生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_神経系細胞の非選択的陽イオンチャネルおよび脳腫脹を治療する方法
出願番号:2003577819
年次:2010
IPC分類:A61K 31/64,A61K 31/4453,A61K 31/198,A61K 31/4164,A61K 31/7076,A61P 25/00,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

シマード、ジェイ.マーク ミンクイ、チェン JP 4485806 特許公報(B2) 20100402 2003577819 20030320 神経系細胞の非選択的陽イオンチャネルおよび脳腫脹を治療する方法 ユニヴァーシティ オブ メリーランド,ボルチモア 500125928 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 110000729 梶崎 弘一 100104422 尾崎 雄三 100105717 谷口 俊彦 100104101 シマード、ジェイ.マーク ミンクイ、チェン US 60/365,933 20020320 20100623 A61K 31/64 20060101AFI20100603BHJP A61K 31/4453 20060101ALI20100603BHJP A61K 31/198 20060101ALI20100603BHJP A61K 31/4164 20060101ALI20100603BHJP A61K 31/7076 20060101ALI20100603BHJP A61P 25/00 20060101ALI20100603BHJP A61P 43/00 20060101ALI20100603BHJP JPA61K31/64A61K31/4453A61K31/198A61K31/4164A61K31/7076A61P25/00A61P43/00 105 A61K 31/00-31/80 A61P 25/00-25/36 A61P 43/00 C12N 5/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/REGISTRY(STN) WPI PubMed JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平04−234329(JP,A) J. Pharm. Pharmacol.,1999年,51,p.967-970 J Neurosci. ,2001年 9月 1日,Vol.21, No.17,p.6512-6521 7 US2003008442 20030320 WO2003079987 20031002 2005534285 20051117 44 20051209 六笠 紀子(関連出願の説明) 本願は、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/365,933号(出願日2002年3月20日)の利益を主張する。本発明は、神経系細胞に見いだされ、細胞腫脹に関わる陽イオンフラックスに関与する、新規イオンチャネルに関する。本発明は、上記イオンチャネルの活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法も提供する。NCCa-ATPチャネルのアンタゴニストをスクリーニングし同定する方法を提供する。さらに本発明は、脳における神経系細胞の腫脹を阻害または予防するために上記イオンチャネル活性を阻害する化合物および組成物を使用する治療方法も提供する。神経系細胞腫脹は新規非選択的一価陽イオンATP感受性チャネル(NCCa-ATPチャネル)の開口によって媒介されること、およびこのチャネルは1型スルホニル尿素受容体と共役していることを見いだした。さらに、本発明のNCCa-ATPチャネルを遮断することによって、特にこのチャネルと共役する受容体を拮抗すること、例えばSUR1を拮抗することなどによって、神経系細胞腫脹および細胞死、特にアストロサイト腫脹を阻害できることも見いだした。また本発明は、NCCa-ATPチャネル活性を調節するそのような化合物および組成物を、脳腫脹を治療するために使用することも包含する。本発明は、脳外傷または脳虚血の結果として神経系細胞腫脹および細胞死に起因して起こる脳腫脹の治療方法に関する。外傷性脳傷害および脳卒中に続いて、周辺の脳は、その正常な応答として、傷害部位を「閉じこめ」て「清掃する」のに重要であると考えられている反応性アストロサイトの生成を含む細胞応答を開始する。神経系細胞の腫脹は、脳虚血および外傷性脳傷害における脳損傷を特徴付ける細胞毒性応答または細胞腫脹応答の一部であり、罹患と死亡の主原因である。Staubら,1993、Kimelbergら,1995を参照されたい。神経系細胞の腫脹を惹起する媒介因子は、例えば細胞外K+の上昇、アシドーシス、神経伝達物質の放出および遊離脂肪酸など、数多く同定されている。Kempskiら,1991、RutledgeおよびKimelberg,1996、Monginら,1999を参照されたい。細胞毒性浮腫は、臨床的には脳腫脹を引き起こす周知の現象であり、脳傷害および脳卒中の転帰を悪化させ、罹患率および死亡率を上昇させる。 反応性アストロサイトのアポトーシス死の根底にある機序は研究されている。Tanakaら,2000、Yuら,2001を参照されたい。ネクローシス細胞死を担う機序はまだ特徴付けられていない。アポトーシス細胞死に先だって、細胞縮小とK+の正味の損失が起こる。Yuら,1997、Yuら,1999を参照されたい。これとは対照的に、ネクローシス細胞死では、形質膜が破裂して、細胞質ゾルの内容物の放出を引き起こし、結果として、組織炎症が誘発される。LeistおよびNicotera,1997を参照されたい。二次的な炎症性損傷が惹起されることを考えると、近傍の生組織にとってはネクローシス細胞死の方が有害であると言える。 ネクローシス細胞死は、主要細胞外オスモライトであるNa+の流入に続く浸透圧性の腫脹によって惹起される。ほとんどの細胞タイプでは、細胞内へのNa+の蓄積は、特異的エフェクターの活性化を必要とせず、むしろ低[ATP]i条件下で外向きのNa+ポンピングに欠陥が生じたために起こる受動的プロセスであると考えられる。LeistおよびNicotera,1997、Trumpら,1997を参照されたい。細胞内Na+過負荷のしるしである細胞のブレビングまたは腫脹は、一般に、ネクローシス細胞死の初期徴候であると考えられる。LeistおよびNicotera,1997、MajnoおよびJoris,1995を参照されたい。 ATP合成の阻害またはATP枯渇も、神経系細胞の腫脹、ブレビング、および重篤な場合には、形質膜破壊および細胞死を引き起こす。Jurkowitz-Alexanderら,1993を参照されたい。ATP枯渇に関係する神経系細胞腫脹の機序は、まだ完全には特徴付けられていない。LomnethおよびGruenstein,1989、Juurlinkら,1992、Roseら,1998を参照されたい。考えられる機序の一つは、Na+/K+-ATPアーゼポンプの阻害によるNa+濃度およびK+濃度の変化だろう。しかし、神経系細胞におけるウアバインによるNa+/K+-ATPアーゼポンプの阻害よりに誘発する同程度の浸透圧性腫脹では、大きな脱分極もブレビングも細胞死も起こらない。Jurkowitz-Alexanderら,1992、BrismarおよびCollins,1993を参照されたい。したがって、Na+/K+-ATPアーゼポンプの障害は、神経系細胞の腫脹にとって決定的な機序ではない。これらの研究はいずれも、脳虚血および外傷性脳傷害における脳障害に関係する細胞腫脹に寄与する細胞機序を同定していない。ATP感受性陽イオンチャネルのサブタイプの一つは非選択的陽イオンチャネルで、これはCa2+とATPに対して感受性を示すチャネルである。具体的に述べると、非選択的陽イオンチャネルは、細胞内Ca2+([Ca2+]i)によって活性化され、細胞内ATP([ATP]i)によって阻害される。Ca2+およびATP感受性チャネルは多くの非神経系細胞タイプで同定されているが、アストロサイトで同定されたことはなく、また他のどの神経系細胞でも同定されていない。Sturgessら,1987、GrayおよびArgent,1990、Raeら,1990、Champignyら,1991、PoppおよびGogelein,1992、Onoら,1994を参照されたい(これらの各文献は参照によりそのまま本明細書に組み込まれるものとする)。これらの非アストロサイトチャネルは、不明確な特徴を持つ不均一な一群を構成している。これらは25〜35pSの単一チャネルコンダクタンスを示し、Na+とK+とをあまり区別せず、陰イオンに対して不透過性であり、二価陽イオンに対しておおむね不透過性であり、細胞質側のほぼ同じ濃度のアデニンヌクレオチド類ATP、ADPおよびAMPによって遮断される。これらの非神経系細胞タイプにおけるこれらの非選択的ATP感受性陽イオンチャネルの機能は謎のままであるが、その理由の一つとして、チャネルの活性化には一般に非生理的濃度のCa2+が要求されることが挙げられる。 ATP感受性陽イオンチャネルのもう一つのサブタイプは、膵臓b細胞のATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)である。糖尿病ではこれらのKATPチャネルを阻害してインスリン放出を刺激するために、一群のインスリン分泌促進因子、抗糖尿病スルホニル尿素剤が用いられる。Lebovitz,1985を参照されたい。抗糖尿病スルホニル尿素剤は、高親和性スルホニル尿素受容体(SUR)を介してKATPチャネルに対するその作用を発揮する。Pantenら,1989、Aguilar-Bryanら,1995を参照されたい。SUR1、SUR2A、SUR2BおよびSUR2Cと呼ばれるSURのアイソフォームがいくつか同定され、クローン化されている。Aguilar-Bryanら,1995、Inagakiら,1996、Isomotoら,1996、Lawson,2000を参照されたい。これらの受容体はATP結合カセット(ABC)輸送体ファミリーに属する。もう一つのイオンチャネルモジュレータ、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)も、このファミリーのメンバーである。Higgins,1992、Aguilar-Bryanら,1995を参照されたい。注目すべきことに、CFTRの遺伝的欠損は致死的疾患である嚢胞性線維症を引き起こすので、CFTRは治療上重要である。 スルホニル尿素受容体は、グリベンクラミドやトルブタミドなどの抗糖尿病スルホニル尿素剤に対する感受性を付与する。SURは、K+チャネル開口薬(SUR活性化剤)と呼ばれる化学的に多様な薬剤群、例えばジアゾキシド、ピナシジルおよびクロマカリンなどによるカリウムチャネルの活性化に関与している。Aguilar-Bryanら,1995、Inagakiら,1996、Isomotoら,1996、Nicholsら,1996、Shyngら,1997bを参照されたい。さまざまな組織で、分子的に異なるSURが、異なるチャネル成分と共役して、識別可能な生理学的特徴および薬理学的特徴を持つ異なるKATPチャネルを形成している。膵臓b細胞のKATPチャネルが、K+チャネルと結合したSUR1から形成されているのに対して、心筋および平滑筋のKATPチャネルは、それぞれK+チャネルと結合したSUR2AおよびSUR2Bから形成されている。FujitaおよびKurachi,2000を参照されたい。したがって脳虚血および外傷性脳傷害における脳損傷と関係する細胞腫脹ならびにその結果として起こる罹患および死亡に寄与する生理学的標的が求められている。また、脳傷害および脳卒中の転帰を悪化させ、罹患率および死亡率を上昇させる、脳腫脹を引き起こす細胞毒性浮腫の特異的治療方法も必要とされている。また、脳損傷を防止するためにこの標的の活性を調整することができる治療化合物も必要とされている。本発明は、神経系細胞中に存在してSURに結合している、新たに特徴付けられたNCCa-ATPチャネルという非選択的カルシウムおよびATP感受性一価陽イオンチャネルを対象とする。さらに本発明は、NCCa-ATPチャネル活性に対するアンタゴニストをスクリーニングまたは同定する方法も提供する。さらに本発明は、このチャネルの活性を阻害し、その結果として、神経系細胞の腫脹および細胞死ならびにそれに付随する神経系損傷(脳腫脹および脳損傷を含む)を防止するために、スルホニル尿素剤および他のSUR1遮断薬などのアンタゴニストを治療的に使用する方法も提供する。本発明は、一つには、脳外傷後に反応性神経系細胞中で発現する特殊なチャネル、NCCa-ATPチャネルの発見に基づいている。本発明は、新規Ca2+活性化[ATP]i感受性非特異的陽イオンチャネル(以下、NCCa-ATPチャネルという)を含有する精製組成物を対象とする。本発明の好ましい一態様として、上記組成物は、NCCa-ATPチャネルを発現させる哺乳類神経系細胞または膜調製物を含み、上記哺乳類神経系細胞は、最も好ましくは、新鮮単離反応性アストロサイトである。NCCa-ATPチャネルを含むそのような精製組成物の好ましい一例は、天然反応性アストロサイトに由来する膜調製物である。本明細書で実証するように、NCCa-ATPチャネルを発現させる神経系細胞で細胞内ATPが枯渇すると、NCCa-ATPチャネルが開口し、細胞が腫脹して死ぬ。しかし、そのような細胞上のNCCa-ATPチャネルを遮断すると、その細胞は腫脹して死ぬことがない。また本発明は、一つには、NCCa-ATPチャネルが1型スルホニル尿素受容体によって調節されるという発見、およびこの受容体のアンタゴニストがNCCa-ATPチャネルを遮断して神経系細胞腫脹を阻害する能力を持つという発見にも基づいている。 本発明のNCCa-ATPチャネルは、特定の機能的特徴によって識別することができ、その機能的特徴の組合せによって、本発明のNCCa-ATPチャネルは既知のイオンチャネルと区別される。本発明のNCCa-ATPチャネルを見分ける際の目安となる特徴には、例えば以下に挙げるものがあるが、必ずしもこれらに限るわけではない:1)Na、Kおよび他の一価陽イオンを容易に通過させる非選択的陽イオンチャネルであること、2)細胞内カルシウムの増加および/または細胞内ATPの減少によって活性化されること、3)膵臓b細胞に見いだされるようなKATPチャネルだけと会合していると今まで考えられきた1型スルホニル尿素受容体(SUR1)によって調節されること。 具体的に述べると、本発明のNCCa-ATPチャネルは、カリウムイオン(K+)に対して20〜50pSの単一チャネルコンダクタンスを持っている。また、NCCa-ATPチャネルは細胞膜の細胞質側の生理的濃度範囲のCa2+によって刺激され、その濃度範囲は10-8〜10-5Mである。また、NCCa-ATPチャネルは非生理的濃度範囲の細胞質ATPによって阻害され、その濃度範囲は10-1〜10Mである。また、NCCa-ATPチャネルは陽イオンK+、Cs+、Li+、Na+に対して透過性であり、前記陽イオンのいずれか2つの間の透過性の比は0.5より大きく2より小さい。本発明は、NCCa-ATPチャネルを調節する化合物または組成物、特にこのチャネルのアンタゴニストとして作用し、その結果として、神経系細胞の腫脹とそれに付随する脳腫脹を調節する化合物または組成物をスクリーニングするためにデザインされたアッセイに関する。この目的を達成するには、NCCa-ATPチャネルおよび/またはそれに結合しているSUR1の外側(すなわち細胞外ドメイン)と相互作用(例えば結合)する化合物を検出するために、細胞型アッセイ(細胞型)または非細胞型アッセイを使用することができる。細胞型アッセイは、NCCa-ATPチャネルの生物学的活性(すなわち脱分極)に影響を及ぼす化合物を同定するために使用することができる点で、有利である。本発明は、神経系細胞を試験化合物と接触させ、その試験化合物がNCCa-ATPチャネルの活性を阻害するかどうかを決定することによって、NCCa-ATPチャネルのアンタゴニストをスクリーニングし同定する方法も提供する。一態様として、NCCa-ATPのアンタゴニストである化合物を同定する方法を提供する。ある態様では、チャネルを通過する膜電流を測定するための電気生理学的技術を使ってチャネル機能を定量化することにより、開口したチャネルを遮断するその化合物の能力またはチャネルの開口を防止するその化合物の能力に基づいて、本発明の治療化合物(NCCa-ATPアンタゴニストを含む)を同定する。NCCa-ATPアンタゴニストには、NCCa-ATPチャネル阻害剤、NCCa-ATPチャネル遮断薬、SUR1アンタゴニスト、SUR1阻害剤、および/またはチャネルを通過する膜電流の大きさを減少させる化合物である化合物が包含される。この態様では、ヒトまたは動物から得た神経系細胞調製物のチャネル機能を測定することができ、試験化合物は、溶解した状態で細胞調製物の上に流すことによって、その細胞調製物と接触させることができる。さらに本発明は、NCCa-ATPチャネルのアンタゴニストとして作用しうるスルホニル尿素化合物をスクリーニングする方法も提供する。本発明は、NCCa-ATPチャネルを標的にして脳腫脹(例えば脳傷害または脳虚血後に起こる腫脹)を治療するための化合物を同定することを目的とする薬物スクリーニングアッセイに関する。また本発明は、NCCa-ATPチャネルを介して神経系細胞腫脹を調節するための化合物に関する。また本発明は、NCCa-ATPチャネルを標的とすることによる脳腫脹の治療に関する。 また本発明は、NCCa-ATPチャネルのアゴニストおよびアンタゴニスト、例えば小分子、大分子および抗体、ならびにNCCa-ATPチャネル遺伝子発現を阻害するために用いることができるヌクレオチド配列(例えばアンチセンス分子およびリボザイム分子)なども包含する。NCCa-ATPチャネルのアンタゴニストには、(1)チャネルを遮断すること、(2)チャネルの開口を防止すること、および/または(3)チャネルを通過する膜電流の大きさを減少させることができる化合物を含む。 また本発明は、NCCa-ATPチャネル活性を調節するそのような化合物および組成物を、脳腫脹を治療するために使用することも包含する。さらに、NCCa-ATPチャネルに対するアンタゴニストの治療的使用によって、脳腫脹とそれがもたらす脳損傷を予防する方法も提供する。一態様として、治療用アンタゴニストは、脳に、または脳内に、投与することができる。そのような脳への投与には、脳内への直接注射(特に頭骨への外傷によって脳への注射が容易になっている場合)が含まれる。さらに本発明は、脳での細胞腫脹を防止するためのNCCa-ATPチャネルに対するアゴニストとしてのスルホニル尿素化合物の治療的使用も提供する。ある態様では、上記スルホニル尿素化合物がグリベンクラミドである。もう一つの態様では、上記スルホニル尿素化合物がトルブタミドである。 以下、本発明の好ましい態様を、添付の図面を参照して、いくつか詳細に説明する。本発明は多くの異なる形態で具体化することができる。本発明が本明細書に説明する態様に限定されると解釈してはならない。本発明は、哺乳類神経系細胞の腫脹(例えばATP枯渇に応答して起こるもの)の基礎となる機能を持つ新規イオンチャネルに関する。また本発明は、チャネル阻害剤をスクリーニングするための、前記チャネルの使用に関する。さらに本発明は、脳虚血および外傷性脳傷害時の脳損傷を特徴付けるこの細胞腫脹応答を防止するための、前記チャネル機能の阻害剤の使用に関する。アジ化ナトリウム(NaN3)は、細胞内ATPを枯渇させることによって「化学的低酸素」を誘発するために使用される代謝毒素である。Swanson,1992を参照されたい。NaN3に対する神経系細胞の形態学的および電気生理学的応答を新規細胞調製物で調べる。成体ラット脳由来の新鮮単離天然反応性アストロサイト(NRA)を使用して、それらを単離直後の天然状態で研究する。反応性アストロサイトは、インビボで活性化または刺激されたアストロサイト(例えば脳障害または神経障害に関係するものなど)である。外傷性脳傷害(TBI)患者の死後脳では、反応性アストロサイトが障害の近傍に見いだされる。脳内の傷害部位を取り囲む反応性アストロサイトの大半は、反応性アストロサイトである。1型反応性アストロサイトが回復可能な反応性アストロサイトの>80%を構成するのに対して、2型反応性アストロサイトは約5%を構成する。反応性アストロサイトは通常は静止条件下で分極している。本明細書で使用する「神経系細胞」という用語には、アストロサイトが含まれる。「反応性アストロサイト」という用語は、脳内の病変部位または虚血部位に見いだされるアストロサイトを意味する。「天然反応性アストロサイト」または「NRA」という用語は、脳から新しく単離された反応性アストロサイトを意味する。本明細書で使用する「新鮮単離(新しく単離された)」という用語は、脳から精製されたNRA、特に約0〜約72時間前に精製されたNRAを指す。NRAを「脳から精製」という場合の「精製」という単語は、NRAが他の脳組織および/または移植されたゼラチンまたはスポンジから分離されていることを意味し、細胞集団を単に脳から収集するだけでそれ以上細胞の単離を行わないプロセスを指すものではない。本明細書で述べるように、反応性アストロサイトに見いだされるNCCa-ATPチャネルは、新鮮単離細胞だけに存在する。NCCa-ATPチャネルは細胞を培養すると間もなく失われる。NRAは、培養されたアストロサイトと比較して、インビボで脳内に存在する反応性アストロサイトにより近いインビトロモデルになる。「天然」および「新鮮単離」という用語は同義語として用いられる。本明細書で使用する「単離神経系細胞」という用語は、脳から単離された神経系細胞を意味する。 反応性アストロサイトはインビボで産生され、Perillanらが記載したものと同様の方法体系に従って、脳から収集される。Perillanら,1999、Perillanら,2000を参照されたい。次に、収集した細胞を単離するが、培養はせず、新鮮単離反応性アストロサイトを脳から単離した直後に天然状態で研究する。 本明細書に記載する実施例から、成体ラット脳由来のNRAは、生理的濃度の[Ca2+]iで[ATP]iの枯渇によって活性化される非選択的陽イオンチャネルを発現させることがわかる。NRA中に新たに同定され、そのような細胞から得られる膜パッチの>90%に存在する本発明のこのNCCa-ATPチャネルは、今までに報告された非選択的カルシウムおよびATPチャネルとは、著しく異なる性質を示すことによって区別される。本発明のNCCa-ATPを特徴づけるこれらの性質には、mM未満の[Ca]によって活性化されること、およびさまざまなアデニンヌクレオチドによる遮断に異なる感受性を示すことが含まれる。ATP枯渇による本発明のNCCa-ATPチャネルの開口は大幅な膜分極を引き起こし、続いて細胞膜のブレビングが起こる。ATPが枯渇すると、NCCa-ATPチャネルは開口して、細胞腫脹につながるNa+の流入を可能にする。このチャネルは1型スルホニル尿素受容体(SUR1)によって調節される。このチャネルは、グリベンクラミドやトルブタミドなどのスルホニル尿素剤によって遮断することができる。グリベンクラミドによる処理は、化学的ATP枯渇によって誘発される腫脹およびブレビングの有意な減少をもたらす。このチャネルは細胞腫脹に関わる陽イオンフラックスに関与する。本発明の方法は、NCCa-ATPチャネルを通過する電流の流れを阻害し、チャネル開口に関係するブレビングを阻害するスルホニル尿素化合物の使用を含む。また、スルホニル尿素化合物およびNCCa-ATPチャネルを通過する電流の流れを阻害する他の化合物の使用は、脳における細胞腫脹に対して治療的予防効果も持ちうる。したがって、NCCa-ATPチャネルを発現させる膜調製物を含む組成物を提供することが、本発明の目的である。例えば膜調製物は、単離天然反応性アストロサイト(NRA)などの神経系細胞(好ましくは新鮮単離天然反応性アストロサイト)から得られる。組成物中のNCCa-ATPチャネルは以下の特徴を持つ:(a)35pSタイプのチャネルである、(b)細胞質Ca2+によって刺激される、(c)細胞質ATPが約0.8mM未満になると開口する、(d)一価陽イオンK+、Cs+、Li+およびNa+に対して透過性であり、1型スルホニル尿素受容体のアンタゴニストによって遮断することができる。さらに、NCCa-ATPチャネルのアンタゴニストをスクリーニングする方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させること、および(b)前記チャネルの活性を阻害する試験化合物を、前記試験化合物の存在下および不在下で前記活性を測定することによって同定することを含み、前記活性を阻害する試験化合物をNCCa-ATPチャネルのアンタゴニストであると同定する方法を提供することも、本発明の目的である。例えば、上記組成物は、NCCa-ATPチャネルを発現させる神経系細胞の調製物またはNCCa-ATPチャネルを発現させる膜調製物(例えば単離天然反応性アストロサイト(NRA)から得られる膜調製物)を含みうる。このチャネルに対する化合物の効果としては(a)NCCa-ATPチャネルを遮断すること、(b)NCCa-ATPチャネルを閉鎖すること、(c)NCCa-ATPチャネルが開口するのを防ぐこと、および(d)NCCa-ATPチャネルを通過する膜電流の大きさを減少させることなどを挙げることができる。さらに、NCCa-ATPアンタゴニストである化合物、例えばNCCa-ATPチャネル阻害剤、NCCa-ATPチャネル遮断薬、SUR1アンタゴニスト、SUR1阻害剤および/またはこのチャネルを通過する膜電流の大きさを減少させることができる化合物などを同定することも、本発明の目的である。 本発明のもう一つの目的は、神経系細胞腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物がNCCa-ATPチャネルを遮断するかどうかを決定することを含み、NCCa-ATPチャネルを遮断する試験化合物を、神経系細胞腫脹を阻害するための化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、脳腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物がNCCa-ATPチャネルを遮断するかどうかを決定することを含み、NCCa-ATPチャネルを遮断する試験化合物を、脳腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、脳腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物が神経系細胞腫脹を阻害するかどうかを決定することを含み、神経系細胞腫脹を阻害する試験化合物を、脳腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、動物における神経系細胞腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させて、その試験化合物が前記チャネルを遮断するかどうかを決定すること、および(b)前記試験化合物を、脳傷害または脳虚血を持つ動物に投与して、処置された動物の脳腫脹を前記試験化合物が阻害するかどうかを決定することを含み、脳腫脹を阻害する試験化合物を、動物における神経系細胞腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、脳腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、NCCa-ATPチャネルを含む組成物と接触させて、その試験化合物が前記チャネルを遮断するかどうかを決定すること、および(b)前記試験化合物を、脳傷害または脳虚血を持つ動物に投与して、処置された動物の脳腫脹を前記試験化合物が阻害するかどうかを決定することを含み、NCCa-ATPチャネルを遮断する試験化合物を、脳腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のこれらの目的のそれぞれにおいて、前記組成物は、好ましくは、NCCa-ATPチャネルを発現させる神経系細胞の調製物またはNCCa-ATPチャネルを発現させる膜調製物(好ましくは単離天然反応性アストロサイト(NRA)に由来するもの)を含む。本発明のさらにもう一つの目的は、1型スルホニル尿素受容体のアンタゴニストである化合物、例えばスルホニル尿素化合物、ベンズアミド誘導体またはイミダゾリン誘導体などを用いる上述の方法を提供することである。 本発明のさらにもう一つの目的は、上記決定工程が、例えば細胞の外観(正常、ブレビング、腫脹)の顕微鏡観察、チャネル電流の測定、膜電位の測定、アネキシンV発現の検出、ヨウ化プロピジウム発現の検出、インビトロ結合アッセイ、およびそれらの組合せなどによって、天然反応性アストロサイトの腫脹を検出または同定すること(ただしこれらに限るわけではない)を含む、上記の方法を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、対象の脳における神経系細胞腫脹を防止する方法であって、有効量の、NCCa-ATPチャネルを遮断する化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を、前記対象に投与することを含む方法を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、対象における神経系細胞腫脹から派生する外傷性脳傷害または脳虚血の負の影響を軽減する方法であって、有効量の、NCCa-ATPチャネルを遮断する化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を、前記対象に投与することを含む方法を提供することである。そのような投与は、脳への直接送達、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、胃内投与および経口投与であることができる。また、そのような化合物の例として、1型スルホニル尿素受容体のアンタゴニスト、例えばスルホニル尿素に似たグリベンクラミドおよびトルブタミド、ならびに他のインスリン分泌促進因子、例えばレパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、MgADP、およびその組合せなどが挙げられる。 本発明のさらにもう一つの目的は、NCCa-ATPチャネルを遮断する化合物と薬学的に許容できる担体とを含む製剤を使って対象の脳における神経系細胞腫脹を防止または阻害するための製剤であって、前記化合物の量が、糖尿病を治療するための製剤に含まれる前記化合物の量よりも、少なくとも10倍は多い製剤を提供することである。 本発明をさらに詳しく例示するために、以下に実施例を記載するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。本明細書に記載する実施例は単なる例示であって、決して本発明の範囲を限定しようとするものではない。本発明をその特定の態様に関して詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱せずにさまざまな改変および変更をそこに加えうることは、当業者には明らかだろう。本発明のさらなる裏付けとなる実験および典型的手法を以下に説明する。特に、新鮮単離反応性アストロサイトを使ったインビトロ研究と、適当な動物モデルを使ったインビボ研究を開示する。 一般方法 細胞調製 反応性アストロサイトは生体内で産生され、成体の脳から以下の方法で収集される。すなわち、本明細書に記載するように、8週齢ウィスターラットの頭頂葉の刺創にゼラチンスポンジ(Gelfoam(登録商標),Upjohn Co.,ミシガン州カラマズー)を移植する。スポンジ片を8日後に収集し、付着組織を除去するためにリン酸緩衝食塩水(PBS,pH7.4)で3回洗浄する。その研究に必要なNRAの数に依存して、刺創への移植後、早期に、またはもっと後に、スポンジ片を収集することができる。好ましい収集は、移植の約2日後〜約30日後に行われ、最も好ましい範囲としては、移植の約2日後〜約3日後に行う。 NRAは、以下の方法により、スポンジ片から新しく単離される。すなわち、組成(mM):124mM NaCl、5.0mM, 1.3mM MgCl2、2.0mM CaCl2、26mM NaHCO3および10mM D-グルコースからなる、pH7.4、約290mOsmの人工脳脊髄液(aCSF)にパパイン20U/ml、トリプシンインヒビター10mg/mlおよびDNアーゼ0.01%(Worthington,ニュージャージー州レイクウッド)が入っているものを、エッペンドルフチューブに入れ、そこに洗浄したスポンジ片を入れる(これらの全体を「消化系」という)。この消化系を20分間、インキュベータ(湿潤90%/10% 空気/CO2,37°C)に移し、5分ごとに穏やかに摩砕する。細胞懸濁液を3,000rpmで1分間遠心分離する。ペレット化した細胞をaCSFに再懸濁し、研究を実施する時まで4°Cで保存する。 一部の研究については、aCSFに再懸濁する前に、Histopaque-1077(Sigma Diagnostics,ミズーリ州セントルイス)での密度勾配遠心分離で赤血球(RBC)を除去することにより、ペレット化した細胞をさらに精製することもできる。このさらなる精製工程により、位相差顕微鏡を使った決定で、RBCが≪1%であるような細胞集団を得ることができる。 走査型電子顕微鏡法(SEM) 細胞のブレビングおよび腫脹を研究するには、新鮮単離細胞を室温でNaN3にばく露し、さまざまな時間を置いた後、氷冷4%ホルムアルデヒド+1%グルタルアルデヒドを使って細胞を24時間固定し、次に、エタノールの濃度系列(35、50、75、95、100%)を使って脱水する。標本を臨界点乾燥し(Tousimis)、金コーティングし(technics)、AMR1000走査型電子顕微鏡を使って観測する。 電気生理学 実験は、細胞単離後24時間以内のNRAを使って、室温(22〜25°C)で行う。NaCl 130、KCl 10、CaCl2 1、MgCl2 1、HEPES 32.5、グルコース 12.5(mM)を含有する細胞外バス溶液(pH7.4)で満たした記録チャンバに、上記新鮮単離NRAの一部を入れる。生細胞が表面に付着した後、過剰量の溶液を流して、先の遠心分離では除去されなかった残渣物を洗い流す。膜電流を増幅し(Axopatch 200A,Axon Insruments,カリフォルニア州フォスターシティ)、デジタル化ボード(Digidata 1200A、Axon Instruments)を装備したマイクロコンピュータを使って、Clampexソフトウェア(バージョン8.0,Axon Instruments)を実行することにより、5kHzの頻度でオンラインサンプリングする。HornおよびMarty,1988に記載の方法に従い、セルアタッチト構成とニスタチン穿孔ホールセル構成の両方を使って、無傷の細胞で、膜電流を記録する。Hamillら,1981に記載されているようなインサイドアウト構成とアウトサイドアウト構成の両方を使って、無細胞単離膜パッチで、膜電流を記録する。ホウケイ酸ガラス(Kimax,Fisher Scientific,ペンシルバニア州ピッツバーグ)を引いて作製したパッチクランプピペットは、単一チャネル記録では6〜8MW、ニスタチン穿孔ホールセル法を使った実験では2〜4MWの抵抗を持つ。バス電極はAg/AgClペレット(Clark Electromedical,イングランド・レディング)とし、バス[Cl-]を変化させる場合(この場合は3M KClで作った寒天橋を使ってバスと接続する)を除いて、これをバス内に直接設置する。 用語「細胞内」と「細胞質」は可換であり、同様に用語「細胞外」と「外(部)」も可換である。膜電圧または膜電位に言及する場合、用語「電圧」と「電位」は可換である。細胞膜を「固定する」とは、細胞膜を横切る電圧を一定に保ち、膜電流の変化をイオンチャネルの開閉による膜抵抗変化として測定すること(「電圧固定」)または細胞膜を横切る電流を一定に保ち、膜電圧の変化をチャネルの開閉による膜抵抗の変化として測定すること(「電流固定」)を指す。細胞に膜電圧を例えば「ランプ」または「パルス」で印加する場合、細胞膜は電圧固定され、膜電流が測定されていると理解される。膜「静止電位」を測定する場合は、細胞膜が電流固定され、膜電圧が測定されていると理解される。 「ホールセル」実験構成とは、ピペット溶液が細胞質と連続するように記録ピペットが細胞膜を貫通しているか、またはピペット下の膜がニスタチンを使って穿孔されており、外液は細胞外膜と接触しており、電流または電圧記録が細胞膜全体からの測定に相当する状況を指す。「セルアタッチトパッチ」実験構成とは、パッチがまだ無傷の細胞膜の一部を形成していて、パッチ内のチャネルが記録されるような形で、ピペットが細胞と接触している状況を指す。「アウトサイドアウトパッチ」実験構成とは、ピペット溶液が膜の細胞外側と接触し、かつ外液が膜の細胞質側と接触するような形で、切り取られた細胞膜のパッチが記録ピペットの先端にシールされ、電流または電圧記録が、切り取られた膜のパッチからの測定に相当する状況を指す。「インサイドアウトパッチ」実験構成とは、ピペット溶液が膜の細胞質側と接触し、かつ外液が膜の細胞外側と接触するような形で、切り取られた細胞膜のパッチが記録ピペットの先端にシールされ、電流または電圧記録が、切り取られた膜のパッチからの測定に相当する状況を指す。 「パッチ」という用語には、インサイドアウトパッチ、アウトサイドアウトパッチ、切り取られた細胞膜のパッチ、またはセルアタッチトパッチなどが包含されるが、これらに限るわけではない。「膜調製物」という用語は、哺乳類の細胞または組織から単離されたパッチおよび細胞膜を包含する。単離哺乳類細胞膜は、当技術分野で周知の方法によって調製される。そのような膜調製物の一例は、破砕細胞または組織試料から不連続ショ糖勾配遠心分離によって精製されたミクロソーム画分である。 シール抵抗が<3GWおよびアクセス抵抗が>50MWのパッチは捨てる。保持電位-67mVからのステップパルス(600ms)またはランプパルス(0.32mV/msで-140〜+50mV)中に、巨視的な膜電流を測定する。 記録溶液 ホールセル巨視的記録には、NaCl 130、KCl 10、CaCl2 1、MgCl2 1、HEPES 32.5、グルコース 12.5(mM)を含有するバス溶液(pH7.4)と、ニスタチン穿孔パッチ技術を使用する。ピペット溶液は、KCl 55、K2SO4 75、MgCl2 8、およびHEPES 10(mM)を含有する(pH7.2)。ニスタチン50mg(Calbiochem)をジメチルスルホキシド(DMSO)1mlに溶解する。作業溶液は、16.5mlのニスタチン原液を5mlの基礎ピペット溶液に添加して、最終濃度をニスタチン165mg/mlおよびDMSO 3.3ml/mlにすることにより、実験前に調製する。このピペット溶液の組成は、本来なら含まれているであろうKClの一部に代えて、K2SO4を含んでいる。SO42-陰イオンは、Cl-とは異なり、ニスタチンポアを透過しない。ピペット[Cl-]を下げることにより、Cl-にとって細胞内に向かう駆動力が低下し、その結果として、対策を講じなければ電気生理学的記録中に起こるかもしれない細胞の浸透圧腫脹が最小限に抑えられる(HornおよびMarty,1988)。 セルアタッチトパッチ記録には、NaCl 130、KCl 10、CaCl2 1、MgCl2 1、HEPES 32.5、グルコース 12.5(mM)を含むバス溶液(pH7.4)を使用する。ピペットは、KCl 145、MgCl2 1, CaCl2 0.2、EGTA 5、HEPES 10(mM)を含む(pH7.28)。細胞外溶液の浸透圧の測定値は約300mOsmである(Precision Systems,マサチューセッツ州ナティック)。 ほとんどのインサイドアウトパッチ記録には、CsCl 145、CaCl2 4.5、MgCl2 1、EGTA 5、HEPES 32.5、グルコース 12.5を含むバス溶液(pH7.4)が使用される。ピペットは、CsCl 145、MgCl2 1、CaCl2 0.2、EGTA 5、HEPES 10(mM)を含む(pH7.28)。その他のインサイドアウトパッチ記録では、上記の溶液中のCs+を等モル濃度のK+で置き換える。無機陽イオン置換実験では、ピペット中のCs+を等モル濃度の個々の試験イオンで置き換える。ただし、Ca2+またはMg2+を使用する時は例外で、この場合は、シール形成を容易にするために、75mMの濃度を使用する(Cookら,1990)。 アウトサイドアウトパッチ記録の場合、ピペット溶液は、CsCl 145、MgCl2 1、CaCl2 0.2、EGTA 5、HEPES 10(mM)を含む(pH7.28)。標準バス溶液は、CsCl 145、CaCl2 4.5、MgCl2 1、EGTA 5、HEPES 32.5、グルコース 12.5(mM)を含む(pH7.4)。有機陽イオン置換実験では、バス中のCs+を等モル濃度の試験陽イオンで置き換える。 バス溶液中の遊離Ca2+濃度を下げる必要がある実験では、Ca2+-EGTA緩衝溶液を使用し、プログラムWEBMAXC v2.10(http://www.stanford.edu/~cpatton/maxc.html)を使って、遊離[Ca2+]を計算する。[Ca2+]=1mMには、5mM EGTAおよび4.5mM Ca2+塩を使用する。[Ca2+]=1mM は、細胞内ATP活性およびMg2+活性を調べるための溶液でも使用される。 スロープコンダクタンスを計算するために使用される単一チャネル振幅は、さまざまな電位で得られた記録の全ポイント振幅ヒストグラムにガウス関数を当てはめることによって得た。さまざまな電位における、また異なる試験薬剤を使った場合の、開口チャネル確率(n・Po)を計算するには、全ポイントヒストグラムをガウス関数にあてはめて、開口チャネルに関する当てはめ曲線下の面積を、閉鎖チャネル+開口チャネルに関する当てはめ曲線下の面積で割る。異なる試験薬剤濃度におけるn・Poの値を、最小二乗法で標準ロジスティック式に当てはめる。 K+のイオン透過性と比較したさまざまな陽イオンのイオン透過性を見積もるために、各透過性(Px/PK)を、当技術分野で周知のゴールドマン・ホジキン・カッツ(Goldman-Hodgkin-Katz:GHK)の式に当てはめることにより、その逆転電位(Erev)から求める。Goldman,1943、HodgkinおよびKatz,1949を参照されたい。K+と試験イオンがどちらも透過性であると仮定して、電流-電圧データをGHK式に当てはめる。 本発明のNCCa-ATPチャネルのポアサイズを見積もるために、有機陽イオンの相対透過性を評価する。ストークス-アインシュタイン半径(rse)は、式:rSE・l=定数を使って、イオンの極限伝導度(・)から計算される。定数は25°CにおけるTEAの挙動から決定され、この場合、l=44.9cm2W-1、rSE=0.204nmである。次に、ストーク-アインシュタイン半径を、RobinsonおよびStokes,1970の図6.1から読み取った補正係数を使って、分子半径に換算する。エタノールアミンの等価極限コンダクタンスは記載されており(同書)、他のイオンについては、式:MW 0.5・l=定数により、それぞれの分子量から計算する。定数は、25°Cにおけるエタノールアミンの値、すなわちMW=62.1およびl=4.42cm2W-1当量-1によって決定される。次に、相対透過性(Px/PCs)を、計算したイオン半径に対してプロットする。ポアを通過して浸透する速度(浸透性)に対する溶質サイズの影響は、レンキンの式(Renkin,1955): a/a0=[1-(r/R)]2・[1-2.104(r/R)+2.09(r/R)3-0.95(r/R)5] (1)[式中、a、a0、rおよびRは、それぞれポアの有効面積、ポアの総断面積、溶質の半径、およびポアの半径である]によって表される。 接合部電位は、透析膜を横切って生じる拡散ポテンシャルを測定することにより、電位計で決定し、適宜、差し引く。保持電流は、どの記録からも差し引かない。差電流は、単にNaN3の潅流前と潅流後の電流記録を差し引くだけで、他の処理は使用せずに求める。 結果 神経系細胞腫脹におけるNCCa-ATPチャネルの役割 チャネルの特徴 実施例1:NaN3を用いたATP枯渇による形態変化 培養神経系細胞はATPが枯渇すると腫脹することが示されている。Jurkowitz-Alexanderら,1992、Jurkowitz-Alexanderら,1993を参照されたい。ATPが枯渇した新鮮単離NRAも細胞腫脹を起こす。脳の虚血または外傷性傷害も、脳神経系細胞におけるATPの枯渇を引き起こす。 新鮮単離NRAの表面は非常に複雑で、図14Aの走査型電子顕微鏡像に示すように、細胞表面全体に小さな膜膨出と微細な突起がみられる。NRAをNaN3(1mM)にばく露すると、初期段階では複雑な構造の喪失と表面ブレブの発達(図14B)を特徴とし、続いて後期段階では微細構造の完全な喪失と多数の大きなブレブの形成を伴う著しく腫脹した外観(図14C)を特徴とする、表面外観の変化が起こる。したがってNRAは、NaN3誘発性のATP枯渇後にブレビングと腫脹を起こす。 微細構造を解像することはできないものの、このプロセスの評価には位相差顕微鏡法も役立つ。ブレビングは、NaN3へのばく露の10〜15分後には、はっきり見える。この類の形態変化は、細胞骨格の完全性の喪失と、細胞の腫脹を引き起こす浸透力の作用との組合せに起因すると考えられる。 細胞腫脹への浸透圧勾配の寄与を評価するために、不透過性膨張剤マンニトールの存在下で、実験を繰り返す。細胞外溶液の浸透圧を300mOsmから350mOsmに上昇させるのに十分な濃度のマンニトール(50mM)は、NaN3へのばく露後に起こるブレブ形成を>30分遅らせる。細胞ATPは、NaCN(2.5mM)+2-デオキシグルコース(10mM)へのばく露を使って枯渇させることもできる。Johnsonら,1994を参照されたい。細胞膜ブレビングおよびマンニトールによるブレビングの遅延を含む同様の形態変化が、NaCNと2-デオキシグルコースへのばく露後にも起こる。これは、NaN3の効果が実際にATP枯渇によるのであって、NaN3の他の非特異的効果によるのではないことを証明している。 実施例2:NRAの一般的電気生理学的性質 NRAの全体細胞調製物の巨視的電流は、負の電位では小さい内向き電流、正の電位では大きい外向き電流、そして中間の電位では平坦な「プラトー」領域を特徴とする。NRAは、同じ起源を持つ初代培養細胞での観察結果と一致する巨視的電流を示す。Perillanら,1999、Perillanら,2000を参照されたい。K+平衡電位(EK)より低い電位でNRAが示す内向き電流は、通常<100pAで、培養新生児アストロサイトで報告されている値(RansomおよびSontheimer,1995)よりはるかに小さいが、傷ついた脳から新しく単離されたアストロサイトでの知見(BordeyおよびSontheimer,1998、Schroderら,1999)とは合致している。NRAでの大きい外向き電流は、カリブドトキシン(100nM)、イベリオトキシン(100nM)および塩化テトラエチルアンモニウム(5mM)によって一部遮断され、大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネルの存在と合致する。Perillanら,1999を参照されたい。カリブドトキシンの存在下でも残存する外向き電流は、4-アミノピリジン(5mM)でさらに遮断することができ、遅延整流性K+チャネルに特有の動的性質を示す。先の報告(Perillanら,1999)と合致して、Na+チャネルに起因すると考えられる速い内向き電圧依存性電流が、NRAの1%未満に観察される。 NaN3は35pSチャネルによる脱分極性内向き電流を誘発する 電流固定記録を使って、NRAにおけるNaN3によるATP枯渇の効果を調べる。これらの実験では、代謝破壊の原因が細胞透析ではなく薬物の適用であることを確認するために、ニスタチン穿孔パッチ法を使用する。NaN3(1mM;室温)を細胞外に適用すると、細胞に大きくて迅速な脱分極が起こる(図1A)。NaN3は細胞をEm≫0mV(-4.3±0.9mV)まで迅速に脱分極させる。脱分極は通常、NaN3添加の約1分後に始まり、<3分で完了し、薬物をウォッシュアウトしても不可逆である。ウアバインは既知のNa+/K+-ATPアーゼ遮断薬である。BrismarおよびCollins,1993を参照されたい。NaN3で観測される脱分極の大きさは、ウアバイン(1mM)による小さな可逆的脱分極をはるかに上回っている。これは、NaN3へのばく露後に観察される大きな脱分極がNa+/K+-ATPアーゼポンプの障害によって起こるのではないことを示している。 NaN3による脱分極の時間経過は、同じ処理で観察される細胞膜ブレビングの発達に関する時間経過よりも、かなり速い。また、50mMマンニトールで細胞外浸透圧を上昇させても、脱分極の時間経過と大きさはどちらも影響を受けないが、ブレブ形成はこの処理によって大きく遅延する。したがって、脱分極は一次的事象であり、細胞の腫脹または伸展に対する二次的な事象ではない。 電圧固定記録から、NRAでは、NaN3へのばく露によって、内向き電流の正味の増加が起こることがわかる。ランプパルスを使って得られる記録(図1B)も、ステップパルスを使って得られる記録(図1C)も、NaN3処理の前(a)と後(b)の記録を比較することによってわかるように、NaN3処理後に電流がかなり大きくなることを示している。薬物前の電流-電圧曲線を薬物後の電流-電圧曲線から差し引くことによって得られる「差電流」のプロット(図1Bの線c)は、NaN3によって生じた新しい電流が、0mV付近で逆転することを示している。0mV付近の逆転電位は、NaN3誘発電流が非特異的陽イオンコンダクタンスに起因することを示している。 NaN3誘発電流をさらに特徴づけるために、セルアタッチトパッチ記録を用いる。NaN3へのばく露は、薬物を添加するまでは単一チャネル電流を示さないパッチに、単一チャネル電流を誘発する(図1D)。NaN3の添加後は、低時間分解能での記録により、電流変動の著しい増加が明らかになり、これは時間分解能を上げると、単一チャネル事象によるものであることがわかる(図1Eの3および4)。さまざまな膜電位で記録された単一チャネル事象の振幅を図1Fにプロットする。このプロットは、セルアタッチト構成で測定した場合に弱い内向き整流を示す約35pSの単一チャネルコンダクタンスを、NaN3が活性化することを示している。 セルアタッチト構成で、さまざまな薬物を補足したピペット溶液を使って、追加実験を行う。10mM TEA、5mM 4-AP、100nMイベリオトキシン、100nMカリブドトキシン、1mMテトロドトキシンは、いずれもNaN3が誘発する単一チャネル電流を遮断しない(各化合物につき4〜6パッチ)。これらの実験は、典型的なK+チャネルやNa+チャネルはどちらも関与していないことを示している。また、ピペット溶液には0.2mM Ca2+が含まれているので、これらの単一チャネル開口は、L型Ca2+チャネルを介した一価陽イオン流入によるものとも思えない。 NaCN(2.5mM)+2-デオキシグルコース(10mM)へのばく露を使って細胞ATPを枯渇させた場合にも、これに似た脱分極と35pSチャネルの活性化が起こる。これは、NaN3の効果がATP枯渇によって引き起こされるのであって、NaN3の他の非特異的効果によって引き起こされるのではないことを証明している。 ATP枯渇の他に、パッチの切り取りも、信頼性の高いチャネル活性化方法である。セルアタッチト構成で調べた120個を超える細胞のうち、約35pSのコンダクタンスに起因すると考えられる自発的チャネル活性は、2個の細胞にしか検出されない。したがって、本発明のNCCa-ATPチャネルは、代謝的に健康な細胞では、通例、サイレントである。これとは対照的に、NaN3にも他の代謝毒にもばく露していないNRAから形成されたインサイドアウトパッチの>90%に、約35pSチャネルが存在することから、パッチの切り取りで失われた細胞内要素が普段はチャネルの活性化を妨げていることわかる。 パッチの切り取り以外に考えられるもう一つのチャネル活性化機序は、調節性体積減少(RVD)である。細胞腫脹は、RVDを惹起する刺激として広く認識されている。RVDは、さまざまな電流の活性化を伴う現象で、一部の系では非選択的陽イオンチャネルが含まれる。Onoら,1994を参照されたい。膜パッチをセルアタッチト構成で調べると、低浸透圧刺激(210ミリオスモル/kgH2O)は単一チャネル事象を活性化したが、いずれも約35pSコンダクタンスを示さない。この知見は、NaN3で観察される脱分極とチャネル活性化が、NaN3によって誘発される細胞腫脹に付随して起こるRVD応答の一部ではないことを示し、NaN3が誘発する脱分極は細胞腫脹に先立って起こるという上述の観察結果と合致している。この事実は、NCCa-ATPチャネルが健常な細胞から調製したセルアタッチトパッチにはまれにしか観察されないのに、インサイドアウト構成への変換後は>90%のパッチで明らかになるという観察結果によって裏付けられる。また、NCCa-ATPチャネルは反応性アストロサイトを培養すると間もなく失われる。 実施例3:相対透過性およびポアサイズ インサイドアウト構成の膜パッチを使って、このチャネルをさらに特徴づける。膜の両側を同じ[K+]にして、さまざまな電位への試験パルス中に得られる記録を、図2Aに示す。-140mVから+100mVまでの電位で観測された事象の振幅ヒストグラムを作製し、4つのパッチで得られた値(平均±SE)をプロットして、図2Bに示す。一次式へのデータの当てはめにより、35pSのスロープコンダクタンスと、0mVという予想K+逆転電位(EK)に近い+0.1mVの推定逆転電位(Erev)とが得られる。 このチャネルは、K+を通すだけでなく、さまざまなアルカリイオンを輸送する(図3A)。これはこのチャネルが非選択的陽イオンチャネルであることを示している。Cs+、Na+、Rb+、K+、およびLi+を含むさまざまなアルカリイオンをピペット溶液に入れ、バス溶液を常に等モル濃度のK+として、インサイドアウトパッチで、このチャネルのコンダクタンスを測定する。電流-電圧データをGHK式に当てはめる。Na+はK+(35.2pS)にほぼ等しいスロープコンダクタンス(32.6pS)を持つことがわかるが、他の陽イオンではスロープコンダクタンスが低下する(図3B)。Erevの測定を使ってアルカリイオン系列の相対透過性を見積もる。GHK式から得られる相対透過性の値は、PCs+/PK+=1.06、PNa+/PK+=1.04、PRb+/PK+=1.02、およびPLi+/PK+=0.96であることから、このチャネルはすべての一価陽イオンに対してほぼ等しく透過性であることがわかる。 Cl-などの陰イオンに対する本発明NCCa-ATPチャネルの透過性も評価する。145mM KClでさまざまな電位における単一チャネル電流振幅を測定した後、バス溶液を等モル濃度のグルコン酸K+に変える。寒天橋を使用した場合、溶液の変化によって起こるErevの変化は<0.5mVだった。これは、本発明のNCCa-ATPチャネルが陰イオンに対して基本的に不透過性であることを示している。 二価陽イオンCa2+およびMg2+に対する本チャネルの透過性も調べる(図3C)。ピペット溶液中のカリウムイオンを75mM Ca2+またはMg2+で置き換えると、内向き電流は検出されない。GHK式への当てはめによって得られるErevの最適値は、Ca2+およびMg2+についてそれぞれ≪-65mVで、K+に対する相対透過性は≪0.001になる。これは、このチャネルが二価陽イオンに対して基本的に不透過性であることを示している。 本発明のNCCa-ATPチャネルは一価無機陽イオンをほとんど識別できないので(図3AおよびB)、広範囲にわたる有機陽イオンについてCs+と比較したチャネル透過性を測定することによってチャネルの等価ポアサイズを決定するための実験を行う。アウトサイドアウトパッチ構成を使用し、単一チャネル電流-電圧関係をプロットすることで、いくつかの有機陽イオンについてErevを得る。次に、GHK式への当てはめによって透過性比を求める。有機陽イオン(a)メタノールアミン、(b)グアニジウム、(c)エタノールアミン、(d)ジエチルアミン、(e)ピペラジン、(f)トリス、および(g)N-メチルグルカミンのそれぞれについて、測定された相対透過性の平均値を、それぞれの水和分子半径に対してプロットする(図3D、白丸)。透過性比は、レンキンの式によくあてはまる滑らかに減少する一連の値を与える。レンキンの式は、円柱状ポアを通過する堅い球体の透過性を記述する式である。Renkin,1955。最小二乗法で式に当てはめると、本発明のNCCa-ATPチャネルについて、0.67nmという等価ポア半径が得られる。0.67nmというポア半径は、Ca2+チャネルに見られる6A(McCleskeyおよびAlmers,1985)およびnAchRチャネルに見られる7.4A(Adamsら,1980)に似ている。本明細書に記載の方法で決定される接合部電位は一般に5mVを超えなかった。 実施例4:[ATP]iによる阻害 NCCa-ATPチャネルが、NaN3へのばく露(図1B、1C、1Dおよび1E参照)またはNaCN+2-デオキシグルコースへのばく露によって細胞内ATPを枯渇させた後に作動を始めるという知見から判断すると、このチャネルは細胞内ATPによって阻害される。この事実は、本発明のNCCa-ATPチャネルが、健常な細胞から調製したセルアタッチトパッチではまれにしか観察されないのに、インサイドアウト構成への変換後は>90%のパッチで現れるという観察結果によって裏付けられる。 このチャネルが膜の細胞質側のATPによる遮断に感受性であることを実証するために、インサイドアウトパッチを使用する。Kir2.3やKATPなどのK+チャネルがパッチ活性に寄与していないことを保証するために、電荷担体としてCs+を用いてパッチを調べる。バス内がATPなしかつ1mM Ca2+の場合、NCCa-ATPチャネルは活発な開口を示す。1mMのATPはチャネル活性の大幅な減少を引き起こし、その効果はウォッシュアウトによって容易に打ち消される(図4A)。しかし、チャネルの利用可能性は1mMのAMPまたはADPには左右されない。開口チャネル確率(n・Po)を異なる[ATP]iで測定し、それらの値を[ATP]i=0mMで得られる値に規格化し、標準ロジスティック式に当てはめる。図4Bに示すように、NCCa-ATPチャネルは[ATP]iによって用量依存的に遮断される。ヒル係数1で、50%阻害(IC50)は、[ATP]i=0.79mMに観察され、[ATP]i>30mMではチャネル活性が完全に消失する。ADPおよびAMPはインサイドアウトパッチにおけるNCCa-ATPチャネル活性に影響を持たない。 チャネル活性の50%阻害をもたらす試験化合物の濃度(IC50)を決定するためのこのインビトロアッセイを使って、IC50を含む循環血漿濃度範囲が得られるように、動物モデルでの用量を策定することができる。 実施例5:[Ca2+]iによる活性化 膜の細胞質側のCa2+濃度も、本発明のNCCa-ATPチャネルの活性を調節することがわかる。インサイドアウトパッチを使って、膜電位(Em)=-80mVで研究を行うことにより、NCCa-ATPチャネル活性と[Ca2+]iの間の関係を調べる。[Ca2+]iを変化させると、NCCa-ATPチャネルの活性が明らかに影響を受ける(図5A)。遊離[Ca2+]iが<30nMになると、チャネル活性は明瞭でなくなる。[Ca2+]i>30nMでは、活性がほぼ最大になる約1mMの[Ca2+]iまでは、[Ca2+]iと共に開確率(n・Po)が増加する。 チャネルの利用可能性に対するCa2+の効果は、膜電位に依存することがわかる。3つの異なる電位、すなわちEm=-40mV、-80mVおよび-120mVで、4〜9個のパッチから得たn・Poの値を、3mM [Ca2+]iで観測される値に規格化する。1.5のヒル係数および-40mV、-80mVおよび-120mVでそれぞれ0.12mM、0.31mMおよび1.5mMの50%値を使って、これらのデータを標準ロジスティック式に当てはめる(図5B)。これらのデータは、チャネル活性が生理的に意味のある濃度の[Ca2+]iに強く依存することを示すと共に、Ca2+の効果が電圧依存的であることを示しており、これは膜の電場内にあるCa2+結合部位と一致する。 実施例6:内部Mg2+は整流を引き起こす 一部のチャネルは細胞内Mg2+に感受性を示すので(Chuangら,1997、Perillanら,2000)、セルアタッチトパッチ記録で観察されるチャネル整流(図1F参照)が、細胞内Mg2+によるものでありうるかどうかを決定するための実験を行う。インサイドアウトパッチを使用し、膜の両側のK+を等モル濃度にして研究を行い、細胞質側の[Mg2+]を変化させる。さまざまな[Mg2+]iで観測される単一チャネル記録およびチャネル振幅を図示する(図6)。[Mg2+]i≫30mMでは整流は明白でないが、[Mg2+]i≫100mMでは、整流がだんだん強くなる。100mMでは、Mg2+はフリッカー遮断をもたらすようである。 実施例7:NRAにおけるSURの存在を確認する NRAにSUR受容体が存在するかどうかを決定するために、これらの細胞に対するグリベンクラミドの結合を蛍光顕微鏡法によって評価する。上述したように皮質下白質への刺創とゼラチンスポンジの移植によって、8週齢のウィスターラットを傷つける。8日後に、傷つけた動物から得たホルムアルデヒド固定脳の組織片を、20nM FITC結合グリベンクラミドと共に室温で60分間インキュベートする。ゼラチンスポンジの蛍光像では、標識された細胞がスポンジの空洞を裏打ちしている様子がみえる。脳の傷害に隣接する部分では、グリベンクラミド結合が基本的にみとめられない。これらのデータは、通常は皮質下白質に存在しないSURが、外傷性傷害後の神経系細胞では発現されることを示している。 RT-PCR 全RNAを細胞から抽出してcDNAの合成に使用する。これを、RT-PCRによって反応性アストロサイトから増幅し、臭化エチジウムで染色したアガロースゲル上で解析する。図7Aは、SUR1およびSUR2に関するRT-PCRを示すゲルの写真である。図7BはKir6.1およびKir6.2に関するRT-PCRを示すゲルの写真である。図7Aおよび7Bのレーン3および4はインスリノーマ細胞のRT-PCRを表す。レーン5および6は反応性アストロサイトのRT-PCRを表す。図7Aおよび7Bのレーン1はラダーサイズマーカーである。図7Aおよび7Bのレーン2はブランク対照である。図7Aにおいて、レーン3および4は、それぞれインスリノーマ細胞でのSUR1実験とSUR2実験を示す。インスリノーマ細胞は、SUR1を発現させるが、SUR2は発現させないことが知られている。図7Aのレーン5および6は、それぞれ反応性アストロサイトでのSUR1実験とSUR2実験を表す。図7Aは、対照インスリノーマ細胞だけでなく、反応性アストロサイトにも、SUR1 mRNAが存在することを示している。SUR2はどちらの細胞タイプにも存在しない。図7Bにおいて、レーン3および4は、それぞれインスリノーマ細胞でのKir6.1実験とKir6.2実験を示している。Kir6.1はインスリノーマ細胞に存在するが、Kir6.2は存在しない。Kir6はインスリノーマ細胞でSUR1に会合しているカリウムチャネルである。図7Bのレーン5および6は、Kir6.1とKir6.2が、どちらも反応性アストロサイトに存在しないことを示している。したがって、反応性アストロサイトはSUR1 mRNAを発現させるが、Kir6.1およびKir6.2 mRNAはこの細胞には存在しない。 反応性アストロサイトにSUR1が存在することは、アストロサイト中のNCCa-ATPチャネルがSURアンタゴニストによって調節されることと合わせて、本発明のNCCa-ATPチャネルをSURが調節することを示している。 実施例8:トリプシン消化 SURが調節するKATP機能の特徴は、チャネルの細胞質面のトリプシン消化が、ATPに対する感受性を変化させずに、またチャネルの生物物理学的性質を変化させずに、スルホニル尿素剤による阻害を失わせることである(ただし、チャネルの細胞外面をトリプシン消化しても、これは起こらない)。NCCa-ATP機能に対するトリプシンの影響を図8に示す。対照条件下で、インサイドアウトパッチ構成でのチャネル活性は、1mMグリベンクラミドによって強く阻害される。膜の細胞質側を100mg/mlのトリプシンに3分間ばく露すると、依然として強いチャネル活性を示すパッチが得られるが、そのチャネル活性はグリベンクラミドによる影響を全く受けない。このような細胞質側のトリプシン処理後も、チャネルの生物物理学的性質は、開口チャネルコンダクタンス、開口チャネル時間、Ca2+による活性化などを含めて変化せず、チャネルはATPに対するその典型的感受性を依然として保っている。対照的に、膜の細胞外側をばく露しても、グリベンクラミド阻害に対する影響はない。本発明のNCCa-ATPチャネルに関するこれらのトリプシン消化データは、その結果が今までにSUR1調節性KATPチャネルで得られている知見に匹敵するので、SUR1がNCCa-ATPチャネルの調節に関与していることを裏付けるさらなる証拠になる。SURと非選択的ATP感受性陽イオンチャネルとの関係は今まで示されたことがなかった。 NCCa-ATPチャネルを遮断し神経系細胞腫脹を阻害する化合物または組成物のアッセイ実施例9:スルホニル化合物の効果スルホニル尿素化合物はスルホニル尿素受容体を調節することが知られている。スルホニル尿素受容体は一般的には調節成分としてKATPチャネルと会合していて、ラットNRAを含むさまざまな組織に見いだされる。注目すべきことに、KATPチャネルKir6.1およびKir6.2はラットNRAには存在しない(図7B)。アウトサイドアウトパッチではNCCa-ATPチャネルをSURリガンドであるジアゾキシドで活性化することができる(図9Aおよび9B)。NaN3は単離された膜パッチではチャネル活性を誘発しないが、これは、NaN3が、チャネルに対する直接作用ではなくATP枯渇を介して働くことを示している。 実施例10:NCCa-ATPチャネルの用量依存的遮断を決定するためのインビトロアッセイ グリベンクラミドやトルブタミドなどのSUR1遮断化合物は、KATPチャネルに対して阻害作用を持つことが知られている。一態様として、本発明は、NCCa-ATPチャネルに対するグリベンクラミドおよびトルブタミドの直接阻害作用を決定する方法を提供することによって、本発明の目的を達成する(図10および11)。スルホニル尿素の阻害効果を示すために、インサイドアウトパッチを使用する。K+チャネル、特にKATPチャネルがパッチ電流に寄与していないことを保証するために、Cs+を電荷担体として使用する。チャネル活性は10mMグリベンクラミドの添加によって大幅に減少し(図10Aのb)、その活性は、本発明のNCCa-ATPチャネルと合致する35pS陽イオンチャネルによるものであることが示される(図10C)。もう一つのスルホニル尿素剤トルブタミドも、NCCa-ATPチャネル活性を阻害することが示される(図11Aおよび11B)。図11Bに示すように、NCCa-ATPチャネルはスルホニル尿素剤によって用量依存的に遮断される。トルブタミドの場合、16.1mMで50%阻害(EC50)が観察され、ヒル係数は1.3であり、>300mMの濃度ではチャネル活性が完全に阻害される。グリベンクラミドの場合、EC50は48nMで観察され、ヒル係数は1.2である。これらのスルホニル尿素化合物によるNRAでの遮断に対する本発明NCCa-ATPチャネルの感受性は、どちらの場合も、膵臓b細胞で報告されているものおよびSUR1を含むがSUR2を含まない発現系で報告されているものと、よく一致している。 チャネル活性の50%阻害をもたらす試験化合物濃度を決定するためのこのインビトロアッセイを使って、ある循環血漿濃度範囲が得られるように、動物モデルでの用量を策定することができる。 実施例11:スルホニル尿素剤によるチャネル調節の機序 本発明のNCCa-ATPチャネルは、それぞれ10ms未満の短い滞留時間と長い滞留時間を持つ2つの開口状態を示す。図12は、0.63という開口チャネル確率(n・Po)を示すパッチから得られたデータを示し、開口滞留時間値to-1およびto-2はそれぞれ1.9msおよび8.2msである。続いて、3mMトルブタミド(図12Bおよび12E)および30mMトルブタミド(図12Cおよび12F)を適用すると、n・Poはそれぞれ0.44および0.09まで低下したが、開口滞留時間は、この薬物による影響を感知できるほどには受けない。閉鎖チャネル滞留時間は、トルブタミドによって持続時間と頻度が増加する(図12Hおよび12I)。このように本発明のチャネルは、遮断化合物が開口チャネルドウェル時間には影響を持たず、長い閉鎖が漸進的に増加する形のチャネル阻害を示す。この形のチャネル阻害は、膵臓b細胞のKATPチャネルに対する作用としてスルホニル尿素剤がもたらすものと似ている。Gillisら,1989 、Babeenkoら,1999を参照されたい。 実施例12 100mMのSUR活性化剤ジアゾキシドを適用すると、本発明の35pSチャネルが活性化されて、セルアタッチトパッチに弱い内向き整流が生じる(図13A、13Bおよび13C)。本発明のNCCa-ATPチャネルの活性化に影響を及ぼすSURのタイプを決定するために、SUR1よりもSUR2を優先的に活性化するスルホニル尿素化合物、すなわちクロマカリンおよびピナシジルを使って実験を行う。クロマカリンとピナシジルはどちらも本発明のNCCa-ATPチャネルに影響を及ぼさなかった。これは、SUR1が本発明のNCCa-ATPチャネルと会合することと、チャネルの活性がSUR2によって媒介されないことを示す、本明細書に記載の他のデータと合致している。 実施例13:SURが媒介する細胞腫脹 細胞中のATPを枯渇させるためにNaN3を添加すると、通例、7〜10分後に、細胞ブレビングが明らかになる。ジアゾキシドはSUR1アゴニストまたはSUR1活性化剤である。ジアゾキシドのみを細胞に加えると、ATPの枯渇がなくてもブレビングが起こる。したがってジアゾキシドはSUR1を活性化することにより、ATP枯渇を伴わずにチャネルを直接開口させる。しかし、細胞をグリベンクラミドで前処理すると、NaN3を添加しても、30分後でさえブレビングは起こらない。このようにATP枯渇またはチャネル開口薬ジアゾキシドによるNCCa-ATPチャネルの活性化は、NRAのブレビングおよび腫脹をもたらすことができ、その腫脹は、チャネルをグリベンクラミドで遮断することによって防止することができる。アジ化NaによるATP枯渇は、NRAのネクローシス細胞死をもたらすことができる。この知見は、グリベンクラミドがATP枯渇に続いて起こるNCCa-ATPチャネルの開口を防ぐことと、このチャネルの開口は細胞ブレビングの原因であることを示す本明細書に記載のデータと合致している。 本発明の方法で使用されるアンタゴニストには、NCCa-ATP機能を妨害する化合物が含まれる。通例、アンタゴニストの効果は、チャネルが活性化されていてアンタゴニストの非存在下では電流を測定することができるような条件下での、NCCa-ATP電流の遮断として観察される。 SUR1を遮断する薬剤には、SUR1特異的なスルホニル尿素化合物だけでなく、スルホニル尿素剤とは構造上無関係な化合物も含まれる。そのようなSUR1遮断薬には、2型糖尿病の治療薬として同定され開発されたSURに結合する一群のインスリン分泌促進因子化合物が含まれる。ベンズアミド誘導体、レパグリニド、ナテグリニドおよびメグリチニドは、SURに結合するそのようなインスリン分泌促進因子類に相当する。ナテグリニドはアミノ酸誘導体である。また、スルホニル尿素受容体(SUR)1サブユニットと相互作用するイミダゾリン誘導体、例えばミダグリゾール(KAD-1229)、LY397364およびLY389382なども、同定されている。 本発明の好ましい一態様では、SUR2ではなくSUR1を優先的に遮断する化合物を、本発明の方法に使用する。そのような化合物には、例えばトルブタミドおよびグリクラジドがある。以下の化合物はSUR1とSUR2の両方を遮断する:グリベンクラミド、グリメピリド、レパグリニド、およびメグリチニド。本発明の方法のさらにもう一つの態様では、(SUR2ではなく)SUR1を含むチャネルに対するスルホニル尿素剤の有効性を明らかに増大させることが示されているMgADPと組み合わせて投与を行う。 実施例14 ATP枯渇によるNCCa-ATP活性化が、このチャネルを発現させる反応性アストロサイトのネクローシスを惹起するかどうかを決定するために、グリベンクラミドが、SUR1に対するその作用を介してNCCa-ATPチャネル活性を阻害することによって、反応性アストロサイトを細胞死から保護することができるかどうかを決定するための研究を行う。ATP枯渇に続いて、2つのタイプの細胞死、すなわちアポトーシスとネクローシスを評価する。 要するに、NCCa-ATPチャネルの活性化は、ATP枯渇に続いて起こるNRAのネクローシス死の原因であり、グリベンクラミドはこの形の細胞死を防止することができる。 この実施例では、新鮮単離NRAの調製物をRBCの除去によってさらに精製して、本明細書に記載するように、RBCが<1%である細胞集団を得た。95%を超える細胞がEKに近い静止電位を持っていたことから、酵素的解離法は細胞を感知できるほどには傷つけなかったことが示唆された。免疫蛍光によって決定したところ、95%を超える細胞がアストロサイトマーカーであるグリア線維酸性タンパク質(GFAP)に関して陽性である。位相差顕微鏡法で調べると、NRAは、直径が11〜45mmの範囲のさまざまなサイズを持ち、明位相差像を示すものも、暗位相差像を示すものもある。明位相差像細胞のサブグループは、短いが明瞭な突起(細胞体よりは短いもの)を複数持っていた。この実施例では、短い突起(<1細胞長)を持つ大きい(直径約30mm)明位相差像細胞だけを調べる。このNRA集団は確実にNCCa-ATPチャネルを発現させる。 実験は、細胞の単離から24時間以内に、室温(22〜25°C)で行う。細胞の一部をチャンバースライド(LAB-TEK,イリノイ州ネーパービル)に入れ、NaCl 130、KCl 10、CaCl2 1、MgCl2 1、HEPES 32.5、グルコース 12.5(mM)を含有する細胞外バス溶液(pH7.4)で満たす。生細胞が表面に付着した後、先の遠心分離では除去されなかった残渣物を、過剰の溶液を流すことによって洗い流す。細胞を、1mMアジ化NaによるATP枯渇にかけてNCCa-ATPチャネルを活性化(開口)した後、グリベンクラミド(1mM)と共にインキュベートする。 次に、初期オンコーシスまたはネクローシス細胞死の徴候である細胞膜易透化を示す証拠を得るために、ヨウ化プロピジウム(PI)染色によって細胞を調べる。Barrosら,2001を参照されたい。また、アポトーシスの初期徴候である形質膜の内面から外表面へのホスホアミノ脂質ホスファチジルセリンの表出を示す証拠を得るために、フルオレセイン標識アネキシンV結合によって細胞を調べる。Clodiら,2000、Rucker-Martinら,1999を参照されたい。染色作業は製造者の指示に従って行う(Vybrant Apoptosis Assay Kit 2,Molecular Probes)。ProLong褪色防止マウント剤(Molecular Probes)を使ってスライドをマウントする。Nikon Diaphot落射蛍光顕微鏡(Leitz Wetzlar)を使ってシグナルを可視化する。画像は、SenSysデジタルカメラ(Roper Scientific Inc.)とIPLabソフトウェア(バージョン3.0,Scanalytics Inc.)を使ってキャプチャし、保存する。20倍対物レンズを使用し、独立した20視野で、アネキシンV陽性細胞またはPI陽性細胞を数える。さまざまな処置群に関する20視野での陽性細胞の平均値をANOVAペアワイズ多重比較によって比較して、p<0.05は有意差があることを示すとみなす。 図15Aに示す蛍光顕微鏡写真は、ベースライン(対照)条件下ではアネキシンV陽性細胞とPI陽性細胞(それぞれ写真aおよびd)がどちらも細胞単離物中に稀にしか存在しないことを示している。アジ化Na(1mM)と共に10分間インキュベートすると、PI陽性細胞の数がかなり増加した(p<0.05)(図15Aの写真bおよび図15B)。これは、ATP枯渇がこれらの細胞のネクローシス死を誘発することを示している。対照的に、アジ化Na処理はアネキシンV陽性細胞の数をわずかに増加させたが、その増加は統計的に有意でなかった(p>0.05)(図15Aの写真eおよび図15C)。これは、これらの細胞におけるATP枯渇の主な終点がアポトーシス死ではなかったことを示している。 アジ化ナトリウムを投与するときに細胞をグリベンクラミド(1mM)で前処理すると、PI陽性細胞の数が劇的に減少した(p<0.05、図15Aの写真cおよび図15B)。これは、ATP枯渇に続くネクローシス死が有意に防止されたことを示す。アネキシンV標識によって示されるように、アポトーシス死を起こすNRAの数もグリベンクラミドによって減少したが(図15Aの写真fおよび図15C)、この群の値に有意差はなかった。 このデータは、NCCa-ATPチャネルが反応性アストロサイトのネクローシス細胞死の機序に関与することを示している。この実施例は、アポトーシス細胞死ではなくネクローシス細胞死が、これらの細胞におけるATP枯渇の主な終点であることを示している。したがって、アジ化NaによるATP枯渇は、NCCa-ATPチャネルのATP遮断を除去し、その結果、オンコーシス細胞腫脹を惹起することによって、細胞死を惹起する。このチャネルがオンコーシス細胞腫脹に関与することは、NCCa-ATPチャネルを活性化するチャネル開口薬ジアゾキシドによってネクローシス死を誘発することもできること、そしてNCCa-ATPチャネルの開口を妨げるグリベンクラミドを使ってネクローシス死を遮断できたことによって裏付けられる。反応性アストロサイトの細胞死にNCCa-ATPチャネルが関与することから、これらの細胞における細胞死の機序および標的がわかると共に、外傷性脳傷害時に起こる反応性アストロサイトの死を防止するには、NCCa-ATPチャネルの遮断が重要であることがわかる。 実施例15 NCCa-ATPチャネルの用量依存的遮断をもたらすことができる試験化合物の能力を決定するためのインビトロアッセイ NCCa-ATPチャネル遮断化合物は、NCCa-ATPチャネルに対する試験化合物の直接的阻害効果を決定する方法によって同定することができる。化合物の阻害効果を示すには、インサイドアウトパッチを使用する。K+チャネル、特にKATPチャネルがパッチ電流に寄与していないことを保証するために、Cs+を電荷担体として使用する。チャネル活性を大幅に減少させる化合物であって、そのチャネル活性が35pS陽イオンチャネルによるものであることが示される場合、そのような化合物は、NCCa-ATPチャネルを遮断し神経系細胞腫脹および脳腫脹を阻害することができる化合物であると同定される。さまざまな濃度の化合物を使って、NCCa-ATPチャネルがその化合物によって用量依存的に遮断されるかどうかを決定する。50%阻害が観測される濃度(EC50)およびチャネル活性が完全に失われる濃度を決定する。NRAにおける試験化合物による遮断に対する本発明のNCCa-ATPチャネルの感受性を比較することができる。チャネル活性の50%阻害をもたらす試験化合物の濃度を決定するためのこのインビトロアッセイを使って、ある循環血漿濃度範囲が得られるように、動物モデルでの用量を策定することができる。 実施例16 NCCa-ATPチャネルの用量依存的遮断を決定するためのインビボアッセイ ある循環血漿濃度範囲が得られるように、動物モデルでの用量を策定するために、チャネル活性の50%阻害をもたらす試験化合物の濃度を使用する。当技術分野で知られる方法によって計算された循環血漿濃度範囲をもたらす試験化合物の用量を、脳傷害または脳虚血を持つ動物に投与する。試験化合物が脳腫脹を防止、阻害または減少するかどうかを決定するために、その動物の硬膜外圧および/または頭蓋内圧を例えばマイクロバルーンなどで測定することにより、脳腫脹を定量的にモニターする。腫脹は磁気共鳴(MR)撮像法によってモニターすることもできる。投与を脳傷害前、脳傷害時または脳傷害後に開始する3種類の試験を行う。対照群と比較して脳腫脹を減少させる化合物を、ニューロン細胞腫脹および脳腫脹を阻害することができる化合物であると同定する。さまざまな濃度の化合物を使って、その化合物が用量依存的に効力を発揮するかどうかを決定する。50%阻害が観測される用量および脳腫脹が最も迅速に軽減される濃度を決定する。脳腫脹を防止、阻害または減少させるのに最適な有効用量の試験化合物を薬学的に許容できる担体と共に含む製剤を製造する。 NCCa-ATPチャネルの特徴の要約 本発明のNCCa-ATPチャネルを発現させる細胞および本発明のNCCa-ATPチャネルを含む組成物の特徴を表1に要約する本発明の方法本発明は、今まで知られていなかったイオンチャネルであって、哺乳類神経系細胞中に見いだされ、細胞腫脹に役割を果たすイオンチャネルを提供する。さらに本発明は、上記のチャネルに対するアンタゴニストをスクリーニングする方法、ならびに上記のチャネルに対するアンタゴニスト(グリベンクラミドやトルブタミドなどのスルホニル尿素化合物を含む)の、哺乳動物における脳腫脹の治療薬としての新しい用途も提供する。NCCa-ATPチャネルと相互作用する化合物(例えば同チャネルと結合する化合物、同チャネルを開口させる化合物、同チャネルを遮断する化合物)を同定するための本発明の方法では(i)細胞型アッセイおよび/または(ii)非細胞型アッセイ系を使用する。そのような化合物はNCCa-ATPチャネル活性のアンタゴニストまたはアゴニストとして作用しうる。本発明の好ましい一態様では、NCCa-ATPチャネルの透過性を遮断および/または阻害するアンタゴニストを、神経系細胞腫脹および/または脳腫脹を治療する方法に利用する。細胞型アッセイでは、NCCa-ATPチャネル(好ましくは機能的NCCa-ATPチャネル)を発現させる神経系細胞を使用する。好ましい細胞はNRAである。非細胞型アッセイ系には、NCCa-ATPチャネル(好ましくは機能的NCCa-ATPチャネル)を発現させる膜調製物が含まれる。細胞型アッセイには、例えば化合物結合アッセイ、細胞状態(正常、ブレビング、腫脹)の顕微鏡観察、および化合物へのばく露前とばく露後の両方でチャネル電流を測定することなどが含まれるが、これらに限るわけではない。NCCa-ATPチャネルまたはSUR1と相互作用する化合物、NCCa-ATPチャネルまたはSUR1に結合する化合物、またはNCCa-ATPチャネルまたはSUR1を遮断するもしくは開口させる化合物を同定するために、NCCa-ATPチャネルを発現させる膜調製物を含む組成物を使用することができる。「NCCa-ATPチャネルを発現させる」という用語は、機能的NCCa-ATPチャネルを持つことを意味する。本明細書で使用する「機能的NCCa-ATPチャネル」という用語は、検出することが可能なNCCa-ATPチャネルを意味する。NCCa-ATPチャネルの好ましい検出方法の一つは、チャネルが開口、閉鎖および/または遮断されるかどうかを、インビトロまたはインビボで決定することによる方法である。 例えば、膜調製物を用いる典型的な実験では、NCCa-ATPチャネルを発現させるNRAを使って、膜調製物を製造する。細胞全体および組織から膜を調製する方法は当技術分野ではよく知られている。そのような方法の一つでは、不連続ショ糖勾配遠心分離法によって破砕細胞または組織試料から単離された精製ミクロソーム画分の形で、精製細胞膜を調製する。セルアタッチトパッチ、インサイドアウトパッチまたはアウトサイドアウトパッチから構成される膜も包含される。NCCa-ATPチャネルを発現させる組織試料の一例は、脳傷害に隣接する脳組織である。 上記膜調製物は、例えば化合物へのばく露前とばく露後の両方でチャネル電流を測定することや、インビトロ結合アッセイなど(ただしこれらに限らない)、多くのアッセイに使用される。NCCa-ATPチャネルの状態を決定し定量化するための上述のようなアッセイの実験条件は、例えば結合アッセイ条件、バス組成、ピペット溶液、要求されるATPおよびCa2+の濃度、膜電圧、膜電位、化合物量の範囲、対照などを含めて、本明細書の全体にわたって記載されている。 結合アッセイおよび競合結合アッセイでは、NCCa-ATPチャネルの標識リガンドまたは標識アンタゴニストを使用する。そのような実験の一例では、FITC結合グリベンクラミドまたは放射標識グリベンクラミドなどの標識グリベンクラミドを膜に結合させて、特異的活性をアッセイする。特異的結合は、過剰量の非標識アンタゴニストの存在下で行った結合アッセイとの比較によって決定される。 NCCa-ATPチャネル遮断薬を同定する方法の一つでは、試験化合物の存在下または非存在下で、このチャネルを遮断することが示されている標識化合物と共に、膜をインキュベートする。NCCa-ATPチャネルを遮断し、膜への結合に関して標識化合物と競合する化合物の場合は、賦形剤対照試料と比較して、シグナルが低いだろう。本発明のもう一つの側面として、NCCa-ATPチャネルと既知の(上述した)NCCa-ATPチャネルアンタゴニストまたはSUR1アンタゴニスト(例えばグリベンクラミドなど)との相互作用と競合する化合物を同定するためのスクリーンを設計することができる。そのようなスクリーンでは、既知のNCCa-ATPチャネルアンタゴニストまたはSUR1アンタゴニストを標識した後、その標識アンタゴニストの結合と競合する能力またはその標識アンタゴニストの結合を拮抗する能力について、試験化合物をアッセイする。 本明細書に記載するアッセイは、NCCa-ATPチャネル活性を調節する化合物または同チャネル活性に影響を及ぼす化合物を同定するために使用することができる。例えば、NCCa-ATPチャネル活性に影響を及ぼす化合物には、NCCa-ATPチャネルまたはSUR1に結合する化合物、同定された遮断薬またはリガンド(グリベンクラミドなど)の結合を阻害する化合物、そしてチャネルを開口/活性化するか(アゴニスト)またはチャネルを遮断/阻害する(アンタゴニスト)化合物などが含まれるが、これらに限るわけではない。本明細書に記載するアッセイでは、神経系細胞腫脹を調節する化合物(例えば、NCCa-ATPチャネルに結合するまたは同チャネルを遮断するリガンドによって活性化される神経系細胞腫脹に関与する他の事象に影響を及ぼす化合物)を同定することもできる。本発明によってスクリーニングされる化合物本発明によってスクリーニングされる化合物としては、NCCa-ATPチャネルに結合して同チャネルを開口させる(すなわちアゴニスト)か、同チャネルを遮断する(すなわちアンタゴニスト)、有機化合物、ペプチド、抗体およびその断片、ペプチドミメティックで挙げられるが、これらに限るわけではない。神経系細胞腫脹または脳腫脹の治療に使用するには、チャネルを遮断する化合物が好ましい。チャネルを開口させるかまたはチャネルを開口した状態に保つアゴニストとしては、例えばペプチド、抗体またはその断片、およびNCCa-ATPチャネルのSUR1サブユニット(または、その部分)を含み、循環中のSUR1リガンドに結合して、それを「中和」する他の有機化合物などが挙げられる。 NCCa-ATPチャネルに影響を及ぼす化合物のスクリーニングについては、例えば天然物または合成化学物質、生物活性物質(タンパク質を含む)などの既知化合物のライブラリーを、阻害剤または活性化剤である化合物に関してスクリーニングすることができる。そのような化合物は、好ましくは、NCCa-ATPアンタゴニストであり、これには、NCCa-ATPチャネル阻害剤、NCCa-ATPチャネル遮断薬、SUR1アンタゴニスト、SUR1阻害剤、および/または本チャネルを通過する膜電流の大きさを減少させることができる化合物が含まれる。 化合物としては、例えば、小さい有機分子または無機分子、化合物ライブラリーに含まれている化合物、ペプチド、例えば可溶性ペプチド(ランダムペプチドライブラリー(例えば、Lam,K.S.ら,1991,Nature 354:82-84、Houghten,R.ら,1991,Nature 354:84-86を参照されたい)や、D-および/またはL-立体配置アミノ酸で作られたコンビナトリアルケミストリーによる分子ライブラリーのメンバーを含むが、これらに限るわけではない)、ホスホペプチド(ランダムなまたは一部縮重した指向型ホスホペプチドライブラリーのメンバーを含むが、これに限るわけではない;例えば、Songyang,Z.ら,1993,Cell 72:767-778を参照されたい)、抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体または一本鎖抗体、ならびにFab、F(ab')2およびFab発現ライブラリー断片およびそのエピトープ結合断片を含むが、これらに限るわけではない)などを挙げることができるが、これらに限るわけではない。本発明によってスクリーニングすることができる他の化合物としては、例えば、血液脳関門を横切って、適当な神経系細胞に侵入し、NCCa-ATPチャネル遺伝子またはNCCa-ATPチャネル活性に関与する他の何らかの遺伝子の発現に(例えば遺伝子発現に関与する調節領域または転写因子と相互作用することなどによって)影響を及ぼすことができる小さい有機分子、またはNCCa-ATPチャネルの活性またはNCCa-ATPチャネル活性に関与する他の何らかの細胞内因子の活性に影響を及ぼすそのような化合物を挙げることができるが、これらに限るわけではない。 コンピュータモデリング技術およびコンピュータ検索技術は、NCCa-ATPチャネルの活性または発現を調節することができる化合物の同定または既に同定されている化合物の改良を可能にする。そのような化合物または組成物を同定したら、その活性部位または活性領域を同定する。そのような活性部位は典型的な例としてリガンド結合部位であるかもしれない。活性部位は、例えば関連化合物または組成物と他のリガンドとの複合体の研究から、またはペプチドのアミノ酸配列から、または核酸のヌクレオチド配列から、当技術分野で知られている方法を使って同定することができる。関連化合物の複合体を研究して活性部位を見いだすには、化学的方法またはX線結晶学的方法を使用することができる。活性部位の三次元幾何構造を決定する。これは、完全な分子構造を決定することができるX線結晶構造解析を含む既知の方法によって行うことができる。一方、一定の分子内距離を決定するには、固相または液相NMRを使用することができる。部分的なまたな完全な幾何構造を得るために、他の実験的構造決定法をどれでも用いることができる。天然または人工リガンドと複合体を形成している幾何構造を測定することもでき、そうすることで、決定される活性部位構造の精度が向上する場合もある。 決定される構造が不完全または不十分な精度である場合は、コンピュータに基づく数値モデリングの方法を使って、構造を完全にするか、またはその精度を改善することができる。例えばタンパク質または核酸などの特定生体ポリマーに特化したパラメータ化モデル、分子運動の計算に基づく分子動力学モデル、熱集団に基づく統計力学モデル、または併用モデルなどを含めて、一般に認められているモデリング法はどれでも使用することができる。ほとんどのタイプのモデルでは、構成原子および構成基間の力を表す標準分子力場が必要であり、物理化学で知られている力場から選択することができる。実験的に得た不完全な構造または精度の低い構造は、これらのモデリング法によって計算される完全でより精度の高い構造に対する制約条件として役立ちうる。 最後に、活性部位の構造を実験的に、またはモデリングによって、またはその併用によって、決定し終えたら、化合物とその分子構造に関する情報とを含むデータベースを検索することによって、調節化合物候補を同定することができる。そのような検索では、決定された活性部位構造と適合する構造を持つ化合物および活性部位を規定する基と相互作用する化合物を探す。そのような検索は手作業で行うこともできるが、好ましくはコンピュータの助けを借りて行う。この検索によって見つかったこれらの化合物は、潜在的NCCa-ATPチャネル調節(好ましくは遮断)化合物である。 もう一つの選択肢として、既知の調節化合物または調節リガンドから改良された調節化合物を同定するために、これらの方法を使用することもできる。既知化合物の組成を修飾することができ、上述の実験的方法およびコンピュータモデリング法を新しい組成に適用することによって、修飾の構造への影響を決定することができる。次に、変化させた構造を化合物の活性部位構造と比較して、フィット性または相互作用の改善が得られるかどうかを決定する。このようにして、例えば側鎖基を変化させることなどによる系統的な組成変化を迅速に評価して、特異性または活性が改善された修飾調節化合物または修飾調節リガンドを得ることができる。 分子モデリングシステムの例はCHARMmプログラムおよびQUANTAプログラムである(Polygen Corporation,マサチューセッツ州ウォルサム)。CHARMmはエネルギー最小化および分子動力学機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび解析を実行する。QUANTAでは、分子相互の挙動のインタラクティブな構築、修飾、可視化および解析が可能である。例えば、Rotivinenら(1988,Acta Pharmaceutical Fennica 97:159-166)、Ripka(1988 New Scientist 54-57)、McKinalyおよびRossmann(1989,Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 29:111-122)、PerryおよびDavies「OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design」(Alan R. Liss,Inc. 1989)の189〜193頁、LewisおよびDean(1989,Proc. R. Soc. Lond. 236:125-140および141-162)、また核酸成分のモデル受容体については、Askewら(1989,J. Am. Chem. Soc. 111:1082-1090)など、多くの論文に、薬物と特定タンパク質との相互作用のコンピュータモデリングが概説されている。化学物質をスクリーニングしグラフィック表示するコンピュータプログラムは他にも、BioDesign,Inc.(カリフォルニア州パサデナ)、 Allelix,Inc.(カナダ・オンタリオ州ミシソーガ)およびHypercube,Inc.(オンタリオ州ケンブリッジ)などの会社から入手することができる。これらは主に、特定のタンパク質に対して特異的な薬物への応用を意図して設計されているが、DNAまたはRNAの領域が同定されたら、その領域に特異的な薬物の設計にも適合させることができる。 本明細書に記載したようなアッセイによって同定された化合物は、例えばNCCa-ATPチャネルの生物学的機能を詳述したり、脳腫脹を緩和したりするのに役立ちうる。 細胞スクリーンで同定された化合物の効力を試験するためのアッセイは、脳腫脹の動物モデル系で試験することができる。そのような動物モデルは、脳腫脹の治療に有効でありうる薬物、医薬品、治療法およびインターベンションを同定するための試験基質として使用することができる。例えば、脳傷害などの脳腫脹の動物モデルを、脳腫脹を阻害する能力を示すと思われる化合物に、ばく露された動物における脳腫脹のそのような阻害を誘発するのに十分な濃度で、十分な時間にわたって、ばく露することができる。このばく露に対する動物の応答は、視覚的手段(例えば放射線、CAT、MRI)、頭蓋内圧の測定、および/または脳腫脹に関係する症状の逆転を用いてモニターすることができる。本発明については、脳腫脹関連症状の任意の側面を逆転させる任意の処置を、脳腫脹治療インターベンションの候補であると見なすべきである。試験剤の投与量は、本明細書で議論するように、用量反応曲線から導くことによって決定することができる。したがって本発明は、神経系細胞腫脹および神経系細胞死ならびに脳腫脹の治療または軽減、特に外傷性脳傷害に関係する脳発作、中枢神経系損傷、末梢神経系損傷、脳卒中などの脳虚血、または浮腫、傷害または外傷に関係する合併症および/または浮腫、傷害または外傷から派生する合併症の治療または軽減に有用である。そのような損傷または合併症の特徴として、明白な脳損傷または脳異常を挙げることができ、その症状は、本明細書に記載の活性化合物または活性物質の有効量の投与を含む本発明の方法によって減少させることができる。本発明の具体的一態様によれば、有効量の活性化合物を投与することによって、開いたままでは神経系細胞腫脹および神経系細胞死につながるチャネルを遮断することができる。SUR1に対するさまざまなアンタゴニストは、このチャネルを遮断するのに適している。適切なSUR1アンタゴニストの例には、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、MgADP、およびそれらの組合せなどがあるが、これらに限るわけではない。本発明の好ましい一態様では、SUR1アンタゴニストが、グリベンクラミドおよびトルブタミドからなる群より選択される。例えば神経系細胞を分極状態に保つ方法や、強い脱分極を防止する方法など(ただしこれらに限らない)、神経系細胞腫脹および神経系細胞死を防止するためのさらに他の治療「戦略」も採用することができる。 実施例17 NRAを分極状態に保つための追加の機構 反応性アストロサイトがNCCa-ATPチャネルの開口によって強く脱分極すると、反応性アストロサイトはブレビングと腫脹を起こし、ついにはネクローシス細胞死する。上述のように、反応性アストロサイトが、Ca2+とATPに対して感受性を示す非選択的チャネル(NCCa-ATPチャネル)の開口によって強く脱分極すると、反応性アストロサイトはブレビングと腫脹を起こし、ついにはネクローシス細胞死する。これらの反応性アストロサイトの死は、強い脱分極を防止することができるのであれば、言い換えると、細胞を分極状態に保つことができるのであれば、防止することができる。 NRAを分極状態に保つ潜在的方法の一つは、Kir2.3チャネルを開口することである。Ker2.3チャネルを開いたままにしておくために、NRAをKir2.3チャネル開口薬テニダップにばく露する。傷害後の成体ラット脳から新しく収集された天然反応性アストロサイトをテニダップにばく露して、これらの細胞のKir2.3チャネルを開口させるこの薬物の能力を評価する。好ましくは、1型反応性(R1)アストロサイトを収集して、このアッセイに使用する。反応性アストロサイトのサブタイプの一つは、R1型アストロサイトである。R1型アストロサイトは、脳傷害部位にある回復可能なアストロサイトのうち、最も大きい集団を構成している。これらは、傷害部位を取り囲む組織の領域に特徴的に局在しており、その多くは損傷部位そのものの中に遊走していることが見いだされる。Perillanら,1999を参照されたい。 TBIおよび脳卒中に対する細胞応答の一部である反応性アストロサイトは、少なくとも2つのサブタイプからなる。反応性アストロサイトのサブタイプの一つは、R1型アストロサイトである。R1型アストロサイトは、脳傷害部位にある回復可能なアストロサイトのうち、最も大きい集団を構成している。これらは、傷害部位を取り囲む組織の領域に特徴的に局在しており、これらの細胞の多くは損傷部位そのものの中に遊走していることも見いだされる。Perillanら,1999を参照されたい。 R1型アストロサイトは、NRA調製物中の反応性アストロサイトの主要タイプである。R1型アストロサイトは、その細胞膜に、決定的に重要な2つのイオンチャネルを発現させる。すなわち、(a)培養細胞にも新鮮単離細胞にも存在するKir2.3チャネル、および(b)新鮮単離反応性アストロサイトだけに存在し、培養すると間もなく失われる、NCCa-ATPチャネルである。Kir2.3は、分極した細胞をカリウム逆転電位付近の正常な静止電位(約-75mV)に保っておくのに決定的に重要な、内向き整流チャネルである。このチャネルが不活化または阻害されると、細胞は塩化物逆転電位に近い電位(約-25mV)まで脱分極する。NCCa-ATPチャネルの特徴は、1)Na、Kおよび他の一価陽イオンを極めて容易に通過させる非選択的陽イオンチャネルであること、2)細胞内カルシウムの増加および/または細胞内ATPの減少によって活性化されること、3)1型スルホニル尿素受容体(SUR1)によって調節されることである。SUR1は、膵臓b細胞に見いだされるようなKATPチャネルだけと会合していると、今まで考えられきた。 虚血または低酸素の場合と同様のATP枯渇に続いてNCCa-ATPチャネルが開口すると、Naの流入による細胞の脱分極が起こる。このNaの流入は細胞内の浸透圧負荷を増加させ、結果として、その浸透圧負荷を平衡化するためにH2Oが細胞内に侵入する。その結果、細胞内はNaとH2Oが過剰になる。これは、細胞ブレビングおよび細胞腫脹をもたらす病的応答で、細胞毒性浮腫と呼ばれる。放っておくと、この病的応答はついには細胞死をもたらす。本明細書に開示するように、この細胞死は大半がネクローシス細胞死であるが、それほど多くはないもののアポトーシス細胞死も起こる。 細胞毒性浮腫による脳腫脹を改善するには、いくつかのアプローチを使用することができる。関連する臨床状況にある患者を治療するために現在使用されている治療方法の一つは、H2O流入の駆動力を低下させるために、細胞外浸透圧を増加させることに基づいている。この戦略は単離された細胞におけるブレビングも減少させる。 細胞毒性浮腫を減少させるためのより特異的な戦略は、H2Oを細胞内に引き込んで細胞毒性浮腫を実際に引き起こすNa流入の主たる原因であるNCCa-ATPチャネルを不活化または遮断することである。このチャネルを不活化するためのアプローチで選択性の高いものの一つは、このチャネルと制御調節サブユニットSUR1とのユニークな関係を利用することである。膵臓b細胞中のKATPチャネルを遮断することで糖尿病を治療するために、これらの細胞中のSUR1と相互作用するさまざまな薬物が開発されている。これらの薬物の一部は、スルホニル尿素剤と呼ばれる薬剤群に属する。本明細書で述べるように、KATPチャネルを遮断するグリベンクラミドやトルブタミドなどの薬物は、R1型アストロサイト中のNCCa-ATPチャネルを極めて効果的に遮断する。NRAのNCCa-ATPチャネルを遮断する能力を持つ薬物は、(a)ATP枯渇に応答して起こる細胞ブレビングを防止し、(b)ATP枯渇に続く細胞死を有意に減少させる。脳卒中または脳障害に冒された動物における脳腫脹を治療するためのグリベンクラミドの使用も、本明細書に記載する。 NCCa-ATPチャネルの効果に対抗して細胞毒性浮腫を減少させるためのさらにもう一つの戦略は、NCCa-ATPチャネルの開口に伴う細胞の脱分極を妨害することだろう。これを達成する方法の一つは、これらの細胞中に同様に存在するKir2.3チャネルの開口を増進することである。抗炎症化合物テニダップはKir2.3チャネルの開口薬である。Poppら,1992、Liuら,2002を参照されたい。単離細胞中で、および傷害を受けたラット脳をin situで、ATP枯渇に応答して起こる細胞のブレビングおよび腫脹ならびにネクローシス細胞死を減少させる能力について、テニダップを評価する。テニダップがR1型アストロサイト中のKir2.3チャネルを開口させるかどうかを評価するために、NCCa-ATPチャネルの状態の評価に関して本明細書に説明した方法と同様の方法を使用する。テニダップがR1型アストロサイト中のKir2.3チャネルを開口させ、ATP枯渇に応答して起こる細胞ブレビングおよび細胞死を減少させることを示す、このような実験の結果により、TBIまたは脳虚血に起因する脳腫脹および細胞毒性浮腫の治療に、テニダップが有用であることが示されるだろう。有効量のテニダップとは、神経系細胞の腫脹およびネクローシス細胞死を阻害するこの薬物の能力によって脳腫脹または脳虚血を減少させることができる量である。 SUR1遮断薬は、最も特異的で信頼でき、有害副作用も最も少ないと思われる。さらに、浸透圧性利尿薬、グリベンクラミドなどのNCCa-ATPチャネル遮断薬、およびテニダップなどのKir2.3チャネル開口薬の使用を含む治療の組合せによって、脳傷害および脳卒中における細胞浮腫の改善ならびに罹病率および死亡率の減少に、より良い効力が得られるだろう。したがって、本発明のもう一つの目的は、神経系細胞腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、Kir2.3チャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物がKir2.3チャネルを開口させるかどうかを決定することを含み、Kir2.3チャネルを開口させる試験化合物を、神経系細胞腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のさらにもう一つの目的は、脳腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、Kir2.3チャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物がKir2.3チャネルを開口させるかどうかを決定することを含み、Kir2.3チャネルを開口させる試験化合物を、脳腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、動物における神経系細胞腫脹および/または脳腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、Kir2.3チャネルを含む組成物と接触させること、および(b)その試験化合物がKir2.3チャネルを開口させるかどうかを決定することを含み、Kir2.3チャネルを開口させる試験化合物を、動物における神経系細胞腫脹および/または脳腫脹を阻害するための化合物であると同定する方法を提供することである。 本発明のさらにもう一つの目的は、対象における脳腫脹を予防、阻害および/または軽減する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、Kir2.3チャネルを含む組成物と接触させて、その試験化合物がKir2.3チャネルを開口させるかどうかを決定すること、および(b)その試験化合物を、脳傷害または脳虚血を持つ対象に投与して、その試験化合物が前記対象における脳腫脹を予防、阻害および/または軽減するかどうかを決定することを含み、Kir2.3チャネルを開口させる化合物を、脳腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、動物における神経系細胞腫脹を阻害する化合物を同定する方法であって、(a)試験化合物を、Kir2.3チャネルを含む組成物と接触させ、その試験化合物がKir2.3チャネルを開口させるかどうかを決定すること、および(b)その試験化合物を、脳傷害または脳虚血を持つ動物に投与して、その試験化合物が、処置された動物の脳腫脹を阻害するかどうかを決定することを含み、脳腫脹を阻害する試験化合物を、動物における神経系細胞腫脹を阻害する化合物であると同定する方法を提供することである。また、対象の脳における神経系細胞腫脹を防止する方法であって、有効量の、Kir2.3チャネルを開口させる化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を、前記対象に投与することを含む方法を提供することも、本発明の目的である。本発明のさらにもう一つの目的は、対象における神経系細胞腫脹から派生する外傷性脳傷害または脳虚血の負の影響を軽減する方法であって、有効量の、Kir2.3チャネルを開口させる化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を、前記対象に投与することを含む方法を提供することである。Kir2.3チャネルに対する化合物の効果を評価する方法を提供する本発明の目的では、好ましい化合物はテニダップである。例えば、上記の製剤により、約10mg/日〜約500mg/日の1日量のテニダップが得られる。また、脳内に直接投与するのであれば、テニダップの1日量は約500mg/日〜1.5g/日またはそれ以上である。神経系細胞腫脹および脳腫脹を治療する方法および医薬製剤本発明の組成物本発明では、本明細書に開示する活性物質を含む組成物を使用した治療方法も考えられる。これらの組成物として、好ましくは、治療有効量の、1つ以上の活性化合物または活性物質と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物が挙げられる。 本明細書で使用する「薬学的に許容できる」担体とは、無毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材、あらゆるタイプの製剤助剤、または単に滅菌水性媒質、例えば食塩水を意味する。薬学的に許容できる担体として役立ちうる材料の例として、例えばラクトース、グルコースおよびショ糖などの糖類、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、例えばカカオ脂および坐剤用のロウなどの賦形剤、例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、寒天などのエステル類、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールおよびリン酸緩衝溶液、ならびに医薬製剤に使用される他の無毒性適合物質が挙げられる。 例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、着香剤および芳香剤、保存剤および酸化防止剤も、調剤者の判断に従って組成物中に含めることができる。薬学的に許容できる酸化防止剤の例には、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤、および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などがあるが、これらに限るわけではない。 用量決定 グリベンクラミドまたはトルブタミドなどの活性化合物の「治療有効量」または単に「有効量」とは、どの医療処置にも適用可能な合理的便益/リスク比で脳腫脹を治療または軽減するのに十分な化合物量を意味する。しかし、本発明の活性化合物および組成物の総1日量が、妥当な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることは、理解されるだろう。特定の患者に対して治療的に有効な具体的投与レベルは、例えば治療される障害および脳傷害または虚血の重症度、使用する特定化合物の活性、使用する特定組成物、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食餌、使用する特定化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度、治療の継続時間、使用する特定化合物と併用または同時使用される薬物、その他、医学分野で周知の要因など、さまざまな要因に依存するだろう。 そのような化合物の毒性および治療効力は、標準的な薬学的手法により、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための細胞アッセイまたは実験動物で、決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比を治療係数といい、比LD50/ED50で表すことができる。大きい治療係数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物も使用できるが、非感染細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、結果として副作用を減少させるために、そのような化合物を患部組織部位に向かわせる送達系を設計するように注意を払うべきである。 細胞培養アッセイおよび動物実験によって得たデータは、ヒトでの使用のための投与量範囲を策定する際に利用することができる。そのような化合物の投与量は、ED50を含む循環濃度の範囲内にあって、毒性をほとんどまたは全く持たないことが好ましい。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。本発明の方法で使用される化合物の場合は、まず細胞型アッセイから治療有効量を見積もることができる。動物モデルでは、細胞培養で決定したIC50(すなわち症状の50%阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲が得られるように、用量を策定することができる。そのような情報を利用して、ヒトに有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。 単回でまたは複数回に分割して対象に投与される本発明の活性化合物の総1日量は、例えば0.01〜25mg/kg体重、より一般的には0.1〜15mg/kg体重の量にすることができる。単回投与組成物は、1日量を構成するそのような量またはその約量を含みうる。一般に、本発明による治療計画は、そのような治療を必要とするヒトまたは他の哺乳動物に、1日あたり約1mg〜約1000mgの本発明活性物質を、1mg、5mg、10mg、100mg、500mgまたは1000mgの複数回投与量または単回投与量で、投与することを含む。一定の状況では、特に治療の初期には、患者の血流中にかなり高用量の活性剤を維持することが重要になりうる。そのようなかなり高い用量には、他の適応症での使用よりも数倍高い用量が含まれうる。例えば、経口または静脈内グリベンクラミドの典型的な抗糖尿病用量は1日あたり約2.5mg/kg〜約15mg/kgであり、経口または静脈内トルブタミドの典型的な抗糖尿病用量は1日あたり約0.5g/kg〜約2.0g/kgであり、経口グリクラジドの典型的な抗糖尿病用量は1日あたり約30mg/kg〜約120mg/kgであるが、神経系細胞腫脹および脳腫脹を遮断するには、これよりはるかに高い用量が必要になりうる。例えば、有効量の、NCCa-ATPチャネルを遮断する化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を対象に投与することによって、その対象の脳における神経系細胞腫脹を防止する方法に関する本発明の一態様では、そのような製剤が、約0.1〜約100グラムのトルブタミドまたは約0.5〜約150ミリグラムのグリベンクラミドを含みうる。有効量の、NCCa-ATPチャネルを遮断する化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む製剤を対象に投与することによって、その対象において神経系細胞腫脹から派生する外傷性脳傷害または脳虚血の負の影響を軽減する方法に関する本発明のもう一つの態様では。 外傷性脳傷害または脳虚血(脳卒中など)または脳低酸素の状況では、特に治療の初期には、患者の脳に確実に送達するために、かなり高用量の活性物質を維持することが重要になりうる。したがって少なくとも最初のうちは、所定の期間にわたって、好ましくは少なくとも約6時間以上、より好ましくは少なくとも約12時間以上、最も好ましくは少なくとも約24時間以上にわたって、用量を比較的高くかつ/または実質上一定のレベルに保つことが重要になりうる。外傷性脳障害または脳虚血(脳卒中など)の状況では、特に治療の初期には、患者の脳に確実に送達するために、かなり高用量の活性物質を維持することが重要になりうる。本発明の方法を、外傷性脳傷害または脳虚血(例えば脳卒中)などの脳内出血が関わる状態の治療に使用する場合は、血管系を介した送達を利用することができ、化合物が血液脳関門を容易に横切る必要は必ずしもない。 製剤および投与 本発明の化合物は単独で、または中枢神経系もしくは末梢神経系、特に脳の選択された領域に影響を及ぼす他の薬剤と組み合わせて、もしくは同時治療として、投与することができる。 経口投与用の液体剤形としては、例えば水、等張液または食塩水などの当技術分野で良く使用される不活性希釈剤を含む、薬学的に許容できるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を挙げることができる。そのような組成物は、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、着香剤および芳香剤などの佐剤も含むこともできる。 注射用調製物、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使って、既知の技術で製剤化することができる。滅菌注射用調製物は、無毒性な非経口投与用の希釈剤または溶媒を使った滅菌注射溶液剤、懸濁剤またはエマルジョン、例えば1,3-ブタンジオールを使った溶液剤であってもよい。使用してもよい許容できるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液(U.S.P.)および等張食塩溶液などがある。また、滅菌不揮発性油も、従来どおり、溶媒または懸濁媒として使用される。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の非刺激性不揮発性油を使用することができる。また、注射剤の製造には、オレイン酸などの脂肪酸も使用される。 注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターを通した濾過によって、または滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒質に使用直前に溶解または分散することができる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。 薬物の効果を長持ちさせるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが、しばしば望ましい。これを達成するために最もよく用いられる方法は、水溶性の低い結晶性または無定形材料の懸濁液を注射することである。薬物の吸収速度は薬物の溶解速度に依存するようになり、その溶解速度は、薬物の物理的状態、例えば結晶サイズおよび結晶形などに依存する。薬物の吸収を遅延させるもう一つのアプローチは、薬物を油性溶液または油性懸濁液として投与することである。薬物とポリラクチド-ポリグリコシドなどの生分解性ポリマーとのマイクロカプセルマトリックスを形成させることによって、注射用デポー剤形を作ることもできる。薬物とポリマーの比およびポリマーの組成に依存して、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリオルトエステル類およびポリ無水物類などがある。デポー注射剤は、体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を閉じこめることによって作ることもできる。 薬物を直腸投与するための坐剤は、常温では固体であるが直腸温度では液体になり、したがって直腸内で融解して薬物を放出するカカオ脂およびポリエチレングリコールなどの適切な非刺激性賦形剤と、薬物とを混合することによって、調製することができる。 経口投与用の固体剤形としては、例えばカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、ジェルキャップおよび顆粒剤を挙げることができる。そのような固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えばショ糖、乳糖またはデンプンなどと混合することができる。そのような剤形は、通常の実務どおり、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば打錠用潤滑剤および他の打錠助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどを含むことができる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含むこともできる。さらに、腸溶コーティングおよび他の制御放出コーティングを施した錠剤および丸剤を調製することもできる。 ラクトースまたは乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを使って、同じようなタイプの固形組成物を、軟質ゼラチンカプセル剤および硬質ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用することもできる。 活性化合物は、上述した1つ以上の賦形剤と共に、マイクロカプセル状にすることもできる。腸溶性コーティングなどのコーティングおよび殻ならびに医薬製剤技術分野でよく知られる他のコーティングを施した錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤形を調製することができる。これらは所望であれば不透明化剤を含んでもよく、活性成分を腸管の特定部分だけで、または腸管の特定部分で優先的に、所望であれば遅延して放出させる組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびロウなどが挙げられる。 本発明化合物の局所投与用または経皮投与用の剤形として、さらに軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレイ剤、吸入剤、パッチ剤などが挙げられる。経皮パッチ剤には、身体への活性化合物の制御送達が得られるという利点もある。そのような剤形は、化合物を適切な媒質に溶解するか分散させることによって製造することができる。皮膚を横断する化合物のフラックスが増加するように、吸収促進剤も使用することができる。速度は、速度制御膜を設けるか、化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって、制御することができる。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性の脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物などの賦形剤を含みうる。 本発明の方法では、本明細書に記載の化合物を、インビトロ用途およびインビボ用途の両方に使用する。インビボ用途には、本発明化合物を薬学的に許容できる投与用の製剤に組み込むことができる。当業者であれば、本発明の化合物をそのように使用する時に、適切な用量レベルを容易に決定することができる。本明細書で使用する「適切な用量レベル」という表現は、インビボでNCCa-ATPチャネルを効果的に遮断し、神経系細胞腫脹を予防するか減少させることができるほど十分に高い循環濃度をもたらすのに足りる化合物レベルを指す。 本発明のある一態様では、(上述したような)少なくとも1つのSUR1アンタゴニスト化合物と薬学的に許容できる担体とを含む組成物が考えられる。 典型的な薬学的に許容できる担体には、経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与などの投与に適した担体などがある。クリーム剤、ローション剤、錠剤、飛散性散剤、顆粒剤、シロップ剤、エリキシル剤、滅菌水性または非水性溶液剤、懸濁剤またはエマルジョンなどの剤形での投与が考えられる。 経口液剤を調製する場合は、適切な担体として、エマルジョン、溶液、懸濁液、シロップなどが挙げられ、これらは、所望であれば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、着香剤および芳香剤などの添加剤を含んでもよい。 非経口投与用の液剤を調製する場合は、適切な担体として、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、またはエマルジョンなどが挙げられる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油およびトウモロコシ油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。そのような剤形は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの佐剤も含むことができる。これらは、例えば細菌保持フィルターを通した濾過によって、または組成物に滅菌剤を組み込むことによって、または組成物に放射線照射することによって、または組成物を加熱することなどによって滅菌することができる。また、これらは、滅菌水の形で、または他の何らかの滅菌注射用媒質の形で、使用直前に製造することもできる。活性化合物は、薬学的に許容できる担体ならびに必要に応じて所要の保存剤または緩衝剤と、滅菌条件下で混合される。 上述した本発明の好ましい態様の開示は例示および説明を目的として行ったものである。上記の説明が網羅的であるとは考えていないし、開示した形態そのものに本発明を限定しようとする意図もない。本明細書に記載した態様の多くの変形および変更態様は、上記の開示に照らせば、当業者には明白だろう。本発明の範囲は、本願の請求項とその等価物によってのみ限定されるべきである。 さらに、本発明の代表的態様を説明するにあたって、本明細書では、本発明の方法および/またはプロセスを、特定の工程順序で記載した場合もある。しかし、その方法またはプロセスが本明細書に記載した特定の工程順序に頼っているのでない限り、その方法またはプロセスを、ここに記載した特定の工程順序に限定すべきではない。当業者には理解されるだろうが、他の工程順序も可能でありうる。したがって、本明細書に記載した特定の工程順序は、請求項に対する限定であると解釈すべきでない。また、本発明の方法および/またはプロセスに関する請求項は、記載した順にその工程を実行することに限定すべきでなく、当業者であれば、順序を変えてもなお本発明の精神および範囲内にとどまりうることは容易に理解できるだろう。さらに、本発明の代表的態様を説明するにあたって、本明細書では、本発明の方法および/またはプロセスを、特定の工程順序で記載した場合もある。しかし、その方法またはプロセスが本明細書に記載した特定の工程順序に頼っているのでない限り、その方法またはプロセスを、ここに記載した特定の工程順序に限定すべきではない。当業者には理解されるだろうが、他の工程順序も可能でありうる。したがって、本明細書に記載した特定の工程順序は、請求項に対する限定であると解釈すべきでない。また、本発明の方法および/またはプロセスに関する請求項は、記載した順にその工程を実行することに限定すべきでなく、当業者であれば、順序を変えてもなお本発明の精神および範囲内にとどまりうることは容易に理解できるだろう。 本明細書で言及した文献はすべて、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。本明細書で言及した参考文献の目録を以下に示す。 Adams DJ,Dwyer TM,Hille B(1980)「一価金属陽イオンおよび二価金属陽イオンに対する終板チャネルの透過性(The permeability of 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