タイトル: | 特許公報(B2)_生体試料中補酵素A類の測定方法 |
出願番号: | 2003578913 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 27/62,G01N 30/04,G01N 30/06,G01N 30/26,G01N 30/50,G01N 30/60,G01N 30/72,G01N 30/34,G01N 30/86 |
酒井 満 杉本 圭則 JP 3780283 特許公報(B2) 20060310 2003578913 20030324 生体試料中補酵素A類の測定方法 帝人株式会社 000003001 三原 秀子 100099678 酒井 満 杉本 圭則 JP 2002082821 20020325 20060531 G01N 30/88 20060101AFI20060511BHJP G01N 27/62 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/04 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/06 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/26 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/50 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/60 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/72 20060101ALI20060511BHJP G01N 30/34 20060101ALN20060511BHJP G01N 30/86 20060101ALN20060511BHJP JPG01N30/88 JG01N27/62 VG01N27/62 XG01N30/04 PG01N30/06 ZG01N30/26 AG01N30/88 101KG01N30/88 101LG01N30/50G01N30/60 PG01N30/72 CG01N30/34 EG01N30/86 J G01N 30/88 G01N 30/72 G01N 30/04 G01N 27/62 国際公開第00/011208(WO,A1) Analytical Biochemistry Vol.295,(2001) p.129-137 7 JP2003003521 20030324 WO2003081229 20031002 12 20040902 山村 祥子 技術分野本発明は、生体試料中の補酵素A類(Coenzyme A、以下CoA類と称す)の定量測定方法に関する。背景技術CoA類は脂肪酸の生合成、分解、転移、ホルモン合成と調節、TCAサイクルなどの経路に含まれ、生命機能維持に欠かせない重要な化合物である。脂質代謝の機能解析研究などにおいて、CoA類のマーカーとしての役割が重要視され、生体試料中のCoA類の濃度を正確に測定する方法が求められてきた。このような中で、脂質代謝機構の構成成分であるマロニルCoAは、ミトコンドリアに於ける脂肪酸酸化と脂質合成に関与する為、脂質代謝調節の上で重要な役割を担い、心臓や骨格筋での脂質エネルギー代謝、大脳視床下部におけるニューロペプチドYの発現制御、食物摂取、エネルギー消費制御など重要な調節因子として脚光を浴びている。かかるCoA類の測定方法としては、古くから酵素法やHPLC法など各種方法が開発されている。例えば酵素法による測定方法としてはGuynnらの方法(Guynn,R.W.,Methods Enzymol.,1975,35,312)やMcGarryらの方法(McGarry,J.D.,J.Biol.Chem.,1978,253,22,8291)などがある。これは例えばマロニルCoAを測定対象にするときには、放射能ラベルしたアセチルCoAなどのマロニルCoA依存的な取り込みを測定するものである。しかし、この方法は特定のCoA類が測定対象となり汎用性がなく、測定時に共存する他のCoA類によって調節がかかり真の値を示さない場合があり、更に操作が煩雑であるなどの欠点がある。UV−HPLC法(例えばHosokawa,Y.,Anal.Biochem.,1978,91,1,370、Demoz,A.,J.Chromatogr.,B:Biomed.Appl.,1995,667,1,148など参照。)によるCoA類の測定の報告例は非常に多い。測定する生体試料としても筋肉、心臓、肝臓中などの濃度が測定されている。しかし、UV−HPLC法は感度が低いため、臓器のように夾雑物が多い試料中では再現性が悪く、特に脳中濃度は測られておらず、より高感度、再現性に優れた方法が期待されている。また感度を得るための別の方法として、LC−MS法(Buchholz,A.,Anal.Biochem.,2001,295,129を参照)が開発されている。かかる方法は菌中のアセチルCoA濃度を3次元イオントラップ型マススペクトロメータで測定したものである。かかる方法では測定対象であるCoAの検出とピーク分離には成功しているが、絶対検量線法を採用し、内部標準物質を使用しておらず、正確性、再現性を得るには不十分である。また測定対象物質がアセチルCoAであり、極性が低くHPLC上での分離が容易である。さらに、菌中試料は測定を妨害するような夾雑物含量が低く、試料中のアセチルCoA濃度が高いなどの優位な点がある。それに比べて極性が高くHPLC上での分離が困難な場合、動物臓器のように測定を妨害する夾雑物含量が多い試料の場合、試料中濃度が低い場合、などのCoA類(たとえば動物臓器中のマロニルCoA)の測定には充分に対応できない問題がある。本発明は上記問題点を解決するものであり、生体試料中CoA類の高感度で再現性に優れた濃度測定法を提供するものである。発明の開示本願発明者らは、上記のような課題のもとに鋭意研究を重ねた結果、以下の方法を見出した。すなわち本発明は、生体試料中の補酵素A類の濃度を測定する方法であり、生体試料を強酸性溶液を使用して抽出するステップ、固相抽出ステップ、内部標準物質を添加するステップ、LC−MSを用いて検出するステップを備えることを特徴とする補酵素A類の測定方法を提供するものである。また本発明は、上記生体試料から補酵素A類を抽出するステップが、凍結粉砕した上記生体試料を過塩素酸溶液で攪拌した後に、上清を遠心分離するステップであることを特徴とする上記補酵素A類の測定方法を提供する。上記固相抽出ステップは、上記補酵素A類を強酸性溶液で抽出した上清を中和した後、オクタデシルシリル基乃至オクチルシリル基を有するシリカゲルを充填した逆相系カートリッジにアプライし、水系溶媒で洗浄した後、有機系溶媒で溶出させるステップであることを特徴とする。特に上記逆相カートリッジを、アセトニトリル及び1M酢酸アンモニウム溶液でコンディショニングした後に、上記上清をアップイし、アセトニトリル及び酢酸アンモニウム混合溶液で溶出させることを特徴とする。また本発明は、該補酵素A類が脂肪酸補酵素Aエステル類であり、該内部標準物質が、該補酵素A類の構造類似体であることを特徴とする補酵素A類の測定方法を提供するものである。その中でも該脂肪酸補酵素Aエステル類が、主炭素鎖の炭素数が2〜8個の短鎖脂肪酸補酵素Aエステルであり、該構造類似体が該補酵素A類との炭素数差が3個以内であり、且つアシル基の主炭素鎖の水素が3個以上重水素、或は13Cに置換されたもの、特に該補酵素A類がマロニルCoAであり、該構造類似体がアセチルCoA−d3体、メチルマロニルCoA−d3体、メチルマロニルCoA−d4体、プロピオニルCoA−d3体、プロピオニルCoA−d5体、マロニルCoA−13C3体であることを特徴とする補酵素A類の測定方法を提供するものである。発明を実施するための最良の形態本発明は、CoA類の測定方法であり、生体試料からの強酸性溶液による抽出、必要に応じた濃縮操作、内部標準物質の添加、HPLC注入サンプルの調整、CoA類と内部標準物質のHPLC分離、CoA類と内部標準物質の質量分析計による検出、検出された測定対象CoAと内部標準物質の面積比からの定量で構成される。CoA類の生体試料からの強酸性溶液による抽出において、生体試料とはCoA類が内在するすべての試料が対象であり、具体例としては、人や動物の臓器、人、動物、植物などの組織、細胞、菌などが挙げられる。臓器のなかでも特に筋肉、心臓、肝臓、脳中のCoA類の測定が重要である。測定対象のCoA類としては、チオール基がアシル化されたアシルCoA類や、チオール基が酸化的に結合したCoA酸化体類、1級アミンがアシル化されたN−アシルCoA類が挙げられる。ここで挙げたCoA類には生体試料中には存在しないものが含まれるが、これらについても機能解析などの研究目的で使用され、医薬品開発の効果評価の為に重要である。アシルCoA類の具体例として、アセトアセチルCoA、マロニルCoA、スクシニルCoA、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA、グルタリルCoA、CoA、アセチルCoA、ベンゾイルCoA、フェニルアセチルCoA、イソブチリルCoA、イソバレリルCoA、ブチリルCoA、ベーターメチルクロトニルCoA、チグリルCoA、3−ヒドロキシプロピオニルCoA、クロトニルCoA、ヘキサノイルCoA、メチルマロニルCoA、プロピオニルCoA、アクリロイルCoA、アラキドイルCoA、デカノイルCoA、エライドイルCoA、オレオイルCoA、パルミトレオイルCoA、パルミトイルCoA、リノレオイルCoA、ローロイルCoA、ミリストレオイルCoA、ナーボノイルCoA、ステロイルCoA、オクタノイルCoA、ミリストイルCoA、アラキドニルCoA、ヘプタデカノイルCoA、ノナデカノイルCoA、ドコサヘキサノイルCoA、ペンタデカノイルCoA、ベーターヒドロキシブチリルCoA、ヘプタノイルCoA、バレリルCoA、2−ブテノイルCoA、ステアロイルCoAなどが挙げられる。N−アシルCoA類の具体例としては、N−ブチリルCoA、N−デカノイルCoA、N−ヘキサノイルCoAなどが挙げられる。チオール基が酸化的に結合したCoA酸化体類の具体例としてはCoA酸化体、CoAグルタチオンジスルフィドなどが挙げられる。なかでも、アセチルCoA、CoA、スクシニルCoA、アセトアセチルCoA、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA、プロピオニルCoA、メチルマロニルCoA、マロニルCoA、3−ヒドロキシプロピオニルCoA、アクリロイルCoA、オレオイルCoA、ステアロイルCoA、リノレニルCoA、アラキドニルCoA、パルミトイルCoA、ステロイルCoA、イソブチリルCoA、CoA酸化体、CoAグルタチオンジスルフィドなどが好ましく、特にアセチルCoA、CoA、スクシニルCoA、アセトアセチルCoA、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA、プロピオニルCoA、メチルマロニルCoA、マロニルCoA、イソブチリルCoA、CoAグルタチオンジスルフィドといった短鎖(C8以下)脂肪酸CoAエステル類、チオエステル類などの測定に適している。生体試料からCoA類を抽出する際に使用する強酸性溶液は、一般的に生体試料をタンパク変性させ、測定対象化合物を抽出する溶液であり、好適な具体例としてはトリクロロ酢酸溶液、過塩素酸溶液などが挙げられる。具体的抽出方法は特に限定するものではなく、測定する試料、測定対象により適宜選択するものであり、例えば筋肉や脳などの生体組織を液体窒素で凍結後粉砕し、上記強酸性溶液で所定濃度となるように加え、充分に攪拌した後、遠心分離し、その上清を生体試料抽出溶液とする。添加する内部標準物質の好適な具体例は、上記のCoA類、あるいはそれらの同位体である。内部標準法の性格からすれば、測定対象CoAと内部標準物質は物理的性質、化学的性質などが類似であり、本法の過程においてできるだけ両者が同じ挙動を示すが、検出する際には、互いに干渉せず分離できる関係が好ましい。かかる関係を満足する為に以下のような内部標準物質の選択基準を満たすようなCoA類縁体、CoA同位体を選択するのが好ましい。CoA類縁体は測定対象CoAと比較して、炭素数差が3個以内であり、測定対象CoAの主炭素鎖がアルコール、アミン、カルボン酸などの官能基を有する場合は、内部標準物質も同様の官能基を有することが好ましい。またCoA同位体は、測定対象CoAのアシル基の主炭素鎖の水素が3個以上重水素、または13Cに置き換わっているものであって、かつ上記CoA類縁体の基準を満たすものが好ましい。一方でCoA類は、基本的には生体由来のものが存在する為、使用する内部標準物質としては前記重水素体や13C体、N−アシルCoAなど人工的に合成したものが好ましい。例えば、ラット肝臓中のマロニルCoAを測定するには、アセチルCoAが高濃度で内在するためアセチルCoAを内部標準物質として使用することは出来ず、アセチルCoA−d3体、アセトアセチルCoA−d3体、アセトアセチルCoA−d5体、メチルマロニルCoA−d3体、メチルマロニルCoA−d4体、プロピオニルCoA−d3体、プロピオニルCoA−d5体、イソブチリルCoA−d7体、或はメチルマロニルCoA−13C3体を使用するのが好ましい。内部標準物質の添加は強酸性溶液にて生体試料中からCoAを抽出した上清に添加するか、強酸性溶液中に初めから加えておくかのどちらでもよい。また処理過程であまりに内部標準物質の挙動が異なるのであれば、HPLCサンプル調製時に添加し、質量分析計のイオン化の補正の役割のみとして使用してもよい。抽出上清は強酸性溶液である為、中和、溶媒交換等により中性領域にpHを調整した後、HPLCに注入する。HPLC注入サンプルは、pHを3〜10に調整する。なかでもpHが3〜8の中性領域で測定するのが測定感度、再現性、安定性の点から好ましい。pH2以下の酸性側になると、CoAのリン酸基の影響を受けてクロマトのピークのテーリングが起こる他、カラムに吸着するなどの影響がある。またpH10以上の塩基性になると、CoA類が分解するなどの影響が出る。pHの調製に用いる試薬には、酢酸アンモニウムやリン酸カリウムなどの緩衝作用を有するpH調整剤を使用することが出来る。脳など生体試料中のCoA類の濃度が低い試料測定、高感度分析を行なうに当たっては濃縮操作を実施する。濃縮の好適な方法としては、凍結乾燥、減圧濃縮、液液抽出、固相抽出、オンライン濃縮などが挙げられるが、なかでも固相抽出が好ましい。固相抽出は、逆相系、順相系、イオン交換性などの市販カートリッジがあるが、逆相系カートリッジが再現性が良く、CoA類測定に適している。順相系はCoA類の極性が高い為適さず、イオン交換系は、今回の強酸性溶液で抽出する場合、塩濃度が高すぎて担体に保持させることが困難である。固相抽出の操作は、まず、固相カートリッジを有機溶媒と水系溶媒などを用いてコンディショニング操作を施した後、生体試料中から強酸性溶液で抽出したCoA類の抽出上清を中和したものをカートリッジにアプライし、CoA類を固相カートリッジに吸着させ、次いで水系溶媒で洗浄した後、吸着したCoA類を溶出させる。コンディショニング操作は、有機溶媒と高濃度の塩類溶液で行う。逆相系カートリッジを使用する場合はアセトニトリル及び1M酢酸アンモニウムでコンディショニングを行う。具体的には、100%アセトニトリルを固相カートリッジに注入させた後、塩類の析出を避ける為、一旦50%アセトニトリル水溶液でカートリッジ中のアセトニトリル濃度を下げ、その後1M酢酸アンモニウム水溶液を注入することでカートリッジのコンディショニングを行う。50mM程度の低濃度の酢酸アンモニウムでは、逆相系カートリッジにCoA類を完全に保持することが出来ず、回収率が悪くなる。コンディショニング操作に使用する有機溶媒は、アセトニトリルのほか、メタノール、2−プロパノール等の一般的有機溶媒を使用することが出来る。また塩溶液としては、酢酸アンモニウムの他、ギ酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、或はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等を使用することが出来る。含有濃度は200mMから2Mが好ましい。洗浄用の水系溶液は、水が好ましいが、これに酢酸アンモニウムやリン酸ナトリウム等の塩類を含んでも良い。更に洗浄効果を高めるために、CoA類が溶出しない程度のアセトニトリルやメタノール等の有機溶媒を含有することも可能である。CoA類の洗浄溶媒の水の比率は50%以上とし、特に短鎖脂肪酸CoAエステルの測定では極性が高い為、有機溶媒無添加の水溶液とするのが好ましい。その後、溶出溶媒を使用して、カートリッジに保持した測定対象CoAを溶出する。溶出溶媒は固相抽出で使用される一般的な有機溶媒、例えばメタノール、アセトニトリル、2−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフランなどと水または前述の洗浄液で使用した水系溶媒の混合液を使用し、混合比率(0〜100%)は測定対象のCoA及び内部標準物質の溶出動態及び夾雑物の溶出動態から適宜決定する。マロニルCoAなどの短鎖脂肪酸CoAエステルの場合、20%程度の有機溶媒溶液で溶出が可能であるが、その後の溶媒留去のため20〜75%で行なうのが好ましい。100%近くになると夾雑物溶出の影響がある。溶出液の溶媒を留去して、再溶解液で残渣を再溶解する。もし、内部標準物質を強酸性溶液による抽出液に添加しなかった場合、この時点で一定量を添加する。CoA類と内部標準物質のHPLC分離において、液体クロマトグラフ用分離カラムは一般的に逆相クロマトグラフィー用として市販されているものを使用すればよいが、なかでもオクタデシルシラン基(C18)が結合しているシリカベースの充填剤が好ましい。その他オクチルシラン基(C8)が結合したシリカベースの充填剤やアミド系、特にカルバモイル基化学結合型シリカゲルを使用することも可能である。カラムサイズは市販されている分析用のものでよく、内径1mm以上、10mm以下で、長さが50mm以上、250mm以下のもので測定が可能である。ただし、サイズに関してはこれに限定することなく、基本的には測定対象物質がきちんと保持されて、きれいなピーク形状を示せばよい。移動相は逆相HPLCで通常用いられる溶媒を使用し、好ましくは蒸発性または昇華性の酢酸アンモニウムなどの塩が含有されている方がよい。CoA類と内部標準物質の質量分析計による検出において、質量分析計の好適な具体例は四重極型、セクター型、トリプル四重極型、イオントラップ型、飛行時間型、四重極飛行時間ハイブリッド型などが挙げられる。なかでも四重極型、トリプル四重極型が好ましく、特にトリプル四重極型が最も好ましい。検出条件は化合物に応じたマスユニットを設定し、分析カラム上で分離されたピークを検出する。検出された測定対象CoAと内部標準物質の面積比からの定量において、検量線用に調整したサンプルを上記検出条件を用いて測定し、得られた測定対象CoAと内部標準物質とのピーク面積比と濃度を用いて検量線を作成する。検量線は最小二乗法による一次回帰直線から作成し、実サンプル測定で得られた測定対象CoAと内部標準物質とのピーク面積比を逆算回帰させ、測定対象CoAの濃度を算出する。実施例以下、本発明のCoA類の測定方法について、筋肉中、肝臓中及び脳中のマロニルCoAの測定に関する実施例を示す。1.標準溶液の調製マロニルCoAリチウム塩、数mgを精密天秤で正確に量りとり、10mMの濃度になるように6%過塩素酸で溶解し標準原液とした。この標準原液を6%過塩素酸で順次希釈することにより、10μM,5μM,1μM,500nM,100nM,50nM,10nM検量線用標準溶液を調製した。また同様に標準原液を6%過塩素酸で順次希釈することにより、50μM,5μM,500nM再現性確認(QC)用標準溶液を調製した。2.内部標準溶液(IS)の調製アセチルCoA−d3体 数mgを精密天秤で正確に量りとり、10mMの濃度になるように6%過塩素酸で溶解し標準原液とした。この標準原液を6%過塩素酸で希釈することにより、5μMの溶液を調製した。尚、アセチルCoA−d3体は、原料にCoAと、無水酢酸―d6を用いてSimonの方法(Simon,E.J.,J.A.C.S.,1953,75,2520)に従って合成した。3.測定試料溶液の調製1)生体試料抽出液の調製ウイスター系ラットの筋肉、肝臓、脳を摘出した直後に、液体窒素中で凍らせ粉々に粉砕した後、6%過塩素酸を5ml/g wet wt.になるように加え、よく攪拌した。9000回転で遠心分離し、上清を生体試料抽出夜とした。2)試料前処理法筋肉、肝臓中濃度測定の場合:1M酢酸アンモニウム溶液(pH未調製)300μLに、検量線用標準溶液、生体試料抽出液、QC用は生体抽出液の複数個体分をプールしたもの200μL、IS溶液20μL、QC用のみQC用標準溶液20μLを添加して、固相抽出用試料とした。脳中濃度測定の場合:1M酢酸アンモニウム溶液(pH未調製)450μLに、検量線用標準溶液、生体試料抽出液、QC用は生体抽出液の複数個体分をプールしたもの400μL、IS溶液20μL、QC用のみQC用標準溶液20μLを添加して、固相抽出用試料とした。固相抽出カートリッジであるボンドエルートC18 100mg/1mL(バリアン社製)をアセトニトリル1mL、50%アセトニトリル水溶液1mL、1M酢酸アンモニウム溶液(pH未調整)1mLでコンディショニングした後、固相抽出用試料をアプライした。水1mLで洗浄し、アセトニトリル/50mM酢酸アンモニウム溶液(pH未調整)=2/8の混合溶液1mLで溶出した溶液を凍結乾燥して溶媒留去した。そして残渣に水200μLを加えて溶解したものを測定試料溶液とし、20μLをLC/MS/MSシステムに注入した。4.測定装置および装置条件1)測定機器LC/MS/MSシステムとして、以下に記載のある装置、機器を使用した。HPLCシステム :Agilent 1100(Agilent)オートサンプラー :Shimadzu SIL−HTc(島津製作所)質量分析装置 :API3000(Applied Biosystems)2)HPLC条件HPLCの分析条件は、分析カラムとしてAQUA C18、ガードカラムとしてAQUA C18用ガードカラムを使用し、カラム温度25℃、移動相は10mM酢酸アンモニウム(pH未調整)水溶液(A液)およびメタノール(B液)を使用し、流速1ml/minで、表1に示すグラジエント条件で行なった。3)MS条件質量分析は、イオン化法(ターボイオンスプレー、ポジティブモード)で行い、マロニルCoAイオン(Q1:854(m/z)、Q3:347(m/z))、アセチルCoA−d3体イオン(Q1:813(m/z)、Q3:306(m/z))を測定した。4)定量値の算出方法ピークの同定はMRM法(マロニルCoA:m/z 854→347,IS:m/z 813→306)により得られた保持時間及びモニターイオンの質量数により行い、定量はマロニルCoAとISのピーク面積比による内部標準法によって行なった。検量線式、QC試料及び生体試料中抽出液の定量値について、検量線式はISに対するマロニルCoAのピーク面積比(y)と濃度(x)との関係を用いて最小二乗法(重み1/x)により求めた。y=ax+bx:濃度、y:ピーク面積比QC試料及び生体試料中抽出液の濃度は、検量線式により次式で求めた。x=(y−b)/ax:求める濃度5.結果1)直線性:検量線用試料を上記分析法に従って測定し、検量線を作成した(表2)。1/Xの重み付けを行い、相関係数(r)は0.9998、相対誤差(RE)は−7.5〜+6.8%と、良好な直線性を示した。2)再現性:再現性確認(QC)試料として、ブランク試料(Q0)及び500nM,5μM,50μMのQC用標準溶液を添加したQC試料(Q1,Q2,Q3、各濃度N=3)のマロニルCoA濃度を測定した。QC1〜QC3は、得られた定量値からQ0を差し引いた値であり、表3から表5に示すように、筋肉中濃度においては精度(%CV)1.7〜9.1%、真度(%RE)−4.3〜5.7%、肝臓中濃度においては精度(%CV)3.0〜8.2%、真度(%RE)−5.6〜9.1%、脳中濃度においては精度(%CV)2.0〜7.5%、真度(%RE)−3.6〜6.9%といずれも良好な値を示した。3)生体試料中のマロニルCoA濃度の測定:ウイスター系ラット6個体について、筋肉、肝臓、及び脳中のマロニルCoA濃度を測定した。クロマトグラム(図1乃至図3)及び測定結果(表6乃至表8)を示す。発明の効果本発明による測定法によれば、生体試料中のCoA類をLC−MSを用いて、正確に再現性よく定量的に測定することが可能となる。【図面の簡単な説明】図1は、ウイスター系ラット筋肉試料測定時のクロマトグラムを示す。図2は、ウイスター系ラット肝臓試料測定時のクロマトグラムを示す。図3は、ウイスター系ラット脳試料測定時のクロマトグラムを示す。 生体試料中の補酵素A類の濃度を測定する方法であり、生体試料を強酸性溶液を使用して抽出するステップ、固相抽出ステップ、内部標準物質を添加するステップ、LC−MSを用いて検出するステップを備え、該固相抽出ステップが、上記補酵素A類を強酸性溶液で抽出した上清を中和した後、オクタデシルシリル基乃至オクチルシリル基を有するシリカゲルを充填した逆相系カートリッジにアプライし、水系溶媒で洗浄した後、有機系溶媒で溶出させるステップであることを特徴とする補酵素A類の測定方法。 上記生体試料から補酵素A類を抽出するステップが、凍結粉砕した上記生体試料を過塩素酸溶液で攪拌した後に、上清を遠心分離するステップであることを特徴とする請求項1記載の補酵素A類の測定方法。 上記逆相カートリッジを、アセトニトリル及び1M酢酸アンモニウム溶液でコンディショニングした後に、上記上清をアプライすることを特徴とする請求項1記載の補酵素A類の測定方法。 上記有機系溶媒が、アセトニトリル及び酢酸アンモニウム混合溶液であることを特徴とする請求項1記載の補酵素A類の測定方法。 該補酵素A類が脂肪酸補酵素Aエステル類であり、該内部標準物質が、該補酵素A類の構造類似体であることを特徴とする請求項1記載の補酵素A類の測定方法。 該脂肪酸補酵素Aエステル類が、主炭素鎖の炭素数が2〜8個の短鎖脂肪酸補酵素Aエステルであり、該構造類似体が該補酵素A類との炭素数差が3個以内であり、且つアシル基の主炭素鎖の水素が3個以上重水素に置換されたもの、或いは主炭素の炭素が3個以上13Cに置換されたものであることを特徴とする請求項5記載の補酵素A類の測定方法。 該補酵素A類がマロニルCoAであり、該構造類似体がアセチルCoA-d3体、メチルマロニルCoA-d3体、メチルマロニルCoA-d4体、プロピオニルCoA-d3体、プロピオニルCoA-d5体、メチルマロニルCoA-13C3体であることを特徴とする請求項6記載の補酵素A類の測定方法。