タイトル: | 特許公報(B2)_糸球体疾患治療剤 |
出願番号: | 2003579874 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/472,A61K 31/495,A61K 31/519,A61K 31/551,A61P 13/12 |
中川 隆 豊泉 さや香 伊菅 昌子 JP 4287750 特許公報(B2) 20090403 2003579874 20030328 糸球体疾患治療剤 興和株式会社 000163006 日産化学工業株式会社 000003986 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 浅野 康隆 100089048 的場 ひろみ 100101317 中川 隆 豊泉 さや香 伊菅 昌子 JP 2002092238 20020328 20090701 A61K 31/472 20060101AFI20090611BHJP A61K 31/495 20060101ALI20090611BHJP A61K 31/519 20060101ALI20090611BHJP A61K 31/551 20060101ALI20090611BHJP A61P 13/12 20060101ALI20090611BHJP JPA61K31/472A61K31/495A61K31/519A61K31/551A61P13/12 A61K 31/472 A61K 31/495 A61K 31/519 A61K 31/551 A61P 13/12 CA(STN) REGISTRY(STN) 特表2001−519388(JP,A) 特開平09−323940(JP,A) 特開昭63−119422(JP,A) OGAWA,SHIGENAO,JOURNAL OF LABORATORY AND CLINICAL MEDICINE,1982年,Vol.99,No.3,P.428-441 6 JP2003003995 20030328 WO2003082338 20031009 7 20050916 岩下 直人 技術分野本発明は糸球体疾患の予防又は治療剤に関する。背景技術腎臓の糸球体に病変を起こした糸球体疾患(原発性糸球体腎炎)は、臨床的に溶連菌感染後急性腎炎、半月体形成性腎炎(急速進行性腎炎)、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性腎炎、巣状糸球体硬化症及び微小変化型ネフローゼの7つに分類される。これらのうち、溶連菌感染後急性腎炎、半月体形成性腎炎及び微小変化型ネフローゼを除く各疾患は一般的に慢性糸球体腎炎と呼ばれ、その発症の原因及び時期は比較的不明瞭な場合が多く、またその多くの障害過程は進行性で最終的には腎不全に至るものが多い。斯かる糸球体疾患を根本的に治癒する薬剤は未だ見出されておらず、薬物療法による透析移行への抑制又は遅延を目的として、ステロイド剤、抗血小板剤、抗凝固剤、免疫抑制剤等の薬剤が使用されているのが現状である。このうち、抗血小板剤には、血小板からのトロンボキサンA2、ヒスタミン、白血球遊走因子、サイトカイン、増殖因子等の各種メディエーターの放出抑制作用があるので、本薬剤を用いることで各種メディエーターによって引き起されるメサンギウム細胞の増殖や糸球体係蹄壁におけるバリアー機構の破綻等による糸球体疾患の進展増悪が抑制できるものと考えられている(Cameron JS et al.:Coagulation and thromboembolic complications in the nephrotic syndrome.Adv Nephrol 13:75,1984)。また、腎疾患においては、高脂血症の程度とタンパク尿や腎機能の悪化の程度とは統計学的に相関することが報告されており、高脂血症という腎疾患の増悪因子を除外する目的から、HMG−CoA還元酵素阻害剤等の高脂血症治療剤も腎疾患の治療に使用されている。しかしながら、抗血小板剤や高脂血症治療剤等を使用した場合の腎疾患改善効果には限界があり、決して十分なものではない。本発明は、糸球体疾患の予防又は治療に優れた効果を発揮する薬剤を提供することを目的とする。発明の開示本発明者らは、斯かる実情に鑑み鋭意研究した結果、抗血小板剤と高脂血症治療剤であるHMG−CoA還元酵素阻害剤を組み合わせて使用した場合に、それぞれを単独で使用した場合に比べて顕著な腎炎治療効果を示し、糸球体疾患の予防又は治療剤として有用であることを見出した。すなわち本発明は、抗血小板剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤を有効成分とする糸球体疾患の予防又は治療剤を提供するものである。また本発明は、抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤並びに薬学的に許容される担体を含有する糸球体疾患の予防又は治療のための医薬組成物を提供するものである。また本発明は、糸球体疾患の予防又は治療剤を製造するための抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤の使用を提供するものである。更に本発明は、抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤を投与することを特徴とする糸球体疾患の処置方法を提供するものである。発明を実施するための最良の形態本発明の抗血小板剤とは、血小板の粘着凝集を阻害する薬物をいい、例えばチクロピジン、シロスタゾール、オザグレル、ベラプロスト、サルボグレラート、ジピリダモール、アルガトロパン、アスピリン、ジラゼプ、イコサペント酸エチル、リマプロストアルファデックス、アルプロスタジル、アルプロスタジルアルファデクス、トリメタジジン、トラピジル、クロピドグレル(特開昭54−955号公報)、CS−747(特許第2683479号公報)、AT1015(特開平8−3135号公報)、SR−46349(特許第2562503号公報)及びそれらの塩等が挙げられ、このうちジラゼプ、ジピリダモール、トリメタジジン、トラピジル及びそれらの塩等のアデノシン増強作用又はホスホリパーゼ阻害作用を有するものが好ましく、特にジラゼプ及びその塩(塩酸塩等)が好ましい。本発明のHMG−CoA還元酵素阻害剤は、コレステロール合成阻害活性を有し、抗高脂血症治療剤として知られている所謂スタチン系化合物のすべてを包含するものである。好ましくは3,5−ジヒドロキシヘプタン酸又は3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸構造を有する化合物、具体的には特開昭57−2240号公報、特開昭57−163374号公報、特開昭56−122375号公報、特表昭60−500015号公報、特開平1−216974号公報、特開平3−58967号公報、特開平1−279866号公報、特開平5−178841号公報等に記載されている化合物が挙げられ、ラクトン体及びラクトン開環体又はその塩のいずれも包含される。また、これらの化合物及びその塩の水和物や医薬品として許容される溶媒との溶媒和物、更にこれらの化合物に不斉炭素原子が存在する場合及び不飽和結合を有しその立体異性体が存在する場合には、それら全ての異性体を包含するものである。好適なHMG−CoA還元酵素阻害剤としては、例えばプラバスタチン(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[(1S,2S,6S,8S,8aR)−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(S)−2−メチルブチリルオキシ]−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフチル]ヘプタン酸、特開昭57−2240号公報)、ロバスタチン((+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−3,7−ジメチル−8−[2−[(2R,4R)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル (S)−2−メチルブチレート、特開昭57−163374号公報)、シンバスタチン((+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−3,7−ジメチル−8−[2−[(2R,4R)−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブチレート、特開昭56−122375号公報)、フルバスタチン((±)−(3R*,5S*,6E)−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、特表昭60−500015号公報)、セリバスタチン((+)−(3R,5S,6E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−2,6−ジ−(1−メチルエチル)−5−メトキシメチルピリジン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、特開平1−216974号公報)、アトルバスタチン((3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、特開平3−58967号公報)、ピタバスタチン((3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−3−キノリル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、特開平1−279866号公報)、ロスバスタチン(7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチル−N−メチルスルホニルアミノ)ピリミジン−5−イル]−(3R,5S)−ジヒドロキシ−(E)−6−ヘプテン酸、特開平5−178841号公報)及びそれらの塩等が挙げられる。このうち、更にアトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン及びそれらの塩が好ましく、特にピタバスタチン及びその塩(ナトリウム塩、カルシウム塩等)が好ましい。上記抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤は、上記の公開特許公報に記載の方法他、公知の方法により製造することができる。本発明の薬剤は、上記抗血小板剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤とを組み合わせて用いるものであり、後記実施例に示すように、糸球体疾患モデルである進行性抗Thy−1腎炎ラットにおいて、抗血小板剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤をそれぞれ単独で投与した場合と比較して、尿中総タンパク排泄量が顕著に抑制する作用を有する。従って、本発明の薬剤は、動物の糸球体疾患の予防又は治療、とりわけヒトを含む哺乳動物の糸球体疾患の予防又は治療に有効である。そのような糸球体疾患の例としては、IgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性腎症及び膜性増殖性腎炎等の慢性糸球体腎炎等が挙げられる。本発明の糸球体疾患の予防又は治療剤における抗血小板剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤の使用形態は特に限定されるものではなく、両薬剤を同時に投与することでも、間隔を置いて別々に投与することでもよい。すなわち、抗血小板剤とHMG−CoA還元酵素阻害剤とを、製剤学的に許容され得る希釈剤、賦形剤等と共に混合して単一製剤とすること、或いは両薬剤を別々に製剤化しセット(キット)とすることでもよい。尚、両薬剤を別々の製剤とする場合にはそれぞれ異なった剤形としてもよい。本発明の糸球体疾患の予防又は治療剤は、用法に応じ種々の剤形の医薬品製剤とすることができ、斯かる剤形としては例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤等を挙げることができる。これらの製剤は、その剤形に応じて製剤学的に許容される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解し、常法に従い製造することができる。例えば、散剤は、有効成分(抗血小板剤及び/又はHMG−CoA還元酵素阻害剤)を必要に応じて適当な賦形剤、滑沢剤等を加えよく混和して調製すればよく、錠剤は、必要に応じて適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を加え、常法に従い打錠して調製すればよい。また錠剤は必要に応じてコーティングを施し、フィルムコート錠、糖衣錠等にすることができる。また注射剤は、液剤(無菌水又は非水溶液)、乳剤及び懸濁剤の形態とすることができ、これらに用いられる非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機酸エステルが挙げられる。また、該組成物には防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の補助剤を適宜配合することができる。本発明の糸球体疾患の予防又は治療剤における抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤の含量は製剤により適宜選択すればよいが、例えば抗血小板剤については、約1〜50質量%、好ましくは約10〜50質量%であり、HMG−CoA還元酵素阻害剤については、約0.1〜10質量%、好ましくは約0.5〜5質量%である。本発明においては、上述したように抗血小板剤及びHMG−CoA還元酵素阻害剤とが別途製剤化されたものを、同時に又は時間差をおいて投与することができるが、この場合、各成分の投与回数は異なってもよい。本発明糸球体疾患の予防又は治療剤の投与量は、糸球体疾患の種類及び症状によって適宜に選択されるが、抗血小板剤については、1日あたり1〜1000mg、好ましくは10〜500mgを投与し、HMG−CoA還元酵素阻害剤については、1日あたり、0.1〜100mg、好ましくは1〜50mgを投与する。この量を1日1回から数回に分けて投与することができる。実施例以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例1 進行性抗Thy−1腎炎ラットに対する薬理試験Wistar雌性ラット(5週齢、日本エスエルシー社から購入)を4日間検疫馴化させ実験に供した。はじめに、ラットをペントバルビタール麻酔下で右背側部より右腎を摘出した。2週間経過後に抗Thy−1抗体(モノクローナル抗体1−22−3;(株)パナファームラボラトリーズより購入)を尾静脈内投与(500μg/個体)することにより進行性の腎障害を惹起させ、直ちに下記の試験1〜3を行った。試験1:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁したピタバスタチンカルシウム(10mg/kg、N=7)を10週間連続経口投与した。対照群(抗体処置及び化合物非投与群):N=8、抗体未処置群:N=6。試験2:生理食塩水に溶解した塩酸ジラゼプ(10mg/kg)を10週間連続腹腔内投与した。対照群(抗体処置及び化合物非投与群):N=8、抗体未処置群:N=6。試験3:0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁したピタバスタチンカルシウム(5mg/Kg、N=10)を経口投与した後、直ちに、生理食塩水に溶解した塩酸ジラゼプ(5mg/Kg、N=10)を腹腔内投与することによる2薬剤の併用投与を10週間行った。対照群(抗体処置及び化合物非投与群):N=10、抗体未処置群:N=6。各試験とも、10週間薬剤投与後に、メタボリックケージ((株)杉山元社製)で18時間採尿し、尿中総タンパク排泄量の測定を行った。その結果を図1〜3に示す。ピタバスタチンカルシウム(10mg/kg)10週間投与後の尿中総タンパク排泄量は、対照の化合物非投与群とほぼ同程度で、ピタバスタチンカルシウムの効果は認められず(図1)、また、塩酸ジラゼプ(10mg/kg)10週間投与後の尿中総タンパク排泄量も、対照の化合物非投与群とほぼ同程度で、塩酸ジラゼプの効果は認められなかった(図2)。これに対し、ピタバスタチンカルシウム(5mg/kg)及び塩酸ジラゼプ(5mg/kg)10週間併用投与後の尿中総タンパク排泄量は、対照の化合物未処置群と比較して、有意な抑制が認められた(図3)。製剤例1 錠剤1錠当たり下記組成を有する錠剤を、以下の方法で製造した。ピタバスタチンカルシウムからヒドロキシプロピルセルロースまでを混合し、均質な粉末混合物を調製し、精製水を適量加え攪拌造粒法にて顆粒化して打錠顆粒とした。この打錠顆粒にステアリン酸マグネシウムを混合して打錠して、ピタバスタチンカルシウム及び塩酸ジラゼプを含有する錠剤を得た。産業上の利用可能性本発明の糸球体疾患の予防又は治療剤は、IgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性腎症及び膜性増殖性腎炎などの慢性糸球体腎炎を始め、各種糸球体疾患の予防及び治療に有用である。【図面の簡単な説明】図1は、ピタバスタチンカルシウムを単独投与した場合の尿中総タンパク排泄量を示す図である。図中の各値は平均値±標準誤差を示す。図2は、塩酸ジラゼプを単独投与した場合の尿中総タンパク排泄量を示す図である。図中の各値は平均値±標準誤差を示す。図3は、ピタバスタチンカルシウム及び塩酸ジラゼプを併用投与した場合の尿中総タンパク排泄量を示す図である。図中の各値は平均値±標準誤差を示す。 ジラゼプ、ジピリダモール、トリメタジジン及びトラピジル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる抗血小板剤とピタバスタチン又はその塩とを有効成分とする糸球体疾患の予防又は治療剤。 抗血小板剤がジラゼプ及びジピリダモール並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる請求項1記載の糸球体疾患の予防又は治療剤。 抗血小板剤とピタバスタチン又はその塩とを単一製剤中に含有する請求項1又は2記載の糸球体疾患の予防又は治療剤。 抗血小板剤とピタバスタチン又はその塩とを別々の製剤として含有するキットである請求項1又は2記載の糸球体疾患の予防又は治療剤。 ジラゼプ、ジピリダモール、トリメタジジン及びトラピジル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる抗血小板剤、ピタバスタチン又はその塩、並びに薬学的に許容される担体を含有する糸球体疾患の予防又は治療のための医薬組成物。 抗血小板剤がジラゼプ及びジピリダモール並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる請求項5記載の医薬組成物。