生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アンドロゲン受容体結合阻害剤、養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤
出願番号:2004016284
年次:2010
IPC分類:A61K 31/352,A61K 36/75,A61P 5/28,A61P 13/08,A61P 17/08,A61K 8/49,A61K 8/97,A61Q 19/00,A61P 17/14,A61Q 7/00,C07D 311/32


特許情報キャッシュ

木曽 昭典 伊藤 洋子 大戸 信明 岸田 直子 JP 4585201 特許公報(B2) 20100910 2004016284 20040123 アンドロゲン受容体結合阻害剤、養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤 丸善製薬株式会社 591082421 早川 裕司 100108833 鈴木 啓靖 100112830 木曽 昭典 伊藤 洋子 大戸 信明 岸田 直子 20101124 A61K 31/352 20060101AFI20101104BHJP A61K 36/75 20060101ALI20101104BHJP A61P 5/28 20060101ALI20101104BHJP A61P 13/08 20060101ALI20101104BHJP A61P 17/08 20060101ALI20101104BHJP A61K 8/49 20060101ALI20101104BHJP A61K 8/97 20060101ALI20101104BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20101104BHJP A61P 17/14 20060101ALN20101104BHJP A61Q 7/00 20060101ALN20101104BHJP C07D 311/32 20060101ALN20101104BHJP JPA61K31/352A61K35/78 KA61P5/28A61P13/08A61P17/08A61K8/49A61K8/97A61Q19/00A61P17/14A61Q7/00C07D311/32 A61K 31/352 A61P 5/28 A61P 13/08 A61P 17/08 A61P 17/14 A61P 35/00 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−012472(JP,A) 特開2002−097115(JP,A) 特開平04−342517(JP,A) 米国特許第06239114(US,B1) 特開2004−067573(JP,A) Hien T. Le et al.,Plant-derived 3,3'-diindolylmethane is a strong androgen antagonist in human prostate cancer cells,J. Biol. Chem.,2003, 278(23), p.21136-21145 Todd A. Thompson et al.,Androgen antagonist activity by the antioxidant moiety of vitamin E, 2,2,5,7,8-pentamethyl-6-chromanol in human prostate carcinoma cells,Molecular Cancer Therapeutics,2003, 2, p.797-803 3 2005206546 20050804 12 20061031 早乙女 智美 本発明はアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、テストステロンの活性発現を阻害することができるアンドロゲン受容体結合阻害剤、並びにそのアンドロゲン受容体結合阻害剤を配合した養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤に関する。 多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、例えばテストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α−レダクターゼにより5α−ジヒドロテストステロン(以下「5α−DHT」という。)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。 上記アンドロゲンは重要なホルモンであるが、それが過度に作用すると、男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟などの様々な好ましくない症状を誘発する。 そこで、過剰のアンドロゲンの作用を抑制することによりこれら好ましくない症状を改善する手法が検討されている。具体的には、テストステロンから生じた5α−DHTが受容体と結合するのを阻害することによりアンドロゲン活性を発現させない方法などが提案されている。 そのためのアンドロゲン受容体結合阻害剤について種々の提案がなされている。例えば、ワンピ属ミカン科黄皮の葉の抽出物(特許文献1参照)、五斂子の葉部からの抽出物(特許文献2参照)、マジト及び/又はカチュアの抽出物(特許文献3参照)、藤茶の枝葉からの抽出物(特許文献4参照)などが提案されている。特開2001−226278号公報特開2002−241296号公報特開2002−241297号公報特開2002−308790号公報 しかしながら、上記抽出物においてアンドロゲン受容体の結合を阻害する具体的な化合物は未だ特定されておらず、更なるアンドロゲン受容体結合阻害効果を有する天然系のアンドロゲン受容体結合阻害剤が強く望まれているが、安全性、及び生産性に優れ、かつ安価でありながら高いアンドロゲン受容体結合阻害作用を有するアンドロゲン受容体結合阻害剤に対する需要者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。 そこで、本発明は、アンドロゲン受容体結合阻害物質を有効成分として含む新規なアンドロゲン受容体結合阻害剤、並びにそのアンドロゲン受容体結合阻害剤を含有する養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため、安全な数多くの植物類の中から、アンドロゲン受容体結合阻害効果を有するものについて鋭意研究を重ねた結果、特定の柑橘類からの抽出物、特にその中に含まれるノビレチンが高いアンドロゲン受容体結合阻害作用を有すること、そして、それらを有効成分とすることにより、男性ホルモン依存型の疾患である男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等の予防又は改善に有効なアンドロゲン受容体結合阻害剤、養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤が得られることを見出し、本発明をなすに至った。 すなわち、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、ポンカンからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とし、本発明の皮脂分泌抑制剤又は前立腺肥大抑制剤は、ポンカン抽出物を精製して得られるノビレチン精製物(以下単に「ノビレチン精製物」という場合がある。)又はポンカン抽出物を配合したことを特徴とする。 なお、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤の有効成分であるポンカン抽出物が、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有し、男性ホルモン依存型の疾患である多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等の予防又は改善に有効であることは全く知られておらず、このことは本発明の新知見である。 本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物が有するアンドロゲン受容体結合阻害作用により、男性ホルモン作用の発現の抑制に極めて有効なものである。 また、上記アンドロゲン受容体結合阻害剤を含有する本発明の養毛剤、皮脂分泌抑制剤及び前立腺肥大抑制剤は、男性ホルモン依存型の疾患である男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟などの予防又は治療に極めて有効なものである。 以下、本発明について詳細に説明する。〔アンドロゲン受容体結合阻害剤〕 本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、ノビレチン;八朔からの抽出物、温州ミカンからの抽出物、グレープフルーツからの抽出物、バレンシアオレンジからの抽出物、シークアーサーからの抽出物、ポンカンからの抽出物、レモンからの抽出物、マーコットからの抽出物及び不知火からの抽出物の群から選ばれた1種若しくは2種以上の柑橘類抽出物;又は当該柑橘類抽出物を精製して得られるノビレチン精製物を有効成分として含有するものである。 ここで、「アンドロゲン受容体結合阻害」とは、5α−DHTとアンドロゲン受容体との結合の阻害を意味し、その阻害様式は特に限定されるものではなく、例えば、競合的拮抗薬、非競合的拮抗薬といったアンタゴニストとしての阻害が考えられる。 また、「ノビレチン精製物」には、ノビレチンの粗精製物も含まれる。 ノビレチンは、ポリメトキシフラボノイドの一種であり、合成によって製造することもできるが、下記柑橘類から抽出・精製して得られるもの(粗精製物を含む。)を使用するのが好ましい。なお、ノビレチンの合成方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用することができる。 ノビレチンの原料となる柑橘類としては、八朔、温州ミカン、グレープフルーツ、バレンシアオレンジ、シークアーサー、ポンカン、レモン、マーコット及び不知火の1種又は2種以上を使用するのが好ましい。この場合におけるノビレチンは、2種以上の抽出原料を混合した上で、その混合された抽出原料を抽出処理により抽出し、該抽出処理による抽出物から精製したものであってもよく、さらに、1種の抽出原料からそれぞれ抽出処理により抽出された各抽出物を混合し、その混合物を精製したものであってもよい。 また、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤が有効成分とする特定柑橘類抽出物は、上記柑橘類を抽出原料として得られるものであり、抽出方法は特に限定されるものではない。 なお、本明細書において、「柑橘類抽出物」には、柑橘類を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。 本発明で使用する各柑橘類について以下説明する。<八朔> 八朔(学名:Citrus hassaku Hort.)は、和歌山県等で栽培されているみかん科の常緑高木である。その果皮は、芳香性の健胃薬として腹痛、膨満感、便秘等の治療又は予防に使用され、また、咳又は痰を鎮めるためにも使用される。<温州ミカン> 温州ミカン(学名:C.unshiu Marcov.)は、日本の中部、南部の暖地に広く栽培されているみかん科の常緑低木であり、その果皮は漢方に多用され、食欲不振、吐き気、瀉下、しゃっくり、胆石の治療又は予防に使用される。<グレープフルーツ> グレープフルーツ(学名:C.paradisii)は、アメリカ原産のみかん科の植物である。<バレンシアオレンジ> バレンシアオレンジ(学名:C.sinensis cv.Valencia)は、みかん科の植物であり、オレンジの中では最も産量が多く、世界各地で栽培されている。<シークアーサー> シークアーサー(学名:C.depressa Hayata)は、別名ヒラミレモンといわれ、沖縄原生のみかん科の植物である。<ポンカン> ポンカン(学名:C.reticulata Blanco)は、みかん科の常緑小高木であり、中国南部、台湾の他、インド、スリランカ、フィリピンなどで栽培され、日本においても鹿児島県、宮崎県、高知県などで栽培されている。<レモン> レモン(学名C.limon(Linn.)Burm.)は、みかん科の植物であり、殺菌・消毒作用を有することが知られている。<マーコット> マーコットは、みかんとオレンジとの交雑種の一種であるみかん科の植物である。アメリカのフロリダが発祥地であり、日本でも長崎県、熊本県、佐賀県等で栽培されている。<不知火> 不知火は、清見オレンジとポンカンとの交雑種であるみかん科の植物であり、熊本県、愛知県、鹿児島県、愛媛県等で栽培されている。不知火のうち、糖度13度以上、酸味1.0%以下のものをデコポン(登録商標)という。 以下、上記柑橘類を原料とするノビレチンの好ましい精製方法について説明する。 抽出原料として使用できる上記柑橘類の部位としては、例えば、果実、果皮、葉等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を抽出原料として使用することができるが、果実又は果皮を抽出原料として使用することが好ましい。果実としては、果皮を含む果実全体を使用することが好ましい。果実又は果皮としては、未熟な果実(摘果果実)又はその果皮及び成熟した果実又はその果皮のいずれを使用してもよい。抽出原料には、切断、破砕、乾燥等の前処理を行うことができる。 抽出溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等、親水性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができるが、中でも特にエタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液を用いるのが好ましい。そのエタノール水溶液において、エタノール濃度は0〜40容量%の範囲内で適宜変更することができる。 なお、エタノール濃度が0容量%のエタノール水溶液とは、水を意味する。水には、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、滅菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。 抽出処理は、上記柑橘類に含まれるノビレチンを抽出できる限り特に限定されず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の1〜20倍量(質量比)の抽出溶媒に抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で0.1〜3時間抽出した後、濾過して残渣を除去することにより、ノビレチンを含有する抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、常法に従って濃縮してもよい。また、得られた抽出液は、脱色等を目的として活性炭処理してもよい。ここで得られる抽出液は、本発明における「柑橘類抽出物」となり得る。 抽出原料をエタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液で抽出した場合、その処理の前又は後に、抽出原料を熱水で抽出することが好ましい。これにより、抽出原料からのノビレチン収率を向上させることができる。 熱水の温度は通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃である。エタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液で抽出する前に熱水で抽出する場合には、抽出原料を熱水で抽出し、濾過して、ノビレチンを含有する抽出液を得た後、残渣をエタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液で抽出し、濾過して、ノビレチンを含有する抽出液を得、両抽出液を混合する。エタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液で抽出した後に熱水で抽出する場合には、抽出原料をエタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液で抽出し、濾過して、ノビレチンを含有する抽出液を得た後、残渣を熱水で抽出し、濾過して、ノビレチンを含有する抽出液を得、両抽出液を混合する。 上記方法によって得られた抽出液、特にエタノール濃度が0〜40容量%のエタノール水溶液を用いて得られた抽出液又はその抽出液と熱水を用いて得られた抽出液との混合液は、多孔性吸着樹脂に通液してノビレチンを多孔性吸着樹脂に吸着させた後、多孔性吸着樹脂に吸着したそのノビレチンを溶出させるのが好ましい。 多孔性吸着樹脂は、ノビレチンを吸着し得る限り特に限定されるものではない。多孔性吸着樹脂としては、例えば、合成吸着樹脂、活性炭等が挙げられ、これらのうち1種類又は2種類以上を使用することができるが、合成吸着樹脂を使用することが好ましい。 上記抽出液は、濃縮した後に多孔性吸着樹脂に通液することが好ましい。これにより、多孔性吸着樹脂への通液時間を短縮することができる。濃縮は、減圧濃縮等の常法に従って行うことができ、通常3〜10倍、好ましくは4〜6倍に濃縮する。 抽出液の空間速度は通常0.1〜4、好ましくは0.8〜1.5である。なお、1時間当たり樹脂量の1倍量を通過させる速度を空間速度(Space Velocity;SV)=1とする。 上記抽出液を多孔性吸着樹脂に通液し、その多孔性吸着樹脂から流出してくる液には、多孔性吸着樹脂に吸着しなかったノビレチンが含まれている可能性があるので、これを回収しておくことが好ましい。 多孔性吸着樹脂に吸着したノビレチンを溶出させることができる溶媒としては、例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、イソプロパノール水溶液等が挙げられるが、これらのうちエタノール水溶液を使用することが好ましい。ノビレチンの溶出に使用するエタノール水溶液のエタノール濃度は、通常55〜95容量%、好ましくは60〜90容量%である。 多孔性吸着樹脂に吸着したノビレチンを溶出させる前に、多孔性吸着樹脂を洗浄し、多孔性吸着樹脂に吸着した、ノビレチン以外の成分を溶出させることが好ましい。多孔性吸着樹脂の洗浄液としては、例えば、水、エタノール水溶液、メタノール水溶液、イソプロパノール水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられるが、これらのうちエタノール水溶液を使用することが好ましい。多孔性吸着樹脂の洗浄に使用するエタノール水溶液のエタノール濃度は、通常10〜50容量%、好ましくは30〜50容量%である。 多孔性吸着樹脂からの溶出液を、減圧乾燥等の常法に従って乾燥することによりノビレチン粗精製物を得ることができる。多孔性吸着樹脂からの溶出液に、上記多孔性吸着樹脂洗浄液を混合し、この混合液を乾燥することによりノビレチン粗精製物を得ることもできる。 ノビレチン粗精製物には、通常、抽出原料に含まれるノビレチン以外のポリメトキシフラボノイド(例えば、タンゲレチン、ペンタメトキシフラボン、テトラメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボンなど)が含まれている。 上記柑橘類からの抽出物は、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有しており、特に上記ノビレチン粗精製物は、極めて高いアンドロゲン受容体結合阻害作用を有しており、そのままあるいは他の活性物質や成形助剤と共に、常法に従って製剤化して粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形として提供することができ、外皮用剤、内服液剤、内服固形剤、注射剤、座剤等として使用することができる。 得られた柑橘類抽出物又はノビレチン粗精製物を製剤化する場合、保存や取扱いを容易にするために、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容され得るキャリアーその他任意の助剤を添加することができる。 なお、本発明におけるアンドロゲン受容体結合阻害剤は、必要に応じて、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。この場合における配合割合の一例として、ノビレチン:天然抽出物=1:0.01〜1:5(質量比)を挙げることができる。 本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、有効成分であるノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物が有するアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、アンドロゲンの作用を抑制することができる。したがって、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、男性ホルモンが関与している各種疾患、例えば、男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等の予防又は治療に有用である。 また、これらの用途以外にも、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、5α−DHTとアンドロゲン受容体との結合を阻害することに意義あるすべての用途に用いることが可能である。〔養毛剤・皮脂分泌抑制剤〕 本発明の養毛剤及び皮脂分泌抑制剤は、上記アンドロゲン受容体結合阻害剤(ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物のみからなるものを含む。)を有効成分として含有するものである。 ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物は、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有しており、男性型禿頭、脂漏症等の疾患を予防及び/又は改善することができるとともに、頭髪又は外皮に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤としての養毛剤又は皮脂分泌抑制剤に配合するのに好適である。この場合、ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物をそのまま配合してもよいし、ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物から製剤化したアンドロゲン受容体結合阻害剤を配合してもよい。 本発明の養毛剤及び皮脂分泌抑制剤の形態は特に限定されないが、その具体例として、ヘアトニック、シャンプー、リンス、ローション、クリーム、乳液、パック、軟膏、浴用剤等、任意の形態が可能である。なお、皮脂分泌抑制剤は内服剤としても使用することができ、この場合の剤形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤等が可能である。養毛剤又は皮脂分泌抑制剤中における有効成分の配合量は、使用目的、性別、症状等を考慮して適宜調整することができるが、ノビレチンに換算して約0.0001〜10質量%である。 皮膚外用剤としての養毛剤及び皮脂分泌抑制剤は、上記アンドロゲン受容体結合阻害剤とともに、用途に応じた任意の生理活性物質や助剤、例えば収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等を併用すれば、より一般性のある製品となる。また、それにより、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。〔前立腺肥大抑制剤〕 本発明の前立腺肥大抑制剤は、上記アンドロゲン受容体結合阻害剤(ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物のみからなるものを含む。)を有効成分として含有するものである。 ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物は、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有しており、前立腺肥大症、前立腺腫瘍等の疾患を予防及び/又は改善することができるとともに、経口的に投与した場合の安全性に優れているため、内服剤としての前立腺肥大抑制剤に配合するのに好適である。この場合、ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物をそのまま配合してもよいし、ノビレチン、特定柑橘類抽出物又はノビレチン精製物から製剤化したアンドロゲン受容体結合阻害剤を配合してもよい。 本発明の前立腺肥大抑制剤は、一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品及び医薬品として利用することができる。それらにおける有効成分の配合量は、配合対象品の一般的な摂取量を考慮して、ノビレチンに換算して成人1日当たりの摂取量が約1〜1000mgになるようにするのが適当である。 本発明の前立腺肥大抑制剤は、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などに上記アンドロゲン受容体結合阻害剤を配合して製造することができ、このとき、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。 なお、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、所望の作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。例えば、本発明のアンドロゲン受容体結合阻害剤を、ドッグフード、キャットフードなどの愛玩動物や家畜の食餌に添加し、愛玩動物や家畜の脱毛を予防・治療することもできる。 以下、製造例、試験例及び配合例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の各例に何ら限定されるものではない。〔製造例1〕 ノビレチン粗精製物の製造 ポンカン摘果果実(果皮を含む果実全体)2500kgに抽出溶媒である30容量%エタノール(水とエタノールとの質量比7:3)50Lを加え、還流抽出器で80℃、2時間加熱抽出し、熱時濾過した。得られた抽出液を減圧下に濃縮し、さらに乾燥して抽出物(以下「ノビレチン粗精製物A」という。)を得た。得られたノビレチン粗精製物A中のノビレチン含量は0.08質量%であった。なお、ノビレチンの同定は、液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することにより行った(キャリアー:50%アセトニトリル(0.1%リン酸),検出波長:334nm,カラム:WAKOSIL−II 5C18HG(和光純薬株式会社製))。 上記ノビレチン粗精製物Aをカラムクロマトグラフィー(ダイヤイオンHP−20,三菱化学株式会社製)で処理した後、70質量%含水メタノールで溶出し、分画物を得た。得られた分画物を活性炭処理し、さらに減圧下に濃縮後、乾燥してノビレチン粗精製物(以下「ノビレチン粗精製物B」という。)1.3kgを得た。なお、ノビレチン粗精製物B中のノビレチン含量は45.6質量%であった。〔試験例1〕 アンドロゲン受容体結合阻害作用試験 製造例1で得られたノビレチン粗精製物について、下記の試験法によりアンドロゲン受容体結合阻害作用を試験した。 アンドロゲン依存性マウス乳癌細胞SC−3細胞を、2%FBS含有MEM培地(以下「MEM−2培地」という。)を用いて1.0×104cells/well/100μLの細胞密度にて96穴マイクロプレートに播種、37℃、5%CO2−95%airの下で培養した。24時間後、試料及び10−9モル濃度のDHTを添加した0.5%BSA含有HamF12+MEM培地(以下「HMB培地」という。)に培地を交換して48時間培養した。 その後、培地を0.97mM MTTを含むMEM−2培地に交換し、2時間培養後、培地をイソプロパノールに交換して細胞内に生成したブルーホルマザンを抽出した。抽出したブルーホルマザンを含有するイソプロパノールについて、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。 なお、付着細胞の影響を補正するため、同時に650nmの吸光度も測定し、両吸光度の差をもってブルーホルマザンの生成量に比例する値とした(下記結合阻害率の計算式における吸光度はこの補正済み吸光度である)。 上記と並行して、試料単独でSC−3細胞に及ぼす影響をみるため、HMB培地にDHTを添加せず試料のみを添加して、同様の培養と測定を行った。さらに、コントロールとして、試料及びDHTを添加しないHMB培地で培養した場合、及び試料を添加せずDHTのみを添加したHMB培地で培養した場合についても同様の測定を行った。 測定結果より、抗アンドロゲン作用を示す結合阻害率を次式により算出した。 結合阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100 上記式中、「A」はDHT添加・試料無添加の場合の吸光度を、「B」はDHT無添加・試料無添加の場合の吸光度を、「C」はDHT添加・試料添加の場合の吸光度を、「D」はDHT無添加・試料添加の場合の吸光度を表す。 次に、試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記阻害率の測定を行い、各濃度におけるアンドロゲンの結合阻害率(%)を求め、その結果から内挿法により、アンドロゲンの結合を50%阻害する試料濃度IC50(ppm;μg/mL)を求めた。結果を表1に示す。[表1] 試 料 50%阻害濃度(ppm;μg/mL) ノビレチン粗精製物A(0.08%) 50.0 ノビレチン粗精製物B(45.6%) 1.6 表1の結果から、ノビレチン粗精製物、特にノビレチン粗精製物Bには優れたアンドロゲン受容体結合阻害作用が認められた。このように、ノビレチン含量の増加に伴いアンドロゲンの結合を50%阻害する試料濃度IC50が減少していることから、ノビレチンが優れたアンドロゲン受容体結合阻害作用を有すると考えられる。〔試験例2〕 脱毛抑制作用試験 男性型脱毛症及び頭部脂漏性皮膚炎の症状を有する35歳から51歳までの男性10名を5人ずつの使用群と不使用群とに分け、使用群には普段使用しているヘアトニックにかえて、製造例1で得られたノビレチン粗精製物Bを0.2質量%含有する70%エタノール水溶液を3週間、1日2回朝と夜に使用させ、不使用群には普段使用しているヘアトニックにかえて、70%エタノール水溶液を同じ条件で使用させた。 試験開始日と試験終了日に同一条件で全員に洗髪させて、そのときの脱毛本数を計測した。なお、条件を揃えるため、これら脱毛本数計数のための洗髪の24時間前にも同一条件で洗髪させた。使用群の試験結果を表2に、不使用群の試験結果を表3に示す。[表2] 試験開始日 試験終了日 減少率(%) 被験者A 76本 55本 27.6 被験者B 65本 52本 20.0 被験者C 75本 44本 41.3 被験者D 80本 70本 12.5 被験者E 83本 68本 18.1 平均±SE 23.9±4.5[表3] 試験開始日 試験終了日 減少率(%) 被験者F 71本 68本 4.2 被験者G 77本 68本 11.7 被験者H 65本 57本 12.3 被験者I 69本 61本 11.6 被験者J 80本 76本 5.0 平均±SE 9.0±1.6 表2及び表3に示すように、使用群(表2)と不使用群(表3)には、脱毛減少率に顕著な相違があり、ノビレチン粗精製物を使用することにより、明らかに脱毛数の減少効果が認められ、ノビレチン粗精製物を配合した養毛剤を使用した場合には脱毛を防ぐことができることが確認できた。 なお、上記使用試験において、製造例1のノビレチン粗精製物Bを0.2質量%含有する70%エタノール水溶液の使用により、皮膚又は頭皮に対する刺激性や感作性は認められず、その副作用も認められなかった。〔配合例1〕 下記の原料をヘアトニック製造の常法により処理して、養毛ヘアトニックを製造した。ノビレチン粗精製物B(製造例1) 0.002質量部塩酸ピリドキシン 0.1質量部レゾルシン 0.01質量部D−パントテニルアルコール 0.1質量部グリチルリチン酸ジカリウム 0.1質量部1−メントール 0.05質量部1,3−ブチレングリコール 4.0質量部ニンジンエキス 0.5質量部エタノール 25.0質量部香料 適量精製水 70.0質量部〔配合例2〕 下記の原料をローション製造の常法により処理して、皮脂分泌抑制作用を有するローションを製造した。ノビレチン粗精製物B(製造例1) 0.001質量部グリチルリチン酸ジカリウム 0.2質量部1,3−ブチレングリコール 4.0質量部オレイルアルコール 4.0質量部ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.) 1.5質量部ポリオキシエチレンラウリルエーテル(20E.0.) 0.5質量部エタノール 15.0質量部防腐剤 適量香料 適量精製水 70.0質量部〔配合例3〕 下記の原料をクリーム製造の常法により処理して、皮脂分泌抑制作用を有するクリームを製造した。ノビレチン粗精製物B(製造例1) 0.01質量部ステアリルグリチルレチネート 0.1質量部ビーズワックス 10.0質量部セタノール 5.0質量部親水ラノリン 8.0質量部スクワラン 35.5質量部グリセリルモノステアレート 2.0質量部γ−オリザノール 0.05質量部精製水 40.0質量部ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.) 2.0質量部ポリエチレングリコール 0.5質量部防腐剤 適量香料 適量〔配合例4〕 下記の原料を飴製造の常法により処理して、前立腺肥大抑制作用を有する飴を製造した。ノビレチン粗精製物B(製造例1) 0.01質量部ショ糖 70質量部水飴 30質量部クエン酸 1質量部香料 0.1質量部〔配合例5〕 下記の原料をチューインガム製造の常法により処理して、前立腺肥大抑制作用を有するチューインガムを製造した。ノビレチン粗精製物B(製造例1) 1質量部チューインガムベース 70質量部ショ糖 54質量部水飴 20質量部軟化剤 4質量部香料(ハッカ油) 1質量部 なお、上記配合例1〜3による皮膚外用剤としての養毛剤及び皮脂分泌抑制剤並びに上記配合例4,5による食品は、いずれも良好な保存安定性を示した。 本発明に係るアンドロゲン受容体結合阻害剤は、男性型禿頭、多毛症、脂漏症、座瘡、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等の各症状の改善又は予防に、本発明に係る養毛剤は、男性型禿頭の改善又は予防に、本発明に係る皮脂分泌抑制剤は、脂漏症、座瘡等の改善又は予防に、本発明に係る前立腺肥大抑制剤は、前立腺肥大症、前立腺腫瘍等の改善又は予防に大きく貢献できる。 ポンカン抽出物を有効成分として含有することを特徴とするアンドロゲン受容体結合阻害剤(養毛及び育毛の用途を除く)。 ポンカン抽出物を精製して得られるノビレチン精製物又はポンカン抽出物を配合したことを特徴とする皮脂分泌抑制剤。 ポンカン抽出物を精製して得られるノビレチン精製物又はポンカン抽出物を配合したことを特徴とする前立腺肥大抑制剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る