タイトル: | 特許公報(B2)_エレクトロクロミック媒体および関連エレクトロクロミックデバイスに使用するための制御された拡散係数エレクトロクロミック物質。 |
出願番号: | 2003568462 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G02F 1/15,C07D 241/48,C07D 513/04,C09K 9/02 |
ガー,トーマス・エフ ロバーツ,ケイシー・イー リン,ロングアン ボーマン,ケルビン・エル セイゼ,デービット・エイ ギリ,プナン サンフォード,エリザベス・エム JP 4436136 特許公報(B2) 20100108 2003568462 20021002 エレクトロクロミック媒体および関連エレクトロクロミックデバイスに使用するための制御された拡散係数エレクトロクロミック物質。 ジェンテックス コーポレイション 500115826 熊倉 禎男 100082005 大塚 文昭 100067013 西島 孝喜 100086771 須田 洋之 100109070 ガー,トーマス・エフ ロバーツ,ケイシー・イー リン,ロングアン ボーマン,ケルビン・エル セイゼ,デービット・エイ ギリ,プナン サンフォード,エリザベス・エム US 10/054,108 20011113 20100324 G02F 1/15 20060101AFI20100304BHJP C07D 241/48 20060101ALI20100304BHJP C07D 513/04 20060101ALI20100304BHJP C09K 9/02 20060101ALI20100304BHJP JPG02F1/15C07D241/48C07D513/04 371C09K9/02 A G02F 1/15 国際公開第01/40858(WO,A1) 特表2001−519922(JP,A) 特開平3−177822(JP,A) 米国特許第5145609(US,A) 8 US2002031541 20021002 WO2003069397 20030821 2005517978 20050616 25 20040712 2008006040 20080310 稲積 義登 吉野 公夫 右田 昌士発明の詳細な説明 関連出願の相互参照 本願は、2000年11月28日に出願された米国特許出願第09/724,118号の一部継続出願であり、当該出願は1999年12月3日に出願された米国特許出願第09/454,043号の一部継続出願であり、現在、米国特許第6,262,832号となっている(これらの内容を全体を参照として本明細書中に含める)。 発明の背景 1.発明の分野 本発明は、概して、エレクトロクロミックデバイスに関し、さらに具体的には、一種以上の制御された拡散係数アノードおよび/またはカソード物質を含むエレクトロクロミックデバイスに使用するためのエレクトロクロミック媒体に関する。 2.背景技術 数年間、当業界でエレクトロクロミックデバイスは知られてきた。エレクトロクロミックミラーのようなエレクトロクロミックデバイスの利用が、例えば、自動車産業中で次第に人気が出てきているが、依然として、エレクトロクロミックデバイスの操作電流やセル空間に関連する点で複数の用途に問題が残っている。 エレクトロクロミックデバイスの操作用電流がデバイス中のエレクトロクロミック物質の拡散係数に比例し、二枚の空間をおいて離れた基体間の距離に反比例することは周知である(Electrokhimya 21 (7) 918-22, 1985)。エレクトロクロミックデバイスの操作用電流に与える影響に対する以前の試みはエレクトロクロミック媒体の溶媒を変更すること(米国特許第5,140, 455)またはエレクトロクロミック媒体中に添加物を配合すること(米国特許第5,142,407)に依存していた。本開示は、 エレクトロクロミック物質自身の拡散係数をうまく取り扱い、それにより、操作用電流および/または関連したエレクトロクロミックデバイスのセル空間性を制御的に変更するエレクトロクロミック物質自身の意図的修正を記載する。このアプローチは、追加のコストおよび添加剤を配合するプロセスの複雑性を回避しながら、より毒性が高くまたは高価な溶媒ではなくて、最も好適な溶媒の使用を容認する。減少した拡散係数を示すエレクトロクロミック物質を使用することにより、とりわけ、(1)操作電流および/またはセル空間を減少させることができ、エレクトロクロミック媒体の量およびコストを軽減できる、(2)デバイスの着色/脱色時間のような設計パラメーターを制御して変更できる、(3)減少したセル空間の結果として製造効率を相当あげることができる、および(4)着色バンド(すなわち、セグレーション)の形成を減少またはなくすることができる、等々があることも了解される。 したがって、本発明の目的は、従来のエレクトロクロミックデバイスおよび関連媒体成分の使用に関連する前記不利点および/または複雑性を改善する、一種以上の制御した拡散係数アノードエレクトロクロミック物質および/またはカソードエレクトロクロミック物質を含むエレクトロクロミック媒体を提供することである。 本発明のこれらおよびその他の目的は本明細書、特許請求の範囲、および図面に照らして明らかになるであろう。 発明の概要 本発明は、エレクトロクロミックデバイスに使用するためのエレクトロクロミック媒体であって:(a)少なくとも一種の溶媒;(b)アノードエレクトロアクティブ物質;(c)カソードエレクトロアクティブ物質;(d)ここで、アノードエレクトロアクティブ物質およびカソードエレクトロアクティブ物質のうちの少なくとも一種がエレクトロクロミック性であり;(e)ここで、アノードエレクトロアクティブ物質の拡散係数が、おおよそ25℃で炭酸プロピレン中でおおよそ8.00×10-6cm2/秒未満でありそして/または;カソードエレクトロアクティブ物質の拡散係数が、おおよそ25℃で炭酸プロピレン中でおおよそ3.00×10-6cm2/秒未満であり、そして;(f)ここでアノードエレクトロアクティブ物質および/またはカソードエレクトロアクティブ物質が、関連エレクトロクロミックデバイスの正常の操作中、非−レドックス活性である拡散係数制御性成分を含む、を含んでなる上記エレクトロクロミック媒体に関する。 本発明は、さらに、エレクトロクロミックデバイスに使用するためのエレクトロクロミック媒体であって:(a)少なくとも一種の溶媒;(b)アノードエレクトロアクティブ物質;(c)カソードエレクトロアクティブ物質;(d)ここで、アノードエレクトロアクティブ物質およびカソードエレクトロアクティブ物質のうちの少なくとも一種がエレクトロクロミック性であり;(e)アノードエレクトロアクティブ物質および/またはカソードエレクトロアクティブ物質が、本明細書中に与えられているような、それぞれ式A1〜A15およびC1〜C5の少なくとも一つにより表される、を含んでなるエレクトロクロミック媒体に関する。 本発明の別の局面では、エレクトロクロミックデバイスに使用するためのエレクトロクロミック媒体は、(a)少なくとも一種の溶媒;(b)アノードエレクトロアクティブ物質;(c)カソードエレクトロアクティブ物質を含み;(d)ここで、アノードエレクトロアクティブ物質およびカソードエレクトロアクティブ物質のうちの少なくとも一種がエレクトロクロミック性であり;そして、e)ここで、アノードエレクトロアクティブ物質および/またはカソードエレクトロアクティブ物質は:(1)第一成分;および(2)拡散係数制御性成分、ここで、拡散係数制御性成分は、拡散係数制御性成分無しで第一成分に関連する少なくとも一溶媒中で第一成分の拡散係数を減少させるのに役立つ少なくとも一成分を含むとして開示される。 本発明は、とりわけ、拡散係数を制御して減少させる新規なアノード物質およびカソード物質にも関する。 発明の詳細な記述 今、図面、特に図1のエレクトロクロミックデバイス100の断面図に言及するが、当該デバイスは、概して、前部表面112Aおよび後部表面112Bを有する第一基板112ならびに前部表面114Aおよび後部表面114Bを有する第二基板114、そしてエレクトロクロミック媒体124を含有するためのチャンバー116を含む。エレクトロクロミックデバイス100は、ミラー、ウインドウ、ディスプレーデバイス、コントラスト増強フィルター(contrast enhancement filter)等を含み得ることが了解されるが、これらは例証のみを目的とする。図1は、さらに、単にエレクトロクロミックデバイス100の図による表現であることを理解されうる。したがって、構成成分自体のうちのいくつかは図に明瞭に表すためにそれらの実際的な大きさから歪められ正確ではない。事実、多くのその他のエレクトロクロミックデバイス形状が使用のために意図され、米国特許第5,818, 625号、発明の名称「第三表面金属反射対を組み入れるエレクトロクロミックバックミラー(Electrochromic Rearview Mirror Incorporating A Third Surface Metal Reflector)」および米国特許出願第09/343,345号、発明の名称「エレクトロクロミックデバイス用電極設計(Electrode Design For Electrochromic Devices)」(これらの特許全体を本明細書に含める)に開示されたものを含む。 第一基板112は、電磁スペクトルの可視領域で透明または実質的に透明である多くの物質のいずれかから作ることができる。これらの物質には、例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、フロートガラス、天然および合成ポリマー樹脂、プラスチックス、ならびに/またはTopas R (Ticona of Summit, New Jerseyから市販されている)を含むコンポジット等がある。第一基板112は、好ましくは、おおよそ0.5ミリメートル〜おおよそ12.7ミリメートルの範囲の厚さの一枚のガラスから作成される。勿論、基板の厚さはエレクトロクロミックデバイスの特定の用途に大きく依存する。特定の基板物質が、例証の目的のみで開示されたが、同様に多くのその他の基板物質が使用のために意図される(物質が少なくとも実質的に透明であり、意図される用途の条件で効率的に操作できる強度のような適切な物理特性を示す限り)。事実、本発明にしたがうエレクトロクロミックデバイスは、正常な操作中、極温変動ならびに実質的UV照射(主に太陽から発散)に露出できる。 第二基板114は第一基板112と同じ物質から作成できる。しかし、エレクトロクロミックデバイスがミラーの場合、実質的に透明の要件は必要でない。あるいは、第二基板114自体は、ポリマー、金属、ガラス、およびセラミックス(数種挙げれば)を含む。第二基板は、好ましくは、おおよそ0.5ミリメートル〜おおよそ12.7ミリメートルの範囲の厚さの一枚のガラスから作成される。第一および第二基板112および114が、それぞれ、ガラスシートから作成される場合、ガラスを、場合により、強化(temperd)、熱強化、および/または化学的に強化し、続いて導電性物質の層(118および120)で被覆する。 一層以上の導電性物質層118は第一基板112の後部表面112Bと結合されている。これらの層はエレクトロクロミックデバイスの電極として作用する。導電性物質118は、望ましくは、(a)電磁スペクトルの可視領域で実質的に透明であり;(b)第一基板112に充分に結合し;(c)シール部材と関連付けられるときにこの結合を保持し;(d)エレクトロクロミックデバイス内または大気中に含まれる物質からの腐食に一般的に抵抗し;そして(e)最小の拡散もしくは鏡のような反射ならびに充分な電気コンダクタンスを示す導電性物質118はフッ素ドープ二酸化チタン(FTO)、例えば、TECガラス(ToledoのLibbey Owens-Ford-Co. , Ohioから市販)、インジウム/酸化チタン(ITO)、ドープした酸化亜鉛または当業界で公知のその他の物質から作成することができる。 導電性物質120は、好ましくは、第二基板114の前部表面114Aと結合され、シールメンバー122により導電性物質118に効果的に結合される。図1に見られるように、一旦結合されると、導電性物質118および120近接部はチャンバー116の内縁形状を確定するよう作用する。 導電性物質120は、エレクトロクロミックデバイスの意図される用途に依存して変動できる。例えば、エレクトロクロミックデバイスがミラーの場合、導電性物質120は、導電性物質118に類似する透明導電性コーティングを含むことができる(この場合、反射体は第二基板114の後部表面114Bと結合される)。あるいは、導電性物質120は、以前言及した米国特許第5,818,625号の教示(本明細書に参照として含める)にしたがって一層の反射物質を含むことができる。この場合、導電性物質120は、第二基体114の前部表面114Aと結合される。この種の反射体の典型的なコーティングは、クロム、ロジウム、ルーテニウム、銀、銀合金およびその組み合わせ等がある。 シール部材122は、導電性物質118および120に接着剤で結合され、順にチャンバー116をシールし得るどのような物質でも含むことができ、その結果、エレクトロクロミック媒体124がチャンバーの外に不用意に漏出しない。図1の点線で示されているように、シール部材が、各々の基板の後部表面112Bおよび前部表面114Aまで完全に延びていることが意図されている。このような実施態様では、導電性物質118および120の層は、シール部材122が配置されている位置で部分的に除かれることができる。導電性物質118および120が各基板に結合されていない場合、シール部材122は好ましくはガラスによく結合される。シール部材122が、例えば、米国特許第4,297,401号;第4,418,102号;第4,695,490号;第5,596,023号;第5,596,024号;および第6,157,480号各明細書(参照としてこれらの特許明細書を本明細書中に含める)に開示されている物質を含む多くの物質のいずれかから作ることができることが了解されよう。 本開示の目的のために、エレクトロクロミック媒体124は、少なくとも一種の溶媒、アノード物質、およびカソード物質を含み、ここで、アノード物質およびカソード物質のうちの少なくとも一つは低拡散係数特性を示す。 典型的には、アノード物質およびカソード物質の双方がエレクトロアクティブであり、それらのうちの少なくとも一つがエレクトロクロミック性である。用語「エレクトロアクティブ」は、その通常の意味にかかわらず、本明細書中では、特定の電位差にさらされたときにその酸化状態において変更を受ける物質として定義されることが了解されよう。さらに、用語「エレクトロクロミック」は、通常の意味にかかわらず、本明細書では、特定の電位差にさらされたとき一以上の波長でその消光係数(extinction coefficient)の変化を示す物質として定義されることが了解されよう。 エレクトロクロミック媒体124は、好ましくは、下記のカテゴリーの一つから選択される。 (1)単一層、単一相:エレクトロクロミック媒体は、非均質の小領域を含むことができる単一層の物質を含むことができ、かつ溶液−相デバイスを含み、ここで、物質が、イオン伝導性電解質中に溶液状で含有されることができ、電気化学的に酸化されまたは還元されたとき、電解質中で依然として溶液状である。溶液相エレクトロアクティブ物質が、米国特許第5,928,572号、発明の名称「Electrochromic Layer And Devices Comprising Same」および国際特許出願第PCT/US98/05570、発明の名称「Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, And Processes For Making Such Solid Films And Devices」の教示にしたがい、ゲル媒体の連続溶液−相中に含有されることができる(これらの特許明細書を全体として参照として本明細書に含める)。 二以上のアノード物質およびカソード物質を合わせ、米国特許第5,998,617号、第6,020,987号、第6,037,471号、第6,141,137号明細書および国際特許出願公開第WO98/44348に記載されているように予め選択した色を与える(これらの特許明細書を全体として参照として本明細書に含める)。 アノード物質およびカソード物質を、国際特許出願第PCT/WO97/30134、発明の名称「Electrochromic System」に記載されている橋かけユニットにより結合または連結できる(前記特許明細書を全体として参照として本明細書に含める)。エレクトロクロミック物質は、追加的に、米国特許第6,193,912号明細書に記載されているような近赤外(NIR)吸収性化合物を含む(前記明細書全体を参照として参照として本明細書に含める)。 同様の方法によりアノード物質同士またはカソード物質同士を同様な方法により連結することも可能である。これらの出願/特許に記載されている概念は、アノード物質および/またはカソード物質に対する着色−安定性成分の連結のようなレドックスバッファーの連結を含む連結または結合されている種々のエレクトロアクティブ物質を得るために組み合わせることができる。 アノードエレクトロクロミック物質およびカソードエレクトロクロミック物質は、米国特許第6,249, 369、発明の名称「Coupled Electrochromic Compounds With Photostable Oxidation States」に記載されている結合された物質も含むことができる(前記特許明細書全体を参照として本明細書に含める)。 エレクトロクロミック物質の濃度は、米国特許第6,137,620号、発明の名称「Electrochromic Media With Concentration Enhanced Stability, Process For The Preparation Thereof, and Use In Electrochromic Devices」に教示されているように選択することができる(前記特許明細書全体を参照として本明細書に含める)。 さらに、単一層、単一−相媒体は媒体を含むことができ、ここで、アノード物質およびカソード物質は、国際特許出願第PCT/WO99/02621号、発明の名称「Electrochromic Polymer System」および国際特許出願第PCT/US98/05570号、発明の名称Electrochromic Polymeric Solid Films, Manufacturing Electrochromic Devices Using Such Solid Films, And Processes For Making Such Solid Films And Devices」に記載されているようにポリマーマトリックス中に組み入れられる。 (2)多層−媒体を複数の層中で形成でき、多層−媒体は導電性電極に直接結合される物質か、それにごく接近して閉じこめられている物質を含み、電気化学的に酸化されるかまたは還元されるとき依然として結合されているか閉じこめられたままである。 (3)多相−媒体中の一以上の物質はデバイスの操作中相中で変化を受け、例えば、イオン伝導性電解質中で溶液状で含有される物質が、電気化学的に酸化されるかまたは還元されるときに導電性電極上に層を形成する。 さらに、エレクトロクロミック媒体124は光吸収剤、光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤、シックナー、粘度改質剤、色提供剤(tint providing agents)、レドックスバッファー、およびその混合物のようなその他の物質を含むことができる。適切なUV−安定剤には:エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート物質(商標Uvinul N-35でBASF 社、NY、 Parsippanyから、そして商標Viosorb 910でAceto Corp、NY、Flushingから販売);(2−エチルヘキシル)−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート物質(商標Uvinul N-539でBASF 社から販売);2−(−2’−ヒドロキシ−4’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール物質(商標Tinuvin PでCiba-Geigy Corp社から販売);3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸ペンチルエステル物質(Ciba-Geigy Corpにより販売されているTinuvin 213から慣用の加水分解、次いで、慣用のエステル化により製造)(以下「Tinuvin PE」と称する);2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン物質(とりわけ、Aldrich Chemical Co.から販売);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン物質(商標Cyasorb UV 9でAmerican Cyanamid社から販売);そして2−エチル−2’−エトキシアニリド物質(商標Sanduvor VSUでSandoz Color & Chemicalsから販売)等がある。 慣用のアノード物質は、フェロセン、置換フェロセン、置換フェロセニル塩、置換フェナジン、フェノチアジン、置換フェノチアジン、チアントレン、置換チアントレンを含む多くの物質のいずれかを含むことができる。アノード物質の例は、ジ−tert−ブチル−ジエチルフェロセン、5,10−ジメチル−5,10−ジヒドロフェナジン、3,7,10−トリメチルフェノチアジン、2,3,7,8−テトラメトキシチアントレン、および10−メチルフェノチアジンを含むことができる。アノード物質が、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリマーメタロセンのようなポリマーフィルム、または、バナジウム、ニッケル、イリジウムの酸化物を含む固体遷移金属酸化物(これらに限定されない)、ならびに多くの複素環式化合物等を含むことができることも意図される。多くのその他のアノード物質が、米国特許第4,902,108号、発明の名称「Single-Compartment, Self-Erasing, Solution-Phase Electrochromic Devices, Solutions For Use Therein, And Uses Thereof」、ならびに米国特許第6,188,505号 B1、発明の名称「Color-Stabilized Electrochromic Devices」(両特許明細書全体を参照として本明細書に含める)に開示されている物を含んで使用のために意図されていることが了解されよう。 本発明の具体的に設定される低拡散係数アノード物質は下記の式の少なくとも一つにより表される物質を含む:(式中、X1〜X42は同一かまたは異なり、単結合、N、O、SまたはSeを含み; mは1〜おおよそ3の範囲の整数であり; nは0〜おおよそ10の範囲の整数であり; Z1A−Eは同一かまたは異なり、−[CH=CH]s−、−[C≡C]s−、−N=N−、またはp−フェニルを含み; sは0〜おおよそ4の範囲の整数であり; Z2は、=CH−[Z1A]t−CH=、または=N−[Z1A]t−N=を含み; tは0〜おおよそ4の範囲の整数であり; R1〜R170は、同一または異なり、孤立電子対、H、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、もしくはアルコキシ基(1〜おおよそ50炭素原子を含有)を含み、ここで、炭素原子は、アルコール;チオール; チオエーテル; ニトリル; ニトロ構成分; スルホキシド; スルホネート; ホスホニウム構成分; ホスホネート; ホスホナイト; アンモニウム構成分; カルボニル(カルボネート、カルバメート; ケトン; エステル;およびアミドを含む); エーテル(ポリエーテルを含む); アミン(三級アミンを含む);ならびにそれらの混合物を含む一種以上の官能基に、またはその一部に対する連結基であることができ;そして ここで、R1〜R170は、関連エレクトロクロミックデバイスの正常な操作中、非−レドックス活性である)。本明細書で使用される「非−レドックス活性」という用語は、その通常の意味にかかわらず、関連エレクトロクロミックデバイスの正常な操作に要求される電位の付加および/または除去の間、電気化学的還元または酸化を受けないとして定義されることが了解されよう。 慣用的なカソード物質は、例えば、メチルビオロゲンテトラフルオロボレート、オクチルビオロゲンテトラフルオロボレート、またはベンジルビオゲンテトラフルオロボレートのようなビオロゲン類を含むことができる。上述したカソード物質の各々について製造および/または商業的入手可能性は当業界で周知である。例証の目的だけで特定のカソード物質を示したが、その他の多くの慣用的なカソード物質も同様に使用のために意図されるが、それらには前述した米国特許第4,902,108号に開示されているものが含まれるが、それらに限定されない。事実、カソード物質に関連して、デバイス100のエレクトロクロミック性能に悪影響を与えるべきでないことのみが意図的に制限される。さらに、カソード物質が、種々の置換ポリチオフェンのようなポリマーフイルム、ポリマービオロゲン、無機フイルム、または酸化タングステン(これに制限されない)を含む固体遷移金属酸化物を含むことができることが意図される。 本発明の具体的に設定される低拡散係数カソード物質には下記の式の少なくとも一つにより表される物質を含む: 式中、R1〜R49は、同一または異なり、H、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、もしくはアルコキシ基(1〜おおよそ50炭素原子を含有)を含み、ここで、炭素原子は、アルコール;チオール; チオエーテル; ニトリル; ニトロ構成分;スルホキシド;スルホネート;ホスホニウム構成分;ホスホネート;ホスホナイト;アンモニウム構成分;カルボニル(カルボネート、カルバメート; ケトン; エステル;およびアミドを含む);エーテル(ポリエーテルを含む);アミン(三級アミンを含む);ならびにそれらの混合物を含む一種以上の官能基に、またはその一部に対する連結基であることができ;そして ここで、R1〜R49が関連エレクトロクロミックデバイスの正常な操作中非−レドックス活性である。 特定の理論に束縛されるものではないが、基本第一成分(すなわち、無置換または単一置換エレクトロアクティブ物質)に付着される一種以上の拡散係数制御性成分(A1〜A15のR1〜R170およびC1〜C5のR1〜R49)を含む上述した特に設定した低拡散係数アノード物質およびカソード物質がエレクトロクロミック媒体に関連する溶媒と協動的に相互作用し、それにより、溶媒(一種またはそれ以上)中の物質の拡散を制御しながらゆっくりとさせると思われる。上で検討したように、アノード物質および/またはカソード物質の拡散係数を制御しながら変化させることにより、とりわけ、関連デバイス操作電流およびセル空間を、関連するエレクトロクロミックデバイスについて、操作、コスト、および/または製造効率を順に有利な方向に変えることができる。 例証の目的のみのために、アノードおよびカソード物質の濃度はおおよそ1ミリモル〜おおよそ500ミリモルそしてより好ましくはおおよそ2ミリモル〜おおよそ100ミリモルの範囲であることができる。アノード物質ならびにカソード物質の特定の濃度を与えたが、所望の濃度がエレクトロクロミック媒体124を含有するチャンバーの幾何学的形状に依存して大きく変わり得ることが了解されるであろう。 本開示の目的のために、エレクトロクロミック媒体124の溶媒は多くの一般的な商業的に入手できるいずれかのものを含むことができ、それには3−メチルスルホラン、グルタロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラグライムおよびその他のポリエーテル、エトキシエタノールのようなアルコール、3−ヒドロキシプロピオニトリル、2−メチルグルタロニトリルのようなニトリル、2−アセチルブチロラクトン、シクロペンタノンを含むケトン、ベータープロピオラクトン、ガンマーブチロラクトン、ガンマーバレロラクトンを含む環状エステル、炭酸プロピレン、炭酸エチレンおよびその均質混合物等がある。エレクトロクロミック媒体に関連するとして特定の溶媒を開示したが、本開示をされた当業者に公知であろうその他の多くの溶媒または可塑剤が同様に使用のために意図されている。 構成部分として一種以上の電流−減少用添加剤(current-reducing additives)を含むエレクトロクロミック媒体を有するエレクトロクロミックデバイスを広範囲の用途に使用でき、ここで、透明光または反射光を調節できる。このようなデバイスには、乗物用バックミラー、ビル、家または乗物の外装用窓、管状光フィルターを含むビルディング用天窓、オフイスまたは部屋のパーティションの窓、ディスプレーデバイス、ディスプレー用コントラスト強化フィルター、写真デバイス用光フィルターおよび光センサー、そしてパワーセル用インジケーター、ならびに一次および二次電気化学セル等がある。 本発明のエレクトロクロミック媒体は多くの異なる低拡散係数アノード物質およびカソード物質を利用する。製造および/または商業的入手源は、物質が当業界で周知でない限り、本明細書中に示す。特記しない限り、出発試薬はAldrich Chemical Co., Milwaukee, WIまたはその他の一般的な化学薬品供給者から商業的に入手できることが了解されよう。さらに、慣用的な化学略語を、下記:グラム(g);ミリリットル(ml);モル(mol);ミリモル(mmol);モルの(molar);ミリモルの(mM);および時間(h)を含んで使用するとき使用しうることが了解されよう。 本発明の支持において、いくつかの実験を行い、ここで、一種以上の拡散係数制御性成分を有するアノード物質およびカソード物質の拡散係数特性を前述成分を含有しないアノード物質およびカソード物質と比較した。下記の表は下記の実施例で利用したアノード物質およびカソード物質を提供する。 1,1'-ビス(3-(トリフェニルホスホニウム)プロピル)-4,4'-dジピリジニウム テトラキス(テトラフルオロボレート)の合成 1リットル水中の1−ブロモ−3−(トリフェニルホスホニウム−プロパンブロミド186g(0.4モル)の溶液に室温で200mlの水中に溶解したアンモニウムヘキサフルオロホスフェート200g(1.2モル)を加えた。この添加直後に、白色固体が形成し、得られた混合物を30分間攪拌した。濾過により固体を集め、脱イオン水、メタノール、最後にエーテルで洗った。アセトン/エーテルから再結晶し、次いで、85℃でオーブン中で乾燥させることにより、精製生成物(1−ブロモ−3−(トリフェニルホスホニウム)プロパンヘキサフルオロホスフェート)を94%の収率で得た。 400mlのN,N−ジメチルホルムアミド中の4,4’−ジピリジル(18g、0.115モル)および1−ブロモ−3−(トリフェニルホスホニウム)プロパンヘキサフルオロホスフェート(200g、0.378モル)の混合物を40時間にわたって攪拌しながら90〜95℃に加熱した。室温に冷却後、得られた黄色生成物(混合ヘキサフルオロホスフェート/ブロミド塩)をアセトン(1リットル)を用いる沈殿化により単離した。次いで、温水(50ml)中の過剰のアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(100g)を、水およびメタノール混合物(250ml、1:1容量)中の粗生成物の温溶液に加えた。冷却時、分離した固体を水およびメタノールで洗った。 アセトン(300ml)中の過剰のテトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート(200g)を、アセトニトリル(200ml)中のヘキサフルオロホスフェート生成物溶液に加えた。この添加直後に、白色固体が形成され、得られた混合物を1時間にわたって還流しながら攪拌した。濾過により固体を集め、アセトンおよびエーテルで洗った。 テトラフルオロホウ酸塩を単離するために、温水(120ml)中の過剰のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(100g)を水およびメタノール混合物(150ml、1:1容量)中のハイドロジェンサルフェート生成物の温溶液に加えた。冷却して分離した固体を水およびメタノールで洗った。 得られたテトラフルオロボレート生成物を、250mlの沸騰アセトニトリル中に溶解させ、次いで、活性炭で処理して精製した。濾過後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を部分的に除去し、精製生成物をアセトニトリル/エタノールから再結晶し、80gの白色粉末を得た(62.5%)。1,1'-ビス (6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキシル)-4,4'-ジピリジニウムテトラ キス (テトラフルオロボレート)の合成 500mlの一口フラスコに15.6gの4,4’−ジピリジル、195.2gの1,6−ジブロモヘキサン、および200mlのアセトニトリルを加えた。得られた溶液を攪拌し、16時間加熱して還流させた。16時間後、加熱をやめ、混合物を室温に冷却した。得られた黄色のジブロミド塩を濾過し、二回50ml部のアセトンで洗い、次いで、70℃に設定した真空オーブン中で4時間乾燥した。次いで、得られた塩を1Lの一口フラスコに移し、それに、300mlのメタノール、150mlの40%テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、および150mlの水を加えた。得られたスラリーを攪拌し、80℃に加熱して溶解させ、次いで冷蔵庫中で0℃に冷却した。0℃で4時間後、白色結晶テトラフルオロホウ酸塩を濾過した。濾過ケーキを二回50mlの脱イオン水で濯いだ。 500mlの一口丸底フラスコに濾過ケーキを入れ、さらに52.6gのトリフェニルホスフィンおよび200mlのアセトニトリルを入れた。得られた反応混合物を攪拌し、加熱して16時間還流した。16時間後、室温に冷却し、400mlの酢酸エチルをゆっくりと加えた。得られた混合物を0℃の冷蔵庫中に4時間入れ、混合テトラフルオロホウ酸塩/ブロミド塩を濾過した。濾過ケーキを二回50ml部のアセトンで濯ぎ、次いで、70℃に設定した真空オーブン中で4時間乾燥させた。 それを真空オーブンから取り出し、1Lの一口フラスコに300mlのメタノール、150mlの40%テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、および150mlの水とともに加えた。反応混合物を攪拌し、80℃に加熱して固体を溶解させ、次いで、冷蔵庫中で0℃に冷却した。4時間後、白色の結晶性テトラフルオロホウ酸塩を濾過した。それを50ml部の脱イオン水で二回濯ぎ、次いでメタノール/水性テトラフルオロホウ酸ナトリウムから二回再結晶させた。全収量は61.0g(51%)だった。N,N'-ビス(3-(トリフェニルホスホニウム)プロピル)-3,8-フェナンスロリニウムテト ラキス(テトラフルオロボレート)の合成 まず、3,8−フェナンスロリンを、文献(Gill, E. W. and Bracher, A. W. J. Heterocyclic Chem. 1983, 20, 1107-1109)の第一工程のジエトキシエタノールの代わりにジメトキシアセトアルデヒドを使用して当該工程にしたがって調製した。 次いで、1.0g(0.0056モル)の3,8−フェナンスロリンおよび18.0g(0.034モル)の(3−ブロモプロピル)トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート((3−ブロモプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミドとNaPF6とのメタセシスより得た)ならびに50mlのDMFの混合物をN2下95℃で一夜加熱した。室温に冷却後、150mlのアセトンを反応物に加えると、固体が沈殿した。この固体を真空濾過により単離し、次いで、最小量の水で溶解させた。この溶液に、1M水性NaBF4を沈殿が形成されるまで加えた。固体を真空濾過により単離し、次いで、エタノールおよび1M水性NaBF4から二回、エタノール、アセトニトリルおよび1M水性NaBF4から一回再結晶させた。再結晶の間活性炭を用いて脱色させた。70℃で真空下で乾燥後、4.1g(65%収率)のオフホワイトの固体を得た。N,N'-ビス(5-(トリフェニルホスホニウム)ペンチル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカル ボキシリックジイミジウムビス(テトラフルオロボレート)の合成 まず、10.0g(0.04モル)の1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリック二無水物、10.4g(0.10モル)5−アミノ−1−ペンタノールおよび100mlの水の混合物を7時間還流させた。室温に冷却後、ピンク色の固体を真空濾過により単離し、真空下70℃で乾燥させ、10.1g(61%収率)の生成物を得た。 次に、5.0g(0.011モル)のN,N’−ビス(5−ヒドロキシペンチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドを丸底フラスコに入れ、窒素でパージした。これに、25ml(0.27モル)のPBr3を加えた。室温で1時間攪拌後、混合物が均質になるまで加熱し、4時間その温度を維持した。室温に冷却後、得られた混合物を氷上に注意深く注ぎ、ピンク色の固体を得た。この固体を真空濾過により単離し、濾過ケーキ中に残留酸が含有しなくなるまで濯いだ。真空下70℃で固体を乾燥させ、6.3g(100%収率)の生成物を得た。 さらに、200mlのDMF中の4.0g(0.0071モル)のN,N'−ビス(5−ブロモペンチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドおよび7.5g(0.029モル)トリフェニルホスフィンの混合物をおおよそ100℃で一夜加熱した。500mlのエタノールおよび水の1:1混合物中に反応混合物を注いだ。少量の白色固体が形成し、溶液から濾過した。この溶液に100mlの1M水性NaBF4を加えると、沈殿が生じた。バラ色に着色した固体を真空濾過により単離し、カラムクロマトグラフィー(1:1のCH3OH:CH3CNによるシリカ溶出)により精製し、次いで再結晶(CH3OHおよび1.0M水性NABF4)し、ピーチ色に着色した固体として低収率の生成物を得た。ビス-5,10-[2-(トリエチルアンモニウム)エチル]-5,10-ジヒドロフェナジンビス(テ トラフルオロボレート)の合成 1リットルの三口丸底フラスコに、18.0gのフェナジン、50.0gの2−ブロモエタノール、26.1gの亜ジチオン酸ナトリウム、21.2gの粉末化炭酸ナトリウム、6.2gのメチルトリブチルアンモニウムクロリド、200mlのアセトニトリル、および10mlの水を加えた。このスラリーを攪拌し、窒素ブランケット下48時間還流し、その時点で反応が完了した。還流している反応混合物に、400mlの水を30分間にわたって液体添加ロート(liquid addition funnel)を用いて加えた。次いで、反応物を室温に冷却し、次いで、生成物をブフナーロート上で単離し、100mlの水で洗った。次いで、ビス−5,10−(2−ヒドロキシエチル)−5,10−ジヒドロフェナジンを真空下70℃で一夜乾燥させた。この中間体の乾燥重量は25.0gで92.6%収率だった。 この中間体を1リットルの三口丸底フラスコ中に入れ、200mlのピリジン中に溶解させた。0℃に溶液を冷却し、その後、15mlのメタンスルホニルクロリドを30分間にわたって滴加し、一方で20℃未満のポット温度に維持した。2時間溶液を攪拌し、次いで、別の10mlのメタンスルホニルクロリドを0℃の溶液に滴加した。反応溶液を室温に戻し、さらに2時間攪拌した。反応を停止すると、400mlの水の滴加により沈殿を生じた。ブフナーロート上で、ビス−5,10−2−(メタンスルホニルエチル)−5,10−ジヒドロフェナジンを濾過し、多量の水で洗い、ピリジンを除去した。それを真空オーブン中に入れ、80℃で一夜乾燥させた。この中間体の乾燥重量は25.4gで、64.4%収率だった。 最後の工程は、トリエチルアミンを用いるメシレート中間体の四級化である。25.4gのメシレート中間体を500mlの丸底フラスコに、250mlのアセトニトリルおよび40mlのトリエチルアミンと共に加えた。このスラリーを不活性雰囲気下14日間還流温度に加熱した。室温に冷却後、アセトンおよび酢酸エチルの1:1混合物200mlを反応溶液に加えた。結晶化のために3日間置き、生成物をブフナーロート上で濾過し、100mlのアセトンで洗った。 ビス-5,10-2-(トリエチルアンモニウムエチル)-5,10-ジヒドロフェナジンのジメシレート塩を500mlの温水中に溶解させ、それに50mlの40%テトラフルオロホウ酸ナトリウム水性溶液に加えた。メタセシス生成物が油状物として析出し、次いで、400mlのメタノールおよび200mlの水から結晶化させた。次いで、最終生成物を結晶固体として単離した。ビス-5,10-[4-(トリエチルアンモニウム)ブチル]-5,10-ジヒドロフェナジンビス (テ トラフルオロボレート)の合成 250mlの三口丸底フラスコに、1.8gのフェナジン、12.0gの1-ブロモ-4-(トリエチルアンモニウム)ブタンブロミド、2.56gの炭酸ナトリウム、2.61gの亜ジチオン酸ナトリウム、0.30gのヨウ化ナトリウム、0.45gのメチルトリブチルアンモニウムクロリド、50mlのアセトニトリル、および2.5mlの水を加えた。窒素雰囲気下20時間スラリーを加熱して還流した。 このスラリーに75mlの水を加え、次いで、25mlの1Mテトラフルオロホウ酸ナトリウム水性溶液を加えた。得られた溶液を0〜5℃に4時間冷却した。ビス-5,10-[4-(トリエチルアンモニウム)ブチル]-5,10-ジヒドロフェナジンビス (テトラフルオロボレート)を濾過し、水洗した。ろ液中に第二生成物が形成し、それも濾過した。第一生成物の重量は5.3gであり、第二生成物の重量が1.4gであり、それらの合計量の収率が100%だった。これらの二生成物を合わせ、50mlのアセトニトリル、75mlの水、および25mlの1Mソジウムテトラフルオロボレート水性溶液から再結晶させ、明るい緑色の結晶生成物を得た。3,10-ジメトキシ-7,14-(4-トリエチルアンモニウムブチル)トリフェノジチアジン( ビステトラフルオロボレート)の合成 下記の4工程を経て生成物を合成した: 工程1:N,N'−ジアニシル−1,4−フェニレンジアミン: 火炎乾燥した1リットル三口丸底フラスコに、4-ブロモアニソール(50.4g、0.26モル)、1,4-フェニレンジアミン(12.0g、0.11モル)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.776g、0.0032モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム (0) (0.98g、0.001モル)、ソジウムtert-ブトキシド(31.2g、0.32モル)、および無水トルエン(350ml)を入れた。反応混合物を90℃に48時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ヘキサン(400ml)を加えた。固体を濾過し、エタノール(400ml)に溶解した。300mlの水に亜ジチオン酸ナトリウム(20.0g)を溶解し、エタノール溶液に加えた。これを加熱して30分間還流した。溶液を室温に冷却した後、固体を濾過し、水洗して25.7g(72%)のN,N’−ジアニシル−1,4−フェニレンジアミンを与えた。 工程2:3,10−ジメトキシトリフェノジチアジン: 工程1からの生成物(23.7g、0.074モル)、硫黄(12.6g)、ヨウ素(2.6g)およびジクロロベンゼン(230ml)を含有する混合物を加熱して48時間還流した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、フェニルヒドラジン(25ml)を加えた。再び、反応混合物をゆっくりと140℃に4時間加熱した。形成したH2Sガスを20%水酸化ナトリウム溶液中で除いた。(重要な注意:この反応中に発生するH2Sは極度に毒性が高い。適切な予防措置をとるべきである。)反応混合物を室温に冷却した後、生成物を濾過し、ヘキサンで洗って21.0g(74%)の3,10−ジメトキシトリフェノジチアジンを得た。 工程3:3,10−ジメトキシ−7,14−(4−ブロモブチル)トリフェノジチアジン: 3,10−ジメトキシトリフェノジチアジン(20.0g、0.055モル)、50%水酸化ナトリウム(52g)、亜ジチオン酸ナトリウム(52.0g)、1,4−ジブロモブタン(131ml)、水(200ml)、およびメチルトリブチルアンモニウム(5.25g)の混合物を80℃に48時間加熱した。アセトニトリル(300ml)および水(300ml)を加えることにより反応混合物を冷却した。反応混合物を室温に冷却した後、生成物を濾過し、水洗して、19.0g(53%)の3,10−ジメトキシ−7,14−(4−ブロモブチル)トリフェノジチアジンを得た。 工程4:3,10-ジメトキシ-7,14-(4-トリエチルアンモニウムブチル)トリフェノジチアジンビス(テトラフルオロボレート): アセトニトリル(1000ml)中の3,10−ジメトキシ−7,14−(4−ブロモブチル)トリフェノジチアジン(19.0g)およびトリエチルアミン(65ml)の溶液を65℃で28時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、緑色の油状物を得た。目的生成物のブロミド塩を、アセトニトリル(250ml)、水(125ml)、およびテトラフルオロホウ酸ナトリウム(25ml)の4M溶液中に緑色の油状物を溶解することによりテトラフルオロホウ酸塩に変換した。得られた溶液を加熱して30分間還流し、冷蔵庫中で一夜冷却した。固体を単離し、再度上述したようにして再結晶させ、12.0g(47%)の明るい緑色の3,10-ジメトキシ-7,14-(4-トリエチルアンモニウムブチル)トリフェノジチアジンビス(テトラフルオロボレート)を得た。 上述したアノードエレクトロクロミック物質およびカソードエレクトロクロミック物質のいくつかに関連する構造を明確にする目的のため、およびその命名に関連する不明確性を排除するために、下記にそれらの化学構造を示す: 本発明の支持において、幾つかの実験を行ったが、本明細書中で与えられた多くのアノード物質およびカソード物質についての拡散係数を定量的に測定した。 拡散係数の一般的な測定方法には、線状スイープ(linear sweep) ボルタンメトリーもしくはサイクリックボルタンメトリー、回転ディスク電気化学、およびクロノクーロメトリー等がある。本明細書中で列挙した拡散係数のすべてが明細書中で記載したようにサイクリックボルタンメトリーを使用して測定した。まず、炭酸プロピレン中の1〜2ミリモルの目的の被分析物/0.2モルテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを含有するストック溶液(100ml)を調製した。次いで、この溶液に標準3電極電気化学セル中に導入し、10〜100mV/秒の掃引速度で一連のサイクリックボルタモグラムを得た。これらのボルタモグラムから得られたピーク電流を掃引速度の平方根に対してプロットし、被分析物の拡散係数を次の関係を使用する傾きから算出した。 アセトニトリル中のフェロセンの拡散係数をこの方法で測定し、文献値の2.4×10-5cm2/秒(Kuwana, T., Bublitz, D. E., and Hoh, G. J. Am. Chem. Soc. 1960,82, 5811)とよく一致することが見出された。表Iに列挙した数化合物の拡散係数も回転ディスク電気化学により、およびクロノクーロメトリーによっても測定した。サイクリックボルタンメトリーによって測定したものとこれらの値がよく一致した。 上記で与えられた実験で集められたデータから分かるように、新規なアノード物質およびカソード物質は、慣用の、第一成分に付加される一種以上の拡散係数制御性第二成分を含み、該一種以上の拡散係数制御性第二成分なしの、無置換または一置換されたそれらの同等慣用物質(すなわち、第一成分)と比較して、拡散係数において実質的な減少を示した。 本発明の別の支持では、二種のデバイス実験を行った。第一の実験では、デバイス電流を二種のエレクトロクロミックデバイスについて測定した。第一のデバイスは従来のアノード物質およびカソード物質を利用し、第二のデバイスは、従来のカソード物質に付加した一対の拡散係数制御性成分を有する新規なカソード物質を利用する。第二の実験では、カラーバンドまたはセグレゲーションを両デバイスにおいて分析した。 特に、標準的な自動車室内バックミラーの形状に切断した二枚のフッ素−ドープ酸化スズ被覆ガラス(その一方は後部表面上に予め銀処理されていた)を使用してエレクトロクロミックデバイスを作成した。これらのガラス表面を平行で空間をおいて離れた関係に、周縁の周りをエポキシ樹脂により保持し(137μmのセル空間)、慣用の充填技術を使用してデバイスに流動性エレクトロクロミック媒体を充填した。このデバイスではエレクトロクロミック媒体は、溶媒としての炭酸プロピレン中に5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン(27mM)、オクチルビオロゲンテトラフルオロボレート(32mM)、Tinuvin P (Ciba Geigy, Tarrytown, NY, 330mM)、ポリメチルメタクリレート(3重量%)を含んだ。開回路で、素子の可視光反射が79%だった。素子に1.2ボルトをかけたとき、8%反射まで暗くなり、この反射レベルでの電流は126mAだった。 比較目的のため、上述と同じようにして第二のエレクトロクロミックデバイスを作成したが、デバイスに、溶媒としての炭酸プロピレン中に5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン(21mM)、1,1'-ビス (6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキシル)-4,4'-ジピリジニウムテトラキス(テトラフルオロボレート)(42mM)、Tinuvin P (Ciba Geigy, Tarrytown, NY, 30mM)、およびポリメチルメタクリレート(3重量%)を含む流動性エレクトロクロミック媒体を充填させたことが異なった。開回路で、素子の白色反射光が79%だった。素子に1.2ボルトかけると、8%反射まで暗くなったが、この反射レベルの電流は72mAだった。 上述例にしたがって充填した両デバイスは、数時間の間十分に暗い状態(1.2ボルトで)だった。オクチルビオロゲンを含む媒体を充填したデバイスは相当セグレゲーション(緑色および青色バンドの展開)を示したが、一方、1,1'-ビス (6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキシル)-4,4'-ジピリジニウムテトラキス(テトラフルオロボレート)を含む媒体を充填したデバイスは非常にわずかしかセグレゲーションを示さなかった。 上述したデバイス実験から分かるように、本発明の新規な低拡散係数物質は、関連デバイスが、従来のアノード物質および/またはカソード物質を利用する同一構成デバイスに比較して著しく低い電流で操作できる。さらに、着色バンドまたはセグレゲーションの形成は著しく減少する。 本発明を一定の好適な実施態様で詳細に記載したが、多くの修正および変更が当業者によりなされることができるであろう。したがって、特許請求の範囲に示された範囲のみで限定することが我々の意図であり、本明細書に示されている実施態様を記載する詳細および手段に限定されることを意図しない。図1は、本発明にしたがって製作されたエレクトロクロミックデバイスの断面図である。 実質的に透明な第一基体であり、それと関連づけられた導電性物質を有する基体; 第二基体であり、それと関連づけられた導電性物質を有する第二基体;そして 第一および第二基体間に配置されるチャンバー内に含有されるエレクトロクロミック媒体を含む、エレクトロクロミックデバイスであって、 前記エレクトロクロミック媒体が、 少なくとも一種の溶媒; アノードエレクトロアクティブ物質; カソードエレクトロアクティブ物質;とを含み、 ここで、前記アノードエレクトロアクティブ物質および前記カソードエレクトロアクティブ物質のうちの少なくとも一つがエレクトロクロミック性であり; ここで、前記カソードエレクトロアクティブ物質の拡散係数が、25℃で炭酸プロピレン中で3.00×10-6cm2/秒未満であり; ここで前記カソードエレクトロアクティブ物質が、エレクトロクロミックデバイスの正常の操作中、非−レドックス活性である拡散係数制御性部分を含む、 エレクトロクロミックデバイス。 前記カソードエレクトロアクティブ物質の拡散係数が、25℃で炭酸プロピレン中で2.00×10-6cm2/秒未満である、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。 前記少なくとも一種の溶媒が、スルホラン、ニトリル、スルホキシド、ホルムアミド、エーテル、アルコール、ケトン、エステル、カーボネート、およびその同質混合物を含む群から選択される、請求項1または2のいずれかの請求項に記載のエレクトロクロミックデバイス。 前記カソードエレクトロアクティブ物質が、1,1'-ビス(3-(トリフェニルホスホニウム)プロピル)-4,4'-dジピリジニウムテトラキス(テトラフルオロボレート)、1,1'-ビス (6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキシル)-4,4'-ジピリジニウムテトラキス (テトラフルオロボレート)、N,N'-ビス(3-(トリフェニルホスホニウム)プロピル)-3,8-フェナンスロリニウムテトラキス(テトラフルオロボレート)、その誘導体、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つの請求項に記載のエレクトロクロミックデバイス。 前記デバイスがエレクトロクロミックウインドウである、請求項1乃至4のいずれか1つの請求項に記載のエレクトロクロミックデバイス。 第二基体の第一又は第二表面が反射性物質でメッキされている、請求項1乃至5のいずれか1つの請求項に記載のエレクトロクロミックデバイス。 反射性物質を、クロム、ルテニウム、ロジウム、銀、これらのアロイ、およびその積層を含む群から選択される、請求項6に記載のエレクトロクロミックデバイス。 前記デバイスがエレクトロクロミックミラーである、請求項7に記載のエレクトロクロミックデバイス。