タイトル: | 公開特許公報(A)_水素化ホウ素イオン濃度の測定方法及び測定装置 |
出願番号: | 2004027414 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N27/30,G01N27/416 |
山村 祐司 李 洲鵬 須田 精二郎 JP 2005221271 公開特許公報(A) 20050818 2004027414 20040204 水素化ホウ素イオン濃度の測定方法及び測定装置 株式会社水素エネルギー研究所 595155978 長野計器株式会社 000150707 阿形 明 100071825 水口 崇敏 100095153 山村 祐司 李 洲鵬 須田 精二郎 7G01N27/30G01N27/416 JPG01N27/30 ZG01N27/46 351ZG01N27/46 361A 11 2 OL 13 本発明は、アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度を簡単かつ正確に測定しうる方法及びそれに用いる測定装置に関するものである。 水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)のような水素化ホウ素アルカリ金属は、水と反応して激しく水素を発生するが、アルカリ水溶液中では安定であるため、この水素化ホウ素アルカリ金属をアルカリ水溶液に溶解したものは、安定な水素供給剤として燃料電池(特許文献1参照)、電解電池(特許文献2参照)などに利用されており、本発明者も先に水素化ホウ素アルカリ金属を溶解したアルカリ水溶液と触媒とを組み合わせた制御可能な水素発生剤及びこれを用いた水素発生方法(特許文献3参照)、水素化ホウ素アルカリ金属のアルカリ水溶液を電解液及び燃料供給源として用いた高効率の液体燃料電池(特許文献4、特許文献5参照)を提案している。 ところで、このような水素化ホウ素アルカリ金属のアルカリ水溶液を燃料電池の液体燃料や水素発生剤として用いる場合、発電出力や水素発生量を制御するには、アルカリ水溶液中に含まれる水素化ホウ素イオン(BH4-)の濃度を正確に測定し、経時的に監視することが必要である。 これまでこの水素化ホウ素イオン濃度の測定は、ヨウ素の酸化剤としての性質を利用して、これを試薬として必要時にその都度アルカリ水溶液中に加え、その濃度変化を光学的手段で検知し、間接的に水素化ホウ素イオンを定量することにより行われていた。 しかし、この方法は、特殊な試薬を必要とする上に、間接的な手段なため定量に長時間を要し、かつ定量可能な濃度に制限がある(10-3mol/l以下)という欠点があり、またその都度試料を採取して回分的に定量しなければならないため、連続した経時的測定を行うことができないという欠点があった。 そのほか、還元剤の一般的な濃度測定には、還元剤とヨウ素酸カリウムの反応でヨウ素を生じさせ、次いでヨウ化カリウム、希硫酸を加え、デンプン溶液を指示薬として生じたヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法(酸化還元滴定)があるが、この一般的な方法では多数の試薬を使用するため、操作が複雑で時間がかかるだけでなく、その都度試料を採取する回分的定量であり、水素化ホウ素イオンの連続した経時的測定を行うことができないという欠点がある。 このような酸化還元滴定を簡便化した測定方法として、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を含む水溶液から一定量の試料を採取し、滴定操作の開始から終了までの被滴定液のpHをアルカリ性に保つのに十分なアルカリの存在下で、ヨウ素溶液を滴定液として用い、酸化還元電位差滴定することを特徴とする還元剤濃度の測定方法が提案され(特許文献6参照)、この方法は(1)一定量の試料採取、(2)アルカリ性溶液での希釈及び(3)ヨウ素溶液滴定の3工程のみなので、上記の一般的な酸化還元滴定に比べ工程数は少なく、また滴定終点の判定も容易であるという点で優れているが、この方法もまたその都度試料を採取する回分的定量であるので、前記一般的な方法と同様に、水素化ホウ素イオンの連続した経時的測定を行うことができないという欠点がある。 このように、従来の水素化ホウ素イオン測定方法では水素化ホウ素イオンの連続した経時的測定は不可能であり、そのため水素化ホウ素イオン濃度を十分に測定・監視して燃料電池等の発電出力や水素発生量を制御することはできなかった。 本発明者らは、このような従来の水素化ホウ素イオン濃度の測定方法がもつ欠点を克服し、改良するために鋭意研究を重ねた結果、先に水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に作用電極と参照電極とを対向して、かつカチオン交換膜を介して配置し、両者間の電位差を計測し、その計測値をあらかじめ既知の水素化ホウ素イオン濃度に基づいて作成した検量線と対比することにより、上記水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度に換算することにより、水素化ホウ素イオン濃度を簡単に測定する方法及びその方法を実施するための好適な装置を提案した(特許文献7参照)。 その測定方法によれば、特別の試薬を用いることなく単にアルカリ水溶液中に浸漬した電極間の電位差を測定するという簡単な操作によって、濃度的な制限なしに、しかも経時的に連続して、アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度を迅速に測定することができ、その結果、水素化ホウ素イオン濃度測定が燃料電池や水素発生装置の出力や水素発生量の制御用監視センサーシステムに初めて利用可能になった。 しかしながら、その後さらに研究を行ったところ、上記の水素化ホウ素イオン濃度の測定方法により経時的な測定を行っていると、電位差の測定値が不安定な挙動を示し、その結果、必ずしも正確な水素化ホウ素イオン濃度の測定値が得られず、そのため、燃料電池の場合、出力の安定性を維持できないことが分った。米国特許第5599640号明細書(特許請求の範囲その他)特表2000−502832号公報(特許請求の範囲その他)特開2001−19401号公報(特許請求の範囲その他)特開2002−246039号公報(特許請求の範囲その他)特開2003−132932号公報(請求項3その他)特開平7−83866号公報(特許請求の範囲その他)特願2002−359434号明細書(特許請求の範囲その他) 本発明は、このような事情に鑑み、アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度の計測を連続して行っても、計測電位差が不安定な挙動を示すことがなく、正確な測定が可能になる水素化ホウ素イオン濃度の測定方法及びその方法を実施するのに好適な水素化ホウ素イオン濃度測定装置を提供することを目的としてなされたものである。 本発明者らは、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に作用電極と参照電極とを対向して、かつカチオン交換膜を介して配置し、両者間の電位差を計測し、その計測値に基づいて水素化ホウ素イオン濃度を求める方法について種々検討した結果、その測定の間、特に高濃度の試料について測定する間に、作用電極の金属表面(以下、単に作用電極の表面ともいう)に微小気泡が発生し、その気泡が次第に大きくなり、そして径500μm以上の気泡に成長すると電位差測定値に重大な影響を与え、計測値が不安定になること、したがってこのような作用電極表面における発生気泡を速やかに除去すれば、電位差が安定し、それに基づいて求められる水素化ホウ素イオン濃度の正確な測定値が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。 すなわち、本発明は、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、両者間の電位差を計測し、その計測値をあらかじめ既知の水素化ホウ素イオン濃度に基づいて作成した検量線と対比することにより上記水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度に換算する測定方法であって、作用電極の表面における発生した気泡あるいは付着した気泡を除去しながら電位差を計測することを特徴とする水素化ホウ素イオン濃度の測定方法、及び水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、これらと共に回路を形成している電位差計測器からなり、かつ作用電極の表面に存在する気泡の除去手段を設けたことを特徴とする水素化ホウ素イオン濃度測定装置を提供するものである。 上記の作用電極表面に発生する気泡は、測定に供する水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に溶存している空気のような気体や、水素化ホウ素イオンが加水分解して生じる水素ガスに起因する。そして、この水素化ホウ素イオンは非常に加水分解しやすいため、水素化ホウ素イオンに対して不活性な白金、金、パラジウムのような金属を用いても、水素ガスの発生は避けることができない。 ところで、水素化ホウ素イオン濃度を作用電極の電位差の測定値より求める本発明方法は、以下の原理に基づくものである。 すなわち、一般に液間電位を補正した電池の起電力の値は、電池を構成している2個の電極系におけるそれぞれの平衡電極電位の代数和に等しい。 そして、各電極の電極電位ε(V)は、ネルンスト(Nernst)の式 ただし、 ε0=平衡電極電位(V) R=気体定数(JK-1mol-1) T=温度(K) F=ファラデー定数(Cmol-1) a=活量 z=電極反応において発生する電子数により与えられる。 この式において、活量aは濃度C(mol/l)の関数なので、a=yC(ただしyは活量係数)を代入すると、上記の式(1)は、式と書き換えることができる。 この式(2)に作用電極として金電極を用いたときにこの電極上で進行するイオン反応式 BH4- + 8OH- = BO2- + 6H2O + 8e-におけるε0=−1.24(V)を代入すると、作用電極における電極電位εは次のようになる。 この式(3)よりBH4-の割合の変化に伴い、εが変化することが解るので、εを測定することによりBH4-の測定が可能になる。 図1はこの電極系について、20℃におけるBH4-濃度変化に伴う電位の変化のシュミレーショングラフであるが、これにより濃度変化により電極電位が一定の変化を示すことが認められる。したがって、この事実より本発明方法が理論的に正しいことが分る。 次に本発明について詳細に説明する。 本発明方法によれば、アルカリ水溶液に含まれる水素化ホウ素イオンの濃度の変化に対応する電位差が得られるため、その電位差のみを測定することによって既知の水酸化ホウ素イオン濃度と電位差との相関(検量線)に基づき、水酸化ホウ素イオンの未知濃度を確認したり、あるいはセンサーシステムとして水素化ホウ素イオンを所望濃度に制御、監視することを容易に行うことができる。 本発明において測定しようとする試料は、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液であるが、この水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液としては、水素化ホウ素イオン(BH4-)を含有するアルカリ性水溶液であれば何れのものでもよい。特に、燃料電池の液体燃料や水素発生剤として用いられる水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液の測定に好適である。そして、これらの水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液は一般にアルカリ性物質を含むアルカリ性水溶液に水素化ホウ素イオン前駆物質を溶解させることにより調製されるものである。 上記のアルカリ性物質としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四アルキルアンモニウム化合物を挙げることができるが、特に水酸化リチウム液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。 このアルカリ性物質のアルカリ水溶液中の濃度は、水素化ホウ素イオンを安定化する濃度であれば特に制限はなく、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上の濃度で調製する。この濃度の上限は、アルカリ性物質の飽和濃度であるが、あまり高濃度にすると水素化ホウ素イオン前駆物質によっては溶解しにくくなるので、30質量%以下の範囲で選択するのが好ましい。例えば、水酸化ナトリウムの場合は8〜30質量%、水酸化カリウムの場合は10〜25質量%の範囲の濃度のものを用いれば水素化ホウ素イオン前駆物質をよく溶解し、しかも水素の発生が認められず、安定である。 水素化ホウ素イオン前駆物質としては、例えば水素化ホウ素金属化合物の1種であるテトラヒドロホウ酸塩を挙げることができる。このテトラヒドロホウ酸塩を水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液に溶解すると、その水溶液中に水素化ホウ素イオン(BH4-)を生成する。このようなテトラヒドロホウ酸塩の具体例としては、特に水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、水素化ホウ素マグネシウム(Mg[BH4]2)、水素化ホウ素カルシウム(Ca[BH4]2)、水素化ホウ素アルミニウム(Al[BH4]3)などを挙げることができる。 水素化ホウ素イオン濃度の測定可能な範囲は、特に制限はないが、テトラヒドロホウ酸塩を溶解したアルカリ水溶液の場合は概ね1×10-3〜5mol/lの範囲である。特に、NaBH4を溶解したアルカリ水溶液の場合には約1×10-3〜5mol/l、またKBH4を溶解した場合には約1×10-3〜2mol/lの濃度範囲内において安定かつ正確な測定値が得られる。 次に、本発明方法における電位差計測は、参照電極と作用電極を水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に配置し、両者間の電位差を計測することにより行われる。 この際の参照電極としては、従来電位差計測に際して、通常用いられている任意の参照電極を使用し得るが、特に銀−塩化銀電極が好ましい。 この電極は塩化カリウムや塩化ナトリウムを含む電解液に浸漬され、表面に塩化銀層が形成された銀線であるが、この電解液中に試料の水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液が混入すると、参照電極の劣化を生じる。 そこで、この混入を防ぐために、アルカリに対して耐食性のあるAl2O3、SiC又はZrO2を主成分とする多孔質セラミックスからなる隔壁を参照電極と作用電極の間に配置し、参照電極の電解液と試料との接触が行われるが、試料が電解液側に混入しにくい構成にするのが好ましい。なお、この多孔質セラミックスは、試料と電解液とが連絡されていなければならないので、セラミックス中の孔である空間が独立して存在するのではなく、連続空間(オープンポア)となっている、一般に5〜17%の吸水率を有するものを用いることが好ましい。すなわち、この吸水率が5%未満ではオープンポアを形成し難く、また17%を超えると液体が流通しやすくなり、アルカリが電解液に入ってしまう。この多孔質セラミックスは参照電極と一体化して用いることができる。 本発明における作用電極は、水素化ホウ素イオンに対して不活性な、すなわち水素発生触媒としての機能を有しない金属電極の中から任意に選んで用いることができる。このようなものとしては、例えば白金電極、金電極、パラジウム電極などがあるが、特に金電極が好ましい。 この作用電極の形状としては特に制限はなく、従来この種の用途に供されているものであればどのような形状のものでも用いることができる。 前述したように、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、両者の電位差から水素化ホウ素イオン濃度を求める方法においては、水素化ホウ素イオンに対して不活性な作用電極を用いた場合、特に高濃度の水素化ホウ素イオンを含む試料に対しては、作用電極表面に水素の気泡が発生することがある。また、試料中に溶存する気体や試料中で生成する気体が作用電極表面に微小気泡として付着し、それが計測中に次第に成長することが認められる。そして、この気泡の径が100μm以下の場合は特に測定値に悪影響を及ぼすことはないが、それ以上、特に500μm以上になると作用電極の表面が水素化ホウ素イオンと接触するのが妨げられるので、見掛け上の電極面積が小さくなり、また気泡の気体による影響もあり、電位の測定値に誤差を生じることとなる。 したがって、本発明方法においては、試料中における参照電極と作用電極との間の電位差を計測する間に作用電極表面で発生し、付着する気泡を継続的に抑制又は除去することが必要である。この気泡の付着を抑制するには、試料の水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液をあらかじめ減圧処理、超音波振動処理して、その中に溶存している気体を除去する。 また作用電極表面に付着した気泡を除去するには、その近傍で超音波振動を与え、表面に付着する気泡を常時離脱させる。この際、作用電極表面への気泡の付着防止や表面で発生する気泡の除去を容易にするために作用電極の作用面を電位差を測定しようとする試料すなわち水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液の液面に対し直角又は直角よりも大きい角度に傾斜させて配置するのが好ましい。このようにすると、気泡が計測に不利な径500μm以上に成長すると、自然に作用電極面から脱離させることができる。 上記の気泡除去に超音波振動を用いる場合は、通常の超音波発信器で用いるものと同じ種類、同じ条件のものが用いられる。例えば、超音波の発信周波数としては10〜500kHzの範囲内で超音波振動子の位置、脱気条件などを勘案して選ばれる。また、この際の超音波振動子の素材としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムなどを、好ましくは防水処理して用いる。この超音波振動は、事前に水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中から脱気する場合には有効な手段ではあるが、電位差計測中に発生する気泡を除去するには、超音波により振動、撹拌が起り、計測値が変動するのであまり好ましい手段とはいえない。 作用電極表面に気泡が付着するのを防止する手段としては、その他に、その表面を気泡が付着しにくい被膜でコーティングする方法がある。このようなコーティングとしては、例えばフッ素樹脂コーティング、ケイ素樹脂コーティングなどがある。本発明方法においては所望に応じこれらの手段を2種又はそれ以上組み合わせて用いることができる。 次に添付図面に従って、上記の方法を実施するのに好適な装置を説明する。 図2は、このような装置の1例を示す構成図であって、測定装置の液体収容部1に収容された水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液2の中に、作用電極4とともに少なくとも液絡部が浸漬するように参照電極3が対向して配置され、かつその作用電極4は先端の電極面(接液部)が液面に対して直角になるように横向きに配置されている。参照電極3はカチオン交換膜5と多孔質セラミックス6によって隔離され、参照電極3の周囲には電解液7がある。参照電極3と作用電極4とは、それぞれ導線によって電位差測定器、例えば電圧計8に接続し、これらで回路が形成されている。 また、図3は本発明装置の別の例であって、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に作用電極4を垂直に配置した例であり、先端の電極面が液面に対して平行に設けられている。 このように構成された装置により、所要のアルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン(BH4-)の濃度を測定するには、上記のケース1に、このアルカリ水溶液を満たし、電圧計8によりその電位差を表示面9により読み取り、あらかじめ作成された検量線と対比して対応する濃度を求める。 この際、電位差の測定値は、温度に影響されるので、定められた温度における検量線を用いることが必要である。通常、NaBH4の場合は、30〜50℃の範囲、KBH4の場合は20〜50℃の範囲で検量線との間の良好な対応が得られる。 このような本発明装置は、例えば燃料電池用の水素発生方法におけるセンサーとして使用するのに好適である。 図4は、本発明装置を組み入れた燃料電池用の水素発生システムの1例を示す工程図である。このシステムは、水素発生剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)のアルカリ水溶液(以下、NaBH4−アルカリ水溶液と記す)を貯留する貯留槽12と燃料電池21との間に水素発生反応器18が配設されて構成されている。この貯留槽12におけるNaBH4−アルカリ水溶液は、貯蔵槽10に粉状あるいはアルカリ性水溶液のスラリー状として貯蔵したNaBH4と貯槽11からのアルカリ性水溶液又は水とを混合して所定濃度に溶解して調製する。 次に、このような貯留槽12に調製され、循環液貯槽16を経て水素発生反応器18に供給される水素発生剤であるNaBH4−アルカリ水溶液について、作用電極と参照電極よりなる電位差測定器13を設置して、その電位差の測定により該アルカリ水溶液に含まれる水素化ホウ素イオン(BH4-)の濃度を確認するとともに、その制御装置14に連動した貯蔵槽10のNaBH4及び貯槽11のアルカリ性水溶液(又は水)を、それぞれ弁により流量を調節しながら混合して水素化ホウ素イオンを任意の所定濃度に調整する。そして、この貯留槽12と水素発生反応器18の間に接続された供給路を介して、貯留槽12から水素発生反応器18へ、水素発生剤であるNaBH4−アルカリ水溶液が供給される。 また、水素発生反応器18への水素発生剤の供給経路に図2に示した態様の電位差測定器13の設置により、アルカリ水溶液の電位差を安定に測定するとともに制御装置14に連動した弁を調節しながら、貯蔵槽10からの粉状NaBH4(又はそのスラリー状アルカリ水溶液)と貯槽11からのアルカリ性水溶液(又は水)を供給経路で合流して任意の所定濃度に混合すれば、貯留槽12を設ける必要がなく、そのままNaBH4−アルカリ水溶液を水素発生反応器18へ供給することもできる。 なお、水素発生剤の供給経路において循環液貯槽16の前には、ポンプ15及び流量計(図示せず)が設けられおり、弁と合わせてNaBH4−アルカリ水溶液の濃度調節手段を構成している。これはまた、水素発生反応器18へ供給するNaBH4−アルカリ水溶液の供給量調節手段としての機能も兼ねている。 水素発生反応器18においては、供給された水素発生剤のNaBH4−アルカリ水溶液を内設された触媒層と接触させることにより、下記式に示すような化学反応を起こして水素ガスを発生させ、水素ガスは気液分離器兼用回収槽19を通った後、水素ガス供給経路を介して燃料電池21の負極側へ導入される。 NaBH4 + 2H2O → NaBO2 + 4H2 水素ガスの供給経路には、水素ガスに含まれる水素以外の特にアルカリ分を除去するためのミスト分離器20、また圧力制御弁及び水素ガス流量計を設置して、水素発生器における水素発生剤の濃度調節手段、供給量調節手段、温度調節手段などの少なくとも1つを操作して水素ガスの供給量が制御される。 なお、燃料電池21には、別経路から空気が正極側へ導入され、その内部で水素発生反応器18から導入された水素と導入された空気中の酸素との反応により、電気エネルギーを発生させる。 他方、反応した水素発生剤のアルカリ水溶液は、水素発生反応器18から気液分離器兼用の回収槽19への管路に図2に示した態様の電位差測定器13´を設置することにより、その電位差を測定して残存する水素化ホウ素イオン濃度を正確に確認とともに、その制御装置14´と連動したポンプ17及び流量計(図示せず)により、水素発生反応器18への水素発生剤の濃度及び供給量、あるいは反応温度などの条件を調節しながら水素発生量を制御することができる。 さらには、上記反応式から明らかなように、反応して水素化ホウ素イオン濃度が低くなったアルカリ水溶液中にはNaBO2(メタホウ酸ナトリウム)が多量に含まれている。この化合物は、NaBH4よりも難溶解性である。そのため、気液分離器兼用回収槽19の液部は析出槽22に送られ適当な冷却手段によりNaBO2を析出・分離したのち、それぞれ必要に応じてアルカリ水溶液の貯槽11又はNaBH4−アルカリ水溶液の貯留槽12に循環して再利用される。 以上、本発明方法及び装置を燃料電池用の水素発生方法のシステムへの応用を例にして説明したが、本発明方法及び装置は、上記した燃料電池用の水素発生方法に限らず、水素化ホウ素ナトリウムを燃料として、NaBH4−アルカリ水溶液そのものを燃料電池の負極側に導入する燃料電池システムの態様にも適用することができるものである。 すなわち、上記水素発生方法におけると同様に、水素化ホウ素ナトリウムの貯蔵槽10とアルカリ性水溶液又は水の貯槽11、必要に応じてNaBH4−アルカリ水溶液の貯留槽12を用いて、それぞれ貯留槽12及び/又は供給経路に図2に示した態様で作用電極と参照電極の電位差測定器13を設置することにより、安定な電位差測定により水素化ホウ素イオン濃度を正確に確認することができるとともに、その制御装置14と連動したポンプ15及び流量計により燃料電池21へ直接導入するNaBH4−アルカリ水溶液の濃度及び/又は供給量を調節することができる。 なお、システムは作用電極表面の気泡除去方法を例として説明したが、図4に設置する電位差測定器13及び13´には、気泡除去方法に代えて、あるいはこれと併用して超音波振動法及び/又は撥水性電極を用いてもよい。 本発明方法によれば、アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度の計測を連続して行っても、計測電位差が不安定な挙動を示すことがなく、正確な水素化ホウ素イオン濃度の測定が可能になる。 また本発明装置によれば、アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度の計測を連続して行っても、計測電位差が不安定な挙動を示すことがなく、正確な水素化ホウ素イオン濃度の測定が可能であり、その計測値は水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液を利用するシステム等の制御値として有効に用いることができる。 次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。 10質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を溶解させて5mol/lの水酸化ホウ素ナトリウム含有アルカリ水溶液(以下、NaBH4−NaOH水溶液という)からなる被測定液を調製した。このNaBH4−NaOH水溶液に作用電極(Au)と参照電極(Ag/AgCl)を浸漬し、図2に示すように作用電極は先端の電極面が液面に対して直角に向けて設置した。作用電極としては、AUE金電極(BAS社製、直径6mm、作用接液部1.6mm)を使用した。そして、デジタルメーターにより、25℃で時間経過における両電極間の電位差を14時間連続して計測した。その結果を図5の(a)に示す。 この図5の(a)から、12時間を経過しても電位差が安定であり、水素化ホウ素イオン濃度を連続して正確に計測することができることが分る。比較例 図3に示すように作用電極を先端の電極面が液面に対して水平に向けた以外は実施例1と全く同様な被測定液、測定装置及び測定条件により両電極間の電位差を連続して計測した。その結果を図5の(b)に示す。 この図5の(b)から、12時間の経過後においても、電位が大きく変化していることが認められ、水素化ホウ素イオン濃度を正確に計測することができていないことが分る。また、比較例において、時間経過とともに作用電極面でH2ガス泡の発生・付着→泡径の成長→泡の分離が繰り返されている現象が観察された。電位を大きく変化させている作用電極面上の泡径はそのほとんどが500μm以上であった。本発明方法の基本原理に基づくBH4-濃度変化に伴う電位の変化のシュミレーショングラフである。本発明装置の1例を説明するための構成図である。比較例に用いた装置を説明するための構成図である。本発明装置を組み入れた燃料電池用の水素発生システムの1例を示す工程図である。実施例1及び比較例における経過時間と測定電位との関係を示すグラフである。符号の説明1 液体収納部2 水素化イオン含有アルカリ水溶液3 参照電極4 作用電極5 カチオン交換膜6 多孔質セラミックス7 電解液8 電圧計9 表示面10 NaBH4貯蔵槽11 アルカリ水溶液又は水の貯槽12 NaBH4アルカリ水溶液貯留槽13、13´ 電位差測定器14、14´ 制御装置15、17 ポンプ16 循環液貯槽18 水素発生反応器19 気液分離器兼用回収槽20 ミスト分離器21 燃料電池22 析出槽 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、両者間の電位差を計測し、その計測値をあらかじめ既知の水素化ホウ素イオン濃度に基づいて作成した検量線と対比することにより上記水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度に換算する測定方法であって、作用電極の表面における発生した気泡あるいは付着した気泡を除去しながら電位差を計測することを特徴とする水素化ホウ素イオン濃度の測定方法。 作用電極の表面に生成する気泡の径が500μm以上になるのを抑制して行う請求項1記載の水素化ホウ素イオン濃度の測定方法。 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液をあらかじめ脱気して用いることにより作用電極表面における気泡の付着を抑制する請求項1記載の水素化ホウ素イオン濃度の測定方法。 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、これらと共に回路を形成している電位差計測器からなり、かつ作用電極の表面に存在する気泡の除去手段を設けたことを特徴とする水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に作用電極の電極面を液面に対して直角又は直角より大きい角度で配置した請求項4記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 作用電極が撥水性の表面を有する請求項4又は5記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中の参照電極と作用電極の間に連続気孔をもつ多孔質セラミックスからなる液絡部を備えた請求項4ないし6のいずれかに記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中で連続気孔をもつ多孔質セラミックスとカチオン交換膜とを併用した請求項4ないし7のいずれかに記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 参照電極が銀−塩化銀電極及び電解液からなり、連続気孔をもつ多孔質セラミックスの材質がA12O3、SiC又はZrO2のいずれかを主成分とし、かつ吸水率が5〜17%である請求項4ないし8のいずれかに記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 作用電極が水素化ホウ素イオンに対して不活性な金属電極である請求項4ないし9のいずれかに記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 水素化ホウ素イオンに対して不活性な金属電極が金電極である請求項10記載の水素化ホウ素イオン濃度測定装置。 【課題】 アルカリ水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度の計測を連続して行っても、計測電位差が不安定な挙動を示すことがなく、正確な測定が可能になる水素化ホウ素イオン濃度の測定方法及びその方法を実施するのに好適な測定装置を提供する。【解決手段】 水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、両者間の電位差を計測し、その計測値をあらかじめ既知の水素化ホウ素イオン濃度に基づいて作成した検量線と対比することにより上記水溶液中の水素化ホウ素イオン濃度に換算する測定方法であって、作用電極の表面における発生した気泡あるいは付着した気泡を除去しながら電位差を計測する。またそれを実施する測定装置として、水素化ホウ素イオン含有アルカリ水溶液中に参照電極と作用電極とを配置し、これらと共に回路を形成している電位差計測器からなり、かつ作用電極の表面に存在する気泡の除去手段を設けたものを用いる。【選択図】 図2