生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_二重特異性抗CD19×抗CD16抗体およびその使用
出願番号:2003549396
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,A61K 39/395,A61P 35/02,C07K 16/28,C07K 16/46,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

キプリヤノフ,セルゲイ ル ガル,ファブリセ リトル,メルヴィン シェーファー,ホルガー モルデンハウアー,ゲルハルト コクロヴィウス,ビョルン JP 4373788 特許公報(B2) 20090911 2003549396 20021114 二重特異性抗CD19×抗CD16抗体およびその使用 アフィメート テラポイティクス アーゲー 504099171 細田 芳徳 100095832 キプリヤノフ,セルゲイ ル ガル,ファブリセ リトル,メルヴィン シェーファー,ホルガー モルデンハウアー,ゲルハルト コクロヴィウス,ビョルン EP 01 127 061.8 20011114 20091125 C12N 15/09 20060101AFI20091105BHJP A61K 39/395 20060101ALI20091105BHJP A61P 35/02 20060101ALI20091105BHJP C07K 16/28 20060101ALI20091105BHJP C07K 16/46 20060101ALI20091105BHJP C12N 1/15 20060101ALI20091105BHJP C12N 1/19 20060101ALI20091105BHJP C12N 1/21 20060101ALI20091105BHJP C12N 5/10 20060101ALI20091105BHJP C12P 21/08 20060101ALI20091105BHJP JPC12N15/00 AA61K39/395 TA61P35/02C07K16/28C07K16/46C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12P21/08 C12N 15/00-15/90 PubMed JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 米国特許第06132992(US,A) Int. J. Cancer, (1998), 77, [5], p.763-772 Blood, (1999), 94, [8], p.2562-2568 Int. J. Cancer, (1999), 81, [6], p.911-917 Bioconjug. Chem., (1997), 8, [1], p.64-70 24 DSM 14529 EP2002012776 20021114 WO2003048209 20030612 2005517392 20050616 20 20050829 柴原 直司発明の詳細な説明 本発明は、ヒトB細胞マーカーCD19およびヒトFcγレセプターIII(CD16)に特異的な少なくとも2つの結合部位を含む多価多量体抗体に関する。本発明はまた、前記抗体をコードするポリヌクレオチドおよび該ポリヌクレオチドを含有するベクター、それにより形質転換された宿主細胞および前記抗体の産生におけるその使用に関する。最後に、本発明は、上記のポリヌクレオチド、抗体またはベクターのいずれかを含有する組成物、好ましくは、医薬組成物および診断用組成物に関する。医薬組成物は、免疫療法、好ましくは非ホジキンリンパ腫等のB細胞悪性疾患に対して有用である。 非ホジキンリンパ腫(NHL)は、血液、リンパ節および骨髄において起こるBおよびT細胞起源の血液学的悪性疾患の異種起源集団を含み、通常、全身にまき散らされる。NHLは、集団の増大よりも頻度において増大した数少ない悪性疾患の1つであり、毎年、約53,000の新しいクラスが米国で生じる。NHLの最も一般的な形態はB細胞系列に由来する。NHLは、初期および中間ステージには合理的成功を伴って処置され得、進行したステージでは、通常の化学療法および放射線の結果は失望に終わる。これは、よく見られる低い段階のリンパ腫に関して特に当てはまる。相当に多数の患者が再発し、ほとんどの寛解は最小の後遺症を超えるには及ばない。この落胆させる状況は、二重特異性抗体(BsAb)を用いて宿主免疫機構の活性化等の代替的な治療ストラテジーの調査を刺激した(van Sprielら、Immunol. Today 21 (2000), 391-397)。BsAbは、腫瘍細胞と免疫エフェクター細胞との間を架橋し、続いて、パーフォリンおよびグランザイム放出、Fas-媒介アポトーシスおよびサイトカイン産生を含む細胞傷害性応答を引き起こす。NHLが、例えば、CD19、C20等の1つ以上のB細胞マーカーを典型的に発現するので、これらのマーカーは悪性B細胞に対してエフェクター細胞を再指向させるために使用されうる。正常なB細胞もまた破壊されるが、それらは、標的抗原を欠いている幹細胞から再増殖される。再指向溶解を媒介するために、BsAbは、エフェクター上のトリガー分子に標的細胞を直接的に結合しなければならない。最もよく研究された細胞傷害性トリガーレセプターは、T細胞上のT細胞レセプター(TCR/CD3)複合体、ナチュラルキラー細胞(NK)上のFcγRIIIa(CD16)、単球、マクロファージ、および顆粒球により発現されるFcγRI(CD64)およびFcγRI(CD89)等の多鎖シグナル伝達複合体である。TCR/CD3複合体に指向されたBsAbは、その天然のMHC特異性には関わりなく、全てのT細胞を標的化する潜在性を有する。これまで、CD19×CD3 BsAbの種々の形態が作製され、多くのインビトロおよびインビボ治療研究に使用される。これらのBsAbは、主として、げっ歯類ハイブリッドハイブリドーマまたは2つのモノクローナル抗体の化学的架橋により産生される。しかし、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答および炎症性サイトカインの放出は、臨床使用における、げっ歯類抗体に由来するBsAbの主要な欠点である。さらに、CD3ベース免疫治療は、別個のコ-レセプターにより送達されるシグナルによりT細胞集団のさらなる刺激を必要とする。それゆえ、これまでの利用可能なBsAbは、満足な生物学的活性をディスプレイするために、低T細胞細胞傷害性および共刺激剤の必要性を被る。 従って、本発明の基礎をなす技術的課題は、先行技術の手段の欠点を解消するB細胞悪性疾患の治療に適した手段を提供することであった。 前記技術的課題の解決は、特許請求の範囲に特徴づけられる態様を提供することにより達成される。本発明は、NK細胞の再標的化に依存する抗体の産生が正の治療効果を有し、それゆえ、T細胞とは異なり、NK細胞(ならびに単球、マクロファージおよび顆粒球)等のような自然免疫のFcR産生細胞メディエータは、構成的に活性な状態で存在する傾向があり、さらなる(前-)刺激を必要としない。 さらに、治療のために従来使用されているモノクローナルBsAbは、免疫グロブリン定常ドメインを有し、これは、所望されない免疫反応(HAMA応答)を担う。従って、本発明の抗体の好ましい態様は、所望されない免疫応答が回避されうることによって可変免疫グロブリンドメイン、いわゆるFvモジュールのみを含有するBsAbである。さらに、それらは、治療的使用のために使用できるようにする安定性を有する。Fvモジュールは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖可変領域、VHおよびVL、各々の会合により形成される。二重特異性分子、いわゆる二重特異性抗体(BsDb)は、ある抗体に由来するVHドメインがショートリンカーにより別の抗体のVLドメインに連結されたものからなる、2つの単鎖融合産物の非共有結合会合により形成されうる。あるいは、組換えBsAb、タンデムディアボディ(Tandab)は、分子内Fv形成を防止する配向で、2つの異なる特異性の4つの抗体可変ドメイン(VHおよびVL)を含有する単鎖分子のホモ二量体化により形成されうる。従って、本発明は、以下の特徴:(a)少なくとも2つの特異性を有する;(b)少なくとも1つの抗原結合ドメインがヒトCD19に特異的である;および(c)少なくとも1つの抗原結合ドメインがヒトCD16に特異的であるにより特徴づけられる多価多量体抗体に関する。 本発明の抗体は、悪性B細胞上のヒトCD19および細胞障害性NK細胞上のヒトCD16の両方に特異的である。かかる抗体は、前-および/または共-刺激を必要とすることなくヒトNK細胞の漸増によりCD19-陽性腫瘍細胞を破壊することができる。これは、CD19×CD3またはCD19×CD28 BsAb等のCD19陽性標的細胞にエフェクター細胞を再標的化させる任意の公知の二重特異性分子と明確に対照的である。エフェクター細胞集団の前-および/または共-刺激からの独立は、サイトカイン放出シンドローム等の有害な副作用の増強によりかかる抗体の治療効果に実質的に貢献しうる。 本発明の抗体は、例えば、以下の方法:(a)ヘテロ二重特異性リンカーによる、ヒトCD19およびCD16それぞれへの特異的な抗体または抗体断片の化学的結合、(b)既に利用可能であり、ヒトCD19およびCD16それぞれに特異的なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株の融合、(c)少なくとも2つの異なる特異性の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子のマウスミエローマ細胞または他の真核生物発現系へのトランスフェクションおよび多価多重特異的抗体の単離により、当業者に公知の方法により調製されうる。 本発明の目的はまた、HAMA応答等の所望されない免疫応答が回避されうる抗体を提供することである。 従って、好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は定常領域を欠く。これは、例えば、非免疫原性免疫グロブリン可変(VHおよびVL)ドメインのみからなる組換え分子を構築することにより達成される。これはまた、ヒト起源の抗体ドメインを使用することにより達成されうる。かかる抗体は、例えば、以下の方法:(a)ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、少なくとも4つの免疫グロブリン可変VHおよびVLドメインをコードする遺伝子を単一の遺伝子構築物に組み合わせること、および細菌または他の適切な発現系においてそれを発現させることによる多価多重特異的単鎖Fv抗体の構築、(b)対応する遺伝子の共発現または別々に発現された対応する前駆体の共再折りたたみの結果としての、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、種々の特異性(CD19またはCD16に対する)のVHおよびVLドメイン各々からなる2つのハイブリッドscFv断片の非共有結合ヘテロダイマー化、(c)その分子間塩基対形成を防止する配向で、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、異なる特異性(CD19またはCD16に対して)の少なくとも4つのVHおよびVLドメインを含む単鎖Fv抗体の非共有結合ホモダイマー化により、当業者に公知の方法により調製されうる。 好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、少なくとも4つの免疫グロブリン可変VHおよびVLドメインを含有する単鎖Fv抗体である。 本明細書中で使用される用語「Fv抗体」は、可変ドメインを含むが、定常ドメインは含まない抗体に関する。本明細書中で使用される用語「ペプチドリンカー」は、その長さが連結対象の可変ドメインの種類に依存する、2つの可変ドメインを連結可能な任意のペプチドに関する。ペプチドリンカーは任意のアミノ酸残基を含み、アミノ酸残基グリシン、セリンおよびプロリンが好ましい。 より好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、少なくとも4つの免疫グロブリン可変VHおよびVLドメインを含有する単鎖Fv抗体である。かかる抗体は、例えば、少なくとも4つの免疫グロブリン可変VHおよびVLドメインをコードする遺伝子を単一の遺伝子構築物に結合させ、細菌または他の適切な発現系においてそれを発現させることにより産生されうる。 さらにより好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、各々、CD19またはCD16に対して異なる特異性のVHおよびVLドメインからなる2つのハイブリッド単鎖Fv抗体のヘテロダイマーである。かかる抗体は、例えば、対応する遺伝子の共発現、または別々に発現された対応する前駆体の共再折りたたみの結果として、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、各々、異なる特異性(CD19またはCD16に対する)のVHおよびVLドメインからなる、2つのハイブリッド単鎖Fv抗体の非共有結合的ヘテロダイマー化により産生されうる。 別の態様では、本発明の多価多量体抗体は、ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、CD19またはCD16に対して異なる特異性の少なくとも4つのVHおよびVLドメインを含有する単鎖Fv抗体のホモダイマーである。 本発明はまた、天然の抗体に由来するVHおよびVL領域を模倣するか、またはそれらに対応する多価多量体抗体に関する。好ましくは、前記天然の抗体は、モノクローナル抗体、合成抗体、またはヒト化抗体である。 さらに好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は、(a)第1のハイブリッド単鎖Fv抗体がVH16-VL19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVH19-VL16である;または(b)第1のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL16-VH19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL19-VH16である抗体である。 好ましくは、可変VHおよびVLドメインを連結するペプチドリンカーは、0〜12アミノ酸、好ましくは、10アミノ酸を含有する。 さらに好ましい態様では、多価多量体抗体の可変VHまたはVLドメインは、N-および/またはC-末端で少なくとも1アミノ酸残基短縮される。 より好ましい態様では、本発明の多価多量体抗体は、(a)第1ハイブリッド単鎖Fv抗体がVH16-VL19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVH19-VL16である;または(b)第1のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL16-VH19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL19-VH16であり、2つのハイブリッド単鎖Fv抗体がペプチドリンカーを介して連結される抗体である。このペプチドリンカーの好ましい長さは0〜30アミノ酸であり、12アミノ酸の長さがより好ましい。 本発明の多価多量体抗体のペプチドリンカーは任意のアミノ酸残基を含みうるが、アラニン、グリシン、セリンおよびプロリン残基が好ましい。 本発明の多価多量体抗体の非共有結合は、少なくとも一対のVドメイン間の少なくとも1つのジスルフィド架橋の導入により強化されうる。これは、可変ドメインをコードするDNA配列を改変することにより、従って、すなわち、2つのドメインをコードするDNA配列の各々にシステイン残基をコードするコドンを導入することにより、またはあるコドンを、システイン残基をコードするコドンと置換することにより達成されうる。 最後に、本発明の多価多量体抗体は、当該分野で公知の従来の技術を用いて、例えば、アミノ酸欠失、挿入、置換、付加および/または組換え、および/または当該分野で公知の任意の他の改変を単独または組み合わせて用いることにより、さらに改変されうる。可変ドメインまたはペプチドリンカーのアミノ酸配列の基礎となるDNA配列にかかる改変を導入する方法は当業者に周知である;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.参照。 本発明の多価多量体抗体は、少なくとも1つのさらなる化合物、例えば、共有結合または非共有結合により連結されているタンパク質ドメインを含有しうる。連結は、当該分野で公知の方法であり、上記された遺伝子融合に基づくか、または例えば、WO 94/04686に記載される、例えば、化学架橋により行われうる。本発明に従って使用される抗体を含有する融合タンパク質に存在するさらなるドメインは、好ましくは、可動性リンカー、有利には、前記さらなるタンパク質ドメインのC末端と抗体のN末端(逆も同様)との間の距離を橋渡しするのに十分な長さの複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を含むペプチドリンカーにより連結されうる。上記融合タンパク質は、プロテイナーゼの切断リンカーまたは切断部位をさらに含有しうる。従って、例えば、抗体の少なくとも1つのモノマーは、生物学的活性に適切なまたは固相支持体、生物学的活性物質(例えば、サイトカインまたは成長ホルモン)、化学薬品(例えば、ドキソルビシン、シクロスポリン)、ペプチド(例えば、α-アマニチン)、タンパク質(例えば、グランザイムAおよびB)または薬物に選択的に結合するのに適切な高次構造を有するエフェクター分子に連結されうる。 本発明の別の目的は、本発明の多価多量体Fv抗体の調製方法であり、ここで(a)ペプチドリンカーが可変ドメインと連結し、多価多量体Fv抗体のモノマーをコードするDNA配列の形成を生じるように、ペプチドリンカーをコードするDNA配列が可変ドメインをコードするDNA配列と連結されており、(b)種々のモノマーをコードするDNA配列が適切な発現系で発現される。この方法の種々の工程は標準的な方法、例えば、Sambrookら、または下記の実施例に記載される方法に従って行われうる。 本発明はまた、本発明の多価多量体抗体をコードするポリヌクレオチドおよびベクター、好ましくは、前記ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターに関する。 種々の発現ベクター/宿主系は、多価多量体抗体をコードする配列を含み、発現するために利用されうる。これらは、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、ヴァキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV; タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、使用される宿主細胞により限定されない。 「制御エレメント」または「調節配列」は、転写および翻訳を実行するために宿主細胞タンパク質と相互作用するベクター-エンハンサーの非翻訳領域、プロモーター、5'および3'非翻訳領域である。かかるエレメントはその強度および特異性において変化しうる。利用されるベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む、任意の数の適切な転写および翻訳エレメントが使用されうる。例えば、細菌系にクローニングする場合、Bluescript.RTM.ファージミド(Stratagene, LaJolla, Calif.)またはpSport1.TM.プラスミド(Gibco BRL)等のハイブリッドLacZプロモーター等の誘導性プロモーターが使用されうる。ヴァキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞で使用されうる。植物細胞のゲノムに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えば、熱ショック、RUBISCO;および貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルスに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)がベクターにクローン化されうる。哺乳動物細胞系において、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターが好ましい。多コピーの多価多量体抗体をコードする配列の多コピーを含む細胞株を作製する必要がある場合、SV40またはEBVは適切な選択マーカーとともに使用されうる。 細菌系では、多価多量体抗体について意図される使用に応じていくつかの発現ベクターを選択し得る。本発明における使用に適したベクターとしては、細菌における発現のためのpSKK発現ベクターが挙げられるが、これに限定されない。 酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成または誘導プロモーターを含有するいくつかのベクターを使用し得る。概説は、Grantら(1987) Methods Enzymol. 153:516-544を参照のこと。 植物発現ベクターを使用する場合には、多価多量体抗体をコードする配列の発現を、いくつかのプロモーターのうちのいずれかにより誘発し得る。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターを単独で、またはTMV由来ωリーダー配列(Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311)との組み合わせで使用し得る。あるいはまた、RUBISCOまたは熱ショックプロモーターの小サブユニットなどの植物プロモーターを使用し得る(Coruzzi, Gら(1984) EMBO J. 3:1671-1680; Broglie, R.ら(1984) Science 224:838-843;ならびにWinter, J. ら(1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85-105)。これらの構築物は、直接DNA形質転換または病原体媒介性トランスフェクションにより植物細胞内に導入され得る。かかる技術は、いくつかの一般に入手可能な概説に記載されている(例えば、McGraw Hill Yearbook of Science and Technology (1992) McGraw Hill, New York, N.Y.のHobbs, S.およびMurry, L. E.; pp. 191-196を参照のこと)。 本発明の多価多量体抗体を発現させるために、昆虫系もまた使用し得る。例えば、かかる系の1つにおいて、Autographa california nuclear polyhedrosisウイルス(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫において外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。多価多量体抗体をコードする配列は、ポリヘドリン(polyhedrin)遺伝子などのウイルスの非必須領域内にクローン化され、ポリヘドリンプロモーターの制御下に配置され得る。多価多量体抗体をコードする遺伝子の良好な挿入は、ポリヘドリン遺伝子を不活化し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを生じる。次いで、組換えウイルスを用いて、APOPが発現され得る、例えばS. frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫を感染させ得る(Engelhard, E. K. ら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3224-3227)。 哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルス系発現ベクターを利用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、多価多量体抗体をコードする配列を、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲートする。感染宿主細胞において多価多量体抗体を発現し得る可変ウイルスを得るため、ウイルスゲノムの非必須E1およびE3領域内への挿入を使用し得る(Logan, J.およびShenk, T. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3655-3659)。また、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させるため、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを使用し得る。 プラスミドにおいて含有および発現されうるより大きなDNAの断片を送達するためには、ヒト人工染色体(HAC)も使用され得る。治療目的のため、6〜10MのHACを構築し、従来の送達法(リポソーム、多価カチオンアミノポリマーまたは小胞)により送達する。 多価多量体抗体をコードする配列のより効率的な翻訳を達成するため、特定の開始シグナルも使用し得る。かかるシグナルとしては、ATG開始コドンおよび隣接する配列が挙げられる。多価多量体抗体をコードする配列、その開始コドンおよび上流配列が適切な発現ベクターに挿入されている場合、さらなる転写または翻訳制御シグナルは必要なかろう。しかしながら、コード配列のみが挿入されている場合、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを提供すべきである。さらにまた、全挿入物の翻訳を確実にするため、開始コドンを正しいリーディングフレーム内に置くべきである。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは、天然および合成の両方の種々の起源であり得る。発現の効率は、文献(Scharf, D.ら(1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162)に記載されているものなどの、使用される具体的な細胞系に適切なエンハンサーを含めることにより強化され得る。 また、宿主細胞株は、その挿入された配列の発現を調節する能力または発現された抗体鎖を所望の様式でプロセッシングする能力について選択され得る。正しい挿入、フォールディングおよび/または機能を促進するため、タンパク質の「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセッシングもまた使用し得る。翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的な機構を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびW139)が、American Type Culture Collection (ATCC; Bethesda, Md.)から入手可能であり、外来抗体鎖の正しい修飾およびプロセッシングを確実にするために選択され得る。 組換え抗体の長期間高収率での産生には、安定な発現が好ましい。例えば、多価多量体抗体を安定に発現する細胞株を、ウイルスの複製起点および/または内因性発現エレメントならびに選択マーカー遺伝子を、同じまたは別のベクターに含み得る発現ベクターを用いて形質転換し得る。ベクターの導入後、細胞を富化培地にて1〜2日間増殖させた後、培地を選択培地に交換し得る。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在は、導入された配列を良好に発現する細胞の成長および回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞型に適切な組織培養技術を用いて増殖させ得る。 形質転換された細胞株を回収するため、任意の数の選択系を使用し得る。これらとしては、それぞれtk.sup.-またはaprt.sup.-細胞に使用され得るヘルペス単純ウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, M.ら(1997) Cell 11:22-32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, I. ら(1980) Cell 22:817-23)遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。また、抗代謝物、抗生物質または殺虫剤耐性を、選択の根拠として使用し得、例えば、dhfrはメトトレキセートに耐性を付与し(Wigler, M.ら(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567-79);nptはアミノグリコシドに耐性を付与し、ならびにG-418(Colbere-Garapin, F.ら(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14)およびalsまたはpatはそれぞれ、クロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに耐性を付与する(Murry, 上記)。さらなる選択可能な遺伝子が記載されており、例えばtrpBは細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用可能にし、hisDは細胞が、ヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用可能にする(Hartman, S. C.およびR. C. Mulligan, (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:8047-51)。最近、アントシアニン、β-グルクロニダーゼおよびその基質GUSならびにルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンなどの可視マーカーの使用が好評を博しており、形質転換体の同定ためのみならず、特定のベクター系による一過性または安定なタンパク質発現の量を定量するためにも広く使用されている(Rhodes, C. A.ら(1995) Method Mol. Biol. 55:121-131)。 特に好ましい発現ベクターは、2001年9月24日に、ブダペスト条約従ってDSM 14529の元でDSMZ (Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellen)に寄託されたpSKID19x16である。 本発明はまた、本発明の多価多量体抗体、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含有する組成物に関する。好ましくは、該組成物は、好ましくは適切な医薬用担体と組み合わされた医薬組成物、または任意にさらに適切な検出手段を含む診断用組成物である。適切な医薬用担体の例は当該技術分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。かかる担体は、慣用法により製剤化され得、適切な用量で被験体に投与され得る。適切な組成物の投与は、様々な様式により、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内投与により行なわれ得る。投与経路は、もちろん、疾患、例えば腫瘍の性質、および医薬組成物に含有される化合物の種類に依存する。投薬計画は担当医師および他の臨床要因により決定される。医学分野において周知であるように、任意の一患者のための投薬は、患者の体格、体表面積、年齢、性別、投与される具体的な化合物、投与の時間および経路、疾患の種類、一般健康状態ならびに併用投与されている他の薬物を含む多くの要因に依存する。 上記の本発明の化合物の好ましい医学的使用は、B細胞悪性腫瘍、好ましくは非ホジキン病、B細胞媒介性自己免疫疾患またはB細胞枯渇である。 本発明の別の主題は、(a)本発明の多価多量体抗体、(b)本発明の発現ベクター、ならびに、任意に(c)バッファー、溶媒および対照などの従来の助剤を含んでなる診断用キットに関する。 多価多量体抗体は検出可能に標識され得る。好ましい態様において、該キットは、ELISAによる診断を可能にし、当該技術分野で知られた技術を用いて固体支持体、例えばポリスチレンマイクロタイター皿またはニトロセルロース紙に結合させた抗体を含む。あるいはまた、該キットは、RIAに基づき、放射性同位体でマーキングされた抗体を含む。本発明のキットの好ましい態様において、多価多量体抗体は酵素、蛍光性化合物、発光性化合物、強磁性プローブまたは放射性化合物で標識される。 以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例1:細菌における二価二重特異性CD19xCD16抗体の発現のためのプラスミドpKID19x16およびpSKID19x16の構築 VH16-VL19およびVH19-VL16ハイブリッドscFvをコードする遺伝子を、プラスミドpHOG3-19およびpHOG19-3 (Kipriyanovら, 1998, Int. J. Cancer 77, 763-772)において抗-CD3 VHおよびVL遺伝子を、そのCD16対応物(Arndtら, 1999, Blood 94, 2562-2568)と、それぞれNcoI/HindIIIおよびHindIII/XbaI制限部位を用いて交換することにより構築した。2つのハイブリッドscFvの共選択のためのジシストロニック(dicistronic)なオペロンを含有する発現プラスミドpSKID19x16を、ベクター骨格を含有するpHOG16-19由来BglII/XbaI制限断片およびpHOG19-16由来BglII/XbaI制限断片のライゲーションにより構築した(図3)。 細菌ペリプラズムにおける機能性CD19xCD16 BsDbの収量を増大させるため、最適化ベクターpSKID19x16(図4)を作製した。このベクターは、hok/sokプラスミド無含有細胞自殺系(Thistedら, 1994, EMBO J. 13, 1960-1968)を含有するプラスミドpHKK (Hornら, 1996, Appl. Microbiol. Biotechnol. 46, 524-532)をもとにして構築した。最初に、ハイブリッドscFv VH3-VL19をコードする遺伝子をpHOG3-19 (Kipriyanovら, 1998, Int. J. Cancer 77, 763-772)から、プライマー5-NDE、5'-GATATACATATGAAATACCTATTGCCTACGGC-3'および3-AFL、5'-CGAATTCTTAAGTTAGCACAGGCCTCTAGAGACACACAGATCTTTAG-3'を用いてPCRにより増幅した。得られた921bp PCR断片をNdeIおよびAflIIで消化し、NdeI/AflII線状化プラスミドpHKK内にクローン化し、ベクターpHKK3-19を作製した。余分なXbaI部位を除去するため、lacI遺伝子(lacリプレッサーをコードする)の3'-末端部分を含有するpHKKプラスミドの断片である、強い転写ターミネーターtHPおよび野生型lacプロモーター/オペレーターを、PCRにより、プライマー5-NAR、5'-CACCCTGGCGCCCAATACGCAAACCGCC-3'および3-NDE、5'-GGTATTTCATATGTATATCTCCTTCTTCAGAAATTCGTAATCATGG-3'を用いて増幅した。得られた329bp DNA断片をNarIおよびNdeIで消化し、NarI/NdeI線状化プラスミドpHKK3-19内にクローン化し、ベクターpHKKDXbaを作製した。より高度な組換え抗体産生のためのSkp/OmpHペリプラズム因子(BothmannおよびPlueckthun, 1998, Nat. Biotechnol. 16, 376-380)をコードする遺伝子をコードする導入するため、skp遺伝子をPCRによりプライマーskp-3、5'-CGAATTCTTAAGAAGGAGATATACATATGAAAAAGTGGTTATTAGCTGCAGG-3'およびskp-4、5'-CGAATTCTCGAGCATTATTTAACCTGTTTCAGTACGTCGG-3'により、pGAH317 (HolckおよびKleppe, 1988, Gene 67, 117-124)を鋳型として用いて増幅した。得られた528bp PCR断片をAflIIおよびXhoIで消化し、AflII/XhoI消化プラスミドpHKKDXba内にクローン化すると、発現プラスミドpSKK2が得られた。 pHOG16-19のNcoIおよびXbaIでの消化後、ハイブリッドscFv VH16-VL19をコードする遺伝子を820 bp DNA断片として単離した。この遺伝子をNcoI/XbaI線状化ベクターpSKK2内にクローン化すると、プラスミドpSKK16-19がもたらされた。第2のハイブリッドscFv VH19-VL16をコードする遺伝子をプラスミドpHOG16-19からPCRによりプライマー5-BGL、5'-GCACACAGATCTGAGAAGGAGATATACATATGAAATACCTATTGCCTACGGC-3'およびpSEXBn、5'-GGTCGACGTTAACCGACAAACAACAGATAAAACG-3'で増幅した。得られたPCR断片をBglIIおよびXbaIで消化し、BglII/XbaI線状化プラスミドpSKK16-19内にクローン化すると、発現ベクターpSKID19x16(図4)が得られた。このベクターは、プラスミドの性能を向上し、振とうフラスコ培養と高細胞密度発酵の両方の条件下で大腸菌ペリプラズム内での機能性二価産物の蓄積の増加をもたらすいくつかの特徴を含む。これらは、プラスミド損失を防ぐhok/sok分離後死菌系、強いタンデムリボソーム結合部位および細菌における抗体断片の機能性収量を増大するペリプラズム因子Skp/OmpHをコードする遺伝子である。発現カセットは、wt lacプロモーター/オペレーター系の転写制御下にあり、大腸菌lacZ遺伝子由来の第1rbsを有するβ-ガラクトシダーゼ(lacZi)のN-末端をコードする短配列、続いて、ファージT7の第10遺伝子(T7g10)由来の強いrbsの転写制御下にある2つのハイブリッドscFvおよびSkp/OmpHペリプラズム因子をコードする遺伝子を含む。 プラスミドpSKID19x16内のCD19xCD16 BsDbのヌクレオチドおよびタンパク質配列を図5に示す。実施例2:二価二重特異性CD19xCD16抗体の細菌における産生および精製 プラスミドpKID19x16で形質転換した大腸菌XL1-Blue細胞(Stratagene, La Jolla, CA)または発現プラスミドpSKID19x16で形質転換した大腸菌株RV380 (Maurerら, 1980, J. Mol. Biol. 139, 147-161)を、50μlアンピシリンおよび100mMグルコース(2xYTGA)を加えた2xYT培地中にて、それぞれ37℃または26℃で一晩増殖させた。一夜培養物の2xYTGAでの希釈液(1:50)をフラスコ培養物として37℃(XL1-Blue)または26℃(RV380)で、激しく攪拌しながら(180〜220 rpm)で、光学密度(OD)600nmが0.8〜0.9に達するまで増殖させた。細菌を5000gで10分間20℃での遠心分離により回収し、同容量の新たなYTBS培地(1Mソルビトール、2.5mMグリシンベタインおよび50μg/mlアンピシリンを含有する2xYT)中に再懸濁した。イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.2mMまで添加し、増殖を20℃で16〜18時間継続した。細胞を9000gで20分間4℃での遠心分離により回収した。RV308/pSKID19x16を使用する場合、培養上清みを廃棄した。対照的に、XL1-Blue/pKID19x16では上清みを保持し、氷上に維持した。可溶性ペリプラズムタンパク質を単離するため、ペレット化した細菌を初期容量の5%の氷冷50mM Tris-HCl、20%スクロース、1mM EDTA、pH 8.0中に再懸濁した。時々攪拌しながら氷上での1時間のインキュベーション後、スフェロプラストを30000gで30分間4℃で遠心分離すると、可溶性ペリプラズム抽出物が上清みとして、スフェロプラストおよび不溶性ペリプラズム物質がペレットと得られた。RV308/pSKID19x16では、ペリプラズム抽出物を50mM Tris-HCl、1M NaCl、pH 7.0に対して充分透析し、CD19xCD16 BsDbを単離するための出発物質として使用した。XL1-Blue/pKID19x16では、培養上清みおよび可溶性ペリプラズム抽出物を合わせ、さらなる遠心分離(30000g、4℃、40分間)により浄化した。組換え産物を硫酸アンモニウム沈殿(最終濃度は飽和の70%)により濃縮した。タンパク質沈殿物を遠心分離(10000g、4℃、40分間)により回収し、50mM Tris-HCl、1M NaCl、pH 7.0(出発物質)に溶解した。固定金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)を、4℃にて、Cu2+を負荷し、50mM Tris-HCl、1M NaCl、pH 7.0(出発バッファー)で平衡化したキレート化セファロース(Amersham Pharmacia, Freiburg, Germany)の5mlカラムを用いてを行なった。試料を、カラムに通すことにより負荷した。次いで、20カラム容量の開始バッファー、次に50mMイミダゾールを含有する開始バッファーで、排出液の吸光度(280nm)が最小になるまで(約30カラム容量)洗浄した。吸収された物質を、50mM Tris-HCl、1M NaCl、250mMイミダゾール、pH 7.0で溶出した。最終精製を、Mono Q HR 5/5カラム(Amersham Pharmacia)で、20mM Tris-HCl、pH 8.5中、直線0〜1M NaCl勾配でのイオン交換クロマトグラフィーにより行なった。ダイアボディ(diabody)を含有する画分を、Ultrafree-15遠心分離フィルター装置(Millipore, Eschborn, Germany)を用い、50mMイミダゾール含有PBS、pH 7.0との同時バッファー交換により濃縮した。タンパク質濃縮物を、Bio-Rad (Munich, Germany)タンパク質アッセイキットを用い、Bradford色素結合アッセイ(Bradford, 1976, Anal. Biochem. 72, 248-254)により測定した。精製CD19xCD16 BsDb は、主に、較正Superdex 200 HR 10/30カラム(Amersham Pharmacia)でのゲル濾過により示される分子量(Mr)が約60kDaのダイマー型であった(図6)。SDS-PAGE解析により、BsDbは、計算値分子量Mrが28730のVH16-VL19 scFvおよびMrが29460のVH19-VL16 scFvに相当する2つのタンパク質バンドに分離されることが示された(図7)。実施例3:表面プラスモン共鳴(SPR)によるダイアボディ親和性の測定 CD19xCD16 BsDbのヒトCD16の細胞外ドメイン(ECD)との相互作用の速度定数を、SPRにより、BIAcore 2000バイオセンサーシステム(Biacore, Uppsala, Sweden)を用いて測定した。ストレプトアビジンコートセンサーチップSA(Biacore)上への固定のため、CD16 ECDを、ECLタンパク質ビオチン化モジュール(Amersham Pharmacia)の改良プロトコルに従ってビオチン化した。陰性対照として、ビオチン化ブタチューブリンを使用した。HBS-EPバッファー(10 mM HEPES、0.15 M NaCl、3 mM EDTA、0.005%ポリオキシエチレンソルビタン; Biacore)中で希釈した10μg/mlの濃度のビオチン化抗原を5μg/分の流速で4分間センサーチップに塗布すると、800共鳴単位(RU)のECDおよび900 RUのチューブリンの固定化がもたらされた。すべてのSPR測定を、25℃のHBS-EP中、20μg/分の流速で行なった。解析を、6.25〜800 nMの8種のダイアボディ濃度で行なった。各注入試料(100μl)を固定化抗原と5分間接触させた。その後、解離を10分間行なった。各サイクル後、センサーチップの表面をバッファーで洗い流した。速度定数を、BIAevaluationバージョン3.0ソフトウェア(Biacore)を用い、1:1(Langmuir)結合モデルにしたがって計算した。CD19 x CD16 BsDbは、CD16コートセンサーチップからのかなり高いオフレート(off-rate)を示し、したがって、バイオセンサー表面の再生を不必要とした。計算されたオフレート定数およびオンレート定数は、それぞれ2.3×10-2 s-1および2.7×104 s-1 M-1であり、8.5×10-7 M(表1)のKdをもたらした。定常状態結合レベルの評価からほぼ同一の親和性定数が推定された(表1)。 表1SPRにより測定されたCD16 ECDに対するBsDb CD19 x CD16結合の親和性および反応速度論koffおよびkon値は、固定したビオチン化CD16 ECDを用いてSPRにより測定された。親和性定数を、koff/kon比(Kd)または定常状態解析のSPRデータ(Keq)のいずれかから計算した。ダイアボディ-抗原複合体の解離の半減期(t1/2)をln2/koff比から推定した。実施例4:細胞結合測定 ヒトCD16B cDNA (293-CD16)細胞で安定的にトランスフェクトしたヒトCD19+ B細胞株JOK-1およびヒト胚腎臓(HEK)293細胞を、フローサイトメトリー実験に使用した。簡単には、10% FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを補充した50μlのRPMI 1640 培地(GIBCO BRL, Eggestein, Germany)(完全培地という)中の5×105細胞を、100mlのダイアボディ調製物とともに45分間インキュベートした。完全培地で洗浄した後、細胞を同じバッファー中で、100μlの10μg/mlの抗-c-myc MAb 9E10とともに氷上で45分間インキュベートした。2回目の洗浄サイクルの後、100μlのFITC-標識ヤギ抗-マウスIgG (GIBCO BRL)とともに前と同じ条件下でインキュベートした。次いで、細胞を再度洗浄し、完全培地中1μg/mlヨウ化プロピジウム(Sigma, Deisenhofen, Germany)溶液100μlに再懸濁し、死細胞を排除した。染色された細胞の蛍光を、FACScan (Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いて測定した。平均蛍光(F)をCellquestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて計算し、バックグラウンド蛍光を差し引いた。ソフトウェアプログラムGraphPad Prism (GraphPad Software, San Diego, CA)を用い、実験値をラインウィーバー-バークの式:1/F = 1/Fmax + (Keq/Fmax)(1/[BsDb])にあてはめることにより、平衡解離定数(Keq)を決定した。サイトフローメトリー実験により、CD19 x CD16 BsDbと、表面上にヒトCD16のECDを発現するヒトCD19+ JOK-1細胞および293-CD16細胞の両方との特異的相互作用が示された。しかしながら、JOK-1細胞との相互作用について得られた蛍光強度は、293-CD16細胞の場合よりも有意に高く、これは、2つの抗原結合部位について親和性値における6倍の差を反映する(図8、表2)。実施例5:インビトロ細胞表面保持 直接結合実験における差の生物学的重要性を調べるため、37℃におけるCD19+およびCD16+両細胞の表面上でのCD19 x CD16 BsDbのインビトロ保持をフローサイトメトリーにより測定した(図9)。保持されたダイアボディの検出を抗-c-myc MAb 9E10 (IC Chemikalien)、続いてFITC-標識抗-マウスIgG (GIBCO BRL)を用いて行なった以外は、記載された(Adamsら, 1998, Cancer Res. 58, 485-490)ような、細胞表面抗原の内在化を妨げる条件下で37℃にて細胞表面保持アッセイを行なった。速度解離定数(koff)およびダイアボディの解離の半減期(t1/2)値を、GraphPad Prism (GraphPad Software)を用いた実験データの一相指数関数的減衰フィットから推定した。CD19 x CD16 BsDbは、293-CD16細胞において比較的短い保持半減期(t1/2)(3.6分)を有し、CD19+ JOK-1細胞の表面上では3倍長いt1/2を有し、したがって、直接結合実験から推定された低CD16結合親和性と充分相関する(表2)。ダイアボディのCD19活性が、二重特異性分子の第二の成分に影響されるかどうかを調べるため、CD19 x CD3 BsDb (Cochloviusら, 2000, J. Immunol. 165, 888-895; Kipriyanovら, 1998 Int. J. Cancer 77, 763-772)を、すべてのフローサイトメトリー実験の対照として使用した。CD19+ JOK-1細胞上での直接結合および細胞表面保持は両ダイアボディについて、実質的に区別不可能であった。計算されたKeqおよびt1/2値は、それぞれ、CD19 x CD3 BsDbでは5.7nMおよび10.8分であり、CD19 x CD16 BsDbでは6.1nMおよび10.6分であった。これらの結果は、二重特異性ダイアボディに存在する第2の特性がCD19への結合親和性に有意に影響しないことを示す。 表2細胞表面抗原へのBsDb CD19 x CD16結合の親和性および反応速度論koff値は、JOK-1および293-CD16細胞表面保持実験から推定した。平衡解離定数(Keq)を、図8に示すラインウィーバー-バークプロットから推定した。ダイアボディ-抗原複合体の解離の半減期(t1/2)値をln2/koff比から推定した。実施例6:インビトロでの腫瘍細胞の致死 ヒト末梢血リンパ球(PBL)またはNK細胞による腫瘍細胞溶解の媒介におけるCD19 x CD16 BsDbの効率を、アポローシスの結果としての標的細胞におけるDNA断片化の測定に基づくJAM試験 (Matzingerら, 1991, J. Immunol. Meth. 145, 185-192)を用いて調べた。CD19発現バーキットリンパ腫細胞株Rajiを標的細胞として使用した。エフェクター細胞としては、記載(Kipriyanovら, 1998, Int. J. Cancer 77, 763-772)されたとおりに調製した活性化ヒトPBL、またはヒトNK細胞のいずれかを使用した。NK細胞は、NK細胞単離キット(Miltenyi Biotech, Bergisch Gladbach, Germany)を用い、磁気細胞分取により末梢血から単離した。細胞致死アッセイでは、丸底マイクロタイタープレート内の100μlの培地および50μlのダイアボディ試料中で、105エフェクター細胞を[3H]-チミジンで標識した104標的細胞と混合した。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした後、細胞を回収し、放射能を液体シンチレーションβカウンター(LKB, Wallach, Germany)で測定した。アポトーシス誘導性DNA断片化に関連する細胞傷害性を特異的致死%=(S−E)/S×100(ここで、Eは、致死体の存在下での実験で保持された標識DNA (cpm)であり、Sは、致死体の非存在下で保持された標識DNA (自発)である)として計算した。平均の差を、GraphPad Prism (GraphPad Software)を用い、対t検定により評価した。新たに調製した健常ドナー由来PBLの存在下でのCD19+ Raji細胞の死は、CD19 x CD16 BsDbにより特異的に、用量依存的に誘発され、5μg/mlのBsDb濃度での45%特異的致死および50:1のE:T比をもたらした(図10)。PBLを、同じドナーから単離したNK細胞に置き換えると、CD19 x CD16 BsDbの細胞傷害性効果は、同じ条件下で60%までさらに増大した(図11)。実施例7:重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおけるバーキットリンパ腫 SCIDマウスをCharles River (Sulzfeld, Germany)から購入し、Central Animal Facilities of the German Cancer Research Centerにて特定の病原体無含有条件下に維持した。各実験において、5匹の動物からなる集団を用い、異なる処理群間の正確な比較を可能にした。マウスに放射線を照射し(300 rad)、製造業者の指示にしたがって10μlの抗-アシアロGM1モノクローナル抗体(Wako, Neuss, Germany)をi.p.注射した。1日後、107 Raji細胞を背部にs.c.注射し、腫瘍の局所成長をもたらした。腫瘍が直径5mmのサイズに達した(0日目)後、処置を開始した。0、7および15日目に動物にPBS(対照群)または5×106ヒトPBLのいずれかをi.v.注射した。各PBLインキュベーションの4時間後、マウスを、尾静脈から投与したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)または50μgのCD19 x CD16 BsDbのいずれかでより処理した。腫瘍の大きさを2日目ごとにカリパーを用いて測定した。動物を、s.c.腫瘍が直径15mmの最大許容サイズに達するまで追跡し、頸椎脱臼により屠殺した。屠殺(sacrifice)の日を記録し、生存期間解析に使用した。生存している動物を最初の処置後60日まで追跡した。統計学的評価のため、腫瘍処置実験の追跡調査期間は30日間であった(実験の最後)。メジアン生存期間を、KaplanおよびMeierにより記載された方法(1958, J. Am. Statist. Assoc. 53, 457-481)により概算した。生存曲線間の差を、ログランク検定(logrank test)(MantelおよびHaenszel, 1959, J. Natl. Cancer Inst. 22, 719-748)を用いて比較した。 PBSまたはPBL単独を受けた対照群のすべての動物は、全く腫瘍抑制を示さず、3週間未満で腫瘍が直径1.5cmより大きく成長した(図12)。PBSを受けたマウスと活性化PBL単独を受けたマウスとでは、腫瘍成長間の有意差はなく、これは、使用した条件下において、腫瘍に対するエフェクター細胞の同種抗原反応は無視し得ることを示す。腫瘍が直径15mmの最大許容サイズに達したとき、動物を屠殺した。屠殺日を記録し、メジアン生存を各群について計算した(図13)。メジアン生存期間は、それぞれ21.5および23日にPBSおよびヒトPBL単独を受けた対照群において有意に異ならなかった(P=0.4469)。対照群とは対照的に、CD19 x CD16 BsDbを受けたすべてのマウスは有意な腫瘍退化を示した。ダイアボディの3種類の注射を受けた動物は、15〜20日目に最小腫瘍サイズを示し、このとき、5匹のマウスのうち2匹は腫瘍がなかった。しかしながら、その後、この群のすべての動物において腫瘍は類似する速度で再び成長し始めた(図12)。CD19 x CD16 BsDbを受けた(32.5日)群について計算されたメジアン生存期間は、対照群とは有意に異なった(p<0.01)。これらのインビボデータにより、ヒトNK細胞を腫瘍標的に漸増させるCD19 x CD16 BsDbの強い抗腫瘍効果が明白に確認される。図1:CD19×CD16二価BsDbをコードするオペロンの遺伝的機構(A)およびBsDbのタンパク質モデル(B)His6:6つのC末端ヒスチジン残基;L:VHおよびVLドメインに連結したショート10アミノ酸ペプチドリンカーSerAlaLysThrThrProLysLeuGlyGly;リーダー、ペリプラズムへの組換え産物の分泌のための細菌のリーダー配列(例えば、PelBリーダー);p/o:プロモーター/オペレーター;rbs、リボソーム結合部位;停止:停止コドン(TAA);タグ:免疫検出のためのC末端エピトープ;VHおよびVL:CD16またはCD19のいずれかに特異的な重鎖および軽鎖の可変領域。図2:CD19×CD164価Tandabをコードするオペロンの遺伝子機構(A)およびTandabのタンパク質モデル(B) His6:6つのC末端ヒスチジン残基;L:VHおよびVLドメインを連結するショート10アミノ酸ペプチドリンカーSerAlaLysThrThrProLysLeuGlyGly;リーダー、ペリプラズムへの組換え産物の分泌のための細菌リーダー配列(例えば、PelBリーダー);p/o:プロモーター/オペレーター;rbs、リボソーム結合部位;SL:分子の真ん中の12アミノ酸ペプチドリンカーArgAlaAspAlaAlaAlaAlaGlyGlyProGlySer;停止:停止コドン(TAA);タグ:免疫検出のためのC末端エピトープ;VHおよびVL:CD16またはCD19のいずれかに特異的な重鎖および軽鎖の可変領域。図3:発現プラスミドpKID19x16の図6xHis:6つのC末端ヒスチジン残基をコードする配列;bla:アンピシリン耐性を担うβ-ラクタマーゼの遺伝子;bp:塩基対;c-mycエピトープ:9E10抗体により認識されるエピトープをコードする配列;ColE1:DNA複製の起点;f1 IR:バクテリオファージf1の遺伝子間領域;lac P/O:野生型lac-オペロンプロモーター/オペレーター;リンカーL:VHおよびVLドメインを連結する10アミノ酸ペプチドSerAlaLysThrThrProLysLeuGlyGly;PelBリーダー:細菌ペクチン酸リアーゼのシグナルペプチド配列;RBS:lacZリボソーム結合部位;VHおよびVL:免疫グロブリン重鎖および軽鎖それぞれの可変領域をコードする配列。ユニークな制限部位が示される。図4:発現プラスミドpSKID19x16の図6xHis:6つのC末端ヒスチジン残基をコードする配列;bla:アンピシリン耐性を担うβ-ラクタマーゼの遺伝子;bp:塩基対;c-mycエピトープ:9E10抗体により認識されるエピトープをコードする配列;hok-sok:プラスミド安定化DNA座;lacI:lac-リプレッサーをコードする遺伝子;lac P/O:野生型lac-オペロンプロモーター/オペレーター;リンカーL:VHおよびVLドメインを連結する10アミノ酸ペプチドSerAlaLysThrThrProLysLeuGlyGly;M13 IR:バクテリオファージM13の遺伝子間領域;pBR322ori:DNA複製の起点;PelBリーダー:細菌ペクチン酸リアーゼのシグナルペプチド配列;SD1:E.coli lacZ遺伝子(lacZ)に由来するシャイン-ダルガーノ配列(リボソーム結合部位);SD2、SD2およびSD3:バクテリオファージT7の強く発現される遺伝子10(T7g10)のシャイン-ダルガーノ配列;skp遺伝子:細菌ペリプラズム因子Skp/OmpHをコードする遺伝子;tHP:強い転写のターミネーター;tLPP:転写のリポタンパク質ターミネーター;VHおよびVL:それぞれ、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列。ユニークな制限部位を示す。図5:発現プラスミドpSKID19x16中のCD19xCD16 BsDbのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列6xHis:6つのC末端ヒスチジン残基をコードする配列;CDR:免疫グロブリン重鎖(H)または軽鎖(L)の相補性決定領域;c-mycエピトープ:9E10抗体により認識されるエピトープをコードする配列;lac P/O:野生型lac-オペロンプロモーター/オペレーター;lacZi:β-ガラクトシダーゼのアミノ末端ペプチドをコードする遺伝子;リンカーL:VHおよびVLドメインを連結する10アミノ酸ペプチドSerAlaLysThrThrProLysLeuGlyGlyをコードする配列;pelBリーダー:細菌ペクチン酸リアーゼのシグナルペプチド配列;SD1:E.coli lacZ遺伝子(lacZ)に由来するシャイン-ダルガノ配列(リボソーム結合部位);SD2、SD2およびSD3:バクテリオファージT7の強く発現される遺伝子10(T7g10)のシャイン-ダルガノ配列;VHおよびVL:それぞれ、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列。遺伝子合成に使用される制限部位を示す。翻訳の開始および終止コドンが太字で示される。図6:較正されたSuperdex 200カラムにおけるサイズ排除クロマトグラフィーによる精製CD19×CD16 BsDbの分析分子質量標準の溶出位置が示される。図7:還元条件下における12%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による精製CD19×CD16 BsDbの分析レーン1、Mrマーカー(kDa、数千のMr);レーン2、CD19×CD16 BsDb。ゲルをクーマシーで染色した。ハイブリッドVH16-VL19およびVH19-VL16 scFvの位置を示す。図8:フローサイトメトリーにより測定したCD19×CD16ディアボディ濃度に依存する蛍光のラインウィーバー・バーク分析CD19+ JOK-1細胞およびCD16+ 293-CD16細胞へのディアボディ結合を測定した。図9:37℃でのCD19+ JOK-1細胞およびCD16+ 293-CD16細胞の表面上のCD19×CD16 BsDbの保持初期平均蛍光強度のパーセンテージとして値を表す。図10:0.5、1および5mg/mlの濃度でのCD19×CD16 BsDbの存在下における種々のエフェクター:標的(E:T)比でのヒトPBLによるCD19+ Raji細胞の溶解。図11:0.5、1および5mg/mlの濃度でのCD19×CD16 BsDbの存在下における種々のE:T比でのヒトNK細胞によるCD19+ Raji細胞の溶解。図12:ヒトバーキットリンパ腫異種移植片を有する重症複合免疫不全(SCID)マウスの処置マウスにPBS(白四角)、ヒトPBL単独(黒四角)、またはCD19×BsDb投与の4時間後にヒトPBL(黒丸)を与えた。腫瘍サイズを1日おきに測定した。実験の30日までの個々の動物の腫瘍増殖曲線を示す。図13:ヒトバーキットリンパ腫異種移植片を有するSCIDマウスの生存マウスにPBS(白四角)、ヒトPBL単独(黒四角)またはCD19×CD16 BsDb投与の4時間後にヒトPBL(黒丸)を投与した。 以下の特徴:(a)ヒトCD19に特異的であり、かつヒトCD16に特異的である;(b)2つの単鎖Fv分子を含み、各Fv分子が、CD19またはCD16に対して異なる特異性を有し、ペプチドリンカーにより隔てられるかまたはリンカーがないかのいずれかである免疫グロブリン可変VHおよびVLドメインを含み、単鎖Fv分子のCD16に特異的な可変VHドメインは、もう1つの単鎖Fv分子のCD16に特異的な可変VLドメインと非共有結合で会合してCD16に対する結合部位を形成し、単鎖Fv分子のCD19に特異的な可変VHドメインは、もう1つの単鎖Fv分子のCD19に特異的な可変VLドメインと非共有結合で会合してCD19に対する結合部位を形成する;および(c)定常領域を欠くにより特徴づけられる多価二重特異性抗体。 CD19抗原がヒトB細胞上に発現される請求項1記載の多価二重特異性抗体。 CD16抗原がヒトNK細胞上に発現される請求項1または2記載の多価二重特異性抗体。 ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、CD19またはCD16に対して異なる特異性を有するVHおよびVLドメインから各々なる2つのハイブリッド単鎖Fv抗体のヘテロダイマーである請求項1記載の多価二重特異性抗体。 ペプチドリンカーにより隔てられるか、またはリンカーがないかのいずれかである、CD19またはCD16に対して異なる特異性を有する少なくとも4つのVHおよびVLドメインを含む単鎖Fv抗体のホモダイマーである請求項1記載の多価二重特異性抗体。 (a)第1のハイブリッド単鎖Fv抗体がVH16-VL19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVH19-VL16である;または(b)第1のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL16-VH19であり、第2のハイブリッド単鎖Fv抗体がVL19-VH16である、請求項4記載の多価二重特異性抗体。 前記ペプチドリンカーが0〜12アミノ酸を含んでなる請求項4〜6いずれか記載の多価二重特異性抗体。 前記ペプチドリンカーが10アミノ酸を含んでなる請求項7記載の多価二重特異性抗体。 2つのハイブリッド単鎖Fv抗体がペプチドリンカーを介して連結される請求項6記載の多価二重特異性抗体。 前記ペプチドリンカーが0〜30アミノ酸長を有してなる請求項9記載の多価二重特異性抗体。 前記ペプチドリンカーが12アミノ酸長を有してなる請求項10記載の多価二重特異性抗体。 前記ペプチドリンカーがアラニン、グリシン、セリンおよびプロリン残基を含んでなる請求項4〜11いずれか記載の多価二重特異性抗体。 少なくとも一対のVドメインの非共有結合が少なくとも1つのジスルフィド架橋により強化される請求項4〜12いずれか記載の多価二重特異性抗体。 少なくとも1つのモノマーが、生物学的活性、または固相支持体、生物学的に活性な物質、化学薬品、ペプチド、タンパク質もしくは薬物への選択的結合に適した高次構造を有するエフェクター分子に連結される請求項4〜13いずれか記載の多価二重特異性抗体。 請求項1〜14いずれか記載の多価二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド。 請求項15記載のポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクター。 pSKID19x16(DSM14529)である請求項16記載の発現ベクター。 請求項16または17記載の発現ベクターを含有してなる宿主細胞。 (a)ペプチドリンカーが可変ドメインと連結し、多価二重特異性抗体のモノマーをコードするDNA分子の形成を生じるように、可変ドメインを連結するペプチドリンカーをコードするDNA分子が可変ドメインをコードするDNA分子に連結され、(b)種々のモノマーをコードするDNA分子が適切な発現系で発現される、請求項4〜14いずれか記載の多価二重特異性抗体の調製方法。 請求項1〜14いずれか記載の多価二重特異性抗体、請求項15記載のポリヌクレオチドまたは請求項16もしくは17記載の発現ベクターを含有してなる組成物。 検出のための適切な手段を任意にさらに含有してなる診断用組成物である請求項20記載の組成物。 非ホジキンリンパ腫の治療用医薬組成物の調製のための請求項4〜6いずれか記載の多価二重特異性抗体の使用。 前記非ホジキンリンパ腫がバーキットリンパ腫である請求項22記載の使用。 (a)請求項1〜14いずれか記載の多価二重特異性抗体;および/または(b)請求項16または17記載の発現ベクターを含んでなる診断キット。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る