かる共凝集抑制剤中のマンニトール及びパラチニットの含有量は、製造上コストの点から0.001〜50重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、特に5〜10重量%が特に好ましい。実施例1(1)使用菌株 初期定着細菌(Streptococcus gordonii ATCC10558(Sg))と齲蝕原因菌(Streptococcussobrinus B13(SsB13))と口腔内細菌(Fusobacterium nucleatumATCC10953(Fn))を用いた。(2)培養及び洗浄 初期定着細菌及び齲蝕原因菌は、ブレインハートインフュージョンブロス(ベクトンディッキンソン社製)、Fusobacterium nucleatum(Fn)はGAMブイヨン(日水製薬株式会社)で37℃、10%CO2,10%H2,80%N2の条件下で対数増殖期から定常期まで培養し、5000rpm、5分遠心分離を行い集菌した。その後、CAバッファー(1mM Tris, 0.1mM CaCl2, 0.1mM MgCl2, 150mM NaCl, 0.02% NaN3, pH8.0)で3回遠心洗浄後(5000rpm,5分)、OD600nmで2.0に調製した。(3)共凝集測定法 96穴マイクロプレートにマンニトール(和光純薬工業)及びパラチニット(和光純薬工業)を最終濃度10%になるよう 60μL添加後、Fusobacteriumnucleatum(Fn)を 30μL分注攪拌し、初期定着細菌 若しくは齲蝕原因菌を30μL添加した。その後、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社製) を用い1分間隔で30分間吸光度(OD600nm)を測定し、吸光度の変化率Vmax(mOD/min)を計算し、素材の代わりにCAバッファーを添加したもののVmaxをコントロール(100%)とし、相対共凝集率を算出することにより共凝集反応を測定した。(4)結果 図1に示すとおり、マンニトールでは 16%、パラチニットでは71%となり、マンニトールとパラチニットに齲蝕原因菌とFusobacterium nucleatum(Fn)の共凝集抑制効果がみられた。 図2に示すとおり、マンニトールでは62%となり、マンニトールに初期定着菌とFusobacterium nucleatum(Fn)の共凝集抑制効果がみられた。図1は、FnとSsB13の共凝集抑制効果を示す図である。図2は、FnとSgの共凝集抑制効果を示す図である。 マンニトール又はパラチニットを有効成分とするフソバクテリウム ヌクレアタム属細菌と他の口腔内細菌との共凝集抑制剤。 他の口腔内細菌が齲蝕関連細菌である請求項1記載の共凝集抑制剤。 齲蝕関連細菌がストレプトコッカス属細菌である請求項2記載の共凝集抑制剤。 齲蝕関連細菌がストレプトコッカス ソブリヌスである請求項2記載の共凝集抑制剤。 マンニトールを有効成分とし、他の口腔内細菌が初期定着細菌である請求項1記載の共凝集抑制剤。 初期定着細菌がストレプトコッカス属細菌である請求項5記載の共凝集抑制剤。 初期定着細菌がストレプトコッカス ゴルドニーである請求項5記載の共凝集抑制剤。 マンニトール又はパラチニットを口腔内に投与してフソバクテリウム ヌクレアタム属細菌と他の口腔内細菌との共凝集を抑制する方法。 【課題】 粘膜や歯面での口腔内細菌の共凝集を抑制することによって口腔内病原細菌の歯面への付着・定着を防止し、口臭、齲蝕、歯周病関連疾患を予防・改善する剤を提供する。 【解決手段】 マンニトール又はパラチニットを有効成分とするフソバクテリウム ヌクレアタム属細菌と他の口腔内細菌との共凝集抑制剤。【選択図】なし