タイトル: | 特許公報(B2)_CA19−9の測定による敗血症の検出方法 |
出願番号: | 2003549921 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/53 |
アンドレアス・ベルクマン JP 4272066 特許公報(B2) 20090306 2003549921 20021127 CA19−9の測定による敗血症の検出方法 ベー・エル・アー・ハー・エム・エス・アクティエンゲゼルシャフト 501154389 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 村山 靖彦 100108453 実広 信哉 100110364 アンドレアス・ベルクマン EP 01128850.3 20011204 20090603 G01N 33/53 20060101AFI20090514BHJP JPG01N33/53 V G01N 33/53 JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) CAplus(STN) 特表平08−501151(JP,A) 特表平10−500210(JP,A) Marc Pfister et.al.,Elevated Carbohydrate Antigen 19-9 (CA19-9) in Patients with Echinococcus Infection,CLINICAL CHEMISTRY AND LABORATORY MEDICINE,米国,2001年 8月16日,Vol.39 No.6,527 KER C-G,JOURNAL OF GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY,1991年,V6 N5,P505-508 5 EP2002013392 20021127 WO2003048777 20030612 2005512058 20050428 8 20051013 海野 佳子 本発明は、医学的診断分野においてそれ自体典型的な腫瘍マーカーとして知られているパラメータCA19−9を測定する、敗血症の新規の診断方法に関する。 本発明は、臨床的知見に基づいて敗血症と診断され、そしてそれと同時に、公知の敗血症マーカーであるプロカルシトニンの血清濃度が増大した患者の血清において、CA19−9の濃度が著しく増大することを初めて検出したことに基づいている。 本発明は、感染性の病因の炎症および敗血症の治療および診断のさらなる改善に関連した、出願人の研究に起因する。 炎症は、種々の外的効果、例えば傷害、やけど、アレルゲン、または微生物、真菌、ウイルスのような微生物の感染、拒絶反応を引き起こす外的組織、または自己免疫疾患や癌のような体の炎症性の内的状態に対する、生物の生理学的反応として一般的に定義されている。炎症は、身体の無害の局在化した反応として生じうるが、個々の組織、器官、器官の一部、および組織の一部の、多数の深刻で慢性的および急性の疾患の典型的な特徴でもある。 敗血症または敗血症性ショックでは、炎症特異的反応カスケードが、全身にわたり無制御式に広がり、過剰な免疫応答の点で生命を脅かすまでになり得る。内因性の敗血症特異的物質の各群の可能性のある役割および発生に関する現在の知識に関しては、例えば、A.Beishuizenら,“Endogenous Mediators in Sepsis and Septic Shock”,Advances in Clinical Chemistry, Vol.33, 1999, 55-131;およびC.Gabayら,“Acute Phase Proteins and Other Systemic Responses to Inflammation”, The New England Journal of Medicine, Vol.340, No.6, 1999, 448-454を参照することができる。敗血症とそれに関連する全身的炎症性疾患の理解、およびかくして認識された定義が近年変化してきたので、K.Reinhartら,“Sepsis und septischer Schock”[Sepsis and septic shock] Intensivmedizin, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 2001, 756-760のも参照することができ、これには敗血症の新しい定義が記載されている。本明細書では、敗血症という用語は、それゆえ、上記参考文献に記載の定義に基づいている。 少なくともヨーロッパでは、血液培養陽性によって検出可能な全身性の細菌感染が敗血症という用語を長きにわたって特徴づけていたが、敗血症は、今や、主として、感染により引き起こされる全身性の炎症であると理解されている。このような敗血症の理解の変化は、診断アプローチに変化をもたらした。かくして、細菌性病原体の直接的検出が、生理学的パラメータの複合的なモニタリングにより、そして、より最近では、特に敗血症工程または炎症工程に関与するある内因性物質、すなわち特異的「バイオマーカー」の検出により、置換または補足されている。 炎症工程に関与することが知られるまたは推定される多数の媒介物質および急性期蛋白の中で、臨床的敗血症診断に適しているものは、特に、敗血症または敗血症のある段階で高い感度および特異性で生じ、あるいは、その濃度が劇的かつ診断的に有意に変化し、かつ機械的な測定に必要とされる安定性を有しかつ高濃度に達するものである。診断目的では、病理学的工程と各バイオマーカーとの信頼できる相関関係が主として重要であり、敗血症の工程に関連する内因的物質の複雑なカスケードにおけるその役割を正確に理解する必要性はない。 敗血症のバイオマーカーとして特に適している公知の内因性物質はプロカルシトニンである。プロカルシトニンは、その血清濃度が感染性の病因の全身的炎症の条件下で非常に高い値に達するが、実際に健常者では検出不可能なプロホルモンである。高濃度のプロカルシトニンは、敗血症の比較的早期においても達成されるので、プロカルシトニンの測定は、敗血症の早期診断、および別の原因を有する深刻な炎症から感染により引き起こされた敗血症の早期診断にも適している。プロカルシトニンの測定は、さらに、敗血症の経過の治療に伴う観察に特に価値がある。敗血症マーカーとしてのプロカルシトニンの測定は、M.Assicotら,“High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection”, The Lancet, Vol.341, No.8844, 1993, 515-518;および特許DE4227454C2およびEP0656121B1およびUS5,639,617の主題である。本明細書の記載を補うために、これらの特許および刊行物を参照としてここに含める。近年、プロカルシトニンの主題に関する刊行物の数が増えている。それゆえ、W.Karzaiら,“Procalcitonin - A New Indicator of the Systemic Response to Severe Infection”, Infection, Vol.25, 1997, 329-334;およびM.Oczenskiら,“Procalcitonin: a new parameter for the diagnosis of bacterial infection in the perioperative period”, European Journal of Anaesthesiology 1998, 15, 202-209;およびさらに、H.Redlら“Procalcitonin release patterns in a baboon model of trauma and sepsis: Relationship to cytokines and neopterin”, Crit Care Med 2000, Vol.28, No.11, 3659-3663;およびH.Redlら,“Non-Human Primate Models of Sepsis”Sepsis 1998; 2:243-253;およびこれらの文献に引用されているさらなる参考文献も、最近発行された論評の典型として、参照することができる。 敗血症マーカーであるプロカルシトニンの利用可能性は敗血症の研究に重要な刺激を与え、本出願人により、プロカルシトニン測定を補い、かつ/または高精度の診断または鑑別診断のための付加的情報を与えることができるさらなるバイオマーカーを見つけるための集中的な努力がなされている。かくして、血清または血漿レベルが比較的高く、その測定がプロカルシトニンの測定結果を単純に繰り返すのではなく、付加的な情報、特に敗血症の経過の段階における情報、すなわち敗血症の進行に帰するような情報、および/または敗血症の進行の最初または主な器官における情報、すなわち局在的情報を与えるような、敗血症診断のさらなるバイオマーカーについての調査がなされている。この目的は、例えば、いわゆるチップ技術または免疫クロマトグラフィー法(“ポイントオブケア”またはPOC測定法)を用いて、敗血症患者または敗血症の可能性のある患者に同時に測定できる敗血症パラメータセットの選択、並びに、各パラメータ一つだけの測定の情報価値を明らかに凌ぐ情報パターンを全体として提供することである。 しかしながら、可能性のある新規の敗血症バイオマーカーの研究は、多くの場合、炎症または敗血症の進行に関与するある内因性物質の発生についての正確な理由、または正確な機能についてほとんどあるいは全く分かっていないという事実から、困難である。 敗血症において増加する内因性物質は身体の複雑な反応カスケードの一部であることから、そのような物質は診断目的というばかりでなく、例えば、敗血症に観察される炎症の全身的広がりをできるだけ早く止めるために、この種の各物質の形成および/または濃度に影響を与えることにより敗血症の進行に治療的に介入する試みも相当な努力を以て現在進められている。これに関連して、敗血症の進行に関与することが示された内因性物質は、可能性のある治療ターゲットとしても考えられるべきである。 さらなる可能性のある敗血症マーカーの測定に対する実りのある純粋に仮説的なアプローチの実験結果がDE19847690A1およびWO00/22439に見られる。そこには、敗血症の場合、プロホルモンであるカルシトニンの濃度が顕著に増加するだけでなく、ペプチドプロホルモンに含まれる別の物質についても顕著な濃度増加が観察されることが示されている。ペプチドプロホルモンであるプロ-エンケファリン、プロ-ガストリン放出ペプチド(pro-GRP)、プロ-エンドセリン−1、プロ-脳性ナトリウム利尿ペプチド(pro-BNP)、プロ-心房性ナトリウム利尿ペプチド(pro-ANP)、プロレプチン、プロ-ニューロペプチドY、プロ-ソマトスタチン、プロ-ニューロペプチドYY、プロ-インターロイキン6、またはプロ-インターロイキン10をここで挙げることができる。記載されている現象については文書で証明されているが、敗血症におけるプロホルモンの濃度増加の原因は実質的に説明されていない。A.Beishuizenら, Advances in Clinical Chemistry, Vol.33, 1999, 55-131C.Gabayら, The New England Journal of Medicine, Vol.340, No.6, 1999, 448-454K.Reinhartら, Intensivmedizin, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 2001, 756-760M.Assicotら, The Lancet, Vol.341, No.8844, 1993, 515-518DE4227454C2EP0656121B1US5,639,617W.Karzaiら, Infection, Vol.25, 1997, 329-334M.Oczenskiら, European Journal of Anaesthesiology 1998, 15, 202-209H.Redlら, Crit Care Med 2000, Vol.28, No.11, 3659-2663H.Redlら, Sepsis 1998; 2:243-253DE19847690A1WO 00/22439 本明細書では、敗血症診断に適しているさらなる生体分子に関する研究における別の仮説的アプローチの結果が報告される。それは、典型的な腫瘍マーカーとして今日まで考えられており、それゆえ実質的に腫瘍診断の目的で臨床的に測定されてきたバイオマーカーの、臨床的知見では腫瘍の存在を全く示さない敗血症患者の生物学的サンプル、特に血清サンプルにおける、生理学的濃度の測定結果に基づいている。 驚くべきことに、典型的な腫瘍マーカーとして今日まで考えられてきた一部の生体分子が敗血症においても顕著に増大することを見出した。これは、これらが腫瘍特異的に形成されるのではなく、むしろこれらの腫瘍マーカーを放出する組織および器官にも影響する重要な生理学的工程を示す。問題の生体分子の濃度は、本明細書および同時に出願した別の出願に記載されている通り、敗血症において高い感度で増大するが、測定値と、同様に顕著に増大したプロカルシトニン濃度との相互関係は同時には存在しない。すなわち両方のパラメータは各患者で増加するが、一部の場合では、非常に異なる程度で増加することが見出された。 本発明は、CA19−9の顕著に増加した生理学的濃度が細菌性の敗血症に見出されること、そしてこのことが、これらのパラメータを、特にさらなる敗血症パラメータの測定と組み合わせて、敗血症の鑑別診断に適したものとすることを、初めて得たという事実に基づくものである。 本発明に係る方法およびその好ましい実施態様が、請求項1から6に、より詳細に定義される。 今日まで、CA19−9の測定できる程の濃度、特に血清濃度は、敗血症において顕著に増大すること、並びに、CA19−9の濃度の測定が、それゆえ敗血症診断にも重要であることは知られていなかった。 本発明によれば、診断的な敗血症試験法においてCA19−9の測定を用いることが可能である。特に興味深いのは、予後マーカーおよび敗血症の経過をモニタリングするためのマーカーとしての、特に別のマーカーとの組み合わせ測定の一部としての、CA19−9の適性である。 プロカルシトニン測定と組み合わせることに加えて、CA19−9の測定と、今日まで典型的な腫瘍マーカーであると考えられてきた敗血症および全身性炎症のさらなるマーカー、特に、炎症の制御に関連するCA125、S100B、またはS100Aタンパク、あるいは下記の本出願人の独国特許出願に記載の新規の敗血症マーカーであるインフラミン(DE10119804.3)およびCHP(DE10131922.3)、および/または可溶性サイトケラチンフラグメント、特に最近見出された可溶性サイトケラチン−1フラグメント(sCY1F; DE10130985.6)および公知の腫瘍マーカーCYFRA-21またはTPS、および/または一以上の上記のプロホルモンの測定とを組み合わせることが、特に適している。公知の炎症パラメータであるC反応タンパク(CRP)の同時測定も提供できる。本明細書およびこれと平行する出願に記載されている新しい結果に基づいて、組織または器官特異的炎症マーカーに適した公知の生体分子またはこれから見出される生体分子の測定との組み合わせも、高精度の敗血症診断のために一般的に考慮されるべきである。 本出願人による前記先の出願の内容を、本明細書の開示の一部として考慮すべきである。 CA19−9(癌抗原19−9)またはGICA(胃腸癌抗原)は、分子量約36kDであり、特異的モノクローナル抗体(1116 NS 19-9; Koprowskiら,Somatic Cell Genet 1979, 5:957-972参照)との反応により同定可能である。その生物学的機能は未知である。その高い特異性から、胃腸癌、特に膵臓癌、肝胆汁性癌(肝臓癌、胆管癌)、および胃癌(Lothar Thomas (editor): Labor und DIagnose, Section 34.3, pp.966-969, 5th Edition, 1998, TH-Books Verlagsgesellschaft参照)の診断、治療観察、および経過観察において重要な役割を演じる。 CA19−9の増大したレベルは、悪性でない炎症疾患、例えば胆嚢炎および閉塞性黄疸、胆石症、胆石症、急性胆管炎、毒性肝炎、およびその他の肝臓疾患を有する患者の一部においても約20%程度測定され得ることが知られている(Lothar Thomas,上記引用文中; M.J.Duffy, Ann Clin Biochem 1998;35;364-370)。 我々が知る限り、組織的なCA19−9の測定は、敗血症患者において行われたことがなく、また、全身的炎症(敗血症)患者の大多数における典型的腫瘍マーカーCA19−9の顕著に増加した測定値に関することはこれまで何も知られていなかった。 圧倒的な数の敗血症患者におけるCA19−9濃度の実質的な増大が、以下の二つの図面を参照する実験報告に記載の測定において、初めて見出された。実験報告 CA19−9の測定用の商業的アッセイ(B.R.A.H.M.S Diagnostica GmbH社のKRYPTOR-CA19-9)を用いて、敗血症マーカープロカルシトニン(PCT)に高い値が見られた171人の敗血症患者の血清において、腫瘍マーカーCA19−9の濃度を測定した。62%の血清において、顕著に高いCA19−9濃度(20U/mlより高い)が観察された。 この測定結果のグラフを図1に示す。 個人の血清について測定したCA19−9値をPCTの測定値と比較した場合、最も高いCA19−9値が、高いPCT濃度が観察された血清において見出されるという意味での積極的な定量的相関関係は見いだせなかった。図2は、そのような比較に見られる相関関係を示す。高いCA19−9値(図の上3分の1)が中間的なPCT濃度でも得られ、かつ、CA19−9の中間的な値が非常に高いPCT濃度(図の右3分の1)でも得られることが明らかである。 CA19−9測定結果が実質的にPCT測定結果から独立であるという事実は、敗血症で両方のパラメータが増加するにもかかわらず、異なる効果が測定されることを示しており、これは、両方のパラメータを測定することが、唯一のパラメータを測定するよりも多くの情報を提供することを意味する。 CA19−9の測定と、一以上の敗血症マーカーの測定とを組み合わせることは、それゆえ、敗血症の高精度の診断を改善すること、および疾患の経過の予後を改善すること、および敗血症患者の経過の治療に伴うモニタリングに適しており、できるだけ完全に記録した個々のケースの正確な評価に基づく上記組み合わせ測定の結果の理解が(例えば、感染のタイプについての情報、敗血症の理由および経過、患者の年齢および性別の特徴的データ)、評価されたケースの数に伴って着実に改善されるであろうことが明らかに期待される。 CA19−9の測定は、適切な選択的抗体を用いた免疫診断方法により患者の体液で測定することが、実際的な観点から、最も有利であるように思われるが、所望の適切な検出方法により実施できる。CA19−9の測定に関する商業的アッセイが既に入手可能であり、本発明においても用いることができる。必要であれば、敗血症診断に関連する測定範囲における測定の良好な精度が保証されなければならない。 かくして、CA19−9の測定は、上記方法により患者の生物学的流体のサンプルにおけるCA19−9の濃度を測定すること、CA19−9の検出された存在および/または量から敗血症の存在に関する結果を導くこと、および得られた結果を重篤度、敗血症の進行、および/または敗血症により最も影響を受けた組織または器官と相関させ、かつ、可能な治療を選択することおよび/または治療の展望を評価することにより、敗血症の早期の鑑別診断、および検出および予後の準備、重篤度の評価、および経過の治療に伴う評価のために実施することができる。50人のコントロール(血液ドナー)群と比較した、171人の敗血症患者の血清におけるCA19−9の測定結果を示す。図1記載の171人の敗血症患者のCA19−9の測定結果と、プロカルシトニンの測定結果との相関関係を示す。 敗血症および敗血症様全身性感染症の検出のための方法であって、パラメータCA19−9を患者の生物学的流体において測定し、かつ、その敗血症の存在、予想される経過、重篤度、および/または治療のために開始された処置の成功度を、前記パラメータCA19−9の存在および/または量が示すことを特徴とする方法。 適切な選択的抗体を用いることを特徴とする、請求項1記載の方法。 CA19−9に加えて、プロカルシトニンの敗血症パラメータが同時に測定されるマルチパラメータ測定法で実施され、かつ、高精度の敗血症の検出のために評価される一組の測定変数の形態の測定結果が得られることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。 前記マルチパラメータ測定法が、チップ技術法に従って操作する測定装置による同時測定として実施されることを特徴とする、請求項3記載の方法。 複数の測定結果の評価がコンピュータープログラムを用いて実施されることを特徴とする、請求項4記載の方法。